花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

一つの指輪TRPGの話

ルールブック購入

 

リモートNOVA『ヒノキ姐さん、とうとう購入しましたよ』

ヒノキ「ほう。とうとう買ったか。それで、どうじゃった?」

リモートNOVA『いやあ、前回の予想記事はいろいろと誤解していたので、そこにツッコミ入れながら、修正しておきたいと思います。前置きはここまでにして、早速本編ですよ』

 

英雄的文化圏(Heroic Culture)

 

NOVA『まずは、前回、文化背景と言っていましたが、正式訳は英雄的文化圏ですね。キャラ作りはまず、6種の出身文化のどれかを決めます。この文化で、大体の能力値や取得技能、特徴が決まってきます。そして、人間の3種(バルドの民、ブリー郷、北方の野伏)が、もう全く能力が違いますので、同じ人間とは言えなくなっています』

ヒノキ「ほう、そこまで違うのか?」

NOVA『このゲームの基本能力値は、肉体能力を表現した【体力】、心の強さを表現した【心力】、思慮深さを表現した【知力】の3つしかないのですが……』

ヒノキ「多くのゲームでは、体力と素早さは別扱いじゃが、肉体能力は【体力】しかないのじゃな」

NOVA『ただし、戦闘における回避は【知力】に基づくので、回避特化のキャラを作りたければ、エルフが向いていますね。だけど、リンドンのエルフは【心力】が低いので、心が弱い扱いです』

ヒノキ「心が弱いと、どういう問題が?」

NOVA『それぞれの能力に対応する技能は以下の通り』

 

●体力:〈威厳〉〈運動〉〈感知〉〈狩猟〉〈音楽〉〈工作〉

●心力:〈鼓舞〉〈旅行〉〈洞察〉〈治療〉〈礼儀〉〈戦術〉

●知力:〈説得〉〈隠密〉〈捜索〉〈探検〉〈謎々〉〈知識〉

 

ヒノキ「エルフなのに、〈治療〉や〈礼儀〉が弱いというのは、原作のイメージと違う感じじゃが?」

NOVA『我々が「指輪」のエルフとして馴染んでいるのは、裂け谷、闇の森、ロスロリエンの3ヶ所ですからね。実は、リンドンのエルフってのがよく分かっていなかったりする』

ヒノキ「リンドンというのは、どこじゃ?」

NOVA『ホビット庄の西に灰色港があるのは、ご存知ですね』

ヒノキ「むろんじゃ。『ロード・オブ・ザ・リング』の最後のシーン。中つ国からフロドやビルボ、ガンダルフガラドリエルが西方へ旅立つ最後の舞台じゃからのう」

NOVA『ガンダルフに炎の指輪ナルヤを託した〈船造り〉のキーアダン(最新訳ではキールダン)が灰色港とその周辺の地域リンドンの領主となっています。原作小説では、エルロンドの御前会議で名前だけ出てきて、最後の旅立ちのシーンに顔見せ登場するだけの非常に影の薄いキャラですし、映画しか見ていない人には知られざるキャラ。それでも、「シルマリルの物語」や去年文庫版が出た「終わらざりし物語」で過去の活躍が描かれているので、マニア心には重要人物となります。炎の指輪の本来の持ち主であることから、エルロンド、ガラドリエルと同程度の格付けとなるわけですな』

NOVA『さて、リンドンのエルフは〈礼儀〉を知らない、というキャラ付けなんですが、この〈礼儀〉技能は主に人間文化での交渉能力に関するものっぽいですね。エルフは気品に溢れた美しい種族ですが、人間に対して恭しく振る舞うという作法を学んでいないようです。エルフ流の振る舞い方は、人間に感銘を与えるというよりも、お高く止まっているようにしか見えないわけで』

ヒノキ「では、〈礼儀〉に長けたのはどの文化じゃ?」

NOVA『ブリー郷の人族がレベル3、ホビットとバルドの民がレベル2で、ドワーフがレベル1ですね。野伏とエルフは、初期状態で〈礼儀〉レベルが0ですから、この〈礼儀〉という技能は高尚な振る舞い方や作法ではなく、庶民レベルで初対面の相手に敬意を示すことができるか、商売人が客に対して愛想笑いを見せられるか、軽いジョークを飛ばせるかなどの技能だと思います』

