花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

マッスル太郎の、霧の街脱出(SWミストキャッスル7ー3)

前回までの収支確認

 

ヒノキ「さて、いよいよマッスル太郎の冒険も、今回と次回で終了予定じゃ」

ゲンブ「その前に、前回までの経験点と獲得資金の整理でござるな」

ヒノキ「うむ。牢獄破りクエストと、ヒューリカ退治で稼いだ分の確認じゃ。まとめると以下の通りじゃな」

 

●経験点:★11個、魔物退治分430点、ピンゾロ3回分150点

●報酬:1万2220ガメル、剣のかけら8個、ヒューリカの瞳(1200G)、未知の魔動部品(2400G)

 

ゲンブ「前回のヒューリカ戦で消費したアイテム、疾風の腕輪とトリートポーションを補充するために1500ガメルを支払って、手持ちの資金は1万1612ガメル。高価な戦利品は次回作のために取っておけ、とGMアドバイスがあったので、一部は売らずに残しておくでござる。ザバーラポイントは、1万1523点といったところか」

ヒノキ「ランダムミッションを一つ達成すれば、経験点2780点が得られるが、どうする?」

ゲンブ「それを使うと、レンジャーを3レベルにしたり、他の成長もできるが、次回作のために残しておくでござるよ。他の仲間との兼ね合いで伸ばす技能も考えたいゆえ。まあ、今後の育成予定としては3通り。レンジャーを伸ばすか、ソーサラーを得て正式にウィザードの称号を勝ちとるか、マギテックかコンジャラーの技能を伸ばすか、でござるが、今の時点で伸ばしても、劇的に大きく変わるものでもござらんからな」

ヒノキ「霧の街を脱出するには、今の力量で十分ということじゃな」

ゲンブ「強いて言うなら、お金をどう使うかだが……(エピックトレジャリーを読みながら)現在のマッスル太郎は回避が高まったので、防護点があまり意味を為さなくなった。すなわち、防護点+1のブラックベルトが無用の長物と化したゆえ、代わりに〈スマルティエの武道帯〉を6000ガメルで購入したでござる」

ヒノキ「おお、練技【リカバリィ】の回復量に生命力ボーナスを加える装備じゃな」

ゲンブ「うむ。これでHP回復量が5点から9点に向上した。MP3点でHP9点を回復できるようになったのは大きい」

ヒノキ「ブラックベルトはどうするのじゃ?」

ゲンブ「売らずに持っておく。次回作の壁役戦士に譲ってやると重宝するでござろう。これで所持金は5612ガメル。ZPも1万2123ポイントだが、このうち6000ポイントを消費して、ザバーラから〈剣のかけら〉30個を購入するでござる」

ヒノキ「それはまた、どうしてじゃ?」

ゲンブ「風の旅団から、剣のかけら100個を集めるクエストを請け負ったからな。ひとまずは38個持って行って、納めておく。残り62個は次回作で集める分割払いでござる」

ヒノキ「なるほど、次回作のための布石をいろいろ整えておくのじゃな」

ゲンブ「では、金銭整理が終わったので、実プレイを開始するでござるよ」

 

 風の旅団へのあいさつ

 

太郎(ゲンブ)「今回はまず、庭園にいるエルフのクレア・クレアに会いに行く。預けていたものを返してもらいに」

ヒノキ「確か、『シェラシースの光』についての研究資料じゃな。第3部の廃墟探検で見つけ、その後、確かにクレア・クレアに預けられた

太郎「これを、風の旅団への置き土産にしようと思う。本来なら、クレア・クレアのところにある守りの剣の情報を風の旅団は欲しがっていたのでござるが、それを外に漏らすと、庭園の平穏が脅かされる可能性があってな。私のいない間に、風の旅団が先走った行動に出る可能性もあるわけで『守りの剣は、マッスル太郎が外の世界で手に入れるために旅立った』という形式で、今回は状況を収めたいのでござるよ」

ヒノキ「なるほど。マッスル太郎が守りの剣を持って帰って来るまで、性急に事を進めないように訴えるのじゃな」

太郎「うむ。だけど、口約束だけでは向こうも心許ないと思うかもしれないので、『シェラシースの光』に関する情報と、剣のかけら38個を残しておく。これがトホテルたちに対する誠意と受け取って欲しい」

ヒノキ「クレア・クレアを守るために、守りの剣の情報は当面、口外しないままという結論か」

太郎「つまり、クエストについては未達成。この件は機会があれば、続編で達成させるつもりでござる。そうすれば、シロやリトルのキャラにもクエスト達成の経験点を稼がせることもできよう」

