亜種がいろいろ
NOVA「今回もアーケインレリック話の続きだが、その前に『一つの指輪RPG』の進捗動向が分かりました」
ヒノキ「ほう。いつ出る?」
NOVA「翻訳者のTwitter改めX情報によると、『現在、製作が大詰めに入ったので、この調子なら9月下旬に出ると思う』だそうです」
ヒノキ「まだ確定ではないのじゃな」
NOVA「8月に出ないことが分かって、大体の予定時期が出ただけでも十分です。あと、9月はこれの邦訳も出るようで楽しみにしている」
ヒノキ「9月は指輪に熱中しそうじゃのう」
NOVA「9月下旬に買っても、記事ネタにしそうなのは10月でしょうな。さて、今回は希少種族の話ということで、既存種族の亜種的ヴァリエーションについて語ろうと思います」
ヒノキ「亜種的ヴァリエーションとは?」
NOVA「例えば、D&Dですと、ドワーフに丘ドワーフと山ドワーフがいるみたいなものですね。これがフォーゴトン・レルムだと呼称が変わって、丘ドワーフはゴールド・ドワーフ、山ドワーフはシールド・ドワーフと呼ばれ、さらにアンダーダークの住人であるドゥエルガル(グレイ・ドワーフ)という亜種までいます」
ヒノキ「同じドワーフでも、異なる文化に所属して、ゲーム的な特徴が違って来るのじゃな」
NOVA「D&Dエルフだと、ウッド・エルフ(森エルフ)とハイエルフ、闇エルフのドラウの3種が基本ですが、フォーゴトン・レルムだと、ハイエルフがサン・エルフとムーン・エルフの2つに分かれたりしています」
ヒノキ「太陽と月では、何が違うんじゃ?」
NOVA「サン・エルフは傲慢で鼻持ちならない貴族主義な文化で、ムーン・エルフは寛容で冒険的、探究心に富んでいます。プレイヤーキャラとして冒険者エルフを作りたいなら、ムーン・エルフに設定しておくのが無難ですな。まあ、敢えていけ好かないサン・エルフをロールプレイするのもありだし、『サン・エルフにしては謙虚』って個性を売りにしてもいい」
ヒノキ「つまり、サン・エルフとムーン・エルフはゲームデータ上の扱いはどちらも同じハイエルフじゃが、ロールプレイ指針的な文化面で違いが設定されている、と」
NOVA「それとエルフの希少種族は、フォーゴトン・レルムでも数々存在していて、『翼の生えたアヴァリエル』『海に住むシー・エルフ』『異次元に住むスター・エルフ』『狼に変身できるライサリ』『野生児的なワイルド・エルフ』なんかが紹介されています」
ヒノキ「どこで?」
NOVA「5版だと、『ソード・コースト冒険者ガイド』ですね。現在は絶版状態で、希少なお宝サプリメントになってしまいましたが」
ヒノキ「D&Dの話はそれぐらいにして、そろそろ本題であるソード・ワールドの希少種族の話に移らんか?」
NOVA「そうですね。ここまでが前置きです」
ソード・ワールドの希少種族
NOVA「ソード・ワールド最新サプリメントの『アーケインレリック』では、人間とドワーフを除く、ルールブック所収の基本種族10種にそれぞれ2種のヴァリエーションが設定されています。ドワーフは一応、ダークドワーフが希少種みたいなものとして定義されていますが、今回が初出ではないためか、ルール上は完全に別扱いされていますね」
ヒノキ「別扱いとは?」
NOVA「希少種のデータは、既存種族の種族特徴などをアレンジしたもので、例えばスノウエルフやミストエルフは基本のエルフと能力値なんかは同じ。一方、ダークドワーフは、既存ドワーフよりも技(器用、敏捷)が高くなりがちで、その分、生命力が低くなりがちに能力値設定されています」
ヒノキ「つまり、どういうことじゃ?」
