継続性が大事って話
リモートNOVA『前回は、聖闘士星矢に絡めて、セブン=フォートレスの話をしました』
ヒノキ「セブン=フォートレスは、1991年のリプレイから始まって、2013年のリプレイ終結まで、約23年間、展開し続けたゲームじゃったな」
NOVA『日本で、それだけ長期間続いたTRPGだと、ソード・ワールドが1989年から34年間で最長ということになりますが、次点がFEAR社の看板商品のもう一つの柱である「トーキョーN◎VA」で、1993年から現在まで31年間の継続を見せています』
ヒノキ「トーキョーN◎VAは今も続いておるのかの?」
NOVA『最新のルールブック(5版)に相当するTHE AXLERATIONが発売されたのが2013年で、その後のルールブックの版上げは行われていません*1が、今年の初めにシナリオは出ているのでサポートはまだ継続中と考えて問題ないでしょう』
ヒノキ「FEAR社の社長の代表ゲームなので、そう簡単に終わらせるわけにもいかないってことか」
NOVA『N◎VAについては、自分の名前との親近感もあって、4版のDETONATION(2003)までは追いかけていたんですが、さすがに2010年以降は諸事情で追いかけるのを断念しました。一時的にTRPG離れしていた時期もありましたから』
ヒノキ「その一時的というのは、どの期間じゃ?」
NOVA『D&D4版の邦訳が出た2008年から、5版の邦訳が出た2017年の間辺りが、文庫RPGとリプレイ以外を買わなくなっていたかな。まあ、リプレイ読者ではあったし、ソード・ワールド2.0は比較的追いかけていた方だから、完全にやめてしまったわけじゃないけど。どちらかと言えば、FEAR社のルールブック版上げの波に乗り切れなくなって、SNEの路線に戻って来たのがその辺ってことになりますか。だから、古いバージョンならいろいろ語れますが、最新バージョンは追いかけきれていないのが現状』
ヒノキ「ナイトウィザード2版(2007)まではルールブックを持っているが、3版(2014)を持っていないのも、そういう事情じゃな」
NOVA『その辺の背景を語ると、共同創作企画の「星輝士ラーリオス」の話に転がり込みまして、書いてみて、つまらない個人的な寄り道脱線が酷いことになったから、記事として2000字ほどの無駄話を割愛します。今回、書きたいのはセブン=フォートレスV3から始まるクロスオーバーの醍醐味って奴ですね』
クロスオーバーの醍醐味
NOVA『歴代セブン=フォートレスで、俺が一番好きなのは、2002年に出たV3です』
ヒノキ「2008年のメビウスは好きじゃないのか?」
NOVA『いや、好きは好きなんですけど、時期的に十分追っかけきれなかったんですわ。サプリメントの数としても、主八界の全てを網羅した各ワールドガイドを始め、質量ともに最高。V3とメビウスを比較するなら、メビウスの方が進化して、凄い最高傑作だと言えますが、俺が個人的にそこまで追っかけきれなかったというか、せいぜい持っているのが、これだけですから』
ヒノキ「基本ルールと上級ルールがあれば十分ではないか」
NOVA『十分ではありませんよ。メビウスをしっかり語るには、主八界の8つの世界のワールドガイドをしっかり揃えて、素で世界の名前と特徴を語れるようでなければなりません。俺が語れるのは、せいぜいV3でクロスオーバーした4つだけ』
ヒノキ「語ってみよ」
NOVA『メインとなるのは、第1世界のラース=フェリアですね。次に第3世界のエル=ネイシア、これは星姫と下僕戦士&モンスターの世界です。そして第5世界のエルフレア、人造天使の世界です。最後に第8世界のファー・ジ・アース、ナイトウィザードの世界。ここまでなら、とりあえず普通に話ができます』
ヒノキ「残り4つも調べれば、何とかなるじゃろう」
NOVA『そりゃあ、ネットで普通に分かりますがね。データを持っていないので、知識だけで遊べないという』
- 第2世界エルスゴーラ:鋼機(いわゆるロボット)の世界
- 第4世界エルクラム:精霊と航宙飛空船の世界
- 第6世界エルキュリア:海と軍艦の世界
- 第7世界ラスティアーン:ラース=フェリアの原型と思われる、白と黒の勢力が永遠の闘争を広げているファンタジー世界
NOVA『メビウスのゲーム展開が非常に順調で、過去最多数のサプリメントが発売され、もう、これを越える多元世界RPGは、日本ではカオスフレアしかないだろうって考えます』
NOVA『カオスフレアは2005年スタートだから、来年で20周年かあ。もう少し頑張れば、継続期間でセブン=フォートレス超えも夢じゃないなあ』
ヒノキ「ダブルクロスも長いじゃろう」
NOVA『2001年からだから、今年23年でセブン=フォートレスに追いつきました。現行の3版ルールが出たのが2009年だから、版上げせずによく続いていると思います』
ヒノキ「カオスフレアは最初から多元世界ものであることを売りにしているゲーム。ダブルクロスは現代日本を舞台にした超能力アクションという形で始まったが、ステージという形で別の物語世界を導入して、例えば平安京時代の日本や、ナチスドイツとの争い、中世イギリスや古代ギリシャ、タイムトラベル物など様々な世界での超能力アクションを楽しむことが可能」
