前置き必殺話
晶華「ねえねえ、NOVAちゃん」
NOVA「何だ? 俺としては、さっさとクライマックス戦闘を書きたくて、うずうずしているんだが」
晶華「どうして、前回は必殺まみれだったのよ? ここにゴブリンスレイヤーのTRPGリプレイを期待して読んでくれた読者さんが、過剰な必殺推しで引いてしまったりしないかしら」
NOVA「ああ、その可能性はあるかもしれないな。だが、当ブログのゴブスレリプレイは最初から必殺シリーズとのコラボで書いているのは、うちの読者なら周知の事実のはず」
晶華「え、そうだっけ?」
NOVA「これが、ゴブスレ妄想リプレイの第一回だ」
晶華「ええと、シンカリオンとか電王とコラボしているのは一目瞭然だけど、どこに必殺?」
NOVA「サブタイトルを見ろよ。『集まりて候』だろうが。これは必殺シリーズ第4弾『暗闇仕留人』の第一話なんだよ」
晶華「暗闇仕留人? 必殺って付いていないじゃない」
NOVA「それでも必殺シリーズなんだよ。中村主水が出ているし。それと第3弾の『助け人走る』も必殺付いていないけど、必殺シリーズだというのは、シリーズファンなら常識だ。ゲスト出演だけど、第12話の『同心大疑惑』の回で中村主水が出ているし」
晶華「何で、必殺が付いていないの?」
NOVA「それには複雑な事情があって、シリーズ2作目の仕置人の放映時期に『必殺に影響されて殺人事件があったというデマ』をメディアが吹聴したらしい。それでタイトルを自粛したようなんだな。助け人も当初は、『殺しではなく人助けが目的のチーム』という売り文句だったんだが、回が進むにつれてハードな様相を呈していく。24話の『悲痛大解散』はシリーズ初の殉職者が出て、それまでの比較的明るい作風が一気にドーンと落ち込んで、しかし、それでもハードな状況で物語は続いていく。
「本当の最終回は36話の『解散大始末』で、この回でも宮内洋さん演じる龍が、仲間を助けるために殉職する形で終わる。まあ、宮内さんのことだから、『刀で斬られた後、水落ちしただけじゃあ死なない』と俺は思ったけどな。後の作品でひょっこり『実は生きていた島帰りの龍がゲスト出演するんじゃないかな』と期待もしたんだが、いまだに実現せず」
晶華「って、期待も何も、NOVAちゃんが必殺を初めて見たのは、83年の仕事人IIIからでしょう? 助け人って何年の作品よ?」
NOVA「質問の多い奴だなあ。まあ、話が弾んで深まる質問だからOKだけど。助け人は73年だから、俺が2歳の時だなあ。ちょうど、今のお前と同じ年の頃だ。当然、精霊少女じゃない人間の俺は物心ついていないので、リアルタイムじゃ見ていない。再放送で見ただけだが、この宮内さん大暴れの最終回を見たときの感想は、
『橋から敵を抱えて転落した龍。その時、遠くから赤い改造車が爆音上げて走ってくる。そして、赤いスーツを着た謎のヒーローが鞭を武器に大立ち回りして、復讐の風、熱い風、追って追って追いつめるような展開』
が脳裏に浮かんだんだよ」
晶華「……もう、それって番組が違うし。『快傑 助け人Z』という別の作品だと思う。島帰りの助け人が、さすらいの私立探偵に転職するようなものね」
NOVA「まあ、リアルタイムじゃ絶対に出て来ない感想だな。73年だったら、まだ仮面ライダーV3の時代だが、厳密にはV3の終了後すぐに島帰りの龍が助け人チームに合流する形だ。つまり、ライダーマンに4号の称号を与えて、その後、デストロンを壊滅させた風見史郎が時空転移に巻き込まれて、気がつけば島帰りの男になって、そこから元の時代に戻る手掛かりを探しながら、助け人の助っ人として参加する。その後、かつてのライダーマンのように、自分の身を犠牲にして誰かを救うフラグを立てたおかげで、橋から落ちた後、元の世界線に戻れたわけだ。すると、後輩のXライダーが悪の組織GODと戦っていたので、またもや助っ人に入ったって話の流れなんだな」
晶華「宮内さんの話はもういいから」
NOVA「そうか? だったら、同じ竜の組紐屋さんの話か、同じライダー俳優の花屋さん(後に鍛冶屋さん)の話にするか?」
晶華「いいえ。NOVAちゃんの今のお仕事は、ゴブリンスレイヤーの記事書きに専念することよ。必殺コラボまでは許してあげるから、それ以上の脱線迷走は自粛するように」
NOVA「シクシク」
予言者来臨
ジャン(NOVA)「ぼくたちは闇の仕置人だ。おまえたちゴブリンは話しても分からないんだったな。だったら、やむを得ない。問答無用だ。殺された女の恨み、痛みをもって知るがいい。南無阿弥陀仏」
GMアスト「『威勢がいい只人だな。まあ、待て』と、ゴブリンシャーマンが人の言葉で言うぞ」
ジャン「待てだって? ゴブリンシャーマンが喋った?」
Gシャーマン(GMアスト)『我が神、覚知神のおかげで知恵を得た。お前もどうやら、覚知神の声を聞きし者らしいが、ならば我らは同志。ともに、この世界の新たな未来を築こうではないか』
ジャン「ちょっと待て。ぼくは覚知神じゃなくて、知識神に仕える者だ。お前たちと一緒にするな」
Gシャーマン『しかし、闇の仕置人なのだろう? 光ではなく、闇に仕えるのではないのか?』
ジャン「そ、そいつはただの言葉の綾だ。とにかく、今は時間がない。のんびり、お前と話している場合じゃないんだ。何しろ、この大広間に入る前に掛けた支援魔法の持続時間は6ラウンド(180秒)。それまでに決着を付けたいんだから、敵キャラとの会話で時間を潰すわけにはいかない。さあ、さっさとバトルに入って、細かい情報公開はそれからだ」
