花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

アーティフィサーの話(withゴブスレ話2ー1)

前置きゴブスレII(第1話)

 

リモートNOVA『本記事のテーマはD&Dのクラス研鑽だが、前置きとして、アニメのゴブスレ感想を語っておく』

ヒノキ「別の話なので、記事を分けてはどうじゃ?」

NOVA『ゴブスレ感想が長くなりそうなら、そうするのだけど、それほどの文量にはならないと思うからな。とにかく、1期が原作小説の1巻と2巻、短編集の4巻の1エピソードを再構成した内容で、劇場版が5巻の内容。そして、今回のアニメ2期は3巻と6巻を中心に構成されるだろうとPVから推測されていた』

ヒノキ「6巻の根拠は、少年魔術師の登場からして明らかだが、3巻の根拠は? もしかすると、3巻を飛ばして7巻に進む可能性もあるのでは?」

NOVA『いや、俺も1話を見る前は、3巻の収穫祭エピソードを先にやってから、6巻の流れだろうと考えていたんですが、先に6巻の話から始まって、あれ? 3巻がまた飛ばされた? と驚いたんですね。このまま3巻がなしの可能性を疑ってみましたが、普段は制服の受付嬢が私服で出ているPV(収穫祭でゴブスレとデートしている時の衣装)もありますし、後半に回されたんだな、と思ってます』

ヒノキ「驚いたのは、OPでダイ・カタナのパーティーが映っていたところじゃな」

NOVA『中盤に外伝のエピソード(イヤーワンとかダイ・カタナ)も挿入される可能性が出て来ましたね。原作を読んでいてストーリーは分かっている身ですが、アニメ独自の構成順や追加エピソードなんかがサプライズ要素かなあ、と思ってます』

NOVA『3巻の感想は、こちらで書いていて……』

NOVA『6巻の感想はこちらだな』

NOVA『あとはイヤーワンとダイ・カタナか』

NOVA『大体、この辺が今期のアニメの種本になると思われ』

ヒノキ「コミックの方は今、どこまで進んでおる?」

NOVA『俺はコミックを追いかけていないのですが、小説→コミック→アニメの順番ですからね。小説にはなくて、コミック由来の描写がアニメでも採用されているとの話も聞きますし、マニアだったら、そちらもチェックしておくところでしょうが、俺はそこまでのマニアじゃないってことで。だけど、今の状況ぐらいは確認しておきたいところですね』

NOVA『コミック最新刊は5月に出た14巻になるようです。ちょうど小説の6巻の内容が終わって、7巻のエルフの森のエピソードが始まったところなので、アニメの原作範囲としては十分みたいですね。小説は16巻まで進んでいますが、作者がいろいろな作品に寄り道しているので、今はゴブスレの執筆速度が落ちています。が、続きは気長に待つとしましょう』

ヒノキ「で、アニメの1話の感想は?」

NOVA『少年魔術師の生意気キャラが、次回でどう鼻っ柱が叩き折られるか、挫折エピソードが楽しみと思いました』

ヒノキ「お前さん、性格が悪いのか?」

NOVA『いや、だって原作小説で読んだ時よりも、声がついた分、少年の反抗っぷりが余計にストレートにうざったらしく描写されていますからね。こりゃあ、叩きつぶしたくなるでしょう? これも感情移入って奴です。《火球》は確かに強力な呪文ですが、一発しか打てない奴がゴブリン退治なんてできないでしょう。ゴブリンは数が多いんだから、数匹まとめて倒せる程度でのぼせ上がっていてはいけません。数の暴力を舐めてる奴には、実戦の恐ろしさを叩き込むのが教育的指導ってものです、と感じた1話でした』

