花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、D&Dを中心に世紀末前後のTRPGの懐古話を不定期展開中。

アーティフィサーと銃器の話(withゴブスレ話2ー2)

前置きゴブスレII(第2話)

 

リモートNOVA『前回に引き続き、ゴブスレIIとD&D職業のアーティフィサーのコラボ話だ』

ヒノキ「アニメは、生意気な少年魔術師が未熟な冒険者として、多くの視聴者のヘイトを集める話じゃな」

NOVA『慢心した冒険者が、ゴブリン相手に楽勝とナメてかかって、手痛い教訓を得て反省するという意味では、5巻(アニメでは劇場版)の令嬢剣士と同じようなプロットなんですね。ただ違うのは、エピソード主役の性別と、それから彼の背景がゴブスレさん、および女神官さんの過去のトラウマを再発させるように設定構築されている点。とりわけ、このエピソードから、原作者が物語をゴブスレさんの過去編であるイヤーワンにつながるように意図していたと思しき点を、改めてアニメ2期から汲みとることができました』

ヒノキ「確か、お前さんはTRPG化に際して、ゴブスレの1巻〜10巻、それとイヤーワンの既刊分(2巻)を一気読みしたんじゃよな」

NOVA『ええ、当時はロードス復活の盛り上がりがあったのに、刊行が遅れて春から夏になったので、その熱気を全てゴブスレに注ぎ込んだ形です。1巻を試し読みして、その根底に80年代のオールドスタイルなTRPGゲームブックホビットや指輪などのファンタジー小説のパロディ要素が濃密に流れているのに、決してパクりではなく、影響は受けつつも巧みに新境地を構築した「懐かしくも新しい芳醇なワイン(ちょっと腐りかかっているけど、だからこそ甘くてほろ苦い)」の香りを味わって、原作刊行の3年遅れで追っかけ始めました』

ヒノキ「もしも、ロードス新刊が予定どおり春に出ておれば、ゴブスレにハマる可能性はなかった?」

NOVA『いや、きっかけはTRPGが先ですから、そこから原作を読んでた可能性はありますが、それでも勢いがついたのは、俺の高まっていたロードス愛を見事に受け止め得る作品になっていたことですね。このパッケージを見れば分かるように』

ゴブリンスレイヤー TRPG サプリメント 限定版 (GA文庫)

ロードス島戦記 灰色の魔女 ORIGINAL EDITION (角川スニーカー文庫)

ヒノキ「各キャラの配置が見事にパロディとなっておるのう」

NOVA『ええ。もちろん、オマージュではありますが、これを安易にパクりと言ってしまう輩は物を知らない証拠。と言うのも、元ネタのロードスも、ゴブスレのTRPGも版権はグループSNEにありますし、今のゲームデザイナーも同じですからね。どっちもサポート雑誌は同じこれでしたし』

ヒノキ「他人の権利を有するものを許可なく盗用する行為がパクりであって、自社の関連商品を流用する行為は決して盗みにはならんからのう」

ゲームマスタリーマガジン第9号

ヒノキ「それにしても、今の後継雑誌には、ロードスもゴブスレも綺麗さっぱり消えてしまったのう」

GMウォーロック VOL.11

NOVA『今期のアニメに際して、少しぐらい関連記事があってもいいのに、と思いながら、もはや小説原作者も売れまくり状態になったので、TRPGの方の世界観フォローを気軽にできる余裕がないのかなあ、と思いますね。個人的には、このリプレイのくもさん担当キャラが誰なのか、そろそろ答えを教えて欲しいと思うわけですが』

ヒノキ「最近のTRPG関連商品はこれじゃったか?」

NOVA『一応、今年の春に出たばかりで、既刊のルールブックとサプリメントに、くもさん書き下ろしの新作シナリオとメタルフィギュアを同梱してパッケージ化したものです。おそらくアニメ2期記念の関連商品として企画化されたものだと思いますが、タイミングが半年ほどズレたのかな、と感じております。あと、SNEが雑誌で特に宣伝することもなく、初心者セットと言いながら、限定生産になったのも不思議。初心者が限定生産のグッズ品に手を出すとも思いにくいし、TRPGに注目してるファンなら、とっくにルールブックやサプリを購入済みだろうから、どの層を狙った商品なのか、いまいち不明。それでも本気で売るなら、2期アニメの立ち上げ期の今こそがいいタイミングだと思うんですけどね』