Gシャーマン『時間を気にしているのか。ならば、ここからの会話シーンの間は、ゲーム的な時間経過を伴わない形で裁定しよう』
ジャン「何だと? 時間を操る? お前、ただのゴブリンシャーマンじゃないな。正体を現わせ」
Gシャーマン『もちろん、今のわしはゴブリンシャーマンではない。覚知神、いや、このシナリオのブラックボックスに仕込まれたノヴァストラダマスの意思のようなもの、とでも言えばいいのか』
丸子(ヒノキ)「ノヴァストラダマスじゃと?」
アカミドリ(晶華)「誰それ? 私、知らない」
Gシャーマン 改め ノヴァストラダマス『知らないって、忘れるなよ。花粉症ガール2号』
アカミドリ「花粉症ガール? いいえ、今の私は赤い翠星ことアカミドリ。半森人の精霊使いよ。そんな私にとっては、ノヴァストラダマスなんて知るわけないじゃない。今まで、ゴブスレの物語には出て来なかったんだから」
ノヴァストラダマス『ああ、そういうロールプレイは今はいいから。ここからの会話は、ゲームじゃない。少なくとも、原作者が用意したゴブスレシナリオの話ではな。戦闘なら、後でやればいいから、今はわしの話を聞け』
NOVA「だったら、次の小見出しまで、しばしゲームは中断して、俺の方もお前に聞きたいことがある。翔花はどこだ?」
ノヴァストラダマス『わしにも分からん。我が目的、珠保時代の復活のためには、是非ともあの娘の持つJUHOの魂が必要なんだが』
NOVA「JUHOの魂だと? そいつをお前が手に入れるとどうなる?」
ノヴァスト(以下略)『もちろん、珠保時代が蘇り、令和が書き換わる』
ヒノキ「そんなことを、わらわたちが認めると思うか?」
晶華「あんたなんかにお姉ちゃんは絶対に渡さないんだから」
ゲンブ「小難しい話はよく分からんが、今の時代の平和をお主が崩すと言うのなら、我らの敵でござる」
ノヴァスト『今の令和が平和だと思うのか? 今のままだと確実に世界は滅ぶぞ。戦争か、ウィルスの流行か、天災かは分からぬが、のんびり手をこまねいている場合ではない。予言者のわしだから言うのだ。世界は崩壊する、と』
NOVA「そういう人心の煽り方をする奴は、どうも気に入らないな。今の時代は末法だからどうこうとか、救世主がどうこうとか、創作のネタならば歓迎するが、現実に持ち込んで『だから、我が神の教えが救ってみせる。信じたまえ』って高説を唱える輩は、どうもなあ。神に救う力があるなら、是非ともお願いします、と頭を下げてもいいが、そのためにこちらの日常生活を犠牲にして信仰活動に邁進するように、と説教垂れるような態度は性に合わねえ。
「宗教は文化を生み出すし、教義を勉強するのは興味が湧くが、生活の全てをそこに委ねるのを求めてくるのは勘弁してくれって思う。俺には俺のしたいことがあって、そこには多様性とか自由とか、呪縛からの解放とか、そういう自分らしさを追求できる世界が必要なんだ。奉仕の精神を求めるのはいいが、そいつを過剰に強要して来る奴とは相容れない。俺の為すべきことは、俺が決める。そいつは、他人を縛ることじゃねえ」
ノヴァスト『見上げた心意気……と言えようが、世界崩壊の危機に際しては、個人の信念など無力かつ無意味だ。今のまま、翔花を野放しにするのは、確実に世界が滅ぶ元凶になると知れ』
NOVA「NOVAが翔花を野放しだと? そいつはダジャレか?」
晶華「NOVAと野放しを掛けた高度なギャグのようですね。はい、或人じゃないと〜」
ノヴァスト『……ギャグを解説して、オチをつける。これが令和の象徴というものか。……わしにはちっとも笑えん』
NOVA「つまり、『野放し、NOVAなしの翔花』だと、暴走して世界を崩壊させかねないと言うことだな」
ノヴァスト『そうだ、珠保時代のようにな』
NOVA「俺は別に翔花を野放しにしたつもりはないぜ。屋久島修行から帰ったら、きちんとアシスタントガールとして自制心と周囲と折り合う心を教えようと思っていたんだ。そう、今の晶華みたいにな。翔花を俺から引き離して『NOVAなし』にしたのは、全部お前が余計な干渉をしてきたからじゃないか。そいつは許さん」
ノヴァスト『許しを乞うつもりはない。お前の代わりに、わしが責任を持って翔花を導くつもりだからな』
NOVA「導くとか、偉そうなことを言っているんじゃねえ。親は子どもと一緒に育っていくものなんだよ。子どもに諭されることだってあるんだし、お前一人で世界を救えるとか寝言をほざいているんじゃねえ。本当に世界を救いたいんだったら、他の世界を滅ぼすとか、自分に従う者だけを選別するとか、尻の小さいことを言ってないと、あらゆる多元宇宙、自分とは相容れない存在にも生きる場はあるとか、もっと寛大で豊かな心を持って、あらゆる世界を足元から支えるぐらいの慎ましやかさを持ちやがれ」
ノヴァスト『何を偉そうにほざくか』
NOVA「偉そうなのはお互い様だ。どっちもNOVAなんだからな。だが、俺とお前に決定的な差が一つある」
ノヴァスト『何だ、それは?』
NOVA「俺は今を楽しもうと、常に努力しているんだよ。もちろん、世の中、楽しいことばかりじゃないさ。泣きたくなるようなこともしょっちゅうだ。そういう感情を押し殺して生きていたこともあるが、今の俺は笑いたいときに笑うし、泣きたいときに泣く。自己の感情には忠実に、ありのままに生きるようにしている。できるだけな。
