新たな進化の神の話
ヒノキ「新兄さんから、『シンカリオンの話のついでに、ソード・ワールド2.5の神、鉄道神王ストラスフォードについて研鑽して欲しい』という依頼が来たのじゃ」
ゲンブ「ほう。神聖魔法研究の一環でござるな。2.5で初めて紹介された神ゆえ、2.0時代のリプレイやシナリオには登場しないが、メカ好きには注目の神格と言えよう」
シロ「ところで、前回の記事では、ゴジラSPにシーサーは出そうにないと言ってしまいましたが、エンディング映像にシーサーやマンダなんかも映っていることが発覚しました。シーサーに気付かず、見過ごしていたとは、ボクもまだまだ未熟です」
ヒノキ「後から情報を得て確認して、自分の間違った認識を改めることは成熟の一歩じゃから、未熟な自分を卑下するでない。卑下するとしたら、自分の未熟を改める姿勢を持たぬことよ。過ちは誰にでもある。問題は、その過ちにどう向き合うか、そこに潔さを示し得るかなのじゃ。孔子曰く『過ちて改めざる、これを過ちという』と」
シロ「ええ。いずれにせよ、ゴジラSPにシーサーが出れば、素直に嬉しいですね」
ゲンブ「セイバーではネコメギドが暴れているし、ゼンカイジャーではステイシーザーなるキャラが暴れるようでござる」
シロ「ステイシーザーは、シーサーなんですか?」
ヒノキ「そこは関係なかろうが、デザインモチーフがバトルジャパンだという噂を聞いた。次回のレジェンド戦隊祭りが待ち遠しいのう」
リトル「それはとにかく、今回はシンカリオンの話がメインですぅ。速く出発進行しましょうよぉ」
ヒノキ「うむ。シンカリオンはZもいいものじゃ」
シンカリオンZに至る道
ヒノキ「さて、Zの1話じゃが、まず主人公の新多シンは、前作のハヤトと違って鉄道マニアではなく、宇宙人とかオカルトマニアなのじゃな。そして、ダルマの来歴にも詳しいなど、知識の幅に限って言えば、前作主人公よりも博学かもしれん」
ゲンブ「ある意味、シンカリオンの適合率は、子どもの純粋な好奇心、あるいはマニア度に関係があるという独自研究もござる」
ヒノキ「すると、新兄さんなんかも適合率が高そうじゃな」
ゲンブ「前作は、子ども番組の枠に則りながら、オタクの夢や大人のワクワクも同時に詰め込んで、大人と子ども二つの世代の対立を描きがちなロボット番組では珍しく、双方の助け合いを示した傑作でござった」
ヒノキ「旧い世代と新しい世代の対立は、ガンダムの富野監督なんかが好きなテーマで、大人の身勝手さに振り回される子どもの反抗、カウンターカルチャーというのは、ある意味、70年代から世紀末のドラマの定番と言ってもいい。その文脈の上にエヴァもあるわけじゃが」
シロ「エクスカイザーに始まる勇者ロボは違いますよね」
ヒノキ「勇者ロボは、少年とロボの交流譚がメインテーマじゃからな。ロボは宇宙人だったり、古代の勇者だったり、AIだったりするが、精神年齢は大人だけど現代地球の常識に疎かったりするので、子どもからいろいろ学んだりもしつつ、頼れる大人のお兄さんが自分と対等に付き合ってくれるという子ども心に理想的な助け合い関係が描かれておる」
ゲンブ「子どもは子どもで、勇者ロボのお兄さんに憧れつつ、いろいろと助けることで自立心も伸ばしていく。そして、親は子どもを心配しつつ、勇者の友だちであるという子どもの秘密には気づかないケースが多い」
ヒノキ「シンカリオンは、その勇者ロボの物語のエッセンスを引き継いだ作品ながら、大きな違いがあって、それは『大人たちも子どもの戦いのサポーターとして全面的に支援している姿が描かれておる』ことじゃ」
シロ「勇者ロボでは、TV最終作の『勇者王ガオガイガー』を想起させる構図ですね。一応、エヴァンゲリオンにも通じますが」