ヒノキ「野伏やエルフの礼儀は、ドワーフ以下というのか?」

NOVA『まあ、尊大なトーリンみたいなケースを除けば、ドワーフは庶民的で賑やかでコミカルな連中ですからね。ともあれ、技能の解釈なんかも考えながら、各文化の能力イメージを並べると、こうなります』

 

ドワーフ:体力◎、心力X、知力◯

●バルドの民:体力◯、心力◎、知力X

●ブリー郷の人間:体力X、心力◯、知力◎

●野伏:体力◎、心力◯、知力X

ホビット:体力X、心力◎、知力◯

●エルフ:体力◯、心力X、知力◎

 

NOVA『能力値については、◎が5〜7、◯が4〜6、Xが2〜4で、どの文化も合計14になるように設定されているようですね。それぞれ長所と短所が明確で、特定の文化が有利ということはないようです。まあ、前衛でガンガン武器を振ろうと思えば、体力が必要になるでしょうし、役割に応じた有利不利はあるのでしょうが』

ヒノキ「ドワーフやエルフが、心力が低いというのが意外じゃのう」

NOVA『心力というのは、心の強さとされますが、恐怖に耐える勇気とか、希望点にも関わってきます』

ヒノキ「希望点?」

NOVA『影の誘惑に抵抗する力とか、あとは消費することで、希望ボーナスという形で判定の成功率を高めることもできます。ヒーローポイントというか、主人公らしい活躍ができるバロメーターと考えますね。この世界では、ホビットやバルドの民が最も主人公特性が高くて、みんなに勇気や希望をもたらしてくれる。逆にドワーフやエルフは種族総体として、主人公としての魅力に欠けるというところでしょうか』

ヒノキ「ブリー郷の人間は、ただの村人みたいなものだから、肉体的に鍛えられていなくて、戦士向きでないことは察しがつく。しかし、エルフ並みに知力が高いというのが意外じゃのう」

NOVA『村人は、初期状態の技能が非常に満遍なく散らばっていて、器用貧乏なんですね。同じ知力の高さでも、エルフは〈隠密〉と〈知識〉に特化していて(レベル3)、得意不得意がはっきりしている。だけど、ブリーの村人は〈威厳〉〈治療〉〈戦術〉〈知識〉以外の14技能全てを初期状態で習得していて、大抵のことはできる。同じぐらい多芸なのはバルドの民になりますか。彼らができないのは〈感知〉〈治療〉〈隠密〉〈謎々〉です。技能傾向的には、バルドの民が誇り高い戦士で、ブリーの村人は素朴で荒事は苦手だけど知恵ある民。あと、野伏は荒野でのサバイバルに長けているけど、交渉ごとはまるでダメという野人ですね』

ヒノキ「つまり、アラゴルンレゴラスギムリの3人だと、相手を説得することはできないということか?」

NOVA『まあ、彼らの個人の能力は分かりませんが、ローハンの騎士相手に下手に出て、自分たちの事情を説明して分かってもらうことはできませんね。だから、彼らは〈威厳〉技能を使って、ローハンの騎士たちを威圧し、脅したんですよ。自分たちの行く手を邪魔したら、たとえ多くの騎士を相手にしても、一歩も引かずに戦って、痛い目に合わせてやるぞって感じに。アラゴルンは理屈での説得は得意でないけど(知力が低いので)、脅しを交えながら相手に要望を受け入れさせるのが得意っぽいですな』

ヒノキ「しかし、知力の低い野伏では、〈隠密〉〈捜索〉〈探検〉が上手くできなくて困ったりはせんかのう?」

NOVA『一応、初期状態で、それらの技能は持っていますので、体力6、心力4、知力4だったら、大体イメージ通りのアラゴルン風キャラが作れそうですね。これが知力2だったら、鈍重な野伏になりそうだ』

 

召命(Calling)

 

NOVA『さて、前回は職業みたいなものと考えていましたが、召命は冒険の動機や願いを表現したものとのことで、D&Dのクラスに比べて、キャラの能力にあまり大きな影響を与えないことが判明』

ヒノキ「つまり、キャラの能力の中心は、出身文化であって、召命ではない、と?」

NOVA『正式な訳語もこのようになりましたね(青字)』

 

●キャプテン(指導者→統率者

●チャンピオン(戦士→闘争者

メッセンジャー(伝令→伝令者

スカラー(学者→研究者

●トレジャーハンター(盗掘者→探宝者

●ウォーデン(守護者

 

