別世界のダークハンター(ソード・ワールド編)
リモートNOVA『D&Dのレンジャー話から発展した3版の上級クラス話です』
ヒノキ「レンジャーの上級クラスの話をするつもりが、3版の上級クラス全体を見渡そうとしているわけじゃな」
NOVA『あくまで俺の手持ちのサプリの範囲ですけどね。でも、これが無謀な試みであることに今、気づきました』
ヒノキ「と言うと?」
NOVA『3版のDMGには6種類。3.5版には、さらに10種類加えて16種類。これならリストアップするのも問題ない。しかし、続いて「戦士大全」を改めてチェックすると、上級クラスが36種類も載ってました』
ヒノキ「そんなにあるのか!」
NOVA『今回、数えてみるまでは「いっぱいあるなあ。大体20種類くらいかな」と何となくの見積もりを立てていたんですが、じっさいは想像の倍近かった、と。それを全部紹介しようと思えば、3記事ぐらい書けると思うんですよ、「戦士大全」だけで』
ヒノキ「他に『秘術大全』『信仰大全』『冒険者大全』までを持っておるのじゃな」
NOVA『それで職業本は一通り網羅したと思ったら、さらにその後、「魔道師大全」「無頼大全」「勇者大全」が翻訳されて、そこまでは諸事情で買えなかったのですな』
ヒノキ「それでも手持ちのサプリだけで、100を軽く越える上級クラスが語れるわけじゃな」
NOVA『今回は、レンジャーに合わせて「戦士大全」と「冒険者大全」までを語ってから、4版と5版のレンジャーを語って一区切りと考えておりましたが、大全シリーズを一気に語るのは無謀かもしれない、と思ったりします』
ヒノキ「ところで前回紹介したダークハンターじゃが、最近出たソード・ワールドのサプリでも、同名のダークハンターが追加職として登場したそうじゃな」
NOVA『今年は夏が蛮族サプリで、秋が奈落サプリとなってますね。蛮族サプリは2.0時代のサプリのアップデートに追加蛮族が加わる感じでしたが、奈落サプリは全くの新展開。何だかアルフレイム大陸の東のウルシラ地方で、魔神と奈落の力を操る「魔域帝国」の侵略が始まって、人族と蛮族の両方にとっての脅威となっているようです』
ヒノキ「その辺の設定を、うちの『魔神ハンター』リプレイとつなげると面白くなりそうじゃな」
NOVA『元シナリオの「ミストグレイブ」は10年前のシナリオでしたが、今年、作者の川人くんが亡くなったことで、プレイすると哀しみがこみ上げて来るので触れないようにしていたんですけどね』
ヒノキ「しかし、いつまでも放置したいわけじゃないだろう?」
NOVA『ええ、まあ。でも、やりたいことの優先がゲームブックのFFだったり、D&Dの過去回想だったり、FEAR社の振り返りだったりするのが今年でした。何となく、気分がソード・ワールドではない、という一年でしたな』
ヒノキ「趣味ブログじゃから、書き手の気分が乗らないことを義務感で続けるのもどうかと思うが、わらわは『魔神ハンター』の決着を切望しているとアピールしておくぞ」
NOVA『で、ソード・ワールドの新サプリの追加職業のダークハンターとアビスゲイザーですが、前者は文字どおり「闇の魔神を狩る仕事」で、自らのHPを削って各種の補助効果を発動できる職業。元のコンセプトが投擲武器の得意な戦士職とのことですが、そこから発展してエンハンサー的な戦士補助の能力が増えた感じですね』
ヒノキ「デルニール辺りに習得させるといいかもしれん」
NOVA『まあ、テーブルBの補助技能なら、既存の戦士技能と効果がかぶって、どっち付かずということもなさそうですけどね。ダークハンターの設定が『魔神ハンター』の物語にしっくり来るのもありますし、導入したくはあります』
ヒノキ「もう一つのアビスゲイザーはどうじゃ?」
NOVA『奈落魔法を使う魔法使いなんですな。こちらは途中導入が難しそうというか、2.0時代のシナリオだと〈アビスシャード〉が手に入らないから、奈落パワーで術の効果を拡張するという特徴が発揮できない。うちのリプレイだと、相性がよろしくないのは明らか』
ヒノキ「うむ。2.5のコンセプトは、2.0時代の〈剣の迷宮〉に加えて、〈奈落の魔域〉と異世界への探索じゃったから、ようやく初期コンセプトでやりたかったテーマに踏み込んで来た感じじゃのう」
