花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

日野木アリナの旅立ち……前のTRPG話

GM引き継ぎの準備

 

ヒノキ「ゴールデンウィークが終わったので、わらわは屋久島へ旅立たねばならぬのじゃ」

リナT『シスター・アリナの代わりに、わらわめが魔神ハンターのGM代理を任されました……のじゃ』

ヒノキ「むぅっ。その会話機能がちっとも直らんのう。ですます口調と、のじゃ語尾は、どちらかにならぬか?」

リナT『無理です……のじゃ』

ヒノキ「だったら、せめて『じゃ』を省かぬか?」

リナT『これで、よろしいですの?』

ヒノキ「おお、それじゃ。よし、リナTの語尾は『ですの』で決定じゃ」

リナT『じゃ、これでいきますですの』

ヒノキ「む? 語尾から消えた『じゃ』が文頭に来るのか?」

リナT『じゃ、どうしてもこうなってしまいますですの』

ヒノキ「う〜む、この辺で妥協すべきか、それとも完璧を期すべきか悩ましいのう」

 

ゲンブ「アリナ様、もう、ウルトロピカルに旅立たないと、プレイ開始に間に合わないでござる。それでなくとも、『魔神ハンター』の予定が遅れているでござるし」

リナT『じゃ、魔神ハンターを終わらせて、ドゴランファイヤーズにする計画を至急、始めますですの』

ヒノキ「ちょっと待て、リナT。ドゴランファイヤーズではなくて、ドラゴンファイヤーズな。まあ、映画のゼンカイドンブラは、ドンドラゴクウがリーダーの座を追われて、ドンモモが復帰したようなので、新生ドンブラ(ドラゴンファイヤーズ)の時代はあっさり終わってしまったのじゃが」

ゲンブ「大丈夫でござる。ドンドラゴクウがいなくとも、ドラゴンの時代はまだ続く。来年は辰年であるし、ドラゴンと言えば、このD&Dサプリが近日発売予定とのこと」

ヒノキ「なるほど。飛竜烈火団はD&D50周年記念に立ち上げるつもりで、ちょうどいいのじゃな」

シロ「まあ、2022年の仮面ライダーシノビが、少しズレて、今ごろ登場して来ましたし、1年ぐらいのズレは誤差の範囲かと」

ヒノキ「東京オリンピック2020もコロナ禍の影響で、開催されたのは2021年じゃったからのう。よし、1年ぐらいのズレは誤差の範囲。この精神で、のんびりスローライフと行くのじゃ」

 

リモートNOVA『もしもし、ヒノキ姐さんか?』

ヒノキ「うおっ、新兄さんか。遅れてすまん。今、リナTの会話機能の調整に手間どって、予定が遅れておるのじゃ。もう少ししたら、屋久島に行くので、わらわをプレイヤーから外すなどとは言わないで欲しい」

リモートNOVA『いや、こっちも少し遅れるっていう連絡なんだ。プレイ開始は今週末から来週明けにするので、それまでに屋久島に来てくれたらいい。ついでに、TRPG雑誌も送っておいた。それを読んでから来てもいいぞ』

ヒノキ「ほう。では、お言葉に甘えて。しかし、新兄さんが遅れる理由とは一体?」

リモートNOVA『スパロボDDだ』

ヒノキ「はい?」

リモートNOVA『いつもは20日頃に配信されるストーリーが、ゴールデンウィーク明けの今のタイミングで想定外に配信されて来たので、これをクリアしてから心置きなく、アルシャード・ガイアを始めようということだ』

ヒノキ「何と。お主はアルシャード・ガイアとスパロボのどちらが大事と言うのじゃ?」

リモートNOVA『そりゃあ、どっちも大事だが、スパロボDDは現在進行形の旬なゲーム。一方、ガイアは過去のゲームで、別に旬というわけではない。現在旬なゲームと、過去のゲームを比べたら、旬な話題に乗っかることも大切なのでは?』