ヒノキ「物語の流れだけでなく、ちゃっかりゲームのルールで有利になるように立ち回るとは、さすがゲンブじゃのう。では、そういうロールプレイをしてみようか」

 

トホテル『そうか。守りの剣を入手するために、外の世界へ旅立つか。分かった。しかし、必ず戻って来るんだぞ』

太郎「そのつもりでござるよ、サスライダー殿、それにサスライガール殿。次に戻って来た時には、この私もサスライマッスルの称号を謹んでお受けしよう」

トホテル『おお、そうか。だったら、その時こそ「流浪戦隊サスライザー3(スリー)」の真の結成式を行おう。その日に備えて、古代遺跡の中から超巨大魔動機サスライオーでも発見しておくか。敵が巨大戦を仕掛けて来たときに対処できる備えは必要だからな』

太郎「確かに、ゴーレムとか魔動機などの研究は必要でござるな。あと、外の世界で4人めと5人めの仲間候補がいれば、スカウトして来てもいいし」

トホテル『4人めはピンクで、5人めはグリーンになるかな。とりあえず、女性キャラと未熟な少年キャラを希望しておく』

太郎「2人めのヒロインと、少年でござるな。共に霧の街の解放に付き合う有志が、外の世界に見つかることを期待して、待っていてもらおう。それまでは軽はずみな行動を取らないように」

セイラ『では、今後の作戦行動を整理します。まず、守りの剣の入手は、仮面レンジャー改めマッスル太郎さんが外の世界で行う。また、剣の力を起動するのに必要なかけらは、残り62個になります。そこまでが依頼したクエストということですね』

太郎「あとはジャバディーン退治でござるが、それは今の私の手には余ると思う。それよりも弱いヒューリカの方は、先日、何とか決着をつけて来たが」

トホテル『ほう。ヒューリカを倒すとはさすがだな。奴は俺たちのこともしつこく探り回っていたから、いなくなって一安心だ』

セイラ『そして、今回教えて下さった「シェラシースの光」についても、上手く起動させれば、対蛮族作戦で有効な手段となるでしょう』

太郎「他には、霧を晴らす魔法装置について〈スエラの炎〉のウルスラが研究中でござる。ただ、一つ一つの手段をバラバラに無計画に発動しても、すぐに翠将に対処されて、反抗作戦もたちまち鎮圧されてしまう可能性が大きい。実行するならば、二段重ね、三段重ねの綿密な作戦を他の組織との連携も踏まえて、効果的に発動するべきでござろう」

トホテル『それまでは動かず、戦力を蓄えろってことだな。だったら、その間にサスライオー探しでもしておくか』

太郎「本当に、そんな物が見つかるとでも?」

トホテル『ああ、これもル=ロウド神の夢のお告げだが、この霧の街の地下には、翠将すら凌駕するほどの巨大な力が埋まっているそうだ。そいつさえ発掘できれば、街の解放なんて容易いことだと思うがな』

セイラ『しかし、聞くところによると、街の地下には蛮族たちの暗黒世界が隠されていて、人族の侵入は容易でないとか。地上よりも困難な探索になりそうです』

トホテル『地上が「霧の城砦都市(ミストキャッスル)」なら、地下は「霧の冥府魔境(ミストグレイヴ)」とも呼称されるそうだな。噂を聞いただけで、本当にそんな世界があるかは知らんが、蛮族どもと魔神どもの巣窟になっているらしい。恐ろしい話だぜ』

セイラ『できれば、そういう世界には関わらないでいたいものです』

太郎「冥府魔境ミストグレイヴか。この街はまだまだ奥が深いのでござるな」

トホテル『深い闇の世界よりも、広い光の世界に、あんたはこれから飛び出すんだろう? 土産話を楽しみにしているぜ。俺たちの分まで、流浪の旅を満喫して来な。神の加護を祈っているぜ』

 

サンドリーヌの最後の依頼

 

ヒノキ「それでは、サンドリーヌの最後の依頼クエストに移るとするかのう。まず、この脱出行に参加するメンバーじゃが、サンドリーヌを始め、執事の人、クリスとハイネ兄妹、それにエルラーン卿とマッスル太郎の6人じゃ。そのうち、サンドリーヌは6レベルソーサラーの能力を持ったラミア、執事は人間のフェンサーで、エルラーン卿はファイター、クリスとハイネは戦闘力を持たない一般人ということになっている」

