花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

魔神ハンターの、続・葡萄酒ミッション(SWミストグレイヴ2ー4)

神殿改修計画

 

GM(ヒノキ)「前回、お主たち〈烈火団〉は『【蛇の酒蔵】でワインを買ってくる』というミッションを引き受けた」

デル(リトル)「宿屋を営むレジスタンス組織〈銀の蜜蜂〉の表の仕事の手伝いで、信用を稼いでいこうってことだなぁ」

ホリー(シロ)「コヨミやミサの信用を得るためにも、このミッションは何としてでも果たさないと。ホリー姉さんは見た目が怖くても、優しくて頼りになる良い人だってことを証明してみせる」

デル「どうして、姉さんはそこまであの娘たちに執着するんだよぉ」

ホリー「これもTRPGのテクニックの一つなんだよ。物語でキャラ立ちする方法は、いくつもあるけど、大切なのは他のキャラとの絡みだな。自分一人でどれだけ設定を濃くしても、それは実際のプレイでは独り善がりに過ぎないことがある。物語というものは、一人で紡ぐものではないからな。プレイヤーキャラ同士のコミュニケーションや、NPCとの関わりが物語を紡ぐんだ。それにホリーの性格に『矜持:弱者を見捨てない』『裏執着:魅力的な女性は無視できない』というのがあってだな。幼女とは弱者であり、魅力的な女性である以上は、ボクが彼女たちに執着することこそが、ロールプレイの王道なんだ」

デル「う〜ん、オラはホリー姉さんのことを『勇気ある人だから尊敬してる』って思っていたけど、最近の振り切れた言動を見ていると、見る目を変えてもいいんじゃないかなぁ。アリナ様、こういうキャラ同士の関係性って変えるルールはないのぉ?」

GM「そうじゃのう。ビルドブックで設定された要素はあくまで初期段階のもので、物語が進展するにつれて、実情とはそぐわなくなることもある。プレイ中により良い関係性が見つかった時には、GMとの話し合いの末に、『キャラ成長時に新たに置き換える』ことを選んでも良かろう」

デル「よし、このミッションを果たした後で、ホリー姉さんとの関係性を見つめ直すんだぁ」

GM「ヒヒヒ、人間関係の危機というやつかのう。まあ、物語の進展で、キャラ同士の関係性が変化することはよくあることじゃからな。今のセイバーも、仲間の絆云々と言っていたことが嘘みたいにギクシャクしていて、その代わり、おふざけコメディエンヌじゃった編集ガールの芽依嬢が『倫太郎ラブなテンションマックス仕切り役』という一時のノリを忘れたかのように『主人公を心配する真っ当なヒロイン』と化しておる。たった一月でここまで変わるのもストーリー転換のダイナミズムと言えようか」

ホリー「うう、大事な弟分のデルに嫌われてしまったのか、ボクはそれが心配だよう」

G太郎(ゲンブ)「ところで、アリナ様。一つ相談があるのでござるが」

GM「ほう、お主も何か考えたことがあるのか?」

G太郎「うむ。前回、我らが探索した【亡者の神殿】を【解放された神殿】として、拠点にするという方針であったが、ライフォス神殿をここに堂々と復興させるというのは、蛮族世界では甚だ危険だと考える。そこで、表向きはここを神殿ではなく、【烈火団の本部】という形にして、我らが運営管理するというのではどうだろうか?」

GM「【烈火団の本部】じゃと? それはまた、大胆な申し出じゃのう」

G太郎「人族の神殿が復興という形だと、隣に位置する煌びやか卿も警戒するでござろう。神殿が〈解放軍〉の前線基地として警戒されるような形は、我らとしても今後の活動に支障をきたす可能性が大きい。そこで、蛮族にも名が知れ渡ってきた〈魔神ハンター・烈火団〉が、神殿に巣食う亡者を退治して、ここを拠点に定めて、人族の奴隷をこき使って本部を立ち上げたという表向きの体面を整えれば、人族蛮族ともに納得できるのではあるまいか。もちろん、煌びやか卿にその旨を打診して、我らに害意がないことを示すとともに、〈解放軍〉のマルクスにも『実質は前線基地であるにしても、表看板は偽装しないと過剰に敵意を煽るだけ』と諭して、協力関係を崩さない旨を伝える。すなわち、人蛮双方の激突を我ら烈火団が間に入ることで、当面は爆発しないように調整するわけで」