NOVA『最近はクトゥルフ物とつながりました』
ヒノキ「つまり、一つのシステムで、いろいろな物語ジャンルを楽しむことができるように設計されておる、と」
NOVA『TRPGでそれを最初にやったのが、ルーンクエストやクトゥルフなどの根幹システムであるベーシックRPG(1980)で、そこからGURPS(1986)、AD&D2版の各種多元世界(90年代)、そしてD&D3版から続くD20システム(21世紀)と海外でのメジャー作品が続いて行ったわけですが、一つの世界(コアアース)に複数の異世界から侵略者が攻めてきて、それを迎え討つスーパーヒーローたちという構図を初めてやったのはTORG(1993)だと認識しています』
ヒノキ「ある意味、映画のアベンジャーズの先駆けみたいなゲームじゃな」
NOVA『こういうクロスオーバーは、ヒーロー共演のアメコミが先なんですが、日本だと1991年のスーパーロボット大戦が今も続く王道となっていますね。特撮やニチアサ関連でも、ウルトラシリーズとか、仮面ライダーとか、スーパー戦隊とか、プリキュアとか長く続くとシリーズ内コラボが行われて、先輩ヒーローが助っ人に駆けつけるという展開はお馴染みですが(古くは70年代からある)、90年代からは単に先輩が応援にやって来るだけじゃなくて、作品の世界観を踏まえたうえでの共演が行われます。
『互いの信念やスタイルが噛み合わないための対立(軍人VS民間人とか、社会人VS学生とか)を経ての、互いに正義を重んじる心は同じと共感し合っての和解と、協力しての強敵撃破というヒーロー物の様式美が毎年のようにお祭りイベントとして展開されていきます』
ヒノキ「異世界の登場人物が最初に遭遇すると、互いの持ってる常識が違うゆえのトラブルが発生しがちじゃからのう。それも物語を面白くするための秘訣、と」
NOVA『現代社会に、ファンタジー世界の魔法使いが出て来ると、普通の人は驚きますが、逆に魔法使いの方も現代科学に驚いたりして、互いのカルチャーギャップがドタバタコメディーになるのが多元世界ものの面白さですからね。そのためには、作り手の方がどっちの世界観も理解して、どっちが上という変な序列を付けない方がバランス的に面白くなる』
ヒノキ「先輩ヒーローと後輩ヒーローじゃと、どうしても先輩の方が上から目線になったり、逆に後輩の活躍をメインに描くために先輩が噛ませになったり、著しくバランスを欠くと、かえって興醒めになる」
NOVA『やはり、昔のヒーローにリスペクトを持ちながら、現行ヒーローに力を託す展開が燃えますね。先輩は敵を弱体化させるのに力を使いきったので、決定的なトドメは新進ヒーローに譲るとか』
ヒノキ「で、先輩ヒーローの方が年下で、後輩ヒーローの方が年上だと、関係性がいつもと違って面白くなる」
NOVA『学生のゴーストと、医者のエグゼイドとかがそうでしたね。たぶん、ガッチャードと次の令和ライダーの関係性も面白くなるんじゃないかなあ』
ヒノキ「そろそろ次作品のタイトルぐらいの情報が出るとして。で、クロスオーバーじゃな」
NOVA『クロスオーバーです。先輩後輩という関係ではなく、異世界で互いの力の根源が異なる場合は、その力を披露し合うだけで楽しいです。どうして、そんなことができるんだよって感じで。ただ、最近のヒーローはどうも多元世界慣れをしたキャラが増えたせいか、あまり驚かなくなりましたね。突然、異世界に通じるゲートが開いても、何が起こってるんだとか、どういう仕掛けなんだというリアクションを見せるキャラが少なくなった』
ヒノキ「いちいち驚く時間を取るよりも、スピーディーに物語を展開させる方がいいという作り手の判断じゃろうな」
NOVA『サプライズな展開でも、キャラがあまり動じないのは良し悪しだと思うんですよ。ヒーローが意を決して正体バレをしても、前から気づいてたとか、自分は隠してるつもりでもバレバレじゃんとか、そういうリアクションをとるケースが増えて、正体バレのカタルシスが削がれることもありますし、物分かりが良すぎるのも、面白くないなあ、と』
ヒノキ「新兄さんとしては、物分かりが悪いキャラの方が好みか?」
NOVA『いや、それはそれで勘弁。鈍感すぎて説明に手間がかかり過ぎるキャラじゃなくて、素直に驚いて、好奇心を露わにしてくれるキャラが好みかな、と。よくあることだからと知ったかぶりをする学者キャラよりも、不思議な現象はそれなりに見てきたが、こいつはまた新しい事例だな、実に興味深い、詳しい話を聞かせてくれと目を輝かせる学者キャラの方が、圧倒的に魅力的だ。最初から何でも知ってるキャラより、何でも知ってるわけではないけど何にでも興味を示して吸収力の高いキャラの方が、視聴者や読者といっしょに設定を学んでいる感じがしていいと思う』
ヒノキ「ああ、あくまで物語の受け手に情報を伝達する役割ということか」
NOVA『ええ、知識系キャラの仕事ってそれでしょう。下手な創作家は、知識系キャラに格好を付けさせるだけで、物語の状況を解説する役割を果たさせない。そして、いろいろと詳しいはずのキャラがそれでも知らなくて、いかにも興味を持っているような反応を明示することで、その情報に物語の受け手が興味を持たせるように仕向けるのが作劇というもの』