ヒノキ「確かに、アニメ2期の序盤は、冒険者ギルドに初心者が集まってきて云々という話を展開しておるのう」

NOVA『感想としては、「舞台となる建設予定の訓練場が、ゴブスレさんの10年前に滅ぼされた故郷の村の跡地に築かれた」という背景と、「姉をゴブリンに殺されたという少年魔術師の事情(とどめを刺したのはゴブスレさん自身だけど)」とが重なって、これまで戦闘機械のようにゴブリンを殺しまくって平気だったゴブスレさんがトラウマを刺激されて、アニメでは初めて感情をさらけ出した点がインパクト大だったなあ、と』

ヒノキ「主要人物のゴブスレと女神官が、少年魔術師との関わり合いを通じて、それぞれの過去のトラウマに向き合うドラマ作りじゃからのう」

NOVA『あと、俺としては、アーティフィサーと絡めたネタがないかなあ、と思ってたので、ドワーフさんの工具がゴブリンに盗まれた件とか、ゴブスレさんがトロールにぶつけた〈火の薬〉なんかが関連づけられそう、と思った次第』

 

D&Dでゴブリンスレイヤーを再現するなら

 

NOVA『さて、職業を複合させるマルチクラスが普通のソード・ワールドやゴブスレTRPGに則るなら、ゴブスレさんの職種はファイター兼レンジャーと確定できるし、原作のイヤーワンでも、受付嬢が彼の冒険記録用紙を書き込む際に、戦士と野伏が1レベルずつだと確認している。その後の成長を踏まえるにしても、ファイターとレンジャーは確実に持っているわけですな』

ヒノキ「ゴブリン以外のモンスターの名前はちっとも知らんから、セージ技能は持っているように思えんが、それでも時折り妙な知識を持っておるのう」

NOVA『炭鉱夫から聞いたとか、何でもかんでもゴブリン退治に応用できるかもしれん、と耳勉強だけはしっかりする、と。あと、字の読み書きは普通にできるし、ゴブリンに関しては、それで研究書を数冊は書けそうなぐらい博識だ。まあ、彼自身は書かないだろうけど』

ヒノキ「で、D&Dでゴブスレを再現すれば、どうなるかということじゃが?」

NOVA『ファイターとレンジャーのマルチクラスにはあまり意味がないと思うので、メインはレンジャーの方でしょう。レンジャーは仇敵となるモンスター種を選んで、追跡や知識判定に有利を得られますので、間違いなくゴブリンを仇敵に選んでいるはず。サブクラスは、別に獣使いではないのでハンター。あと、罠設置や、盗賊ギルドとのコネを師匠の伝手で持っていたりするので、ローグもマルチしていることが考えられます。それらは犯罪者の背景を取得することでも得られますが、別にゴブスレさんは犯罪者ではありませんからね』

ヒノキ「確かD&Dのレンジャーは、魔法が使えたりはせなんだか?」

NOVA『使えますね。レンジャー専用の呪文リストもありますが、その中にはゴブスレさんが使っても問題なさそうな呪文もあります』

ヒノキ「ゴブスレが呪文を使うなど、違和感じゃろう?」

NOVA『まあ、キュア・ウーンズみたいな癒しの呪文や、攻撃呪文を使うと違和感ですね。それらはアイテムを使って、似たような効果を発動させることもありますが』

ヒノキ「そう聞くと、アーティフィサーみたいなところがあるのう」

NOVA『彼のマジックアイテムに関する知識は、イヤーワンの2巻で界渡りの魔女から、知識と数々のアイテムを譲渡されましたからね。それはともかく、レンジャーの1レベル呪文ハンターズ・マーク(狩人の印)なら、ゴブスレさんでも普通に使ってます』

ヒノキ「どんな効果じゃ?」

NOVA『戦闘中に目星を付けた相手に+D6ダメージを与える攻撃補助呪文です。彼が戦闘に入る際に、敵の数を確認し、倒すとカウンティングしているのは、実はハンターズ・マークの呪文を発動する音声要素になってると解釈できます。ハンターズ・マークは1体を倒すと、すかさず標的を切り替えることもできますからね』

