ラストバトル
ついに、封じられた水門を開けて霧の街を脱出したマッスル太郎の一行。
しかし、シェス湖のほとりにて、巡回していた蛮族の部隊が立ちはだかる。
最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
ヒノキ「ということで、マッスル太郎主役の冒険譚も、これで終わりなのじゃ」
太郎(ゲンブ)「続編は予定されているものの、主役はリトルの魔神ハンターということなので、マッスル太郎メインの話という意味では、本当にこれが最後でござるな」
ヒノキ「敵は7レベルのリザードマンマリーナが3体。いずれも剣のかけら入りのボス扱いじゃ。それに対するのは、マッスル太郎の他に前衛壁役として、エルラーンと執事バトラー、そして後衛に配置された魔法使いサンドリーヌということになる。配置は以下の通りじゃ」
敵前衛 リズA(89) リズB(89) リズC(89)
味方前衛 バト《3》 太郎 (47) エル《3》
味方後衛 サンドリーヌ(HP58、MP48)
太郎「ちょっと待った。バトラー殿とエルラーン卿が前衛で戦ってくれるのはいいが、HPがたったの3点とはどういうことでござるか?」
ヒノキ「ああ。彼らの場合は、HPではなく、相手の攻撃を3回まで受け止めてくれるガードポイント(GP)ということじゃ。敵の攻撃に際して1Dを振り、半々の確率(出目1〜3)で1点ダメージを受けて、GPが0になると名誉の戦死を遂げる。彼らが死ぬ前にマッスル太郎が3体のリザードマンを倒せるかどうかが、勝負どころとなろう」
太郎「ええと、それって助っ人というよりも足手まといではござらんか」
ヒノキ「まあ、ここまで来ると、マッスル太郎には相手の攻撃がなかなか命中しないため、生き残るのは容易だと考える。ダラダラ相手のHPを削って、時間を掛ければ勝てるという単調なバトルにしかならぬじゃろう。それでは、最終戦として、あまりにもつまらん。ゆえに、マッスル太郎は自分だけでなく、仲間の身を守って戦うヒーローとしての活躍を示してもらいたいのじゃ」
太郎「つまり、さっさと自分の目前の敵を倒して、傷ついた仲間の援護をしないといけないのでござるな」
ヒノキ「そうじゃ。なお、執事もエルラーンも、防戦一方で相手にダメージを負わせることはできん。ダメージソースは、マッスル太郎と、サンドリーヌの魔法のみとなる。ところで、サンドリーヌの使える魔法を以前、6レベルソーサラーと言ったが、データをよく見ると5レベルソーサラーじゃった。ラミアが6レベルモンスターなので、勘違いをしてしまったのじゃ。今ここで修正をしておく。なお、5レベルのコンジャラーでもある」
太郎「魔法関連の戦闘特技は何を持っているでござるか?」
ヒノキ「……何もないのう」
太郎「つまり、後衛から攻撃魔法を放っても、ヒューリカと同じで誤射の可能性があるでござるな。おまけに、範囲魔法を撃っても前衛を巻き込むし、せっかくの攻撃魔法が宝の持ち腐れではないか」
ヒノキ「仕方ないじゃろう。彼女は冒険者ではないし、習得した魔法も貴族のたしなみ程度、ほんの趣味でしかなかったのだろうから」
太郎「まあいい。最初に先制をとって、全員後衛でスタート。そして、サンドリーヌの範囲魔法ライトニングである程度、巻き込んだ後は、支援に徹してもらう。回復魔法【アースヒール】で執事やエルラーン卿を回復はできるのだろうか?」
ヒノキ「できるものとする。【アースヒール】1回で、削られたGPが1点回復するということで」
太郎「それを聞いて安心した。ならば、私とサンドリーヌが【アースヒール】を使っている限り、前衛2人が戦死する可能性はほぼないでござるな。MP切れとか、発動判定がピンゾロで失敗しない限り」
ヒノキ「むっ、確かにのう。まあ、わらわとて、別に彼らを本気で殺したいわけではないゆえ、ゲームバランスが甘めなのは仕方ない。【アースヒール】のGP回復量を0.5点に下げて……ということも今、考えたが、処理が面倒になるわけじゃからな」