GM「むむ。しかし、そのような展開はシナリオには記されていないからのう」

G太郎「ルール上の裏付けが必要なら、考えたでござる。2.0時代の名誉点ルールに『住宅の獲得』というのがあって、みんなで合わせて名誉点150点を支払えば、我らは食費や宿泊費用を払わずに住める〈中規模の邸宅〉を構えることができる。一人当たり50点なら払えるでござろう」

デル「それで、オラたちが自由に寝泊まりできる家を持てるようになるのかぁ?」

G太郎「購入価格は2万ガメルでござるが、それは元々あった建物であり、我らが解放した場所でもあるわけだし、〈解放軍〉に建物の修繕費用を見繕ってもらえれば問題なかろう。元々、神殿として復興させる計画でもあるならば、グレンダールとライフォスの共同神殿という形をとってもいいだろうし、地上ではグレンダールを祀り、地下ではライフォスを祀ることにすればいいのではないか。ちょうどデルは、グレンダールの神官でもあるのだし」

デル「ただの家ではなく、グレンダールの神殿をオラが営むということかぁ。そいつは凄ぇ」

G太郎「グレンダール神殿でもあるのだから、屈強な兵士が体を鍛える場として、出入りしてもおかしくはあるまい。まあ、いきなり軍事拠点にまでエスカレートしては、警戒を煽るだけなので、まずはじっくり既成事実を積み重ねて、蛮族の警戒を緩めながら、タイミングを見計らう必要はあるでござろうが」

GM「購入価格の2万ガメルは〈解放軍〉がまかなうとして、運営維持費が月5000ガメル必要となるのじゃぞ」

G太郎「我らの現在の収入からすれば、それぐらい払うこともできようが、ここでもう一つ、名誉点を1人25点支払うことで、家付きの『有能な金庫番』を雇うことができる。ルールによると、『家の留守を預かり、資産運用の才に長けており、自身の資金はおろか、住宅維持に必要な金銭までも何らかの方法で稼ぐので、運営維持費用を払う必要がなくなる』とある。この金庫番として、メル嬢を指定するというのではどうであろうか?」

ホリー「メルが?」

G太郎「ルールによると、『プレイヤーが望んでGMが認めるなら、留守を守る最愛の異性や両親、旧知の親友だとしてもかまわない』のが金庫番。彼女なら、ライフォス神官見習いでもあるし、我らの本部の管理運営を任せても支障あるまい」

ホリー「つまり、本部に帰れば、いつでもメルが明るい笑顔で『お帰りなさい❤️』と出迎えてくれるんだな。それは賛成だ。帰る場所があるってのはいいものだ」

G太郎「……と言うことで、アリナ様、1人当たり75点の名誉点を払うことで、我々は【解放された神殿】を【烈火団の本部】(中規模の邸宅、有能な金庫番)として共同購入するという提案でござるが、いかがなものであろうか?」

GM「む。プレイヤーがそこまでルールブックをチェックして考えたのじゃから、反対する理由はないのう。ただ、『シナリオには書いていない展開のゆえ、慎重に吟味は要する』ので、結論は今回のミッションが終了して、キャラ成長時に下すとしよう。それと条件として、煌びやか卿とマルクスの両方の認可を得た上で、ということになろうな」

G太郎「もちろん、そのつもりでござる。重要なのは、我らが地図の中心の便利な区画に拠点を持てて、そこがNPCと交流できる日常の憩いの場になって、〈解放軍〉と蛮族の直接の接触や戦闘を避ける、あるいは先延ばしにする方法論でござるから、あくまで人蛮双方の権力者に話をつけて、我らが仲介役として立ち回ることを優先するわけだ」

GM「わらわとしては、PCが滞りなくミッションやクエストを続けられるなら、否やはないのじゃが、名誉点ルールで蛮族領に拠点を持つという発想は盲点じゃった」

G太郎「これも、名誉蛮族として人蛮両方に顔の利く存在となったマッスルG太郎ならではのロールプレイでござるよ」

 

酒蔵への道(裏切りの密偵

●ミストグレイヴ上層階の地図

(青字は拠点および宿泊可能地点。赤字は目的地。

 緑字は新規に記入。青いラインは安全ルート)

 

蛇の酒蔵ー凱旋門ー?

