花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、D&Dを中心に世紀末前後のTRPGの懐古話を不定期展開中。

ガメラと次元トラベラー

ゲンブさんのスーパー風〜呂〜タイム

 

   我はゲンブ。

   正式なコードネームは、ジェネラル・バックラー。

   ヒノキ三獣士の一角であったが、今はただ一人。

   東の将セイリュウは失踪したまま、行方知れず。

   西の将ビャッコの忘れ形見シロは、花粉症ガールの粉杉翔花殿の従者として、結界に覆われた屋久島の地に、修行の旅に出かけて、もうすぐ一年になるが今だ戻らず。

   その間に、このコンパーニュの塔も新たな地に移転し、時代も切り替わって、令和となった。

 

   さて、思い返せば、この一年、多くのことがあったものよ。

   昨年6月に粉杉殿と一戦を交え、平成仮面ライダー1号クウガの力に敗れ、我は未熟さを思い知らされた。

   そう、旧世紀の過去に囚われ、未来を見失っていた閉塞さを。

   あるいは、劇場映画のみを至高とし、歴史を積み上げてきたTVのスーパーヒーローを見下していた傲慢さを。

   花粉症ガールと、その父親の新星殿が打ち破り、迷妄の目を開かせてくれた。

 

   その後、放送された仮面ライダージオウで、改めて平成ライダーの歴史を学ぶようになり、

   そして、ついに登場した令和の象徴、仮面ライダーT(タロウ)。

   みんなの笑顔のために、自分の腹筋を崩壊させてまで、明るく振る舞う芸人魂に、我の武人の心は熱く震えたものよ。

   しかし、悪の使者、滅亡迅雷.netの魔の手に掛かり、タロウの正義の心は醜く塗り替えられた。

   そう、人類を滅ぼす破壊の使者と化したタロウは、新ヒーロー・ゼロワンに令和の象徴の地位を譲り渡し、はかなく散ったのだ。

 

   されど、想いは受け継がれる。

   平成ライダーの想いは、時代を超えて令和ライダーに。

   みんなの笑顔を守りたい想いは、みんなの笑顔を生み出したい想いに。

   なればこそ、我もまた、新時代にふさわしい令和ガメラに覚醒すべく、この地獄の業火風呂にて、己の来し方を振り返りながら、熱く瞑想するのみでござる。

 

   散って行った同志や先達、若者の想いをどう受け止めればいいか、と一筋の涙を浮かべつつも、生きている者として己が為すべきことを果たさんと誓いを立てる。

  この至高の一瞬を……

 

AIの声『ゲンブ様。このコンパーニュ上空に時空震動を探知。至急、対処するよう求めます』

 

   何?

   時空震動だと?

   ええい、アリナ様が外出中のこんな時に、一体、何が起こると言うのか?

   コンピューター、待っていろ。

   すぐに風呂から上がって、管制室に行く。

   その間に、可能な限りのデータを集めて、原因を特定せよ。

   味方なら良し。敵対勢力なら、このゲンブが命に代えても食い止めてみせるでござる。

 

秘湯・宇宙温泉の3人

 

ドクター・ウルシェード「いやあ、この浮遊感はま〜さ〜に、宇宙そのもの。それでいて、子守唄のよう〜なリズムで逆巻く波の流〜動〜感を演出するとは、さすが〜音に聞くコンパーニュの温泉よ。苦難の冒険の数々を切り抜けた後の報酬としては、ま〜こ〜と〜に絶〜品といえよう」

ハイラス「ふむふむ。温泉なるものに入るのは、これが初めてでござ〜るが悪くはない。入る前は神聖なる泉が温かいなど有り得ん、と思うておったが、これだけ旅の疲れを癒せるとは思わなんだでござ〜る。これも大地の祝福と感謝の祈りを捧げむべきなり」

