花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、D&Dを中心に世紀末前後のTRPGの懐古話を不定期展開中。

続・フォーゴトン・レルムの上級クラス話(D&D3版)

改めてレルムの上級クラス話

 

リモートNOVA『前回は、上級クラスの話をするつもりが、フォーゴトン・レルムの最近の動向やら、新5版の世界設定の展開の流れを想像したり、頭の中が多元世界でいっぱいになりました』

ヒノキ「いわゆるカオスってことじゃな」

NOVA『で、レルムの上級クラスと言えば、まず神さまに関係する職業が充実しているなあ、と』

ヒノキ「神の化身になれるディヴァイン・ディサイプルがすごいって話をしていたのう」

NOVA『5版のルールでは、さすがにそんな神レベルの上級クラスや背景は設定されていないので、パワーゲームは3版から4版で止めておいて、冒険者として地に足ついたヴァリエーションを楽しむようになっている感じですね。まあ、サブクラスという感じで低レベルから中堅レベルで選択肢を広げるとともに、地獄とか妖精境とか異世界巡りのキャンペーンシナリオが続いていたのが現状ですが、派手な物語はレルムの地上ではなくて、別世界で展開するように意図されたのかもしれません』

ヒノキ「世界のダイナミックな改変に通じそうな展開は、4版の反省で取りやめたのじゃな。むしろ、新規のファンが入りやすそうな安定した冒険物語の舞台を提供した、と」

NOVA『ともあれ、悪魔とか超越した存在は、異世界に引っ込んでいるので、そいつらが地上に進出して来ないように乗り込んで行くのが5版のシナリオだった、と解釈できます。故郷の世界はあまり弄って壊さないようにするということで』

ヒノキ「でも、基幹世界をグレイホークに設定したということは、新5版ではレルムを改変しても客は逃げないという方針に切り替えたとも?」

NOVA『その辺の先行き展開をマルチメディア(映画やコンピューターゲーム)で試してみたのが去年かもしれません。別メディアで派手に世界を変えてみて、受け入れられると見たら、TRPGでもそれを反映したワールドガイドを出すとか、そういう計画かもしれません』

ヒノキ「不評なら、『それは別メディアの話で、本家の世界観には取り入れません。パラレルとお考え下さい』と切り替えるのもありか」

NOVA『一度、大きく変えて大失敗したから、その辺は慎重なのかもしれません。今は、版上げをスムーズに行うために伝統重視の態度をとっている感ですが、そこから先の展開は未発表っぽいんですね』

ヒノキ「まあ、神の化身みたいな派手なクラスは置いておき、他の信仰系クラスはどうなのじゃ?」

NOVA『そちらはアーケイン・ディヴォティー、ディヴァイン・シーカー、ディヴァイン・チャンピオンの3職ですね』

ヒノキ「順に信仰を持った魔法使い、盗賊、戦士だが、とりわけディヴァイン・チャンピオンがパラディンとどう違うのかが気になる」

NOVA『では、今回はそこから掘り下げてみます』

 

信仰系の上級クラス

 

NOVA『まず、基本的にパラディン(聖戦士)は教団に所属していないんですね。性格は秩序にして善と定められ、神から直接、啓示を受けて、組織とは関係なく自らの正義を実行する勇者みたいな人たち、それがパラディンです』

ヒノキ「しかし、ディヴァイン・チャンピオンは違うと?」

NOVA『そもそも、多神教の世界なので、神さまの全てが公明正大とは限らないじゃないですか。別に邪神じゃなくても、混沌にして善の愛の女神スーニー神に仕える戦士は、パラディンみたいに潔癖なキャラにはなりにくい』

ヒノキ「好色な愛の戦士であることが、神に仕えることになるわけか」

NOVA『知識神オグマは真なる中立神ですが、オグマの知識を敬って剣を捧げたく思う戦士だっているわけですよ。従来のパラディンじゃ、そういうキャラは表現できない。貴重な知識を破壊しようという無作法者をこの剣で成敗するのが我が使命と心得る信仰戦士だっている。

『つまり、多彩な信仰教団の護衛役や優秀な刺客として設定されたのが上級クラスのディヴァイン・チャンピオン。まあ、パラディンよりも多様な信仰戦士として、パラディンの能力とファイターの能力を合わせ持つキャラですね。そして、パラディンは重武装が特徴ですが、ディヴァイン・チャンピオンは素の状態だと中装鎧までしか装備できません』

ヒノキ「戦士としては劣化バージョンか?」

NOVA『いえいえ。レンジャーやバーバリアンが自然の神を崇拝して、ディヴァイン・チャンピオンになることだって可能ということです。神を信じる盗賊が、もっと戦闘力を高めるためにディヴァイン・チャンピオンになることだってある。確かに、特殊能力は劣化パラディンという面もありますが、自由度が高くて融通が利くというのはロールプレイにおいて結構な長所になりますな』