NOVA「これまでのエルフから、スノウエルフにデータをコンバート(変換)するのはやりやすい一方で、ドワーフからダークドワーフに変換するのは困難ということです。また、途中導入するに際してのプレイ感覚としては、『これまでのエルフに飽きたから、実はスノウエルフだったことにします』とキャンペーン途中で言っても、GMによっては比較的受け入れやすそうに思えます。要は、種族特徴だけ置き換えればいいわけですからね」
ヒノキ「既存データを少しアレンジするだけのことか?」
NOVA「作る方も、それぐらいじゃなければ、いきなり20種も種族を増やせませんって。例えば、エルフは昔から人気種族なんですが、ラクシアのエルフの特徴である[優しき水]って比較的地味なんですね。1時間の水中呼吸と、2.5で追加された毒・病気抵抗に+2ボーナスって、使える場面が限られていて、美味しくないように思える。種族特徴が地味だから、エルフはいまいち、と感じる層にも、新たな選択肢を用意することで、エルフの実用度を向上させることができる。能力値は同じなのに、種族特徴をアレンジするだけで大きく使い勝手が変わる(かもしれない)。これが希少種実装の意義かと考えます」
ヒノキ「要は、選べるオプションが増えて、ゲームとしてはより面白さが増した、ということじゃろう?」
NOVA「選択肢が増えるということは、その分、面倒くささが増えることにもなりますが、だったら既存種族のままでも構わないわけです。サプリメント導入は、プレイにおいて必須ではありませんから」
ヒノキ「それでも、GMとしては自分のキャンペーンにどう活用できるか、考えたくなるものじゃろう?」
NOVA「まあ、だから今、考えているわけでして。では、希少種族を個別に見ていきましょう」
★エルフの希少種(スノウとミスト)
NOVA「ラクシアのエルフは、それまでのフォーセリア・エルフのイメージである風や木属性を改めて、水属性を強調しています。そこから新たに派生したのが、氷属性のスノウエルフと、霧属性のミストエルフですな」
ヒノキ「既存エルフとは何が違うんじゃ?」
NOVA「まず、スノウエルフの種族特徴[厳つき氷]は、MP1点で自分の冒険者レベル分のダメージを与える氷弾を撃つことができます」
ヒノキ「5レベルで5点か。あまり強くはないのう」
NOVA「ポイントは、抵抗不可の必中ダメージってことですね。当たれば倒せる相手に、確実にとどめを刺すことができます、MP1点で。さらにレベル6になると種族特徴が強化されて、補助動作で撃つことも可能。その場合、ダメージは3点固定ですが、主動作で普通に攻撃した後、追加で3点ダメージを増やせるのだと考えると、まあ便利ですね。死にかけたザコにとどめを刺しつつ、主動作で別の相手を狙えますから、状況がハマれば便利に強い。まあ、これまでのエルフにはなかった能動的、攻撃的な種族特徴で面白そうに思えます」
ヒノキ「ミストエルフは?」
NOVA「こちらは、種族特徴[惑いの霧]で、自分自身を霧に包み込み(補助動作)、6ラウンドの間、敵からの攻撃命中を1下げることが可能」
ヒノキ「天幻星・霧隠れの術か」
NOVA「それは幻を使った攻撃も可能ですが、[惑いの霧]は純粋に防御技ですね。どちらかと言えば、前衛よりも後衛キャラになりがちなエルフですが(筋力や生命力が高くないので)、この特徴で相手の命中を下げれば、回避主体の軽戦士もしくは武闘家としてテクニカルな前衛に立つことも可能。クールに格好いい前衛エルフとか、忍者や暗殺者風味のキャラ演出をしたい人にはお勧めの種族となります」
ヒノキ「前衛エルフはどちらかと言えば、有効性に欠けた色物、趣味の範囲と思われがちじゃが、霧で回避しやすくすれば、積極的に前に立つ選択肢もあるということじゃな」
NOVA「グラスランナーのグラップラーが強キャラとして成立するなら、ミストエルフのグラップラーだって強くなれる理屈ですね。もちろん、前衛で【ブラスト】を撃ちまくる魔法戦士も有効か、と」