ゲンブ「お二方のお気に召していただき、このゲンブ、恐悦至極にてござる。思い返せば、ドクター殿と次元ドルイド殿には、昨年、新星殿のところの合同Xマスパーティーでお会いして以来であった。それ以降はじっくり会話を交わす機会もなく、ご無沙汰しておったが、この度、突然、次元の壁を突き破って宇宙船アストロ・メガネウラが出現した時は、たいそう驚き申した。事前に来訪の連絡を受けていれば、もっと歓迎の準備を整えていたものを。ちょうど、主人の日野木アリナ様も席を外しておるもので、何のお構いもできず申し訳ござらん」

ドクター「まあ、そう堅くな〜るな、ゲンさんや〜。わしらはちょうど次元の海を漂流していたのでな。言わ〜ば、あんたに救われたようなもの。長旅の汗をこうしてのんびり流せ〜るだけでも、まことにありがたい。過酷な試練を乗り越えて、ようやく見知った顔に出会えた喜びはいか〜ばかりか。そうだろう、ハイちゃん」

ハイラス「そのハイちゃんはやめるように、と何度言ったら分かるでござ〜るか、ドクター殿。それはそうと、武人殿の温泉歓待は十分なお構いになっているので、心配ご無用。そもそも我らドルイド無為自然を大切に考えるゆえ、余計に気遣いを受ける方が居心地悪くてな。こうして、塔にお招きいただいただけでも感銘しているでござ〜るよ」

ゲンブ「先程から気になってはいたが、そのござ〜る口調は何でござるか?」

ハイラス「ドクターと一緒に旅している間に、何だか変なイントネーションが移ってしまったでござ〜るよ。海の日にちょっくら外出するだけだったのが、とんだ大冒険になってしまったでござ〜る」

ドクター「な〜にを、他人事みたいに語っておるか。全ては、お主の呪いの作用ではないか。次元転移の呪いで、突然、ど〜こ〜に飛ばされるか分からないとは、DD、次元(ディメンション)ドルイドとはよく言ったものよ。おかげで、貴重なデータが取れたわけだが、それにしても年寄りの身にはちとキツかったのも事実」

ハイラス「まことに済まなかったでござ〜る。ドクターがいなければ、こうして元の世界に帰ることも難しかったであろう」

ゲンブ「う〜ん、話がよく読めんでござる。一体、どういう経緯があったか、もう少し詳しく話していただけぬか」

ドクター「この風呂につかりながらか?   さすがに、それはのぼせてしまうだろう。だからして風呂上がりにでも、じ〜っくり語ってやるゆえに、ありが〜たく聞くがよい」

 

次元ドルイドとドクターの大冒険(抜粋)

 

ドクター「事の起こりは、こう〜いうことだ」

ゲンブ「はあ。海の日に、気分転換のつもりで遊びに行こうと考えたでござるな」

ドクター「遊びじゃな〜い。時空監視の仕事だ。そして、ほんの1日か2日、長くても1週間足らずで帰〜ってくる予定だったんだよ」

ハイラス「しかし、アストロ・メガネウラに乗って移動している最中に、私の呪いが発動してしまったでござ〜る」

ゲンブ「その呪いとは?」

ハイラス「自分の意思とは関わりなく、突然、異世界転移をしてしまう呪い。この私が次元ドルイドと呼ばれるのも、この呪いのためでござ〜る」

ゲンブ「すると、今こうして話している間も、いつ呪いが発動するか分からないでござるか?」

ハイラス「いや、今は大分、落ち着いたでござ〜る。すぐに転移する危険はない……ような気がする」

ゲンブ「何だか、あやふやでござるな」

ドクター「だいじょ〜ぶ。次元位相パルスは今のところ安定してお〜る。科学的にも、今は呪いが沈静化している時期だ〜と断言してよい」

ゲンブ「呪いを科学的な装置で測定できるのでござるか?」

ドクター「呪いの原理など、科学で解明されていないことはあ〜る。だがしか〜し、生じる事象については、観測できる現象が明らかにな〜って、複数回の実証データさえ取れれば検証することも可能にな〜るし、測定装置を作ることも不可能ではな〜い。少なくと〜も、ハイちゃんの呪いが発動する際には、その前段階として次元位相パルスが異〜常に振動することは解明済みよ。あとは、このパルスをど〜うすれば活性化させられるか、あるいは抑制できるかを実験すれば、呪いの原理も明〜らかになるかもしれん……が、それにはいろいろと危険が伴〜うので、軽々しくは行えんのだだだッ」