 

ヒノキ「ディヴァイン・シーカーは、教団所属の盗賊じゃな」

NOVA『こちらは、戦闘能力よりも隠密探索能力を重視した神のスパイですね。教団が陰謀を企てるため、もしくは敵教団の陰謀を探り当てるために、裏の仕事に従事する秘密工作員を必要とすることもある。例えば、聖女に仕える従者の密偵というキャラもできます。盗賊ギルドではなく、教団に所属することを決めた元盗賊とか』

ヒノキ「普通の盗賊とは何が違うのじゃ?」

NOVA『神の加護に守られているので、魔法の秘文や結界などに気づいたり、無力化する術が使えます。他に探索系の擬似呪文能力が付いて来て、潜入工作に特化してますな』

 

ヒノキ「で、教団所属の秘術魔法の使い手が、アーケイン・ディヴォティーだと」

NOVA『普通の魔法使いと大差ないのですが、信仰ゆえの特殊能力耐性と、神格に沿った属性呪文の強化が特徴です。ただし、この一連の上級クラスをとっても信仰呪文を使えるようにはなりませんので、そういうのを目指す場合には物足りないかも』

ヒノキ「秘術呪文と信仰呪文を両方扱うには、違うクラスを選べ、と」

NOVA『個人的には、ディヴァイン・チャンピオンやディヴァイン・シーカーに比べて、特殊能力の旨みが少ないかな、と思うのですが、このクラスのレベル5に達したときに得られる「信仰の帳」が強力だと思いますね。呪文抵抗力を獲得して、1日1回、レベル×1分の時間だけ呪文を無効化するバリアをフリーアクションで張れる。つまり、対魔法戦闘に強い魔法使いになれる、と』

ヒノキ「魔法使いなのに、神のオーラに守られていると勝ち誇れるわけじゃな」

NOVA『1日1回だけなので、冒険者にとっては物足りないですけど、敵の魔法使いが使う分には、十分な脅威となるわけですな。敵は次々と魔法を撃ってくるのに、こちらの呪文は阻まれるというのは厄介』

ヒノキ「確かに、サイレンスの呪文で魔法封じを狙おうとしたのに、それが通用しないとなれば、厳しい戦いになるのは必定」

NOVA『よって、宗教教団に所属する魔法使いは意外と難敵になるわけですね』

ヒノキ「味方にとっては、使い勝手の良くない能力も、敵が使ってくると鬱陶しいという一例じゃな」

 

特殊な術使いクラス

 

NOVA『次に、レルムならではの特殊な魔法を使える上級クラスが、シャドウ・アデプト、ハスラン(ラシェメンの魔女)、ルーンキャスター、サーイのレッド・ウィザードの4職です。順に〈影織魔法〉、ラシェメンの〈地域魔法〉と〈円陣魔法〉、〈ルーン魔法〉、〈刺青魔法〉と〈円陣魔法〉を習得できます』

ヒノキ「普通の魔法使いと比べて、その世界特有の変わった芸が使えるのじゃな」

NOVA『このうち、〈ルーン魔法〉については、5版のサプリ、ターシャ本でファイターのサブクラスとしてルーンナイトという形で採用されています。他は、どうも特殊な背景が付いて来るので、5版の手持ちサプリでは再現されていないようですね』

ヒノキ「一応、説明してもらおうか」

NOVA『実のところ、彼らの特殊な術に関しての詳細は、3版のサプリ「フェイルーンの魔法」に載っていて、自分は持っていないんですね。だから概要程度の話になると言っておいて、紹介です』

 

★シャドウ・アデプト(影織名人)

 

NOVA『レルムの魔法は、女神ミストラが世界の魔力を〈織(ウィーブ)〉という形で織り上げることで、それを操作する方法として成立しています。4版でミストラが因縁ある殺しの神シアリックに殺害されたため、〈織〉が乱れた結果、従来の呪文の制御が非常に不安定になって暴発を繰り返し、多くの魔法使いが死んだ歴史がありました。5版でミストラが復活したおかげで、従来のD&D魔法が使えるようになったという経緯があるわけですが、それだけレルムの魔法において女神の編み出す魔力の〈織〉が大切ということです』

ヒノキ「その世界の魔法の根幹原理ということじゃな」

NOVA『たぶん、ゲイリーさんはそこまでややこしい世界観を考えていなかったと思いますので、グレイホークにそういう設定はありません。ドラゴンランスのクリンには、また違った魔法の原理があるわけですが、あくまでフォーゴトン・レルムの世界観ということで』