ヒノキ「まあ、身の程知らずな高慢キャラが挫折して、そこから成長するまでの話じゃからな、6巻は」

NOVA『ある意味、SEED DESTINYシン・アスカ的なキャラですからね、彼は。姉とか妹の死が心に突き刺さって、周囲に刺々しく振る舞いがちなキャラ。でも、魔法使いにとって大事なのはクールさである、とマトリフ師匠もおっしゃってます。少年も相手を見下して敵を増やす斜に構えた部分ではなく、もっと現実をしっかり観察したうえでのクールさ、状況判断能力を身につけて欲しいものです。まあ、原作小説では圃人剣士の少女の軍師役として成長した姿も見られるので、最初はうざくても、そこからの成長ドラマを改めて堪能したいと思った1話でした』

NOVA『小説よりも、コミックの方が内容に合わせた表紙イラストだなあ、と思いつつ、少年魔術師のエピソードは、コミック12巻が中心ってことで』

 

改めてアーティフィサーの話

 

NOVA『で、本題のアーティフィサーです。魔法技師と訳されて、魔法の力を込めた道具を作成し、扱いこなすD&Dの追加職業です。サブクラスに、アーティラリスト(砲術士)、アルケミスト錬金術師)、バトル・スミス(戦場の鍛冶屋)の3つがあったのですが、夏に出たサプリのターシャ本でアーマラー(武器と鎧の匠)が加わりました』

ヒノキ「そもそも、アーティフィサーというのがよく分からんのう」

NOVA『エベロン世界で初追加された職業ですからね。50年の歴史を誇るD&Dで、エベロン世界が登場したのは2004年。剣と魔法のファンタジー世界だったD&Dに、機械文明を本格的に投入したのがエベロンの特徴ですが、機械人間種族のウォーフォージドと並んで、エベロンらしさを象徴する存在と言えましょうか』

ヒノキ「つまり、他の世界ではあり得ない職種ということか?」

NOVA『既存のD&D世界でも、からくり機械を作るのが趣味のノームとかNPCとして登場してはいたのですが、そういった機械文化を学んだ変わった職種として登場させることができるようになりました。エベロン世界ではありふれた職業ですが、他の公式世界では「フォーゴトン・レルムのランタン島」とか、新たにアーティフィサーの文化が盛んな地域が設定されたようです。ありふれてはいないけど、東洋のサムライとかと同じように「珍しくはあるが、そういう連中がいることは知られている」という扱いになってます』

ヒノキ「日本人の感覚で言うと、どういう職種じゃ?」

NOVA『そうですね。どこにでもいるというわけではないが、いるところにはいる、という意味では、「航空機パイロット」とか「民間軍事会社所属の傭兵」とか、そういう専門職じゃないですかね。少なくとも、俺の知り合いにはいませんね。「大学教授」とか「弁護士」とか「グラフィックデザイナー」とか「政治家秘書」だったら、普通に知り合いがいるのですが、人によってはそういう職種も珍しいかもしれません。あとは昔の教え子に「メガネ職人」「漁師」「気象予報士」なんかがいて、いろいろな縁はあると思うのですが、アーティフィサーも珍しくはあっても、あり得ないわけではない程度の扱いかな、と』

ヒノキ「魔法技師、ということは、職人じゃのう。ロボット工学者とか、薬剤師とか、理工系の技術者と考えれば良いかのう?」

NOVA『そうですね。俺の知り合いだと、「鉄道整備士」というのがいて……』

ヒノキ「いや、お前さんの知り合いの話はもういいから、それよりもアーティフィサーの話をせい。D&Dの冒険者としては、どういう性能じゃ? 強いのか?」

NOVA『う〜ん、普通かな。割と万能職というか、多芸の便利屋みたいなところがあります。まず、HPは毎レベルD8だから、クレリックやローグに相当します。今のD&Dは、魔法使いのウィザードがD6で、戦士のファイターがD10ですから、D8は大体、平均程度ですね。装備も中装鎧と盾が装備できて、武器も単純武器で、クレリック並み。前衛で戦えなくはないですが、戦士ほどの硬さも破壊力も持っていない』