太郎「ほう。執事とエルラーン卿は前衛に立ってくれるのか」

ヒノキ「一応、ラストバトルはパーティー戦闘の予定なので、2人はデータを持たないものの、バトルのギミックとしては考えておる次第じゃ」

太郎「執事さんの名前は?」

ヒノキ「仮称バトラーさんとしておこうかの」

太郎「執事は英語でbutler、それとバトルする者としてのbattlerを兼ねたネーミングでござるな」

ヒノキ「うむ。フィクションの執事は、昔とった杵柄とかで、やたらと戦闘力の高いジェントルマンが多いからのう。サンドリーヌの執事バトラーさんもそういうイメージでとらえてもらってよい。イメージとしては、ダイターン3のギャリソン時田氏が妥当じゃろう」

太郎「日輪の力を拝借するのでござるな。貴婦人に仕える有能な執事と、青年小姓、侍女、それに騎士とお笑い芸人の珍道中と言ったところか」

ヒノキ「お笑い芸人と称しておるが、実は熟練の忍びにして武闘家、そして魔神という濃い設定のキャラになったからのう、お主は。ところで、サンドリーヌはこの仕事のお礼として、5つの宝物をランダムに提供してくれる。ダイスを振って決めるがいい」

太郎「Aランク槍のピラー(売値440G)、光のアミュレット(売値1500G)、赤の眼鏡(売値1000G)、Aランク剣のフランベルジュ(売値790G)、それに大きな金貨袋(1000G)か。一つ疑問なのは、ソード・ワールドで流通している貨幣のガメルは銀貨という設定なのに、金貨袋というのはおかしいのではないか、ということでござるな」

ヒノキ「だったら、銀貨袋と解釈してもいいし、翠将の顔が刻印された特別な記念金貨が上流蛮族の間では配布されたということにしてもいい。疑問点を見つけたら、そこに合理的な解釈を試みるのが一流の創作芸というものじゃからな。まあ、疑問点を見つけてツッコミ入れるのも一つの芸と言えなくもないが、それだけだと何も生み出せないので二流以下と言えよう。『ここが変だよ』とツッコミ芸を売りにして、面白おかしく語るのも一興じゃが、そこで満足してしまうのが素人の浅はかさと、わらわは考える」

太郎「矛盾のツッコミ芸の先に、合理的解釈芸という領域が広がっているのでござるな」

 

ヒノキ「高校生ぐらいだと『世の中のおかしな点を批評する』ことを学問の世界でも推奨されるらしいのう。つまり、誰かの言ったことを100%鵜呑みにせずに、自分の頭で考えて吟味する批判精神が大事だと教わる。しかし、それで止まってしまうと、『所詮は高校生レベル、あるいは世間に出てない学生レベルの戯言』と社会では評価されるわけじゃ。社会はしばしば矛盾を伴うものだし、その矛盾にも何らかの意味があることが多々あり、視点を変えれば矛盾じゃなくなることもよくある話なわけで」

太郎「つまり、一面的な批評ではなく、異なる視点での別解釈を試みて、そこに上手く折り合いを付けるところまでが大人の仕事でござるな」

ヒノキ「あるいは、大学の研究者のな。『ある学者はこういうことを言っているが、別の学者はまた違うことを言っている。自分はどちらの説に与すべきか、あるいは両方の説をどちらも間違いと見なして新たな仮説を構築すべきか、あるいは両者を折衷させる中間説を提唱すべきか』などなど、先人の学説や作品を丹念に研究する延長で自分の研究成果はこれだ、というものを示さねばならん。何かを批判するなら、その批判の延長にある自分の説を披露して説得力を示さない限り、それは『バカでもできる戯言』扱いされるようじゃ」

太郎「つまり、批判は新たな創造の入り口でしかない、でござるか」

ヒノキ「まあ、学問の世界や、創作、あるいは社会生活でアイデアを出すべき立場なら、そこまで踏み込んで考えるべきと言うことじゃよ。無責任な思いつきの戯言だけで許される立場なら、自由に発言、放言しても罪はないが、その程度の発言で周囲から評価を得られるとは考えない方がいい。もちろん、『その場限りの面白いこと』程度のつもりなら、それでも構わんが、ならば大事なのは『発言の中身ではなく、その場のノリや空気を読む力、自分に求められている役割への意識』ということになろうか」