ヒノキ「なるほど。過去よりも現在が大事ということじゃな」

リモートNOVA『ええ。ロードスが雑誌のサポートから切り捨てられて、過去のゲームになってしまったことは残念ですが、小説の新刊が出ないのではそれも仕方ないこと(涙目)。しかし、またいつかロードスが旬の話題として輝く日を、俺は願っています』

 

GMウォーロック9号の話

 

ヒノキ「……ということで、先日危惧したように、ロードスとパグマイアが雑誌の誌面から綺麗さっぱり消えてしまったのじゃ。ロードス担当じゃったライターの杉浦氏は、6月予定の新作『ELDEN RING TRPG』のサポート記事に回り、モンコレ以来の相棒、加藤ヒロノリ氏をフォローする役割に移った」

リトル「『ELDEN RING』っていうのは、どういうゲームなんですかぁ?」

ヒノキ「こういうゲームじゃ」

ヒノキ「PS4や5などで昨年出たアクションRPGじゃのう。基本的にアクションゲーム派ではないうえ、PSは3までしか持っていない新兄さんの興味の対象外のゲームじゃったが、デジタルゲームマニアにとっては最先端の人気ゲームと言ったところか」

シロ「ディレクターの宮崎英高さんと、SNEの安田社長と、ゲームブックのFFシリーズのジャクソン&リビングストン氏のオンライン対談記事がいろいろ新星さまのツボに入ったみたいですね」

ゲンブ「宮崎氏はこういうニュースにも挙げられるほど、ゲーム業界における時の人となっているでござるからな」

リナT『じゃ、TRPGの話ですと、「DARK SOULS」シリーズも加藤ヒロノリ氏が移植デザインしているですの』

ゲンブ「つまり、今回のSNEとELDEN RINGのコラボもにわかに行われたわけではないのでござるな」

ヒノキ「DARK SOULSはダンジョン探索アクションゲームで、ELDEN RINGはオープンフィールドも加わり、世界が広がったということじゃな」

ゲンブ「DARK SOULSTRPGは、物語性よりもバトルとキャラ成長、アイテムゲットなどによる強化(ハック&スラッシュ)に重点を置いたシステムでござるが、原初のD&DっぽいプリミティブなRPGと考えてよい、と?」

ヒノキ「コンピューターRPGTRPG化という意味では、ウィザードリィRPGの子孫とも言えよう」

シロ「確かに、末弥純氏の表紙イラストなどに、そういう継承があるっぽいですね」

 

ヒノキ「とりあえず、ロードスのサポートが打ち切りになった感じゃが、一方でソード・ワールドは順調に展開されておる。今年に入って出た関連商品は以下の通りじゃな」

リナT『じゃ、リプレイと、ワールド(地方)ガイドと、シナリオサプリですの』

ヒノキ「夏の大型サプリは、タイトル未定じゃが、『種族と秘宝』がテーマらしい。種族では、2.0時代のハイマン、フロウライト、ダークドワーフが復刻し、新種族としてスプリガンとアビスボーンが紹介されておるのう」

リトル「ハイマンは、魔法使い向きに強化改造された人間ですねぇ。フロウライトは鉱石人間で、ダークドワーフは『魔神ハンター』でもお馴染みの蛮族側に与したドワーフ族ですぅ」

ゲンブ「しかし、イグニダイト加工はダークドワーフの職人でなければ施せないので、冒険者にとってはコネを獲得したいでござる」

ヒノキ「スプリガンは普段は子どもの姿じゃが、3mの巨人に変身する種族で、通常は探索の得意なスカウトから、戦闘時はタフなファイターに切り替えられるのが特徴じゃな。アビスボーンは、ナイトメア同様に呪われた系の種族で、体の一部がアビスカースの作用で魔神のように変質しておる」