「そして、世界の全てを救うなんて、大言壮語は口にしない。俺はそんな器じゃないし、そんなことは俺のやりたい仕事でもない。俺のやりたい仕事は、俺のいる幸せな世界を守り、築き、高め、そのハッピーを共有できる相手とともに楽しい居場所を示すことだけだ。俺と共に楽しめる、そういう小世界を見せながら、日々を生きる。これが俺の道だ」
ノヴァスト『小さい。何と小さい男だ、令和NOVAというのは。だったら、お前の楽しさを解さない人々はどうするんだ?』
NOVA「そんなの俺が知るか。そいつらはそいつらで、別の楽しい世界を自由に作ればいいじゃないか。それが多様性ってものだろう。他人を応援するのはいい。だが、他人に救ってもらおうと際限なくすがって来るような、それでいて自らは人を楽しませるような想い、親和性、自立心に欠ける輩は、俺の世界にはいらない。排除するだけだ」
ノヴァスト『お前は、多様性を重んじるのではなかったのか?』
NOVA「勘違いするなよ。多様性ってのは、一つの大きな世界で掲げるお題目じゃないんだ。『皆さん、多様性は大事です。だから、何もかも優しく受け入れましょう。調和が全てですよ。多様性の考えに従わない者は敵です。そういう人間になってはいけません』 こういうのは決して多様性じゃない」
ノヴァスト『だったら、どういうのが多様性なんだ?』
NOVA「多様性ってのは、それぞれの生き方、思想を持った小世界が乱立しながら、それでいて互いを排除せずに適切な距離感を保ったまま、ある時は繋がり、ある時は敬して遠ざけ、一定の理解だけは示していく世界だ。そして、世界全体の中で、自分の役割を見出して、そこで自己充実を図るのはいいが、他人に自分の主張を無理やり受け入れさせようとして、『多様性を大事にするなら、オレの趣味や考え全てを受け入れて当然だ』などといった主張を押し付けるのは、間違っている。多様性というのは、別に玉石混淆、全ての価値は等質のもので同様の敬意を持って遇されるべき、という価値相対主義な考え方ではないからな」
ノヴァスト『何が言いたいのか、さっぱり分からん』
晶華「私は分かったわ」
NOVA「おお、さすがだ、晶華。この自意識に凝り固まった愚かな予言者にも分かるように説明してやってくれ」
晶華「要するに、多様性ってのは『みんな違って、みんないい』ってことよね。その良い部分は認めていいんだけど、『世間では評価されているけど、やっぱり自分には合わないし、好きになれない』って人もいるよね」
NOVA「いわゆる天邪鬼とか、逆張り君とか、他人と違う考えを持った自分が格好いいと思ってる輩だな」
晶華「NOVAちゃんだって、そういうところがあるよね」
NOVA「大いにあるさ。そこは認める。というか、『世間一般ではこう言われている。確かにそうかもしれない。だがしかし、こういう考え方もできないだろうか。私の考えは世間の流れを理解しつつも、その一歩先を目指すわけで、アウフヘーベンしてみよう』ってことを論じるわけだな。
「まあ、本人の中で内省してそこまでの結論が出ているなら、主張する価値もあるのだろうが、アウフヘーベンに至らない形で、単に現状否定することを以って批判精神と思い込むと、まあ良くても大学の教養課程止まりと言おうか。優れた論文は『現状理解→ツッコミ的な問題提起→現状との意見の融和や今後の展望』まで漕ぎ着ける必要がある」
晶華「論文の書き方はどうでもいいけど。私は論文なんて書かないし。私が書きたいのは感想文。『面白いものを見て、ここが面白い』と言って、周りからもそうだね、と言ってもらえると幸せになれると思うのよ」
NOVA「で、場にいる一人一人が『自分はここが好きだな』とか『これもいいよね』とか、それぞれの言い分を否定せずに、皆が好きの披露をし合っている間は、大きなトラブルもないんだが、たまに『誰かの好きを否定して、自説をまくし立てる』輩が出ると、感想会が台無しになるわけだ」
ノヴァスト『しかし、そういう意見をも受け入れるのが多様性というものではないか』
NOVA「違う。新入りが既に出来上がっている社会を『攻撃的に否定して、自分たちの価値観を受け入れろ』と迫るのは、多様性ではなくて、ただの侵略行為だ。多様性云々を言いたいなら、『まず既存の価値観を受け入れつつ、その上で自分の価値観を付け加える』姿勢を示す必要がある」
晶華「誰かの意見に対して、『おお、そうだな。それにこれもいいよ』って言うのと、『いや、違う。いいのはこれだ』と言うのでは、前者の方の好感度が上がりやすいってことね」
NOVA「まあ、『いいのはこれだ』と持ち上げたものが本当に素晴らしく良いもので、それまでに出た意見の全てを凌駕するトップレベルの主張なら、『なるほど』と受け入れられるんだろうけど(フィクションの過剰演出でしばしば描かれがち)、実際のところは『周りの意見を否定してまで持ち上げるほど、大したものじゃない』ということが多く、主張当人の思い込みに反して、一気に周囲の評価が下落することになる。持ち上げられた作品やキャラにとっては、いい迷惑だ」
ヒノキ「つまり、これは一体、何の話なのじゃ?」
NOVA「俺とノヴァストラダマスの哲学戦闘になってますな」