ヒノキ「そういうストーリー上の役割をろくに果たさないのに、何だかもったいぶって情報を出し惜しみし、その癖に真理に到達できずにいる主人公に上から目線で小バカにするだけの似非天才キャラは、人気が出るはずがないのう」
NOVA『その辺は、別ブログの天才論でも語りましたが、天才キャラで主役と良きバディぶりを示したキャラに、仮面ライダーWのフィリップがいます』
ヒノキ「それとセブン=フォートレスに何の関係がある?」
NOVA『うっ、関係性はこれから紡ぎますが、とりあえずフィリップは潜在能力として星の本棚にリンクして、地球の全ての情報にアクセスできる天才です』
ヒノキ「うむ。敵の能力がガイアメモリ、つまり地球の記憶に基づくものじゃから、敵の特徴や弱点を全て検索できるわけじゃな」
NOVA『フィリップに弱点があるなら、地球以外の敵、つまり宇宙人とか異世界人が登場したら彼の検索能力が機能しないので、次元の異なるキャラの登場する異世界共演物だと能力が制限されるわけで、「風都探偵」でも裏風都のことは検索が難しいわけです』
ヒノキ「なるほど、既存の世界の無敵キャラを無敵でなくさせるには世界観を広げればいい、ということじゃな」
NOVA『これは逆に言えば、よその世界でいかに無敵でも、自分の得意な世界観に引きずり込めば勝てるって話になります。昔、快傑ズバットがクロスオーバーゲームに出演した際に、「チッチッチッ、お前さん、宇宙一を気取っているようだが、この日本では2番目だ」という趣旨のセリフを口にして、笑ったことがあります。確かに、ズバット時空では、ズバットに変身する早川健が相手を日本で2番目認定して、その上を行く絶対者として君臨していますからね。日本が舞台である限り、ズバットには勝てない、という作劇ルールです』
ヒノキ「何だか探偵つながりじゃのう」
NOVA『ズバットに勝つ方法はただ一つ。戦場を日本以外の場所にすればいい。だから、魔空空間に引きずり込むと、彼は宇宙刑事アランにフォームチェンジして、仲間のギャバンに後を託して退場することになる。できれば、アランのコンバットスーツも見たかったなあ』
ヒノキ「って、新兄さん、フィリップ→ズバットと突き進みおって、どこまで寄り道するつもりじゃ?」
NOVA『ええと、早川健→宇宙刑事アラン→宮内洋→仮面ライダーV3→セブン=フォートレスV3。ほら、帰って来れた』
ヒノキ「というか、それだったら、宇宙刑事アランがなくても帰って来れるじゃろう」
NOVA『いや、ここで大事なのは異次元侵略者のマクーを登場させることですよ。セブン=フォートレスV3は、異世界からの侵略をテーマにしているわけですから』
V3の異世界
NOVA『異世界からの侵略を初めてテーマにしたメジャーTRPGは先程も挙げたようにTORGですが、中心世界は我々の地球(コアアース)です。その地球の一部地域が、別世界の侵略者ハイロードたちの侵略でポシビリティ(可能性のエネルギー)を吸収されて、相手の世界の常識に書き換えられるという設定です。
『例えば、イギリスはファンタジー世界のアイルになってしまい、科学の力を失って住人たちも剣と魔法の世界の常識に支配されてしまいます。一方、アメリカはもっと酷くて、ジュラシック・パークが流行ってる時代だからか、恐竜たちとトカゲ人の支配する原始時代になってしまいます。このリビングランドでは、生命を持たない機械や道具は全て機能を失ってしまい、タブレットはただの石板になるとか、化学繊維の服はボロボロになるとか、綿とか絹とか毛皮の生物由来の衣服のみが使え、金属は使えず、石や土のような自然物のみ機能するという究極のエコ世界になってしまうわけです』
ヒノキ「ドルイドみたいなキャラなら不便なく暮らせそうじゃな」
NOVA『TORGはユニークなゲームで大好きですが、カオスフレアはそのTORGをリスペクトしたゲームです。一方、きくたけさんのリスペクト先は、スーパーロボット大戦だとV3の前書きに明記しています。というか、きくたけさん自身、スパロボ外伝「魔装機神」の別バージョンの関係者だったりしますからね』
ヒノキ「FEAR社がスパロボにも関わっておったとはのう」
NOVA『サイバスターというロボットの版権はバンプレストが持っていて、サイバスターの故郷の地底世界ラ・ギアスの版権はウィンキーソフトが持っていて、その辺の業務提携が上手く行っていない時期があって、世紀末のその辺りで「ラ・ギアス以外の異世界でサイバスターを扱おう」としたバンプレストが、FEARさんに世界設定とシナリオ原案を依頼した経緯があるようですね』
ヒノキ「ラ・ギアス以外のサイバスターじゃと、こういう作品もあったのう」
NOVA「何だかんだ言って、サイバスターもしばしば異世界に迷い込む機体ですからね。その様や、まるで柊蓮司の如し、と思ってます」
ヒノキ「何だか無理やりスパロボからナイトウィザードに話をつなげおって」
NOVA『で、ナイトウィザードとセブン=フォートレスV3には普通につながるわけです』
ヒノキ「とにかく、セブン=フォートレスV3の時期には、いろいろとクロスオーバーが盛り上がったと、お主は言いたいわけじゃな」
