花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、D&Dを中心に世紀末前後のTRPGの懐古話を不定期展開中。

ゴーレムとか召喚獣なんかの話2

リモート講義の続き

 

NOVA(リモート)『前回は、ゴーレムと召喚獣、それに仲間モンスターの歴史をいろいろとカオスに語ってみたわけだが』

ヒノキ「カオスと自覚しておるわけじゃな」

ゲンブ「本来なら、ソード・ワールドのゴーレムルールの研鑽記事の名目だったのに、何故かポケモンとか違う方向に展開して、話をどうまとめることやら」

NOVA『ところで、現在はモンスターという言葉が、ゲームの敵キャラである魔物として定着した感じだが、これも80年代半ばにRPGが紹介される前は、違う意味で使われて安定していない言葉だったんだな』

ヒノキ「ゲームの敵キャラを初めてモンスターと呼称したゲームは何じゃろうか?」

NOVA『TRPGなら当然D&D(74年)だろうが、コンピューターRPGならウィザードリィ(81年)じゃないかな。「モンスター・サプライズド・ユー」というメッセージが印象深いし。日本のゲームだと、敵キャラがインベーダーとかエイリアンとかが多い中で、パックマン(80年)のお化けがモンスターと呼称されていたのが記憶にある』


PIXELS - Official Trailer (HD)


パックマン 進化の軌跡 【シリーズ歴代作品ダイジェスト】

NOVA『パックマン以前だと、ピンクレディーの歌「モンスター」というタイトルが流行したのが78年だったな』


ピンク・レディー モンスター

NOVA『それ以前にモンスターだと、コンドールマン(75年)のエンディングだな』


ザ・モンスター

ヒノキ「というか、もはやゲームと関係なく、モンスターという単語を挙げているだけじゃのう」

NOVA『まあ、怪獣映画とか、ドラキュラ、狼男、半魚人、フランケンシュタインの怪物などをモンスターと称する時代があったけど、どちらかと言えば、モンスターってゲテモノ扱いで、あまり一般的に使われる言葉じゃなかったと思うんですね。それをピンクレディーが一気にメジャー化させてくれて、70年代後半から80年代に当たり前のように使われる流れができたというか。UFOと言い、透明人間と言い、ピンクレディーが当時のSFブームに与えた影響も大きいというか、その辺は作詞家の阿久悠さんの功績でもあるのですが』

ヒノキ「阿久悠さんと言えば、アニソンでは『宇宙戦艦ヤマト』がよく話題にされるが」

NOVA『元々は、脚本家志望で、伊上勝氏の部下だったこともあって、そこから放送作家、作詞家、小説家としても活動していたそうです。で、阿久悠氏の代表的な歌といえば、ここでは当然、ウルトラマンタロウやレオ、それにザ★ウルトラマンを挙げるべきでしょうが、今回はこれを一つ』


デビルマン

NOVA『デビルマンだったら、悪魔召喚とか、人間の仲間をするモンスター種族という方向に話がつなげられますし、今回のテーマに絡められるでしょう』


デビルサマナーソウルハッカーズ~OP~


『デビルサマナー ソウルハッカーズ』プロモーション映像第1弾

009『おお、70年代に戻ったりして、どう話を展開するかと思ったら、一気に90年代のゲームにアクロバティックに飛躍するとは』

NOVA『フッ、俺が語りたいのは、時代ごとの文化継承の流れだからな。70年代にゲテモノ扱いされてアングラ感覚に満ちていたモンスターという要素が80年代から90年代にかけて市民権を獲得しつつ、ある時はポケモンという陽性の道を歩み、ある時は遊戯王という形で若者を取り込み、そしてモンスターを召喚するサモナーという言葉も定番になっていった先に、新世紀はこうなるんだ』


