花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、D&Dを中心に世紀末前後のTRPGの懐古話を不定期展開中。

魔神ハンターと、煌びやか卿(SWミストグレイヴ1ー8)

奴隷おじさんを連れ帰る

 

GM(ヒノキ)「さて、11月に入ったので、急いでミッションを終わらせるのじゃ。この週末には魔神ハンター第1部完の予定」

G太郎(ゲンブ)「シクシク。ミサちゃんがワイズマンに殺されたでござる(涙目)」

GM「大丈夫じゃ。仇はグレムリンが討ってくれるから」

G太郎「何と。グレムリンはいい奴でござるか?」

GM「そんなはずがなかろう。とにかく、ウィザードの話はリプレイ記事以外でせい」

G太郎「では、クウガの話でも」

ホリー(シロ)「ゲンブ。リトルの前で、大人気ない振る舞いを見せて恥ずかしくないのか?」

デル(リトル)「ゲンブ師匠。今は平成ライダーではなく、ソード・ワールドの話をする時ですぅ」

G太郎「ムッ。ならば仕方ない。このゲンブ、ミサちゃんロスを乗り越え、マッスルG太郎として雄々しく立ち上がるでござるよ」

GM「では、お前たちはヒンソン氏を連れて、物乞い市場に帰って来た。7日めの深夜の話じゃ」

ホリー「ヒンソン氏? 誰それ?」

デル「初めて聞く名だなぁ」

GM「前回、レッサーオーガを倒して、お前たちが救出した奴隷の名じゃよ」

ホリー「ああ。貧相な外見の奴隷おじさん!」

GM「うむ。ハロウィンと文化の日の間に、分かりやすい名前を付けてやったのじゃ。『貧相な外見』を縮めてヒンソン。なお、苗字はないので、今、キャラビルドブックを使って決めてやろう。(コロコロ)65が出たので、レストンになった」

デル「ヒンソン・レストンかぁ。名前が付いたということは重要人物なのかぁ?」

G太郎「いや、本当に重要人物なら、シナリオで元々、名前が付いているはずでござろう。キャラビルドブックで名前をランダムに決めた時点で、シナリオに想定外のキャラであることは確実」

GM「もちろん、当リプレイ独自のNPCじゃが、重要になるかはプレイヤーキャラとの関わりによる。この男の特技は、騎獣の世話に長けていること。一般技能のテイマー(調教師)を5レベルで有しているものとする。そして、この男が一晩世話した騎獣は、ラッキーになって【運命変転】が1回使用可能じゃ」

ホリー「本当ですか? すると、ヒンソンさんにイノセントを預けると、パワーアップすると?」

GM「うむ。騎獣に話しかけて、『お前はやればできる。運命はお前の味方だ』と暗示を掛けると、騎獣がヤル気満々で頑張ってくれるのじゃ。わらわが決めた特別ルールってことで」

ホリー「ヒンソンすげえ。これは是非とも、拠点に連れ帰って、同志になってもらわないと。人は見かけによらないものだなあ」

GM「ヒヒヒ。単に解放軍の同志集めを数だけ揃えるよりも、ちょっとした特殊能力持ちにすると、面白くなるじゃろう?」

G太郎「正に、蛮族の奴隷にしておくには勿体ない人材でござったな」

GM「それで、物乞い市場から、そのまま肉の穴に引き返し、ヒンソン氏を連れ帰ったところまで一気に話を進めよう。密偵カレンに続く2人めの同志ヒンソンが解放軍に参加。あと1人同志が加わると、★1つを獲得し、新たなクエストが受注可能になる」

デル「解放軍同志を増やして行くことで、物語が先に進むんだなぁ」

GM「その通り。3人め、6人め、12人めまではイベントが用意されておるのじゃ」

G太郎「同志集めが楽しみになって来たでござる」

GM「そして、ヒンソン氏が解放軍に迎え入れられ、早速イノセントの世話をしてくれた翌日、8日めの朝から改めて、今回の話がスタートするってことで、奴隷購入ミッションの続きじゃ」

 

改めて、煌びやか通路へ

 

GM「8日め朝に肉の穴、昼に物乞い市場を出て、夕方に騎獣調教所に到着。ここまでランダムイベントは割愛した。ストーリーを進めたいときに、ランダムイベントだらけで停滞させるのも本意ではないからのう」