NOVA『ええ、そうです』
ヒノキ「おい」
NOVA『何でしょう?』
ヒノキ「今さらV3の異世界サプリメントを貼りつけても誰得なのじゃ? 肝心のルールブックが手に入らんのに、サプリだけ手に入れても仕方なかろう」
NOVA『やはり、こっちを貼り付けるべきでしたか』
NOVA『七砦V3の世界観は、主舞台のラース=フェリアに、異世界エル=ネイシアとエルフレアが侵略して来て、さらにナイトウィザードの世界、現代地球に近いファー・ジ・アースが絡んできて、大混乱って状況ですが』
ヒノキ「それまでは、自分ところの悪役やプレイヤーキャラの大暴れで世界滅亡の危機だと言っておったのが、多元世界ものに世界観が広がったのじゃな」
NOVA『プレイヤーキャラが闇堕ちしてラスボス化するという前代未聞の展開を示すこともありましたからね、リーンの闇砦』
ヒノキ「その闇堕ちした魔術師ファラウスを担当していたのがFEAR社の社長である鈴吹氏だったのが笑える。社長の暴走に、副社長のきくたけGMは止めることもできずに、面白ければいっかの精神で、前代未聞の展開を示して、上手く辻褄合わせして、感動の最終話に仕立てたという」
NOVA『まあ、その原型がアルセイルのカニアーマーを装着した闇の魔道士キタローだとは思うのですが』
ヒノキ「星矢と違って、七砦のカニ鎧はネタ物ヒーローとして笑えつつ、格好いいキャラじゃったからのう」
NOVA『元々、初期2作のアルセイルやフォーチューンは素人っぽさが特徴の変なリプレイという目で見ていました。ホビージャパンのRPGマガジンに連載されていた軽妙なドタバタコメディー感覚で、TRPGリプレイの始祖たるロードスと続編クリスタニアが王道であり、そして軽妙さを売りにした山本さんのソード・ワールド(スチャラカ冒険隊)など人気リプレイがありつつ、各社、各雑誌が自社のRPGの宣伝も含めたリプレイを掲載して競い合っていたわけですな』
ヒノキ「その中で異色なのは、セブン=フォートレスが未発売のRPGを土台に、リプレイ記事のその場でルールや世界観をプレイヤーのアイデアや読者投稿を元に作り上げていった作品ということじゃな」
NOVA『読者投稿を元に設定が作られるのは、ロードス第2部の黄金剣のジルヴァーを初め、クリスタニアの傭兵募集やら、山本さんのSWアドベンチャーシリーズなど、いろいろとリアルタイムならではの逸話があったわけですが、GMの側でも素人の投稿をきちんとブラッシュアップして、作品世界の中で面白い物語として受け止めようという度量があってこそできる技でしたね』
ヒノキ「自分たちのアイデアが未完成の世界を膨らませるという感覚は、読者の創造心を刺激するものじゃのう」
NOVA『俺もウォーロック誌に3回ぐらい投稿したのが掲載されましたからね。一つは、二つの川の物語って企画で、冒険企画局の近藤功司さんから一度謝礼としてカードゲームの「モンスターメーカー」が送られてきたときは感動しましたもん。今でも、それは俺の宝物の一つですよ』
ヒノキ「投稿が掲載されるのは癖になるらしいの」
NOVA『今だと、ネットで同じ感覚があるのかもしれませんが、ただネットは自由に投稿できて、しかも管理人が取捨選択しなければ、どんなにつまらない発言や暴言でも掲載されて、遠慮がなくなりがちですが、とりわけ酷いものは後から削除されるというボツ認定で、勝手にダメージを喰らって逆恨みする者もいる』
ヒノキ「昔は投稿がボツを喰らうのが普通で、稀に採用された場合に承認欲求が満たされたりもしたものじゃがのう。今は『いいね』とかフォロワー数を承認欲求の糧にする者も多くいよう」
NOVA『で、セブン=フォートレスは展開している間、常時、読者さんのアイデア募集を続けていたのが凄いゲームなんですね。これはRPGマガジンもそうですが、1996年からFEARさんが「ゲーマーズ・フィールド」という自社刊行の雑誌を維持し続けたことが大きい。TRPG冬の時代で、SNEが一時期TRPGからの脱退を宣言せざるを得なかったのも、TRPG関連雑誌が軒並み亡くなったり、宗旨替えをしてトレーディングカードゲーム雑誌になったりしたためで、自社の出版する雑誌を持たない(他所の会社の編集部の意向に大きく左右される)せいでしたからね』
ヒノキ「TRPG界では老舗であっても、大手出版社の意向には逆らえない下請け企業みたいな立ち位置に甘んじていたために、売れるという保証がなければ作れないという状況もあったらしいのう」
NOVA『その辺の苦労話は、安田社長の自伝本なんかにも詳しく書かれてあって、当時の俺自身の状況と照らし合わせたりもしながら、改めて感じ入りましたからね。当時は見えていなかった社長の経営者としての苦労話とかもいろいろで』
ヒノキ「SNEがTRPGの展開をできなくなっている状況で、その残り火を守り続けたのがFEARさんだと聞いている」