ヒノキ「武器攻撃は、弱くもないが、強くもない。最低限、自分の身を守る程度のことはできる、と」

NOVA『前衛の壁になるには、重装鎧と軍用武器に習熟していることが望ましいですからね。ただし、サブクラスでバトル・スミスを選択すれば、自動的に軍用武器に習熟できますし、アーマラーを選択すれば、重装鎧に習熟できる。つまり、前衛で戦うアーティフィサーになれる可能性はあります。ただ、本職の戦士と違って攻撃回数は伸びないので、普通に戦えるけど決定打を与えることはできない脇役ということですな』

ヒノキ「だったら、何が取り柄なんじゃ?」

NOVA『中途半端ですが、そこそこの呪文が使えます。アーティフィサーの呪文は、魔法使いと僧侶の呪文からバランス良く抜き出したもので、攻撃も回復も支援もできて、いろいろと便利ですな。基本は前衛戦闘のできる便利魔法使いとして機能します。ただし、攻撃魔法を得意にするにはアーティラリストが、回復魔法を得意にするにはアルケミストが望ましいわけで、自分の目指す方向に応じたサブクラスを選択する必要があります』

ヒノキ「つまり、器用貧乏な何でも屋ということじゃな」

NOVA『一人で何でもこなせるけど、専門家には到底及ばないってことですな。方向性としては、吟遊詩人バードが近いと思いますが、バードは交渉と芸能の専門家であるのに対し、アーティフィサーの本分は職人です。あと、盗賊道具も習熟していて、鍵開けなんかもできます。アーティフィサーの独自の能力として特筆すべきは、魔法の道具を作ったり、道具を使いこなしたり、発明品をひらめいたりして、ドラえもん、いや、より正確にはキテレツみたいなことができるわけですな』

ヒノキ「おお、それは凄い。すると、アイアンマンみたいなスーツを作ったりもできるのじゃな」

NOVA『そういう方向性なら、アーマラーですな。鎧にフライの魔力を仕込んで空を飛ぶことも可能ですし、アイアンマンを再現できますよ』

ヒノキ「仮面ライダーガッチャードは?」

NOVA『無理です(きっぱり)。あいつは、どうもあの世界の錬金術の観点からも、常識外れのチート能力みたいですし。ただ、あの世界の錬金術の常識で生み出されたのは、ヴァルバラドの方ですね』

NOVA『このヴァルバラドってのは、黒鋼スパナが自分の錬金術の才を駆使して作り上げた、個人用戦闘スーツみたいです。他人の作ったドライバーを使って、自分の力だと勘違いしている宝太郎と違って、もう手作りの代物なわけで、そんなことのできる天才だったら、そりゃあ、「お前には才能がない」と他人に断言しちゃうのも無理はないかな、と。錬金術ってのは、本来、何かを作り出す発明の才ですから、ケミーとコミュニケーションをとってチートな技を使うのは、錬金術の才ではないわけですな』

ヒノキ「つまり、D&Dのアーティフィサーのルールでは、ヴァルバラドを再現することはできても、ガッチャードを再現することはできない、と?」

NOVA『ガッチャードを再現しようと思えば、それはアーティフィサーではなく、契約魔法使い的なウォーロックや、魔法についての血統的な才能で術を扱うソーサラーではないか、と思うんですよ、D&D的には。今回、アーティフィサーのルールを読みながら、ガッチャードの設定と照らし合わせると、彼のやっていることは錬金術ではなく、錬金術で生み出された使い魔、ホムンクルス的なケミーを常識外れな違法手段で使いこなしているだけ、ということが分かりました。いわゆるチートで、ルールを無視した存在だ、と』