ヒノキ「エヴァの場合は、支援組織を描きながら、大人と子どもの心の断絶をドラマの核にし、大人の身勝手さに対して内向的な主人公が憤るも、表面上は従順に仕事をこなしつつ、どんどんストレスを溜めていく描写が若者視聴者のシンクロ率を高めていったという意見もあり、それはガンダムから受け継いだドラマとも言える。大人は仕事をするけど、子どもの悩みには寄り添えないどころか、自らの悩みを子どもにぶつけたりしながら、心の壁という用語で破滅的な世界観を提示。敵対する使徒も言葉を発しないし、世界の全てが自分を拒絶するように描写されることもあって、主人公の精神的引きこもりを助長したり、トラウマという言葉でヒステリックな言動をぶつけたり、人も世界も病んでいく。そこにハマり込む若者も多かったのが世紀末で、それが平成を通じて一つのアニメ界の世相を築いたとも言えよう」
リトル「とても癒し系とは言えませんねぇ」
ヒノキ「何をもって癒しと思うかは、意見が分かれるのう。前向きに陽性のハートフルな作品を癒し系と見なすことが普通じゃが、『そういう理想の世界は自分の居場所とは違う異世界だ、自分のことは誰も分かってくれない』という寂しさを抱えている人間にとっては、『自分の辛さ、孤独さ、哀しみを同様に体験して、自分と心理的に同じような、あるいはもっと苛酷な状況にもがき、苦しみ、叫び、あがき、時に打ちのめされながらも、なおも戦い、ボロボロでも何かをつかみ取って、ささやかな希望を見出す主人公』に共感し、感情移入することで自分の人生を強く生きるカンフル剤にすることも可能」
シロ「ああ、自分と同じように血を吐きながら戦っているキャラへの感情移入ですか」
ゲンブ「前向きなメッセージを示す主人公もいれば、理不尽な世界への嘆きや怒りを吐き出す主人公もいて、受け止め方は人それぞれでござるな」
ヒノキ「で、エヴァに影響を受けつつ、そのアンチテーゼとしてガオガイガーが生み出され、そこでは不可能を可能にする勇気というメンタルパワーと、単なる根性論とは異なるSF科学的理論が結びつき、どちらかと言えば心の絆を勝利の鍵としてきた勇者ロボの中にあって、リアルと称されたものじゃ(少なくともTV版は。OVAのFINALはもっとメンタル重視の作風で、TVとは異なる方向性を提示)」
シロ「シンカリオンが始まったときは、マイトガインやガオガイガーを想起するファンが多かったみたいですね」
ヒノキ「マイトガインは鉄道というモチーフの共通性と、オタクのパロディー感覚が濃厚な世界観。そしてガオガイガーは、エヴァにも通じる適合係数という数値要素(オペレーターがデータや数値を持ち出せば、リアル科学っぽく見えるのはSFあるある)や、機体の状況や敵の弱点を司令室が詳細に分析しながら的確な指示を与える戦闘描写、そして前線で戦う主人公以外の大人脇役のドラマをも重視した作風などなどを受け継ぎつつ、視聴対象の低年齢化を意識して小学生がロボを操縦するように改変されておる」
シロ「確かに、勇者ロボでは、小学生の少年がロボに乗り込むことは稀でしたね」
ヒノキ「基本は外部から応援したり、指示を与える隊長になったりはするが、前線でロボに乗って積極的に戦う小学生は稀じゃったからな。マイトガインやダグオンの主人公は高校生だし、ジェイデッカーでは小学生が刑事のボスになり、超AIの勇者刑事に指示を与えたりするが、最終決戦で『超AIを操る能力を持った敵』に対して、少年自らジェイデッカーを内部操作する非常時の局面を除けば、小学生がロボに乗り込んで操縦するアニメではなかった」
リトル「その辺は、トライダーG7とか、ライジンオーなどのエルドランシリーズという作品の話を聞いたことがありますぅ」
ヒノキ「という過去のロボアニメの系譜があった上で、それらの諸要素を受け継ぎつつ発展進化した傑作がシンカリオンだったと言えよう」
ゲンブ「シンカリオンの魅力に、鉄道オタク知識とか、種々雑多なパロディー、大人視点でのマニアネタ、そしてゴジラやエヴァとのコラボを劇中で堂々と披露して見せたことでござろうか」
ヒノキ「コラボを実現するには、版権問題を始めとする関連会社との折衝、そして受け入れる視聴者側にも多元世界という概念の浸透が必要じゃが、その辺のノウハウは2010年代という時代性で、ゲームや劇場映画などでコラボするのは当たり前という世相があってこそじゃ」
シロ「確かに、ゼロ年代の終わり以降ですからね、シリーズでもない作品間のコラボがあれこれ定着したのは」