ヒノキ「ソード・ワールドでは、マナという言葉で説明されておるな」

NOVA『で、〈影織〉は闇の女神にして、秘密を司る邪神のシャーが生み出した裏技なんですな。〈織〉の紡ぐ魔力の糸と糸の間にある負の空間を利用して、異なる道筋の魔力伝達路を構成したおかげで、心術、幻術、死霊術や闇関連の呪文は効果を高める一方で、通常のエネルギーや物質に関わる力術や変成術には効果が弱くなる。つまり、定命の人間が扱うにはリスクが大きいわけです』

ヒノキ「邪神の生み出した心理系統の黒魔術だから、術者が狂気に陥りやすいと?」

NOVA『だから、大抵は敵専用の術体系と考えればいいでしょう。そして、この種の魔術の長所は、〈織〉が乱れて魔法が扱いにくい魔法欠如地帯や暴発地帯でも、問題なく発動できる点。よって、4版の時には、非常に有効に働いたんじゃないかなあ。よく知らんけど』

ヒノキ「5版では?」

NOVA『少なくとも、俺の手持ちの資料には見当たりませんが、消えずに残っているんじゃないかなあ。何にせよ、〈影織〉の術を身につけたシャドウ・アデプトは、影に対する親和性を獲得して暗視能力を得たり、影を使った空間移動能力を備えたり、影を利用した防御能力や分身能力を発動できます』

ヒノキ「まるで忍者かカゲスターじゃのう」

NOVA『あと、シャドウ・アデプトは術師としても普通に成長できて、しかも彼らの使う魔法は裏技なので、普通の魔法を使った感知や相殺や解呪が困難になるという特殊仕様』

ヒノキ「それは良いことだらけじゃのう」

NOVA『DMが扱う敵役として重宝しそうです。デメリットは、定命の者がこの技に入門した際、【判断力】の能力値が2点減少することですな。そして、シャー神に仕えることを強要されるわけで、光の世界に背を向ける覚悟が必要でしょう』

 

★ハスラン(ラシェメンの魔女)

 

NOVA『この上級クラスを説明するためには、まずラシェメンという辺境国家について説明しないといけません』

ヒノキ「どこにあるんじゃ?」

NOVA『現在のレルムの物語の中心は、フェイルーン大陸の西方に位置するソード・コーストの沿岸で、そこには大都市ウォーターディープやバルダーズ・ゲート、ネヴァーウインターといった都市があり、さらに北に氷雪地帯のアイスウインド・デイルがあります。3版以降、日本でレルムと言えば、この西海岸の地域が冒険の舞台になっていて、映画もコンピューターゲームTRPGサプリも、ほとんどがこの辺だったりします』

ヒノキ「昔は違った、と?」

NOVA『日本で最初に翻訳されたレルムの小説は「ムーンシェイ・サーガ」。ソード海の洋上に位置するムーンシェイ諸島が舞台です。基本的に古代から中世のイギリスおよびアイルランドアーサー王伝説で有名)をモチーフにした世界で、善玉のドルイドが王族に祝福を与える一方、巨人や荒々しい海賊が王国に侵攻したりするのを迎え撃つ話でしたが、4版になると妖精界のフェイワイルドが次元融合して、ますますケルト色が高まった後、5版に入っても妖精の世界は残ったまま、人の王族は彼女たちとの共存を余儀なくされている状況です』

ヒノキ「島国だから、大陸とは違った文化背景が残っているのじゃな」

NOVA『次に、旧世紀のレルムの中心地域として日本に紹介されたのは、中央のデイルランズと呼ばれる地域。月海という内海の北岸にあるフラン市は、コンピューターゲーム「プール・オブ・レイディアンス」の舞台として知られ、さらに南岸のヒルズファーからコアミアにかけてパソコンゲームで冒険したオールドファンも昔のAD&Dファンならいることでしょう。

『また、エルフの森コーマンソーの西にあるシャドウデイルは、最初のレルムの紹介者として名高い大魔法使いエルミンスターの住んでいたホームタウンとして、小説の舞台になったり、とにかく旧世紀は大きく扱われていました。この辺か、西のソードコースト、そして北方のアイスウインド地域が日本でもよく知られる物語の舞台ですね』

ヒノキ「今の版では、もっぱらソードコースト周辺にスポットが当たるのう」

NOVA『俺にとっては、失われたエルフの古代都市、廃墟となったミス・ドラナーの冒険も懐かしいのですが、4版の時期はこの辺が復活したネザリル帝国の襲撃の舞台になって、大変だったようです。その辺の経緯を描いた小説もあって、アメリカではコアミアおよびデイルランズにスポットを当てた物語も展開されたようですが、翻訳されていないうえ、日本はとにかくバルダーズ・ゲートとソードコースト周辺が大きく取り上げられたために、古代魔法帝国ネザリルの復活の話は背景というか噂レベルでしか伝えられなかったようです。