ヒノキ「自己バフとか、効果があまり派手でないような補助呪文は、ゴブスレのちょっとした特殊能力みたいに演出して使えばいい、と」

NOVA『まあ、ゴブスレ世界のレンジャーと言えば、妖精弓手も本職のレンジャーになりますが、彼女も劇中では呪文を使えないけど、D&Dのルールでキャラ作りをするなら、レンジャー呪文はあくまでキャラの特殊能力的な演出で使うといいでしょうな。彼女なら、スピーク・ウイズ・アニマルズで動物と話すこともできそうですし』

ヒノキ「そんなシーンがあったかのう?」

NOVA『弓の弦を張る際に、蜘蛛に話しかけて糸を紡いでもらい、その際にお礼を言ってたりしましたからね。少なくとも、蜘蛛とはコミュニケーション可能でした』

ヒノキ「妖精弓手は、弓術特化型のレンジャーじゃから、ゴブスレとは方向性が違うようじゃが?」

NOVA『レンジャーは2レベルで、得意な戦闘スタイルを選べるのですが、ゴブスレは「片手武器戦闘」でダメージ+2、妖精弓手は「弓術」で命中+2のボーナスを得ていると思われ。ただ、意外とD&Dでは妖精弓手にふさわしいサブクラスが見当たらないんですね。ゴブスレ同様、ハンターが無難なのでしょうが、ハンターはサブクラスを選んだばかりの3レベルで、「強敵狩り」「でかぶつ殺し」「群崩し」のどれかを《狩りの技》として選べます』

ヒノキ「ゴブスレなら「群崩し」が妥当じゃろう」

NOVA『ですね。それは1ターンに1体を攻撃した後、同時にもう1体を攻撃できる対複数相手の技です』

ヒノキ「2回攻撃とは違うのか?」

NOVA『2回攻撃だと、同じ敵に2回攻撃することも可能ですが、それは5レベルになっての話。なお、「強敵狩り」は傷ついた敵を攻撃した際、追加ダメージD8を与える技で、結構強力に思えますね。「でかぶつ殺し」は大型の敵に攻撃されたら(命中しようと外れようと)即座に反撃できるカウンター技みたいなもの』

ヒノキ「ゴブスレ一党は、一体の強敵やでかぶつを相手にするよりも、複数のザコをまとめて相手どる局面が圧倒的に多いから、ゴブスレも妖精弓手も「群崩し」を取得していると考えられるのう」

NOVA『そんなわけで、D&Dでゴブスレを再現するなら、ゴブスレも妖精弓手も同じレンジャーで能力が似て来るんですよね。「ええっ!? どうして、私がオルクボルグと同じなのよ?」って声が聞こえて来そうですけど』

ヒノキ「レンジャーには、ファイターのアーケイン・アーチャーに相当する弓の達人的なサブクラスはないのか?」

NOVA『少なくとも、俺が持ってる5版サプリにはないですね。むしろ、3版の方が弓の達人は再現しやすいのかもしれません。『戦士大全』には、弓使いの上級職「オーダー・オブ・ザ・ボウ・イニシエイト」も用意されていて、弓マスターになれますし。そんな3版に比べると5版は弓に特化したキャラは作りにくいと思います』

ヒノキ「ゴブスレよりも、妖精弓手の方が再現しにくいとは意外じゃったのう」

NOVA『近年は、弓よりも銃器が使えるゲームが増えて来ましたし(D&Dでもダンジョンマスター次第で火薬が使用可能)、そもそも魔法による遠隔射撃も5版の初級呪文なら回数無制限で使えるようになりましたので、D&Dで弓を扱うメリットが薄くもなってます。昔(3版)は、弓専用の特技《近距離射撃》《精密射撃》《速射》《束ね射ち》《機動射撃》など強化手段もいろいろあって、強い弓手を作るのが一つのロマンでもあったのですが、5版ではあまり専業弓使いにロマンを感じるようなデータを感じにくくなりました』

 

