花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

ウォーハンマー・キャラメイク6(4版準備編)

いよいよクライマックス……かな

 

NOVA「さて、2版のキャラメイクでは、北方の蛮族狂戦士(バーサーカー)を作った(ダイス目でできた)ヒノキ三獣士のビャッコことシロ君が、翔花のドワーフ届け屋ガールよりも面白くインパクトあるということで、勝利を収めたわけですな」

ヒノキ「これで、我がコンパーニュ・チームの1勝VS新兄さん父娘チームの1勝で、勝負の行方はいよいよ第3戦に委ねられることになったわけじゃが、勝った方はどんな恩典が与えられるのかの?」

NOVA「そうですな。このコンパーニュでは『続・マッスル太郎の魔神ハンター』リプレイが最終エピソード目前で止まっています。一方、我が空想妄想タイムでも『妖精女王ズ』リプレイが中途半端なところで止まっているので、『勝った方の記事を俺がキリのいいところまで優先して書く』ってことで、どうでしょうかね?」

晶華「つまり、NOVAちゃんがゲンブさんに勝てば、『妖精女王ズ』の続きが再開する?」

NOVA「まあ、翔花がシロ君にGMをお願いしたそうだからな。シロ君は『魔神ハンター』のプレイヤーだから、二足の草鞋を履くのは大変だが、どちらかを優先するということが決まれば、そっちに専念できるだろう」

ゲンブ「マッスルG太郎のプレイヤーとしては、負けられない理由ができたと思うが、対戦相手が新星どのである以上、審判役はどうするでござるか? アリナ様と新星どのの合議というわけにも行くまい」

NOVA「そうだな。ここは前の2戦の勝者である晶華とシロ君とヒノキ姐さんの合議制でいいんじゃないかな?」

晶華「ということは、『妖精女王ズ』を優先して欲しければ、私はNOVAちゃんに一票を投じればいいのね」

シロ「ボクは立場上、ゲンブを応援すべきだが……」

翔花「シロちゃん、お願い。わたしたちの味方になって」

シロ「うっ、それは悩む」

ヒノキ「シロがわらわたちを選ぶか、粉っちゃんを選ぶかはともかくとして、最終的な裁定はわらわが発言力を有する、でいいな。まあ、純粋に誰の目から見ても面白いキャラを作ればいいわけで。本当なら、これを読む読者にも投票権を与えるのも一興じゃが、そこまで意見を待ってもいられんのでな。もちろん、後からでもコメントで感想をもらえば、配慮はしたいところじゃが」

NOVA「ともあれ、ここから俺とゲンさんの4版キャラメイク対決なんですが、その前にここまでの総括をしておきたいと思います」

ヒノキ「今回は、準備編みたいなものじゃな」

 

ウォーハンマーの職業バランス

 

NOVA「版は分かれましたが、ここまでのキャラメイクで生まれたキャラは以下の4名です」

 

  1. 罠師ジン・スターチェイサー
  2. エルフの船乗り(アル中の女剣士)カリーナ・スプレンディ
  3. ドワーフの届け屋ディアトルド
  4. ノーシャの狂戦士グスタフ

 

NOVA「キャラタイプとしては、カリーナとグスタフが前衛戦士で、ジンとディアがレンジャー。まあ、ジンは罠の専門家なので、盗賊の代役もできそうですが、鍵開けはできない」

晶華「鍵開けは技能を持っていないと、試みることもできないのね」

NOVA「ああ。だから、もしも、このパーティーで冒険をするなら、冒険に必要な技能を誰が習得するかを相談しないといけないわけで、その辺の転職による技能の習得の過程が、ウォーハンマーの醍醐味だと思っているのです」

ヒノキ「まあ、多くのファンタジーRPGでは、戦士、魔法使い、僧侶、盗賊といった4つの役割を分担しつつ、選択できる職業が多くなると、違う役割を試したり、さまざまな職業構成のパーティーで遊んだりするものじゃな」

NOVA「定石では4つの職業をバランスよく、という理想があるわけですが、俺の最初のD&D(クラシックD&D)メンバーでは、誰も貧弱な魔法使いをやりたがらず、戦士、エルフ(魔法戦士)、僧侶、盗賊というパーティー構成でした。当時は6人という人数が主流だったので、あまり乗り気でない人間を無理に誘ってドワーフを担当させたり、後からドラクエ好きな人間がハーフリングで飛び込んで来たりしましたが、最後まで魔法使いのプレイヤーが確保できず、結果的に魔法使いは俺の操るNPC(緑衣のソレッド)でまかなうことに」