ヒノキ「しかし、ミストエルフの能力を有効利用しようとすれば、後衛から前衛に技能習得も見直さないといけなくなって、キャンペーン途中のコンバートは困難と言えるのう」
NOVA「そうですな。スノウエルフは通常のエルフからの途中変更も容易ですが、これまでエルフの拳士なんてキャラを使っていたプレイヤーは稀だと思いますので(せいぜいフェンサーが定番)、ミストエルフへの途中切り替えはあまり実用的ではない。ただ、今回、ミストエルフのサンプルキャラがグラップラーであることから、今後は新規に作成されたエルフ拳士が一つのトレンドになる時代が来るのかも」
★タビットの希少種(パイカとリパス)
NOVA「タビットは、ラクシア名物のウサギ人ですね🐇。可愛い見かけに反して、性格は高慢な魔法使い。運動能力は欠如してるので、ウサギの盗賊なんかには不向きです。俺的には、ウサギって素早く飛び跳ねるアクロバティックなイメージなんですけど、ソード・ワールドではそうじゃなかったんですな、今までは」
ヒノキ「アーケインレリックで、新しいウサギ像が生まれた、と」
NOVA「まず、普通のタビットの種族特徴は[第六感]で、冒険者技能レベルで危険感知できます(通常はスカウト技能やレンジャー技能などが必要)。他の希少種も同じ特徴は失われておりませんが、能力値修正が付いてきて、さらに追加の特徴が得られます」
ヒノキ「それだけ聞くと、希少種の方が得をしているようじゃのう」
NOVA「かもしれません。追加されたのは、小型タビットのパイカ種と、大型タビットのリパス種。パイカ種だと、通常タビットの能力に器用と敏捷+3、筋力と生命力−3の修正が付きますね。追加種族特徴は[ホイッスル]。独自言語のパイカ語で、鳥のさえずりのような秘密会話ができます」
ヒノキ「チュンチュンとか、そんな感じか」
NOVA「パイカ語は仲間がセージ技能やバード技能で聞き取りのみ習得できますので、パイカ種が密偵などで情報収集し、誰にも怪しまれずに伝えることも可能になりますね」
ヒノキ「ウサギの密偵か。確かに、従来のタビットでは不器用だったり機敏さ不足で、密偵稼業には向かなかったが、パイカ種ならそれも可能か」
NOVA「さらに器用なので、マギテックシューターも普通にこなせて、サンプルキャラクターの例に上がっていますね。次にリパス種ですが、能力は敏捷と筋力+3、知力と精神力−3。追加種族特徴は[暗視]です」
ヒノキ「一応、前衛でも戦える魔法戦士向きのタビットか」
NOVA「積極的に前に出るべきとは思いませんが、フェンサー技能を習得すれば一応の自衛程度はできるようになったタビットと言えますか。魔法使い特化の非力な能力から、やや平均並みになったことで、タビットのピーキーさが薄れて、汎用性が増したと思います。サンプルキャラの初期能力ボーナスが+3の知力以外は全部+2という点も弱点が補強された感じですね。従来のタビットなら、器用、敏捷、筋力ボーナスが1で、知力が+4、精神が+3と、極端な能力でしたから」
ヒノキ「後衛魔法使い一択だったタビットでも、普通に前衛にも出られるようなキャラを目指すなら、お勧めだと」
NOVA「ウサギに魔法使い以外の職業選択の自由ができたと思えばいいかな、と。とりあえず、ウォーリーダー技能を習得して、徳川家康ぶることも今の大河なら可能かと」
★ルーンフォークの希少種(護衛型と戦闘型)
NOVA「さて、人造人間ルーンフォークの種族特徴は、HPをMPに変える[HP変換]なんですが、希少種はそれを別の特徴に置き換えることが可能です。まず、護衛型と称されるタイプは、MP3点を消費して仲間のダメージを3点減少させられる[仲間との絆]を持ちます」
ヒノキ「それは自らの体を張って物理的にかばうのではなく、魔法の障壁みたいなものを張ると言うことかのう?」