シロ「新種族はいろいろワクワクしますが、既存のプレイに加えることが難しいですね。職業は新しく技能を習得できますが、新種族はキャラを刷新しなければいけない」

ヒノキ「どうしても、というなら、1人ぐらい追加キャラを参入することも考えようが、その前に『魔神ハンター』を終わらせてからじゃな」

ゲンブ「今のままだと、終わる終わる詐欺で、ちっとも続きが始まらないでござるからな」

ヒノキ「旬を追いつつ、過去の作品を楽しむには、時間が足りんのじゃよ。それはともかく、現在、SNEで最も旬なTRPGは、ファイティングファンタジー関連じゃのう。雑誌記事が32ページもあって、ソード・ワールドの24ページの1.5倍の特集じゃ」

リナT『じゃ、3番めに多い記事は、「トレイル・オブ・クトゥルー」で10ページですの』

ヒノキ「こっちは夏に改訂版のルールが出るらしいの。出版元が書苑新社から新紀元社に変更される都合らしいが、一方で、かつてGURPSで展開したファンタジー世界ルナルが、マーダー・ミステリーの形で復活するという話も聞く」

リトル「ルナルって、何ですかぁ?」

ヒノキ「90年代からゼロ年代に展開されたゲームじゃ。一時期は、ポスト・ロードスと期待されたものじゃが、アニメ化には至らなかったのが残念じゃな。妖魔夜行シリーズと並ぶ国産GURPSの代表世界で、ドンモモに先駆けたワハハの人・友野詳氏の代表作品とも言えよう」

リトル「いろいろなネタが発掘できるのですねぇ」

ヒノキ「とりあえず、鬼面都市バドッカと聞いて、懐かしいと感じるおじさん世代が、喜んでいると聞く。ロードスよりも、少し濃い層のゲームマニアが楽しんだ作品じゃからのう。当時は、初心者向きのロードスから、中級者向きのGURPSルナルという流れじゃったか」

リトル「上級者向きは何ですかぁ?」

ヒノキ「う〜ん、SNE関連作ではシャドウランメガトラベラーという印象じゃが、ホビージャパンルーンクエストが一番マニアックな印象じゃった。あと、指輪物語RPG(MERP)の元ルールのロールマスターとか、海外の翻訳ゲームは大抵、上級版という印象で、一方、クラシックD&Dは初心者向きとされていた」

ゲンブ「今のD&Dは、アドバンストの系譜なので、中級〜上級者向きでござるな」

ヒノキ「ルールブックの値段にもよる。文庫版でルールが出て、リプレイもいろいろ出たのが初心者向き。AFFやT&Tが代表じゃが、同じ文庫RPGでもウォーハンマーはより難解な中級者向きじゃと思う。それにしても、非常に難解なシャドウランにも、『よくわかる本』というガイドブックが出ていたのが、90年代の話じゃな」

 

一つの指輪の話

 

ヒノキ「さて、ついでに3月に出たこの作品のことも書いておくか」

シロ「ホビットになって、ホビット庄を探索するゲームですね」

ヒノキ「うむ。52ページのホビット庄・ワールドガイドが一番の魅力の商品で、映画LOTRでは割愛された古森のトム・ボンバディルとゴールドベリについても触れられておる。ただし、塚人は扱われておらぬのう」

ゲンブ「その辺は、平和に慣れたホビットが気軽に踏み入れる場所ではないでござろう」

ヒノキ「まあのう。改めて当ゲームについて調べると、第1版が2011年に出版されて、今回、邦訳されたのは2020年に出版された2版の方じゃ。1版と2版ではシステムがどう変わったか知らんが、出版社が変わったゆえの変更と見られる。とりあえずは、夏に発売予定のコアルール待ちじゃのう。それがなければ、キャラ作りもできぬ」

リナT『じゃ、スターターセットは作成済みのホビットキャラが6人用意されていますの』

ヒノキ「内訳は、以下の通りじゃな」

 