NOVA『これまでは、2.0のたどった道を踏襲しつつ(アイテム本、モンスター本、魔法本で過去データをアップデートしながら新要素を加える形)、2.0の飛空艇の代わりに魔動列車や魔法学園といった要素を追加したり、冒険者ではないギルドに非所属の無法者(ヴァグランツ)を導入したり、異なる大陸の文化文明を描いてきました』
ヒノキ「2.0の主舞台であるテラスティア大陸は、ルキスラ帝国とアイヤール帝国の2大国家がそれぞれの地域の覇権をとって、割と近世ヨーロッパが近代に移り行く帝国主義の萌芽が見られた感じじゃ」
NOVA『戦争にまでは至っていませんが、国家間の謀略なんかも背景にありましたな。まあ、人同士の争いよりは、拡張主義の帝国が蛮族領との境界線で武力衝突をしたり、蛮族側のスパイが人族の帝国に侵入したり、冒険と国家の陰謀劇というのがテラスティアのメイン物語だったと思います。
『一方、蛮族に支配された大陸レーゼルドーンでの新規開拓物語とか、大陸の地域を広げる展開もあって、異世界からの侵略のドラゴンレイドがちょっとしたクライマックスだったかな。その後、歴史を遡って、古代魔法文明も紹介した後で、版上げが行われた』
ヒノキ「2.0の10周年で2.5がスタートして、新大陸アルフレイムは帝国主義の覇権争いよりは、アメリカ開拓みたいなノリで、海と鉄道と荒野のイメージが強い。蛮族は相変わらずの敵だけど、それよりも奈落と魔神の脅威が前面に出てきて、大陸の北側が奈落の領域で壁を作って封鎖している」
NOVA『壁を破って侵入しようとする魔神の軍勢を阻止することが目的のキャンペーンシナリオとリプレイもありました』
ヒノキ「魔神は、人族と蛮族の共通した敵じゃから、蛮族キャラをプレイできるサプリを出した後は、奈落との戦いにフィーチャーするというのは納得できる展開じゃ」
NOVA『人族と共闘する蛮族という物語も作れますし、蛮族社会は人族以上に一枚岩じゃないから、蛮族内部の抗争劇は人族以上に激化して派手になる傾向がありますね』
ヒノキ「人族は法を重視する傾向が強いので、悪事は密かに働くのが普通だが(露見すると官警に裁かれる)、蛮族はヒャッハーするのが当たり前というか、力を示した者が尊敬される一方で、弱者は死ね、人権など知るか、負けたら奴隷として這いつくばれって社会じゃからのう」
NOVA『ある意味、強くなるモチベーションが人族以上に高い。あと、人の社会は金持ちが強いですが、蛮族社会は貨幣経済が未発達なので、貨幣相当の物々交換アイテムが独自に設定されているわけですな。その中で先進的な蛮族のトップは、人族の貨幣経済を試験的に取り入れたりもしているようですが、その一例がミストグレイブだと』
ヒノキ「ともあれ、今年に入ってから、ソード・ワールドは2.0時代の後追いから発展して、奈落と魔神、異世界への旅という新局面を迎えているということじゃな」
NOVA『できれば、それをテーマにした長編リプレイ(単行本にして3冊は越える)を出して欲しいですが、今はサプリ紹介の単冊、もしくは上下編で終了しがちです。10シナリオ以上の長編リプレイ(キャラもそれだけ成長する)は、もう商売にはならないのかな』
ヒノキ「読みたければ、ネットにいろいろ転がっているじゃろうし、文章のリプレイよりも動画配信の方が今の主流じゃろうしな」
NOVA『ともあれ、前置きソード・ワールド話はこれぐらいにして、D&Dに戻ります』
3.5版のDMG上級クラス
NOVA『3版のDMG収録の上級クラス6種類(魔法射手アーケイン・アーチャー、暗殺者アサシン、影の踊り手シャドウダンサー、鉱人守護者ドワーブン・ディフェンダー、暗黒戦士ブラックガード、学匠ローアマスター)を、前回はさらっと紹介しました』
ヒノキ「種族専用が2つと、悪専用が2つ。一般的にプレイヤーキャラとして使いやすそうなのが、シャドウダンサーぐらいかのう。ローアマスターは冒険者というよりは、元冒険者が引退した後に目指す職という感じじゃし」
NOVA『まあ、DMがNPCとして使うところから始めるのでしょうな。魔法使いの師匠や知識神の司教なんかがローアマスターというのはあり得そう。しかし、魔法使いの究極は次でしょう』
①アークメイジ(大魔道師)