『で、去年の映画で初めて敵役のレッド・ウィザードとして一般的な知名度が向上したレッド・ウィザードの魔術国家サーイですが、物を知らない自分にとっては長らく「赤の魔法使い」と言えば、黒ローブになる前の中立の魔術師レイストリンという認識でした。赤は中立だと思い込んでいた自分にとって、邪悪な儀式を司る悪役のサーイという国家は、へえ、そうなんだ〜という軽いカルチャーショックというか、世界が変われば赤ローブのイメージもいろいろだなあ、と』

ヒノキ「サーイは東の果てだと」

NOVA『その先は果てなき荒野が広がっていて、さらに東になるとオリエンタル・アドベンチャーのカラ・トゥアに至るわけですが、ラシェメンは湖を挟んでサーイの北に位置します。サーイは悪の魔術国家って感じですが、ラシェメンは自然の精霊に守られた「魔女と蛮人の辺境国家」という感じです。バルダーズ・ゲートのゲームでは、仲間になる魔女ダイナヘールとお供の蛮人レンジャーのミンスクさんがラシェメン出身。この国では、仮面を着けた魔女が支配階級で、用心棒の蛮人男を従えて、ダジェマ(1年間の修行の旅)を行うらしい』

ヒノキ「で、ダイナヘールとミンスク主従を仲間にすることもできるのじゃな」

NOVA『それはいいんですけど、ダイナヘールさん、続編のBG2では殺害されてしまうんですな。そして悲嘆のミンスクが仇討ちのために再び主人公の旅に同行することに。このミンスクさんが現代も時を超えてBG3に再登場。彼の復活の経緯はコミックに描かれていて、街を救った英雄の1人としてミンスクの彫像が街の中心に設けられていたんだけど、その像が命を宿してミンスク復活という不思議な展開に』

NOVA『ハゲた巨漢で、マッチョなおバカのミンスクさんは、ハムスターのブーをペットとして可愛がり、ブーが「ジャイアント・スペース・ハムスター」のミニチュア版であり、勇者かつ賢者だと信じていて、何かとブーに話しかけて、ブーが分かっているのかいないのかチューチューと返す定番話芸を披露。

『そんな世紀末に誕生した蛮族戦士が、リアルでも物語世界でも〈時を越えた英雄〉としてゲームで活躍すると知って、凄いなあと思ったり。彼の復活経緯を知ると、ドワーフのブルーノーが復活は十分にあり得るというか、ミンスクがそこまで人気キャラだとは近年まで知らなかったよ、と』

ヒノキ「というか、ミンスクではなくて、ラシェメンの魔女について語るのではなかったのか?」

NOVA『おっと、そうだった。ええと、ラシェメンという国は、とにかく未開の部族社会で、それでも善良な国家として、サーイの対抗勢力となっているわけですな。上級クラスのハスランになるためには、ラシェメン人、もしくはラシェメン人の子孫である女性という条件があって、レベル2以上の秘術呪文とレベル2以上の信仰呪文の習得、さらに《エスラン》という特技を習得しなければならないそうです』

ヒノキ「《エスラン》とは?」

NOVA『「未経験」という意味のラシェメン語です。つまり「純潔な巫女」って感じですな』

ヒノキ「日本のアニメ風に言うなら、魔法少女か」

NOVA『そして、ラシェメン国内では仮面魔女でいなければならないので、女聖闘士のイメージもついて来ますが、国外で修行の旅に出ている間は仮面の装着義務から解放されるとのこと。ともあれ、《エスラン》を経て魔女の世界に入門したレベル1ハスランは、腹心として《エスラン》の侍女か、バーバリアンの従者を得ることができます。また、故郷にいる場合に限って、周囲の精霊の助けで呪文を事前準備なしに《地域魔法》として掛けられます』

ヒノキ「D&Dの呪文は、あらかじめ準備して記憶した呪文しか掛けられないのが基本じゃからのう」

NOVA『ソーサラーやバードは例外ですが、とにかく知ってる呪文を準備なしに使えることは、融通が利く使い方ができるということですね。あと、秘術呪文と信仰呪文のどちらかをその都度選んで術師として成長できますし、月に関する専用呪文も覚えることができます』

