久々の語らい
リモートNOVA『ご無沙汰しております』
ヒノキ「うむ、2ヶ月ぶりじゃのう。先日は旧友が亡くなったとかで、傷心モードと聞いておったが、もういいのか?」
リモートNOVA『完全復帰とは言い難いですが、何よりも、これが宙ぶらりん状態ですね』
ヒノキ「ふむ、作者が亡くなったばかりのゲームで、楽しく盛り上がるのは難しいからのう」
NOVA『本を読むとか、歌を歌ったり聞いたりするのとは、また感覚が違いますな。それはそれとして、今のソード・ワールドは蛮族(バルバロス)推しになってます』
ヒノキ「5月にリプレイが出て、今月は2.5に蛮族PC導入のサプリが出る予定で、来月は追加データ(ドレイク・ブロウクン、ラミア、ラルヴァ)込みのシナリオ集が出ることになっていると」
NOVA『まあ、2.0時代のこれらのサプリの焼き直しなんですけどね』
ヒノキ「これで蛮族になってヒャッハープレイが楽しめる、と」
NOVA『割と、それってマニアックなプレイだと思うんですけどね。個人的には、リプレイで読むだけで十分のように思ったり。ベーテさんの新作リプレイは十分楽しませてもらいました』
ヒノキ「とりあえず、2.5のアルフレイム大陸には存在が消えていたラミアが復刻するだけでもめでたいのう」
NOVA『新種族もそれなりにってところですが、ミストグレイヴでお馴染みのバルカンは復刻しなかったのが、少し残念か、と』
ヒノキ「復刻しなくとも、2.0時代のデータを流用すれば良かろう」
NOVA『まあ、そうなんですけどね。それにしても、やはり今は残念なのが、こちらです』
ヒノキ「せっかくの新世界なのに、ワールドデザイナーのソード・ワールド最終作になってしまったからのう。ここからの発展性が期待しにくくなってしまった」
NOVA『ソード・ワールドにおける異世界転生ものとして、かなりの意欲作だったんですけどね。今後、こういうバブルワールド物が続くのかどうかも未定ですし、今は俺自身、あまりソード・ワールドのことを考えたい気分ではありません』
ヒノキ「では、何の話をしに来たのじゃ?」
NOVA『そうですね。とりあえず、俺が今、夢中になってるのは、これです』
聖闘士星矢のあれこれ系譜
NOVA『聖闘士星矢と言えば、1985年末に連載開始され、90年に連載が終了し、その後、2006年から続く後日譚にして過去編の「冥王神話」が18年の時を経て、ようやく終了を目前としているわけですが、TRPGや特撮ヒーローに与えた影響も結構大きいわけですよ』
ヒノキ「しかし、星矢の声優が、問題を起こしたようじゃのう」
NOVA『それは、スパロボのアムロさんや鋼鉄ジーグ、戦隊のアカレッドさん、あとウルトラマンUSAのスコットまで巻き込んでしまうので、被害が大きすぎる。そういうスキャンダルは勘弁して欲しかった。こうなったら、古谷さんの代わりに、蒼月昇さんを応援するしか』
ヒノキ「笑えないジョークじゃ」
NOVA『2004年に、リンかけがOVA化されて主人公の高嶺竜児の声を森田成一さんが担当したんですよ。それがきっかけなのか、2005年以降の星矢は森田さんが2代目声優として、定着しているみたいですな。2012〜14年のTVアニメ「聖闘士星矢Ω」では古谷さんが星矢役に復帰しましたが、それだけです』
ヒノキ「森田氏は、FF10(2001)の主人公ティーダの声が声優デビューらしいのう」
NOVA『ブレイクしたのは、2004年のBLEACHの主人公・黒崎一護かららしいですが、特撮的には2015年の仮面ライダードライブのラスボス、ゴルドドライブ(蛮野天十郎)の声であまりいいイメージがありません』
ヒノキ「で、声優話はともかくとして、星矢は原作ストーリーを再現した格闘アクション物として数多くのデジタルゲームにもなっておるが、TRPGとして星矢の世界観を楽しめる作品はないのう」
NOVA『まあ、そのものズバリの星矢RPGはありません。と言うのも、星矢の戦闘スタイルは基本的にタイマンなので、そのまま扱うとパーティ制のRPGとは相性が悪いわけです。しかし、星矢がギリシャ神話を題材としたファンタジー要素の強い作品で、数々の設定アイデアや演出アイデアが盛り込まれた画期的な作品であるため、いろいろな文脈から語られます。
『この要素を分析・抽出することで、星矢っぽさをTRPGに導入することが可能。この要素の分析・抽出をきちんと行って取捨選択することが創作センスというもので、ろくに分析もしないまま星矢要素を形だけマネすると、星矢の劣化コピーになってしまいます。星矢は鎧ものという新ジャンル、および等身大の徒手空拳キャラによるバトルチームのアクションアニメというジャンルまで確立。後世のエンタメフィクションに与えた影響も非常に大きいわけですよ』
ヒノキ「徒手空拳キャラのバトルチームのアクションアニメ……だと、それ以前になかったか? ドラゴンボールとか?」
NOVA『ドラゴンボールがアニメ化されたのは86年の春で、星矢は86年の秋ですから、ドラゴンボールの方が早いのは確かです。しかし、当初のドラゴンボールは冒険ファンタジーであり、バトルは冒険の一部でした。Zチームと名づけられたように、バトルチームのアクションアニメという形式が整ったのは89年の「ドラゴンボールZ」からです。
『そもそも、原作マンガから踏まえると、5人の仲間を基軸としたバトルアクションチームの構図は、リンかけ(1977)→小次郎(1982)を経て、星矢に受け継がれていますからね。5人というメンバー数は、当然ゴレンジャーなどの戦隊ものが開拓したチームメンバーの適正人数だと考えますが、3人もしくは5人がチームの絵的な見栄えと、個性づけのバランスが一番、機能すると考えられます』
ヒノキ「4人だと、主役をセンターに立てることが難しいからのう」