NOVA『転職条件の1つが〈呪文学〉と〈神秘学〉の2つの技能を15ランクまで持つことですが、ウィザードやソーサラーって技能ポイントをレベルごとに2点しかもらえないので、技能ポイントをその2つに注ぎ込むことになります。まあ、技能ポイントには【知力】ボーナスが加算されるので、魔法使いなら+2〜3ぐらいのボーナスが加わるとは思うのですが、ローアマスターの転職条件の一つが「どれでもいいから2つの〈知識〉技能10ランク」なので比較的とりやすいのに、アークメイジはもう専門バカの領域といえますね』
ヒノキ「いや、大魔道師に対して、専門バカというのは失礼ではないか?」
NOVA『たぶん、TRPGゲーマーで例えるなら、D&Dもソード・ワールドもアルシャードも幅広く嗜んでいるのがローアマスターで、これがアークメイジになるとD&Dだけをずっと追い続けて、他のTRPGなど知らん。D&Dこそ元祖にして至高、パスファインダーなど邪道だし、アルシャードなど何がスタンダードじゃ。ソード・ワールドなぞ、しょせんはレベル15までしか楽しめん小物に過ぎん、とか言っているD&D教の狂信者でしょう』
ヒノキ「それはそれで、イヤなゲーマーじゃのう」
NOVA『まあ、今の世の中にはクトゥルフ以外のTRPGに興味を示さないクトゥルフ教信者がいるそうで、でもクトゥルフがどういう神か知らないTRPG初心者がたまたま見た動画配信だけにハマって、ルールブックは買ってないから世界観を知らないという』
ヒノキ「それは信者というのか? ただの動画ファンに過ぎぬと思うが」
NOVA『初心者は世界が狭いから、たまたま見つけた面白いものが世界の全てだと思って、普通はそこから広げたり深めたりするものだけど、深まらないまま偏った知識以上を受け付けなかったりします。まあ、はしかみたいな物ですな。俺も、もしかするとロードス以外のD&Dは認めんとか言ってた可能性もありましたが、D&Dロードスがわずか2年で切り替わって、改めて別システムやソード・ワールドに広がったおかげで、いろいろなシステムに視野を広げることができたという』
ヒノキ「しかし、その反面、TRPG以外のものが目に映らなかった時期があるようじゃのう」
NOVA『TRPG信者なのは認めます。でも、特定のシステムだけで固まっているわけではなくて、広げようと努力はしたのですよ。さすがに全てのシステムを網羅した男と名乗るつもりはありませんが。この世界、奥が深過ぎます』
ヒノキ「何かを極めようと思えば、他が目に入らなくなるのはよくあることじゃから、逆に自分の知らない分野に興味を持っている人間と幅広く付き合うことで、違う世界を見る目を養うことも重要じゃぞ」
NOVA『TRPGでは、それこそが冒険者仲間のパーティということですな。一人一人は小さいけれど、各人の技能を上手く組み合わせれば、ごらん無敵だ、という戦隊理論です』
ヒノキ「一芸を極めれば、他にも応用できる考え方はあるじゃろうが、分かる人間にしか分からん説明や例示しかできんと、世界が狭いと見なされる」
NOVA『分からない人にも興味を持ってもらえるような語り口が広報人には必要ってことで、それにしてもアークメイジへの道は厳しいです。転職条件のその2、「《技能熟練:呪文学》と、2つの系統の《呪文熟練》の特技」は呪文のこと以外は何も考えませんって感じでいいのですが、問題は3つめの「7レベル以上の呪文を発動する能力、および5レベル以上の呪文を5系統以上知っていること」という条件で、最低でもレベル13ウィザードかレベル14ソーサラーの2択。他のクラスに寄り道している余裕は全くありませんね』
ヒノキ「職を転々としているキャラではダメで、魔法使いの一本伸ばしをしないとアークメイジにはなれない、と。究極の魔法使いは他に目移りしてはダメということじゃな。で、そんな究極魔術師には何ができるのじゃ?」
NOVA『高次秘術という技を習得できます。通常呪文をより改変した必殺技クラスの呪文を得られるわけです』
ヒノキ「つまり、炎系と氷系を組み合わせた極大消滅呪文メドローアみたいなものを作れるのか?」