太郎「とにかく、魔物知識判定と先制判定を行う。前者は13で、後者は18」
ヒノキ「どちらも成功したようじゃな」
太郎「ならば、〈狩人の目〉効果で命中+1、それから後衛スタートして、【ライトニング】と《ファストアクション》4回蹴りで確実に1体を落とすでござる」
ヒノキ「では、バトル開始じゃ」
怒涛の先制攻撃(1ラウンドめ)
ヒノキ「サンドリーヌのダイスは、お主が振っていいぞ」
太郎「では、リザードマンBに向けて【ライトニング】。魔力9に出目6で15でござる」
ヒノキ「リザードマンマリーナの精神抵抗は17なので抵抗された。Aは巻き込まれず、Cは巻き込まれたので、ダメージは2回どうぞ」
太郎「ならば、Bに15点と、Cに12点」
ヒノキ「それぞれ半減して、8点と6点ダメージじゃな」
太郎「では、後衛から前衛に突撃して、マッスルベアー、ガゼルフット、キャッツアイの3つを使い、命中13、回避14、追加ダメージ15。移動したので補助魔法は使えないのでござったな。ともあれ、リザードマンBに対して、4回蹴りを入れるでござる。相手の回避が16ならば、4以上で当たるでござるな。全て命中して、ダメージは24点、22点、19点、最後にクリティカルして31点!」
ヒノキ「防護点8点ずつ減らして、合計64点をくらった。残りHPは10点じゃ」
太郎「クリティカルでも仕留めきれなかったか」
ヒノキ「では、こちらの反撃じゃ。命中は17なのじゃが、リザードマンマリーナは特殊能力『連携』を持っていて、仲間の数に応じて命中にボーナスが入る仕様じゃ。よって仲間2体で+2されて、命中19を避けるがいい」
太郎「回避ダイスは……4だと? 達成値18で当てられてしまったでござるよ」
ヒノキ「ヒヒヒ。ダメージは12点じゃ」
太郎「防護点は3なので、9点くらったでござる」
ヒノキ「続いて、執事は避けて、エルラーンはくらった。これで1ラウンドめは終了じゃ」
敵前衛 リズA(89) リズB(10) リズC(83)
味方前衛 バト《3》 太郎 (38) エル《2》
味方後衛 サンドリーヌ(HP58、MP41)
サンドリーヌの機転(2ラウンドめ)
太郎「サンドリーヌが《ターゲッティング》持ちなら、リザードマンBを仕留めてもらうのでござるが、自分で仕留めるでござるよ。一応、エンチャントでダメージ+1しておいて、練技【リカバリィ】で9点ダメージを回復。これで残りMPは7点。そして、蹴りの2連発で、20点と24点」
ヒノキ「Bは倒された」
太郎「サンドリーヌには何の魔法を使ってもらおうかと考えたが、5レベル真語魔法に【ウエポン・マスター】というのがあって、これは対象に一時的に戦闘特技を与えるのでござるな。その中には《ターゲッティング》もあって、これを自分に使えば、次のラウンドから攻撃魔法を誤射なしに当てることができるのではござらんか」
ヒノキ「おお、そういうものがあったとは」
太郎「2.0時代からあった魔法でござるが、その時は武器攻撃のみで、魔法攻撃を誤射なしで当てられる《魔法誘導》は習得対象外だった。2.5になって飛び道具を誤射なしに当てられる《精密射撃》と《魔法誘導》が一つに統合されて《ターゲッティング》となったために、【ウエポン・マスター】でも習得可になった。これで、サンドリーヌにも後方から攻撃魔法で援護してもらうことができるようになったでござるよ」
ヒノキ「むむむ、前回それに気付いておれば、ヒューリカにも使わせていたものを」
太郎「私は普段、真語魔法のデータを見ないために、たまたま今、サンドリーヌに何をさせようか、じっくりルールブックを読んでいたら、思いがけない発見をした気分でござるよ。これで、《ターゲッティング》を持たない真語魔法使いも、5レベルまで上げれば活躍できよう」
ヒノキ「ともあれ、敵の反撃じゃ。リザードマンマリーナは仲間想いなので、仲間が倒されると特殊能力『憤怒』によって1ラウンド間、ダメージが+2される仕様なのじゃが、これをエルラーン卿にぶつけても構わないじゃろうか」