(梯子) (魔窟)

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コボルドー金床ー ? ー ?

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     大水車ー解放の煌びやかな 

      l  神殿  大通路

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   物乞い市場ー 騎獣ー水没通路

    (蜜蜂) 調教所 (梯子)

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     肉の穴ー処刑遊戯場

    (解放軍) 

GM「さて、現在は13日めの夕方じゃ。お主たちは物乞い市場にいるのじゃが、ここからどう動く?」

G太郎「普通なら、夜の旅は避けて通るのが人族の常識でござるが、地下世界には昼も夜も関係ないし、我々は暗視能力などで、夜を気にせず行動できる。このまま北へ進んで、【コボルド窟】にたどり着いたところで休息をとる、という形で問題なかろう」

デル「では、まず夜に【大水車】に来たぁ」

GM「1Dを振れ」

デル「4出たぁ」

GM「ランダムイベント発生じゃの。(密偵との遭遇じゃが、誰と出会うかは2Dを振って……この出目はドワーフ娘のアムか。前と同じじゃと、つまらないので振り直して、またアム。ええい、さらに振り直しじゃ)」

ホリー「アリナ様が何度もダイスを振っておられる。相当に厄介なイベントなのか?」

GM(ええい、5回振って、4〜6しか出んとは、このダイスはダメじゃ。そして、やっと出たのは3。むっ、これはとうとう来たか、ヒヒヒ)

デル「今度は、急に邪悪な笑顔になったぁ? 一体、何が発生するというんだぁ?」

GM「お主たちの前に、バルカンの可愛い女性が現れる」

ホリー「バルカン? 可愛い? それは同族の姿をしている者として、是非ともその可愛さの秘訣を聞きたいぞ。ええと、お姉さま、と呼べばいいのかな?」

GM「外見からは判断しにくいが、設定年齢は22歳じゃ」

ホリー「ボクは24歳だから、こっちが上だな。だったら、上から目線で振る舞うぞ。おお、そこの小娘。この辺りは危険だから、一人旅はよした方がいい。どこに行きたいんだ? このボクたち〈烈火団〉が同行してもいいぞ」

バルカン娘『〈烈火団〉! 最近、南で活躍しているという有名な人たちですね? あたしはシル・メリル。あなたたちとご同業です』

GM「そう言う娘の指には、密偵の指輪がある。さらに、ちらっと見えた胸元には、騎士神ザイアの聖印が」

デル「ザイアってどういう神だぁ? もしかして、1000%に関係するのかぁ?」

GM「いやいや、全くの無関係。ソード・ワールドの方が先にザイア神を登場させた。2.5では〈奈落の盾神〉イーヴに役割を奪われた感があるが、2.0時代は1冊めのルールブックにも載っていた基本的な大神じゃ。始祖神ライフォスの忠実な盾として仕えた高潔な騎士で、弱者を守り正義と秩序を重んじる格好いい神。その神聖魔法は、騎士の誓いを体現した【オース】や、仲間を守る系統で、守護者(ガーディアン)の呼び声が高い」

G太郎「それにしても……いささか、これ見よがしでござるな。念のため、魔物知識判定を試みるとしよう。達成値15」

GM「……データは10レベル人間の『邪教の高司祭』と同等じゃな」

G太郎「10レベル? そりゃ、一人旅でも問題なかろうが、邪教でござるか」

GM「あくまでデータがそうなっているというだけで、彼女自身の立ち位置がそうだと言ってはおらんからの」

G太郎「何にせよ、彼女の様子をそれとなく観察しておくことにする」

シル・メリル『それで、あたしはルキスラ帝国の密偵で〜、地下で活動しているレジスタンスとの連携のために探り回っているわけ。北の方は大体、見て回ったんだけど、それらしい様子がなかったから、南の方はどうかなあ、と思ったんだけど、ちょうど、あなた達と出会えたことはラッキーだったみたいね〜。まさか、名高い〈烈火団〉の人たちと知り合えるなんて、超感激♪ サインもらってもいいですか〜?』