ヒノキ「もちろん、スパロボは世紀末の産物なので2010年以前から存在はしていたが、スパロボ登場時は『ロボットやヒーローの共演はスペシャルな祭り』感覚だったのが、10年代はコラボが珍しくも何ともなくなった感じじゃのう。もちろん、祭りという意味では、今も盛り上がるイベント回で話題を集めるのじゃが、コラボ企画が割と一般化したのが10年代の特徴の一つと言えるかもしれん」
ゲンブ「シンカリオンZもまず、前作とのコラボも期待でござる。『シンカリオンZもいいものだ』というセリフを、向こうのゲンブ氏に言ってもらいたい」
ヒノキ「まあ、わらわとしても、スザクのその後とか気になるが、まずは新作の世界観やキャラ関係を見極めるとしよう」
Z1話を見ての雑感
ヒノキ「主人公は一般人で、前作の主人公たちの活躍はあまり知らない。ただし、シンカリオンの活躍は『テツドウダー』という謎ロボットの都市伝説として、オカルトマニアの間で語られているという設定じゃ」
シロ「すると、YouTuberの前作ヒロイン、アズサは情報公開していないんですね」
ヒノキ「そのうち、画面に映る劇中情報サイトでアズサの名前が出るかもしれんがのう。まあ、ハンドルネームを変えて、テツドウダーの情報をバラまいている可能性も考えられるが」
ゲンブ「劇中アニメで『テツドウダー』が描かれ、マイトガインみたいな名乗りをあげてくれる可能性に賭けてみたいでござる」
ヒノキ「テツドウダーのどういう情報が出回っているかはともかく、今回の情報担当は主人公の姉がジャーナリスト見習いということで、謎のカメラマン美女と共に、ヒロインが小学生でなくなったのもポイントかのう」
リトル「サポートAIロボのシャショット枠はスマホに変形するスマットになって、しかも戦闘中は、やたらとゼーットと叫んで、うるさいですぅ」
ヒノキ「まるで、ゼットピアから来たゼットワルドみたいな連発じゃな。そこまで連発されると、いい加減しつこいと思う」
ゲンブ「ゼットピアでござるか」
ヒノキ「うむ、マジンガーやら、ウルトラマンやら、宇宙恐竜やら、ガンダムやら、宇宙中のゼットが集結した世界。他にもZOとかZXとかがいても不思議ではなかろう」
リトル「ドラゴンボールもありそうですねぇ」
ゲンブ「そんな世界があるなら、シントピアがあっても不思議ではないでござる。シンワルドが語尾にシン付けて喋るでござるシン」
ヒノキ「語尾ネタなら、ゴザルトピアがあってもよかろうが、それはともかく、今回は主人公のシンの相棒アブトがいて、彼は適合率が低いのでシンカリオンの操縦はできず、支援メカのザイライナーで素人主人公の現場サポートをしてくれる予定なのが次回じゃな」
シロ「ええと、シンがフォーゼの如月弦太朗で、アブトが歌星賢吾みたいなものですか?」
ヒノキ「アブトは体が弱いということはないが、髪の色が雰囲気違うので、実はキトラルザス関係とか宇宙人でしたとか、そういう設定があっても不思議ではなかろうて」
リトル「今回の鉄道好き枠は、主役ではなくて主役の相棒の方なんですねぇ」
ヒノキ「うむ。主人公は現実よりも空想系のネタに興味があって、鉄道のマニアックな詳細をアブトが語って、理解不能な反応を示す可能性がある。で、そのたびに『何でこんな鉄道無知な奴の適合係数が高いんだ』と苛立つアブトという関係性と見た」
シロ「主役が鉄道に無知だと、前作との対比になりますね」
ヒノキ「何でもオカルト蘊蓄に持っていく主人公が受け入れられるかは今後の描写次第じゃが、前作のアキタ枠は花火職人のロッカーで、前作のツラヌキ枠は樹木に詳しい木こり志望ということらしい」
ゲンブ「キャラ名がハナビとタイジュでござるか。火薬に詳しいガンマンキャラと、木こりだから斧の扱いが得意なパワーファイターという方向性でござるな」
シロ「前作は、競技ライフルの選手で戦術にも詳しいアキタが、今だとキラメイの為朝ポジションになりますね。で、スイーツ好きという属性が後から披露された」