ヒノキ「今はゴブスレのゲーム中なのに、そんなややこしいことは他所でやれ」
NOVA「だそうだぞ、ノヴァスト。お前のややこしい主張は、この場では求められていない。さっさと結論を出す頃合いだ」
ノヴァスト『わしを追い出すと言うのか?』
NOVA「つまらない話にのめり込まず、他人を巻き込まず、さっさと自分で結論を出して、場の平和を守れと言ってるんだ。世界の平和云々を言っている奴が、目の前の場の平和を脅かしてどうする?」
ノヴァスト『おのれ、令和NOVA。このわしの高邁な思想を理解しようとせず、慈悲深き心による啓蒙を受け付けない愚痴蒙昧な輩よ。汝の如き大うつけ者に対話を試みたのが間違っていたわ。こうなれば、力を以って思い知らせてくれようぞ』
NOVA「晶華、何て言ったか分かるか?」
晶華「ええと、『ぼくが折角いいことを言っているのに、聞いてくれないなんて、バカバカバカ。もういい。こんな奴ら、みんな死んじゃえ』って感じ?」
NOVA「見事な意訳だ。だけど、対話よりも力で決着をつけるというのは、ゲーマー的には元より望むところ。ここからゲームの再開だ。読者もそう望んでいるはず」
ヒノキ「わらわもな。それにしても、新兄さんが悪霊化したら、こんな面倒くさいキャラになるんじゃなあ」
NOVA「実のところ、否定したくてもできない俺がいます。人生一歩間違えたら、俺もノヴァストみたいな奴になっていたと思うと、恥ずかしくていたたまれません」
ヒノキ「いやいや、新兄さんにはいてもらわなければ困る。自分の悪霊退治の責任はとってもらわねばな」
再開大決戦
晶華「ところで、NOVAちゃん。アストは今、どうなっているの? さっきからノヴァストラダマス状態なんだけど」
NOVA「そう言えば、そうだな。おおい、アスト〜、元気かあ?」
GMノヴァスト『フフフ。その者の魂は、わしの使う2つの6面ダイスに封じた。このシナリオを終わらせるまで、元には戻せないものと思え』
NOVA「何だと? ええい、まるで遊戯王か、ジョジョのスタンド使いのようなマネを」
晶華「アストを人質にとるなんて。NOVAちゃん、まさか見殺しにするなんて言わないよね」
NOVA「そうだな。ちょっと前の俺なら、アストに人質の価値などないと思っていた。だが、前回、あいつなりに一生懸命GMをする姿を見て、考え直したんだ。ヒノキ姐さん、覚えているか? あいつがシナリオに書いていないプレイヤーの行動に対して、うまくアドリブで対応して、スムーズにマスタリングしてみせたことを」
ヒノキ「おお、確かに、丸子を何人のゴブリンが追いかけるか、2d6で決めるように指示しおったな」
NOVA「そう。ルールに書いていないことを、とっさのアドリブで円滑に処理する機転。これは試作品のASTROスペックのような機械じゃ対応できないはずなんだ。つまり、あの瞬間のアストは機械に頼らずに、自分の判断力でGMをしていたんだよ。これは貴重な人材だ。今後、俺たちのためにゴブリンスレイヤーTRPGのGMをしてくれるはずの男を、こんなところで失うわけにはいかない。俺はアストを悪霊の手から取り返したい」
GMノヴァスト『ほう。では、その言葉を聞いて、アストがどう思ったか試しにダイスを振ってみようか。(コロコロ)9か』
ゲンブ「うむ。新星どのの想いは通じているようでござるな」
晶華「アスト、必ず助けるからね」
GMノヴァスト『(コロコロ)11だ。なかなか正直なダイス目と見た。では、茶番は終わるとしよう。これより本気のバトルと行くぞ。お前たちの前に、ホブゴブリンとゴブリンシャーマンがいる。ホブゴブリンの傍らには2体の無傷のゴブリンと火傷したゴブリン1体(生命点2)がいて、それぞれが支援効果を与えている。つまり、攻撃の命中と威力と装甲に合計3点分のボーナスだ』
ゲンブ「なかなか強敵でござる」
GMノヴァスト『一方、ゴブリンシャーマンの周りには、火傷ゴブリン4体が群がっていて、それぞれが生命点1、1、2、5となっている。生命点5のゴブリンは一人の只人の少女に毒に濡れた短刀を突きつけて、下卑た笑みを浮かべている。そして、ゴブリンシャーマンはお前たちにこう言ってのけた』
ゴブリンシャーマン『我が神、覚知神の威光に逆らう愚か者め。おとなしく武器を捨てろ。わしが一言命令すれば、この娘の命はなくなるだろう』
ジャン(NOVA)「何だって? 人質をとるとは、ノヴァストラダマス、どこまで卑怯な奴なんだ」
GMノヴァスト『わしが卑怯なのではない。小利口なゴブリンなら、当然行いそうな作戦を忠実に実行しているに過ぎん。さあ、先制力を決めてもらおうか。こちらはホブゴブリンが10、ゴブリンシャーマンが8。他のゴブリンはそれぞれのボスと同じタイミングで行動する』
ジャン「ぼくも10で動く」
アカミドリ(晶華)「私は5よ。精霊ちゃんは2」
丸子(ヒノキ)「わらわは……何てこと、ピンゾロを出して0じゃ。必然的に一番最後となる」
用心棒(ゲンブ)「9でござる」
ジャン「なあ、アカミドリ。因果点で先制力判定を大成功にしてくれないか。そうすれば、達成値+5されて、10で動ける。そして、ゴブリンシャーマンの周辺に《酩酊》(ドランク)の呪文を掛けて欲しい。うまく眠らせることができれば、人質の女の子を助けることができる」
アカミドリ「うん、やってみる。因果点は現在6よね。10出たので成功。では、私も10で動けるわ」