NOVA『プリキュアは、ふたりから始まったので、戦隊よりも柔軟に偶数チームを採用しますね。まあ、グループのメンバーの適正数はTRPGにも影響しますが、さておくとして、等身大ヒーローとしての仮面ライダー→チーム化した戦隊→変形メカロボの文脈→変身を着ぐるみスーツから鎧の装着に置き換え→超能力描写の演出を小宇宙(コスモ)に昇華→女神を守るというモチベーションも投入→星矢に結実という段取りを追っていくわけですな』
ヒノキ「その先は、星モチーフの美少年戦士チームである星矢→星モチーフの美少女戦士チームであるセーラームーン→紆余曲折を経てプリキュア→セインティア翔や星矢Ωという発展史が紡げるのう」
NOVA『この辺は東映アニメの文脈ですね。こういう継承の文脈を、安易にパクリとバカにするのは実に頭が悪いと思っています。進化継承の系統図をイメージするのは、リンネの分類学やダーウィンの進化論などに代表される学問の基本ですからね。もちろん、版権キャラを勝手に使って商売するとか、要素を抽出する手間もかけずに、そっくり用語まで引き写して同工異曲の作品に写し替えることを二番煎じとかマネし、と批判的に見なすのは感想として自由ですが、パクリという言葉に至ると、意味が盗作・盗用なので犯罪レベルで悪いイメージを植えつけてるんですよ。作品を批判するにも、安易に使うべき言葉ではない』
ヒノキ「文脈という流れや筋道を追っての発展継承を読みとれず、一部の点と点の類似だけを見つけて、鬼の首をとったかのようにパクリと騒ぐのは、頭が悪いと言うことかのう」
NOVA『そういう類似点に気付くこと自体はいいのですけど、気付いたものをわざわざ貶めるのが頭の悪さですね。せっかくの気付きからポジティブな考察につなげて建設的な話をするのでなく、悪口のネタとして消費して、悦に入っている姿のどこが頭良いと? 何かを発見して、叩くネタに使う人間と、面白いと感じて深堀りする人間のどちらが研究者かと言えば、当然後者でしょう。
『ネタ消費でも、それが明るいお笑いにつながれば、ユーモアセンスにもなりますが、パクリ認定は笑えないジョークの類ですからね。さらに言えば、正当な権利で扱っているものまで、パクリと決めつける無知さは、ひどいです。まあ、若い子が言葉を知らないゆえに、模倣をパクリと悪事のように言いがかりを付けるのはまだ微笑ましいですが、30過ぎたおっさんがそういう批判をするのは頭良く見えないな、と』
ヒノキ「ともあれ、星矢が86年当時では非常に画期的な作品ということじゃな」
NOVA『何か非常に画期的で斬新な作品が世に出ます。そうすると、先見性に満ちたクリエイターは、それに刺激されて自分達も似たような作品を試みに作ってみるわけですよ。そうして同工異曲の作品が、2、3年以内にどんどん生まれて、追随作品の質が良ければブームからジャンルが成立する。
『星矢一作では、鎧ものというジャンル名にはならない。「鎧伝サムライトルーパー」(88年)、「超音戦士ボーグマン」(88年)、「天空戦記シュラト」(89年)などなど、後続作品がいろいろと試行錯誤を重ねながら追随することで、ジャンルが成立するわけですな。ここまで来て、ようやく本家本元の星矢の評価が確定する。クリエイターにとって模倣されることは最大の称賛になるわけです。その空気を完全に変えたのが92年から始まる「セーラームーン」で、そこにも古谷徹の影が……』
ヒノキ「いやいや、そこから離れよ。セラムンはさておき、星矢じゃろう」
NOVA『星矢は土曜夜7時のテレ朝枠でしょ。その番組枠を辿ると、アニメはこうなるんですよ』
- 夢の星のボタンノーズ(85年):サンリオ初のアニメ
- 光の伝説(86年):新体操をテーマとした女子アニメ
- 聖闘士星矢(86〜89年)
- 悪魔くん(89年):水木しげるの原作アニメ
- もーれつア太郎(90年):赤塚不二夫の原作アニメのリメイク
- きんぎょ注意報!(91年):『なかよし』原作の少女ギャグアニメ
- セーラームーンシリーズ(92〜97年)
- キューティーハニーF(97年)
NOVA『これ以前とこれ以降は、バラエティー番組枠でしたので割愛。ともあれ、アニメの系譜を辿ると、星矢とセラムンは普通につながっているんですね。ただ、それ以外では、いろいろと試行錯誤の多い時間枠だったみたいですが、特に星矢の前後が本当に視聴者層のつながりがよく分からないレベルと思ってます』
ヒノキ「少女マンガのファンを、星矢に引き込んだのもあるかもしれん」
NOVA『そこからどうして、悪魔くんとかア太郎なんですか? 客層が全然、変わってるじゃないですか? 星矢ファンだった人間が、悪魔くんに飛びつくとは思いませんが』
ヒノキ「しかし、そこから別枠の『スーパービックリマン』(92年)につながる導線ができたとは思えんか?」
NOVA『まあ、女神のために戦う転生戦士の物語が、悪魔召喚と絡んでくると、背景にゲームの「女神転生」シリーズと絡める流れもあるわけですが、紆余曲折を経て、セラムンにつながって、それからハニーリメイクですからね。今は亡きアニメーターの荒木伸吾さんの文脈で語ることも可能ですが、それだと、こっちにもつながって来るわけです』
ヒノキ「星矢の話をしていて、グレンダイザーにつながるのが新兄さん脳というか何というか……」
NOVA『星矢に話を戻すと、等身大バトルに鎧という要素を持ち込んで、鎧破壊というピンチ描写を演出できるようにしたのが大きいんですね。ロボットだと、敵の攻撃で機体がダメージを受けている描写があっても、中のパイロットが傷つくような生々しい描写は避けられる。しかし、生身だと痛々しいものを星矢は鎧にヒビが入ったり、破壊されたりすることで、ロボットアニメの演出を等身大のキャラに置き換えることに成功した。それじゃないと、北斗の拳みたいな凄惨なバトルになってしまう』
ヒノキ「鎧とファンタジーじゃと、ダンバインの系譜があるが?」