ヒノキ「う〜ん、スパナのやっていることは錬金術だけど、宝太郎のやっていることは錬金術の成果を流用しているだけで、正統な錬金術ではない、と」

NOVA『言わば、スレッタ・マーキュリーがエアリアルを使いこなしているのが、パイロット本来の技量だけでなく、エアリアルの中に宿ったエリクトの補助があってのことで、純粋にパイロットの才覚に絞ると、グエル先輩の方が強いだろうとか、そんな感じですね』

ヒノキ「その例えが適切なのかどうかは分からぬが、錬金術について語る際に、ヴァルバラドの方は参考になるけど、ガッチャードは参考にはならぬということか。チートを標準扱いするなら、ルール考察が無意味になる危険性がある、と」

NOVA『俺は、宝太郎の才能は、錬金術とは異なる種類の魔法の才だと考えていますので、それこそ仮面ライダー龍騎や剣、ディケイド、またはゴセイジャーの天装術と類似の技術ではないか、という考察ですね。結論、D&Dのアーティフィサーのルールで、ガッチャードは解析できない。ヴァルバラドやアイアンマンなら解析可能ってことです』

 

アーティフィサーの魔法

 

NOVA『さて、アーティフィサーは何でも屋ということで、武器戦闘、盗賊技能、攻撃魔法、回復魔法など、一通りはこなすことができる便利職という話をしました』

ヒノキ「そこから、ガッチャードとかヴァルバラドに脱線したがのう」

NOVA『脱線じゃありませんよ。何しろ、職人とか技術者というのが本分ですから、ものづくりの精神、DIYの精神こそがアーティフィサーの真髄です。まあ、ガッチャードは現状において、錬金術とか発明家の域には届いていない素人ですが、さておき。アーティフィサーは魔法と道具を組み合わせた魔導工学とか薬品学などの専門家と言えます。D&Dの魔法使いがどうやって魔法を使うかはご存知ですか?』

ヒノキ「魔法使いは呪文書に記された呪文を記憶して使うのじゃろう? 僧侶は神から呪文を授かる。基本じゃろう?」

NOVA『クラシックD&Dの時代はそうですが、前者はウィザード、後者はプリーストまたはクレリックになります。現D&Dだと、ウォーロックソーサラーはウィザードと異なる原理で魔法を使うのですが、とにかく世界に充満する魔素(マナ)とか魔法の織物(ウィーブ)とかをうまく操作することが魔法の基本原理です。ウィザードは古代の力ある言葉で糸を紡ぐように呪文を編み出し、ウォーロックは異界の契約相手から力を授かり、ソーサラーは自分の血の中に宿る先祖伝来の魔力を覚醒させ、他にも思念の力(サイオニクス)とか、いろいろな原理で発動する魔法があって、そういう神秘的な諸力を道具の力で生み出すべく体系化したのがアーティフィサーです』

ヒノキ「魔法の杖とか、そんな感じか?」

NOVA『いいえ。例えば、D&Dの初級呪文に明かりを付けるライトがあります。ウィザードでもクレリックでも使えるわけですが、彼らは力ある魔法言語を唱えるなり、神への祈りなりで明かりを灯すことができます。一応、呪文の物品要素として一匹のホタルや光ゴケなんかが設定されていますが、杖とか聖印といった焦点具で代用することも可能。ですが、アーティフィサーの場合、焦点具として自分が習熟している盗賊道具や職人道具を使うわけです』

ヒノキ「どういうことじゃ?」

NOVA『例えば、宝石加工の技術を持っているアーティフィサーなら、宝石から光を呼び起こすことができますね。鍛治道具を持っているアーティフィサーなら、ハンマーで近くの石をコツンと叩いたら、その時に生まれた火花が魔法の灯りになったりするとか、あるいは石が粉々に砕けて光になることだって有り得ます』