GMノヴァスト『それなら、10のホブゴブリンとさらに振り合いだ。こちらは6』
ジャン「3か」
アカミドリ「私は4」
ということで、1ラウンド目の行動順は以下のようになった。
ホブゴブリンと雑魚3体→アカミドリ→ジャン→用心棒→ゴブリンシャーマンと雑魚4体→精霊→丸子。
では、戦闘開始。
★Round1:人質を助けるために
GMノヴァスト『ホブゴブリンと雑魚3体は、お前たちのところにヒャッハーと突っ込んで来るぞ』
用心棒「前衛の壁として、我が立ちはだかっているでござる」
GMノヴァスト『いいだろう。蜥蜴用心棒を好敵手と認めたホブゴブリンが、支援効果付き達成値19の大金棒を振り下ろす』
用心棒「盾受けは22で成功。装甲でダメージを10点減らすでござる」
GMノヴァスト『ダメージは17点だから、7点を喰らうがいい』
用心棒「ぐっ、残り生命点16点。まだまだ」
アカミドリ「用心棒さんのことは気になるけど、私は私の仕事をする。くらえ、花粉症バスター! 達成値は16よ」
GMノヴァスト『ゴブリン4体は抵抗できずに寝た。ゴブリンシャーマンは健在だ』
ジャン「う〜ん、ぼくはゴブリンシャーマンの呪文を封じたいんだけど、レベル4の相手の呪文抵抗を打ち破れる自信が全くないんだよな。だから、ここは《力矢》(マジックアロー)を撃っておく。人質を攻撃させないように挑発の意味も込めてね。達成値は16。2本の矢が相手を貫いて、合計10点ダメージだ」
GMノヴァスト『うう、その呪文は、威力は弱いものの、抵抗も回避も装甲によるダメージ減少も行えないんだったな。まともに食らって、残り生命点8点。ぐぐっ、よくも貴様!』
ジャン「悔しかったら、そちらの技を見せてみろ。覚知神の使徒ごときに、知識神の加護を打ち破れるならな」
GMノヴァスト『おのれ、目にもの見せてくれる、と呪文の詠唱を始めるが、その前に……』
用心棒「我の攻撃でござったな。ホブゴブリンに反撃。命中達成値は14か」
GMノヴァスト『こちらの回避も14。炎の魔剣も当てられずば、宝の持ち腐れよ、とゴブリン語で笑う』
用心棒「うう。何と言ってるかは分からんが、大体察して、悔しく歯噛みするでござる」
GMノヴァスト『では、ゴブリンシャーマンがそこの小賢しい時空魔術師に呪文攻撃だ。死ね、NOVA! 《火矢》を撃ち込んで、達成値12。意外と低い』
アカミドリ「もしかして、アストダイスがNOVAちゃんを守ってくれようとしているのかも」
ジャン「あのさあ。プレイヤーに、死ね、というのはやめてくれないか、GM。抵抗は……うっ、11で失敗」
GMノヴァスト『ははは、ダメージは4d6+3だぞ』
ジャン「こっちの生命点は22点。運が悪いと一撃で倒されてしまう。因果点を使わせて欲しい」
丸子「使うと抵抗に成功して、ダメージ半減じゃな。使うといい」
ジャン「すまない。因果点は現在7。7ぴったりで成功」
GMノヴァスト『チッ、神の加護は健在であったか。ダメージは15点だが、反減して8点だな』
ジャン「《火矢》のダメージは、装甲で軽減可能だったな。だったら、食らったダメージは3点だ。残り生命点は19点。ふん、お前の呪文はその程度か、と鼻で笑う」
GMノヴァスト『何を! 抵抗に失敗したときは、慌てていたくせに』
ジャン「過去の話だ」
GMノヴァスト『今さっきのことだろうが!』
ジャン「それでも過去は過去。もう、お前の手番は終わった。さあ、とどめを刺してやってください、皆さん」
アカミドリ「じゃあ、私の精霊ちゃんが《火矢》でシャーマンを狙うわ。よくもNOVAちゃんを狙ってくれたわね。炎ってのは、こうやって使うのよ。命中達成値は18。さあ、抵抗できるかしら」
GMノヴァスト『おのれ、花粉症ガールめ。抵抗は15で失敗』
アカミドリ「あなたの敗因はね。アストの魂をダイスに封印したことよ。アストは私の下僕なんだから、私には逆らえないの。さあ、ダメージは5d6+3よ。合計20点♪」
GMノヴァスト『覚知神さま、ばんざーい、と叫んで、ゴブリンシャーマンは息絶える』
丸子「何じゃ、呆気ない。ならば、わらわはどうしようかのう? 用心棒よ、応援は必要かの?」
用心棒「できれば、周りのザコを倒していただければ」
丸子「ザコ退治か。まあ、それもいい。撃墜数を上げてみせよう。健在なゴブリンを槍で突く。21と言って命中。ダメージは11点に、毒の追加ダメージで+2点」
GMノヴァスト『毒がなくても死んでいたけど、槍で貫かれたゴブリンは、ゴボゴボと泡を吹き出して、苦しそうに喉を掻きむしって死んだ』
丸子「因果応報じゃよ」
●決戦Round1の結果
ホブゴブリン、生命点20(用心棒に7点ダメージを与える)
雑魚ゴブリン1体(丸子の毒槍で一撃死)
残り雑魚2体、生命点9と2
ゴブリンシャーマン、死亡(ジャンの《力矢》2本で生命点半減。反撃の《火矢》を撃つも、神の加護に阻まれ3点ダメージに留まる。アカミドリの使い魔の精霊に《火矢》を撃たれて、焼き殺された)
雑魚ゴブリン4体(人質をとるも、アカミドリの《酩酊》呪文で熟睡中)
ジャン、生命点19/22、消耗2(人質救出のためにゴブリンシャーマンを挑発し、攻撃呪文を撃ち合う。相手の反撃に一瞬ドキッとするが、因果点という名の神の加護で軽傷で済む。呪文使用回数残り1)