ヒノキ「まるでセーラームーンか」

NOVA『あとは、呪文とは別にフィアー(恐怖)の擬似呪文能力を得ることができますね』

ヒノキ「魔女として、相手を威圧することができる、と」

NOVA『とにかく、従者を従えた仮面の魔女というキャラに萌えを感じるなら、お勧めの上級クラスだったのかも。フレーバーとしては、「未開の魔法の国から来たプリンセス巫女」になるわけですから、お付きの少女か、用心棒の蛮人が付いてくる魔女っ子として、もっと3版の時期にプッシュすべきキャラだったか、と』

ヒノキ「しかし、今の5版ではなれぬのじゃろう?」

NOVA『ラシェメンはソード・コースト地域じゃないですからね。あと、擬似呪文能力をフィアーではなくて、魅了するチャーム系だともっと萌え属性が高まるのですが』

ヒノキ「相手を恐れさせる特殊能力は、うまく活用するとザコ戦を回避できて得じゃぞ。にっこり微笑んでいるけど、その笑顔が恐ろしいというような演出がなかなかに楽しそうじゃ」

 

★ルーンキャスター(ルーン文字の刻み手)

 

NOVA『こちらは信仰呪文の使い手が育てばなれる上級クラスです。レルムのルーン文字は、ドワーフジャイアントが起源だと言われていて、信仰呪文の力をルーンの中に秘めて、それに触れたり、一定の条件を達した際に発動することができるというもの。これによって、マジックアイテムや魔法のトラップを作成することができるわけですね』

ヒノキ「それはアイテム作成系の職業か。以前に語っていたアーティフィサーや錬金術師の系譜になりそうじゃな」

NOVA『3版はその辺のルールがしっかり構築されていますからね。一番簡単なのが、魔法のスクロール(巻き物)です。冒険の合間にスクロールをいっぱい作って貯めておき、冒険中の呪文の使用回数を増やすというプレイが可能。ただし、アイテム作成にはお金と経験点の消費が必要なので、その辺の兼ね合いを考えないといけないわけですが』

ヒノキ「しかし、巻き物はそれを読めるキャラでないと使えんのじゃろう?」

NOVA『ですね。だから、レベルが上がると、巻き物以外のアイテムを考えるわけですよ。複数回使える杖とか、他の仲間が使える指輪などのマジックアイテムに発展させる。一方、ルーン文字を刻んだアイテムは、ルーン文字に触れると発動するのが基本なので誰でも使える。最初は1回だけの使いきり効果ですが、キャスターのレベルが上がると複数回使用できるルーンアイテムとか、1日辺りの使用回数を決めてパワーの再充填を可能にしたり、アイテム職人としていろいろ工夫ができるわけです。もちろん、基本は信仰呪文使いなので、アイテムを作るだけしかできないことはありません』

ヒノキ「アイテム加工能力を持った神官ということか」

NOVA『3版はアイテム加工ルールが充実している反面、アイテム種別ごとに特技を習得しないといけないので、ポーションか、武器防具か、杖か、指輪か選ぶことになる(万能の職人は、冒険で役立つ特技を犠牲にするのでNPC向き)。しかし、ルーンキャスターだったら、既存のアイテムにルーンを刻み込むだけだから、習得特技が《ルーン文字刻印》だけで済む。一回だけ使える「ヒーリングストーン」を仲間全員に2個ずつ配るとか、1日1回「サイレンス」の効果を発揮するベルトとか、アイデア次第で呪文効果のアイテムを考えるのが楽しいわけですな』

 

レルムの定番クラス

 

NOVA『ここまでは、割と特殊な背景を持った上級クラスですが、残り3つは比較的、定番に近い面々です』

ヒノキ「定番とは、よくある一般的なもので、ありふれているということかの?」

NOVA『話のネタとしては、つまらない感じですが、割と扱いやすい初心者向きの上級クラスだと思います』

 

★ギルド・シーフ

 

NOVA『盗賊ギルドに所属している盗賊ということで、2版までだと当たり前すぎるクラスなんですが、3版のローグはギルドに所属せずに、独学で忍びの技を習得したり、師匠から1対1で伝授したケースも考えられますからね。5版では、シーフがローグのサブクラスになっているように、後付けでシーフならではの特殊能力を習得することも可能だし、レンジャーみたいな別クラスから盗賊ギルドに参入するという選択もありです』

ヒノキ「で、ローグにないシーフならではの特殊能力とは一体?」

NOVA『まずは「二枚舌」です。〈はったり〉〈交渉〉〈符丁〉の技能に+2ボーナスですね。技能ポイント6点を節約して、他の技能に回すことができますが、美味しいのはレベル2とレベル4です』