[GaoRanger] Gao King First Fight Scenes


忍風戦隊ハリケンジャーVS百獣戦隊ガオレンジャー 変身シーン

NOVA『動物霊を召喚して、自分に宿すことで力に換えるガオレンジャーの設定は、召喚という言葉がメジャーになったからこそ生まれたんだと思う。それまでのファンタジー戦隊は、ジュウレンジャーが古代から蘇った戦士で、ギンガマンがギンガの森に隠れ住んでいた部族の戦士という設定だったのが、ガオレンジャーに至って「現代人がパワーアニマルと交感して、戦う力を授かる」という現代人と自然の精霊の調和という形になる。この違いが分かるだろうか?』

ヒノキ「ジュウレンジャーギンガマンは、現代人ではなくて異民族がファンタジーの戦士として登場したのに対し、ガオレンジャーは現代人がファンタジー戦士の力を会得したということか?」

NOVA『そういうことです。まあ、それ以前のファンタジー系戦隊でダイレンジャーカクレンジャーも現代人なんですが、彼らは血筋があるんですね。気力を操るダイ族の子孫だったり、妖怪を封印した隠流忍者の子孫だったりするわけですが、ガオレンジャーは血族とか関係なしに、純粋にパワーアニマルと心を通わせることで戦士に覚醒した一般市民で、ある意味、カーレンジャー同様に、心の絆だけでヒーローに選ばれた者たち。この差は大きいと思う』

ヒノキ「つまり、何が言いたいのじゃ?」

NOVA『人もモンスターも心が大切だということです。90年代は、人の心の善意と悪意、光と闇を多くのフィクションが描き、一方でモンスターも単に倒される存在ではなく、心を持った生き物であるという視点が提示された。単純に人類が正義で、モンスターが悪という勧善懲悪ストーリーから、モンスターにもモンスターの心があって、時に人と心を通わせることが可能であり、人類は偏見を捨ててモンスターとも分かり合って、この星の平和を守る盟友として悪意と戦わなければならない、というのがフィクションの方向性、テーマになっていく。その結果がこれにもなるわけですね』


ウルトラマンコスモステーマソング Spirit

 

召喚という言葉について

 

NOVA『ところで、俺は以前からファンタジー用語として、サモンという言葉は「召喚」と記すのが正解で、「召還」という誤用がはびこっている現状を憂えているわけだが……』

009『異界から魔物や精霊を呼び出すのが「召喚」で、還という字は「帰還」「還元」という言葉から分かるように、帰って来いと呼ぶ、元に戻すという意味だったよな』

NOVA『本来は「外国から大使を召還する」という風に使うんだな。ファンタジー用語なら召喚が正しい、と今でも主張するけど、最近は「設定によっては召還もありか」と考えたりもした』

ヒノキ「どういうことじゃ?」

NOVA『例えば、ポケモンのように野生の解放された状態が本来の姿で、モンスターカプセルに封印された状態が不自然な場合、呼び出す=元に戻すのだから、「召還」もありという理屈です。他に、その存在の本来の故郷が人の住む物質世界で、「異界に放逐された強力な存在」を呼び戻すような設定なら「召還」もありだし、一度呼び出した後に契約を交わした際、「何らかの形で自由を奪って拘束した状態」で封じているのを、力を解放する形なら「召還」ってことかな、と』

ゲンブ「つまり、古代の魔法陣や異界の牢獄に封印された存在を現世に呼び戻して使役するような場合は、召還魔法と呼んでもいい、ということか」

NOVA『もちろん、その場合、用事が済めば、もう一度封じる必要があるのでしょうけどね。強力な力が無制限に解放されるようなことがあっては、いけません。そして、魔法の原理はいろいろありますが、その中で召喚術を中心にした古典的TRPGが二作品あります』

NOVA『クトゥルフは、現代(あるいは原作小説の舞台である1920年代など)に蘇ろうとする邪神や魔物の脅威を描いた世界観で、TRPGの探索者の仕事はその封印を解こうとする悪の魔術師や教団の計画を阻止することが典型的なシナリオですね。この世界の魔法は召喚系を除けば、魔力を感知したりする情報系の小技がもっぱらで、派手な攻撃魔法は存在しません。ファンタジーとは異なる、リアル風味の強い世界観での魔法というものを考える際の参考資料にもなりますね。