G太郎「あからさまに媚を売っているではござらんか。怪しすぎる」

GM「お前さんの『どうも〜、マッスル太郎で〜す』も似たようなものと言えたがのう」

ホリー「なるほど。こういうキャピキャピと媚びる振る舞いが、可愛いオーラを発動する秘訣か」

シル・メリル『そうね。言葉の端々にハートマークを付けるといいかしら❤️ 後は、時々ウィンクとかもしてみせて〜』

デル「ザイア神官って、もっと堅物の騎士みたいなキャラだと思っていたぞぉ」

シル・メリル『え? ザイア神官ってバレちゃった? 蛮族にバレたら大変だから、しっかり隠していたんだけどな〜。もしかして、胸元をジロジロ見ていたわけ? 男の子ってすぐこれなんだから〜』

デル「い、いや、オラはそんなつもりじゃ〜」

ホリー「あまり、うちの弟分をからかわないでもらえないか?」

シル・メリル『はい、分かりました、お姉さま。ええと、お名前は?』

ホリー「……ガルダだ。こいつはデルモンテで、腕組みしてるマッチョなルーンフォークは、いろいろな芸名を持っているが、『炎の筋肉ファイター・魔進マッスル』というリングネームが一番、メジャーかもしれないな。それより、北には何がある? 魔窟があるという話なので、興味はあるんだが」

シル・メリル『う〜ん、南の話と交換かなあ。有名なあなた達だから、レジスタンスの拠点とかリーダーの話って、聞いたことがない?』

G太郎「『私の聞いた話では……』と口を挟むでござるよ。『蜂という名の組織が北にあって娼婦街を営んでいるとか』と地上の話を口にするでござる。『北の娼婦街、聞いたことはござらんか?』」

シル・メリル『娼婦街? そんな物は地下にないけど』

G太郎「『チッ、騙されたか。あの情報屋め、信用ならん……』と毒づくでござる。そして『レジスタンスが仮に南にあるとしても、巧妙に隠れているのでござろう。我らは南をくまなく探したが、それっぽい存在は一つも見当たらなかった。我らの目が節穴でなければ、それは北にあるのでござろう……と思っていたが、北でもないとなると、地下水路か、深層階にも足を伸ばさねばいけないと見える。難儀なことよ』とぼやくでござるよ」

シル・メリル『ふ〜ん、南にも見つからないのか〜。一応は信じるけど、情報屋に騙されるってことは、あなたの目も節穴かもしれないってことよね』

G太郎「否定はしないでござる。まあ、レジスタンスがあろうと、なかろうと、我ら〈烈火団〉はこの地に拠点を構えて、バルバロスの社会で成り上がってみせる。そう、煌びやか卿との交渉で後ろ盾を得れば、我らは名誉蛮族として確固とした地位を築くことも可能。このまま名もなき密偵として使い潰されるのがいいか、それとも力を付けて、金も地位も名誉も欲しいがままにするのがいいか、考えどころでござろう」

シル・メリル『あなた……密偵の仕事を放棄するつもり?』

G太郎「私は密偵でござらんよ。確かに、ここの二人は密偵の命を受けてはいるが、私は地上の霧の街から来たマッスル太郎、ただのお笑い芸人でござる。密偵には密偵の道理があると共に、芸人には芸人の道理があろう。互いの道理をしっかり歩めば、よろしいのではござらんか」

シル・メリル『……密偵の道理かあ。フフ、面白いことを言うのね、お笑い芸人さん。あたしにはあたしの道理がある。バルバロスの社会で力をつけて成り上がるというあんたの夢、応援してるわね。じゃあ』