NOVA『そのままの形ではありませんが、呪文を相殺したり(カウンター的に反射させることも可能)、威力を高めたり、属性を自在に変えたり、効果範囲を変更したり、呪文に関していろいろと応用的な使い方ができるようになります。まあ、5版ではソーサラーが普通にやっているようなことも含まれるわけですが』
ヒノキ「3版では呪文修正特技というのもあるじゃろう? 高次秘術とは何が違うんじゃ?」
NOVA『呪文修正特技を使うと、使用する呪文よりも高いレベルの呪文スロットを消費しないといけないのですよ。例えば、2レベル呪文を1つ修正すると3レベル呪文として扱われる。それだけ使用上の負担が大きくなるわけです。しかし、高次秘術の使用にはそういう負担がないので、2レベル呪文を2レベルのままで3レベルの威力で使ったりできるわけです』
ヒノキ「つまり、メラを強化してメラミにするのが呪文修正で、メラのままに強くするのが高次秘術ということか?」
NOVA『大魔王が使うと、弱い呪文でも強くなるってことですね。他にも応用パターンはいろいろ考えられますが、ダイ大の世界では弱い呪文は片手で扱え、強い呪文は両手を使うという演出上の制限があります。だから、片手を失うと最強呪文が使えないという局面があったりするわけですが、D&DのルールではMPではなくてレベルごとの呪文スロットを消費するという仕組みです(呪文レベルごとに回数制限がある)。どのレベルの呪文スロットが必要かで呪文の使い勝手の良さが変わってくる。弱い呪文でも、高いレベルの呪文スロットを消費することで強化することも可能ですが、大魔道師の高次秘術は弱い呪文を、スロットを余分に消費せずに威力を上げたりできるわけです』
ヒノキ「とにかく、過剰に気合を入れなくても、普通に威力強化できるということじゃな」
NOVA『まあ、ルールブックにある呪文を普通に使うのが初心者で、熟達した術師は呪文を自分流にアレンジして局面に合わせた使い方ができるということですな。そういう応用能力を極めた先が大魔導師だと』
ヒノキ「『バカな。ファイヤーボールがこの距離まで届くはずが……』とか、『ファイヤーボールなのに、電気ダメージだと!?』『貴様に炎が通じないのは分かっていた。だが、わしは呪文の属性を自在に変えることができるのだ。したがって、貴様の弱点を突くことなど容易いこと』とか、そういうプレイも可能と」
NOVA『こういう呪文の性能を修正するのも、D&Dでは3版になって初めて、基本ルールで取り入れた形になりますね。その後、ソード・ワールドも2.0からそういう特技ルールを採用しましたが』
ヒノキ「呪文の効果を応用的に改変して見せるのが、熟練の魔術師の技(魔術師プレイヤーのスキルでもある)で、それを極めたのがアークメイジだと」
②アーケイン・トリックスター(秘術使いの悪戯者)
NOVA『これは、いわゆる魔法盗賊。5版でもローグのサブクラスに採用されているので、今さら特筆することはありませんね。こちらの記事も参考になるか、と』
ヒノキ「3版の上級クラスが5版ではサブクラスとなって、低レベルからでも扱いやすくなったのじゃな」
NOVA『例えば、アーケイン・トリックスターになる条件が「〈解読〉〈装置無力化〉〈脱出術〉の技能7ランク、〈知識:神秘学〉4ランク」「メイジ・ハンドの呪文、および3レベル以上の秘術呪文を扱う能力」「急所攻撃+2D6」ということで、最低でもウィザード5レベルとローグ3レベルの合計8レベルが必要なのに対し、5版はローグ3レベルでかつての上級クラスになることができます』
ヒノキ「転職条件を満たすために、いろいろ考えないといけないのが3版で、今の5版は初期レベルの選択肢から1つを選びとるだけ、という手軽さなのじゃな」
NOVA『基本クラスを育てたゴールが上級クラスというのが3版で(もちろん、さらに続けることも可能だけど)、基本クラスを育てつつ、同時にかつては上級だったサブクラスの特殊能力も並行して習得できるのが5版。え? こんなに早くアーケイン・トリックスターになれていいの? と初めて5版のルールを読んだ時には時代のスピード化に感動しました』
ヒノキ「魔術師と盗賊を組み合わせて魔法盗賊なんて言ってた時代から、盗賊を育てると自然に魔法も覚えてくれましたというゲームになった、と」
NOVA『上級クラスがサブクラスに移ったものとしては、次のも有名ですね』