NOVA『実のところ、SNEには阪神・淡路大震災のダメージもそれなりに残っていて、90年代後半は本当に厳しい状態だったんですね。で、これは俺も社長の自伝で初めて知ったのが、FEARさんの「ゲーマーズ・フィールド」誌に、ソード・ワールドなんかも相乗りさせてもらえないかと頼んでみたことがあったらしいんです。すると、FEARの鈴吹さんは「それはできないけれど、協力してソード・ワールドも載せられるTRPG専門誌を作りませんか?」的なことをおっしゃって、この雑誌が誕生するに至ったわけです』
ヒノキ「2003年スタートで、去年20周年記念じゃったのう」
NOVA『結果としては、この雑誌の創刊を機に、安田社長がTRPG復活宣言をして、5年ほど続いたTRPG冬の時代が終了した形になります。モンコレのおかげで収益はまかなえたものの、TRPG展開がしにくくなった自社視点だけを念頭に、ご自身の発言の影響力の大きさを考えずに「TRPGは死んだ発言」で、それでもTRPGを支え続けたFEARさんの奮闘の足を引っ張った形になった当時は正直おいおいおいおいと思ったものですが、ファンの立場として10年近く、FEARさんへの宗旨替えをしていたのが俺ですね。正直、TRPGを捨てた時期のSNEには個人的なモヤモヤもあって、魅力を感じなくなっていたですもん』
ヒノキ「それでも、無印ソード・ワールドの完全版ハードカバー本とか、GURPSの完全版ハードカバー本は買っていたのじゃろう?」
NOVA『まあ、過去の思い出メモリアルってところですね。当時の現在進行形では、やはりセブン=フォートレスとかナイトウィザードとか、あと前世紀末に最後のTRPGと言われたビーストバインド(1999)とかが俺の希望でしたね。結果として最後にならなくて良かったですが、先の見えないTRPG冬の時代はそれぐらい深刻だったということです』
ヒノキ「文字どおり、TRPGの世界崩壊の危機だったわけじゃな」
NOVA『ところで、ここまで延々と話してきて気がついたことがあります』
ヒノキ「何じゃ?」
NOVA『記事タイトルにある聖闘士星矢の話にちっともつながらないことです』
ヒノキ「おい」
改めて聖闘士星矢のエッセンス
NOVA『そんなわけで、記事タイトルを偽りにしないために、聖闘士星矢のエッセンスを考えてみたいと思います』
ヒノキ「それは前々回の記事で、3つほど挙げているじゃろう」
NOVA『1つは小宇宙(コスモ)ですね。これはプラーナという名前で再現されています』
ヒノキ「2つめは鎧もの……って、ラース=フェリアでは普通に鎧はみんな身につけているか」
NOVA『カニ座の聖闘士はいませんが、超古代兵器のカニアーマーはゲームの象徴アイテムになっていますからね。鎧もののエッセンスはばっちり満たしています』
ヒノキ「聖闘士独自の闘法は……」
NOVA『無印の段階で、武器を用いた剣技や、素手攻撃の武術である闘気法が魔法と同じような重要さでデータ化されています。魔法がMPを消費する一方で、剣技や闘気法はプラーナを消費するわけですね』
ヒノキ「つまり、セブン=フォートレスは最初の段階から、聖闘士星矢のエッセンスを十分に組み込んだシステムということか」
NOVA『2版のAdvancedの時点で、剣技や闘気法は割愛されましたが、サプリメントのClassicでバーニングアクションと共に復活。その後、バーニングアクションは大雑把なルールということもあって、しばらく消えていましたが、メビウスの上級ルールで、その要素を特殊能力として習得した炎属性の戦士バーニングナイトというクラスが実装されて、燃えるセリフを技として使えるようになりました』
ヒノキ「と言うことは、セブン=フォートレスはそのままで聖闘士星矢を再現できるということか」
NOVA『まあ、リプレイ5弾の「フレイスの炎砦」の前半は、完全に聖闘士星矢の物語のパロディと言えますからね。ここで、聖闘士星矢の物語エッセンスで大切な要素を一つ挙げておきます。ゲームシステムではなく、世界観の方ですね』
★世界を守護する立場にある女神もしくは神に通じる力を持つ巫女が存在していて、セカイ系の走りとなっている。彼女を守るために命をかけて戦う戦士たちが主人公で、ヒロインもしくは女上司を守ったり、その命令に従うことが世界を守ることにそのまま直結している。
ヒノキ「なるほど。女神アテナを守護するために戦う聖闘士たちというのが、これ以上はない根幹設定じゃな」
NOVA『そうです。その根幹設定を肉付けする要素として、小宇宙(コスモ)や聖衣(クロス)や各キャラの闘法が加わってくるわけですが、世界の守護者の女性と彼女の代理戦士、という要素を抜きに聖闘士星矢の世界観は成り立ちません』
ヒノキ「ちょっと待て。すると、それってナイトウィザードではないか?」
NOVA『ほぼ正解です。ちなみに、七砦の方では5作めのフレイスまで、きくたけさんはその聖闘士根幹設定を使っていません。つまり、セブン=フォートレスではゲームシステムの方に聖闘士星矢の要素をたっぷり導入しながら、ストーリーの方では聖闘士の根幹設定を全くパクっていなかったという事実です。しかし、現代魔法使いを題材にしたナイトウィザードと絡めるに当たって、聖闘士パロディを打ち出すことになる、と』
ヒノキ「それでV3なのじゃな。ようやく話がつながった」
NOVA『なお、聖闘士星矢は鎧ものというジャンルを築いた作品ですが、これは現代社会だからこそ成り立つジャンルですね』