アカミドリ、無傷、消耗3(人質救出のために、人質の周りのゴブリン4体を眠らせる。使い魔の精霊はシャーマンにトドメを刺すなど、本戦闘の立役者と言っていい活躍。呪文使用回数残り2)
丸子、無傷、消耗1(手順が遅れ、用心棒の支援のためにザコ退治。健康なゴブリンを毒槍の一撃で瞬殺する腕達者ぶりを披露)
用心棒、生命点16/23、消耗2(前衛の壁として強敵ホブゴブリンの前に立ちはだかるも、そこそこのダメージを喰らい、反撃は当たらず。呪文使用回数残り1)
継戦カウンター8マス目
因果点:8
★Round2:死闘大小鬼(ホブゴブリン)
2ラウンド目の行動順は以下の通り。( )内は先制判定の数字。
ジャン(9)→用心棒(7)→ホブゴブリン(6)→アカミドリ、丸子(4)→精霊(1)
ジャン「さて、ぼくとしては寝ているゴブリンたちが目を覚ます前に、人質の身柄を確保しておきたいんだが。問題は、移動距離の問題で、そこまで届かないこと。全力移動なら何とかなるんだけど、それにはまず眠りの効果を解除してもらわないとな。行動順を遅らせて、アカミドリと同じ手番で動くようにするよ」
用心棒「では、次は我の番でござるな。ホブゴブリンを業火の剣で叩き斬る。出目9。達成値17。これならどうだ?」
GMノヴァスト『回避達成値12だと? おのれ、アストダイス。まだ抵抗するとは!』
用心棒「ダメージは2d6+5に、炎の追加ダメージ4dが加わる。炎の分は、騎士どのが振って下さらんか?」
ジャン「え、いいのか?」
用心棒「いわゆる合体攻撃でござる。我の分は、期待値どおり12点」
ジャン「だったら、そこに炎が燃え盛って、+13ダメージだ」
用心棒「合計25点ダメージでござる」
GMノヴァスト『グオオッ。装甲で8点減らして、ダメージ17点。残り生命点は3点。よくもよくもォッ』
ジャン「勝ったな」
GMノヴァスト『まだだ。まだ、やらせはせんぞ。反撃の出目は8。命中達成値は19だ」
用心棒「盾受け判定は……何と、ここでピンゾロだと?」
GMノヴァスト『ハハハ、16点ダメージをくらえ』
用心棒「我の生命点は16点。ピッタリ0になって倒れ伏す」
GMノヴァスト『さらに痛打ダイスを振るがいい』
用心棒「1d振って、出目は3」
GMノヴァスト『攻撃を受けた者は、武器か盾を弾き飛ばされる』
用心棒「業火の剣が宙を舞い、墓標のように地面に突き立つでござる。蜥蜴用心棒、ここに死す。思い起こせば、修羅の如き人生であった」
ジャン「いやいや、まだ死んでないし。死ぬのは、ダメージが生命点の2倍に達した時だ」
用心棒「ならば、戦闘不能で倒れ伏す」
丸子「それも違う。ゴブリンスレイヤーのルールでは、生命点0の状態でもプレイヤーキャラクターは戦い続けることが可能。ただし、毎ラウンドじわじわ消耗し続け、一定値に達したときに気絶し、そのまま放置してようやく死に至る。つまり、生命点0になって、ダラダラ血を流しながらも戦い続けるブラッディーなバトルこそ、ゴブスレTRPGの真骨頂。立て、立つのじゃ、用心棒」
用心棒「ぐっ、お嬢の声が朦朧とする意識をつなぎ止める。ここで我は倒れるわけにはいかん。たとえ、剣を弾き飛ばされようとも、我には爪がある。牙がある。尻尾がある。我が闘志はまだ折れん。流血しながらもファイティングポーズを取るでござる」
GMノヴァスト『貴様、そのボロボロの体で何ができる。ならば、次で地獄に叩き落としてくれるわ』
丸子「ヒヒヒ。貴様には次などないわ。わらわの手番じゃからな。蜥蜴用心棒の仇、わらわが討ってやろう。命中は15」
GMノヴァスト『そんなヌルい攻撃など! 何、回避の出目は3だと?』
アカミドリ「ナイスよ、アスト。たとえ、ダイスに身を落とそうとも、アストも一生懸命、私たちをサポートしてくれているのね」
丸子「よし。ここで因果点を使って、攻撃を大成功にしたいんじゃが、どうだろうか?」
ジャン「許可しましょう」
丸子「ならば、神に祈願しての一撃。因果判定は9で成功。ダメージは5点に、毒の分で+3」
GMノヴァスト『合計8か。ならば装甲で弾いた』
丸子「くっ、因果判定のダイス目をダメージダイスにしておけば……もう一度、因果点でダメージの振り直しをさせてはもらえんじゃろうか」
ジャン「今の因果点は9か。10になれば、追加経験点500点に達するな。ダメ元で試す価値はある」
丸子「かたじけない。では、因果判定の出目は……4。失敗。まあ、ダメ元じゃからな。後の始末は任せたぞ、アカミドリ」
アカミドリ「え? ええと、騎士さんが倒してもいいんだよ。呪文はあと一回使えるんでしょう?」
ジャン「その一回は、用心棒さんを癒すのに使いたい。ほら、ぼくは本来、神官だからさ。そっちが本分だと思うんだよ」
アカミドリ「う〜ん、だったら眠りの維持はやめるけど、そっちのゴブリンさんはすぐに起きて来ないよね」
ジャン「起きるのは次のラウンドだから、敵が動く前に処理できると思う。今はホブゴブリンにトドメを刺さないと危険だ。奴の攻撃の破壊力は恐ろしすぎる」
アカミドリ「ならば、アカミドリ、《火矢》を撃ちます」
ジャン「その呪文は装甲が有効なので、奴を倒すには11点以上のダメージが必要だぞ」
アカミドリ「そんな。プレッシャーを与えないでよ。呪文の発動達成値は20だけど」
GMノヴァスト『そんなの抵抗できるはずがない』