ヒノキ「何がもらえるのじゃ?」

NOVA『ボーナス特技が1つずつです』

ヒノキ「意外とつまらん」

NOVA『まあ、どんな特技を選ぶか次第だと思いますが、D&D3版の場合、特技って最初に1つもらえて、その後は3の倍数レベルに1つしかもらえません。ソード・ワールドだと奇数レベルに1つなので、15レベルで8個もらえるわけですが、D&D3版は同じレベルで6個しかもらえない。しかし、ファイターは最初に1つ、以降は偶数レベルごとに1つボーナス特技がもらえて、15レベルだと14個、さらに種族が人間でも1個もらえて、15個になる。つまり、ファイター専業はボーナス特技のおかげで、いろいろカスタマイズもできるし強くもなれるのです』

ヒノキ「特技が多ければ多いほど強いわけか」

NOVA『何を選ぶかにもよりますがね。その一方、魔法使いのウィザードは通常にもらえる特技に加えて、5レベルごとに1つボーナス特技がもらえます。これを使って、アイテム作成特技や呪文修正特技などを得て個性化するのがウィザードの呪文以外のカスタマイズ法。そして、そういう特技でのカスタマイズが行いやすいのが、剣と魔法の基本職と言えるファイターとウィザードの特徴と言ってもいい。逆に、ローグは技能ポイントをいっぱいもらえるけど、特技はボーナスがありません』

ヒノキ「だから、特技が欲しければファイターを、技能が欲しければローグを選ぶのが3版の育成のセオリーじゃな」

NOVA『ええ。上級クラスへの条件を満たすために、どの特技とどの技能を何レベルで習得したらいいのかを考えるのが、3版の熟練プレイヤー。しかし、それは置いておいて、ギルド・シーフの美味しいのは、技能ポイントを多くもらえて、かつボーナス特技が2つ付いて来るという長所があります。

『ギルド・シーフが選べる特技リストはいろいろあるのですが、その中でも美味しいのは《統率力》。この特技があれば、ギルドの手下が付いて来るのですよ。これに、レベル3と4で得られる名声合計+2を加えると、部下がどんどん増えて来る。クラシックD&DやAD&Dだと、レベル9や10に達したシーフには部下が勝手に付いて来ます。しかし、3版のローグにはそういう特典がない。じっさい、一匹狼とか、冒険者シーフとして放浪生活を楽しみたいシーフにとっては部下なんて邪魔です。盗賊ギルドの幹部になることだけが人生じゃないと思うプレイヤーにとっては、部下なんて無用の長物と考えがちです』

ヒノキ「つまり、3版以降は選択の自由があるわけじゃな。組織に所属して社会的地位を獲得する道もあれば、自由な冒険者稼業を続ける道もある」

NOVA『まあ、クラシックD&Dでもコンパニオンルール以降はそういう選択肢があったわけですが、領主やギルドマスターになると、いろいろ特典が与えられる。しかし、そういう定住生活を捨てると、自由以外の特典がない。だから、3版以降は自由な冒険者を基本だと考えて、組織に所属する道を上級クラスとして設定したわけですよ』

ヒノキ「おお、だからローグも盗賊ギルドに所属する道もあれば、神殿所属の密偵になる道もあり……他に何があったっけ?」

NOVA『魔法を覚えてアーケイン・トリックスターになっても良し、武芸を極めてデュエリストになっても良し、異世界に旅立ってホライズン・ウォーカーになるのも良し、ただひたすらローグの道を極めるのもありですね。で、ギルド・シーフはクラシックD&Dで当たり前だったギルド幹部になるオプションです。部下を持つとか、組織を率いるとか、そういうキャラを億劫がらないプレイヤーなら選んで然るべきだと思いますね』

ヒノキ「だったら、レルム以外でも活用できる上級クラスじゃな」

NOVA『まあ、ダンジョンに潜って延々とモンスター退治で遊び続けたいプレイヤーには必要ないですけどね。盗賊ギルドとの関わりが重要なキャンペーンだと分かった時点で、だったらギルドの一員になろう、と決めたらいいわけだし、場合によると、どこかの領主の専属密偵という道もあるでしょう』

ヒノキ「そういう上級クラスはあるのか?」

NOVA『普通に騎士団に入って、世間ズレした悪漢騎士を気取るというのもありか、と』

 

★パープル・ドラゴン・ナイト(紫竜騎士

 

NOVA『コアミア国のパープル・ドラゴン騎士団を表現した上級クラスですが、その後、レルム以外でも使える標準的な騎士として戦士大全にも載ってますし、5版でも、どの世界の騎士でも汎用的に使えるサブクラスとして推奨されています』

ヒノキ「何ができるんじゃ?」

NOVA『部隊の指揮官として、周囲の仲間を奮起させて攻撃ボーナス+1を与えるところから始まって、援護アクションで味方のACを+4できたり(通常は+2)、演説で味方をさらに鼓舞したり、威圧によって敵にフィアーの効果を与えたり、怒りの誓いで1体の敵に対する挑戦を仕掛けたり、指揮能力が非常に高いクラスとして設定されていますな』