太郎「役割意識とは?」

ヒノキ「戦士を自認する者なら当然、武器や防具へのこだわり、関心を示して、自分の戦術にいかに取り入れるかなど考えるべきであろう。エンジニアを目指していますという人間が、機械の仕組みに関心を持たないということがあろうか。そういう職業についている人間なら、あるいは目指している人間なら、やはりそれらしい振る舞い方というのがあるのじゃよ。もちろん、それは創作上のステロタイプ的なイメージかもしれないし、型破りなケースもないわけではないが、『職種や役割の類型と、そこからズレた個性の折り合いをどう付けるか』ということも一つのドラマと言えるかもしれん」

太郎「話の行方が読めんが、一体どういうことでござるか?」

ヒノキ「『人々の笑顔のために働く魔神』というのは矛盾しておるが、突きつめると面白いキャラになるとは思わんかね」

太郎「はあ。『そんなのは魔神とは言わん。公式からは認められん』というのが一面的な批評という奴でござるな」

ヒノキ「うむ、それに対して『そんな魔神がいてもいい』という立場もあろうが、それが公式の提示した世界観を全く無視して好き勝手すると、もはやソード・ワールドとは言えん。思いつきで考えた設定に、どう世界観的な整合性を組み入れるかで知恵を絞るのが、書き手の責任というものと考える」

太郎「なるほど。自分の考えた思いつきに、後からでも合理的解釈を試みるのが真剣な創作芸ということでござるか」

ヒノキ「創作とはしょせん、バカげたお遊びに過ぎん。小説というのも浮世離れした非現実の空想的な文章に、いかにリアリティの装いをこらして、読者をその世界に引き込むかが勝負どころじゃしのう。人間心理をリアルに描写するもよし、不条理な事件に対して常識人の立場で異を唱える者を描くもよし、それでも主人公は『この世に不思議なものはありません。全ては隠された真実が見えていないだけです』と別次元の解釈を示して、読者に納得させるもよし、何をもってリアルっぽいと感じさせるかが、作者の腕の見せどころと言えようか。

「もちろん、ビジュアルに訴えることのできる映像作品では、また別の演出手法もあるのじゃろうし、ゲームのリプレイだと、ゲームのルールや公式世界観の薀蓄などで『デタラメではなく、ゲーム的なリアルの地に足ついた物語』が目指すべき理想とも言えよう」

太郎「矛盾点の軽いツッコミから、思わず創作論の深みにハマり込んだ気がするが、作者とアリナ様は『マッスル太郎の魔神設定を思いつきのデタラメではなく、公式世界観を踏まえた(地に足ついた)整合性のある物語に仕立て上げる気持ち』を持ち合わせているということでござるな」

ヒノキ「魔神につなげる、すなわちデモンズラインというのも旬な時期じゃからな」

 

広い世界の入り口

 

ヒノキ「寄り道した話を戻すとしよう。旅の準備を整えた一行は、翠将ヤーハッカゼッシュの住まう翡翠の塔まで、人目を忍ぶように赴いたところじゃ。顔を見られるとマズいエルラーン卿とハイネ嬢は、しっかりフード付きマントに身を包み、サンドリーヌと執事のバトラーが堂々と先頭を進む」

太郎「では、私は最後尾、殿(しんがり)を務めるとしようか。周囲への警戒を怠らないようにしながら」

ヒノキ「うむ、エルラーン卿はクリスとハイネを守るような位置をとりながらも、目立たないように意識しておるようじゃ。その足取りは、熟練のレンジャー、野外での行軍に慣れた男のようで、冒険者としても安心できる動きじゃのう」

太郎「レンジャーということは、街の外に出ても頼り甲斐がありそうでござるな。私もレンジャーではあるが、1レベルしかないので、野外ではいささか心許ないわけで。街の外に出た後は、エルラーン卿の経験と人脈を当てにする機会も多かろう」

ヒノキ「なお、霧の街は蛮族支配下レーゼルドーン大陸のエイギア地方に存在する。2.0のルールブックIIにエイギア地方の簡単な解説があるが、主な冒険の拠点は『拓かれた街』の異名を持つカシュカーン。霧の街を出た後は南下してカシュカーンを目指そう、とエルラーンは言っている」

太郎「カシュカーンは、南のテラスティア大陸最北端の国ダーレスブルグ公国がレーゼルドーン大陸に設けた橋頭堡みたいな街でござるな。人族と蛮族の領域の最前線となっていると聞く」