ヒノキ「それがお前さんの魔法使い初体験か」

NOVA「まあ、ゲームブックのソーサリーやバルサスが先ですけどね。マスターが魔法使いを操ると、スリープ係になって、パーティーの面々に『敵を魔法で眠らせますか?』と確認しながら、1〜2回だけ使える魔法アイテムみたいな役割だったな、と。で、同じく魔法の使えるエルフはチャームパーソンに夢中で、敵のゴブリンやコボルドを奴隷のように扱うのを楽しんでいたり、細かい思い出がいろいろと」

翔花「そのパーティーでどれぐらい遊んだの?」

NOVA「高1の3学期に始めて、ダンジョン3つぐらい探索して、レベル3〜4ぐらいまで遊んで、それから進級してクラスがバラバラになったので、そのキャンペーンはそれで終わり。2年生になると、ドラゴンランスに影響されて、その時のプレイを思い出しながら、背景世界のレンフィールド王国を考えたりもして俺の初のRPG小説『レンフィールド戦記』を書いて、戦士プレイヤーが読んでくれたりしたわけだが、俺にもっと行動力があれば、高校時代にRPG部を作っていたろうにとか思うわけで。

「なお、隣のクラスでは放課後にツクダの『ガンダム戦史』(最初のガンダム、Z、ZZまでを再現した当時のモンスターゲーム)をプレイしている光景を一度外からチラッと見て、同社のガンダムゲームには中学時代にいろいろやった思い出がある俺としては興味津々だったんだが、隣のクラスに飛び込む勇気はなくて(声のかけ方も分からず)、惜しいことをしたと今ごろ思い出したや。う〜ん、『ガンダム戦史』買いたかったなあ」

ヒノキ「話が違う方向に脱線しているぞ。RPGはどうした、RPGは?」

NOVA「ああ、後でホビージャパンなどから出たガンダムRPGは買いましたよ」

NOVA「でも、ZやZZ、逆襲のシャアアナログゲームは買ってないんだな。そいつらはスパロボGジェネでしか楽しんでない」

晶華「だから、ガンダムの話じゃなくて、今はウォーハンマーの話よ」

ヒノキ「それから、バトルテックの70トン級メックの話に脱線するのも禁止じゃ」

NOVA「うっ、先を越されたか。なら仕方ない。ええと、どうして昔のD&Dの思い出を語ったかと言いますと、今までウォーハンマーで作ったキャラに魔法関係者が1人もいないという事実ですね。ついでに聖職者もいない。仮に、この4人が(版の壁を越えて)いっしょに冒険をした場合、魔法もなく、ダメージを回復することもできず、苦労するだろうな、と思ったわけです」

ヒノキ「〈負傷治療〉の技能を習得するか、ポーションを買い揃えるかしないと、冒険を続けていくのは難しいじゃろうな」

NOVA「つまり、ランダム作成はキャラを作るのが楽しいけれど、じっさいにゲームをプレイする際には、冒険に必要な技能が揃わなくて、バランスを欠く危険性が高いということですね。先に1プレイヤーが3人ぐらいキャラを作っておいて、ゲームの参加者が相談しながら一番バランスのとれた組み合わせを考えるとか、足りないところはNPCで補うとか(雇い人のルールもあるし)、魔法使い志望のプレイヤーはランダム作成をやめて見習い魔術師を確定で選択可能(GMが許可すれば)とか、いろいろ対応策はあるわけですが、ルールどおりに素で作ると、魔法使いってなかなかレアなんですな」

ヒノキ「初版では、ウォリアー、レンジャー、ローグ、アカデミックの4系統に分かれ、呪文使いはアカデミックを選ばねばならない。すると、それだけで4分の1ということか」

NOVA「ジュニア君の罠師の次のキャリア候補に、ドルイドがいるので、そこから呪文使いの道に進むことも可能ですが、最初から魔法を使えるキャラを作るのが難儀なんですな。例えば、人間だとアカデミックで10%の確率で見習い魔術師になれます。エルフなら15%、ドワーフやハーフリングは魔法の素養が低いので2%と少なく、MP(魔力点)的にもハンデがあります」