ヒノキ「それほど大きく変わったわけではなかろう。しかし、戦士を闘争者とすることで何が変わる?」

NOVA『戦士は、戦うことが仕事って感じですが、召命の闘争者は戦うことが趣味というか、戦いたいから村を飛び出した若者って感じのキャラですね』

ヒノキ「ホビットの闘争者は不利じゃろう?」

NOVA『別に闘争者だからと言って、前衛に立つ必要はないんですよ。弓が得意で、後衛で敵を狩ることに夢中なホビットを目指すこともできる。召命を選ぶと、得意技能(判定で有利が得られる)を3つの中から2つ選ぶことができます。例えば、ホビットだと文化背景で〈礼儀〉と〈隠密〉が得意だと決まっているのですが、それに加えて闘争者だと〈威厳〉〈運動〉〈狩猟〉のうち2つを得意として、個性を出すことも可能』

ヒノキ「しかし、ホビットの定番じゃと、普通は探宝者を選ぶものじゃろう?」

NOVA『その場合は〈隠密〉〈捜索〉〈探検〉の3つから2つを選ぶ形ですね』

ヒノキ「〈隠密〉はすでに得意じゃから、〈捜索〉〈探検〉を選ぶことになろうな」

NOVA『そんな感じで召命を選ぶと、さらに追加の特徴と影の道が付いて来ますね』

ヒノキ「影の道? 何かデメリットでもありそうじゃのう?」

NOVA『ええ、闘争者の場合、影に飲み込まれるとケンカっ早くなりますね。相手がムカつくので一発殴ってやりたいとか、剣を腹に突き立ててやりたいとか考えるようになるわけです』

ヒノキ「探宝者じゃと、お宝を独り占めしたいとか、他人の大事な物を盗みたいって気持ちに駆られるのか?」

NOVA『正解です。俺は研究者気質だから、その場合は禁断の知識に手を伸ばしたり、知識のない相手を愚か者と見下したり、知識を悪用したくなる危険があります。いわゆるサルマンですね』

ヒノキ「統率者だと権力欲なんじゃろうが、伝令者と守護者じゃとどうなる?」

NOVA『伝令者は、旅に出たい、人に何かを伝えたいという動機で冒険に出たわけで、吟遊詩人みたいな性質なんですが、影の道に苛まれると目的なしの漂泊心、流浪癖に取り憑かれ、まだ知らぬ物を求めて危険の中に迷い込む恐れがあります。

『守護者は、やはり戦士キャラではなくて、人々を守り、癒したいという理由で旅に出たキャラで、得意技能も〈感知〉〈治療〉〈洞察〉、つまりD&Dで言うところのプリースト系の方向性ということが判明』

ヒノキ「前回は、土地の番人とか隠者と言ってなかったか?」

NOVA『土地の番人だと、冒険の旅には出られないので、プレイヤーキャラ向きではないってことですな。あくまで召命は、個人的に冒険の旅に出た理由を示すもので、しかし影の道に陥ると、果たして自分は人々を守れるのだろうか? そもそも、この者たちは守るべき価値があるのだろうか? もしも、守れなかったらどうなるというのか? など、守るという行為がいろいろな疑念に苛まれて、絶望してしまうそうです』

ヒノキ「じわじわと、精神的なプレッシャーで追いつめられるゲームということか?」

NOVA『ええ、ホビット庄が舞台のスターターセットでは示されていなかった影の影響が、ルールブックでは詳細に描かれていて、旅の最中の疲労や心の消耗なんかがルール化されています。肉体的な死よりも、精神的な傷の方が丹念に描かれていて、それを知恵や勇気で克服していくゲームって印象です。いや、まだ、そこまでルールを読みきったわけではないですが』

 

ヒノキ「影の道は話が暗くなっていかんのう。それはもういいから、追加の特徴はどうじゃ?」

NOVA『特徴については、細かい数字データよりも、ナラティブ系のゲームって感じですね』

ヒノキ「ナラティブ系?」

NOVA『極論を言えば、「根拠ある口相撲」的なゲームとなりますね。数字的な処理よりも、ロールプレイ的な提案でノリの良さを判定に採用していくシステム。例えば、「絶対無敵の暗殺者」という設定だから、相手を絶対殺せると主張するプレイヤーがいたらどうします?』

ヒノキ「寝言は寝て言え、と応じて、サイコロを振らせる」

NOVA『これがナラティブ系だと、「絶対無敵の暗殺者」という設定だったら、仕方ないな。相手は死んだ。ただし、その「絶対無敵の暗殺者」という能力は、今回のプレイでは2度と使えないから、そのつもりで……という感じの処理になります』