③エルドリッチ・ナイト(秘術騎士)
NOVA『いわゆる魔法戦士です。クラシックD&Dでのエルフです。3.5版では割と簡単になれる上級クラスで、ウィザード5レベルとファイター1レベルでなれる。戦士側の条件が「全ての軍用武器に習熟」ですから、ファイター以外にもバーバリアン、パラディン、レンジャーならOKです。ただし、クラシックD&Dのエルフと比べて、大きな弱点があります』
ヒノキ「鎧を着ていると、呪文の発動に失敗するということじゃな」
NOVA『革鎧なら10%程度ですが、金属鎧だと30%から40%で失敗。まあ、AD&D時代と比べると、魔法使い呪文を使う者が問答無用で鎧を着られないというルールじゃなくなったのは魔法戦士にとって幸いですな。失敗確率があるにせよ、呪文が使えないわけじゃない。チェインシャツぐらいなら失敗率20%で、それなりの防御効果が得られるし、足りない防御は【敏捷力】ボーナスで補えばいい』
ヒノキ「確か、5版は鎧に習熟していれば、失敗確率なしに秘術呪文を使えるんじゃったな」
NOVA『ええ。エルドリッチ・ナイトはファイターのサブクラスだから、重装鎧にも問題なく習熟しているので、3版よりも鎧を気にせず発動可能です。版が進むにつれて、魔法戦士が扱いやすくなっているわけですな』
④ソーマタージスト(奇跡の召喚者)
NOVA『これは、マニアックな上級クラスです。でも、早ければレベル7クレリックが《呪文熟練:召喚術》を習得して、レベル4呪文「レッサー・プレイナー・アライ」を使えるようになるだけで条件を満たせるわけで、なるのは楽ですな』
ヒノキ「召喚のプロということか」
NOVA『ええ。善の神に仕えるソーマタージストは天使的な存在を、悪の神に仕える者は悪魔的な存在を、他にも自分の信仰する神の属性に合わせた精霊や他次元の存在を召喚し、契約することを旨とするクラスです』
ヒノキ「ポケモンマスターとは違うのじゃな」
NOVA『ポケモンは神の使いではありませんからね。とにかく、信仰心の篤きサモナーと考えるといいでしょう。そして、このクラスをマスターするには、モンスターマニュアルが必須となるわけで、DMと要相談ということになりそうですね。どんな神さまを信仰して、どんな使いを選択するかがポイントになりますから』
ヒノキ「ロードスなら戦神マイリーを信仰して、戦乙女を召喚なんてこともできそうじゃな」
NOVA『割と「次元界の書」なんかの読み込みが必要な上級クラスかもしれません』
⑤デュエリスト(決闘者)
NOVA『カードゲームのプレイヤー呼称とは関係なくて、こちらはスワッシュバックラーとも呼ばれる軽戦士ですね。スワッシュバックラーの方は、5版ローグのサブクラスにもありました』
ヒノキ「どんな特徴がある?」
NOVA『鎧や盾などの防具を装備していないという条件で、回避能力が【知力】ボーナス分、高まるというのが基本で、とにかく軽装での戦いに役立つ技をいろいろと覚えます。〈軽業〉や〈跳躍〉といった機動力を駆使した接近戦が得意なキャラで、ローグやバードといった軽戦士の戦闘能力を高めるクラスですな。あと、アーケイン・トリックスターが護身用に覚えるという手もあります。攻撃能力はファイター並みで、防御さえ【知力】で補えるようならお勧め。そうなると、吟遊詩人か魔法盗賊が派手に活劇で立ち回りたいときに選ぶといいのかな、と』
⑥ドラゴン・ディサイプル(ドラゴンの徒弟)
NOVA『ドラゴンの血が発現して、竜への変身能力が芽生え始めたソーサラーです。転職条件が「〈知識:神秘学〉8ランク」「竜語の習得」「準備なしに秘術呪文を発動する能力」で、ウィザードはダメで、ソーサラーかバードが向いている。早ければ、ソーサラーなら2レベル、バードだと1レベルでも条件を満たせます』
ヒノキ「で、ドラゴンだけあって強いのじゃろうな」
NOVA『ドラゴン・ディサイブル単独だと、弱いんですよ。武器戦闘能力がないけど、体がどんどんドラゴンに近づいてきて、打たれ強くはなります。ボーナス呪文だってもらえます。でも、体が強化されるだけで、戦いの技とか魔法の能力が上がるわけじゃないから、それらの技能はファイターやバーバリアン、レンジャーなども習得して武器戦闘を強化しないといけない。あるいは、呪文を強化するにはソーサラー他をレベルアップする必要があって、基本は魔法戦士として鍛錬しながら、肉体が竜の力を段階的に会得していく、と』