リトル「ツラヌキさんは、土木に詳しくて、意外と知識レベルは高いパワーファイターでしたねぇ。で、うろ覚えの四字熟語を連発したり、実はアイドルオタクだったり、意外な知識の持ち合わせが多く雑学家なのに、おバカキャラのイメージが抜けなかったですねぇ」
ヒノキ「果たして、タイジュはツラヌキの後継者として人気が出るかは不明じゃが、武器がドリルでなく、樹木伐採の斧とチェーンソーになったのが大きな違いと言ったところかのう」
ゲンブ「ともあれ、新たに出てきた敵が果たして、前作のキトラルザスとどういう関係になるかが気がかりでござるよ」
ヒノキ「うむ。そして最初に登場する前作キャラが誰になるかも気になるのじゃ。まあ、シンカリオンパイロットでなくとも、ハヤトの妹のハルカとか関係者が出るだけでキタコレとなること受け合いと思われ」
ここから鉄道神王の話
ヒノキ「で、新兄さんからついでにと依頼されたソード・ワールドの神さまの話じゃが、大神グレンダールが鉄道マニアの心意気を認め、小神に引き上げたのが鉄道神王ストラスフォードなのじゃな」
リトル「グレンダール様のお弟子さんなんですかぁ」
ゲンブ「小神なのに、王を名乗るとは大それているでござるな」
ヒノキ「グレンダールの敬称が炎武帝じゃからのう。帝の下につくのが王という形になるし、ラクシアの小神とは、言い換えれば地方神。世界レベルで信仰されているわけではないが、地元民にとっては篤く信仰されている対象となるのじゃ」
シロ「その地方というのが鉄道建設の盛んなドーデン地方ですね。その中心がキングスレイ鉄鋼共和国で、首都がキングスフォール」
ヒノキ「2.5のワールドサプリメントは、2.0の地方別サプリメントと違って、まだピンポイントな都市別なのじゃな。もっと広くドーデン地方全体や、せめてキングスレイという国の詳細が描かれておると期待したが、一都市だけというので、少しがっかりしたものよ」
ゲンブ「今はまだ、2.0時代のこれらに相当する時期でござろうか」
ヒノキ「個性的な都市別ガイドを散発的に出して、ある程度、足場を固めた上で大きな地方をドーンと紹介する流れじゃな。今のところ、2.5で一番サポートが行き届いているのが、南西部のブルライト地方で、そこの都市ガイドがこれ」
ヒノキ「ドーデン地方は大陸北西部で、地図を見る限り、特殊な地勢みたいじゃが、キングスフォールだけではその全貌が見えて来ん。都市での生活はイメージできても、国を突っ切る鉄道網は未説明で、魔動列車での旅を満喫できるほどの資料にはなっていない。東京駅だけ紹介されて、関東地方の路線図の紹介がされていないようなものじゃ。いずれ、ドーデン地方を網羅したワールドガイドが出ることを、わらわは希望するが、作り手のベーテ氏がパグマイアでも忙しそうじゃからのう。気長に待つとする」
シロ「ところで、都市ガイドの新作は出たんですね」
ヒノキ「これは、大陸東部のウルシラ地方にあるハールーン魔術研究王国に所属する風変わりな空中都市群で冒険できるサプリメントじゃが、ここだけで一つの世界として独立しておる。キングスフォールは世界に開かれた都市なのに、その開かれた先が網羅されていないので、そこに不満が出たが、サイレックオードは元々独自の土地柄で閉鎖された都市構造のため、これだけで十分楽しめそうじゃ」
ゲンブ「なるほど。広い世界の入り口だけ紹介するのと、狭い世界と断定して濃密に描く違いでござるか」
シロ「凄そうだけど未完結な作品と、小ぢんまりしているけど独立しているから十分遊べる作品の違いですか」
ヒノキ「もちろん、キングスフォールが遊べないと言っているわけでなく、そこから広がる鉄道網が自作しないといけないのは、2.5の売りである魔動列車の世界紹介としては不親切、不十分に見えるということじゃ。中心駅を示しただけでは、鉄道は語れん」
ゲンブ「逆に言えば、キングスレイやドーデン地方のワールドガイドが出れば、それと連結して使い出のあるサプリメントに化ける可能性があるということでござるな」
ヒノキ「それは未来の楽しみにとっておくとして、鉄道神王じゃな。簡単に言えば鉄道の神で終わってしまうのじゃが、その教義の根本は『未知と既知の間に道を作る』ということで、工夫をこらして、いろいろとつなげる、連結する、リンクすることを推奨する神じゃ」
