神殿改修計画
GM(ヒノキ)「前回、お主たち〈烈火団〉は『【蛇の酒蔵】でワインを買ってくる』というミッションを引き受けた」
デル(リトル)「宿屋を営むレジスタンス組織〈銀の蜜蜂〉の表の仕事の手伝いで、信用を稼いでいこうってことだなぁ」
ホリー(シロ)「コヨミやミサの信用を得るためにも、このミッションは何としてでも果たさないと。ホリー姉さんは見た目が怖くても、優しくて頼りになる良い人だってことを証明してみせる」
デル「どうして、姉さんはそこまであの娘たちに執着するんだよぉ」
ホリー「これもTRPGのテクニックの一つなんだよ。物語でキャラ立ちする方法は、いくつもあるけど、大切なのは他のキャラとの絡みだな。自分一人でどれだけ設定を濃くしても、それは実際のプレイでは独り善がりに過ぎないことがある。物語というものは、一人で紡ぐものではないからな。プレイヤーキャラ同士のコミュニケーションや、NPCとの関わりが物語を紡ぐんだ。それにホリーの性格に『矜持:弱者を見捨てない』『裏執着:魅力的な女性は無視できない』というのがあってだな。幼女とは弱者であり、魅力的な女性である以上は、ボクが彼女たちに執着することこそが、ロールプレイの王道なんだ」
デル「う〜ん、オラはホリー姉さんのことを『勇気ある人だから尊敬してる』って思っていたけど、最近の振り切れた言動を見ていると、見る目を変えてもいいんじゃないかなぁ。アリナ様、こういうキャラ同士の関係性って変えるルールはないのぉ?」
GM「そうじゃのう。ビルドブックで設定された要素はあくまで初期段階のもので、物語が進展するにつれて、実情とはそぐわなくなることもある。プレイ中により良い関係性が見つかった時には、GMとの話し合いの末に、『キャラ成長時に新たに置き換える』ことを選んでも良かろう」
デル「よし、このミッションを果たした後で、ホリー姉さんとの関係性を見つめ直すんだぁ」
GM「ヒヒヒ、人間関係の危機というやつかのう。まあ、物語の進展で、キャラ同士の関係性が変化することはよくあることじゃからな。今のセイバーも、仲間の絆云々と言っていたことが嘘みたいにギクシャクしていて、その代わり、おふざけコメディエンヌじゃった編集ガールの芽依嬢が『倫太郎ラブなテンションマックス仕切り役』という一時のノリを忘れたかのように『主人公を心配する真っ当なヒロイン』と化しておる。たった一月でここまで変わるのもストーリー転換のダイナミズムと言えようか」
ホリー「うう、大事な弟分のデルに嫌われてしまったのか、ボクはそれが心配だよう」
G太郎(ゲンブ)「ところで、アリナ様。一つ相談があるのでござるが」
GM「ほう、お主も何か考えたことがあるのか?」
G太郎「うむ。前回、我らが探索した【亡者の神殿】を【解放された神殿】として、拠点にするという方針であったが、ライフォス神殿をここに堂々と復興させるというのは、蛮族世界では甚だ危険だと考える。そこで、表向きはここを神殿ではなく、【烈火団の本部】という形にして、我らが運営管理するというのではどうだろうか?」
GM「【烈火団の本部】じゃと? それはまた、大胆な申し出じゃのう」
G太郎「人族の神殿が復興という形だと、隣に位置する煌びやか卿も警戒するでござろう。神殿が〈解放軍〉の前線基地として警戒されるような形は、我らとしても今後の活動に支障をきたす可能性が大きい。そこで、蛮族にも名が知れ渡ってきた〈魔神ハンター・烈火団〉が、神殿に巣食う亡者を退治して、ここを拠点に定めて、人族の奴隷をこき使って本部を立ち上げたという表向きの体面を整えれば、人族蛮族ともに納得できるのではあるまいか。もちろん、煌びやか卿にその旨を打診して、我らに害意がないことを示すとともに、〈解放軍〉のマルクスにも『実質は前線基地であるにしても、表看板は偽装しないと過剰に敵意を煽るだけ』と諭して、協力関係を崩さない旨を伝える。すなわち、人蛮双方の激突を我ら烈火団が間に入ることで、当面は爆発しないように調整するわけで」