晶華「やっぱり、エルフはアカデミックを選ぶべきだった?」

NOVA「実プレイなら、エルフの魔法使いは定番だから、そういう役割を期待されるし、公式リプレイやシナリオ用のサンプルキャラもエルフの見習い魔術師が採用されている。ただ、定番だけだと面白くないだろう? もしもアカデミックを選んでいたら、お前のキャラは占い師になっていた」

晶華「占い師かあ。そういう道もいいかもね。アル中エルフよりは、エルフの占い師の方がまともな気がする」

NOVA「だけど、いつも定番だけだと面白くないから、変化球を選んでみたわけだろう? それにエルフだから魔法使いをしないといけないってことも、ゴブスレを見ているとないわけだ」

ヒノキ「まあ、あれはドワーフの魔法使い(精霊使い)の鉱人道士という変化球を示しておるからのう」

NOVA「種族と職業の変わった組み合わせでも、オリジナリティのあるキャラを作れるわけだ。オリジナリティを優先するか、ゲーム的に有利な選択を選ぶかは、最終的にプレイヤーの自由だけど、さすがにゲームバランスを無視してパーティー全員が変な組み合わせに走ると、それはそれでアクが強すぎて物語が成立しない……可能性もある」

ヒノキ「小説なら定番崩しは作者次第じゃし、これぐらい異世界ファンタジーが大量に書かれるようになると、いかに個性化しながら説得力のある物語設定を構築できるかが一つのポイントと言えるじゃろうな」

NOVA「その世界の一般的なパターンはこうだけど、主人公は変わり者なので定番外しを行なって、苦労を抱え込みながら知恵と努力で才能を発揮するようになる、というのが現在ラノベファンタジーの主流と思う。王道じゃなくて詭道だけど、作者が王道を知らないわけじゃないのは作品の脇役の描かれ方を見れば分かる。典型的な勇者がエリート的な英雄で、マイナーな技能や職業の主人公を見下したり、役立たずと嘲ったりするのを、主人公がどう克服するかを描いたり、王道崩しの個性化で物語の根幹設定を示しているわけだ」

ヒノキ「勇者はすごい立派な人物……という定番も、ポンコツ勇者とか、変態勇者とか、悪徳勇者とか、いろいろ改変されがちじゃな」

NOVA「勇者として仕事はきちんと果たしているけど、日常的に性癖をこじらせて変化球ってのは、ブレイバーンで見たけど、単に変な勇者ロボで終わらせずに、そういうロボが誕生した背景(主人公と友情を構築した親友が過去の時間に転生した。変な性癖は、本人の性格に変な敵ロボの性格が融け込んだため)を描いて、見続けた視聴者に納得感を与えた。この単に変な奴で終わらせずに、変になった理由や背景まで後から種明かしをして、おお、そう来たかって感動を与えるに至った。それって王道を理解し、変であることを示した上で、その変化球がきちんと視聴者のストライクゾーンに収まる超絶テクニックを見た気分なんだな」

ヒノキ「変と言えば、バスタードの定番崩しも相当なものじゃと思うが」

NOVA「あれは90年代に一世風靡して、マッチョな魔法使いという定番崩しで新たなジャンルを開拓した功績は確実にありますし、スレイヤーズオーフェンと並んで、定番崩しのラノベ感覚の始祖的な要素で分析することも可能ですが、王道を蔑ろにし過ぎたために物語として収拾つかなくなったのを、クリフハンガーオチの繰り返しでちゃぶ台返しし過ぎて、世界観のリアリティをぶち壊し過ぎたという弊害があります」

ヒノキ「世界観のリアリティ?」

NOVA「まあ、これは90年代の特徴ですが、世界が簡単にぶっ壊れすぎて、そこに住む一般市民の生活の解像度が非常に低いんですね。ゼロ年代は、揺り戻しで日常系のゆるふわストーリーが流行して、その日常を丁寧に描写することが人気作品においては必須となっています。日常に感情移入させることに成功してこそ、その日常を破壊する敵や事件にどう対処するかという緊迫感がポイントで、日常描写と事件描写のバランス感覚とテンポが良い作品が好まれ、一方、80年代や90年代はバトルや事件、試合重視で主人公たちの日常描写はさほど大きく扱われていなかった。やはり、ゼロ年代の日常系作品の流行で、登場人物の私生活を描き出すことで『守らなきゃ』って心情に感情移入させるのが今のストーリーの定番と」

 