リトル「発明家の神なのですねぇ」
ヒノキ「その象徴が、シンカリオンに代表される魔動列車じゃな」
ゲンブ「いや、シンカリオンは魔動列車というカテゴリーには属さないでござる」
ヒノキ「狭義の意味ではのう。しかし、広義の意味では、シンカリオンは魔動列車と本質は同じ。その目的は、未知と既知をつなぐことじゃ。偏狭で進化しない心ではいかん」
ゲンブ「そう言われると、シンカリオンも魔動列車に思えてきたでござる」
ヒノキ「うむ。納得できたところで、特殊神聖魔法を紹介するとしよう。まずは2レベル【グリース】。車輪装備のマシンの制限移動距離を2メートル増やす魔法じゃ」
シロ「すごく地味ですね」
ヒノキ「うむ。魔動バイクとかに騎乗していないと全く意味がない上、基本移動3メートルが5メートルになっても、大差なかろうというのが実際じゃろうな」
リトル「ごくごく限られた局面のみ、効果を実感できる魔法ということですねぇ」
ゲンブ「車輪装備の相手限定という時点で、たいていの冒険者にとっては無縁の効果でござるなあ。カーチェイスしながら、足を止めての射撃戦を行う際に、2メートル余分に動けるのが有利に働く場面もあるでござろうが、ソード・ワールドでカーチェイスという局面がどれだけあろうか」
ヒノキ「一番身近なところで、馬車じゃろうか。せめて通常移動距離が2メートル加算なら、いろいろと使い勝手がよさそうじゃが。ともかく、次に行くと4レベルが【ドライブ・アウェイ】となる」
シロ「回避力が上がるのですか?」
ヒノキ「逆じゃ。相手にかけて回避力を下げる。一応、障害となる相手の排除を容易にする呪文という意味合いじゃが、即効性がなく、同一ラウンドで回避や精神抵抗判定を行うたびに、判定ペナルティーが1点ずつ増えていく。つまり、相手の攻撃を受けるたびに、どんどん動きが鈍くなっていく呪文じゃ」
シロ「味方の手数が多いと、どんどん命中率が上がっていくことになりますね。連続攻撃のグラップラーや二刀流の戦士なんかが仲間にいると、使い勝手が良くなります」
ゲンブ「さらに騎獣やゴーレムなんかに攻撃させると、たとえ命中しなくても、敵の回避を下げられるでござるよ」
ヒノキ「この呪文の最大の使用価値は、物理攻撃の連続で相手のペナルティーを高めたあと、無力化などの効果絶大な(だけど抵抗されると効果消滅する)呪文を、成功させやすくすることじゃ。そして世界観的には、冒険者よりもNPCの軍隊指揮官が使えると、威力を発揮するのう」
リトル「弱いキャラでも10人で攻撃をすると、回避や精神抵抗のペナルティーが10点になりますぅ」
ゲンブ「味方キャラの数が多いほど、真価を発揮する呪文でござるか。正に大軍を率いる王向きの呪文かもしれん。兵が100人いれば、ペナルティーを100点にでき得るわけで」
ヒノキ「いや、さすがに100人のキャラで1体の敵を同時に攻撃するのは不可能じゃろう」
ゲンブ「飛び道具の一斉射撃とかは?」
ヒノキ「むっ、大規模戦闘で活用できるルールかもしれんが、ソード・ワールドはロードスなどと違って大規模戦闘ルールは実装されておらん。まあ、ともかく7レベルに移ろう。壁を破壊する【ブラスト・ウォール】。高さ3メートル、幅10メートル、厚さ50センチまでの壁を粉砕できる呪文じゃ」
リトル「それは派手な登場演出ができそうですねぇ。突然、壁がドカーンと崩れて『お前たちの思うようにはさせん』というセリフと共に現れるとかぁ」
シロ「昔の時代劇にもいましたね。壁を崩して怪力ぶりを披露する忍者とか」
ヒノキ「他には、スカイライダーのライダーブレイクなんかを再現できそうじゃが、それよりも新兄さんが今ハマっているドラクエ系建築ゲームの印象が濃厚じゃ」
ゲンブ「ビルダーがどうこうという話でござるか。心の壁であるATフィールドも粉砕できる呪文やもしれぬ」
ヒノキ「それは魔法扱いで、相手の精神抵抗との達成値の比べ合いが必要かもしれんのう。で、壁破壊の次は10レベル呪文の【ゴー・ザ・ウェイ】。術者は中空を移動でき、自分の歩いた跡に光の線路を築いて、仲間を後に続かせることができる」