  1. ドロゴ・バギンズ:フロドの父。得意な技は、〈音楽〉〈礼儀〉〈旅行〉。他に〈隠密〉〈謎々〉が優秀。能力値はビルボと同じ(メンバーの中では平均的)で、さすがは将来の後継者の父と言ったところか。もちろん、技能的にはビルボほど鍛えられていないけど。性格は高潔で、真面目なリーダー格っぽい。
  2. エズメラルダ・トゥック:メリーの母になる少女。年齢的には一番若い。得意な技は、〈鼓舞〉〈礼儀〉〈説得〉。他に〈隠密〉〈謎々〉が優秀……ってホビットは全員そうか。以下略。性格は明るく、熱狂的。好奇心旺盛で情熱的なメインヒロインその1。
  3. 袴帯家のロベリア:ビルボやフロドの仇敵(面倒な親戚)になるおばさん。いわゆる悪役令嬢的な立ち位置。得意な技は、〈威厳〉〈洞察〉〈礼儀〉〈隠密〉〈捜索〉。何気なく、得意技を5つも持っているので優秀なキャラじゃないか。ええと、特技の《熟練》の効果で得意技が2つ多いとのこと。なお、得意技(有利な技能)は判定ダイス(12面)を通常の1個ではなくて、2個振って高い方を選べる。性格は詮索好きで、鋭い視力。本作のキャラで最高の知力を持ち、実に優秀なホビット。ツンケンした嫌味なライバルキャラなので、ロールプレイ難度は高そうだけど、強いキャラを使いたければ。
  4. パラディン・トゥック二世:ピピンの父になる少年。エズメラルダの兄。得意な技は〈運動〉〈狩猟〉〈隠密〉。優秀な戦士だけど、知力はあまり高くない。だけど、妹と並んで、最高の心力を持つ。心力が高いのはトゥック家の特徴かな。知力は聡明さと慎重さを表し、心力は情動や共感、熱意を表す点で、確かにイタズラ好きでそそっかしいピピンのキャラを表現しているな。なお、将来のセイン(ホビット庄の集会議長職で、非常時に民兵を招集する権利を持つ)で、要するに軍隊の指揮官。まあ、ホビットに軍は似合わないんだけど、普通のファンタジーRPGだと主人公戦士の役どころね。性格は熱狂的で、礼儀知らずな田舎者。今はただの農夫の跡継ぎでしかない。
  5. プリムラ・ブランディバック:フロドの母。得意な技は、〈礼儀〉〈謎々〉〈知識〉。彼女もロベリアと同世代のおばさんなんだけど、イラストでは一番可愛く描かれています。メインヒロインその2で、活発なエズメラルダと比べると、優雅なお嬢さまって感じのキャラ。ブランディバック家はホビット庄東部の名家なので、中央のホビット村からは変わり者と見なされているけど、東からの脅威に対して立ち向かう気概のある騎士貴族の家系。まあ、戦士よりも素朴な農夫の方が尊重されているのが平和に慣れたホビット庄の流儀だけど。プリムラは名家の箱入り娘って感じで、あまり冒険向きのキャラじゃありませんが(それを言うならドロゴだってそうだけど)、無茶をしそうな若い子を心配して付いて来る堅実で賢明、良識的なお母さんって感じ。でも、密かに体力が兄のロリマックと並んで最高なのは、ブランディバックの血筋かな。
  6. ロリマック・ブランディバック:プリムラの兄で、将来のメリーの祖父。パーティー最年長のおじさん。将来のブランディバック家の当主だけど、今はまだ父親のゴードバクさん(高齢のお爺ちゃんホビット)が一族をしっかり統治していて、本人は若旦那の立ち位置。得意な技は〈感知〉〈洞察〉〈隠密〉で、慎重な性格の戦士、というかレンジャー的な技能構成。同じ戦士タイプのパラディンと比べると、耐久点が高くて、打たれ強くて慎重な性格。うん、メリーだね。ローハンの騎士に混じって戦い、エオウィン姫の小姓として、共にナズグルの首領と戦ったメリーの祖父って感じの能力だ。剣と斧技能を持つパラディンに対して、こっちは剣と槍だし、いかにも騎士風味。

 