ヒノキ「ところで、今回はアーティフィサーの話をするはずじゃろう? 今のままだと、レンジャーや弓使いの話に突き進んでおらんか?」

NOVA『では、この辺りでアーティフィサーの話に行きましょうか』

 

アーティフィサーと銃器

 

NOVA『アーティフィサーは21世紀になって、エベロン世界と共に登場した新クラスです。まあ、それでも20年の歴史を持つので、もはや新しいクラスというわけでもないのですが、TRPG業界では旧世紀に出た作品をオールドスクールとして伝統的かつ定番品、2000年以降に出た作品を新規と見なす傾向がまだ根強いですね』

ヒノキ「2000年以降の作品は、マルチバース(多元宇宙)なども含めた大きな世界観の物語を表現できるビッグゲーム(アルシャードとかカオスフレアとか)と、特定ジャンルに特化した狭い世界観のスモールゲームに分かれる傾向がある」

NOVA『忍者アクションと対立流派の抗争劇に特化した『シノビガミ』などのサイコロフィクション・シリーズ(冒険企画局)はスモールゲームに分類されるのかな。スモールゲームは割とニッチ層を狙っていたり、原作ありきの作品が多い感じですね。ゴブスレTRPGもその傾向があるかな』

ヒノキ「四方世界の冒険者ギルドに所属する冒険者を再現したゲームという意味では、広くもあるが、多元宇宙を再現するというには至らない、と」

NOVA『D&Dも元々はダンジョン探索に特化したスモールゲームでしたが、エキスパートルールなんかで世界を広げ、追加ルールで多くのファンタジー小説や現実の歴史の要素をどんどん取り入れることで、世界の全てをD&Dで表現する的なビッグゲームに成長していきましたからね。世界観の拡張という意味では、ゴブスレの世界もD&Dの初期の冒険を踏襲している。牧場のある辺境の街を足場にしながら、たまに砂漠に行ったり、北の海に行ったり、ゴブリンが出たと聞けば遠征することもありますが、必ず最後は牧場に帰って来ますからね。

『で、巻によっては「雪の魔女」とか「迷宮探検競技」とか懐かしいゲームブックネタを出したと思ったら、突然、草原からウマ娘を連れて来たり、新旧入り混じったネタを投入しつつ、だらだら同工異曲の作品を続けて来たのが現状だと』

ヒノキ「それって褒めてるのか?」

NOVA『結局は、ゴブリン退治というテーマしか書いてないですからね。作者も後書きで毎回、「次回はゴブリンがどこそこに出たので、それを退治する物語になる予定です」と次回予告をしております。まあ、ゴブリンが出て、それをゴブスレさんたちがスレイしないとタイトルに偽りありなので、ドラゴンクエスト以上にタイトルには忠実なんですよ。で、最終的には「やはりゴブリンだったか」に行き着くにしても、そのブレない結果に行き着くまでの各巻それぞれの過程に多彩な素材を投入するわけですが、それはさておき、銃器の話ですね』

ヒノキ「すぐにゴブスレ話に戻って来がちじゃのう」

NOVA『今の俺はゴブスレ脳になってますね。ゴブスレでも本編では銃使いがほとんどいないんですが、作者がシャドウランにハマっているので、闇の盗賊ギルドみたいな冒険者ギルドとは別組織が後から設定されて、ある巻の間章では影走り(ランナー)という仕事人たちが暗躍して、その中には銃を使うキャラもいるんですよ』

ヒノキ「表舞台には出て来ないが、銃器は一応、世界の闇の中にはある、と」

NOVA『時代劇だと、南蛮渡来の秘密武器って感じで、出て来る程度のメジャーさですね。火薬術を使う根来忍者か、南蛮とか蘭学関係者、そして悪徳商人が時々、銃を使う。まあ、新・必殺仕置人では鋳掛屋の巳代松がわずか二間(3.6m)しか飛ばない竹鉄砲を使ってましたが』

ヒノキ「そこで必殺に寄り道するか!?」

NOVA『凄いなあ、二間って射程距離の短さは。D&D換算だと12フィートですよ。ダガーを投げるときの射程でも20フィートあるのに、しかも5フィート以内に侵入されると近接射撃は不利を被るのに。たぶん、三味線の糸や組紐の方がもっと長距離を飛んでいるような気がする』