NOVA『オカルト超能力のオーラ力を、小宇宙(コスモ)という造語で置き換えたのも星矢らしい発明ですね。何て強いオーラ力だ、を何て強い小宇宙(コスモ)だと用語置き換えできるのもいいし、この小宇宙(コスモ)という概念は仏教とその源流である古代インドのウパニシャッド哲学の梵我一如に通じる東洋思想の原理なんですよ』
ヒノキ「星矢はギリシャではないのか?」
NOVA『作者の車田さん自身は、リンかけや小次郎から分かるように、武道とか忍術とか基盤は東洋ですよ。ギリシャは、リンかけでは強大な敵で、大和魂の方が車田さんの本地です。ただ、星矢で「最初からギリシャその他の外国で修行した日本人」という設定で、上手く和洋折衷の世界観を生み出しましたが。この神秘的な東洋思想と、星座にまつわるグローバルな神話観が相まって、フランス人を始めとするヨーロッパ受けする物語となったわけで』
ヒノキ「フランスと言えば、グレンダイザーが受けた国民性じゃからのう。キャラとしては、やはり荒木絵の影響も大きいようじゃ」
NOVA『荒木絵と言えば、「ベルサイユのばら」もそうですからね。で、鎧というメカ風ながらファンタジックなビジュアルと、小宇宙(コスモ)という東洋哲学的な武道要素を取り込んだ設定が、ともに外国人に受けたわけです。あと、星矢はオカルトを科学的な用語で説明することもしています。「1秒間に百発以上の連打を打ち込む音速の流星拳」とか、それを遥かに凌駕する「黄金の光速拳」とか、冷静に考えると何それ? な無茶な設定をビジュアルインパクトと詳細な解説で、何となくありそうと作品世界のリアリティを構築する演出力は凄いです』
ヒノキ「『小宇宙(コスモ)を燃焼させて、原子を砕く』という説明も凄いのう。燃焼とか、原子とかの中学生レベルの科学用語に、小宇宙(コスモ)という専門語を加えることで、現実の科学でそれができないのは、一般人には生命の中に眠る小宇宙(コスモ)を観測できないから、と納得させられる」
NOVA『このコスモという言葉は、「風魔の小次郎」の聖剣戦争編で秩序(コスモ)と混沌(カオス)という勢力名で登場していましたが、コスモスという言葉には「秩序だった宇宙」という意味が古代ギリシャの数学者ピタゴラスによって提唱されたと言われており、語源的に秩序でも宇宙でも使えるわけですね。そして、ルネサンス期に「人間の中に神性を見出す人間主義」の観点から、マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙)という宇宙論(コスモロジー)が提唱されました。つまり、星矢の世界観は、古代ギリシャ→ルネサンス宇宙観→現代科学による観測を巧みに融合させて思想的説得力を高めているわけです』
ヒノキ「何の根拠もなく、勝手に話を捏造したわけではないのじゃな」
NOVA『ルネサンス以前は、キリスト教神学が西洋宇宙観の元になっていて、神が上で、人が下というのが中世の常識だったわけですが、ルネサンスの時期に人が神に縛られずに、もっと自由に考えて世の中を良くしようという人文主義運動が展開されます。つまり、「人が幸せになるために神なるものを必要としない。人の中に神性が宿っていて、それこそが獣の感情を凌駕した人らしい合理的精神、理性なのだ」とする思想ですね。その延長に、ニーチェの有名な「神は死んだ」宣言が来るわけですが』
ヒノキ「おい、新兄さん。その発言は、神霊たるわらわにケンカを売ってはおらんか?」
NOVA『いや、俺は思想史を語っているだけで、ニーチェの発言を是としているわけではないですが。現に、このルネサンス人文主義に基づいて小宇宙(コスモ)という概念を創作し、ファンに定着させた車田さんも、女神(アテナ)を否定していないでしょう。まあ、神が人を支配するのが正当と考える主神(ゼウス)たちに対して、人を愛する戦女神(アテナ)が反旗を翻して人間のために戦っているような構図が成り立っている感じですが』
ヒノキ「つまり、星矢という物語は、一見、女神のために戦う代理戦士のバトルを描きながら、その実、ルネサンス人文主義に基づく『神という概念の否定』に向かっておるのじゃな」
NOVA『ルネサンス期はまだ、神を否定はしていないですし、星矢でもそこは同じです。ただ、人間の自由を縛り、隷属させようとする傲慢な神に対しては、女神(アテナ)が人間愛の立場から反旗を翻している面はありますけど。人は神の従属物ではなくて、己が小宇宙(コスモ)を高めて輝いていける存在だという哲学にはなっています』
ヒノキ「それを人の傲慢だとする天上界の神々もいるわけじゃな」
NOVA『女神(アテナ)の父に相当する主神ゼウスがどういう考えを持っているのかは、まだ描かれていないので、天界編の帰結でそこまで到達できるのかが未定ですけどね。一応、ゼウスの意を汲むと思しき太陽神アポロンや月女神アルテミスは、人間贔屓のアテナを諌め止める立場を示しているみたいですが』
ヒノキ「作者の中では、人の自由を縛る主神に対しての反抗がテーマなのかのう」
NOVA『そこに至る前に、神の威信を見せつけるために地上に大被害を与えて人類支配をもくろむ海皇ポセイドンや冥王ハーデス、その他の外伝での悪役神と戦い続けているのが今ですけどね。そして、女神(アテナ)を倒して、自分が地上を支配すべきと考えている「神権簒奪の野心家」がいたりするから、話がややこしくなる』
ヒノキ「敵が天上界の神なのか、それとも神の権威に逆らって自ら神の座を奪取しようとする魔物なのか、それぞれの主張を見極めねばならぬ段階じゃな」
NOVA『ええ。このシリーズ終盤だと、そういう考察をしてもいいタイミングだと思いますよ。物語を普通に追っていると、女神(アテナ)に仕える聖闘士が中心の人間視点になりますが、神視点だとそれぞれの神がどういう思惑で動いているのか、「海皇再起」の外伝で違う視点が見えたりもしましたからね。これが天界編の構想につながると思えば、面白いと考えているのが今です』