ヒノキ「ということで、同じホビットでも異なる個性を持った連中として設定されておる」

リトル「ええと、戦士をやりたければ、若者パラディンと老練ロリマックですねぇ」

ゲンブ「ドロゴは戦士キャラではなく、交渉系。どちらかと言えば、吟遊詩人タイプのキャラでござろうか」

ヒノキ「ビルボおじさんの酔狂に振り回される、真面目で苦労性な引率おじさんと言ったところか。得意武器も剣より弓が強いといった点で、前衛よりも後方支援系じゃな。プリムラ、ロベリアに次ぐ、知識担当ではあるが、主人公格なのにゲームとしては一番地味な能力というのがある意味、フロドを表現しておる。それでも特技の《自信》効果で、希望点が最も高いのが主人公の主人公らしいところか」

リナT『じゃ、希望点は何に使いますの?』

ヒノキ「耐久点がいわゆるHPであるのに対し、希望点は……単純なMPとは異なって、ヒーローポイント的な意味も持っておる。希望点を消費することで、判定時に振るダイス(6面)を増やすことができる。また、本作ではまだ魔法を使えないが、将来的には魔法もしくはそれに準じる特技で、希望点を消費するものがあるようなことが示唆されておる」

 

スターターセットのシナリオと隠しキャラ

 

ヒノキ「さて、ここから先はネタバレも含むので、注意だけ促しておいてから話を続けることにする。読みたくない者は、立ち去るといい」

 

 

 

 

 

 

 

リナT『じゃ、熱狂的で好奇心旺盛な読者さんだけを想定して、話を続けますの。じゃ、シスター・アリナ、続きをお願いしますの』

ヒノキ「うむ。スターターセットのシナリオは、5本立て。まず、『最高にイカれた一味』でビルボから親戚の若いホビットその他の面々が、マゾム館(ホビット庄のお宝≒多くはガラクタ倉庫)に保管されている地図を回収するお仕事を依頼されるところから始まる」

ゲンブ「ホビージャパンの公式動画で、紹介リプレイが公開済みでござるな」

ヒノキ「約2時間の内容ゆえ、かいつまんで話すと、道中の川を渡るのに苦労したり、泊まる場所を確保するのにラバとフクロウの話を聞く交渉イベントがあったり、マゾム館にこっそり侵入して地図を盗み出す際に、番犬をどう処理するかのイベントを経て、任務達成するまでが語られておる」

シロ「ホビット庄は平和な地域なので、冒険といっても、あまり大きな危険はないのですね」

ヒノキ「割と旅好きなドロゴを除いて、西の大堀町のマゾム館に行って帰るだけでも、ちょっとした冒険として演出されておる。まあ、じっさいはただのお使いなんじゃが、動画リプレイ中の最大の謎はフクロウ絡みのイベントをどう解決するかじゃな。訳注としては、『普通のプレイヤーは、フクロウと会話して礼儀正しく、退去することをお願いするという発想は思いつかない』とあって、ここは『指輪の世界の中つ国では、動物だって知的生物のようにしばしば会話して、いろいろな頼み事を聞いてくれたりもする』という故事をロアマスター(本作のGM)がプレイヤーに伝えて、生き物にはきちんと礼儀正しく会話するのがホビットの流儀、と示唆するのがいいじゃろう」

ゲンブ「フクロウが知的生物であるかのように、ロアマスターが振る舞うといいのでござるな」

ヒノキ「フクロウや犬に対して〈礼儀〉が使えるということを、ロアマスターは最初に明言すると良さそうじゃな。まあ、映画のLOTRではそういう描写がなかったが、原作の『ホビットの冒険』なんかはおとぎ話でもあるから、そこでのお約束作法は共有しておいた方がいい」

リトル「会話が通じる生き物と、通じない敵がいるんですねぇ」

ヒノキ「まあ、フクロウを〈威厳〉や〈狩猟〉で威嚇して追い払うことも可能じゃが、それをするとフクロウがホビット庄中の野生動物に、無礼なホビットの噂を流して、今後の動物との交渉が難しくなることがシナリオに書かれてある」