G太郎「ランダムイベントで楽しめる場合は、積極的に発生させ、それによってダレる時はGM裁量で削ることもありでござるな」

GM「まあ、肉の穴から騎獣調教所までの旅程は前回、一度プレイ済みなので、ヒンソン連れて引き返す都合で1日遅れになったとは言え、コンピューターゲームじゃあるまいし、同じことの繰り返しは飽きるというもの。その辺は、プレイや記事を面白くするために、ルールに縛られすぎるのもどうかと思う。我々は楽しむためにゲームをしているのであって、シナリオ記述を機械的に処理することが目的ではないわけじゃ」

ホリー「とにかく、今は騎獣調教所に着いたんですね。では、早速、フーララバラお姉さまに報告だ。ボクとイノセントの活躍を語りつつ、騎獣装備を革鎧から鎖かたびらにバージョンアップしよう。そのために1000G分の品を払った」

GM「うむ。革鎧は現金150ガメルで引き取ってやろう。取り引きのおつりみたいなものじゃな。これから煌びやか通路に行くのに、多少とも現金の持ち合わせも必要かもしれぬ。少なくとも宿賃がな」

 

 続いて、8日めの夜。

 亡者の神殿を避けて、水没した通路を抜けようとする一行。

 ランダムイベントは、ケンタウロス・タクシーが出たが、目的地が隣なので利用せず、挨拶だけ交わして友好的に別れる。

 そして……

 

ギルマン『ここを通りたければ、通行料150G分のアイテムを払うギョ』

G太郎「何? 前に支払ったではござらんか」

ギルマン『前は前。今は今。この区画は、通るたびに通行料が必要だギョ』

G太郎「むっ、一回だけのイベントだと勘違いしておったが、やむを得ん。黒鉄剣士勲章を3つ支払おう」

デル「師匠。こんな奴ら、コテンパンにやっつけたらどうなんだぁ?」

G太郎「それは蛮族の流儀とも言えるが、こやつらは別に悪いことをしているわけではないからな。追い剥ぎなら返り討ちにもしてやるが、魚人の領域を通過する者から通行料を要求するのは理にかなっている。そして何よりも、今は魚人の王と事を構えるつもりもござらん。ランダムイベントの敵なら後腐れはないが、この場の固定イベントなので、いたずらに対立すると将来、魚人との交渉にも支障が出よう」

デル「そういう物かぁ。まあ、師匠の経験に基づいた判断には従うけどよぉ。今後は、この水没通路は使わない方が良さそうだなぁ」

G太郎「素通りできると思いこんでいたからな。これなら、亡者の神殿の前を、中に踏み込まずに素通りする方が良いだろうということで」

デル「亡者の神殿に巣食うアンデッドどもをさっさと駆除してしまえば、いいんじゃないかなぁ」

G太郎「それは次のミッションの課題にするでござる。今は通行料を払って、煌びやか通路へ急ぐとしよう」

 

 8日めの深夜。

 ランダムイベントは発生せず。

 

GM「1Dの出目1でイベントなし。出目2でケンタウロス・タクシーになるので、実質3以上でイベント発生となるわけじゃ」

ホリー「移動するたびに3分の2の確率でイベント発生なんて、結構高いんだな」

GM「うむ。ランダムイベントの発生ルールは、作品によって異なるからのう。前作ミストキャッスルでは、『ランダムイベントの発生する区画が決まっていて、そこでの固定イベントが発生しない場合にのみ』発生したから、その区画を上手く避けることで、ランダムイベントを極力発生させないようにプレイすることができた。別ブログのフェアリーガーデンでは、『道の通じている別エリアに移動する場合に、2Dの出目が5以下で発生』するそうじゃ」

デル「確率的には18分の5。約27.8%ってところですねぇ」

GM「ほう。そういう計算は手早いのう」

デル「デルニールは脳筋キャラですけど、プレイヤーのリウは計算が得意ですからぁ」

ホリー「そうなんだよな。リトルが実は緻密な計算が得意、ということはもっとアピールしてもいいぐらいだ。問題は、料理を作る時にも、杓子定規に分量をきっちり計りとらないと気が済まなくて、適度な加減というのがまだ分からない点」