ヒノキ「新兄さんとしては、どういう視点なのじゃ?」
NOVA『面白い物語を堪能し、いろいろと研究考察しながら、たまには俺も何かを紡いでみたい。今は、結んで紡いでつながる世界のキュアリリアンを応援する感じですね』
聖闘士星矢の時流の話
NOVA『ともあれ、聖闘士星矢は車田マンガの中でも、影響力が非常に大きく、神話と、メカっぽい聖衣と、男女それぞれの役割と、哲学性と、師弟のドラマと、愛情や友情といった情緒面と、奇跡の理由づけが非常に高いレベルでまとまった最高傑作と言えます。非常に懐が広くて、発展性も高い作品だったのは、アニメやゲーム、実写映画も含めた派生作の数からも証明できているわけで、玩具の装着変身もまた一つの革命でしたな』
ヒノキ「言わば、聖衣(クロス)は男児の着せ替え人形みたいなものじゃのう」
NOVA『素体人形に、女の子はファッション性のある可愛い服をあれこれ着せたがるのに対して、男の子は武器やメカニカルなギミックを装着させて格好良さを感じたがるものなんですね。古くは変身サイボーグとか、ミクロマンにオプションの武装パーツを付けたり、乗り物に乗せて走らせたり。女の子がドールハウス的な玩具を好むのに対し、男の子は基地とか母艦にいろいろと収納させたり、武器を持ち替えたりする形で人形遊びを楽しんだわけです』
ヒノキ「で、オブジェ形態に変形する聖衣(クロス)がヒット商品になった。その発展形が、1号ロボのアーマーパーツになる2号ロボの戦隊や勇者ロボだし、鎧と武装オプションはSDガンダムの方向にも発展した。その先の21世紀に平成ライダーのクウガ以降の装着変身シリーズがある、と」
NOVA『女の子が、現実では着にくいキラキラドレスに憧れたりして、着せ替え人形で遊び、そこから成長した中には服飾デザイナーの道や、ファッション関連の職業を目指したりする一方で、男の子は、現実で着にくい鎧や武装、メカに憧れたりして、同じくフィギュアと周辺玩具で遊び、そこから成長した中には造形モデラーの道や、エンジニア関連の職業を目指したりする流れですな』
ヒノキ「それは少し男女の偏見ではあるまいか?」
NOVA『傾向性という意味で語ってみましたが、女の子とドレス、男の子と鎧という組み合わせが逆転して、女の子が鎧というのは割と定着していると思います。一方で、ドレスを着た男の子というのは、『男の娘』という特殊属性に思えますな。これはズボンを履いた女の子はありなのに、スカートを履いた男の子というのが違和感というのに近いかも』
ヒノキ「つまり、女性が男性の領域に入るのは社会的に推奨されているが、男性が女性の領域に入るのはどうかという話じゃな」
NOVA『女性が聖闘士になるのはOKでも、男性がセインティアになるのは、どうよってものです。まあ、男性がプリキュアになるケースも、少しずつ出て来ましたし、戦隊ピンクが男というケースも出ましたので、時代が変われば、違う価値観が常識になってる未来も考えられます。時流に合わせられない輩は、社会の表舞台から消えて化石になってしまうのが世の常ですから』
ヒノキ「プリキュアと聖闘士で時流を語るのもどうかと思うが、文化史というものは、そういう学問らしいのう」
NOVA『個々の作品を粗探しして批判するのではなく、作品の生まれた背景や周囲への影響力、シリーズの流れからの立ち位置を含めて、その作品の位置付けを決めるわけですね。ともあれ、星矢は85年に連載開始で、その年の戦隊ヒーローは電撃戦隊チェンジマン。これがまた星矢に通じる演出を持った戦隊なわけですよ』
ヒノキ「メンバーのうち3人(ドラゴン、ペガサス、フェニックス)が青銅聖闘士じゃな」
NOVA『残りの2人(グリフォンとマーメイド)は、冥闘士(スペクター)と海闘士(マリーナ)ですな。ここで言いたいのは、戦隊シリーズで初めてファンタジーの伝説獣モチーフを採用して、彼らが技を使うときに背景に伝説獣のイメージが浮かび上がる演出です』
ヒノキ「ああ、技エフェクトにイメージ絵が採用されたということか」
NOVA『戦隊の中ではチェンジマンが初めてですね。アニメだと、古くは「巨人の星」の星飛雄馬の背景に不死鳥が浮かび上がったり、ライバルの花形の背後に阪神タイガースの虎が浮かんだりする演出もあって、対決劇を盛り上げてくれましたが、80年代の半ばの戦隊はアニメで培われた演出を実写の中に取り込み、そこから逆にアニメにもまたフィードバックされる相互の影響の与え合いが見られるわけですな。とりわけ、星矢は星座モチーフなので、背景イメージ演出の宝庫です』
NOVA『この背景に、その戦士を象徴するモチーフが映し出されるケレン味演出は、コミックや映像作品ならではの格好良さで、小説の文章では描きにくいと思いますな。まあ、一瞬幻のように浮かび上がる心象風景的なものがせいぜい。これはまた陽炎のように立ち昇る小宇宙(コスモ)のビジュアルイメージも、例えばダンバインのオーラが輝く様とか、チェンジマンの力の源であるアースフォースとか、この時期の類例が積み重なって、淡い透過光の小宇宙(コスモ)イメージが完成する流れがあって、演出に感銘することも』
星矢とD&Dの入り口
NOVA『で、星矢については、いろいろと語るネタが多いのですが、まずは分かりやすくD&Dの神さまの属性を紹介して、今回の記事は終わりましょう』
ヒノキ「D&Dの神さまにアテナとかポセイドンは登場するのか?」
NOVA『AD&D初版の神さまデータ集には、そういうデータもあったらしいですが、いろいろと怒られたらしくて、以降はそれぞれのワールドごとに独自の神さまを設定しました。で、今の5版を買ったときに感心したのは、リアル神話のうちメジャーなケルト、ギリシャ、エジプト、北欧の簡単な神さまリストが載ってあって、DMが独自に自分の世界に登場させられる、もしくは参考資料に使えるようになっているんです。細かいデータは自作しないといけませんが、大まかな指針は与えられている、と』