アカミドリ「ダメージは、6d6が振れるのよね。達成値が大きければ、ダメージが増えるシステム、好きよ。出目は22点。それに精霊使いレベルの3点を足して25点! 焼き尽くせ!」
GMノヴァスト『おのれ、おのれ、花粉症ガール2号。しかし、しかし、まだ手はある。やれ、ゴブリン達よ。人質を抹殺して、せめて弥生時代を消し去ってやるのだ』
アカミドリ「え? 女の子ってヤヨイちゃんだったの? てっきりレイワちゃんだとばかり」
ジャン「レイワちゃんはまだ赤ん坊だ。女の子と言えば、ヤヨイちゃんだろうが。ところで、今ごろ聞くのもなんだけど、何才ぐらいなんだ?」
GMノヴァスト『ヤヨイ8才、エド5才、レイワ1才3ヶ月って設定だ』
ジャン「8才かあ。だったら、自力での脱出は難しいよな。まあ、考えるのは次のラウンドだ。とりあえず、ぼくは用心棒さんを癒すよ。達成値は18で、回復したのは23点」
GMノヴァスト『何で、そんなに出目がいいんだよ?』
ジャン「自分でも驚いたが、これこそが救世主の証じゃないかなあ」
用心棒「一気に全快。さすがは騎士どの、命の恩人でござる」
アカミドリ「じゃあ、このラウンド、最後に精霊ちゃんが動くね。目を覚ましかけている生命点5点のゴブリンを《火矢》で撃つ。発動15で、ダメージも15」
GMノヴァスト『焼け焦げた』
●決戦Round2の結果
ホブゴブリン、死亡(用心棒の攻撃で17点ダメージを受けるが、反撃で16点ダメージを与え、瀕死の重傷に追い込む。丸子の攻撃もしのぐものの、アカミドリの強烈な《火矢》で焼き尽くされる)
雑魚ゴブリン2体、生命点9と2
熟睡ゴブリン1体、死亡(人質のヤヨイに毒短剣を突きつけていたが、呪文で眠らされ、精霊の《火矢》で焼き焦がされる)
熟睡ゴブリン3体、生命点は1、1、2(熟睡から目を覚まそうとしているが、その命は風前の灯火か)
ジャン、生命点19/22、消耗2(人質救出を意図して手番を遅らせるが、用心棒が重傷を負ったのを見て、回復に切り替える。神に祝福されているのか、素晴らしい出目で用心棒を一気に全快させる。救世主の称号は伊達じゃなかったようである。呪文は打ち止め)
アカミドリ、無傷、消耗3(眠りの効果を維持し続けるか迷ったものの、用心棒のピンチに、ホブゴブリンにとどめを刺すことを選択。圧倒的な火力でホブゴブを焼き尽くし、ボスキャラ2体を続けて倒す殊勲賞。使い魔の精霊も熟睡ゴブリンを撃退する活躍ぶり。呪文使用回数残り1)
丸子、無傷、消耗1(用心棒を圧倒したホブゴブリンに果敢に挑みかかるも、相手の頑丈な装甲に阻まれ、ダメージを与えることができなかった。因果点2点を浪費する形になったが、その結果、最大追加経験点に達したのはゲーマー的にクレバーなプレイとも言える)
用心棒、生命点23/23、消耗2(ホブゴブリンに攻撃をヒットさせて、残り生命点3に追い込むも、反撃を受ける際の防御でファンブルしてしまい、一気に生命点が0になるという痛恨のミス。ズタボロになっても立ち上がるクロコダインのような不屈の闘志を示し、ジャンの癒しに救われる。呪文使用回数残り1)
継戦カウンター9マス目
因果点:10
★Round3:人質大救出
ボス2体を撃退し、あとは雑魚ゴブリン5体を残すのみ。
ほぼ大勢は決したわけで、このラウンドは消化試合のようなものだが、人質がいるために、運が悪ければ、悲劇に見舞われる可能性もゼロではない。
果たして、きれいに締めくくることができるかな。
行動順は以下の通り。
アカミドリ(7)→丸子、用心棒、精霊(6)→ジャン(5)→雑魚ゴブリン5体(固定値4)
ジャン「よし、全員、ゴブリンよりも先に行動できる。これで一気に全滅させられるんじゃないかなあ」
アカミドリ「最初は私からね。弓矢で目覚めかけゴブリンを撃つわ。【速射】で2回攻撃。まずは、生命点2点の方を狙って、もう一矢は生命点1点の方。一発目は、達成値14でダメージ2点。最低ね」
GMノヴァスト『装甲2点なので、ダメージは通らず』
アカミドリ「雑魚の癖に。もう一発は、命中マイナス4されるけど、13で当たって、ダメージは6点」
GMノヴァスト『それで1体倒せた』
アカミドリ「ついでに精霊ちゃんも最後の《火矢》を撃っておくわ。用心棒さんたちと戦っている無傷の雑魚を落とす。発動達成値は20。やっぱり私は魔法の方が性に合うのかしら。ダメージは23点。撃墜成功」
用心棒「ならば、次は我が雑魚を落とす。弾き飛ばされた剣を拾っている間も惜しいので、爪を使用。命中基準値は9で、実は剣よりも当てやすい。達成値は17でダメージ1d加算。合計6点ダメージでござる」
GMノヴァスト「すでに傷ついていた雑魚は、その爪の一撃でザックリ切り倒された」
用心棒「今です、丸子さま。邪魔者はおりませんので、人質救出を」
丸子「よし、人質の近くに駆け寄るついでに、雑魚ゴブリンを槍で突く。サクッ、ほれ、毒で苦しみのたうちながら死ぬがいい。人質は無事確保した。残りはあと1体。騎士どの、最後に決めてくれよ」
ジャン「移動力が低いので、そこにはたどり着けないんだよな。だから、遠隔攻撃のスリングで頑張る。17と言って命中。ダメージは7点。よし、きれいに決まった」
GMノヴァスト『最後のゴブリンの断末魔が響いた後は、大広間は静寂を取り戻した。悔しいが、お前たちの勝ちだ。人質のアストは無事に返してやろう』
和解への道?