GM「未熟な完璧主義者と言ったところか。まあ、完璧主義というからには、ケアレスミスはしないと期待できようが」

デル「今のところファンブル(ピンゾロ)は出したことがないですからねぇ」

GM「とにかく、ミストグレイヴのランダムイベント発生率は、移動のたびに3分の2という高確率なのじゃが、連続で移動する場合は、その都度、ダイス目をマイナス1するようにもなっているので、最初は3分の2じゃが、その後は、1Dで4以上、5以上、6のみと発生率が減っていく仕様」

G太郎「確率で言うなら、3分の2、2分の1、3分の1、6分の1と減っていくのでござるな」

GM「それと、ケンタウロス・タクシーによるショートカットを利用すれば、遠出をする際にも便利なのじゃ」

G太郎「移動料金が300G相当のアイテムということで、それを安いと思うか、高いと思うかは目的地次第か」

GM「そんなわけで、お前たちは大禍なく目的地である【煌びやかな大通路】に到着した」

 

煌びやか卿アー・ヌルチェ

 

G太郎「今は真夜中。奴隷市場は開催されているだろうか」

GM「人族の常識だと翌朝まで待つところじゃが、蛮族は夜行性の者が多いうえ、ここは地下世界じゃ。昼と夜の区別はほぼない」

G太郎「いずれにせよ、奴隷購入後に宿に泊まると、奴隷の分まで宿代を払わないといけないから、ここは先に宿で休んで、翌朝に行動開始するのがいいと見た」

GM「宿代は1人50Gなので、4倍して200ガメルを現金で払ってもらおうか」

G太郎「我らは3人のはずだが?」

GM「イノセントの分じゃよ」

ホリー「仕方ない。ボクだけ100ガメルを払えばいいんだな」

イノセント(すみません、お嬢さま)

ホリー「イノセントが喋った!?」

イノセント(へい。ヒンソンさんに、お前はもっと自己主張をした方がいい、とアドバイスされたもんで。この心の声は、お嬢さまにしか聞こえません)

ホリー「つまり、ヒンソン効果という奴か。恐るべし、ヒンソン。騎獣を喋らせることまでできるなんて」

イノセント(とにかく、鎖かたびらと宿代の分まで、仕事したいと思いますんで、今後ともよろしく)

ホリー「ああ、こちらこそ」

GM「なお、他の者には、イノセントがブヒブヒ言っているようにしか聞こえない」

デル「ホリー姉さんが突然、イノセントと会話を始めたのかぁ!?」

ホリー「ああ。どうやら、ボクもライダーとして成長したらしい」

G太郎「すると、うちのゴーレム、Dゴローも喋ったりできないものか」

GM「そう言えば、このミッションでは、オークを作る宣言をしておらんようじゃが」

G太郎「移動に連れ歩くためだけに作るのもMPのムダと思ったでござる。確実に戦闘が予想できるミッションならともかく、今回は買い物に来ただけでござるからな。どのタイミングで戦闘が発生するか、いまいち読めん」

GM「なるほどな。ところで、お前たちが宿から出立しようとすると、ある人物が顔を見せる」

G太郎「誰でござるか?」

GM「その男はバルカンで、『ガルダの姐御、ここに泊まっていると聞いたもので』と、角の付いた厳つい顔に可能な限りの友好的な笑みを、ニヤリと浮かべる」

ホリー「ガルダ? ああ、ボクはそういう偽名を名乗っていたな。すると、この男は前に会った情報屋の……」

GM「そう、ロドニーじゃ。リアル時間では、この9月18日の記事以来なので、およそ一月半ぶり。ゲーム内時間だと3日めに登場して、今が9日めの朝になったから6日ぶりと言ったところじゃのう」

ホリー「お前、何しに来たんだ?」

ロドニー『もちろん、姐さんたちに情報をお届けに。何でも、姐さんたちはあれから南の処刑遊戯場で〈烈火団〉を名乗って、大暴れしたそうじゃないですか。その噂を聞いて、煌びやか卿が姐さんたちに興味を持っているそうで』

G太郎「何と。ここの主に目を付けられたでござるか?」

ロドニー『へい。それで、一応、あっしも姐さんたちに命を助けられた身。煌びやか卿の真意が分からん以上は、もしかすると危険が及ぶかもしれんと気になって、先に知らせておこうと駆けつけた次第』