ヒノキ「ソード・ワールド2.0および2.5は大陸全体を一冊で網羅したようなワールドガイドが出てないのが残念じゃのう。出版されているワールドガイドは地域別で、ルールブックだけだとテラスティア北部のみしか分からないようになっておる」

太郎「主な冒険の舞台となっているのは、ルキスラ帝国を中心とするザルツ地方でござるな」

ヒノキ「ルールブックでは大陸北部を紹介する一方で、リプレイでは南部の小国ルーフェリアやアイヤール公国を舞台にした物語を展開し、2.0の初期は『ゲームの舞台は北部、物語の舞台は南部』という感じの展開じゃった」

太郎「まあ、2.5のアルフレイム大陸が展開の中心である現在、今さら2.0時代のテラスティア大陸のサプリメントに、どれほど需要があるかは不明でござるが」

ヒノキ「それでも、2.5の展開が続くうちに、テラスティアの冒険者とアルフレイムの冒険者が合流するような物語が生まれることを期待したいわけで」

太郎「2.5のワールドガイドは現在どうなっているでござるか?」

ヒノキ「ワールドガイドというか、もっと狭い地域の都市ガイドのレベルじゃな、今はまだ」

太郎「つまり、2.5のアルフレイム大陸を総括したような大きな視点のワールドガイドはまだ出てない、と」

ヒノキ「うむ。やはり、こういう本が一冊まとまって欲しいのう」

太郎「大きな世界地図をまずは示して、そこから地方別に掘り下げていく方法と、各地域別の観光ガイド的な本を何冊も出して、後から大きくまとめる手法の二つがござるが」

ヒノキ「旧ソード・ワールドアレクラスト大陸)は前者の手法で、今のラクシアは後者の手法で展開しておるが、結局、テラスティアの全域を俯瞰したようなワールドガイドはまだ出ておらず、リプレイやシナリオサプリメントごとに断片的な地域イメージの集合体でしかない。まあ、後にテラスティアとレーゼルドーン、アルフレイムも網羅した大著が出るなら喜んで買うじゃろうが、新兄さんは」

太郎「ところで、GMとしてシナリオを自作しない限りは、ワールドガイドは必要ないという意見もござろうが」

ヒノキ「だがしかし、ミストキャッスルや他のシナリオをプレイしたり、リプレイを読んだ後で、NPCや事件の裏設定やその後の物語がワールドガイドを読んで判明するのは、ワクワクしないかのう」

太郎「確かに、知ってるキャラや事件に関する記述は興味深い。逆に、先にワールドガイドを読んで、推しのNPCを見つけた後で、それが公式のリプレイなどに登場すると嬉しいかも知れん」

ヒノキ「まあ、GMの立場なら、推しのNPCを見つけると、自作のシナリオで登場させればいいのじゃがな。ともあれ、ミストキャッスルで登場したサンドリーヌや、ハイネやエルラーン卿を気に入ったら、その後のプレイで登場させるという選択肢もあるし、既存シナリオを少しイジって遊ぶこともOKじゃろう」

太郎「トホテルがサスライダーを名乗り、セイラさんがサスライガールで、巨大魔動機サスライオーなる代物も、公式シナリオにはないオリジナルのお遊びでござるな」

ヒノキ「しかし、一度提示したお遊びアレンジネタは、その場ではGMとプレイヤーの間、あるいは作者と読者の間で共有されるのじゃよ。逆に、一度共有されたお約束というものを、作者側で勝手に台無しにしてしまうと、白けるというか、せっかく描いた夢をぶち壊しにするというか、そうしてフォローも何もしなければ、創作家として読者から見限られても仕方ない。ひとえに愛される創作家というものは、自分の生み出して展開した共同幻想というものを大切に扱う者かもしれん」

太郎「架空世界のワールドガイドもまた、共同幻想の舞台として大切にしていきたいものでござるなあ」

 

翡翠の塔から水門へ

 

ヒノキ「再びの寄り道、すまんのじゃ。どうも素直に終わらせたくないという心理が邪魔をして、いろいろ語りたくなっているようじゃのう。ゲームのプレイに戻ると、翡翠の塔の描写は以前にしたはず」

太郎「リザードマンマリーナの番兵が2名、見張りの任についているのでござったな。そいつらは敵対的に振る舞って来るでござるか?」

ヒノキ「いいや。サンドリーヌと執事が運河通行証を見せて、うまく交渉してくれたらしく、同行者が特別に誰何されることもなく、運河を渡るための小船を二艘用意してもらえる」