『一方、エルリック(または、その原典RPGストームブリンガー)は有名ファンタジー小説の世界観に基づく原作ものRPGで、そこでの魔術は神々や精霊、悪魔と契約し、代償を与えて力を授かるものに特化しています。召喚系の魔術の設定が非常に充実したシステムで、一種のバイブルとも言えました。火の精霊を封印した剣とか、指輪に封じた悪魔とか、あらかじめ力ある存在を召喚して、契約して、準備した上で安全に、限定的に能力を使うのが普通。なお、このゲームの翻訳担当が、ロードスのパーンを演じた北川直さんというのは有名な話』

ヒノキ「エルリックの法と混沌の概念がD&Dにも影響を与え、また精霊魔術がロードスやソード・ワールドのイメージソースの一つになったことも有名な話じゃな」

NOVA『というか、原作小説の1巻の翻訳がSNEの安田社長ですからね。新版は井辻さんに統一されて、アリオッチがアリオッホになったけど』

009『昔からのエルリックファンは、英語読みのアリオッチ(安田訳)に馴染んでいて、井辻さんのアリオッホはドイツ語読み、他にメガテン系では、アリオクという表記もあったかな。原語がAriochで、元々は旧約聖書に登場する人物だったり、悪魔の名前として知られていたけど、さすがにエルリックが初翻訳された時期には、日本語で読める悪魔の資料なんて限られていたろうからね。とりあえず、これをアリオッチと読むか、アリオッホと読むか、アリオクと読むかで、その人間のファンタジー歴を察することが可能。ぼくは、アリオッチ派だけど』

 

シロ「SNEで、召喚魔法にスポットを当てたゲームだと『モンスターコレクション』を忘れるわけにはいきませんね」

モンスター・コレクション Deus 改訂版

モンスター・コレクション Deus 改訂版

  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

NOVA『これもカードゲームは97年からスタートで、TRPGの六門世界RPGは2003年に発売された。世紀末から世紀明けのSNEの主力商品として、ソード・ワールドと双璧を成す作品と言え、そのサプリメントソード・ワールド2.0に通じる過渡期的な要素(GM抜きでプレイできるソロアドベンチャー形式とか、ゴーレムを使う追加職マリオネイターの存在とか)が散見される』

ヒノキ「モンコレは、モンスターを召喚して戦わせることに特化したゲームじゃな。90年代の後半から、トレーディングカードゲームというものが世の中の風潮になる、と」

NOVA『モンスターとカードゲームの組み合わせだと、88年のモンスターメーカーがちょっとした人気作でしたが、93年のマジック:ザ・ギャザリングは業界の構造そのものを大きく変革した革命児ですからね。そして、仮面ライダーがカードでモンスターを召喚して戦う龍騎(2002年)までをも生み出すことになった』


ファイナルベント集

NOVA『戦隊では2001年のガオレンジャー以降(実際には1992年のジュウレンジャー以降)、ライダーでは2002年の龍騎以降、主人公たちと契約した仲間モンスターというべき獣が定着したのに対し、ウルトラでは少し遅れて2006年のメビウスで、防衛チームの操るマケット怪獣が登場。その後、2007年の大怪獣バトルで、主人公が怪獣を召喚して使役する物語が展開され、21世紀の最初の10年以内にモンスター召喚というギミックが特撮ヒーローの定番としても受け入れられるようになったわけだ』


CM バンダイ ウルトラマンメビウス DXガイズメモリーディズプレイ30秒・15秒


Ultra Galaxy Mega Monster Battle Opening (60 Fps 4K) 【ウルトラギャラクシー大怪獣バトルOP】"Eternal Traveler"

NOVA『これは子ども向きフィクションの変遷史なんだけど、80年代から90年代前半までは「自分を肉体的に鍛えて強くなる(その過程で心も鍛える)」という筋立てが定番だったんだな。ドラゴンボールの修行やキン肉マン、ダイ大などのジャンプ王道少年マンガもその文脈にあった。