ヒノキ「まあ、ヒロイックファンタジーの戦士は鎧を着るのが当たり前じゃからな」
NOVA『半裸の蛮人戦士もいますが、ファンタジー世界で鎧ものというジャンルはあまり意味を為しません。まあ、カニアーマーみたいな色物は別ですが。それと、鎧の装着というのは特撮ヒーローにおける変身の亜流で、それを如実に表現したのが平成ライダーの装着変身シリーズ。
『何だか、ラーリオス企画の際に「これからは鎧ものの再ブームが来る! という希望的観測を語っていた、時流が全く読めていない原案者」がいたのですが、こちらはそれを聞いて、モヤモヤを感じていたんですね。彼の予想は個人の思いつきで、根拠なく、しかも現実がまるで見えていない代物で、まあ当たるも八卦、外れるも八卦(でも外れ率が非常に高い割に、自分の発言の過去検証をほとんどしない無責任発言の常習犯)程度に聞いている方がいいと結論は出ているのですが、特撮界隈を丁寧に観測していると、「鎧ものはとっくに来ていて、いちいち、そういう要素だけで1ジャンルとはならない」のがゼロ年代の時流だったんですね』
ヒノキ「ええと、平成ライダーはパワーアップして、強化鎧をまとったりするか」
NOVA『戦隊もそうですし、ウルトラマンでもそうですね。当時のメビウスで、ウルトラマンヒカリが鎧を装着してハンターナイトツルギを名乗っていました。特撮者にとっては、ヒーローがフォームチェンジの一環で鎧をまとうのは当然というのが平成時代です。でも、まあ、星矢とかシュラトは彼の大事なバイブルみたいですし、いろいろな設定を混ぜこぜして創作ごっこをするのは、個人の遊びの範囲では問題ない。そこまで目くじら立てる代物でもない、と』
ヒノキ「確か、ラーリオスの根幹設定は、星矢と仮面ライダーBLACKの融合じゃったよな」
NOVA『その辺の作品は俺も好きなので、趣味に徹するなら、そしてエンタメであることを忘れないなら(変な宗教話とか、社会批判のネタにしないなら)、楽しく話せる相手と昔は思っていたんですね。パクリ云々は、趣味の二次創作と思えば、俺個人は気にしない。問題は、「彼は自分が平気でいっぱい下手くそなパクリをするのに、他人のパクリにいちいち目くじらを立てて罵る性向」があって、まさに「お前が言うな」の一言なんですが、それでも自分のパクリは許される根拠にきくたけさんを持って来たことで呆れました』
ヒノキ「きくたけ氏はパクリの名手と聞くが?」
NOVA『いいえ、パロディです。パクリはそのまま盗む。パロディは、まあ、「少年マンガやアニメのノリをゲームで再現する」が創作ポリシーですので、90年代はそれが許される時代というか、それによって素人作家がプロになれる時代だったんですね。そしてゼロ年代になると、時流が変わっている』
ヒノキ「どのように?」
NOVA『すでに業界の枠組みがある程度できていて、ラノベもTRPGも過去の焼き直しではなく、これまでにない新しいものを新人に求める時代というわけです。過去の焼き直しの中に、いかに新しい要素を取り込むかは、ヒット作を分析すれば、まともな批評家なら「ここが新しい。ここが再発見」という面白さの秘訣を論じるもの。まあ、三流批評家は、揚げ足取りしかできないし、けなすのは愚者の遊びというか、バカでもできる娯楽と考えてますが、それが自分の作品での欠点の穴埋めになって建設的なエネルギーに変わるケースもあるので、要はバランス感覚でしょう』
ヒノキ「まあ、何かを叩いて、何かを持ち上げるのに使うというのも、ネットでは嫌われる元じゃがな」
NOVA『何かを叩いて注目を浴びることで、承認欲求を満たすとか、議論の武者修行とか、いろいろとネット初心者のハシカみたいなものだし、それを生き甲斐に考える人間もいるでしょう。その点では俺も人のことは言えないわけですが、大事なのは批判して終わりではなく、代替案を示したりもしながら、それもまた議論の俎上に乗せて、責任を持って意見の精度を高める、という考えですね。
『山本さんも歯に絹着せずに無遠慮に他者批判を繰り返すところがあって、もしかすると、それが理由で小中高のイジメにあい続けたのかもしれないけど、その憤りをバネに換えて創作活動に励んでいた経緯が自伝を読んでも分かりますし、人間としての瑕疵と作品の面白さは別だと考えますから、そういうことで他人を攻撃したくはないのが俺の意見ですが、それでも、山本さんは根拠ある批判の原則を守ってますし、作品をきちんとチェックした上での批判だし、感情論では決してない(感情は結構入ってるけど、理屈はしっかり立てている)。そして、俺が山本さんを好きなのは、その博識ぶりと理屈のこね方で、あと好き嫌いがはっきりしている点。好きなものを語るときの、山本さんの褒めっぷりは作品の面白さを引き立ててくれるので、批判して終わりなのではないですね*2』
ヒノキ「というか、セブン=フォートレスの話に山本弘さんは関係ないじゃろう?」
NOVA『いや、関係は大ありですよ。きくたけさんが、自分のリプレイの手法に強い影響を与えた作家として、山本さんの「ソード・ワールド」リプレイを挙げているわけですし、Xポストでの弔辞にも感じ入りましたからね。今から、来月のこの雑誌が楽しみです』