NOVA「俺はそう解釈しています。ただし、自分のダメージは減らせず、また1日1回のみ。ただし、効果範囲(自分の周囲5mのエリア)では複数の仲間のダメージを軽減することも可能。仲間が3人いれば、MP9点で範囲攻撃のダメージも3点ずつ減らせます。まあ、自分のダメージは減らせないんですけどね」
ヒノキ「3点のダメージ減少を多いと考えるか、少ないと考えるかで価値の変わってくる種族じゃのう」
NOVA「防護魔法の【プロテクション】で1点減少、さらに【フィールドプロテクション】でもう1点減少というのが、ソード・ワールドのダメージ減少効果ですからね。3点減少効果のバリアというのは、他の魔法と比べると強力なのは間違いありません。まあ、実際のプレイでは、この1点、2点の差が生死を分かつ場合もあることを考えると、タイミング次第ではとっさに3点のダメージを減らせることで、命拾いする可能性も結構あるような気がします。死ぬときは割と1、2点の僅差で事故死みたいになることが多いゲームですからね、ソード・ワールドのプレイ感覚としては」
ヒノキ「問題は、複数をガードする際の消費MPの確保じゃのう。[HP変換]が使えなくなった以上、ルーンフォークの少ないMPのやりくりには、魔晶石やらMPポーションなどの購入が必須になることはまちがいない」
NOVA「なお、6レベルになって種族特徴が強化されると、減少ダメージが3点から5点になりますが、その分、消費MPも同じだけ増えますので、MP管理がより厳しくなることも。まあ、その辺を考えるのもゲームの楽しさなんでしょうがね。さて、次に戦闘型ですが、こちらは攻撃重視です。MP消費が必要ない[任務遂行の意志]で、1日1回、威力決定ダイスの3以下を振り直すことができます」
ヒノキ「攻撃は命中したけど、ダメージダイスでピンゾロでがっかり……という事故を減らせるのじゃな」
NOVA「ソード・ワールドには、振り直し系の特技があまりないですからね。ここぞと言うところで失敗を挽回できるのは、ありがたいと思います。ロールプレイとしても、「外したか? いや、まだだ。諦めてたまるか。絶対に当ててみせるッ!」というセリフが言えるのは、燃えるというもの」
ヒノキ「確かに。もちろん、振り直しても出目が振るわない可能性もあるわけじゃが」
NOVA「それはそれで、場のウケやツッコミは誘発できますので美味しいですよ。ゲームとしては格好良く決めるのも憧れますが、思わぬミスも楽しいものですからね。失敗からの立て直しこそがドラマに通じるというもの」
★ナイトメアの希少種(シャドウとソレイユ)
NOVA「ナイトメアは、人族が突然変異で穢れを持って生まれた忌み子ですが、これまでも生まれによって、人間、エルフ、ドワーフの3種がいたんですね。種類によって弱点属性が違う。人間ナイトメアは土属性、エルフのナイトメアは氷属性、ドワーフのナイトメアは炎属性が弱点になっていた」
ヒノキ「本来、炎属性には無敵のドワーフ(だから【ファイアボール】のダメージも受けない)の中で、忌み子として生まれたナイトメアの苦労話なんかが小説で描かれたりもしていたのう」
NOVA「ナイトメアでキャラを作る場合は、ドワーフナイトメア以外で作るべし、というのがセオリーだと思います。土属性や氷属性に比べて、炎属性で攻撃してくる敵は多いですから」
ヒノキ「エルフナイトメアの弱点が水じゃなくて良かったのう」
NOVA「水を飲んだらダメージなんて、ジャミラみたいじゃないですか。水の多い世界では生きていけませんよ」
ヒノキ「水を飲むと死ぬので砂漠に行こうとか、水分は果汁か塩水、あるいは油なら問題ないとか特殊設定を考えねばならん」
NOVA「水はダメだけど、アルコールならOKなので、いつも酒を飲んでるとか、そういう設定も面白いですけど、一般社会では苦労しそうだなあ」
ヒノキ「で、ナイトメアの希少種は、弱点属性が違うだけの手抜きバージョンなんじゃな」
