花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、D&Dを中心に世紀末前後のTRPGの懐古話を不定期展開中。

マッスル太郎と、蛇の貴婦人(SWミストキャッスル5ー9)

血を吸う亡者の娘(夕暮れ時)

 

太郎(ゲンブ)「前回は南東部の探索の末に、賢神キルヒア神殿跡で、ピラトト写本を手に入れたでござる」

ヒノキ「時刻は昼間じゃが、次はどちらへ向かう? 西の帰らずの街か、東の最後の区画か」

太郎「最後の区画も気になるが、先に帰らずの街へ赴くでござる。ここでミッション目的のブラッドサッカーを倒し、夜に追い剥ぎ小路で休ませてもらう。それから一度、ザバーラのテントに戻って、写本を届ける予定。何しろ、6冊もの古文書を持ち歩いたまま動き回るのは、荷が重いからな」

ヒノキ「別に所持品重量のルールはないのに、妙なところにこだわるのう」

太郎「TRPGは想像力の遊び。仮にルール上は問題なくとも、書物の扱いは丁重に……と新星どのなら言うであろう」

ヒノキ「まあ、時空魔術師ならそう言うであろうな」

太郎「一応、太郎もウィザード、いやマギテックにして、コンジャラーであるからして、書物の重要性は分かっているつもり。少しでも早く、持ち帰りたい心境なのでござる」

ヒノキ「その途上で、吸血鬼退治を行おうと言うのじゃな」

太郎「事のついでという奴でござる。で、夕刻に帰らずの街に到着したわけだが、ターゲットの魔物はいるのでござるか?」

ヒノキ「目的地に到着すれば、たとえ、それが吸血鬼の苦手な昼日中であろうとイベントとして登場せざるを得ないことになっておる。ましてや夕刻じゃからな。ここで死んだ娼婦ミレーヌの遺体が吸血鬼となって蘇っておる」

太郎「へっ? 彼女は幻獣ヒポグリフに殺されたはず。それがどうして吸血鬼に転身しているでござるか?」

ヒノキ「ヒヒヒ。生前に、どこかで吸血鬼に噛まれたのかもな。とにかく、吸血鬼化したミレーヌは、けだるい妖艶な仕草でマッスル太郎に蠱惑的な視線を向けるのじゃ」

太郎「誘惑される前に、先制判定でござる。達成値は14」

ヒノキ「そちらからじゃ」

太郎「哀れな亡者の娘よ。私はお前を救うことができなかった。しかし、その不浄の身から解放することはできる。エンチャント・ウエポンを唱え、マッスルベアーとガゼルフット、そしてターゲットサイトでMP10点消費して、蹴りの2連発を仕掛ける。命中は14と19」

ヒノキ「夕日とは言え、太陽光の下なので回避は2下がっていて12。どちらも命中じゃ」

太郎「ダメージは20点と19点でござる」

ヒノキ「防護点で6点ずつ減らして、27点くらった。残りHPは42点じゃの。では反撃。まずは補助動作で誘惑視線。目標値14で精神抵抗するのじゃ」

太郎「13で、このままだと失敗でござるが、月光の魔符+1を使って同値抵抗」

ヒノキ「チッ。ならば、牙で噛みつき攻撃をしようかの。命中も2下がって12じゃが」

太郎「それなら、当たらない。夜でない吸血鬼は恐るるに足らず。しかし、誘惑視線に備えて、カウンターマジックを使っておこうか。MP1消費で残りMPは5。精神抵抗は2上がって、基準値9。さらに反撃して、ターゲットサイトは使わない。使わなくても当たると見たからな。命中は12と16」

ヒノキ「12は外したようじゃな。1発だけ命中じゃ」

太郎「くっ。ダメージは21点」

ヒノキ「15点くらって、残り27点。おっと、そう言えば、太陽光の下じゃったな。手番終了時に6点ダメージを忘れておったわ。残りHPは21点。さらに再生もできず。一応、誘惑視線を14と言っておくか」

太郎「17と言って抵抗」

ヒノキ「終わったな。反撃もどうせ避けられるじゃろう」

太郎「もちろん避けたでござる」

ヒノキ「このラウンドの最後に、さらに陽光ダメージを受けて残りHP15点。ミレーヌの成れの果ては、血の涙を流しながら、悶え苦しむ。太郎には彼女の魂の叫び、『お願い、殺して』という悲鳴が聞こえたような気がした」

太郎「哀れな娘よ。神妙な気持ちで、ターゲットサイトを掛けて残りMP3。命中ダイスは14と18。両方当たりなので、ダメージは21点と、それからクリティカル32点!」