『しかし、90年代の後半から、仲間モンスターによる代理戦闘という映像が定番化すると、「自分を鍛えるのではなく、相棒を育成して、自分は指揮官、トレーナー、コーチの立ち位置」「大切なのは相棒や仲間との心の絆、友の痛みを自分のもののように感じる優しさ、そしてチームリーダーとしての魅力、気遣い」なんかが主人公に求められるようになる。従来の主人公の立ち位置が、ストイックに己を鍛えるクールなライバルや、強靭な体力と破壊力で戦線を支えるマッチョなファイターの立ち位置にシフトする。これは、キャプテン翼で、主人公がエースアタッカーなポジションから、中盤で試合運びを制するミッドフィルダーの立ち位置にシフトした構図とも似ていて、主人公としての理想の役割が時代に合わせて変化した構図とも考えられる』

ヒノキ「仲間モンスターという要素から、よくそこまで話を広げるものじゃのう」

NOVA『ですが、そろそろ収拾つかなくなりましたので、ここでソード・ワールドに軸足を据えるとしましょう』

 

ソード・ワールドのゴーレム

 

NOVA『一般的にゴーレムというのは岩石巨人のイメージですが、D&Dでは材質でウッドゴーレム、フレッシュゴーレム、アイアンゴーレムなどのランクに分類されます』

ゲンブ「順に、木材、肉、鉄でござるな」

NOVA『そして、樫の木でできたパペットゴーレムを「オーク」と呼称するのがフォーセリアのオリジナルで、元ネタはピノキオ原作のこのアニメだと思うんですけどね』


樫の木モック OP

NOVA『「樫の木モック」は72年のタツノコアニメで、自分がこのアニメの存在を知ったのは80年代。先に知ったのは、76年のこちらです』


ピノキオより ピコリーノの冒険 OP「ぼくはピコリーノ」 大杉久美子

NOVA『フォーセリアで印象的なゴーレムだと、竜の骨で作った竜牙兵(ドラゴントゥース・ウォリアー)というのもあって、ラクシアのゴーレムでは「ボーンアニマル」という獣型ゴーレムの形で踏襲されています』

ゲンブ「それは何レベルでござるか?」

NOVA『では、改めて順に辿ってみますか。まず、ゲンさん、コンジャラー3レベルで作られるゴーレムを挙げてみてください』

ゲンブ「それなら勉強済みでござる。人型のオークと、犬型のオークハウンドでござるな。どちらも2レベルのモンスターでさほど強くない」

NOVA『違いが分かりますか?』

ゲンブ「オークよりオークハウンドの方が敏捷でござるが、強化アイテムの最大数が低くて、汎用性が低いと思われる」

NOVA『そうですね。2.0時代のオークハウンドは3レベルモンスターで、今よりも少し強いデータだったのですが、2.5で弱体化しました。オークに勝っている特徴としては、連続攻撃の特技を2段階まで習得できるので、最大3回攻撃可能という点ですが、それは攻撃が命中し続けている限りのこと。素の命中率が高くないので、命中率を補強できて2回攻撃が可能なオークの方が安定すると思います。当たれば大きいオークハウンドと、無難なオークと言ったところでしょうか』

009『オークハウンドはさらにチャージもできるんだな』

NOVA『移動攻撃でダメージ+2。基本戦闘だと、後衛から前衛に飛び込んだ最初のラウンドだけダメージが加算される扱いという形になる。上級戦闘ルールを使うなら、移動を駆使した戦闘で最大+3のダメージを与えることも可能で、オークハウンドは基本戦闘よりも上級戦闘や熟練戦闘でヒット&アウェイを駆使できると、オーク以上に攻撃的に強くなれる感じだな』

ゲンブ「つまり破壊力を重視するならオークハウンドが良いのでござるか」

NOVA『オークハウンドだったら、移動力を強化することで、チャージの威力をさらに+1する育成方法も有効だな。ただし、前衛・後衛のみの基本戦闘だとあまり機能しない感じ。ところで、ヒノキ姐さんに一つ確認したいことが……』