GM「そう言うシル・メリルの目に、G太郎は地上のレジスタンス組織〈月夜蜂〉のアリアドネに似た暗い輝きを感じた。決して純粋無垢とは言い難いが、力への飢えと渇きを満たそうとする一途で貪欲な野心、そして一線を踏み越えた者の目じゃな」

デル「彼女にレジスタンスの情報を伝えていたら……」

GM「シナリオのネタバレになるが、レジスタンス組織は壊滅する。このミストグレイヴが、彼女に対する復讐譚になる可能性だって、仕込まれていたわけじゃ」

ホリー「同じバルカンの姿をした者として、ボクが彼女に感情移入する可能性もあったわけだな」

GM「彼女のキャラは、力に溺れて、身も心も蛮族に成り果てた女騎士の悲劇というテーマ性を帯びていて、本シナリオのダークな一面を象徴している一つじゃ」

 

酒蔵への道はつづく(最後の密偵

 

GM「シル・メリルとの遭遇は夜。そして、深夜になって、お主たちはさらに北の【無限の金床】に来た。1Dを振ってマイナス1せよ」

ホリー「今度はボクが。1」

GM「イベントは発生せず。続いて夜明け前」

G太郎「【コボルド窟】へ向かうでござる。ランダムイベントダイスは6」

GM「また、密偵との遭遇じゃ。新顔じゃの。バジリスクの姿をしたシャドウ族のオスカル・バロー。ルキスラの密偵じゃが、これで5種類いる密偵が全員、出そろったことになる。オスカルは、『翠将ヤーハッカゼッシュに近づくために、勲章集めをしている』そうじゃ」

G太郎「勲章でござるか。黒鉄と真鍮なら持っているが」

オスカル『そんな安いのではダメです。最低でも白銀騎士、できれば黄金近衛、そして翡翠親衛隊でないと』

デル「ええと、オラたちが持っているのは、黒鉄剣士と真鍮戦士で、あとは何があるんだぁ?」

オスカル『真鍮の上は、赤銅勇士ですね。ぼくもそこまでは持っているのですけど、白銀以上になると、なかなかレアで手が出ません。もしも、あなた方がレア勲章を手に入れたなら、是非とも譲って下さい。そうすれば、貴重な情報をお教えしますので』

ホリー「例えば、どんな情報があるんだ?」

オスカル『そうですね。では、これは密偵仲間として知っておいてもらった方がいいので、伝えておきましょう。「シル・メリルという女は、人族を裏切り、蛮族のために働くことを誓ったそうです。元はザイア神官だったのが、宗旨替えして偽りの神ソーンダイクに転向した」という密偵仲間の噂です』

デル「ソーンダイクって?」

GM「人を惑わせて、狂気に陥らせる神と言われておる。誘惑神、幻影神、陰謀神とも呼ばれる惑いと偽りの神格じゃな」

G太郎「堅物のザイアとは真逆の方向性でござるな。真面目すぎる人間ほど、衝撃的でドギツい蛮族文化にさらされてカルチャーショックを感じた挙句、偽りこそ真実だと悟りを開いた気持ちになって、道を踏み外したのやも知れぬ。人、それを洗脳という」

GM「まあ、人間である以上、人生経験から少しずつ考え方も変化するのが当然じゃし、何かのきっかけで見直したり、幻滅したりするのもよくあることじゃが、その中で自分にとっての大切なものや生き方の指針となる価値観を時に迷い悩みつつも、コツコツと築き上げていくもの。

「しかし、その変化があまりにも急激で、それまで持ってきた価値観を根本的に崩壊させ、違う自分に生まれ変わってしまうことを、一般的に『洗脳された』と見なしたりする。自我喪失の危機(アイデンティティー・クライシス)とも関連づけられ、自分を支えるものがなくなったために、強固な意思を持つものを依存対象として心酔したり、刹那的な生き方に埋没してしまったり、などなど」

ホリー「その気持ち、ボクには何となく分かるような気がする。G太郎には、お笑い芸人としての矜持がある。デルは、グレンダール神官として自分を鍛え、誰かを守りたいという意志がある。だけど、ボクには何もない……」