日常と事件と

 

晶華「職業バランスの話から、定番崩しに移って、そこから日常がどうこうってストーリー解析に流れているけど、寄り道脱線じゃない?」

NOVA「寄り道脱線こそが俺の日常……と開き直ると、ただの雑文書きからいつまでも脱却できない気がするので、寄り道脱線こそが実は王道だったのだ、と辻褄合わせの芸を披露したく思う」

ヒノキ「狙ってやってるのか?」

NOVA「当然です。実はこの日常描写が現在のRPGを語る上で非常に重要な要素なんですね」

ヒノキ「しかし、RPGと言えば、冒険や事件の解決こそがゲーム性ではないのか?」

NOVA「それだと、キャラクターがただのゲームのコマになってしまうんですね。当初のD&Dでは、ダンジョン探索という非日常冒険がゲームの中心で、そこから外の世界が描かれるに際して、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界の日常生活(冒険者ではない一般の人の描写)にも焦点が当たるようになった。最初は冒険の準備のための施設(武具屋や道具屋、宿の主人、盗賊ギルドや聖職者に絡む宗教施設、魔法使いのための学院など)がどういうものなのかが語られ、そこから王侯貴族とか異種族の集落とか、キャラクターの世界の中での活動範囲も広がっていきます」

ヒノキ「その辺は、ゴブリンスレイヤーなんかも段階的に世界観を広げておるな」

NOVA「あの作品は、ゴブリン退治という王道ワンパターンな事件を根幹にしつつ、冒険の舞台や出会い関わるキャラクターを広げることで、世界を広げながら登場人物の成長を描いているわけです。やっている仕事はいっしょだけど、見える世界や知人が広がることで、物語が膨らんでいく。そして、これはクラシックD&D辺りからの発展と共通する重ね合わせができるわけです」

晶華「すると、今のD&Dでは日常描写に力を入れているってこと?」

NOVA「そうなる。今の5版は、冒険中の役割を表すクラス(戦士とか魔法使いとか)と、日常生活の中での役割を示す背景(職人とか芸人とか犯罪者とか兵士とか)の二層構造だからな。まあ、種族を加味すると3層構造になる」

ヒノキ「ああ、昔はキャラクタークラスの中に、職人とか商人とか貴族とかがいたが、今は冒険用のクラスと、日常用の背景を分けておるのか」

NOVA「そうです。だから、商人が戦士をやってもいいし、魔法使いでもいい。商人をクラスと考えるなら、ダンジョンに入って何ができるねん? って話になって、変な特殊能力(金を武器にするとか、仲間の商人をどこからともなく召喚して攻撃するとか、敵の品物をこっそり盗むとか)をこじつけるゲームもありましたが、そもそも日常生活の技能は冒険とは関わりなく存在するんですね。それを示したのが、ソード・ワールドの一般技能でもあるのですが」

ヒノキ「考えてみれば、冒険の旅に出たから、商人としてのレベルが上がるというのも何だかおかしいのう」

NOVA「もちろん、冒険商人というクラスもありましたが、それだと普通の一般人商人は商業活動において、スキルアップできないのか、とか、いろいろ問題が生じたりも。なお、商人を最初にキャラの職業として扱ったのは『トラベラー』で、その次に『ルーンクエスト』で商人としての背景や技能を設定しています。やはり、背景世界を考えるなら経済活動をスルーすることはできず、そこで商人という存在がクローズアップされるわけですな。まあ、学校という閉鎖社会ならともかく、世界を描くには物流や経済を考えないと物語の描写ができないのでは?」

ヒノキ「キャラクターが軍や特殊部隊に所属している場合は、装備が支給されるし、定期的に給料が支払われるから、金のことなど考える必要もないがのう」

NOVA「その場合は、補給部隊を守れとか、敵の補給を妨害することが経済に通じるのでは、と。もちろん、テロリストの目的も相手陣営の殺傷や破壊だけでなく、通商破壊とか経済混乱を目標にしていたりもするわけで」

晶華「世紀末でも、略奪ヒャッハーは暴力描写だけでなく、経済活動への攻撃と言えるのかな」

NOVA「その場合は、お金が流通せずに、物々交換レベルまで経済レベルが退化している世界観だな」

ヒノキ「蛮族の地下都市を舞台にしたミストグレイヴもそうなるのう」

NOVA「そして一般的なファンタジー世界でも、冒険者の報酬や買い物のルールは、経済感覚なくして設定できないわけだ」

 