ヒノキ「何じゃ?」

NOVA『前のリプレイのケンタウロスインペイラーですが、パーティーの前衛から後衛に突撃して来ましたよね』

ヒノキ「うむ。前衛の壁がG太郎一人では防ぎきれなかったからのう。ドキドキする良き戦いじゃと思うておる。ただし、全部イノセントに受け止められてしまったが」

NOVA『あの戦いは、基本戦闘では成り立ちません。というのも、基本戦闘ではパーティーの前衛が一人でもいる限り、敵は後衛に突入できませんから』

ヒノキ「そうじゃったか? むむっ、その辺のルールは2.0版の標準戦闘とごっちゃになっていたようじゃのう」

NOVA『2.0では、主に移動関係で標準戦闘と簡易戦闘と熟練戦闘の3つが示されていて、それが2.5になると簡易戦闘が基本戦闘と呼ばれるようになって、ルールブックでもそちらが先に扱われるようになった。従来の標準戦闘が上級戦闘と呼ばれるようになり、熟練戦闘は変わらず。この辺で少し混同が起こりがちなんですね』

009『どういうことだ? 少し詳しく説明してくれ』

NOVA『現在、うちのSWリプレイで採用している基本戦闘ルールは、前衛と後衛に分かれるシンプルなもの。敵味方の前衛同士が接近戦を行い、後衛は戦いにあまり巻き込まれることなく、前衛の支援に専念できるという仕組みだ。もちろん、敵が飛び道具や魔法を使えるなら別だけど』

009『うん、それで上級戦闘ルールとは?』

NOVA『従来は、こちらが標準戦闘ルールと呼ばれていたんだが、距離のルールを導入して、一直線上の距離感で位置関係を決める。敵の魔法の射程から逃れるとか、細かく位置どりを考えた戦闘が可能だし、敵との距離があって最初のラウンドで前衛戦士が敵に接近できずに攻撃できないこともありがち。乱戦エリアという概念ができるのも、ここからだな。基本戦闘では必然的に前衛が乱戦エリアになって、敵が突破することはできないんだけど、上級戦闘ではそれができる』

ヒノキ「つまり、前回のクライマックス戦闘は、基本戦闘に一部、上級戦闘が混ざってしまい、誰もそれに気付かぬままにプレイしてしまったのじゃ。本当なら、『ボス戦は上級戦闘で行くので、敵が前衛を突破する可能性がある』とGMが宣言すべきところを、2.0の標準戦闘の感覚で、普通に違和感なく進めてしまったことになる」

NOVA『まあ、後付けだが、以前のボス戦は上級戦闘ルールで行ったということで』

009『熟練戦闘とは?』

NOVA『敵味方が一直線上ではなく、平面上を自由に動ける。移動力が高ければ、乱戦エリアを避けて大きく回り込んで、後衛に挑むこともできるし、飛行しているから相手の頭上を越えるとか、そういうアクションも臨機に考えていい』

ゲンブ「ただ、それだと戦場マップを描かないといけなくて処理が煩雑になるので、そこまで綿密に戦闘を再現しなくてもいいのなら、気にすることもあるまい」

ヒノキ「まあ、当リプレイは前衛と後衛の単純な方式の基本戦闘を中心にして、前衛が敵の集団を抑えきれないような局面を再現するために、上級戦闘の要素を一部取り入れた感じじゃな」

NOVA『最終的な決定権はGMにあるものの、GMは卓のプレイヤーの同意が得られるように説明責任を果たすのが望ましい。プレイヤーが自分たちの不利を是認するためには、GMの方が「その方がゲームが面白くなる」という表明と、日頃から公正に努めようとする信頼関係を得ていることがポイントになる』

009『信頼関係を得ていなければ、政治上の議論も、人付き合いもうまく成立しないもんな』

NOVA『そして、信頼関係は日頃の言動や責任感の明示が物を言うわけで、「自分はこういうものを大切に考え、こういうことを目指している」ってアピールがあればこそ、だと思う。目的意識の明示というか、趣味ブログの場合は「趣味を楽しむ姿勢のアピール」の一点に尽きると思うんだけど』