ホリー「そいつはご苦労だったな、とバルカン語でねぎらいの言葉をかけよう」

ロドニー『いえ、これぐらいならお安い御用で』

G太郎「それで情報屋。煌びやか卿とは、どのような人物か、もう少し詳しい話を聞かせて欲しいでござる」

ロドニー『本名アー・ヌルチェで、ガメル硬貨の収集が何よりも大好きなオーガです。つまり、欲張りな守銭奴、金の亡者と言っても構わんですな。この辺りを取り仕切る商店の元締めで、売れるものは人でも物でも何でも売って、とにかくガメルを集めようとします。世の中を動かすのはガメルとか、人族の存在理由はガメルを作り出したことだと言っているとか、人族の神であるはずの商業神ガメル神をこっそり信仰しているのではないか、とか、真夜中にガメルの歌を歌っているのを耳にした者がいるとか……』

G太郎「ガメルの歌?」

ロドニー『ガメル〜、ガメル〜、イカすぞガメル、凄いぞガメル、キラキラガメル〜♪ って感じですね』

G太郎「その曲はもしかして……」


【MAD】 昭和ガメラVS怪獣たちで 歌詞つき"ガメラマーチ"

G太郎「ガメルのファン、すなわちガメラーということだったら、その煌びやか卿、悪い男ではないのかも知れん。少なくとも、一度会ってみたくなったでござる」

ホリー「おい、G太郎、大丈夫か? 蛮族、いやバルバロスの親玉みたいなものだろう? 少なくとも、幹部クラス。何か面倒なことに巻き込まれそうな気がするんだが」

G太郎「しかし、我らはここに奴隷を買いに来た。奴隷はどこで売っている?」

ロドニー『煌びやか卿直々に経営している奴隷販売所ですね』

G太郎「どうやら、虎穴に入らずんば虎子を得られぬようでござるな」

デル「レッサーじゃないオーガって何レベルだぁ?」

GM「7レベルじゃな」

G太郎「つまり、レベル的には私と対等でござる」

デル「師匠と対等だったら、オラたちには絶対に手が出せそうにねぇ」

ロドニー『煌びやか卿のそばには常に、レッサーオーガとボガード3体が護衛に付いているという噂です』

G太郎「1対1なら正面から戦って倒せる可能性もあるだろうが、護衛に手間取っている間に、オーガの強力な魔法を連発されると危険でござるな。何せ、相手は5レベル魔法、すなわち威力30の【ブラスト】を撃ってくる」

ホリー「メタな判断だけど、この奴隷購入ミッションって、推奨レベル3だったよな。いくら何でもレベル7のオーガと戦う羽目には陥らないと思うけど」

G太郎「大丈夫。我らは奴隷を購入に来た客でござるよ。向こうが商売人なら、客相手にむやみやたらと狼藉は働かぬはず。そもそも、こちらはドレイクとバルカンであって、人族なのはルーンフォークの私だけ。ノーマルのバルカンは5レベルでござるが、ドレイクは竜化すればオーガと同じ7レベル、すなわちバルバロスの格としてはドレイクはオーガに匹敵する。ご主人は自信満々に振る舞っていいでござる」

デル「オラは竜化なんてできねえけどなぁ」

ロドニー『ドレイクなのに、どうしてできないんですか?』

デル「うっ、それは……」

ホリー「修行中の身だからだよ。竜化ができるようになるまで、家には帰って来るなって追い出されてるんだ」

ロドニー『そうなんですか。ドレイクはドレイクで、苦労してるんだなあ』

ホリー「しかし、成長したドレイクはオーガと対等でも、バルカンは格下ってことじゃないか?」

ロドニー『いえいえ、あっしを倒した姐御がずいぶんご謙遜を。本当はレベル7のバルカンアデプトか、レベル10のバルカンメジャーアデプトぐらいのお方とお見受けします』

ホリー「ずいぶんと買いかぶられているな」

GM「この男の中では、自分を倒したG太郎は自分より強い。そのG太郎より格上に振る舞っているガルダはもっと上で、さぞかし名のある方に違いないと完全に思い込んでいるのじゃ。しかも、自分の情報屋の勘は間違っていないと自信を持っているわけで」

ホリー「実際のレベルはまだ3だってのは口が裂けても言えないな(苦笑)」

G太郎「とにかく、相手がガメラファンであるなら、すなわち私のファンであるからして、サインでも書けば、友好的に話し合いで解決するはずでござる」

GMガメラファンではなくて、ガメルマニアなんじゃがのう。ともあれ、お前たちはおっかなびっくり、ロドニーの案内で、奴隷販売所へ向かった。そして、購入手続きの際に、煌びやか卿アー・ヌルチェ自ら面会、いや、異例の会食会を開いてくれることとなったのじゃ」