ヒノキ「ほう。では、アテナはどんな感じじゃ?」
D&D5版のアテナと聖闘士
NOVA『アテナは、知恵と文明の女神で、性格はローフルグッド(秩序にして善)です。推奨領域は、戦か知識のどちらかを選ぶことができます』
ヒノキ「聖闘士になりたければ、戦を選ぶのじゃな」
NOVA『聖闘士っぽいクラスが、パラディンかモンクかクレリックかで迷うところですが、今回は神格の影響を受けやすいクレリックについて考えましょう。普通のクレリックは武器と鎧にちょっとした制限があるのですが、戦の神の使徒は軍用武器と重装鎧を使いこなすことができます。前線で戦うのに不自由はございませんよ』
ヒノキ「しかし、アテナの聖闘士は徒手空拳が基本じゃろう」
NOVA『モンクとクレリックをマルチすることで、再現できそうですけどね。まあ、モンクの能力に重点を置くなら、鎧を装備できることにあまり意味はないような気もするのですが、鎧を脱いだ方が強くなれるドラゴン紫龍を再現できそうです』
ヒノキ「モンクとクレリックとパラディンの能力を適度に取捨選択した聖闘士というオリジナルクラスを作成した方が良いかもしれんのう。本気でD&Dで星矢をしたければ」
NOVA『しかし、全員が同じ聖闘士というクラスでも芸がないような気がします。徒手空拳が得意なモンク聖闘士(鎧はフレーバー)か、神の魔法が一番使えるクレリック聖闘士か、オーラの力で自己強化できるパラディン聖闘士かに仲間の役割を振り分けるといいかも』
ヒノキ「キグナス氷河なぞ、前衛戦士というよりも、氷魔法を使う魔法使いのような役割じゃしのう」
NOVA『ある意味、一番、戦闘スタイルが分かりやすいのが氷河ですね。凍結系しか技がないので、ブリザド(弱氷)=ダイヤモンド・ダスト、ブリザラ(中氷)=ホーロドニー・スメルチ、ブリザガ(強氷)=オーロラ・エクスキューションみたいな使い分けしかしていない』
ヒノキ「一応、相手の動きを封じるカリツォー(氷結リング)も使えるじゃろう」
NOVA『星矢は敏捷特化で、攻撃回数は一番多い。とりあえず、TRPGで考えるなら、軽戦士なのは間違いない。ゲームが違えば、鍵開けや罠外しなんかも担当させたいぐらいだ』
ヒノキ「リンかけじゃと、石松みたいなキャラが一番、動かしやすかったみたいで、車田氏は以降、主人公を高嶺竜児よりも石松属性(単純明快な熱血漢、ちょっとおバカな陽キャラ。なぜか獣には好かれる)で構築することが多い感じじゃのう」
NOVA『たぶん、一番バカでスケベなのが小次郎で、バカ2号なのが麟童で、星矢は時々バカだけど、基本は竜児の後継のシスコンと認識してます。まあ、戦闘スタイルはとりあえずジャンプして突っ込む石松スタイルってことで』
ヒノキ「戦いは好きじゃない高嶺竜児のスタイルを一番、受け継いでいるのが瞬じゃな」
NOVA『彼のキャラは、竜児と影道総帥と河井さんを足して3で割った感じですな。顔つきは、小次郎の霧風だけど。技は星雲鎖(ネビュラチェーン)の応用技が主要キャラの中でも一番多彩で、攻防一体の白羽陣的な使い手で、その意味で項羽と小龍兄弟の属性も持っているか。バトルドラマ的にも一番属性の多い最強キャラなために、全力で戦うまでに貯めなきゃいけないCP(コスモポイント)が一番高そうだ。もしかすると、CP(コスモポイント)以外にMP(メンタルポイント)も貯めないと、ネビュラストリームは撃てないのかもしれない』
ヒノキ「技を発動するのに、CPの他にMPも消費しないといけないのか」
NOVA『星矢RPGを作るなら、小宇宙(コスモ)が貯まってないと、大技が使えないというのが定番でしょうね。その辺のゲージを貯めるシステムは、最初の星矢(コミックやアニメ)終了後の90年代に流行した格闘ゲームが実装するようになったけど。とりあえず、流星拳はCP2点ぐらいで撃てる。そして、流星拳を撃てば撃つほど、CPがどんどん貯まっていき、貯まったCPに応じて攻撃回数と威力が上がっていき、そのうち、大技の彗星拳かローリングクラッシュにつなげる。とにかく、流星拳と星雲鎖とダイヤモンドダストは即撃てる基本技だと』
ヒノキ「盧山昇龍覇はどうなのじゃ?」
NOVA『後年になってもドラゴン最大の奥義と言ってますから(初期状態ならともかく、技が増えてからは嘘になってるけど)、たぶん流星拳の倍のCP4が必要なので、数はそれほど撃てないんじゃないかなあ。まずは相手の攻撃を盾で受け止めて、CPを貯めながら、必殺の昇竜覇で一気に倒すスタイル……のはずだったんだけど、ドラゴンの聖衣は重武装なので命中率が悪い。聖衣そのものの攻撃力や防御力は青銅5人の中で最強なんだけど、CPが貯まりにくいのが紫龍の弱点。
『だから、聖衣を脱ぐことで、CPが一気に貯まるという特殊能力を持っている。そして、破壊力抜群の昇龍覇を放つんだけど、黄金聖闘士辺りだと破壊力不足が露呈する。だから、後から習得したエクスカリバーが便利なんだけど、これも聖衣を着てると使えないとか、とりあえず紫龍は聖衣を脱いでCPを貯めないと本領が発揮できないという、リスキーなキャラ構築をしているわけです』
ヒノキ「最強技の亢龍覇が自爆技じゃしのう」
NOVA『もう、特殊能力《自己犠牲》でも持ってるんじゃないですかね。自分を逆境に追い込めば追い込むほど、CPが爆発的に貯まって、大技を発動させやすくなるとか』
ヒノキ「あとは知識系の技能を持ってそうじゃな。『そう言えば、昔、老師から聞いたことがある』という前置きで、どんどん蘊蓄を語ってくれる」
NOVA『その辺のロールプレイは楽しそうですね。ある意味、一輝兄さんに次いで、ロールプレイが楽しそうだと思っているのが紫龍です。死にそうで死なないのが紫龍で、そもそも全く死にそうにないし、死んでも不死鳥とか言って、勝手に蘇って来るのが一輝兄さん』