デル「そんなことはないと思うぞぉ。姉さんにはイノセントがいるじゃないかぁ」

ホリー「ん? イノセントか。確かにそうだな、ボクには【以心伝心】でつながった相棒、イノセントがいる」

GM「イノセントとは『純粋無垢』という意味じゃが、ピュアに比べると、単純で幼い無邪気さがあって、成熟していない、幼稚な、世間知らずというニュアンスもあるらしい。つまり、ピュアな性格は100%の褒め言葉じゃが、イノセントな性格は『純粋なんだけど、お人好しすぎて騙されやすい、ちょっと天然の入ったおバカ』で、子供相手なら褒め言葉、大人相手なら何だか頼りない、という感じのようじゃの」

ホリー「すると、イノセントが悪い奴に騙されないように、ボクがしっかり面倒を見てやらないとな」

デル(気をつけてみないといけないのは、イノセントじゃなくて、ホリー姉さんの方だと思うんだけどなぁ)

G太郎「とにかく、勲章コレクターのオスカル殿には情報を感謝しつつ、借りはいつか返したいと告げよう。そして互いの道に幸運を、と言って別れるでござる。時刻は夜明け前なので、こちらはコボルドの宿を求めるゆえ」

オスカル『こちらは宿に泊まった後でして、今から出発するところですので。ではまた、ご機嫌よう』

 

交易ベルトへの夢

 

GM「こうして、オスカルと別れたお主たちは、コボルド窟の宿屋に泊まった。宿代は1人50ガメルで、ホリーのみイノセントの分まで負担してもらおうかの」

G太郎「アリナ様、ここの宿代でござるが、50G分の値打ちのある黒鉄剣士勲章4つで払うわけにはいかぬか?」

GM「むっ。ガメル硬貨を使いたくないと言うのか?」

G太郎「ガメルは煌びやか卿と付き合う際に、どうしても必要になる上、アイテムよりも入手に手間どるでござるからな。安価な勲章なら、パーティー資産として宿代ぐらい払うのも惜しくはない。しかし、個人のガメルを支払うとなると、ホリー嬢ちゃんがイノセントの分で負担が大きくなるのは見るに忍びない。こう見えても、私は嬢ちゃんに庇護欲を感じているので、金銭的負担は緩和してあげたいと思う」

ホリー「G太郎、お前……何て有益な存在なんだ」

GM「急に、キャラの性格ロールプレイにこだわり始めおって。まあいい。ここの主人であるオードル・プルは、煌びやか卿ほどガメルにこだわっているわけではないからのう。アイテムの売買が、ガメル以外の物々交換で行える以上、宿代もそれに準じるものとする」

G太郎「では、黒鉄勲章を4つ支払った。ところで、ここでは特に追加情報やイベントはないでござるな」

GM「うむ。奴隷にされているコボルドを連れ帰るまでは、オードル・プルの完全な信頼は得られない、というのがシナリオの記述になっておる。もっとも、オードル・プルは以前に話したように霧の街の地上に詳しく、G太郎に期待を寄せているのも確かじゃ。そちらが誠意を見せてくれるなら、冒険のパトロンになってくれるのは間違いない」

G太郎「では、『今、抱えている仕事が完遂したら、まとまった金が入る予定なので、それで煌びやか卿のところで、奴隷とされたコボルドを買って来よう』と計画を打ち明けるでござるよ」

オードル・プル『奴隷の購入費用は、コボルド1人2000ガメルと聞いています。さすがに、それだけの料金を負担いただいても、私どもはお礼を差し上げられませんが』

G太郎「なあに、金は天下の回りもの。金で人々の笑顔と信用が買えるなら、お笑い芸人としては喜んで支払いたい。それよりも、このマッスルG太郎、一つの大きな夢があるでござる」

オードル・プル『夢でございますか?』

G太郎「そうとも。この地下世界は、地上に比べて交通の便が悪すぎる。我々は最近、南の【肉の穴】と【物乞い市場】の間に、安全に通行できる交易路を構築した。できるなら、その交易路を拡張し、この【コボルド窟】や【煌びやかな大通路】まで、ランダムイベントに煩わされることのない自由で安全なミストグレイヴ交易ベルトを設立したい。それには、あなたの協力も必要となる。この場所は北の魔窟を探索する際の重要拠点となり得るゆえ、我らが近々建設予定の【烈火団の本部】から安全に通行できるなら、これからの仕事も大いに捗ることとなろう」