シロ「武力や脅しではなく、できるだけ穏やかな話し合いで臨むのがホビット流というのが、本作のシナリオ構造なんですね」

 

ヒノキ「で、最初のシナリオを達成すると、隠しキャラその1のビルボ・バギンズがプレイヤーキャラとして使えるようになる」

リトル「おお、ビルボさんがプレイヤーキャラとして使えるんですかぁ」

ヒノキ「助っ人NPCとして同行させるもよし、強キャラPCとして使わせてもいいようじゃ」

シロ「どれだけ強いんですか?」

ヒノキ「本作は、能力値の成長がないようで、成長は技能や特技の習得によるものじゃ。他のキャラは1つしか特技を持たないのに、ビルボともう1人の隠しキャラは3つの特技を持っておる」

 

  • ビルボ・バギンズ:『ホビットの冒険』の主人公。本セットの冒険の依頼人にして、強力な助っ人。得意な技は、〈礼儀〉〈捜索〉〈探検〉〈謎々〉〈知識〉で、他にも〈洞察〉や〈説得〉〈隠密〉が3ランク(6面ダイス3つを判定に加算できる)。〈感知〉〈音楽〉〈旅行〉も2ランクあって、さらにつらぬき丸と指輪を持っている。

 

ゲンブ「何と。一つの指輪を持っているでござるか」

ヒノキ「そりゃ、この時代はまだビルボが指輪所持者じゃからのう。その性能は『希望点を1点消費して、不可視になれる』程度じゃが、サウロンもまだ力を回復していないから、指輪の持つ魔力や支配力も弱いのじゃろう」

シロ「つらぬき丸のデータはどうですか?」

ヒノキ「ダメージ3、致傷値20とあるのう」

リトル「致傷値って何ですかぁ?」

ヒノキ「防御力判定の難易度ということになる。このゲームの戦闘は、相手の耐久点から武器のダメージを減らすことと、相手を負傷状態に追い込むことの2通りで表現される。敵のザコは負傷が1段階で死ぬ。プレイヤーキャラの場合は、負傷が2段階で重傷を負って気絶したことになる。スターターセットでは、平和なホビット庄を反映するために、プレイヤーキャラは重傷止まりで死ぬことはない、と記されておる。

「2つめのシナリオ『宝探し名人』では、石トロルのジャックと戦うことになるのじゃが、トロルの攻撃である叩き潰しは、ダメージ6、致傷力12と表されておる。さらに耐久点は32点じゃ」

リトル「ええと、それはつらぬき丸で貫いても、11回命中させないといけませんねぇ」

ヒノキ「ダメージを増やす重撃という効果もあるんじゃが、耐久点の削り合いでは、ビルボがトロルに勝てる可能性は少ない。何せ、こういうデータじゃからな」

 

ビルボ:耐久点23、ダメージ3、致傷値20、重撃によるダメージ追加+3

トロル:耐久点32、ダメージ6、致傷値12、重撃によるダメージ追加+8

 

シロ「致傷値以外では、トロルが圧倒的に強いじゃないですか。トロルの攻撃が順調に当たると、ビルボも4回で耐久点が尽きる。重撃ダメージ追加が加わると、2回でアウトだ」

リトル「ビルボさんの攻撃で、重撃が決まっても6点なので、トロルを倒すのに6ラウンドもかかる。勝ち目がありませんね」

ヒノキ「まあ、当たらなければ、どうということはない。ビルボの回避値は17なので、トロルが攻撃を当てるには、D12+2D6で17を出さないといけない。その期待値は13.5じゃからのう。D12がある分、命中率は計算しにくいが、仮にD12で8が出た場合に2D6で9以上だから、そう簡単には当たらぬと思う」