ヒノキ「ともすれば、新兄さんの中の山本弘メモリアルボックスが開いてしまいがちじゃのう」
NOVA『いろいろなところに記憶の紐がつながってますからね。それはさておき、別氏の鎧の再ブームが来る発言から、もう2年で20周年になりますが、星矢に限ってはブームではなく、コンスタントに続けられて来たことを慶事と思いつつ』
ヒノキ「シュラトについては?」
NOVA『今年が35周年だから、あと5年経った頃に、40周年メモリアルがあるかどうかですね。シュラトについて語るなら、あかほりさとるさんについての話に広がりそうですが、それはさておき。俺自身の見解ではもう、鎧ものというジャンルのブームは来ないと思っています』
ヒノキ「鎧もののブームは来ないか?」
NOVA『80年代のブーム時は、鎧を着て戦う少年たちの絵面がまだ珍しかったから、ファンタジーRPGのブームと並行して、相乗効果で盛り上がった一面があるわけです。つまり、新奇性が武器になった。だけど、今は鎧というギミックが非常に浸透して、珍しくも何ともなくなっている。ブームというのは一過性のにわか需要の意なので、一度、忘れ去られたものがもう一度、再発掘されて、新世代の若者に新奇性を感じさせたときに再ブームの可能性はある。しかし、それには鎧ものというジャンルが忘れ去られる必要がある。
『聖闘士星矢? 何それ? と忘れ去られたときに、再び星矢か、そのエッセンスを汲んだ作品が盛り上がったら、それはブームと言えるかもしれない。しかし、星矢が忘れ去られたことはないと思うので、外伝コミックや玩具なども含めてコンスタントに続いているものに、アニメの続編などの盛り上がりはあっても、それはブームではないという考えです』
ヒノキ「新兄さんの中では、星矢がマイブームみたいじゃがのう」
NOVA『いろいろ語るネタはあるなかで、そこに目を向けているってだけですね。たぶん、来月にはキン肉マンとグレンダイザーがマイブームになってますよ。とりあえず、自分の身近なところで盛り上がってくれたら、それで楽しく話ができるので十分だという立場ですが、別に好きなものは世間のブームと関係なく、ずっと自分自身のお宝作品として愛を込めて語ればいいと思うんですよ(場違いにならない程度に)。
『で、鎧ものブームが来るってんなら、それをネタに小説を書こうって人間は、鎧というアイテムの魅力やこだわりを、言葉できちんと語れないとダメだと思います。鎧の何がいいのって聞かれて、熱く自分の中の鎧愛を語れない人間が面白い鎧もの作品を書けるはずがない。それこそ、牙狼の黄金鎧とか、装甲響鬼とか、仮面ライダー鎧武とか、鎧作品が出るたびにマイブーム来た、と喜べる人間じゃないとね。そういう日頃の研鑽がプロアマ問わず創作者の武器だと考えます』
ヒノキ「お前さんの例は、特撮だらけじゃないか!」
NOVA『アニメだと、鎧ものの後継者がセーラームーンとかプリキュアとか、ステージ衣装の方に置き換わってしまったんですね。あるいは、ゴブリンスレイヤーが鎧ものと言えるかもしれない。あの作品の鎧へのこだわりは凄いですよ。いや、武具全体のこだわりなんですけど。あとはシンフォギア(2012〜)ですか。「歌と鎧」と来たら、結局、美少女アイドル路線ですな』
ヒノキ「仮に、新たな鎧ものブームが来ているのに、アンテナの感度が低くてブームに気づかず、旬の話題のネタにできない人間に売れ筋云々を語る資格はないということか」
NOVA『語るのは自由です。だけど、話に面白みがなければ、誰もまともに相手にしないってだけです。で、鎧というギミックをどう面白く描くかが大事って話ですが、もっと大事なのは、女の子(お姫さま)を守って戦う下僕戦士の物語です』
ヒノキ「そ、それは第3世界エル=ネイシアの元ネタ!」
NOVA『ナイトウィザードの世界の守護者アンゼロットの元ネタでもあります。実は、聖闘士星矢のストーリーエッセンスの根幹を引き継いだのが、きくたけさん的にはこの作品だったという結論で。ずいぶんと遠回りをしてしまいましたが』
ヒノキ「全くじゃ。この作品はあれじゃろう? セーラームーンのパクリだともいう」
NOVA『それは、きくたけさん自身が否定していましたよ。セーラームーンのアニメは1992年から1997年まで。一方、きくたけさんの読者参加企画「セント★プリンセス」*3の時期は、93年から96年まで』
ヒノキ「やはり、時期的にはパクリと言われても、おかしくない」
NOVA『ところが、あれだけ元ネタがこれだとアピールするのが定番っぽい(元ネタアピールを恥じない)きくたけさんが、これについては制作秘話で、ネタの偶然の一致を主張している。まあ、読者参加企画が流行り物を取り入れても、読者ウケしたらそれでいいんじゃないの? と思えるわけですが、まさか、この世界がナイトウィザードとセブン=フォートレスにリンクしようとは、連載当時のきくたけさんは思いもしなかったに違いない』
ヒノキ「そこまで先の計画を見据えて考えていたとしたら、それはそれで凄いということになる」