翔花「ねえねえ、NOVAちゃん」

NOVA「何だ?」

翔花「わたしのキャラは届け屋なんだけど、これって物流に関係ある?」

NOVA「そりゃ、あるだろうな。道路が寸断されて、物流が滞ると地域の復興もままならないってのは、能登半島の震災を見ても想像できるし」

翔花「あと、学校みたいな閉鎖社会は経済を考えなくていいって言ってたけど、本当にそうかな?」

NOVA「ん? お前に学校の何が分かるってんだ?」

翔花「犬でも学校に行く時代なのに、精霊少女が学校に行けないなんて差別だと思うの」

NOVA「いや、差別じゃなくて区別だ。それに俺は俺のブログ時空を学園ものにするつもりはない」

翔花「どうして?」

NOVA「塾講師なんて仕事をしていると、ブログでまで学校のことを考えたくないんだよ。試験とか、保護者とのやり取りとか、部活で遅れてくる生徒の時間調整とか、小学生の学習指導要領が変わったから単元の変化の確認とか、大変なんだよ」

晶華「ああ、教科書も版上げでルールが一部変更になったりするんだよね」

NOVA「ルールというか、用語の変化だな。中3の理科の遺伝関係とか、今だに優性劣性って言いがちで、顕性潜性という言葉に馴染めなかったりしたし、歴史のテストで聖徳太子がダメで厩戸皇子と書かなければ不正解と言われたと思ったら、後で保護者から苦情がいろいろ来て、やっぱり聖徳太子でも◯がもらえるように採点基準が見直されたという学校の話も聞いたり(その辺、教科書や問題集によって記述の差なんかもあるみたいだ)」

翔花「勉強内容の話はともかく、親の経済状況が子どもの学校生活にも影響を与えると思うの」

NOVA「ああ、それはあるな。家庭が貧しいと、子どもも参考書を買ってもらえないし、まったく無縁ではいられないか」

翔花「成績を下げたから、お小遣いが減らされたって話もあると思う」

NOVA「それはリアルだな。野球マシンと呼ばれて、お金のことに無頓着なメジャーリーグ選手が、友人と信じた男の賭博に巻き込まれて、無実の罪を着せられかけたゴシップもあるし、お金の話を考えることは世界観や物語のリアリティにおいて重要な要素かもしれん」

ヒノキ「少々生々しすぎる気もするがのう。別に全ての物語において、金銭を話題に上げずともよかろう。まあ、GMをやる上では便利な素材じゃがな、お金は」

NOVA「ええと、よく少年少女の物語において大人が邪魔なので登場させないというのがあるんですよ(親が外国に行って、子どもだけで独り暮らしとか)。そういう設定は別に構わないんですけど、そういう設定なのに、子どもが金銭感覚に無頓着すぎると、途端にリアリティをなくすんですね。独り暮らしの子だったら、自炊はどうするかとか、買い物とか考えるだろうし、そういうのを考えずにクラブ活動に専念し過ぎるのもおかしい。高校生だったら『親からの仕送りだけじゃ欲しいものが買えないから、アルバイトを探してる』とか言えば、リアリティが出てくるし、親は近くにいなくても『いつも姉さんには苦労をかけてるから、誕生日にプレゼントしたいんだ』というシーンがあれば、納得できる日常描写だ」

ヒノキ「で、誕生日プレゼントを買いに行った先で、事件に巻き込まれるんじゃな」

NOVA「そうなると、『姉さんの誕生日プレゼントを守るために、必ずお前を倒す』ってシチュエーションが展開できて、そういうのが日常を守るヒーローって感じがするのが平成後期から令和の流れなんだと思う」

晶華「確かに、抽象的に世界を守るというお題目よりも、自分の知ってる誰かや何かを守るって行動動機の方がリアリティのある生きた人物だと思う。でも、自分の日常だけしか守らないってのは、ヒーローとしてどうなの?」

NOVA「世界のヒーローか、誰かのヒーローか、という公私の分け方だな。この辺はアメリカ人が好きなテーマで、あそこはイエス・キリストが一つのヒーロー像なので、自分自身を犠牲にして世界を守るヒーローというのが究極の理想なんだな。だけど、人間はそこまで自分を捨てられないから、いろいろ葛藤するんだけど、ヒーローとしての完成形を目指すなら、愛する人の死を乗り越えたり、何かを犠牲にすることで大義に殉じるヒーローを称えるように描くわけだよ。世界は守ったけれど、自分を犠牲にしたとか、それこそが英雄って考え方があって、一方でハッピーエンドを愛するファンは、どっちも守った物語を持ち上げたりもする」