ヒノキ「盗賊の転職先としてふさわしいとは思えんな」

NOVA『だったら、最後になりますが、次の上級クラスがお勧めです』

 

★ハーパー・スカウト(ハーパーの斥候)

 

NOVA『ハーパーは昨年の映画「アウトローたちの誇り」の主人公エドガンが過去に所属していた組織です。基本はバードの上級職ですが、レルムを代表する正義の秘密結社として、悪の陰謀を探るスパイや冒険者として活動している集団の一員です』

ヒノキ「主人公は、どうしてハーパーをやめたんじゃ?」

NOVA『この組織がボランティア団体で、一生懸命に働いても生活が楽にならず、出来心で任務の途中に盗み出したお宝が原因で敵組織に足がついた。そして、最愛の妻を敵の報復で殺されてしまい、もう得にならない正義はこりごりだ、自分と愛する家族のためだけに生きようと決断したわけですな。ハーパーは確かに正義の理想を掲げた集団なんですが、行き過ぎた正義がテロリストみたいに騒ぎを引き起こすとも見なされ、レルムの権力者の間では賛否両論あったりしますし、ハーパー内部でも一枚岩じゃなくて、複雑な思惑の違いで対立関係が描かれています。いやあ、バルダーズ・ゲートでもなかなか酷い目にあった』

ヒノキ「と言うと?」

NOVA『俺は正義のパラディンとして、ソードコーストの秩序と平和のために真面目に活動していたんですよ。それなのに、ハーパーの奴ら、俺のことを邪神の子だと難癖つけて、妙に敵意をむき出しにして来る』

ヒノキ「事実、そういう話だったのではないか?」

NOVA『あとで、バルダーズゲートの主人公は公式に「アブデル・エイドリアン」という名前が付けられて、レルムの歴史設定に組み込まれるのですが、まあ、公式とは関係ない俺の物語では、パラディンNOVAというキャラ名でハーパーの一員だったドルイドのジャへイラ姉さんに監視されたりしながらも、俺の正義と勇気とカリスマで疑惑もはね除け、バルダーズゲートに巣食う悪の陰謀を叩き潰して、その後、南のアムン(オームー)でいろいろあって、中断した物語がこれです』

ヒノキ「続きをプレイする予定はないのか?」

NOVA『さすがに古いパソコン(Windows XP)を今さら立ち上げるのもどうか、と。もう一度、記事を読むと少し未練が生じましたが。何にせよ、この記事があったからこそ、AD&Dや3版の資料を活用できたりもしたわけで。4版の時期は、こういうD&D系コンピューターゲームも流行らなかったなあ、と』

ヒノキ「初代BGとBG2はAD&D2版対応で、20年を経たBG3は5版対応とは、歴史の流れを感じるのう」

NOVA『ともあれ、改めて上級クラスのハーパー・スカウトを見ると、バードの知識関連とレンジャーの得意な敵といった特殊能力と、専用呪文、神の名にちなんだST修正が与えられて、またハーパー専用のアイテム作成特技がもらえるなど、細かい複合職という感じですね』

ヒノキ「戦闘職ではないのじゃな」

NOVA『ハーパーの得意分野は、情報収集と隠密探索みたいですね。呪文も交渉系や運動系、知覚系、潜伏偽装系といったところで、派手な戦闘に使える力術系はありません』

ヒノキ「暴力的な組織ではない、と」

NOVA『元々は、英雄伝承を語り伝えるバードの互助団体が前身みたいですね。ハープ弾きという名称からも詩人、楽人の組織なのは明らかですが、レルムの世界では他のD&D世界と比べても、バードの社会的評価が高いそうです。英雄伝承を伝える彼ら自身が、武勇を備えた英雄と同一視されたり、知恵ある賢者や軍師と見なされることもあるとか』

ヒノキ「まあ、バードは元来、何でも屋であるからして、戦闘技術も見識もそこそこ身につけておるからのう」

NOVA『世故に長けて、表の世界の情報操作も得意ですからね。そして、ハーパーの目的は各地の英雄伝承を集め、知識として保存することが第一義です。そのため、ハーパーの活動を支持する知識人、賢者、文化人も多く、大魔法使いエルミンスターや善良な領主が後援していたりして、レルムの平和を守る民間互助団体の顔も持っているそうで』