NOVA『俺は当時、萌えのエッセンスの欠片も分からぬ、「理解不能」を繰り返す壊れたコンピューターのような男だったから、「だけど分かるぜ、燃える友情、君といっしょに悪を討つ」な偉大な勇者好きな男だったから、まさか、その30年後に「セント★プリンセス」について、これは実は聖闘士星矢のストーリー的後継者なんだ、と語っていようとは夢にも思わず』
ヒノキ「まあ、聖闘士星矢の後継者的にブームを起こしたのは、セーラームーンであることは間違いない事実だからして」
NOVA『前々々回の記事で、聖闘士星矢とセーラームーンを放送時間枠でつながりを指摘していたのも、ここに到達するための壮大な伏線でして』
ヒノキ「壮大すぎて、誰も気づかんわ、そんなこと!」
NOVA『とにかく、セント★プリンセス→ナイトウィザード→セブン=フォートレスV3につながる聖闘士星矢エッセンスの見事さと来たら、実に素晴らしい、と思う次第であります』
ヒノキ「第5世界エルフレアは?」
NOVA『ええと、これも別雑誌の「エイスエンジェル」という読者参加企画が元ネタらしいんですが、俺は当該雑誌を読んでなかったので、V3で初めて知って、ネットで背景を改めて勉強し直した経緯があります。本物の天使が戦いでいっぱい戦死したので、その砕け散った欠片(エンジェルシード)を普通の人間に埋め込んで人造天使として覚醒させる設定は、面白いと思いました。元ネタは勇者でない「超者ライディーン」かなと思いましたが、大事なのは元ネタをどう上手く料理したかってことですからね』
ヒノキ「天使と言えば、時代的にエヴァもある」
NOVA『当時は世紀末だから、天使ネタが随所でブームだったんですよ。天使に関する参考資料もいっぱい出ていたので、ブームというものは相乗効果で広がるものです。ただ、この第5世界の神は古代神、主八界全体では冥魔を生み出す邪神扱いされているもので、エルフレアのエンジェルシードも実は「ダークシード」だったという秘密が後付けで語られて、読者参加企画の人たちは全て知らないところで闇堕ちさせられていたという強烈な設定が組み込まれました』
ヒノキ「闇堕ち天使の世界だったとは」
NOVA『そんなわけで、かつての読者参加企画のその後の物語が、V3で語られて、自分たちが楽しんだ物語世界が敵となってラース=フェリアを侵略してくるという構図ですが、プレイヤーはそんな状況下で、自分の世界が邪悪に蝕まれていることに気づいて、ラース=フェリアを守る協力者として、裏切り者の汚名を着ながら誇らしく戦う星姫やら、星姫に従う下僕戦士&モンスターやら、光還りした人造堕天使をプレイできるようになる、というのがV3やメビウスの異世界サプリメントのコンセプトです』
ヒノキ「そこまで世界観があれこれ広がると、パクリが少々あったところで、圧倒的な質と量で、全部混ぜてオリジナル世界と言い張れる強みを持っておるのじゃな」
NOVA『その目的は全て読者を喜ばせ、楽しませることです、と明言しているのが、きくたけさんのプロ作家の矜持で、俺が尊敬するところですね。主八界は自分一人で作ったものではなくて、読者を楽しませるために生まれてきたと言って、読者を乗せるのが非常に上手い作家だと思います。読者を楽しませるためなら、自分も身内の同僚や部下も全てをネタにして、何でも取り込む貪欲なまでの追求心が武器と言えましょうか』
ヒノキ「全てを取り込むのじゃから、聖闘士星矢もその数あるネタの一つということじゃな」
NOVA『で、メビウスでスパロボも取り込み、本当に何でもあり感が強いのがセブン=フォートレスですが、それでもないものはあります』
ヒノキ「セブン=フォートレスの主八界にないもの、それは一体?」
NOVA『時代劇のサムライはないんですね。主八界いろいろあっても、基盤は全て西洋ファンタジーなんです。現代日本のナイトウィザードにも、陰陽師や忍者や拳法使いはいても、サムライはいない。まあ、魔剣使いなどで代用することになりますが、時代劇はきくたけさんの趣味ではなかったらしく、その辺は別のデザイナーさんのサポートで、別ゲームの素材に使うことでまかなった形になります。まあ、サムライをやりたきゃ、こっちをやれってことでしょう』
NOVA『他に、きくたけさん絡みでサムライができるファンタジーゲームは、こっちだと』
ヒノキ「似たようなファンタジー世界をいろいろ作っていても、その作品世界ごとの特徴やコンセプトがしっかり明言してある、と」
NOVA『そんなわけで、同じ現代アクションの「ナイトウィザード」と「アルシャードガイア」の区別も付けられていないにも関わらず、自分が知ってる「ナイトウィザード」を持ち上げ、よく知らない「アルシャードガイア」なんて必要ないと暴言吐いた自称ゲーマーがいて、どんどん俺の好感度を下げて行ったわけですが、リアル柊蓮司かよ(褒め言葉じゃない)と思ったのも10年ぐらい前の話ですな』
ヒノキ「お前さんは、ナイトウィザードよりもアルシャード派なのか?」
NOVA『どっちも好きですよ。ただ、ナイトウィザードよりはアルシャードの方が多様性があるとは思ってます。何せゼロ年代のスタンダードですから』
NOVA『なお、アリアンロッドでも、アルシャードガイアおよびセイヴァーでも、聖闘士星矢はできます。本当に、きくたけさんは星矢が好きなんだなあ、と。次は、そっち方面でも星矢話を続ける予定』
(当記事 完)