ヒノキ「それでボスキャラがいきなり瞬殺されたらどうするんじゃ?」

NOVA『そういうときはボスキャラに「鉄壁のボディガード」という特殊能力を仕込んでおいたり、「影武者」を用意したり、いろいろ対処する方法ありですね。とにかく、数字をいじくるのではなく、言葉をいじくってゲームするんです。「異性にモテる」という設定を持つキャラは、問答無用で異性にモテて情報収集に成功する。「博覧強記」という設定を持つキャラは、知識判定に必ず成功する。ただし、使用回数に制限があることでゲームバランスをとったりしますね』

ヒノキ「なるほど。いわゆるトーキョーN◎VAのカミワザや、アルシャードの加護みたいなものじゃな」

NOVA『D&D5版ではそういうナラティブな要素を、よりマイルドな形で取り入れていますね。それが有利不利の判定ルール。こちらでは、さすがに特徴があれば即座に絶対成功という風にはせずに、適切な特技なんかがあれば有利が得られて、判定ダイスを2回振って良い目を選べる。逆に不利な状況では判定ダイス2回の悪い方を選ぶというルールになりました。以降、有利不利で処理するゲームも時々見かけるようになり、何をもって有利不利を判断するかというガイドラインがシステムの特徴となっていたりします』

ヒノキ「例えば?」

NOVA『D&Dだと、《ダンジョン探検家》の特技を持っているキャラは、隠し扉の発見などに有利を得ることができます。特技によって有利を得るのは、単に技能を習得して判定ボーナスを上昇させるよりも扱う数字がシンプルになって、過去の版よりも裁定が速やかになるというメリットがありました。まあ、判定の前にプレイヤーが有利になる根拠を並べ立てて、GM側がその根拠をつぶす不利な理由を並べ立てたら、有利と不利の数を比べて、有利が勝てば有利に、不利が勝てば不利にという光景も、卓によってはあるようです。まあ、どれだけ有利を勝ち得ても、出目が悪ければ結局は失敗なんですが』

ヒノキ「で、一つの指輪も、その有利不利システムを採用している、と」

NOVA『得意な技能を使うと有利になりますし、そこに特徴を上手くロールプレイしたなら、高揚状態になって、希望ボーナス(1D6の技量ダイスを付与)を2倍することが可能』

ヒノキ「つまり、+2D6か。有利不利で判定ダイスを操作して、特徴のロールプレイで希望のボーナスダイスを増やす。それによって、行動の成功率を高めることができる、と」

NOVA『で、特徴ですが、ホビットの場合、[慇懃][鋭敏な視力][高潔][詮索好き][忠実][熱狂][朴訥][陽気]の中から2つを選んで、自分のキャラの特徴にできます』

ヒノキ「野伏じゃと?」

NOVA『[厳格][高潔][策士][素早い][誠実][長身][秘密主義][勇敢]から2つですね。そして、そこに召命から得られる特徴も加わる、と』

 

●統率者:指導力。〈鼓舞〉したり、〈説得〉したりする場面で高揚する。

●闘争者:仇敵知識。オーク、蜘蛛、邪悪な人、死霊、トロル、魔狼(ワーグ)の中から選択し、対象の相手の特性や長所、短所などを知ることができる。

●伝令者:民族知識。旅の途中で聞いた自由の民のさまざまな共同体の慣習や物語など、ある程度の知識を持っている。

●研究者:伝承の韻文。古代からの歴史を語り伝える伝承詩に詳しい。要は、歴史知識。

●探宝者:忍びの技。スリや鍵開け、盗みや隠密行動に際して高揚する。

●守護者:影の知識。中つ国に生息する邪悪なものの動向や策謀などに対する知識。

 

ヒノキ「なるほど。召命ごとの得意技の他に、知識系の特徴はそれだけで自分の知識関心を示すことができる、と」

NOVA『出身背景がキャラ設定の土台で、そこに個人的な動機づけの召命を足すことで、色付けするシステム。予想と違っていたのは、召命が職業みたいに重要度が比較的高くなく、フレーバー要素になっている点でしょうか。判定は、能力値と技能で数字が決まり、それ以外は有利不利や希望ダイスの付与でダイスそのものを操作するゲームになっています。さらに知識や交渉ごとの重要度が、肉体的な戦闘よりも重要なルールとなっている模様』

 

魔法と世界観について

 