シロ「それはさすがです、ビルボさん。ホビットは回避能力が高いんですね」

ヒノキ「一方で、ビルボの攻撃はD12+2D6で16以上で当てられる」

シロ「あまり、変わらないじゃないですか」

ヒノキ「そうなのじゃ。実は、このゲームのビルボはあまり戦闘能力を鍛えていないのじゃな。こと戦闘能力に関しては、ロリマックの剣やプリムラの弓の方が命中率が高いと来ている。ビルボがつらぬき丸をロリマックに渡す方が強い。ビルボは後ろから石を投げている方が、戦術的に有利ではないか、と考える。と言うのも、ビルボの特技の1つに、《的を誤らない》というのがあって、飛び道具使用時に有利を得る。すなわちD12をもう1つ増やして、良い出目を選べるからのう」

ゲンブ「有利を得れば、ダイスを2つ振って高い目を選ぶことができるルールは、D&D5版と同様でござるな」

ヒノキ「うむ、いざとなれば、有利を得られるような状況に持ち込み、希望点消費で6面ダイスを増やし、さらに高揚状態をロールプレイで構築し、希望ダイスを2倍換算して、少しでもダイスを多く振れるようにプレイすることが本作のコツと言えようか。とにかく、トロル戦では武器戦闘のルールを学べるとともに、耐久点の削りあいではなくて、負傷による一撃必殺感を学べる」

シロ「つらぬき丸の致傷値20というのは、防御力判定の難易度ってことでしたね。つまり、この数値が高い武器は、相手の急所に刺さりやすいということですか」

ヒノキ「うむ。ダメージは低くても、一撃必殺感の高い武器がつらぬき丸じゃな。当てさえすれば、トロルは防御判定D12+3D6で20を出さないと即死する」

ゲンブ「ああ。まさに必殺武器ではござらんか」

ヒノキ「うむ。スターターセットでは、最も致傷値の高い武器として設定されておるのじゃな、つらぬき丸は。さらにビルボは指輪の力で透明になることで、戦闘中に『有利』を主張することができる。つまり、その気になれば、命中判定でも確実性を上げられるのじゃ」

リトル「まるで、ベテラン暗殺者みたいなプレイも可能なんですねぇ」

ヒノキ「つらぬき丸で急所を一突きが決まれば、勝てる見込みがある。他の場合は……直接戦闘ではなく、〈狩猟〉〈謎々〉〈音楽〉のどれかでトロルの注意を惹きつけ、時間稼ぎに成功したら(3回成功すれば)、原作同様に朝日の光でトロルを石に変えて事件解決という結末に持って行ける」

リナT『じゃ、無理に戦闘しなくても、知恵と機転で解決できますの』

ヒノキ「ホビットは〈謎々〉が得意な種族なので、D12+3D6で大体13以上を出せば成功できる。期待値は17じゃから、攻撃を命中させるよりも、〈謎々〉で時間稼ぎする方がはるかに容易い」

ゲンブ「〈謎々〉技能なるものが実装されているとは、まさにホビットの冒険でござるな」

ヒノキ「うむ。技能の説明を読むと、〈謎々〉技能を使うことで、謎を推理することもできるし、話術で相手をペテンにかけることもできる。言葉で相手の注意を惹きつけることもできて、非常に融通の利く技能ということが分かった。ホビット映画では、ビルボが『ドワーフ料理の美味しい調理法』を話題に挙げて、時間稼ぎをしながら、ガンダルフの陰からのフォローもあって、3体のトロルを一気に退治したほどじゃ」

シロ「なるほど。いい原作再現ゲームですね」

ヒノキ「うむ。シナリオを読むと、いろいろとマニアックな原作オマージュがあって、ホビットおよび指輪ファンはニヤリとできるのは間違いない。このトロル退治のシナリオ2のキーワードは、他に『牛うなり(バンドブラス・トゥック)のゴルフ棍棒』『野伏のハルバラド』の2つが挙げられる。さらに、このシナリオをクリアすると、もう1人の隠しキャラがビルボの袋小路屋敷を訪問してくる」

ゲンブ「ガンダルフでござるか?」

ヒノキ「いや、さすがにそこまでの大物ではないが、昔馴染みのドワーフの1人、フンディンの息子バーリン(本作では新訳のバリン表記)じゃ」

リトル「バーリンって誰ですかぁ?」

ヒノキ「ホビットおよび指輪物語の両方における重要キャラじゃよ。まあ、指輪本編では名前だけ出ていて、すでに故人になっておるが、モリアの領主で悲劇的な最期を遂げた御仁なのじゃ。彼をプレイヤーキャラとして使える」