ヒノキ「ゲームの場合は、『ゲームを楽しむ方法についての雑感』とか『関連知識についての考察』『ルール運用のあれこれ』などが記事内容じゃし、それを楽しめる読者を想定しておるわけじゃな」

ゲンブ「ともあれ、オークハウンドが有利に立ち回るには、移動ルールを綿密にした上級戦闘ルールが望ましいということが分かったでござる」

 

NOVA『では次に、レベル4コンジャラーが作成できるゴーレムについてだ。これは鳥型のストローバードと、人型のロームパペットの2種類。どちらも3レベルだが、明確に役割が違っている』

009『あんたは、ストローバードを推していたな』

NOVA『藁(わら)でできて非常に打たれ弱いんだけど、雷撃を放って魔法ダメージを与えてくれる。あるいは肉弾戦でもダメージ+8の渾身攻撃を習得できて、とにかく攻撃重視のゴーレムだ。さらに飛んでいるので命中・回避に+1とか、この段階では機敏な動きで相手を翻弄する格好良さが特徴だ。まあ、使い捨ての特攻兵器と考えるなら、かなり優秀だと思うよ。お値段の方は、雷撃とHP強化付きで900ガメル。再利用可な素材なら1000ガメルだな。雷撃ではなく、渾身攻撃型にするなら500ガメル前後で作れるけど』

ゲンブ「人型のロームパペットはどうでござるか?」

NOVA『能力的にはオークの上位互換的な土人形だね。ダメージが+4されて、オークの特徴は全て備えている。オークで使った強化アイテムも全て活用できて、単純にアップグレードするには最適だ。人型ゴーレムの方向性は、かばう能力を付与して防御性能を高めることだと思う。元は、打たれ弱い魔法使いキャラのボディガード的な役割だからね』

ゲンブ「つまり、攻撃重視なら鳥型で、防御重視なら人型を選べばいいのか」

 

NOVA『続いて、レベル5コンジャラーだ。ここまでは今のサイバ☆リオンも作れるわけだな』

009『金さえあればな。1000ガメルがポンと払えないのが、妖精郷だからして』

NOVA『そのうち何とかなるんじゃないか? ともかく、骨の獣ボーンアニマルと、革の魚レザーフィッシュが作れるようになって、どちらも4レベルだ』

ゲンブ「魚……ということは水中戦でござるか」

NOVA『水中専用で、陸上では基本的に行動できないため、使う局面はかなり限られているが、結構な高性能だね。水属性ダメージを与える水鉄砲もいいが、何よりも強力なのは複数の敵(3体、強化によって5体)を一度に攻撃できるテイルスイング。魚となっているが、海蛇みたいなイメージもあるな。さらに強化次第で地上戦も可能になる。マイナス2の行動ペナルティーを受けるけど』

009『海が舞台なら、検討の余地ありといったところか』

ゲンブ「こちらは地下水路があるから、有効かもしれん」

NOVA『一方、ボーンアニマルはオークハウンドの上位互換だね。単純に能力が嵩上げされて、しかも命中力が強化できるようになったので、連続攻撃も有効活用しやすくなる』

ゲンブ「人型、獣型、鳥型の3種でござるか。亀型というのはないのでござるか?」

NOVA『ある。レベル14のコンジャラーが作れるグラナイトシェル(花崗岩の甲羅)というゴーレムがあって、かなり強力だな』

009『そりゃ、レベル14の世界で強力じゃなければ、やっていけないだろう』

 

NOVA『あとはレベル6で、人型のフラービィゴーレム(肉製。モデルはフランケンシュタインの怪物)。レベル7で人型のストーンサーバント(石製)とつながって、どんどん頑丈になって来るわけだ』

009『コンジャラーレベルを上げる楽しみは、ゴーレムの強化にあるのかもしれんな』

 

おまけのアンデッド

 