ゲンブ「いわゆる人体実験の類でござるか?」

ドクター「いや〜、そこまで直接的でなくとも、パルスを人為的に活性化させて、時空転移させたとしよう。しか〜し、それだけではハイちゃんがどこに行ったか分からないし、連れ戻せる保証もな〜い。パルスの流れを読み取って、転移先がどこかを突き止める技術や、転移した相手を帰還させる術を用意しない限り、ハイちゃんをうかつに飛ばすわけには〜いかんじゃろう。貴重な観測材料を失うリスクは軽々しく冒せんのだよ」

ゲンブ「貴重な観測材料でござるか。人間をそのように見なすなど……」

ドクター「あ〜く〜ま〜で〜、科学者の見地で言ったまでの話だ。わしは、ハイちゃんをかけが〜えのない友人であり、仲間だと思っているので、危険な実験で失わせたくはな〜い……と言えば満足か?」

ハイラス「ドクターは、その点、人道的な科学者でござ〜るよ。少なくとも、面白そうだからという理由で、人や生き物を傷つけるようなことはしない、と今回の冒険行で確信できた」

ゲンブ「当事者がそう納得しているのであれば、我が口を挟むことではござらんが、ともかく今しばらくは呪いの心配をする必要はないでござるな」

ハイラス「時空魔術師のNOVA殿に師事して、呪いの法則の一端も分かったでござ〜る。この呪いは、多元世界の時空の乱れに反応して活性化するようだ。1年前は次元嵐に応じて、この度は時の魔王や、世界の破壊者や、タイムジャッカーや、クォーツァーといった輩が活動しまくった上、戦隊方面でも夏に恐竜時代に飛ばされたりしていたから、活性化するのも道理というもの。それを知っていながら、注意が疎かになっていたのが最大の不始末であったでござ〜る」

ゲンブ「注意といっても、どのように注意すればよいでござるか?」

ハイラス「そもそも、アステロイド監視所から外に出なければ良かったでござ〜る。あそこは、かつて〈事象の分岐点〉と呼ばれ、次元エネルギーが中和化される一種の安全地帯。次元嵐というイレギュラーな災害には見舞われたものの、基本的には波風立たぬ平穏な場所でござ〜る。それなのに、その状態を当然のものと考えてしまった私は、ドクターの誘いに乗って海へ出かけてしまった。それゆえに、呪いがここぞとばかり活性化、これまでにない勢いで時空転移を繰り返す羽目になったでござる」

ドクター「ちょ〜っと行って、すぐに帰れば大丈夫だろう……って考えた、わしも迂闊だったのう。これもジ・オウやディ・ケイド、それに、わしの後輩に当たる騎士竜の連中が、この夏、時空の壁を破〜りまくって、次元の歪みが異常に大きくなり過ぎていたのが悪い。秋になって、よ〜うやく落ち着きを見せたから、こうして帰って来ることができたのだよ」

ハイラス「不幸中の幸いだったのは、ドクターのメガネウラに乗っていたこと。さもなくば、氷の惑星やマグマの惑星に飛ばされた時には、いかに私のドルイド呪文の防護作用があったとしても、耐えきれなかったであろう」

ドクター「ああ、我〜がア〜ストロ・メガネウラは超〜次元航行能力を備えているからな。アストラルの海であろうと、魔空空間のような一種のブラックホ〜ルであろうと、幻夢界のような一種のホワイトホ〜ルであろうと、何とか耐えられるようにできておる。何しろ、バ〜ド星の超科学なんかも参考にもしたからな。これで我がメガネンジャーがいつスペ〜ス・スクワッドにスカウトされても、駆けつけることができ〜るはず。もっとも、今だに坂本監督からは〜何も言って来な〜いが」