ヒノキ「D&Dでは、三味線の糸は射程距離いくらじゃ?」

NOVA『知りませんよ。武器リストにそんな物が乗っているわけないじゃないですか。それでも、とりあえず鞭に相当すると考えるなら、近接攻撃5フィートに間合いボーナスの5フィートを足すから、10フィート(3m)まで届くと裁定したいところですが、実際の画面演出を見ていると、5m以上は飛んでる感じですね。少なくとも民家の屋根から飛ばして宙吊りにするぐらいだから、あの糸の長さは5mはある、と推定できます』

ヒノキ「まあ、三味線の糸とか、二間しか飛ばない欠陥鉄砲の話はどうでもいい。D&Dの銃器の話をせんか。ソード・ワールドの銃は、魔動機術に基づく魔法扱いと解釈されておるが、D&Dではどんなルールになっておる?」

NOVA『アーティフィサーは、DMが許可した場合だけ銃を標準的に使えるとあって、5版の銃器はダンジョンマスターズ・ガイド(DMG)だけに載っている禁断兵器なんですね。ファンタジー世界に銃を持ち込むのは世界観が壊れるという意見が昔から根強くあって、銃の使用に規制があったのですが、D&Dでは「ルネサンス以降の社会」を再現できるように、またDMによっては現代や未来とリンクした物語世界を作りたいという需要もあるだろうってことで、DMGに2ページほど銃器使用のガイダンスとデータがあります』

ヒノキ「銃の性能はどれほどじゃ?」

NOVA『ルネサンス期のピストルで通常射程30フィート、最大射程90フィート。すなわち約9mと27mです。ちゃんとした職人が作れば、10mは軽く飛ぶんです。専門家でない素人の鋳掛け屋が趣味で作った手製の竹鉄砲とは訳が違う。大体、どうして材料が竹なんでしょうかね。鋳掛け屋なら金属を扱うんだから、銃身を金属で作れば、一発撃っただけで分解するようなこともないだろうに』

ヒノキ「そんな40年も前の時代劇の設定に、今、ツッコミを入れて何とする? 天の裁きとか、この世の正義を振りかざすようなネタでもなかろうに」

NOVA『そんなわけで、ピストルはD10ダメージを与える強ダメージの武器ですね。ロングソードでD8ダメージですから。ただし、一発撃ったら弾薬の装填が必要なので連射はできないのが最大の欠点。しかも金貨250枚という高価格なのも普及を難しくしている理由だろう、と。ルネサンス期の銃器は、D&Dの他の武器と比べても、割と性能はおとなしめって感じがします。むしろ火薬を樽に詰めて爆発させる方が範囲に大ダメージを与えられますね』

ヒノキ「銃は弱いが、火薬は強い、と」

NOVA『で、銃器には現代銃器と未来銃器のデータもありまして、そちらは強いです。現代銃器は威力や射程が多少増えていますが、それよりも複数弾薬を装填できるようになっているので、連射ができるのが大きい。ルネサンス期の銃はトリガーハッピーにはなれませんが、現代銃器だと撃ちまくり天国な気分になれます。ただし、お金じゃ買えないのが最大の欠点』

ヒノキ「じゃあ、どうやって入手するのじゃ?」

NOVA『古代遺跡から発掘されたオーパーツとか、異世界から来た銃器の精霊に選ばれて授けられたとか、いろいろと特殊設定を考えれば何とか。で、凄いのが未来銃器で、レーザー・ピストル(ダメージ3d6)とか、反物質ライフル(ダメージ6d8)とか、普通にチートですね』

ヒノキ「そこまで来ると、マジックアイテムとさほど変わらぬのう」

NOVA『十分に発達した技術は魔法と変わらないという名言もありますから。ゴブスレでは妖精弓手が自分の弓の技を誇るのに、しばしば口にしていますが。で、面白いのは、自分の文明とは異質な時代の銃器やアイテムに接したキャラは、知力判定に何度か成功しないと、その機能がよく分からないというルールです。判定に失敗すると、暴発したり、アイテムを壊してしまったりして、せっかくの珍しい遺品とかが台無しになることも』