ヒノキ「竜になったからと言って、それだけで強くなれるわけじゃない、と」
NOVA『あくまで素体の能力に、竜の鱗によるACボーナスや、【筋力】向上や、3レベル以降は1日1回ブレス攻撃が撃てるなど、ちょっとした特殊な芸がもらえる程度。他の職業で習得しないと、武器も防具も使えなくて、ショボい威力の鉤爪で素手攻撃を行える程度。だったら、モンクとして拳の力を高める方がいいです』
ヒノキ「ああ。モンクとして修行して、竜の道を進むのがいいのではないか?」
NOVA『モンクの拳の方が、ディサイプルの爪や牙よりも強くなるので、こっちのレベルを上げる意味合いが少ないのですな。ブレスは強いけど、1日1回しか使えないし、せっかくの上級クラスなのに旨みが少なすぎる。ドラゴンの血を引いて魔法戦士として大成できる竜魔人という意味で、ダイ大の勇者ダイみたいなことができるのかと思えば、育成にやたらと手間が掛かって使えない。もしかして、プレイヤー推奨ではないNPCクラスの想定かな、と思いました』
ヒノキ「旧ソード・ワールドでは、竜語魔法を扱うドラゴンプリーストが、NPC専用職として登場しておったが、そんな感じかのう?」
NOVA『とにかく、上級クラスにしてはあまりに弱すぎると思って、3.75版のパスファインダーの方をチェックしたら、立派に強化されておりました。ドラゴン・ディサイプルのレベルを上げると、ソーサラー呪文の発動レベルも連動して上がるようになっていて、ディサイプルを極めるなら魔法能力が向上しないというガッカリ感が払拭。魔法戦士としてはるかに扱いやすくなりましたね』
ヒノキ「そうなると、今度はエルドリッチ・ナイトよりも、こっちが強いということにならぬか?」
NOVA『ダイ大だと、普段は人間で、戦闘時に竜魔人化というフォームチェンジがあるわけですが、ドラゴン・ディサイプルの場合、能力が進化すると、牙が生えたり、鱗が生えたり、翼が生えたり、どんどん人間離れして行って、その半人半竜形態が常態みたいですね。つまり、人間を辞めないといけなくて、人間社会では化け物扱いされるのが普通、と』
ヒノキ「ファンタジー世界だと、異種族はありふれておるじゃろう?」
NOVA『その世界で竜人というものがどれだけありふれているかですな。21世紀初頭ではレア種族でしたが、D&D4版以降はドラゴンボーンという竜人がプレイヤー種族として普通に使えるようになり、ソード・ワールドでも2.0以降はリルドラケンが普通にいる。日常光景、とりわけ大都市だと竜人は普通にいるのが2010年代のファンタジー世界だと考えます。ゴブリンスレイヤーの蜥蜴僧侶も普通に受け入れられていますしね』
ヒノキ「ああ、姿形の異なる魔物っぽい種族が人間社会で差別なく受け入れられる世界観か否かで、生きやすさが変わって来るわけか」
NOVA『あとは、その世界における異種族との歴史背景ですな。竜を神さまとして祭る文化があれば、竜の血を引く勇者は尊敬されますが、竜王が邪悪の化身として恐れられている背景なら竜人は当然、嫌悪されそうです。ドラクエ1〜3は竜が邪悪とされ、4以降のドラクエは竜が神扱い。しかし、作品によっては勇者が悪魔の子扱いされたり、物語の描きたいものによっても変わってくる』
ヒノキ「異種族に対する人間の偏見がどの程度か、公式設定とゲームマスターの見解を確認すべきところじゃな」
NOVA『その上で、偏見の強い社会の場合、フードやマントで異形をさらさないよう変装したり、変身魔法で擬態したりが必要かもしれません。エルドリッチ・ナイトはそういうことを気にしないノーマルな魔法戦士ですが、ドラゴン・ディサイプルの場合はかなり特異なロールプレイが求められるクラスだな、と』
⑦ハイエロファント(大祭司)
NOVA『究極の魔法使いがアークメイジなら、こちらは究極の神官となりますね。アークメイジの高次秘術に相当するような秘儀を習得できて、とりわけ自分の神の信徒に自分の持つ神の奇跡の一部を貸し与えることができるのが特徴でしょうか』