NOVA「手抜き言うな。ええと、シャドウ生まれのナイトメアは、本来の長所である精神抵抗+4が、精神効果属性に対する物理・精神抵抗−1になります」
ヒノキ「精神効果属性というと……闇系の妖精魔法とか、アステリアの特殊神聖魔法に多いのう」
NOVA「吸血鬼の魅了効果とか、恐怖とか、あと眠りとかも含まれますね。本来、シャドウは強い自制心を持ってる種族なんですが、心の弱さがあるナイトメアは落ちこぼれ扱いされるみたいです」
ヒノキ「確かに、周りがみんな心が強い連中ばかりだと、心が折れやすい者は生きて行くだけでも厳しいのう」
NOVA「あと、ナイトメアは意外にも、[暗視]を持たないんですね。人間生まれだと問題にはならないんですが、[暗視]を持つエルフ、ドワーフ、そしてシャドウの社会では、夜目が利かないというのは思いきりハンデになるんだなあ、と思います」
ヒノキ「ふむ。ナイトメアは能力の高い優秀な魔法戦士になれる種族だと理解しておったが、生まれた社会によっては、必須の能力が欠如しているため、その優秀さを発揮できるチャンスも与えられずに迫害され得るということか」
NOVA「社会から飛び出した冒険者としては優秀でも、日常社会には居場所を持てなかった存在。シャドウとナイトメアはどちらも闇属性のイメージを持っていましたが、その闇が必ずしも相容れるものでないのは意外でした。強い意志で影の世界に生きる覚悟をもったシャドウと、誘惑に弱く、夜を生きる覚悟とは無縁の流されやすいシャドウ・ナイトメア。しかし、シャドウ社会では重視されていない魔法の才は秘めているわけで、ドラマのネタとしては面白いと思いました」
ヒノキ「それで、ソレイユ生まれのナイトメアはどんな感じじゃ?」
NOVA「ソレイユ生まれは、純エネルギー属性が弱点で、ダメージ+2点されます」
ヒノキ「純エネルギー属性の攻撃だと、真語魔法の【エネルギー・ボルト】、【エネルギー・ジャベリン】、魔動機術の【レーザー・バレット】などか。割と少なめじゃのう」
NOVA「他には太陽神ティダンの特殊神聖魔法【レイ】がありますね。要は、光弾や光線系の魔法が弱点」
ヒノキ「別に太陽光そのものが弱点なわけではないのじゃろう?」
NOVA「ソレイユはタフな種族ですから、出産時にナイトメアの頭部の角が母胎を傷つけても、母殺しになる可能性は少ないみたいです。だから、他の種族に比べて大らかなソレイユ社会は、ナイトメア差別をすることはあまりないようですが、おバカなソレイユ社会にあって、知力の高いナイトメアの子が居心地の悪い思いをすることが多いとか」
ヒノキ「なるほどのう。いやはや、先ほど手抜きと言って悪かった。ゲームデータとしては、弱点属性が変わっただけじゃが、各種族の背景とナイトメアの立ち位置までナラティブ面での設定がしっかり描かれているのは、感心させられた、と言っておこう」
NOVA「ええ。ソード・ワールドにおけるナイトメアは、差別や多様性について考えるファンタジー・テキストとしても、物語の問題提起ネタとしても、なかなか優れた設定と考えます。そもそも希少種という概念そのものが、多様性と、それに反する少数種族の迫害、だからこそ生じる閉鎖性や偏狭性を考える異世界テキストになっていますからね」
★リカントの希少種(大型草食獣と小型草食獣)
NOVA「ルールブックIに載っている最後の種族がリカントです。今回はここまでにしておきましょう」
ヒノキ「ちょうど半分で、キリもいいからのう」
NOVA「さすがに1記事で20種の希少種全てを考えるのは無理でした。名前を挙げるだけならともかく、内容まできちんと確認するのはね」
ヒノキ「種族だと、ゲーム上のデータだけでなく、物語世界における文化背景まで想像するのは、思ったよりも疲れるのう」
NOVA「良い異世界考察の勉強になります。で、最後の獣人リカントですが……」