ヒノキ「つまり、そういうのを解析する専門家が必要なわけじゃな」

NOVA『それがアーティフィサーということになるわけです』

 

遺跡発掘人としてのアーティフィサー

 

NOVA『で、機械文明に対応した新世紀ファンタジーの技術者的冒険者としてデビューしたのがアーティフィサー。その設定をソード・ワールドが踏襲したのが、魔動機士マギテックということになるわけですが、ソード・ワールド2.0では従来の神様や古代魔術や精霊(妖精)なんかの世界観に、魔動機術を盛り込んだ新世界ラクシアという形で世界観を再構築。

『一方のD&Dは機械文明に対応したエベロン世界を作りつつ、他の伝統的世界(中心はフォーゴトン・レルム)も維持し続けて、アーティフィサーは基本的にエベロン専用となっていたわけです。DM次第では他の世界にアーティフィサーを持ち込むことも可能という示唆程度はありましたが、ラクシアのマギテックに比べると、アーティフィサーはなかなかメジャーな存在とは言えませんでした』

ヒノキ「どうしてじゃ?」

NOVA『ソード・ワールドのマギテックは、基本ルールブックに最初から載っている。魔動機術は、銃だったり、飛空艇だったり、蒸気機関だったり、魔動列車だったり、モンスターとして出現する魔動機だったり、結構な頻度で冒険に登場して、今のソード・ワールドの基本として定着した。一方でアーティフィサーは、エベロンのワールドガイドでしか登場しておらず、俺は3版と4版のエベロン本は買わなかったので、その時期のアーティフィサーの資料を持っていません。まあ、ネットを調べればいいんですけどね』

NOVA『で、5版のエベロン本が3年前に出たので、喜んで購入したのが、俺が初めてアーティフィサーのデータに接した時期です。そして、それからじっくり研鑽しようかと思っていたら、ホビージャパンのD&D展開がその辺りでストップ。あれ? と思いながら、追っかけていたものが止まったことに僅かな不安と動揺を感じていたら、まあ去年の半ばにホビージャパンによるD&Dサポートが終了。年末からWotC社の日本支部によるサポートが新規再開されたって話で、追っかけ直しているのが今ですな』

ヒノキ「でも、エベロン本は絶版で、アーティフィサーも歴史の影に消えようとしていたのじゃな」

NOVA『そうです。しかし、今夏のターシャ本の翻訳発売によって、アーティフィサーもエベロン以外の世界でも対応できるようなガイダンス込みで、新たなサブクラスのアーマラーを追加して再復刻。折しも、新番組の仮面ライダーガッチャードと絡められそうなタイムリーさ。そんなわけで、改めてアーティフィサーの研鑽話を始めたわけです』

ヒノキ「しかし、寄り道脱線だらけで、的にちっとも刺さらんではないか」

NOVA『いや、だって、アーティフィサーって職業は、戦士、魔法使い、治癒役、盗賊の能力を合わせ持つ幅広い万能職ですからね。研鑽するにしても、チェックすべきポイントが非常に多いわけですよ。本来なら、基本職の研鑽を終えてから、その延長で考察すべき職業だと思います。つまり、既存のD&Dに飽きたってベテランじゃないと、上手く扱えない上級職みたいなところがあります。調べて面白くはあるんだけど、切り口が多くて、自分なりに把握してまとめるのが大変だと思っています』

ヒノキ「まあ、戦士としては攻撃回数が伸びないので、強くはなれないことは前回、分かった。魔法使いとしてはどうじゃ?」

NOVA『低レベルの間は、ほぼウィザードの上位互換に思えます。が、アーティフィサーの最大使用呪文レベルが5に対し、ウィザードは9レベル呪文まで使えますから、専門家には到底及ばない。しかし、迷宮内に仕掛けられた魔法込みのトラップ解除については、アーティフィサーが極めて有能です』

ヒノキ「ああ、普通の盗賊では機械仕掛けの罠は外せても、魔法の罠に対しては無力じゃからのう」

NOVA『一応、盗賊にも魔法に親和性の高いアーケイン・トリックスターというサブクラスがいるのですが、そちらは扱える呪文の最大レベルが4と、アーティフィサーより低く設定されています』