ヒノキ「聖闘士の主要キャラは基本、死なんじゃろう」
NOVA『死んでも、女神の加護で復活しますからね。逆に、女神の加護が切れるとゲームオーバーなので、そこが命綱なんだけど、死なないものの戦闘不能状態はいっぱいある。まあ、瞬の場合は、戦闘不能状態になると特殊能力《やっぱり来てくれたんだね、一輝兄さん》が発動するのが定番』
ヒノキ「実は、管理データが一番多いキャラかもしれんのう。CP(コスモポイント)の他に、ネビュラストリーム発動に使うMP(メンタルポイント)と、兄さん召喚のために使うIP(イッキポイント)とか」
NOVA「メンタルポイントは、NP(ネビュラポイント)の方がいいかも。あるいは、発動条件は星雲鎖が破壊されていることかもしれないし」
ヒノキ「聖衣の破壊は、かなりCPが高まりそうじゃのう」
NOVA『あと、五感が使えなくなることでCPが貯まります。そして、セブンセンシズの領域までポイントが貯まると、技の強さが一気に向上するとか、いろいろルールが考えられますね。ああ、何だか作りたくなってきた、星矢RPG。今さらですが』
ヒノキ「サプリメントとして、海将軍になれるルールとか、冥闘士になれるルールも付けるといいのじゃ」
NOVA『売り文句が「君も小宇宙(コスモ)を燃やせる」とか、そんな感じですね。まあ、とっくに誰かが同人RPGで作ってるだろうし、それを作るには30年ぐらい遅いと思います』
ヒノキ「星矢っぽい小ネタなら、いろいろなゲームが実装しておるしのう」
知恵の女神アテナ
NOVA『で、女神よりも聖闘士をゲームにしたら、の話に夢中になってましたが、話を切り替えます。星矢の沙織さんを見ていると、全くそんなキャラに見えないのですが、ギリシャ神話の本来のアテナって、知恵の女神で法律とか文化を守ろうって感じなんですよね』
ヒノキ「城戸沙織嬢よりは、過去世のサーシャの方が本来のアテナに近い性格かもしれん」
NOVA『沙織さんは財閥令嬢として育てられたから、本来のアテナよりも勝ち気で、好戦的なのかもしれませんな。知恵の女神としてのアテナは、D&Dでは知識の領域呪文を与えてくれます』
ヒノキ「たとえば?」
NOVA『アイデンティファイ(アイテム識別)とかコマンド(命令)などですね。戦女神は戦闘能力を高める支援系呪文をボーナス呪文として与えてくれるのに対し、知恵の女神は情報収集系と交渉系の呪文を授けてくれます』
ヒノキ「沙織さんのキャラではないのう」
NOVA『さらに呪文以外の特殊能力として、知識系の技能を余分にくれたり、他人の心を読む読心術や、物品および空間の記憶を幻視したりができるようになります』
ヒノキ「車田マンガにはあまりいないタイプの能力じゃのう」
NOVA『そんな能力を持っていれば、教皇が別人に成り代わっていることとか、簡単に分かってしまって、物語が成立しにくくなりますからね。情報収集しての推理を楽しむマンガじゃなくて、バトルアクションを楽しむマンガですので、知恵を駆使して状況解決する能力は必要ない、と』
ヒノキ「むしろ、それ系の能力は医司のオデッセウスの方が得意なのではないか? 眠ってる相手の夢から情報を得たりが可能」
NOVA『オデさんがいたおかげで、冥王神話の謎ときがいろいろ進みましたからね。言わば、広がった物語の風呂敷を畳むのに最も貢献してくれたキャラと言えます。そして、そういう知恵袋的な役どころも、本来は教皇が担当するものかもしれません。星矢世界では、教皇が敵になる局面が目立つので、まともに教皇として仕事してるのって、LCのセージぐらいじゃないですかね。アリエスのシオンは、サガに殺される前は優秀な知恵役として機能してそうでしたけど』
ヒノキ「なるほど。すると、冥王神話の後の聖域は苦労しそうじゃのう。戦えるキャラはいても、知恵ある軍師キャラが生き残っておらん」
NOVA『黄金聖闘士が全滅してしまいましたからねえ。Ωを見る限りは、新たな黄金が登場して、何とかなってるとは思うのですが、あの人たちはどこからスカウトして来たのか、今さら気になるところです。普通に考えたら、老師譲りの知恵のありそうな紫龍が教皇の地位に相応しいのかな、とは思いますけど』
ヒノキ「まあ、人材獲得に苦労したから、聖闘士養成学校なるものを作って、いろいろ原作と異なるアニメならではの世界観を再構築したと言えよう。Ω独自の世界観は、パラレルワールドということで、そこからの発展形が作られぬ限りは、正史認定しにくいのう」
NOVA『星矢という題材は、ガンダムに追随するレベルで広がりましたからねえ。聖闘士星矢マガジンとか、全ての作品を網羅した聖闘士星矢大全なるムック本を企画しても、行けるんじゃないかと思っています』
海皇ポセイドンと主神ゼウス
ヒノキ「何故に、ポセイドンとゼウスをいっしょにまとめるんじゃ?」
NOVA『それがD&D的には、どちらも嵐の領域を司る神さまで、クレリックの能力が同じなんですね。データ的に違うのは、ゼウスが完全中立で、ポセイドンは混沌にして中立ということぐらい』
ヒノキ「どちらも善良ではないのじゃな」
NOVA『ギリシャの神で、D&D的に善良認定されているのは、アテナの他に、美の女神アフロディテ(混沌にして善)、太陽神アポロ(混沌にして善)、月女神アルテミス(中立にして善)など、いろいろいますが、アテナと同じ(秩序にして善)が他にいないというか、秩序の神というのがアテナの従者の戦女神ニケと、冥王ハーデス(秩序にして悪)だけというのが、いかにもギリシャっぽいというか、しかも主神が善良認定されていない神話体系はこれぐらい』
ヒノキ「ゼウスは自由奔放さが際立っておるからのう」