ゲンブ「ホビットだらけの本作で、唯一使える別種族キャラでござるか」

 

  • フンディンの子バーリン:『ホビットの冒険』で、ビルボと旅をした13人のドワーフの1人。リーダーのトーリンを支えるナンバー2の役どころで、映画では老執事みたいな立ち位置。原作小説では、旅の後もビルボと親交を重ねている様子が描かれているが、その後、亡き主君トーリンの悲願に殉じるようにモリア鉱窟の再建に向かうも……。本ゲームでは、バーリンがビルボをモリアに一緒に来ないか、と誘ったものの、ビルボが洞窟はこりごりと辞退している手紙が、プロローグにあって、原作ファンを楽しませてくれる。さらに、ビルボ曰く、『私は一緒に行けないが、もしかすると私の知り合いの若者なら冒険の旅に出たがるかも』と書かれていたり。

 

ゲンブ「え? もしかすると、バーリンが若者ホビットをモリアに同行させると、歴史が変わってしまうのでは?」

ヒノキ「まあ、フロドやメリー、ピピンが生まれなくなる可能性はあるが、その辺はシナリオで辻褄合わせができるようになっておる。バーリンは、シナリオ3『とびきりすてきな花火』でしか使えんようじゃ。シナリオ4『気の進まない郵便配達』、シナリオ5『猛獣をなだめるために』はタイトルを挙げるだけにしておいて、ネタバレはまだ避けておく。まあ、原作小説ファンはいろいろとニヤリとできるシナリオじゃ。逆に映画のファンには、分からないネタ(小説の割愛された要素)が多いと思う」

ゲンブ「確かに、序盤と終盤のホビット庄の物語は、映画ではかなり削られたでござるからな。トム・ボンバディルとか、サルマン絡みとか」

ヒノキ「マゴット爺さんとその番犬の話とかのう」

シロ「それって、シナリオのネタバレでは?」

ヒノキ「いや、聞き流しておけ。それよりも、バーリンのキャラデータじゃ。平和に慣れたホビットに比べて、歴戦の戦士であるドワーフはかなり強いぞ」

 

  • バーリンの能力:得意な技は〈旅行〉〈捜索〉〈探検〉で、他に3ランク技能は〈工作〉〈戦術〉〈知識〉、そして武術の〈斧術〉。2ランク技能は〈威厳〉〈感知〉〈音楽〉〈鼓舞〉〈礼儀〉〈説得〉〈謎々〉。装備品も含めて、戦闘力の高さが目立つが、知力にも秀でていて、頼り甲斐のあるお爺ちゃん(197歳)。なお、バーリンの享年は231歳なので、この後、すぐに死ぬわけではない。

 

ヒノキ「シナリオの設定年は2960年。ビルボの冒険は2941年に始まるので、約20年後の話じゃな。バーリンがモリアへ向かって旅立ったのは2989年で、その5年後に亡くなる計算になる」

リトル「指輪物語の年代はどうですかぁ?」

ヒノキ「ビルボが誕生日に失踪したのは3001年で、フロドが旅立ったのは3018年。映画ではその辺の時間経過が分かりにくいがのう」

シロ「とにかく、ホビットと指輪の間の時代の物語ということで、原作ファンが楽しめるシナリオだったということですね。続きが楽しみです」

ヒノキ「まったくじゃ。スターターセットではキャラ作りもできぬうえ、キャラの成長ルールも付いておらん。コアルールを待つとしよう。一応、こういうサイトで予習しつつ」

リナT『じゃ、シスター・アリナ、行ってらっしゃいませなの』

ヒノキ「おお、留守はよろしくのう」

ゲンブ「任されたでござる」

(当記事 完。日野木アリナの屋久アルシャード冒険はこちらへ続く