ゲンブ「坂本監督と言えば、最近作はこれでござるか?」 

ドクター「その作品は、加藤弘之監督と聞くが。坂本監督はスペース・スクワッド担当だが、それはちと違うらしいし、そもそも、あの人はルパパトもキュウレンもTVシリーズにはタッチしておらんかったはず。それはそうと、今は坂本監督はこちらで忙しいと思われる」


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ハイラス「何だかんだ言って、メガネイエローことアリサ隊員も、坂本監督と同じイベントに参加しておるではござ〜らんか」

ドクター「う〜む、彼女は元はと言えば、NOVA司令が強〜引にメガネンジャーにスカウトした経緯があ〜るからな。司令ご執心の彼女が、今年は結婚したかと思いきや、戦隊に出演してマ〜イナソーの親になったり、その後、ウルトライベントに出演したと思ったら、今度は仮面ラ〜イダーグリスにも出演。そのうち、牙狼で魔戒法師の役をしても不思議じゃな〜いほどのフットワークの軽さを示して、さすがは難波重〜工の女スパイと感心しきりであ〜る」


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ゲンブ「元々、メガネンジャーは特撮ヒーローたちの活躍の陰で、応援して祈りを捧げるバックアップ戦隊だと認識していたでござるが、ならば彼女のようにスパイとして潜り込める人材は貴重ではござらんか」

ドクター「確かにスパイは貴重であ〜る。特に、最新のテクノ〜ロジーを調査して、我らの科学技術に貢献してくれるような人材はな」

ゲンブ「で、結局、いろいろ寄り道したでござるが、ドクター殿とドルイド殿は、次々と次元転移を重ねて、今ここに至ったでござるな。おそらく、その中では数多くの冒険やドラマがあったであろうが、全てを語るには一つの記事では済まないほどということでよろしいか」

ドクター「うむ。よくて、1クール10数話にはなるであろう。機会があれば、語ってもよいが今はその時ではない。それよりも、ゲンさんにはお土産がある」

ゲンブ「お土産でござるか?」

ドクター「そう。コンパーニュより兼ねてから預かって、改修作業をしていた例のマシンだ」

 

帰ってきたラビットタンク

 

ゲンブ「おお。我がラビットタンクがついに仕上がったでござるか」

ドクター「うむ。今回の諸々の時空転移時にも、現地の探索活動で大いに役立ってもらった。メガネウラでは小回りが利かなかったものでな。これが現状の報告書および仕様書の抜粋だ」

★ラビットタンク改の機能

 

1.分離機能

   上部のスカイラビットと下部のグランタンクに分離可能。

 

2.スカイラビット

   高機動戦闘機。また、四肢を展開して地上の跳躍撹乱戦法が可能なラビットフォームに変形することも可能。

 

3.グランタンク

   ホバー走行の重戦車。また、ドリルとキャラピラを展開して、万能地底戦車ドリルフォームに変形することも可能。

 

4.ロボへの合体変形機能

   スカイラビットが頭部と胸部に変形。グランタンクが胴部と腕部と下半身に変形し、スカイラビットを収納するように合体。人型ロボット『武玄ラビタン∞(インフィニティー)』になる。

   必殺技は、右腕に掲げたドリルを軸に、相手に高速回転突撃を敢行するインフィニティー・ドリルクラッシャー。

 

5.動力源

   ラビットタンクの動力源は、古代遺跡から発掘された無限再生エネルギーを生み出すオーパーツ『インフィニティー・コア』である。

   コアは太陽光や風力など自然エネルギーを動力に変換する機能があり、ラビットタンクの活動時間は実質的に半永久とも言えるが、単位時間に蓄えられるエネルギー量はそれほど多くない。1日エネルギーを蓄えて、3分間戦える程度と計測されている。