NOVA『ある意味、一番のトリックスターみたいなところがありますからねえ。星矢に登場したら、どんな奴になるのか、ちっとも想像できません。リンかけに登場したゼウスは、なかなかの傑物でしたが、リンかけ2の息子のゼウス2世が父親の評判を完全に失墜させてしまいましたから』
ヒノキ「それに比べて、ポセイドンの評価はなかなか安定しておるようじゃのう」
NOVA『ロボット名としても、好きな神ですね。バビル2世とか、ゲッターロボとか、海属性としては最高でしょう。ローマ神話のネプチューンでもどっちが上かは意見が分かれるかもしれませんが、俺的にネプチューンはXライダーの1号怪人か、セーラーウラヌスの相方のイメージなので、威厳を感じるのはポセイドン。やはり、「ポセイドンは海を行け♪」の歌詞で焼きついています』
ヒノキ「しかし、D&Dのポセイドンは海ではなくて、嵐の領域と」
NOVA『そもそも、5版は海領域の信仰属性が設定されていないですからね。あるのは、基本ルールで、欺き、嵐、戦、自然、生命、知識、光の7属性で、それに敵キャラ用の死の領域がDMガイドに載っている』
ヒノキ「サプリメントにもいろいろあるじゃろう」
NOVA『ザナサーには鍛治と墓場が、ターシャには規律と黄昏と平和の属性が加わりましたが、詳細は別の機会に』
ヒノキ「とにかく、ゼウスもポセイドンも信仰領域としては同じ嵐の属性、と」
NOVA『嵐の神は、戦の神同様に軍用武器と重装鎧の習熟を与えてくれますので、前衛クレリックをプレイしたいならお勧めですね。ただし、戦の神は攻撃回数を増やしてくれますが、嵐の神は攻撃回数が増えず、代わりに稲妻系の攻撃呪文が充実しています』
ヒノキ「つまり、サポート呪文も使いながら武器でガンガン攻撃するのが戦の神で、嵐の神は前線で殴りながら派手な魔法攻撃でバリバリに戦うキャラじゃな」
NOVA『自分や仲間の攻防強化バフを重ねながら武器で殴り倒す戦士寄りなのと、攻撃魔法と武器の両方で集団戦の殲滅力に特化した魔法使い寄りの違いです』
ヒノキ「しかし、魔法使い寄りだと、わざわざ前線に出て来る必要がないのでは?」
NOVA『いや、嵐の神クレリックが前線に出る意味がありまして、特殊能力〈嵐の怒り〉で接近戦攻撃に対してカウンターダメージを返すことができるのです。嵐の神の従者を殴ると、その身に帯びた電撃でダメージを被ってしまう。うかつに殴ると、それなりに被害を受けるわけですな』
ヒノキ「接近戦では危険な相手じゃが、距離を空けて飛び道具を使うと?」
NOVA『嵐の神は遠距離戦も得意ですからね。戦の神が接近戦特化なのに対し、嵐の神はどの距離でもダメージを振り撒く戦い方ができる。そして、「神に唾なす者はダメージが己が身に返って来る」というセリフが似合うのは嵐の神だと』
ヒノキ「殴ったら殴り返されるのではなく、殴ったら雷属性のバリアで自動的にダメージが返ってくる、と」
NOVA『いやあ、いいですね。「殴ってみろよ。命が惜しくないならな」ってセリフが似合うキャラって。そのままズンズンと歩みを進めて、バリバリと稲妻のエフェクトを背景に浮かべながら、相手にプレッシャーを与えるキャラを想像すると格好いい』
冥王ハーデス
NOVA『そして、基本的には悪役のハーデスさんです。ただし、秩序は重んじるので、むやみやたらに暴れるわけではない。しっかりとした計画性に基づいて、地上征服を狙っている知的な悪役ってイメージですな。行き当たりばったりで衝動的にヒャッハーとやる小物ではなくて、死という絶対的な理に基づく己の理想郷を構築するために、アテナの統治する地上を狙っている、と』
ヒノキ「アテナは地上を統治しているのか?」
NOVA『星矢の劇中では、そのように見えないですけどね。グラード財団の政治的影響力がどの程度かが描写されていませんが、ポセイドンことジュリアン・ソロが覚醒前に海洋交易王という立場で、城戸沙織のグラード財団と提携すれば、地球のすべては思うがままみたいなことを言ってプロポーズしていたので、あの世界の経済力でもトップクラスなのではないか、と推察されます』
ヒノキ「現代のアテナとポセイドンは、経済的基盤がしっかりしているのに、ハーデスはどうじゃろうか?」
NOVA『ハーデスは金銭よりも芸術性に重点を置いているような感じですね。金は死後の世界に持って行けないけど、絵画や音楽などの芸術作品は生死の境を越えて、永遠を感じさせるとかで』
ヒノキ「琴座のオルフェに関するエピソードからも察せられようか。ところで、死の領域と、サプリメントで追加された墓場の領域はどう違うのじゃ?」
NOVA『死は、死霊術系の特殊能力や生命力吸収など、アンデッド関連の領域ですね。一方、墓場は生命と死の両方に精通していて、悪ではないから、プレイヤーキャラにも推奨できる。アンデッドに対しては、死を冒涜するので滅するべきという立場ですが、生前の未練や無念によって亡者化した相手の場合は、その願望を叶えることで安らかな死を与えることを是とする。葬儀を司る神官は、死ではなく墓場領域の価値観に近いと思われますね』
ヒノキ「なるほど。死後の生命を目指し、この世を死で満たそうとする亡者万歳なのが死の神官で、一方の墓場の神官は、生死の境界線をしっかり守り、迷い出た者を導くなり、本来の居場所に追い返すなりして、より良き生と、より良き死を志す、と」
NOVA『死という概念に対する見方が真逆ですな。死者の国を現世に呼び起こそうとし、それこそが理想郷とするのが死の神官。死者はおとなしく死んでおけ、ただし現世でやり残したことがあるなら、話を聞いて助けてやってもいいとするのが墓場の神官です』
ヒノキ「ある意味、生死を司る裁判官みたいなところがあるのう、墓場の神官は」
NOVA『それと、鬼太郎やえん魔くんなんかに見られる妖怪退治の魔界捜査官みたいなところもあります。妖怪に対しては詳しく、親和的な面も持っているけど、人間社会の秩序を乱さないように悪い妖怪に絞って退治している一面が』