太郎「どうして二艘も?」

ヒノキ「一艘が5人乗りなので、6人は乗れんのじゃ。よって、二艘に乗り手を振り分けることになる。一艘めはサンドリーヌと執事、ハイネが乗り込み、執事がオールを漕ぐことになる。二艘めはエルラーンとクリス、そしてお主が乗ることになるが、オールは誰が漕ぐ?」

太郎「力仕事なら、マッスル太郎にお任せを」

ヒノキ「では、漕ぎ手をよろしく。そして、この後の選択肢は二つある。一つは運河を渡って翡翠の塔に乗り込むこと。もう一つは運河を伝って、そのまま街の西にあるシェス湖へ向かうこと。ただし、シェス湖に出るには、水門を開ける必要がある」

太郎「当然、翡翠の塔ではなく、水門に向かうでござるよ。例の開閉コードはどう使うでござるか?」

ヒノキ「水門の脇に、銀水晶で造られた操作盤があって、それに数字コードを3つ入力するようになっている。そして、サンドリーヌが率先して以下の数字を打ち込んだ」

 

438

951

276

 

太郎「それで成功したでござるか?」

ヒノキ「いや、さらに『最終コードを入力して下さい』と画面に表示され、サンドリーヌが戸惑っておる。どうやら、彼女は最終コードを知らないようじゃ」

太郎「確か、数字の配列に鍵があったのでござるな。そして、魔法神とか魔方陣とかいうヒントも出ていた。ならば、縦横斜めに足して共通する数字15が最終コードとして間違いないかと」

ヒノキ「うむ、実際のシナリオでは、この謎解きはゲームブックのようにページ移動するようになっているのじゃ。『このページ番号(45)に、最終コードの一の位から十の位を引いた数を加えたページに進め』とある」

太郎「つまりは、45+(5ー1)=49ページに進め、でござるな」

ヒノキ「正解じゃ。最終コードを打ち込むと、水門はゴゴゴゴゴと厳かな響きと共に開いていく。それと同時に湖から、清らかな水が澱んだ運河の水を洗い浄めるようにゆっくり流れ込んでくる。少し力を入れて漕がなければ、小舟も流れに乗って押し流されそうじゃのう」

太郎「慌てて、漕ぐでござるよ。この開いた門を閉じる手立てはないでござるか?」

サンドリーヌ『確か、外側に開閉レバーが設置されているという記述を読んだことがあります』

太郎「では、小舟を一生懸命に漕いで、街の外に出たところで、レバーを探して門を閉じるでござる。開いたままにしておくと、我々がここから脱出したことが丸分かりでござるからな」

ヒノキ「確かにのう。すると程なく、レバーは見つかり、水門も再び閉ざされることとなった。この装置が破壊されない限りは、ここを利用して街の出入りが可能になったわけじゃ。さらに太郎は思い出す。『シェラシースの光』を起動する方法が、湖から運河の水を翡翠の塔の地下に流し込むことだと」

太郎「つまり、水門を開けっ放しにしておくと、やがて『シェラシースの光』がうっかり起動してしまうということか」

ヒノキ「その結果、一時的に蛮族の力は弱体化するじゃろうが、そこから一気に攻めない限り、2日のうちに翠将ヤーハッカゼッシュは対処手段として『シェラシースの光』のシステムを破壊してしまう、とシナリオに書かれてある」

太郎「しかし、素早く門を閉じたので、今はシステム起動を抑えることができたわけでござるな」

ヒノキ「うむ。ともあれ、マッスル太郎とサンドリーヌの一行は、無事に運河から街の外のシェス湖に抜け出すことができた。ここから充分に霧の街から離れたところで、陸地に上がったら、歩いてカシュカーンを目指すこともできよう。霧の立ち込めた湖面を慎重に漕ぎ進めて行くと、やがて、霧の向こうに目指す岸辺が見えてきた。しかし、その時じゃ」

太郎「最後の敵と遭遇するのでござるな」

ヒノキ「その通り。お主たちの行く手に、シェス湖を警備する蛮族の巡回部隊が現れた。何とか迂回して、岸辺に上陸は果たしたものの、敵はなおもしつこく追いすがって来る。連中をここで倒さなければ、増援を呼ばれて逃げるのはますます困難になる。そう判断したなら、後顧の憂いを断つために、戦いの準備をせよ。これが本キャンペーン最後の戦いじゃ!」

 

(当記事 完。次回、「さらば、マッスル太郎」にて完結予定)