ヒノキ「だから、どうして死にかけの相手に、そんな大ダメージを出して来るのじゃ?」

太郎「最後のとどめに大技を仕掛けるのはヒーローの鉄則でござる。『その命、神に返しなさい』」

ヒノキ「ルーンフォークは神を信じないはずではなかったのか?」

太郎「今のは、太郎の言葉ではござらん。背負い袋に入れた写本の主、キルヒア神官のピラトトの魂が喋ったでござる。名付けて、ピラトトクラッシュ! 夕陽を背景に必殺のキックを放ってとどめ」

ヒノキ「すると、ピラトトの魂に導かれて、亡者と化したミレーヌの魂も笑みを浮かべて昇天した……ような妄想が、マッスル太郎の脳裏に浮かんだ」

太郎「なるほど。これがピラトト写本の力か」

 

(作者注・ピラトト写本にそんな公式設定はありません。あくまで、この場だけの妄想の類いということで)

 

 風の旅団にて(夜)

 

 ブラッドサッカーを倒した戦利品は、剣のかけら6個のみ。

 夕刻過ぎて夜になりかけた街をマッスル太郎は駆け抜け、追い剥ぎ小路に向かうのだった。

 

太郎「ここでは名誉蛮族の腕輪を外し、仮面レンジャーの扮装をするでござる。そして、トホテルに会いに行こう」

トホテル『おお、仮面レンジャーさんか。いつ、こっちに顔を出してくれるか、気にしていたんだ。先日は、うちの団員のエドガーを北の処刑場から助けてくれたそうじゃないか。やっぱり、お前さんは我々の救世主だったんだな』

太郎改め仮面レンジャー「ええと、その話はもう、こっちに伝わっているのでござるか?」

トホテル『ああ、エドガーをかくまってくれているヤムールという男からの使いだと言ってな。ニルスっていう名のグラスランナーが手紙を持ってきたのさ。それには、仮面レンジャーの活躍でエドガーが助けられた、と記されていた。そして〈スエラの炎〉とも、これからは仲良く提携して行こうという話になったんだ。これも、お前さんのおかげだな。恩に着るぜ』

仮面レンジャー「あの時は仮面レンジャーの扮装はしていなかったはずだが、こうして情報というのは操作されるんだな、と内心つぶやくでござる。ところで、〈スエラの炎〉だが、向こうの強みは情報収集であって、荒事ではないため、そういう方面での活動には巻き込まないでやって欲しいのだが、と釘を刺しておこう」

トホテル『組織ごとにやり方が違うってことだろう? 聞けば、ヤムールというのも名誉蛮族の宿屋の主人だとか。俺たちは、名誉蛮族というのが蛮族に尻尾を振った裏切り者だとばかり短絡的に考えていたんだが、どうもそれが早計だったことを知ったんだ。ヤムールは奴隷市場の隣に宿を構え、人族の奴隷があまり酷い目に合わされないように世話してるって話も聞かされてな。なるほど、そういうやり方で人族を助ける道もあるのかって目から鱗が落ちたわけだ。これを機に、組織の活動方針も見直そうかって気になってる』

仮面レンジャー「ほう。どういう方向に?」

トホテル『俺たちは荒くれ者の集団だ。セイラみたいに知恵の回る一部の者を除けば、ついつい先走って生き急ぐ傾向がある。風のように突っ走って、後のことはどうでもいいとか、やるだけやって失敗すれば仕方ない。後のことは続く者に任せた。俺たちは革命の礎になれば、それでいい。死んでも神の御許に行けば、それで本望だとな。破れかぶれの破滅志向って奴だ。しかし、ル=ロウド様にお伺いを立てると、それじゃダメだ、とお告げが来た』

仮面レンジャー「神のお告げ? そんな物が本当にあるとでも?」

トホテル『あるからこそ、神官をやってるんじゃないか。ル=ロウド様の教えは、風のように一つところに留まるな。自由を求めて強くあれ……って感じなんだが、それは自分の心や主義信条にも言えることなんだな。蛮族憎しで凝り固まって、ただただ力を求めて反抗する、それが神の正義と思い定めていたんだが、そういう凝り固まり方そのものが自由じゃなかったんだ。もっと柔軟に物事を見据え、未来の自由のために今の屈辱を耐える強さも必要なのか、と考えるに至った。マッスル太郎さんは、どう思う?』