   そして、ラビットタンクのエネルギー容量は、最大1時間の戦闘を可能にするが、エネルギーが枯渇した場合、フル充填するためには20日を要する。

   ただし、戦闘行為に要するエネルギーは莫大なため、非戦闘の移動手段として通常使用する上では、それほど消耗することもない。ゆえに、改修前のラビットタンク(非武装)では、エネルギーを気にすることなく運用できた。

 

6.次元跳躍・時空転移機能

   タイムジャッカー対策のために、試験的に実装してみたが、エネルギー問題のために実用性に欠ける機能。

   時空転移を試みると、エネルギーをほぼ使い果たしてしまうので、連続使用はできないし、戦闘行為で消耗した際には使用不能。さらに時空転移の直後には無力にもなるわけで、タイムマシンとして使うには不安定である。

   さらに、ラビットタンクには、転移先の座標を事前探査するガイドナビ機能が搭載されていないので、いつどこに転移してしまうかは全くランダムである。

   この欠点を解消するためには、大型母艦であるアストロ・メガネウラとのデータリンク、および消耗したエネルギーを外部から補充する供給機構の確立が望ましいが、それについては現在未改修である。

 

ゲンブ「動力源だと?  これまで考えたこともなかったでござる。遺跡から発掘したものを、そのまま運用していただけであったから」

ドクター「そうであろうな。コンパ〜ニュには、科学知識に長けた技術者がいないため、ルァビットタンクもこれまで整備や燃料補給を一切行わずに運用してきたと見える。逆に言えば、インフィニティー・コゥアの無限エネルギ〜生成機能とッ、そ〜れから半・生体自己修復機能があ〜ればこそ、問題な〜く活用できたと言えるが」

ゲンブ「半生体でござるか?」

ハイラス「その通り。ラビットタンクは半ば生物のように生きているでござ〜る。生命体と違うのは、増殖しない点。しかし、自己再生する上、私の治癒呪文でも破損部位が回復する上、ラビットフォームなどはドルイドの私の意思に応じてくれる。それゆえ、機械音痴の私にも扱うことができたわけで」

ドクター「言わ〜ば、生物と機械のハイブリ〜ッド・マシンということだな、その名の通り。わしらの獣電竜ほ〜ど明確な意思を有しているわけではないがッ、機構面では生物の長所と機械の長所を合わ〜せ持つのがルァビットタンク。ブラ〜ックボックスなインフィニティー・コゥアと合わせて、たい〜へん貴重な研究材料であった」

ゲンブ「貴重な研究材料でござるか。すると、まだ研究を続けたいのでは?」

ドクター「いやいや。これ以上は、ど〜うもわしの手に余る気がしてな。わしの専門は海と宇宙、それに多少の生体工学やエネルギー理論なんかもかじってはおるがッ、古代遺跡とか〜魔法とか〜人工知能とか〜そっちの分野は専門外。一度、他の専門家の知見に接したり〜、実践運用して機能を検証したり〜など、違った角度からそいつの研究に当たった方がいい、と考える。ルァビットタンクは確かに未知の技術の宝庫であるがッ、わし一人で解明し尽くすことは不可能。ゆえ〜に、一度、お主の手に戻して、運用報告してもらう方がいいと判断した次第。正直、そいつ一体に関わっていると、時間食い虫で他の研究ができなくなるほどで、ここら〜が手の引き時かと。もちろ〜ん、使ってみて、また問題があるようであれば、整備修繕ぐらいは引き受けるがな」

ゲンブ「いやいや。お手数をお掛け申した。うむ、話を聞いた限り、それほどまで凄い機体とは思いも知らず、ただの古いメカとばかり。しかし、古さでは我も同じで、古代文明の遺産というだけでも親近感を覚えたわけで、いろいろ研究解析をしてもらえたことには感謝を表明する」

ハイラス「ラビットタンクは確かに機械でござ〜るが、それでも乗り手の想いを受け取ることができるマシン。人型に姿を変えることで、ますます人の想いを発現できるやもしれぬ。くれぐれも大切に扱われよ」