オードル・プル『ミストグレイヴ交易ベルトでございますか。確かに大きな夢ですが、人族とバルバロスの世界、それにバルバロス同士でも、煌びやか卿と我々のような弱小種族の間では、多くの確執がありまして、単純につなげますと、諍いの元になるかもしれません』

G太郎「そこで、我々〈烈火団〉が間に入るのでござる。我々の目的は、あくまで交易と買い物をしたい者が安全に歩ける道の確立。それを邪魔する者は、このマッスルG太郎たちが力をもって成敗いたす。

「煌びやか卿も、商売の利益が得られるならば交易ルートの確立には反対するまい。しかし、オーガである彼の立場では、人族やコボルドと協力することなどできぬであろう。この交易ベルト構想は、人蛮のしがらみを持たぬ自由人である外様の我らだからこそ成し遂げられるもの。もちろん外様ゆえ、信頼と人脈はこれからコツコツ築かねばなるまい。それに我々は商売の専門家ではないゆえ、道だけ作って守ってみても、行き交う商人がいなければ無意味でござる。その点では、商売の専門家の意見も必要となろう。ぜひとも知見をお貸しいただきたい」

オードル・プル『むむむむむっ。何というか、さすがは、あのザバーラ様の元で働いていた御仁というか、貨幣神ガメルの祝福を受けたかのような発想の冴えというか、何ともスケールが大きすぎて考えが付いて来ん。実現すれば、このミストグレイヴの分断された状況が一変する商業革命というか、地下世界に大規模経済圏が誕生するというか、どこまで夢物語が広がるのやら、という気分だが、できるならば、煌びやか卿のところへは当面、そのルートはつなげないように頼む。あそこは知ってのとおり奴隷交易を是とするため、人族やコボルドにとっては奴隷商人が自由に通行できるとなると、収奪されるのが関の山』

G太郎「言われてみれば、確かにそうでござるな。ならば、その点は煌びやか卿との交渉材料に使うとしよう。我らの交易ルートでは奴隷商人の往来を禁じるものとするゆえ、見つけ次第、排除する。もしも、煌びやか卿が奴隷交易を禁じるならば、我らの交易ルートの使用を許可するとか、そんな感じか」

オードル・プル『そんなことで、煌びやか卿が奴隷交易をやめるとは思えんが』

G太郎「まあ、いずれにせよ、我らの要望を伝えた上で、交渉が決裂するなら、武力闘争ではなく経済戦争を仕掛けるという手はあるでござるな。その場合の後ろ立ての一人になっては下さらんか? 少なくとも、【物乞い市場】と【コボルド窟】の間は交易ルートをつなげるってことで」

GM「……やれやれ、ゲンブよ。お主は一体、何をしたいのじゃ? TRPGで経済圏を確立とか、ソード・ワールドをどういうゲームと思っておる?」

G太郎「いや、いささか貿易ルートの確立とか、昔の『トラベラー』の宇宙商人ルールや、ボードゲームカタン』など違うゲームのイメージが暴走したようでござるな」 

カタン 商人と蛮族版 (拡張版) ボードゲーム

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GM「何にせよ、地図上の青い道で〈烈火団〉が安全に通れるルートを拡張するところまでは認めよう。しかし、一般の交易商人が自由に往来できるほどの規模ともなると、個人単位の冒険者が街道の整備や警備を賄えるとは思えんし、それを実現できるほどの権力を得ようと思えば、相応の爵位をヤーハッカゼッシュから認定されねば不可能じゃろう。まあ、オードル・プルはG太郎のホラ話をニコニコ聞きながら、適度に持ち上げつつも、上手く宥めて、とりあえずはコボルドの奴隷を一人連れてきて、その上で現実を見よう』と落ち着かせる」

G太郎「私が神を信じないルーンフォークでなければ、ガメル神のプリーストになって、ガメラーと呼称するであろうものを」

 