仮面レンジャー「私は……って今、マッスル太郎と言ったか? 仮面レンジャーではなく?」

トホテル『ああ。仮面レンジャーさんの正体が、天幕の商人ザバーラさんところの元奴隷ルーンフォークだって聞かされたときは驚いたぜ。だが、そう知ると、あれこれ辻褄が合うんだよな。どうも、俺たちは仮面の裏に隠された真実を見る目って奴が、欠如していたらしい。ちょっと考えれば分かることにも気付かないなんてよ。心が自由じゃなければ大切なものを見落とすってことに、この年になって気付かされた。まだまだ俺も修行不足だったってことだ』

仮面レンジャー「修行不足は私とて同じこと。今だに自分自身が分からずにいるのだから」

トホテル『自分探しの旅も、ル=ロウド様は奨励なさっているな。ただ、人は自分一人で生きるのではあらず、他者との関係性で己の役割を果たすべし、決して独り善がりになることなかれ、というのは真理としてあるかもな。風にも激しい嵐もあれば、優しい微風もある。冷たい南風や、熱い北風もあるのだろうし、聞くところによれば、はるか北の大陸では暑さ寒さの感覚さえ逆らしいぜ。北へ行くほど寒くなる国もあるなんて話を聞かされたときは、こいつは狂ってるのか、と思わされたもんだが、そんな話、聞いたことはあるかい?』

仮面レンジャー「アリナ様、それはラクシアのテラスティア大陸が南半球にあるという話ですか?」

ヒノキ「うむ。霧の街のあるレーゼルドーン大陸も含めて、ソード・ワールド2.0の舞台は南半球ゆえ、南北の気温感覚や太陽の位置感覚が日本とは逆なんじゃな。ついつい忘れがちな設定じゃが。2.5のアルフレイム大陸は北半球になったので、日本人的に普通の感覚で考えることができる」

仮面レンジャー「北が寒いという世界か。もしかすると、それは人跡未踏の魔界、あるいは魔神の侵攻にさらされた世界かも知れんでござるな」

トホテル『魔神だって? そいつはまた恐ろしい話だな。とにかく世界は俺たちが知るよりもまだまだ広いってことだ。で、神のお告げだが、こういうのもあってな』

 

神のお告げ『外なる世界より来たる偽りの仮面の魔王、時を動かし、世界を破壊せん。その先に待つ未来は絶望か? それとも……』

 

仮面レンジャー「何でござるか? その物騒なお告げとやらは?」

トホテル『やはり物騒と思うか。だけど、俺の感覚では、それは悪夢なんかじゃなかったんだ。夢は途中で途切れたが、「絶望か? それとも……」と来たら、その後は希望が続くってことだろう。最後の希望ってのは決して悪いものじゃない』

仮面レンジャー「しかし、偽りの仮面の魔王というのは、悪っぽいでござろう。おまけに世界を破壊するって言ってるし」

トホテル『いかにも終末の予言って感じだが、今ある世界が蛮族支配下のこの街のことを示すなら、こいつは解放の予言と解釈できないこともない。偽りの魔王ってのもやはり邪悪っぽい響きだが、魔王のように見えて実は……って意味かもしれん』

仮面レンジャー『実は……って何でござるか?』

トホテル『魔王に化けた神とか? ともかく、ル=ロウド神のお告げだから、トリッキーで一筋縄ではいかないと思う。短絡的な解釈を許さず、それについて、あれこれ推測と思索を重ねるうちに、ようやく真実が浮かび上がるものだ、と俺は考えているわけだ』

仮面レンジャー「時を動かす魔王にして、世界の破壊者か。何だかいろいろ混ぜて来ているような話でござるが、それはシナリオに書いてあるのですか、アリナ様?」

ヒノキ「もちろん、この場だけのオリジナル設定じゃよ。マッスル太郎の物語の先を見据えた伏線って感じ?」

仮面レンジャー「マッスル太郎が魔王になって、マッスル魔王と自称するとでも?」

ヒノキ「それを決めるのは、わらわではない。プレイヤーのお主じゃよ、ゲンブ」

仮面レンジャー「いやはや、魔神とか、仮面とか、そういう設定要素を勝手に押し付けてくるのはアリナ様でござる」

ヒノキ「GMがプレイヤーにストーリー要素の断片を提示するのは、TRPGでは当然じゃろう? それを受けて、プレイヤーキャラがどんなリアクションをするかはプレイヤーの自由。それらの受け応えが上手くつながったときに面白い物語が生まれ、噛み合わなければ物語は空中分解してしまう。じゃから、この物語を面白くするために、うまくリアクションすることを期待するぞ、ゲンブよ」