ゲンブ「ご忠言、心に留めるでござるよ。ともあれ、これで外の世界へ自由に買い出しに出かけられるようにもなった。生活の足として役だってもらうぞ、ラビットタンクよ」

ドクター「……これだけの機能を付けたマシ〜ンで、日常の買い物とは」

ハイラス「牛刀をもって鶏を割く、でござ〜る」

 

そして屋久島へ

 

ドクター「さて、風呂にも入〜ってさっぱりしたし、預か〜っていたものも届けたし、ここでの用事は済んだ。また旅立つとするか、ハイちゃん」

ハイラス「ええ、ドクター。次の目的地へ急がねば」

ゲンブ「そんなに急に、どこへ行かれると言うのでござるか?」

ドクター「うむ。ここより南の海上に、強〜い時空の歪みを感知してのう。元々は、海の監視に出かけたはずが、いろいろ寄り道をしたわけで、改めて異常に気づいた以上は時空監視の仕事をしなければ、NOVA司令に申し訳が立たん」

ハイラス「それに、我がドルイドの直感でござ〜るが、大地の声が呼んでいるような気がしてな」

ゲンブ「南の海上というと、もしかして屋久島でござろうか?」

ドクター「北緯30度、東経130度の辺りというところまでは分かっておる。ここで地図を確認できるだろうか?   どうもアーストロ・メガネウラのマップ機能が異世界転移の連続で壊れてしまったようで、修復とデータの整理もせねばならん」

ゲンブ「北緯30度、東経130度でござるか。コンピューター、場所をモニターに映し出すでござる」

AIの声『了解しました。はい、どうぞ』

ゲンブ「む、大隈半島南の海上60キロメートルの辺り、確かに屋久島でござる」

ドクター「これは驚いた。コンパーニュの塔にコンピューターがあったとは」

ゲンブ「アリナ様は精霊ネットの管理をされているゆえ、ここにも精霊コンピューターを備えているでござるよ。我にも詳しい技術はよく分からんが、スプライトがどうこうとか、霊子とかブートとか、専門用語をいっぱい話しておられた。近年は召喚魔法にもコンピューターを駆使した技術が見られ、召喚プログラムなるもので儀式用の魔法陣を簡単に描けるようにもなったと聞く。ゆえに、コンピューターに無知では対魔の仕事にも支障をきたすため、精霊と言えども文明の利器は学ばねば、とおっしゃっておられた。我はその辺はさっぱりでござるが、設置された機器やマシンを扱うぐらいのことは何とか学んだでござる」

ハイラス「なるほど。私もこの世界に来て、電子の精霊である電霊なるものを知ったときは、驚いたでござ〜る。マニトゥがどうこうとか、未知の精霊の知識をどう学ぼうかと四苦八苦している最中。ともあれ、目的地は屋久島ということだが、そこは確か、花粉症ガールの修行の地だったと記憶するが」

ゲンブ「その通り。結界に包まれて侵入ができないとされていたが、新星殿がうちのシロと粉杉翔花どのを転移させることに成功した」

ハイラス「ふむ。その地で時空の歪みとは、やはり様子見に赴くべきでござ〜るな」

ゲンブ「ならば、我も随行した方がよいであろうか」

ドクター「い〜や、ゲンさんはコンパーニュに待機してくれ。わしとハイちゃんがメガネウラで屋久島の上空に近づいて、現地の様子を観測する。異常がはっきりして、助っ人が必要となれば、こちらから連絡しよう。その場合、日野木アリナ殿やNOVA司令にも出向いてもらうことになるかも知れん」

ゲンブ「なるほど、心得たでござる。呼ばれたら、すぐにラビットタンクで応援に駆けつけるでござる」

 

ドクター「ならば、いざ行かん。屋久島の海へ」

ハイラス「それを言うなら、屋久島の地へ、でござ〜る」

(当記事 完)