ヒノキ「『汝にこの護符を託そう。これを掲げて祈れば、平信徒の汝にも邪悪な死霊を追い払うことができるだろう。ただし、期限は今宵より1週間。その前に使命を果たせねば、護符の効果はなくなるので、その場合は一度ここに帰って来るといい』といった感じか」
NOVA『どちらかと言えば、NPC向きですね。自分が冒険するのではなく、自分の信徒や弟子に力を与えて、冒険を支援するような役回り。もちろん、自分の治癒呪文の効果を高めたり、敵対神の手先に大ダメージを与えるような技を習得したり、教会の長っぽい能力があれこれ付いて来ます』
ヒノキ「魔法使いの長は引きこもりになりやすいが、神官の長は教団のトップとして社交的でなければならない感じじゃな」
NOVA『魔法使いだって、賢者の学園のトップとか相応の社交を必要とする立場はありますけどね。ただ、神官系の方が布教とか神の威光を知らしめるために表舞台で活動する局面が多いかな。魔法使いは個人的な研究活動を優先する者が多いですから』
ヒノキ「公私で言うなら、公に傾きがちなのが神官で、私に傾きがちなのが魔法使いだと」
⑧ホライズン・ウォーカー(地平線を歩む者)
NOVA『レンジャーの上級クラスという意味では、このホライズン・ウォーカーこそが一推しかもしれません』
ヒノキ「と言うと?」
NOVA『5版のサプリ、ザナサー本ではレンジャーのサブクラスとして採用されました。ただし、3.5版と5版とでは少し意味合いが異なってますが』
ヒノキ「地平線という言葉の定義が違うとか?」
NOVA『ええ。この場合の地平線とは、目に見える土地の向こうの境界線であり、3.5版では究極の旅人、あらゆる土地を踏破して、万能の地形知識を手に入れた、あるいは手に入れようとする者ということになります』
ヒノキ「世界中を旅して回る者ということか」
NOVA『よって、レベルが上がるごとに対応地形が増えていき、そこでの生活に役立つ能力を獲得し、そこに住むモンスターに対する命中とダメージボーナスが得られる。山岳のプロなら〈登攀〉+4とか、地下のプロなら暗視を得るとか、そうやって地形適応能力がいろいろと与えられるわけですな。一度、獲得した能力は他の地形でも使えますので、山岳で得た〈登攀〉ボーナスをダンジョンや森林でも使うことができますので、対応地形が多くなれば、移動や偵察において非常に有能なキャラに育つわけです』
ヒノキ「レンジャーの弱点と言われる『得意地形を離れると性能が発揮できない』を克服するクラスということじゃな」
NOVA『そうして6レベルに達したホライズン・ウォーカーは、この世界の枠から飛び出して、別次元の旅にまで赴き、そこでの特殊地形にも対応するようになります』
ヒノキ「特殊地形とは?」
NOVA『例えば、無重力とか、炎に包まれた精霊界とか、氷の世界とか、いろいろな例が挙がっていますが、炎世界のプロは火炎に対する抵抗力が付きますし、とにかく、その異世界を探索するうえでのペナルティーが軽減されるんですね。究極のホライズン・ウォーカーはこの世とあの世のあらゆる世界を見て来て、サバイバルして来たと言えるわけです』
ヒノキ「それが3.5版。では、5版の方は?」
NOVA『レンジャーを育成すれば、完璧ではなくても対応地形は増えて行くんですね。だから、ホライズン・ウォーカーの特徴は異次元の探索に特化します。彼らは別名、次元戦士とも呼ばれ、異次元からの侵略者から自分たちの世界を守るために、次元門を探したり、その管理をしたり、異次元のトラブルを解消するために戦ったり、次元の力を利用して瞬間転移したり、要するに多元世界好き推奨のクラスなんですな』
ヒノキ「それは新兄さんがハマりそうじゃな」
NOVA『分かりますか』
ヒノキ「さもなければ、プロフィールに『次元界の書』など貼り付けんじゃろう」
NOVA『とは言え、俺はインドア志向ですからね。アウトドアのレンジャーとは興味が違います。書物の中の異世界冒険には惹かれても、現実に冒険したいとは思いません。冒険など書物かゲームか映画で十分。大事なのは、ワクワク空想を刺激する物語です』
⑨ミスティック・シーアージ(神秘の術師)
NOVA『究極の魔法使いはアークメイジ、究極の神官はハイエロファント。それに対して、両方の呪文を極めようとしているのが、ミスティック・シーアージです』