ヒノキ「文字どおり墓場の鬼太郎か」
NOVA『これはDM視点ですけど、こういう特殊な設定のキャラクターで物語を作るなら、どういう筋書きならいいか、と考えるのは創作の練習になります。まあ、物語の展開に合わせて、最初に設定したキャラクターの性格が噛み合わず、追加設定を加えて調整することもしばしばですが』
ヒノキ「うむ。プレイヤーキャラの設定と、用意したシナリオの方向性が噛み合わないケースもよくあって、プレイヤーとGMの相談が必要だったりもする」
NOVA『D&Dで基本ルールの設定は、割と汎用的に使い勝手が良いように作られていますが、サプリメントの追加設定は、結構、癖が強いので、その癖をどう理解するかが一つの面白さと思います』
ヒノキ「悪役として、アンデッド使いはよくあるキャラなので、死の神ハーデスの神官が敵役データとして載っておるのは納得。しかし、ルール化されてあれば、多面的な視点で、悪役っぽいキャラを味方で使いたいという発想が出て来ることは自然の成り行きじゃろう」
NOVA『ソード・ワールドの蛮族もそうですけど、敵だったキャラを味方として扱うにはどうすればいいか。味方になれば、こんなに頼もしい仲間はいないというケースもあるし、味方にしてもトラブルメーカーで頭を抱えるというケースもあったり、また普通は悪役という性格のキャラを主人公にしたら? という発想は実験的でアイデア元として面白いと思いますね』
ヒノキ「問題は、それがストーリーを動かすうえで機能するかどうかじゃな」
NOVA『奇抜な設定は思いついたけど、書き進めてみないと、どう転ぶかは分からない。最初は奇抜な設定で書き始めたのに、書き進めるうちに手癖で結局いつものキャラに落ち着くケースもあるし、物語として収拾つかなくなって、どうするか扱いに困ってしまうのはプロ作家でもたまによくあることみたいですね』
ヒノキ「その辺のキャラ同士の噛み合わせや、キャラと物語の噛み合わせをどうして行くかが創作の醍醐味とも言えるし、そのままカオスな勢いで突き進むケースもあれば、軌道修正を図ったり(初期設定も自然に変更させたり)、大爆発か何かでリセットボタンを押してから数年後展開を見せたり、いろいろなドラマの転がしようがある」
NOVA『何とか辻褄合わせで、第一部終了。そして、状況を一回整理して、次の第二部の物語が動き出すまでに、少し進行ペースを下げるか、一時中断して先の展開を練り上げてから再スタートとか、先の展開をあれこれ考えてみたら、打ち切り通告を受けて、せっかくの伏線が機能しないままに終わったとか、考えていた設定が使えなくなったので、いつかどこかで雪辱を晴らせたらいいな、とか』
ヒノキ「で、冥王ハーデスについては、どうまとめる?」
NOVA『星矢では、基本的に敵役のボスとして扱われましたが、「海皇再起」でアテナに敗れた後のハーデス魂の登場で笑えました。また200何年後に滅びた体を再生させて、地上支配を目論んでいるわけですね。でも、その前に地球を滅ぼそうとする小娘ネメシス神が動き出したから、後で支配するつもりの地球が壊されてしまってはたまらない。アテナは宿敵だけど、ネメシスはもっと迷惑なので、ポセイドンさん、じゃじゃ馬ネメシスを何とかして〜、君のところの海将軍を(一時的に)蘇らせてやっからって話です』
ヒノキ「何と。かつての敵役2人が手を組んで、主人公不在の地球を守るために共闘する話か」
NOVA『ポセイドンとは和解したから、彼が主役の話と聞いても、それほど変だとは思わなかったのですが、ハーデスがそのように動く点で、これはいいと笑えました。というか、沙織さんがもっと神として交渉力をいっぱい付けたら、ポセイドンにしても、ハーデスにしても、上手く平和的に和解できたりするんじゃないの、これ? と思いましたね』
ヒノキ「戦う前に最初から和解してしまうと、バトル物としてはつまらんじゃろう」
NOVA『ですね。だから、沙織さんはアテナ本来の持つ知恵が発揮できずに、どちらかと言えば、アテネ市ではなくスパルタ市のような価値観で行動している面があります』
ヒノキ「スパルタは、どの神を崇めておるのじゃ?」
NOVA『トロイア戦争期は、アテナとポセイドンが味方して、トロイア側に味方するアフロディテ、アレス、アポロン、アルテミスと激突したわけで、あの物語は神々の代理戦争的な意味も持っているのですが、それはさておきスパルタ人(自分たちはラケダイモン人と呼称)は英雄ヘラクレスの末裔だと名乗ってます。ヘラクレスはD&Dでは神的英雄として、神格化されていますので、スパルタもヘラクレス信者と考えていいでしょう』
ヒノキ「ヘラクレスか」
NOVA『ヘラクレスは混沌にして善、嵐と戦いの両方の属性を持っていて、沙織さんと聖闘士の偉業はヘラクレスの伝説を元ネタにしているものも結構あります。というか、沙織さん自身の性格が「自分では戦わないヘラクレス」なのでは、と。つまり、ヘラクレスの要素を沙織と各聖闘士に分散させて再構成したのが「聖闘士星矢」になるのでは、と主張してみるわけですよ』
ヒノキ「ヘラクレス座の聖闘士っておらんかったか?」
NOVA『います。白銀聖闘士のアルゲティという巨漢の敵(技名はコルネホロス=棍棒使いの意で、怪力で相手を弾き飛ばすパワー系=車田世界では総じてかませ系)がいましたが、射手座の黄金聖衣を着けた星矢に瞬殺されましたな。まあ、英雄ヘラクレスっぽいキャラ付けが黄金や青銅に配分されましたので、アルゲティは名前のみの出がらし状態だったと思います。とにかく、沙織さんの偉業はヘラクレスっぽいって話です』
ヒノキ「まあ、アテナもヘラクレスも大神ゼウスの子である点は同じじゃからのう」
NOVA『ということで、D&Dとギリシャ神話と聖闘士星矢をテキトーに絡めた雑談記事でした。次は、もう少し星矢と他のTRPG話を絡めて話すつもりです』
(当記事 完)