そして蛇の酒蔵へ

 

GM「G太郎の夢話のあと、眠りに就いたお主たちは、14日めの朝、食事を済ませて【コボルド窟】を出発する」

G太郎「う〜ん、いい夢を見たでござる。では、ここから北上して、ついに目的地の【蛇の酒蔵】へ到着しよう」

GM「その前にランダムイベントチェックじゃ。1Dで4以上で発生するぞ」

デル「1なので、平和に到着だぁ」

GM「ところで、今、改めてシナリオをチェックし直したのじゃが、お主たちはワイン樽を運ぶための荷車を引っ張って来ておる」

G太郎「うおっ、突然、荷車がポンッと出現したでござる」

GM「いや、さすがにそれはないと思うので、そうじゃのう。ビシャナが前もって連絡しておいて、オードル・プルが荷車を用意してくれていたことにしよう」

ホリー「それって、別にG太郎が交易ルート構想をあれこれ言わなくても、2人の間で十分やりとりできてないか?」

GM「まあ、オードル・プル配下のコボルド伝令が走り回って、連絡ぐらいは回しているのじゃろうな。決して安全な任務とは言わんが、コボルドはすばしっこくて逃げ足だけは速い反面、非力なので、大掛かりな荷物の運び屋には向かないということで」

G太郎「ところで、ワインの代金は預かっているのでござろうか?」

GM「その辺の交渉は既に成立していて、ワイン3樽をただで荷車に乗せてくれる。酒蔵の主人であるラミアのシメーヌと、髪の蛇を帽子で隠したメデューサのメルキナは、以前に会ったお主たちに顔をしかめながらも、客人と知ると事務的な応対に終始して、たちまち作業が完了する」

G太郎「う〜ん、樽の一つぐらいは運んであげたいでござる」

ルキナ『余計なこと、するな。これは、あたしの仕事。手助け、いらない』

G太郎「おっと、小さな親切、大きなお世話でござるな。仕事や作業に誇りを持っている者に、下手な手出しはせぬのが作法、と」

GM「仕事の段取りがあるのに、それを無視して勝手なことをされると、かえって手が狂うということもあろう。気心の知れた仲ならともかく、日頃のコンセンサスがとれておらん間柄なのに、余計な手出し口出しをされると、不愉快になるケースもあるということで。しかし、もう一人のシメーヌがG太郎に声を掛ける」

シメーヌ『マッチョなお笑い芸人さん。親切心を押し売りしたいのだったら、一つ頼まれてくれないかね。ビシャナさんに頼まれたワインは3樽なんだけど、あと2樽ほど別のお客さんに配達してもらいたいんだよ。自分で取りに来てくれればいいのに、面倒くさがって来てくれないんだ』

G太郎「そんな輩は放っておけばいいものを」

シメーヌ『そうすると後々、もっと面倒になるからさ。バルバロスの力関係ってものがあるんだよ。★1つあげるからさ』

G太郎「だったら、引き受けたでござる。それに、ここには地下水路に降りる梯子があるわけで、彼女たちと仲良くしておくと、後の探索で梯子を使いやすくなると見た」

シメーヌ『引き受けてくれるかい。行き先は……(コロコロ)【岩棚の城塞】のゴブリン王のところさ』

G太郎「ゴブリン王でござるか? その城塞とやらは何処に?」

 

 それは、魔窟のある【戦神の凱旋門】を越えた先、2マス東の区画であった。

 果たして、〈烈火団〉はゴブリン王とうまく交渉することができるだろうか?

 それとも交渉決裂して、ゴブリンスレイヤーの道に踏み込むのであろうか?

 

 また、 マッスルG太郎の夢「ミストグレイヴ交易ベルト構想」は果たして実現するのであろうか?

 シナリオに書いていることと、書いていないことが交錯して、新たな物語が発生し得る状況に、作者の空想妄想回路が止まらない。

 なお、革命物語から一転、大経済圏構想に流れる元ネタ小説はこれらだったりも。

【合本版】岳飛伝(全17冊) (集英社文庫)

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(当記事 完)