ヒノキ「つまり、アーティフィサーは遺跡探索とアイテム解析のプロと言ったところか」

NOVA『まあ、アーケイン・トリックスターは魔法の使える盗賊なのに対し、アーティフィサーは探索活動もできる魔法使いにして、アイテム解析や扱いに関する専門家。隠密活動とか奇襲攻撃はできないけれど、発掘作業に従事する学者キャラという意味では、非常に優秀な職業なんですな』

ヒノキ「発掘作業に従事する学者キャラ……と聞くと、インディアナ・ジョーンズなんかも連想するんじゃが?」

NOVA『ジョーンズ教授は考古学者で、アーティフィサーは理系のエンジニア、技術者的なクラスだから、研究分野が違う気もするんですが、〈歴史〉や〈魔法学〉といった技能も習得できますし、作る気になればインディ風味のキャラも作れると思います』

ヒノキ「では、今回はこれぐらいにして、次回もアーティフィサー話か?」

NOVA『そうですね。盗賊と絡めた話もしたいので、シロ君も交えるとしますか』

 

ドラゴンランスについての補足

 

NOVA『最後におまけですが、先日のドラゴンランスについて、何点か勘違いしていたことがあったので、補足しておきます。まずは、ミスに気づいたソースとして、以下の記事を』

ヒノキ「で、何をミスっていたんじゃ?」

NOVA『こちらの記事で、「ソラムニア騎士」がファイターのサブクラスだと思い込んでいたのですが、サブクラスではなくて、背景だったんですね』

ヒノキ「確か、今のD&Dでは『クラスと背景を組み合わせて、キャラの職業を作る』んじゃったな」

NOVA『ええ。キャラの能力の根幹は、クラスおよびサブクラスなんですが、そこに種族で特殊能力を得たり、背景で本来のクラスでは得られないような技能や装備品を付与することができます。例えば、犯罪者の背景を選択すると、ローグでなくても盗賊めいたキャラが作れるし、貴族出身の魔法使いとか、商人に身をやつしたローグの暗殺者にもなれる』

ヒノキ「ソラムニア騎士はクラスではなくて背景だから、ソラムニア騎士出身のウィザードだってなれるわけじゃな」

NOVA『さあ。ソラムニア騎士って、魔法使いにかなり不信感を持っているから、世界観的に難しいと思うんですが、元ソラムニア騎士だけど、禁断の魔法に手を染めて祖国を出奔したキャラならできるかも』

ヒノキ「ところで、お前さん、ドラゴンランスの翻訳が確定する前に、ウルトロピカルでこういうことを言っていたのう」

NOVA『英文サイトを読んで、ドラゴンランス・サプリの宣伝文を読んで、誤解していたことをいくつか並べ立てておりますな。一番、大きな勘違いは、時代背景が小説の未来ではなく、同じ時代だったこと。何で未来と勘違いしたのかは、元の英文を再確認したいところですが、おかげでカラマン市を、ランスの英雄キャラモンにちなんだ都市名だと妄言吐いたりして、恥ずかしいの何の(苦笑)。ええと、ランスの英雄と同時代だけど別の地域で戦う名もなき英雄の話になるか。ランスの英雄の5版データがあると嬉しいけど、別地域だからないかなあ。一応、一冊だけ持ってる英文シナリオ集にも一部のキャラのデータは載ってるんだけど』

ヒノキ「キャラデータがあるなら、記事ネタとして紹介するのはどうじゃ?」

NOVA『確かに、今は亡きTSR社のAD&D1版時代のデータだから、昔と違って、版権云々で怒られる可能性もないかな? ランスの英雄8人のキャラクターカード(カラー版)が付いていたり、追加キャラとして、ティカとギルサナス、あとNPCでローラナとエリスタンも付いていて、ボスキャラのドラゴン卿ヴェルミナァルドはあるけど、シナリオ4までだと青の女卿のデータはない、と。まあ、ドラゴンランス・サプリの初翻訳記念で、手持ちの旧版サプリをネタにするのも一興かな、と思った次第』

(当記事 完)