G太郎「何と。会食会でござるか」

 

アー・ヌルチェ『ほう。お前たちが噂の〈魔神ハンター・烈火団〉か。南の方で最近いろいろと派手に暴れ回っていると聞くが』

デル「オラたちの噂がかぁ?」

アー・ヌルチェ『商売人には情報が何よりも大切な武器だからな。名前は確か「血まみれトマトケチャップのデルモンテ」に、「情熱バルカンの女騎士ガルダ」、そして「炎のキン肉ファイター、魔進マッスル」とか言ったか。処刑遊戯場のバトルの様子は聞いておる。本来ならば、そのような血生臭い試合は下等バルバロスのつまらん遊びに過ぎんと思っておったが、お前たちの噂を聞いて、いくつか確認したいことがあってな。こうして直接会う機会を待っていたのだよ』

G太郎「わざわざ、会食会を開いてまで確認したいこととは、何でございまするか?」

アー・ヌルチェ『その方、地上でタビットの女商人にして魔神使いのザバーラのところで働いていなかったか? 確か、お笑い芸人のマッスル太郎とか……』

G太郎「何と。私の過去が知られている?」

アー・ヌルチェ『元は、商人のザバーラに仕える小者奴隷であったが、見世物剣闘士として名を上げた末、奴隷労働の功績が認められ、名誉蛮族の地位を勝ち取るまでになった。その後、ラミアの貴婦人サンドリーヌと縁を持ち、彼女の失踪にも一役買ったと当方の調べで明白である。左様、相違ないか?』

G太郎「って、その言い回しだと、煌びやか卿がお奉行様で、私がお白洲に引き立てられた犯罪人みたいでござる。何で、このアー・ヌルチェがそこまで知っているでござるか?」

GM「それには二つの理由がある。まず一つじゃが、アー・ヌルチェは同じ商売人として、ザバーラを尊敬しており、彼女から商売のイロハを学んだ過去がある」

G太郎「本当に、そういう設定でござるか?」

GM「当リプレイ独自の脚色じゃ。しかし、このアー・ヌルチェ、蛮族の中では開明的な思想での。人族の発明したガメルを何よりも愛し、自分のところにガメルさえもたらしてくれるなら、人族だろうと、蛮族だろうと、例外なく迎え入れ、快く誠実に振る舞うという設定が公式にある。霧の街の地上ではザバーラが一番の商人であり、この地下ではアー・ヌルチェが一番の商人であることも間違いない」

G太郎「そうでござったか。つまり、アー・ヌルチェは味方であると?」

GM「必ずしも味方とは限らぬが、少なくとも問答無用で襲い掛かる乱暴者ではない。そして、この男がマッスル太郎のことを知った理由がもう一つある」

G太郎「それは一体?」

GM「貪欲卿ズ・グリを覚えておるか?」

G太郎「地上の廃墟探索イベントで関わったジャイアンみたいなオレサマ口調の乱暴者オーガでござったな。アリアドネから討伐クエストも請け負ったが、結局は始末をつけずに来たから、まだ健在なはず」

GM「アー・ヌルチェは、ズ・グリの兄という設定にした。ただし、性格はアー・ヌルチェの方が理知的じゃがの。ズ・グリがマッスル太郎のことを話題にし、それを聞いたアー・ヌルチェが、『遺跡の発掘人、お宝の回収者』として有能な冒険家になりそうなマッスル太郎に興味を持ったという経緯もある。ただし、ズ・グリの話では、マッスル太郎は病気で死んだというオチだったが、その後、違う情報源から『マッスル太郎は実は生きていた』という話も聞いたりしている」

G太郎「そこまでの話を、アー・ヌルチェは打ち明けてくれたでござるか?」

GM「いいや。そんな話を金ももらわずに、アー・ヌルチェがお前たちに教える理由がない」

G太郎「だったら、どうして?」

GM「プレイヤーは、アー・ヌルチェがこういう背景を持つキャラだと知って、行動の判断材料に使っていいということじゃよ。アー・ヌルチェはお前たちに敵対するキャラではないし、必要に応じて情報も提供してくれる便利キャラにしようというGMの思惑じゃ。ただし、ミッションやクエストをくれるパトロンではない。ただ、情報をくれるだけ」