翔花「世界は守れなかったけど、自分の大切なものは守れたとかは?」

NOVA「愛するものを守るために世界を敵に回す形はアンチヒーローと呼ばれたりもするけど、そういう情念は否定しない。ただ、そこに葛藤は見せないとドラマにならず、ただの自己中で感情移入できないし、そういう身勝手と対比する大義重視のライバル格が必要だな。

「そして、両者の主張は作者にとって対等の価値を持ってないといけない。主人公が正しくて、大義を歯牙にも掛けずに、権力の犬とか相手を見下すようなムーブを示すと、白ける。むしろ、大義に殉じるお巡りさんは立派だけど、オレはそんな風にはなれない。どっちかを選べと言われたら、オレは自分の大切なものを選ぶ。世界と両方守れる道があるって言うのなら、こっちが教えて欲しいよ』ぐらい自分を下げながら、相手を持ち上げて、それでも自己の信念を貫く葛藤の果ての選択を見せてこそ、ピカレスクヒーローとして感情移入できると思う。大事なのは、ピカレスクヒーローって自分を誇っていなくて、そういう生き方しかできない自分を否定しながら、それでも己の感情を貫く矛盾を自覚していることだ」

ヒノキ「大義に生きている相手をバカにするようなキャラだと、薄っぺらく見えるってことか」

NOVA「アンチヒーローピカレスクヒーローは、破滅の美学に通じるものがあるからな。正義をバカにするとかではなくて、正義を貫いては生きていけない(大事なものを失う)と分かったからこそ、その大事なものを守るための選択を優先したわけだ。可能なら(自分の犠牲が伴わないなら)正義に味方することもあるわけで、その際に『別にあんたの味方になったわけじゃない。ただ、あんた以上にあの野郎が許せないと思っただけだ。今だけは手を貸してやる』とか言って、共闘する場面も見せてくれる。そういう場面をツンデレと見なすファンもいるけど、こういうアンチヒーロー的な物語って、作者がどちらかに肩入れしていると判明した段階で白けるんだ。最終的に、どっちが勝つのか分からず、アンチヒーローがハッピーになるのか想いに殉じて滅びるのかが見えないままクライマックスを迎えるから、ファンの感情移入を高めるわけだ」

晶華「ルパパトはそんな感じだけど、元ネタの一つの『ルパン3世』は銭形警部がルパン一味にバカにされたりもしているよね」

NOVA「ありゃ、警察が完全に敵役だし、ルパンは別に世界を守るとか壊すとか、そういう事件にしょっちゅう巻き込まれているわけじゃないからな。『ルパンがお宝を盗んだら、世界が滅びてしまうようなシチュエーション』は稀だし、そういう状況ならルパンだって、世界を優先するさ。『世界を敵に回しても守りたいお宝(ヒロイン含む)』なんて劇的なギミックは、そうそう軽々しく使えるものじゃないし、そういうものを設定したなら、その宝に対する主人公の執着具合を感情移入できるように描写してやらないといけない」

翔花「わたしにとってのドンブラね」

NOVA「どこまでドンブラ脳やねん」

 

晶華「弥生ちゃんが出るのだから、メガネンジャーとしても見に行かないとね」

NOVA「あとは『ゴジラxコング』か」

 

ヒノキ「来週から上映開始じゃから、それまでには当キャラメイク企画は終わらせないといけないのう」

NOVA「強引ながら差し当たっての結論としては、日常への解像度が物語世界にリアリティを与え、そこで得た行動動機こそが事件解決への原動力になる。今のフィクション(昨今の多くのTRPGシステムも含む)は『日常シーンで行動動機を与え、冒険や事件に向き合う主人公たちへの感情移入をいかに高めるか』が大事なんですね。そして、行動動機を獲得するためのイベントが登場人物の人間関係や背景的な立ち位置、趣味嗜好を通じて描けているかがポイント。行動動機があやふやな主人公だと、物語を動かすことはできないわけで、TRPGにおいてもその辺を押さえるようなキャラ作りルールが現在の主流になったということで」

(当記事 完)