GM「むむ。しかし、そのような展開はシナリオには記されていないからのう」
G太郎「ルール上の裏付けが必要なら、考えたでござる。2.0時代の名誉点ルールに『住宅の獲得』というのがあって、みんなで合わせて名誉点150点を支払えば、我らは食費や宿泊費用を払わずに住める〈中規模の邸宅〉を構えることができる。一人当たり50点なら払えるでござろう」
デル「それで、オラたちが自由に寝泊まりできる家を持てるようになるのかぁ?」
G太郎「購入価格は2万ガメルでござるが、それは元々あった建物であり、我らが解放した場所でもあるわけだし、〈解放軍〉に建物の修繕費用を見繕ってもらえれば問題なかろう。元々、神殿として復興させる計画でもあるならば、グレンダールとライフォスの共同神殿という形をとってもいいだろうし、地上ではグレンダールを祀り、地下ではライフォスを祀ることにすればいいのではないか。ちょうどデルは、グレンダールの神官でもあるのだし」
デル「ただの家ではなく、グレンダールの神殿をオラが営むということかぁ。そいつは凄ぇ」
G太郎「グレンダール神殿でもあるのだから、屈強な兵士が体を鍛える場として、出入りしてもおかしくはあるまい。まあ、いきなり軍事拠点にまでエスカレートしては、警戒を煽るだけなので、まずはじっくり既成事実を積み重ねて、蛮族の警戒を緩めながら、タイミングを見計らう必要はあるでござろうが」
GM「購入価格の2万ガメルは〈解放軍〉がまかなうとして、運営維持費が月5000ガメル必要となるのじゃぞ」
G太郎「我らの現在の収入からすれば、それぐらい払うこともできようが、ここでもう一つ、名誉点を1人25点支払うことで、家付きの『有能な金庫番』を雇うことができる。ルールによると、『家の留守を預かり、資産運用の才に長けており、自身の資金はおろか、住宅維持に必要な金銭までも何らかの方法で稼ぐので、運営維持費用を払う必要がなくなる』とある。この金庫番として、メル嬢を指定するというのではどうであろうか?」
ホリー「メルが?」
G太郎「ルールによると、『プレイヤーが望んでGMが認めるなら、留守を守る最愛の異性や両親、旧知の親友だとしてもかまわない』のが金庫番。彼女なら、ライフォス神官見習いでもあるし、我らの本部の管理運営を任せても支障あるまい」
ホリー「つまり、本部に帰れば、いつでもメルが明るい笑顔で『お帰りなさい❤️』と出迎えてくれるんだな。それは賛成だ。帰る場所があるってのはいいものだ」
G太郎「……と言うことで、アリナ様、1人当たり75点の名誉点を払うことで、我々は【解放された神殿】を【烈火団の本部】(中規模の邸宅、有能な金庫番)として共同購入するという提案でござるが、いかがなものであろうか?」
GM「む。プレイヤーがそこまでルールブックをチェックして考えたのじゃから、反対する理由はないのう。ただ、『シナリオには書いていない展開のゆえ、慎重に吟味は要する』ので、結論は今回のミッションが終了して、キャラ成長時に下すとしよう。それと条件として、煌びやか卿とマルクスの両方の認可を得た上で、ということになろうな」
G太郎「もちろん、そのつもりでござる。重要なのは、我らが地図の中心の便利な区画に拠点を持てて、そこがNPCと交流できる日常の憩いの場になって、〈解放軍〉と蛮族の直接の接触や戦闘を避ける、あるいは先延ばしにする方法論でござるから、あくまで人蛮双方の権力者に話をつけて、我らが仲介役として立ち回ることを優先するわけだ」
GM「わらわとしては、PCが滞りなくミッションやクエストを続けられるなら、否やはないのじゃが、名誉点ルールで蛮族領に拠点を持つという発想は盲点じゃった」
G太郎「これも、名誉蛮族として人蛮両方に顔の利く存在となったマッスルG太郎ならではのロールプレイでござるよ」
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