ゲンブ「空中線路を築く呪文でござるか。効果時間はどれくらい?」
ヒノキ「1時間じゃの。さすがに鉄道網に組み込むことはできんが、ちょっとした崖を越えたりする程度には使える。ビルダーに例えるなら、ブロックを地面から積み上げながら、高所に登ったりするようなものか」
シロ「壁を壊したり、空中を歩いたり、結構派手な怪盗アクションができそうですね」
ヒノキ「ストラスフォードは、盗みを奨励する神ではないのじゃが。で、最後の13レベル呪文が【コントロール・トレイン】。列車などの車輪のついた乗り物や構造物を自分の自由に移動させる呪文じゃ。ただし、キャラクターや騎獣に対しては効果なし」
ゲンブ「ライダーの魔動バイクの操縦をハッキングしたりはできない、と」
ヒノキ「操縦機構が不明の古代遺跡のマシンをとりあえず動かすぐらいには扱えようが、何しろ車輪が付いていること前提じゃからのう。ストラスフォードの特殊神聖魔法を使いこなすには、『車輪を付与する魔法』が別にあればいいと思う」
シロ「『お前の足にローラーダッシュ機能を付与した。これで制限移動が+2メートルだ』とか?」
ゲンブ「そう言えば、ミストキャッスルの魔改造表で、足を車輪にするものがあったような」
ヒノキ「ロボコンとか、ローラーヒーローのムテキングとか、ゼンカイブルーンとか、いろいろな連想ができるが、ソード・ワールドで車輪装着したキャラはあまりイメージしにくいのう」
リトル「と言うか、馬がいない馬車やワゴンを自由に走らせることができるのではありませんかぁ?」
ヒノキ「ああ、なるほど。動力のないマシンを走らせるための魔法と言ってもいいのか。ガソリン切れとか、バッテリー切れの車や、そもそもエンジンの付いていない、あるいは壊れた乗り物を緊急時に移動させられる、と」
ゲンブ「何にせよ、使用できる状況がかなり限られた呪文でござるが、こういう呪文を使えるシチュエーションを考えて、シナリオを作って、NPCにストラスフォード神官の技師にして発掘屋を設定すれば、一つの話が作れそうか、と」
ヒノキ「この呪文をどう使うかをアイデアソースにして、小説のネタにするケースもあろうし、呪文リストをあれこれ丹念に見ていると、想像力のトレーニングになることも確かじゃのう」
リトル「いい勉強になりましたぁ」
ヒノキ「で、この神となったストラスフォードじゃが、その末裔が現在のキングスフォールに生存していることが分かった」
シロ「え? 神の末裔ですか? それは凄そうですね。オカルトネタっぽい」
ヒノキ「いや、キングスフォールの公式設定じゃ。NPCリストに、フリードリヒ・ファインマ・ストラスフォードという179歳のドワーフがいて、鉄道ギルドのギルド長をやっておる。ストラスフォード家は現在でも鉄道卿の重鎮という名家扱いで、神を輩出した故の発言力を誇っておる」
ゲンブ「ラクシア世界では、人族や蛮族が神に昇格できるようになっているでござるからな。文字どおり神の分体が普通に世界を歩き回っているし(もちろん、一般人が出会うことは稀だが)、それでも神の末裔の家系が公職を持っているというのは驚きでござる」
ヒノキ「さすがに古代神や大神の末裔を称するのは難しくとも、地元の神である小神ぐらいなら日常的なイメージもあるみたいじゃのう。郷土の英雄みたいなものじゃから。そもそも、わらわも神霊なのじゃから、今さら驚くようなことでもあるまい」
シロ「そうでした。リトルのお父さんも、ボクの父さんも神扱いされる怪獣だし、だったらボクたちも目指せ、神のつもりで精進しないといけませんね」
ヒノキ「何にせよ、神というのは祀られてこそ何ぼじゃからのう。祀られるだけの偉業や格式、そして人望を伴わなければ、信仰というエネルギーが枯渇してしまうもの。力だけでは神に非ず、人の想いあってこその神じゃと、わらわは考える。通じる人の想いがなければ、神と名乗っても虚しいもの」
リトル「神聖魔法の研鑽とは、神さまに想いを馳せる儀式でもあるのですねぇ」
(当記事 完)