仮面レンジャー「ともかく、アリナ様や作者がヒーロー好きなのは分かっているから、それに合わせたリアクションを頑張ればいいのでござるな。うちのブログの読者も、おそらくはヒーロー好きなんだろうし、そういう期待には応えたいところでござる。できれば、ヒーロー魂に共感できる人のコメントがいただければ、作者としては嬉しいのでござろうが。どうも別ブログで、ヒーロー魂を解さぬ、噛み合わない鬱コメントばかり付けられて、作者も気が滅入りがちになっているようでな」

ヒノキ「おい、ゲンブ。読者にいちいちねだるでない。わらわたちは、わらわ達らしく、ゲームを楽しんでいる姿を見せればいい。徹して、我が道を行く。それこそが不破さんらしいヒーロー街道と知れい」

仮面レンジャー「やれやれ。魔王と言ったり、ゴリラを推したり、アリナ様の気まぐれぶりに付き合うのも一苦労なことよ」

 

ザバーラの天幕にて

 

 風の旅団の拠点である追い剥ぎ小路で一夜を過ごした仮面レンジャーことマッスル太郎は、翌朝、ピラトト写本を届けに、ザバーラのところへ戻った。

 

太郎「ただいまでござる。とりあえず、ブラッドサッカーを退治して、ピラトト写本もゲットしてきたでござるよ」

ザバーラ『お帰り。ピラトト写本ゲットで、★1つ進呈。報酬は1000ガメルね。それとも1500ザバーラポイントがいいかしら?』

太郎「ザバーラポイントで何ができるか、もう一度確認したいでござる」

ヒノキ「500ZPで、翡翠の塔の運河を渡れる〈運河通行証〉をくれる。300ZPで、名のある魔物のデータと居場所を教えてくれる。5000ZPで、上位蛮族への紹介状を書いてくれる、といったところか。もちろん、今からでも6000ZPで馬車に乗って街からの脱出を取り計らってくれるというのもありじゃ」

太郎「紹介してくれる上位蛮族とは、どのような連中でござるか?」

ヒノキ「黒焦げにするジャバディーン、宵闇の公主サンドリーヌ・カペー、ダルクレム神殿の大神官プトゥート、ブラグザバス神殿の大神官イヴァン・アイヴァンの4人じゃ。なお、最後の一区画は、サンドリーヌの住む『明かりの灯る館』となっておる」

太郎「サンドリーヌとは、どのような御仁か?」

ヒノキ「5000ZPを出せば、紹介状とともに詳しい人となりを語ってもいいのじゃが」

太郎「5000ZPは払えんが、名のある魔物なら300ZPで詳しいデータとか教えてもらえないだろうか?」

ヒノキ「う〜ん、それがの。ジャバディーンやプトゥート、イヴァンの3人は魔物リストに載ってある、すなわち戦う可能性も想定しているわけじゃが、サンドリーヌだけはリストに入っていないのじゃ」

太郎「それはすなわち、サンドリーヌは敵対相手ではない、と?」

ヒノキ「シナリオ想定ではな。むしろ、クエストをくれるNPC扱いだったりもする」

太郎「ほう、そうだったのか。ならば安心して、そこへ行けばいいのでござるな。ちょっとサンドリーヌに会いに、館へ行ってくるとしよう。これで、霧の街の全マップも開示できるってことで。あとは、500ガメルを払って、消費した月光の魔符+1を補充してから、サンドリーヌ館を目指すでござるよ」

 

 ●ここまでの冒険成果

 

 経験点:★4つ、魔物退治分60、現在経験点830

 所持金:2572ガメル、ザバーラポイント2808点

 

最後の区画「明かりの灯る館」

 

 とうとう、マップの南東最後の区画へ赴くことになったマッスル太郎。

 長屋から市場、ブラグザバス神殿とランダムイベントの発生しない地点を経由して、夕刻にサンドリーヌ・カペーの暮らす館へ到達した。

 

ヒノキ「凶悪な棘が無数に突き出している鉄の柵に囲まれた庭園の向こうに、小さな館が見えるのじゃ。その窓には明かりが灯っており、人の気配がするのう。表門の柱には、汎用蛮族語と交易共通語で『サンドリーヌ館』と書かれた札が嵌め込まれておる。さあ、どうする?」