G太郎「何のために?」

GM「その情報に基づいて、お前たちが冒険すると、必然的にガメルが手に入る。そのガメルを煌びやか卿の商店で使うと、彼の持つガメルが増える。そういう経済効果を狙えば、お前たちとはWinWinの関係を紡げそうだと、研ぎ澄まされた商売人の感性ではっきり分かったのじゃ」

ホリー「そこまで先見の明があるって、まるで天才みたいだな」

GM「実際、天才なんじゃろうな。本来、貨幣経済を持たぬはずの蛮族社会で、独自の才覚で商業活動を成り立たせているのじゃから。しかも、商売のためなら、人族も蛮族も差別なく扱うということで、金さえ持っていれば、種族の境界線なぞ、たやすく踏み越えて考えられるわけじゃし。ある意味、非差別的な発想のできる男じゃ」

デル「だけど、奴隷販売なんてしているんだよなぁ。どこが非差別的なんだぁ?」

GM「そこは現代の価値観で考えると矛盾しているようじゃが、元々、蛮族社会に人を奴隷にするのは悪である、という倫理観はないわけで。アー・ヌルチェ的には、奴隷は商品なので当然、大事に扱うべきであるという考えがあって、彼自身は奴隷を捕らえてこそいるものの、決して虐待はしていない。一方、彼が売った後の奴隷が、買い手によってどう扱われようが気にしないわけじゃが。彼個人が開明的であって、残酷な男ではないにしても、社会制度や倫理観そのものが異質な蛮族社会にあっては、彼も完全に蛮族の流儀から自由であるというわけにはいかんのじゃよ」

G太郎「つまり、アー・ヌルチェは蛮族の中にあっては、ずいぶんと人族に親和的で、話せば分かる思想の持ち主だが、それでも蛮族の風習に従っている部分もあって、100%の善と安易に見なすことはできないわけでござるな」

GM「会食会で、最初は緊張しながら、しかし煌びやか卿のフレンドリーな話術にいつの間にか引き込まれ、互いの情報交換が進んだということにしておこう。基本的に、彼は地上のマッスル太郎の活躍に興味を示しているのじゃが、仮面レンジャーとしての裏の顔やレジスタンスとの関わり、そして魔神の正体までは気付いておらんようじゃ。あくまで隠していない表の顔でのみ、マッスル太郎を評価している」

G太郎「それを聞いて安心したでござる。レジスタンスのことまで知られているとあっては、この男に首根っこを押さえられているようなものでござるからな」

GM「アー・ヌルチェの中では、マッスル太郎は尊敬する商売人ザバーラの下で雑用係から、一流の冒険家に上り詰めた有望株として映っておる。そんな男が、地上で失踪した後、地下世界に現れたのじゃから、商売人としての好奇心を掻き立てられても不思議ではなかろう」

デル「やっぱり、師匠は凄い人だったんだなぁ。こんな大商人のお偉方にまで注目されていたなんてぇ」

GM「それだけではない。お前たちが地下で名乗っている『魔神ハンター』という肩書きにも興味を持っているようじゃ。魔神使いのザバーラのところで働いていたマッスル太郎が、魔神ハンターを名乗って何やら動いている。そう聞いて、興味を持たないはずがあろうか。いや、先見の明を持つ者なら、見逃す手はないとな」

ホリー「おお、ここで魔神ハンターの設定が拾われるとは、いよいよ物語が動き出したって気がする」

GM「魔神ハンター第1部ももうすぐ終わるわけじゃからのう。ストーリーを広げたい頃合いじゃ。そして、『お前たち、魔神狩りに興味があるのなら、北の魔窟も関心があるんだろうな』と重大情報を口にする」

デル「北の魔窟?」

GM「そう。【戦神の凱旋門】という区画が北にあり、そこには地下100階層から成る巨大なダンジョン〈魔窟〉が存在する。魔窟の中には、魔神を始めとする多くの魔物が蠢いていて、放置すると危険なので、腕試しの強者が討伐に出向いて、時に経験と宝をゲットしたり、時に力及ばず骸を晒して、死して屍拾う者なく朽ち果てたり、亡者と化したりすることもある。つまり、ダンジョン探索ゲームの『狂気の試練場』というわけじゃよ」