NOVA『さて、物はついでに、コンジャラーが【クリエイト・アンデッド】の魔法で作れる連中についても話をしておくか』

009『どうせ、妖精郷では作らせてもらえないんだろう?』

NOVA『シナリオがアンデッド非推奨だからな。おまけに、2.5版ではずいぶん作れる種類が減ってしまった。スケルトン系とゾンビ系を合わせて、6種類しか基本ルールに載っていない。「目指せ、アンデッドマスター」とは言いにくいシステムだ』

ゲンブ「そんな物、目指す必要がどこにあるでござるか?」

NOVA『まあ、少数派だろうが、世の中には死体愛好家(ネクロフィリア)という相当にマニアックな層がいてな。とりあえず、紹介ぐらいはさせてくれ』


ホネホネロック/子門真人


Michael Jackson - Thriller (Official Video - Shortened Version)

NOVA『どうも、70年代から80年代にかけてのロック音楽というものは元来、既存の常識への反骨精神、カウンターカルチャーを旨としているからか、アンデッドなんかと相性がいい感じで、スケルトンとかゾンビはよく踊っている印象だ。で、ソード・ワールドにもこういうリプレイがあるし』

NOVA『蛮族リプレイの一つで、アンデッド好きのマーメイドがプレイヤーキャラにいたりする。なお、主役は蛮族のトロールに育てられた吸血鬼化しかけた人間の娘で、死神の鎌を振り回して暴れている。蛮族として、どんなプレイをすればいいかの一つの公式指針とも言えるな』

シロ「つまり、蛮族の世界ならアンデッド使いになることもOKと?」

NOVA『まあ、GMが上手く対応できるならな。ともあれ、旧版ではスケルトンを作るのにレベル5のコンジャラーでなければいけなくて、あまり実用的とは思えなかったんだが、2.5版にルールが改訂されて、レベル3からアンデッドが作れるようになっている。ソード・ワールドで最もアンデッド作りのルールが充実しているサプリメントがこれだ』

NOVA『このサプリメントに掲載されているルール(特技の改訂とか、ゴーレム製作とか)は2.5版へのアップデートで、ほとんどが無用の長物になったんだが、その中でダークドワーフやバルカンをプレイヤーキャラに採用するルールや、アンデッド関連は今でも参考にできるなあ、と思っている。まあ、新職業や新種族の充実したカルディアグレイスや、アイテム本のルミエルレガシィほどの価値は薄いが、ミストグレイヴの直後のサプリメントなので、当リプレイでもいろいろと有用なはず』

ヒノキ「すると、ダークドワーフに関する情報も充実していると?」

NOVA『ダークドワーフは、蛮族世界に順応した人族という設定で、後に発売された文庫の蛮族本には詳しく語られていないんだな。イグニスブレイズだと、ダークドワーフサイクロプスのところから黒い炎を盗み出した歴史とか、地上のドワーフから見捨てられた恨みを持つ背景事情とか、プレイヤーキャラとして地上に出たダークドワーフは「魔動機術という、かつての新技術に心惹かれて研究のために地上で活動しているうちに、自分が人族であることを思い出した者たち」とか、ダークドワーフという種族についての興味深い情報が書かれている』

ヒノキ「つまり、ダークドワーフがオタク系の発明種族という見解に間違いはないのか?」

NOVA『まあな。とりあえず、ミストグレイヴの今後のプレイのために、イグニスブレイズもそちらに送っておくぜ。バルカンやダークドワーフの文化については、GMもしっかり研究しておいてくれ』

ヒノキ「助かるのじゃ。シナリオの記述だけでは、NPCのロールプレイの方向が正しいのか、自分でもはっきりしなくてのう」

NOVA『シナリオに登場するダークドワーフは、どうも奇人変人であることを強調している感じだからなあ。一般的なダークドワーフの考え方とか、種族の歴史ってのはいろいろと参考にできるだろう。では、俺の講義はここまでだ。自分ところのリプレイもあるし、新刊のこいつも読みたいしな』

 

ヒノキ「ではの。わらわたちも次回から、魔神ハンターリプレイの続きを行うことにする」

(当記事 完)