太郎「そうすると、エルラーン卿どころかバトラーさんも一撃死してしまうでござるよ」
ヒノキ「むむ、確かにのう。ならば、NPCに『憤怒』をぶつけることはやめにして、マッスル太郎を狙う可能性にしておこうか。ええと、1〜2が出ればダメージなし。3〜4が出ればNPCにダメージを与え、5〜6が出ればマッスル太郎に狙いを変えるということにしよう」
太郎「まあ、NPCが狙われるよりも、自分が狙われる方が回避しやすいので、その方がいいでござる」
ヒノキ「では、リザードマンAは(コロコロ)2。仲間の死に気づかず、バトラーさんを狙ったものの、素早く避けられる」
バトラー(ゲンブ)『ホホホ、そのような大振りでは、私に当てることなど無理でございますよ。鍛え方が足りませんなあ』
リザードマンA(ヒノキ)『こいつ、思ったよりできる!』
ヒノキ「一方のリザードマンCは(コロコロ)4。仲間の死に気づかず、エルラーン卿を攻撃して、さらにダメージ」
太郎「エルラーン卿!」
敵前衛 リズA(89) リズC(83)
味方前衛 バト《3》 太郎 (47) エル《1》
味方後衛 サンドリーヌ(HP58、MP36)
仲間を守るために(3ラウンドめ)
太郎「エルラーン卿に死なれては大変なので、リザードマンCの相手は私が引き受けよう。今のうちに撤退するでござる」
エルラーン『かたじけない。後退する』
太郎「これがD&Dならば、離脱時に機会攻撃が発生するところだが、ソード・ワールドならば『乱戦エリアからの離脱』を宣言すれば、妨害なく抜け出せるでござるな」
ヒノキ「相手が離脱を邪魔する特殊能力を持っていない限りはの。今回は、マッスル太郎がカバーに回ってくれたので、問題なく離脱できたとしよう」
太郎「では、Cに攻撃するでござる。しかし、一回外して、もう一発で26点ダメージ」
ヒノキ「18点くらって、残り65点じゃ」
太郎「サンドリーヌに【リープスラッシュ】を使わせる。抵抗は破れず、ダメージは15点」
ヒノキ「半減して8点くらって、残りHP57点」
太郎「MP7点消費で、8点しか与えられんのは効率が悪いでござるなあ。次からはMP節約も考慮に入れたい」
ヒノキ「では、Aの攻撃じゃが、6。どうやらマッスル太郎に狙いを絞ってきたようじゃのう。AとCは連携攻撃で、それぞれが命中18と言って太郎を仕留めに掛かろうとする」
太郎「回避はどちらも成功。バトラーさんも撤退して大丈夫でござるよ」
バトラー『では、お言葉に甘えて、下がらせてもらいます。戦いが終わった後は、MP回復のハーブティーなどご用意させてもらいましょう』
太郎「では、ティータイムを楽しみに、目前の敵を打ち倒すとしよう」
敵前衛 リズA(89) リズC(57)
味方前衛 マッスル太郎 (47)
味方後衛 サンドリーヌ(HP58、MP29)
衝撃の鎧貫き50点(4ラウンドめ)
太郎「サンドリーヌには、【ウエポン・マスター】で私に戦闘特技の《鎧貫き》を付与してもらうとしよう。これで、相手の防護点を半減させられるでござる。実質ダメージが4点増えるのと同じ。発動判定は……うまく成功して、マッスル太郎の脳裏に敵の装甲の弱いところがイメージできるようになった」
ヒノキ「一応、《鎧貫き》が有効なのは、2回攻撃の1回のみと言っておこう」
太郎「さすがに2回攻撃で1ラウンドにダメージ合計が8点増えるということにはならないでござるな。それでも《鎧貫き》宣言して(コロコロ)プッ、ピンゾロでござる。この期に及んで経験点50点を稼いでしまうとは。2撃めは普通に当たって22点」
ヒノキ「14点くらって、残りHPは43点」
太郎「回避はどちらも成功でござる」
敵前衛 リズA(89) リズC(43)
味方前衛 マッスル太郎 (47)
味方後衛 サンドリーヌ(HP58、MP24)
炎のマッスルキック(5ラウンドめ)
太郎「少しでもダメージを高めるために、今ラウンドではサンドリーヌに【ファイア・ウエポン】を使ってもらう。エンチャントはダメージ+1でござったが、こちらはダメージ+2。つまり、追加ダメージが1点上昇して17点に。そして、鎧貫き宣言して命中。ダメージは23点」