ヒノキ「元々、動物種ごとに多彩なヴァリエーションのある種族じゃろう?」
NOVA「そうなんですが、今までは肉食獣限定だったんですね。つまり、イヌ科やネコ科はOKだけど、馬とか牛のリカントは存在しなかった」
ヒノキ「ギーツやナーゴをモデルにすることはできても、バッファは無理じゃった、と」
NOVA「だけど、今回のルール追加で、山羊や羊、象やキリン、それにウマ娘リカントだって可能になった。これであとは鳥人さえフォローされれば、ラクシアでもクリスタニアごっこができるようになる、と」
ヒノキ「鳥人は、プレイヤーが使えない蛮族設定じゃからのう」
NOVA「これまでの[獣変貌(肉食獣)]は、頭部が獣になって喋れなくなる代わり、筋力ボーナス+2でした。今回の[獣変貌(大型草食獣)]は馬や牛、羊などの頭部になって、HP最大値および現在値が10点上昇。さらに補助動作で頭突き攻撃が可能になります」
ヒノキ「牛や羊が角で頭突きというのは分かる。しかし、馬で頭突きというのはどうじゃろうか?」
NOVA「ユニコーンみたいに角でも生えているのか、噛みついているのか、それとも頭突きに見せかけた体当たりなのか演出はプレイヤーの自由で、とにかく確定ダメージ2点を与えることができます」
ヒノキ「筋力ボーナス+2よりも、確定ダメージ2点の方が強くないか?」
NOVA「確定ダメージは、命中判定で外すことがないですからね。ただ、肉食獣リカントがグラップラー技能で攻撃回数を増やしたら、2点固定よりも命中した攻撃全てに+2される方がダメージ総計は大きくなります」
ヒノキ「なるほど。肉食獣リカントは複数回攻撃で性能をフルに発揮できる。大型草食獣リカントはタフさとダメージの安定度で差別化してある、と」
NOVA「もう一つの[獣変貌(小型草食獣)]は、例に挙がっているのがウサギやカンガルーですが、ネズミやリス、ハムスターなんかもOKでしょう。これで忍風戦隊のハムスター館長にだってなれる」
ヒノキ「無理じゃろう。変身できるのは頭部だけで、クリスタニアにおけるパーシャル(部分)変身じゃからのう」
NOVA「そうでした。ハムスター顔の怪人にはなれても、完全なハムスターにはなれない、と」
ヒノキ「ウサギのリカントも、タビットとかぶるかと思いきや、ウサ耳少女と、服着たウサギではファン層も変わって来るのじゃろうな」
NOVA「バニーガールが好きな人が、ウサギのペットを飼いたいわけではないでしょうし、逆もまた然り。それにタビットは常にウサギなのに対し、こちらは人間からウサギに変身できる仕様です。俺はウサギに変身できる人間は好みですが、別にウサギをもふもふしたいとは思わない。ただのウサギには用はない。でも、ウサギガールには興味があります。コスプレじゃなくて、バニーガールでもなくて、変身できるウサ娘にね」
ヒノキ「つまり、小型草食獣リカントは、新兄さんのツボを突いたというわけじゃな」
NOVA「コホン。それはともかく、[獣変貌(小型草食獣)]は、変身すると敏捷度ボーナス+1で、攻撃よりも回避特化ですね。さらに、観察系の判定に+1です。つまり、密偵向きになるわけで」
ヒノキ「元々、リカントは機敏で密偵向きの種族じゃったと思うが、さらに素早くなるということじゃな」
NOVA「サンプルキャラは、バトルダンサーとスカウト技能を持っているので、ウサギのダンスを踊る密偵ということですな。他のリカント種に比べて攻撃力に劣る分、【なぎはらい】とか多彩な技を活かすべし、と戦術アドバイスもされて、なかなかいい感じです」
ヒノキ「では、今回はここまでじゃ」
NOVA「次回は、残った5種類、リルドラケン、グラスランナー、メリア、ティエンス、 レプラカーンの希少種を話題にして、この一連の種族話を終わらせるつもり」
(当記事 完)