太郎「どうも〜、マッスル太郎です。我が元の主人ザバーラの用事で来訪しました〜と大声で自己紹介してみるが」

ヒノキ「特に返事はない」

太郎「呼び鈴はないでござるか?」

ヒノキ「パッと見ても、見当たらないのう」

太郎「じっくり見ると?」

ヒノキ「表門には見当たらない」

太郎「表にないなら裏かな?」

ヒノキ「裏まで回るか?」

太郎「いや。別にこそこそするつもりはないので、表から堂々と行く。表門は開くでござろうか?」

ヒノキ「鍵が掛かっておる。解除の難易度は17じゃ」

太郎「そいつは手強いでござるな。基準値は9だから、8以上か。しかし、魔動機術にはエクスプローラー・エイドという便利なものがあって、解除ボーナス+2でござるよ。これを使って、ダイス目は6。ピッタリ成功」

ヒノキ「ならば、門を開いて、敷地内へ侵入できた。だが庭を進んでいると、魔法生物に襲撃される。2体のガストナイトじゃ」

太郎「魔物知識判定は13」

ヒノキ「弱点まで見抜いて、物理ダメージ+2できるぞ。当然、データも見ていい」

太郎「レベル4で、HP32か。大した相手ではござらんな。普通に戦ってみるか。先制判定は16で先に蹴り飛ばす。2発とも当たって、ダメージは20点と19点」

ヒノキ「防護点2なので35点ダメージで1体が倒された」

太郎「回避も成功して、次のラウンド。またもや2発当たって、21点と19点」

ヒノキ「はい、戦闘終了。剣のかけらの入っていないレベル4モンスターは、しょせんこの程度か」

太郎「戦利品は、魔力を帯びた石(250G)が2つ。ちょっとした小遣い稼ぎにはなったでござる」

ヒノキ「すると執事風の壮年男性が姿を表して、パチパチと拍手する。『さすがですな。噂に聞くお笑い芸人マッスル太郎さま。闘技場での活躍を始め、数々の武勲は誇張ではなかったようです。ご主人さまがお待ちかねですので、さあ、こちらへどうぞ』」

太郎「む、ちょっとした実力試しでござったか」

ヒノキ「執事はニコニコ微笑みながら、『弱い者では主人の御用を果たすことは難しいですからな。つまらない相手とは、面談するだけ時間も無駄ですし』とさわやかに、しかしチクリと棘のあるセリフを言う」

太郎「慇懃無礼とはこのことか。だが、私は認められた」

執事『ほんの第一試験合格ってところです。だけど★1つ分の評価は差し上げましょう』

太郎「ならいい。収穫はあったということだからな」

ヒノキ「そして、館内に案内されたマッスル太郎は、食堂に通される。どこか退廃的な香りのする妖艶な美女がサンドリーヌ・カペーと名乗り、会食会が催されるのじゃ。『マッスル太郎さんとは変わった名前ですわね。どこか遠くの地から来訪された方かしら?』と興味を持って尋ねられる」

太郎「外の世界から、奴隷として連れて来られたのですが、我が主人ザバーラの後見で、名誉蛮族の称号を得るまでにはなりました。そこで、いろいろな方の御用向きになれる仕事をこなしながら、顔つなぎでもできないかと思いまして」

サンドリーヌ『殊勝な心掛けですのね。それでは、あなた様の血をすすらせてもらっても構わないでしょうか?』

太郎「血をすするですと?」

サンドリーヌ『あら? ザバーラさんからお聞きお呼びではありませんでしたか? 私は上位バルバロスのラミア。蛇の身を持ち、人族の血を栄養とする女。人族からは魔物とか化物とも呼ばれることもありますが、あなたはどうお考えでしょうか?』

太郎「ラミアでござるか。とりあえず魔物知識判定で15」

ヒノキ「レベル6モンスターで、HPは剣のかけら入りで58点。5レベルまでの真語魔法や操霊魔法を扱う魔法使いタイプの魔物じゃな」

太郎「なるほど。先日、帰らずの街で吸血鬼と遭遇したが、それもあなたの仕業ですな」

サンドリーヌ『それは誤解ですわ。私は血を吸いますけれど、ヴァンパイアと違って亡者に変えたりはしません。もしも、この街でそのような事件が発生したとしたら、別の女性を疑った方がよろしいでしょう』

太郎「別の女性?」

サンドリーヌ『どうしても知りたいなら、お教えしますが、世の中には知らない方が静穏に暮らせることもあるのですよ』

太郎「それは……そうかもしれないが、前もって知っている方が対処できる危険もあるでござろう」

サンドリーヌ『それでは、お近づきの印にお教えしましょう。娼婦街のアリアドネ、彼女は吸血鬼ノスフェラトゥの眷属のリャナンシーアサシン、大変恐ろしい魔物ですわ。具体的にはレベル15の吸血暗殺者』