G太郎「まるで、ウィザードリィでござるな」

GM「魔窟は、ミストグレイヴという作品の目玉の一つと言えよう。これだけでもランダムダンジョンとして延々と遊んでキャラ成長できる内容じゃが、ある程度遊ぶと飽きが来るかもしれん。それでも、100階層を攻略という響きだけで、ゲーマーならワクワクして来ぬか?」

デル「魔窟には、魔神がいるってのは本当なのかぁ?」

GM「魔窟の最深部、地下100階には〈狂気の卵〉と呼ばれる品があって、それが絶え間なく魔神を生み出しているという話だ。そこに行けば、確実に魔神と遭遇する。本リプレイのタイトルが『魔神ハンター』と付けられたのも、つまるところ、この魔窟の存在あってのことじゃな。もちろん、キャラビルドブックでのダイス目による偶然や、いろいろな要素を複合させての理由があるわけじゃが、ミストグレイヴで魔神をいっぱい狩れるダンジョンが存在しなければ、こういうタイトルにもならなかったじゃろう」

ホリー「アー・ヌルチェは、ボクたちに魔窟を探検しろ、と?」

GM「彼は命令も依頼もせん。ただ、その情報を与えたら、お前たちがどう行動するかは興味がある。そして、その行動に自分がささやかながらも無償の支援をすれば、いずれは自分の利益にもつながるだろうという長期的展望に基づくもの」

G太郎「積極的に干渉はしないが、目を付けた者に僅かなりとも縁しておこうという、ちょっとした先行投資というわけか」

 

アー・ヌルチェ『バルバロスの社会は、強き者、強さを求める者に敬意を表するのが古よりの慣わしよ。力の形は、武力、魔力、他者を従える魅力など様々あるが、わしは人族の発明した貨幣という概念に強く魅せられてな。そう、金(かね)の力に痺れたわけだ。人族の神は、調和と光を重視すると聞くが、平和も光も金さえあれば生み出せる。金を集めて、さらに増やし続ける者こそ、世界の覇者にだってなれる。そんな時代が来ることを、わしは信じている』

G太郎「ご高説もっともと承るでござる。蛮族社会で資本主義経済に目を付けるとは、古代のゲルマン社会にアダム・スミスが誕生したような驚きだが」

GM「この男の風変わりな主張を、霧の街の首魁のヤーハッカゼッシュが面白いと感じ、割り当てられた区画で自由に商業活動をやって良いという認可を与えているのじゃな」

G太郎「その主張に100%の同意は向けられんが、一面の真理を得ているのも事実。向こうが我らと敵対する意思を持たない以上、いや、むしろ好意的に接して来ている以上、我らの活動の邪魔をしない、我らの大切なものを傷つけない限りにおいて、協力関係を結ぶことは可能と見た」

ホリー「蛮族は憎いけど、こんな男もいるんだな、と感じ入ったりもする。感情的に反論したい気もあるけど、相手の持つ実力を考えると、ボク程度じゃ話にもならないことも分かるし」

デル「オラには難しいことは、よく分からねえけど、魔神が狩れるという情報を聞いたら、それで十分だぁ。魔窟ってのは、どこにあるのか、はっきり場所を教えてくれぇ」

GM「それは、ここじゃ」

●ミストグレイヴ上層階の地図

(青字は拠点および宿泊可能地点。赤字は目的地。

 緑字は新規に記入)

 

蛇の酒蔵ー凱旋門ー?

(梯子) (魔窟)

  l   l
コボルドー金床ー ? ー ?

      l   l   l

     大水車ー亡者のー煌びやかな 

      l  神殿  大通路

      l   l   l

   物乞い市場ー 騎獣ー水没通路

      l  調教所 (梯子)

      l   l

     肉の穴ー処刑遊戯場

G太郎「【蛇の酒蔵】の東、【無限の金床】の北でござるか」

ホリー「【コボルド窟】を拠点に、魔窟でひたすら狩りを続けるという展開もありかも」

デル「魔神ハンターとしては、望むところだぜぇ」

GM「いろいろと展望が見えてきたところで申し訳ないが、それは第2部以降の楽しみにしておこう。今は、アー・ヌルチェから情報を得たところで、当記事 完としておく。予定よりも長引いたからのう。まあ、すぐに新しい記事に移ることになろうが」

(「魔神ハンター 第1部完結」に続く)