ヒノキ「冒険者パトロン組織にも向いているわけじゃな」

NOVA『レルムには、ソード・ワールドみたいな冒険者ギルドはありませんので、誰が冒険のネタを提供するかはシナリオ次第って感じです。大都市ではコネが活用できますし、開拓都市では街の開拓担当の役所が設けられていたりしますね。近場のトラブル解決を、成功報酬という形で腕自慢にアウトソーシングするのが、最初の「プール・オブ・レイディアンス」の仕組みで、ソード・ワールド冒険者ギルド設定も、その辺の設定を発展させたと思われます』

ヒノキ「それが全てではなかろうが、アレクラスト大陸の地域別の展開の仕方は、フォーゴトン・レルムを参考にした点が多いそうじゃからのう」

NOVA『ドラゴンランスを参考にロードスが、フォーゴトン・レルムを参考にソード・ワールドが展開していったと考えられますね。で、エベロンを参考にソード・ワールドの2.0が作られたとも考えられますが、さすがにその時期になると、参考にできるゲームも数多いので何か一つだけが元ネタと決めつけるのも短絡的でしょうが』

ヒノキ「バルダーズ・ゲートが、日本のFF7を参考にドラマ傾向を高めたとの話も聞くのう」

NOVA『主人公が過酷なめに遭うのも、どこかラブコメ要素が取り入れられたりしていたのも、その影響か。プレイ当時は、つなげて考えてなかったや』

ヒノキ「そりゃあ、プレイ時期が大きくズレておるじゃろうからな。お前さんがFF7をプレイしていたのはいつの話じゃ?」

NOVA『当時は、ゲームのフットワークが軽い方でしたからね。発売直後の97年ですよ』

ヒノキ「アメリカでも同じ年に英語翻訳され、人気を博しておった」

NOVA『そりゃあ、翌年インターナショナル版が逆輸入されて、日本でも字幕付きバージョンとして発売されるほどですからね。バルダーズゲートは1998年発売か。俺がプレイしたのは4〜5年後のことで、FFは10とか12をプレイしていた時期だから、FF7とバルダーズゲートの関係は考えたこともなかったや』

ヒノキ「しかし、FF7のリメイク作品や、バルダーズゲートの最新作3が20年以上を経て、同時期に話題になるのは、経緯を考えると面白いのう」

NOVA『さすがに、デジタルゲームに関するフットワークは昔よりも鈍くなりました。今はもっぱらスパロボDDか、アナログTRPG懐古かゲームブックぐらいしか追いかけていないですね』

ヒノキ「ドラクエ3リメイクはやっておらんのか」

NOVA『それよりも、ドラクエ12はいつになることやら』

 

3版の上級クラスと、5版のサブクラスの関係

 

NOVA『今回の記事の最後に、改めてレルムの上級職が、5版でどうなっているかを確認すると、パープル・ドラゴン・ナイトとルーンキャスターしか見当たらないですね』

ヒノキ「5版では、ハーパーになれぬのか?」

NOVA『ハーパーはサブクラスではなく、「組織の工作員」という背景で表現する形です。3版の上級クラスの一部は、所属組織の違いを表現したもので、例えば、教団所属の戦士、盗賊、魔法使いでそれぞれのクラスを表していましたが、5版だといずれも既存のクラスに「侍祭」もしくはターシャ本のパトロンに関するルールを使って「宗教系組織」の特典を付与するといいでしょう』

ヒノキ「5版は『既存クラス+背景』で、3版の上級クラスを表現できるのじゃな」

NOVA『まあ、プレイヤーとDMのアイデア次第ですね。3版の上級クラスみたいに、サブクラスをいたずらに増やさない方針と言われていました。その分、5版は膨大なデータ量を誇る3版や4版とは違う形でシンプルな多様性を模索したわけですな。いずれにせよ、熟練者は3版のルールを参考に、5版に合わせたレッド・ウィザードやハスランなんかのサブクラス・データを自作したりもするのでしょうけど』

ヒノキ「そう言えば、昨年のドラゴンランス本でも、『ソラムニア騎士はサブクラスではなく、背景データだ』と言っておったな」

NOVA『よく覚えてましたね。つまり、キャラ個人の能力を付与するのがサブクラスで、所属組織や社会的立場などを表現するのが背景という形に分けられて、世界観に合わせて背景用の特技なども追加されていくのが5版です。個人的には、「ソード・コースト冒険者ガイド」よりも情報が濃い「新5版対応のフォーゴトン・レルムのワールドガイド」が出て欲しいな、と思っています』

ヒノキ「その前に、新5版のコアルールが揃って邦訳されるのが先じゃろう?」

 

NOVA『では、上級クラス話はひとまずこれぐらいにして、次回はレンジャー話の続きに行きます。あるいは、バーバリアン話に寄り道するかもしれませんが。個人的には、レンジャーのライバルが昔はパラディンだったけど、4版以降はバーバリアンだと考えていますので』

(当記事 完)