ヒノキ「防護点は4点だけなので、19点くらった」
太郎「さらに、もう一撃は普通に炎蹴り。命中してダメージは26点」
ヒノキ「8点減らして、18点。合計37点くらって残りHPは6点じゃ」
太郎「次にサンドリーヌにとどめを刺してもらえそうでござるな。敵の反撃はどちらも避けた」
敵前衛 リズA(89) リズC(6)
味方前衛 マッスル太郎 (47)
味方後衛 サンドリーヌ(HP58、MP20)
ラスト1体の攻防(6ラウンドめ)
太郎「サンドリーヌにはリザードマンCに【リープスラッシュ】を使ってもらう。達成値は15で抵抗は打ち破れず、ダメージは15点」
ヒノキ「半減して8点くらったので、Cは死んだ」
太郎「残り1体でござるな。鎧貫き分は命中して、ダメージは23点」
ヒノキ「19点くらった」
太郎「さらに追撃して、ファイヤーキック。25点」
ヒノキ「17点で、合計36点。残りHPは53点じゃ」
太郎「あと2ラウンドといったところか。敵の攻撃はかわした」
敵前衛 リザードマンA(53)
味方前衛 マッスル太郎 (47)
味方後衛 サンドリーヌ(HP58、MP13)
Aと太郎の決着(7〜8ラウンドめ)
太郎「今回は私から。鎧貫きで、またピンゾロだと? どうも、鎧貫きとダイスの出目の相性がよろしくないでござる。2撃めもダイス目3で外したでござる」
サンドリーヌ『マッスル太郎さん、しっかりして下さい』
太郎「背後からの応援の声に気を取り直して、回避は成功。続いて8ラウンドめ。今度の鎧貫きは当てて26点」
ヒノキ「22点くらった」
太郎「追撃ファイヤーキック、27点」
ヒノキ「19点で合計41点くらって、残り12点じゃな」
太郎「サンドリーヌの魔法が相手の抵抗を破れば、とどめを刺せるでござるな。ダイス目9以上に挑戦してみよう。(コロコロ)惜しい、8」
ヒノキ「同値抵抗じゃの」
太郎「では、ダメージは15点」
ヒノキ「8点くらって残りHP4点じゃ」
太郎「さて、相手の命中17でござるが、よく考えると私は近接攻撃に対して、《カウンター》が使えるのであった」
ヒノキ「もっと早く思い出すべきじゃったな」
太郎「まったくでござる。命中判定の基準値は13なので、出目5以上でカウンターキックが炸裂。(コロコロ)ここで命中クリティカルで、ダメージは21点」
ヒノキ「ラストバトル終了じゃ」
太郎「カウンターを失念していなければ、もう2ラウンド早く終わっていたかもしれん。仲間のことを意識するあまり、自分の技を忘れてしまうとは」
ヒノキ「まあ、慣れない集団戦闘じゃったからな。それでも、終わり良ければ全てよしじゃよ」
エンディング
最後の戦いを終えて数日後、マッスル太郎の一行は無事にカシュカーンの街に到着した。
蛮族に囚われて死んだと思われていたエルラーン・ドゥルマイユ卿の生還は、驚きをもって迎えられ、最初は「人に化ける蛮族のオーガ」の疑いも持たれたが、エルラーンをよく知る姫将軍マグダレーナ・イエイツが保証人となることで、一行の身は安泰となる。
マッスル太郎は、珍しいお笑い芸人ルーンフォークとして、その気さくで陽気な人柄が注目を浴びたが、霧の街の情報をマグダレーナにいろいろと提供した後、ふらりと姿を消すこととなった。
人々は、マッスル太郎の行方をいぶかしんだが、「故郷に帰ったのだろう」「平和な暮らしに飽き足らず、刺激を求めて気ままな冒険者稼業を続けているのではないか」あるいは「マグダレーナの依頼により、密偵として再び霧の街に潜入したらしい」などの噂が飛び交い、程なく彼の話は皆の口の端に上らなくなって行った。
そんな変わり者のルーンフォークが、魔神ハンターの物語と合わせて、改めて語られるようになるのは、しばらく後のことである。
(『マッスル太郎の霧街冒険譚』これにて終了。次は、経験点と資金の事後清算および『魔神ハンターの霧墓冒険譚』の準備編に移る予定)