ヒノキ「ローアマスターは違うのか?」
NOVA『ローアマスターも、秘術魔法と信仰魔法の両方を扱えますが、彼らの本分は知識なんですね。呪文に限らず、知識全般を追求する。だから、ローアマスターのレベルを1レベル上げると、秘術か信仰のどちらの成長をするか、その都度、選ばなければなりません。バランスよく成長させるなら、成長速度が半分になります』
ヒノキ「どちらも選んでいいが、1度に選べるのは片方だけ、ということか」
NOVA『しかし、ミスティック・シーアージはレベルアップの度に、秘術系と信仰系の両方の呪文を同時習得できます。欠点は、呪文以外の特技や能力までは習得できないこと。例えば、クレリックのターン・アンデッドの能力を高めたりはできませんし、ウィザードが5レベルごとに得るボーナス特技は得られません。つまり、ミスティック・シーアージは魔術師の呪文も、神官の呪文もどんどん習得できるのですが、それを応用して改変するような技は覚えられない呪文バカということですな』
ヒノキ「本はいっぱい読んで語れるけど、自分では物語をオリジナルで語ったり、アレンジしたりはできないということか」
NOVA『ゲームマスターで言えば、市販シナリオはいっぱい集めているけど、シナリオを自作できないようなものですな。まあ、公式シナリオが充実しているゲームならそれでも問題ないのでしょうけど、コレクター気質ではあってもクリエイター気質でない趣味人?』
ヒノキ「例えが分かりにくいが、魔術師だろうと神官系であろうと、呪文はどんどん覚えるので使い勝手はいい。ドラクエやFFの賢者に相当するが、他の特技は習得できない、と」
NOVA『ウィザードリィで言うなら、アイテム鑑定できないビショップとかですが、コンピューターゲームだと、そもそも呪文のデータを改変したりできるゲームって少ないですからね』
ヒノキ「単体魔法を全体化したり、発声が必要な呪文を精神集中だけで使えるようにしたり、呪文をアイテムに封じて、魔法の杖を作成したりするような応用技が使えないと言うことじゃろう?」
NOVA『応用能力は欠如してるけど、とにかく呪文に関する暗記能力だけは傑出していて、魔術師魔法も信仰魔法もどんどん覚えていける究極の呪文使いではある、と。あと、ウィザードには使い魔がいて、術者のレベルアップに応じて強くなるのですが、ミスティック・シーアージのレベルを上げても使い魔は強くならない、と』
ヒノキ「そういう呪文以外の特殊能力を捨てて、呪文の道だけを追求したクラスということじゃな」
⑩レッドウィザード(赤の魔術師)
NOVA『これが最後になりますが、フォーゴトン・レルム専用の悪役クラスですね。かの世界には、サーイという魔法帝国がありまして、魔法による専制政治で世界を征服しようと、常に陰謀を張り巡らせているという設定です。最近では、この映画でも敵ボスとして描写されていました』
ヒノキ「普通のウィザードと何が違うのじゃ?」
NOVA『刺青(いれずみ)の力で、自分の専門家した系統の魔術をさらに強化できるのと、円陣魔術という儀式に参加することで、強力な魔術を発動できます。あと、レッド・ウィザードの慣習として、剃髪を要求されます』
ヒノキ「スキンヘッドか。外見の自由はないのじゃな」
NOVA『ハゲじゃないレッド・ウィザードを探すのは、ガリガリに痩せた相撲取りを探すのと同じぐらい難しそうですね。彼らは慣習に従わない徒弟に対して、甘くはないので、厳格な処分を下すと思われ。ともあれ、俺が見たことのあるサーイのレッド・ウィザードのイラストは全てハゲです。ヒゲはOKですが、髪は剃らないと』
ヒノキ「そこまでして、悪役のレッド・ウィザードになりたい者がどれだけいるかは知らんが、強いのか?」
NOVA『まあ、優秀な魔術師だとは思いますよ。で、ここまで来て、3版の「フォーゴトン・レルムワールドガイド」をチェックしたところ、そっちにも上級クラスがありました。アークメイジ、ハイエロファント、レッド・ウィザードの3職がかぶっていますが、他に10職あるので、次の記事は「フォーゴトン・レルムの上級クラス」にしてみようか、と思います』
ヒノキ「まあ、大全シリーズよりも少ないのであれば、記事にもしやすかろう」
(当記事 完)