太郎「何と、そんな秘密が。では、もしかするとマリリンも?」

サンドリーヌ『彼女のお気に入りの娘なら、もしかすると魅入られてしまい、血を吸われて眷属の世界に足を踏み入れることになるかもしれませんが、ただリャナンシーは暗躍を旨としますので、下手に仲間を増やして事が発覚するのを避けようとするものです。逆に言えば、正体を知った者は抹殺される可能性があるでしょうね』

太郎「ちょっと待つでござる。するとあなたは? そして私はどうなるでござるか?」

サンドリーヌ『私は、蛇の道は蛇ですからね。お互いさまということでしょう。向こうの邪魔をしない、脅威にならないと思われている時点で、見過ごされてもいるようです。あなた様は……彼女の正体を知ったと気取られないように振る舞うことをお勧めしますわ。あるいは、自ら進んで彼女と同じ魔の道、闇の世界に踏み入れ、忠誠を誓うか』

太郎「魔の道……でござるか。しかし、私は人々の笑顔のために働くお笑い芸人としての夢があり申す。芸道と魔道は両立するものでござろうか」

サンドリーヌ『さあ。私にはお笑いの世界というものがよく分からないのですが、あなたの言う人々の中には人族以外に蛮族、バルバロスも含まれるのでしょうか? 人族とバルバロスが共に笑って暮らせる世界を作ることはできないのでしょうか?』

太郎「人蛮共に笑える世界ですと? そんなことは考えもしなかったですが、もしかすると貴女はそのような希望を抱いているのですか?」

サンドリーヌ『全ての人族とバルバロスが分かり合えるとは申しません。しかし、中には人族と蛮族が共に慈しみ、愛することも決して不可能ではないと確信できる事例もございますわ。できれば、そういう方々の笑って暮らせる理想郷を思い描きたい。ただの夢想とお笑いになるでしょうか?』

太郎「いや、とんでもない。もしも、貴女がそのような夢を実現したいとお考えなら、このマッスル太郎、みんなの笑顔のために喜んで力を尽くしましょうぞ」

サンドリーヌ『ありがとうございます。では、一仕事、お頼みしてよろしいでしょうか? 私の恋……いえ、奴隷の一人である人族の男、クリスという者が先日、北の黒の丘に行ったきり、戻って来ないのです。奴隷とは言え、有能な男ですので、いないと何かと不便。クリスを何としても連れ戻して欲しいのです』

太郎「おお、ならば、ちょうどいい。私も主人より、黒の丘で魔物追討の任を受けている最中。あなたの大切な想い……いや、無粋なことは聞きますまい、貴重な奴隷の方を捜索するのですな。今夜の宿と引き換えに、明日から早速旅立つとしましょう」

サンドリーヌ『お願いします。では、今夜の会食会を記念して、★1つを進呈した上で、固定ミッション「クリスを探して」を開始いたします』

太郎「メタ会話オチでござるか」

 

 ●ここまでの冒険成果

 

 経験点:★6つ、魔物退治分140、現在経験点830

 所持金:2572ガメル、戦利品500ガメル分、ザバーラポイント2808点

 

(当記事 完)

 

●霧の街のマップ(5ー9話にて完成)

   青字は宿泊可能。赤字はミッション目的地。

 

                                        ヤムール  奴隷 血染めの

  牧場  ー 娼婦街黒の丘 酒場市場ー 

    l            l      l        l           l            l

   l    l   泉の    l     ティダン  l

路地裏施療院ー 広場鮮血城ー神殿跡ー牢獄

    l            l      l           l           l      l

常夜      l      サカロス       l   灼熱の踊り  l

回廊ー 涸れ井戸ー 神殿跡 ー   橋  ー 子亭ー  廃屋

    l             l           l           l       l         l

   港ー  三色の天幕庭園ー翡翠の塔ー 叫び

                 (拠点)    l                    屋 の門

                      l          l            l       l        l

              ダルクレム     l               l           l        l

     神殿 ー骨の川ー 処刑場ー市場ー奴隷宿

                       l         l     l         l   l

      剣闘士の宿舎 ー 追い剥ぎー廃墟ー嘆きのー腐敗

        l          小路    l         広場   神殿

                         l   I             l           l           l

                     闘技場麻薬窟ー帰らずー知識S館

               の街 神殿跡