NOVA『今回の基本ルールでは、魔法に関するルールが全くなくて、少し意外でした。プレイヤーキャラに魔法使いがいないということは分かっていましたが、ロアマスター向きに魔法のガイドラインぐらいはあると思っていたのに』

ヒノキ「リンドンのエルフは魔法を使わなくて、裂け谷のエルフの方が魔法をよく扱うとかではないかのう?」

NOVA『魔法使いについては、将来のサプリメントでフォローされるということですかね。まあ、一応、魔法の武具やマジックアイテムを作成するガイドラインはあったりするのですが、この世界でプレイヤーキャラが関与できる魔法は、道具絡みのようですね。〈隠密〉能力を補ってくれるマントとか、キャラ作成時に、魔法ほどではないけど、便利な機能を持ったアイテムを自由に作成できるようにもなっています。意外なのは、エルフがそういう道具を1つしか持ち歩かない点。この時代で裕福なのは、ドワーフとバルドの民で、彼らは便利アイテムを最初から3つ持ち歩いています。ホビットとブリー村人が2つで、エルフと野伏が質素な暮らしゆえ、役立つアイテムを1つしか持ちません』

ヒノキ「ドワーフやバルドの民が裕福なのは、やはりスマウグのお宝のおかげかのう?」

NOVA『ですね。「ホビットの冒険」では、彼らが困窮しているように描写されていましたが、それから20年経った後の時代背景ですから、離れ山のドワーフたちやバルドの王国は新たな隆盛を誇り、一部の者が交易商売のために霧降り山脈の西のエリアドールに出向いているという設定ですね。今回の世界観では、霧降り山脈の東はサポートされていないので、あくまで裂け谷に行くまでの物語対応です』

ヒノキ「裂け谷以前だと、『ホビットの冒険』ではトロールとの遭遇、『指輪物語』だとブリー村、および風見ヶ丘がメイン舞台か」

NOVA『映画では飛ばされましたが、古森や塚山丘陵も重要ですね。あと、リンドンとか青の山脈とか、サルバド周辺とか原作では主人公が通っていない場所(ホビット庄の西や南)もいっぱい設定されていて、そっちをメインに旅するだけでも、シナリオが作れそうです。というか、その辺の設定を昔、MERPは結構、掘り下げていて、例えば、サルバドは交易都市という設定も昔はあったりもしたのですが、その後、公式設定が変わって現在は廃墟と化しています。今回のゲーム設定では、「サルバドは今も完全に見捨てられたわけでなく、そこを根城に山賊が巣食っている」そうで、それだけでもシナリオソースになりますな』

ヒノキ「原作を元に、ゲーム独自の設定を追加していく余地がある、と」

NOVA『ボロミアはゴンドールからローハンを抜けて、サルバド付近を通って、裂け谷まで来たそうですからね。ボロミアが通った道をたどってみる冒険も楽しそうだ。ところで、原作といえば、一応、本作もガンダルフNPCとして設定されています』

ヒノキ「ほう。どんなデータじゃ?」

NOVA『特徴としては[狡猾][聡明][勇敢]を持っていますが、プレイヤーキャラみたいな能力値や技能は明示されていません。ただ、後援者(パトロン)としてプレイヤーキャラをサポートしてくれるルールがありますね。本ルールで後援者として設定されているのは、ガンダルフの他に、ビルボ、ドワーフバーリン、トム・ボンバディルに加えて、船造りのキーアダンと、ディールハエルの娘ギルラエンがいます』

ヒノキ「ギルラエン? 何者じゃ?」

NOVA『アラゴルンのお母さんですよ。野伏の前頭領アラソルンの未亡人で、今は基本的に裂け谷にいるのですが、時々は用事で野伏たちと共に短い旅に出ることもあるそうです。現在は息子のアラゴルンが南方に出向いて不在なので、彼女が族長代理として指示することもあるとか。[美貌][揺るぎなき信念][用心深い]の特徴を持ち、優れた予見者の才能も持っているので、プレイヤーキャラに情報をくれたり、荒野に詳しい野伏のネットワークを利用させてくれたり、将来はアラゴルンとのコネにもつながるであろう大事なパトロンになりますね』

ヒノキ「原作では、名前しか登場していないキャラと関われるのも、ゲームならではの楽しみと言えるのう」

NOVA『とにかく、原作を再現したり、原作の世界観をさらに広げてくれるルールブックだったので、またじっくり味わいながら読んでいきたいと思います』

(当記事 完)