ヒノキ「勇者王かよ!?」

NOVA『要は、自分の持ってる道具で、どうやれば魔法の効果を発動できるのか、描写するように示唆されているんですね、ルールブックで』

ヒノキ「それを思いつかなければ、魔法が使えぬのか?」

NOVA『魔法の発動描写は義務ではない、とも書かれていますが、個性づけの手段として考えて欲しいということです。とにかくアーティフィサーの魔法は、道具の扱いを通じて発動するという原理が、他の魔法使いとの違いになります。なお、その道具を武器として使える巨大なスパナと、そこに挿入するカードにすれば、ヴァルバラドみたいなことができるわけです』

ヒノキ「ああ、確かにヴァルバラドは工具を、能力使用の焦点具にしておるのう」

NOVA『盗賊道具の中には鏡が入っているので、その鏡から光を放つとか、アイデア次第で、いろいろ演出できるんですよ。職人道具の中には、画材とか調理道具とかもありますので、筆で空中に描いた絵が魔法の効果を発動させたり、激辛料理を食べて口から火を吐いたり、冗談のような演出で独自の魔法を発明することも可能』

ヒノキ「だったら、模型職人が木彫りの玩具を作って魔法を発動するというのは?」

NOVA『こんなこともあろうかと準備していた玩具を懐から取り出して……というのもありですね。それこそ、真田さんごっことか、ドラえもんごっこができます。なお、そういうアイデアが思いつかない人のためのお勧め道具が、錬金術用品。フラスコとかの実験器具とか、ガスバーナーとか、調合薬品とか、よく分からない粉とか、何でもかんでも錬金術と言い張れば、それっぽい演出が可能』

ヒノキ「あらゆる不思議な魔法的現象を、錬金術と言い張ればいいのじゃな」

NOVA『とにかく、アーティフィサーは自分の魔法を、テキトーな道具を使って発動させているイメージです』

ヒノキ「だったら、カードを使って魔法を発動することも可能じゃろう?」

NOVA『いえ、それがカードは職人道具ではなくて、ゲーム道具に分類されていますので、アーティフィサーの焦点具には使用できないんです、基本的には』

ヒノキ「基本的に、ということは裏技があるんじゃな」

NOVA『まあ、カードにはイラストが描かれていますからね。画材を職人道具に設定して、「あらかじめ描いておいたイラスト付きの札を使って、魔法を発動します」と言い張れば、結果的にカード使いのアーティフィサーを作ることもできるのでは、と』

 

D&Dにおけるガッチャードの再現可能性

 

ヒノキ「なるほど。思ったよりも、奥が深い職業なんじゃな、アーティフィサーというのは。しかし、裏技を使ってカード使いになれるなら、ガッチャードも再現できるのでは?」

NOVA『だから無理なんですってば。ガッチャードは複数のカードを組み合わせて、一つのフォームを形作るのですが、それを再現しようと思えば、複数の魔法を組み合わせた融合魔法というのを考えないといけない。バッタの跳躍力なら、1レベルにジャンプという魔法があります。SLの持つ蒸気の力もフォッグ・クラウドの呪文で再現可能だと思います(アーティフィサーが使えない種類のウィザード呪文だけど、その辺はマルチクラスを使えば何とかなる)。つまり、個々の能力なら再現可能ですが、複合させることのハードルが高すぎるわけですな』

ヒノキ「だったら、ヴァルバラドも無理ではないか?」

NOVA『いや、彼のカード使用は、まず基本のスーツ形成にマッドウィールの1枚。これはアーマラーの秘術鎧で再現可能。そこに別のカードで武装強化するのは、自己バフをかける魔法で再現可能。あくまで変身用のカードと、強化武装用のカードに分けているから、それぞれ個別にルールとして扱えるわけですな。しかし、ガッチャードの変身時にすでに2つのカードを融合させて、複数の能力を組み合わせる仕様をどう再現するか。

『あと、すでにフォームチェンジ多すぎ問題があります。フォームが変われば戦闘スタイルも大きく変わるのは平成以降のライダーでは定番ですが、TRPGではフォームチェンジごとに別キャラを作るようなものです。武器の持ち替え程度なら何とかなりますし、炎とか氷とか電気とかの属性を使い分けるのもまだ何とかなりますが、あるフォームがパワー特化で、別のフォームがスピード重視、さらに別のフォームは超感覚の遠隔攻撃専門とかになると……ただのバフではなくて、キャラそのものを変えていることになるわけですな』

ヒノキ「つまり、重戦士だったキャラがフォームチェンジで盗賊風の軽戦士になったり、知覚重視の飛び道具使いになったりするのは、基本の能力値や技能・特技の組み合わせまで変更しないといけなくて、一人で複数のキャラを局面に合わせて使い分けるようなものだと」

NOVA『それに近いのは、ドルイドの獣への変身でしょうか。遠隔呪文使いの後衛ドルイドが、獣に変身することで接近戦ファイターになるという。当然、獣のデータは別に用意しておく、と。それでもプレイヤーは2種類のみを管理すればいいだけですが、3つも4つもキャラを使い分けるのはゲーム的にはなかなか大変です』

ヒノキ「なるほどな。要は別性能のキャラをTRPGで1人のプレイヤーが扱うには、データ管理が大変すぎると」

NOVA『まあ、マルチクラスのルールを使えば、複数の職業の能力を合わせ持つことは可能だと思いますが、それって成長という面では専業職に及ばないわけで、便利だけど弱いということになり兼ねません。フォームチェンジは、どちらかと言えば、それぞれの能力の専門家に瞬時に成り変わることですから、マルチクラスとはまた異なる仕様なんですね』

ヒノキ「よく分かった。スパロボで言うところのゲッター1(空戦&武器持ちおよび超必殺技仕様)と、ゲッター2(地上地中戦とスピード特化)、ゲッター3(水中戦とパワー重視、格闘能力と防御力を合わせ持ち、かつミサイルによる砲戦にも対応してる)は、別のデータを持つユニットとして扱われるということじゃな」

NOVA『そういう変形や全く異なる姿に変身するのと違い、基本フォームに強化武装を付け加えるヴァルバラドのスタイルは、普通に再現しやすい。しかし、基本フォーム自体が複合能力を有しており、さらにフォームが変われば、キャラの特性そのものが大きく異なる姿になるのは、カードゲームで言うなら、デッキそのものを組み替えて違う戦術に切り替わるようなもの。スポーツで言うならサッカー選手が突然、バットを持ってボールを相手ゴールにカキンとホームランして得点するようなものですね』

ヒノキ「いや、それは反則じゃろう?」

NOVA『水泳選手が突然、水から飛び出して、プールサイドを走り抜けて、100メートル走なら勝ったとか言い出すようなもの』

ヒノキ「それじゃ競技にならん」

NOVA『まあ、スパロボなら水中戦の得意な相手は、何とか地上に誘き出して、自軍に有利な戦場で戦うのが一つのセオリーだった時代がありました。もちろん、水中戦の得意な味方機をぶつけるのが普通ですけどね』

ヒノキ「どんどん話がD&Dやアーティフィサーから離れて行ってやしないか?」

NOVA『これが俺の得意な寄り道脱線です。一種のコンボ芸と言ってもいい』

ヒノキ「おお、これが伝説に聞く、新兄さんの超絶秘技……って、そんなわけがなかろう? 単に話の収拾がつかずに迷走しているだけではないか」

NOVA『だけど、結論は明らかです。ガッチャードをD&Dのアーティフィサーのルールで再現するには、ハードルが高すぎる。能力の一部を再現する程度が関の山です。ルールを超越したチートな野郎は気にせず、真っ当なルールに則ったヴァルバラドを主軸に考える方が、はるかに建設的というものです。では、今回はこれぐらいにして、アーティフィサーの話は、さらに次回に続きましょう』

ヒノキ「新兄さんの寄り道脱線癖はさて置くにしても、奥が深そうな職業みたいじゃからのう」

(当記事 完)