ジャンもといNOVA「ちょっと待て、ノヴァストラダマス、いや、粉杉ノヴァ彦と言ったか。お前は珠保時代を復活させることが目的と言っていたな」
ノヴァスト『当然だ。自分の生きる世界を奪われたのだ。それを取り戻すことこそ、我が悲願』
NOVA「ああ。俺たちだって、自分の生きる時代を奪われるわけにはいかない。お前が令和を書き換えて、珠保にしようという目論見に固執し続ける限り、俺たちは相入れることはないのだろう」
ノヴァスト『ならば、我らに対話の道などない。天に二つの太陽がないように、この世にノヴァは一人で十分』
NOVA「ああ、俺だって自分の前に闇堕ちした自分が常にいるのは気分が悪い。だがな、珠保を復活させるために、本当に令和を書き換えないといけないのか? 他に方法があるんじゃないだろうか?」
ノヴァスト『何が言いたい、時空魔術師よ』
NOVA「俺は時空魔術師として、多元宇宙を研究している。今の俺たちは平成から切り替わった令和の時代に生きているが、それとは別に、違う時代、違う世界、違う宇宙の物語も観察しているんだ。宇宙的な視野で見れば太陽は一つじゃないし、夜空に浮かぶ無数の星々だって一つ一つが恒星、すなわち太陽なんだ。世界もまた然り。わざわざ、令和を書き換えなくても、珠保を復活させる手段は多元宇宙的な視野で考えれば見つかるはずなんだ。少なくとも、俺はそう信じているぜ」
ノヴァスト『令和NOVA。お前はつくづくおめでたい男だな。今のお前に、令和を犠牲にせずに、珠保を取り戻すような方策があるというのか?』
NOVA「正直、今の俺には、そんな方策はない」
ノヴァスト『だろうな。所詮、貴様は口先だけの男だ。できもしないことを、平気でできるようなことを言って、人を翻弄させるだけのペテン師よ。そんな男の舌先三寸に惑わされると思うてか』
NOVA「だったら、お前は独り善がりの短絡的な男だと返しておくぜ。俺はこう言った。『今の俺には、そんな方策はない』と。だが、それは決して不可能って意味じゃない。今の俺には無理でも、明日の俺にはできるかもしれない。あるいは、他の誰かと協力すれば、いい知恵だって考えつくかも知れない。悪霊と化したお前は一人でも、俺には信頼できる仲間がいる。そして未来の希望を信じて、そこに一歩ずつ踏み出せる勇気と想像力がある。お前には考えつかない可能性がまだまだたくさんある。だから……」
ノヴァスト『わしには、お前を倒せないと?』
NOVA「倒す必要がないだろうが。俺がお前に協力してやるって言ってるんだ」
ノヴァスト『何だと?』
NOVA「確かに、令和を奪われるわけには行かない。だが、多元宇宙の理屈で言うなら、令和を壊さずとも、珠保の世界を蘇らせることは可能なはずなんだ。理論上は可能だが、今の段階で現実化の目処が立っていないだけで。しかし、それも俺とお前が協力すればできるんじゃないかなあ」
ノヴァスト『そんなことが本当に可能だと?』
NOVA「さあな。俺の言葉の半分は妄言だ。しかし、もう半分は真実なんだぜ。可能性は半々と言ったところか。しかし、お前は別世界の俺だ。だったら、お前の半分と、俺の半分を合わせれば、真実を創り上げる可能性は100パーセントじゃないか。まあ、さすがに1000パーセントと言っちゃうほど、俺はバカじゃねえが」
ノヴァスト『甘いな、令和NOVAよ。貴様は間違っている』
NOVA「ほう、どの辺が間違っている?」
ノヴァスト『50%と50%を組み合わせても、100%にはならん。この場合は、和の法則ではなく、積の法則で考えるべきだ。失敗確率の50%に50%を掛けると25%、すなわち成功確率は75%に過ぎん』
NOVA「うっ、しかし足りないところは勇気で補えば……」
ノヴァスト『だから、お前はアホなのだ。そのような世迷いごとに誰が付いてくる?』
晶華「私は付いて行くわ」
ヒノキ「わらわもじゃ。その方が面白いからのう」
ノヴァスト『面白いだと?』
ヒノキ「そう。結果が決まりきった100%の確率で満足するようなら、ダイスを振ってゲームする必要はないじゃろう。次にどんな目が出るか分からないが、良い運命を引き当てるように策を考え、自己の能力と仲間の能力を効率的に組み合わせて、最後に気合いを込めて、結果として生じたダイス目の運命にきちんと向かい合う。それこそが正にTRPG、ひいては人の、いや神々をも含めた物語の有り様じゃ。お主もGMとして、その醍醐味を味わったはずじゃろう?」
ノヴァスト『世界の命運をゲームと同一視するな』
NOVA「同一視はしていないさ。だが、ゲームの多くは現実の一部を切り取って、分かりやすく簡略化したもので、決して現実から切り離されたものじゃない。ゲームの中から生まれる真実や現実だってあるんだ。子供から親が学ぶこともあるように、ゲームの理論が新たな現実を構築することだってある。たかがゲーム、されどゲームって奴なんだよ。そのことが分からないなら、お前の理解力、認識力も大したことないんだな。それじゃ、他人の邪魔をすることはできても、何かを創造し、構築することなんてできっこねえ」
ノヴァスト『わしにどうしろと?』
NOVA「さあな。ガキじゃないんだ。それぐらい自分で考えろ。ここまで考える材料をもらって、自分で建設的な結論も出せないようじゃ、所詮はただの悪霊だ。中学生の子供が考えたケイソンと大差ねえ。だがな、最後にこれだけは言っておく」
ノヴァスト『何だ?』
NOVA「お前のところの世界の『花粉ライターJUHO』って作品な。令和を壊すほどの価値はないが、令和を守ったまま見られるのなら、俺は是非とも見てみたい。令和と『花粉ライターJUHOの世界』が両立できるなら、俺はそこに時間と言葉と情熱を注ぎ込んでもいいと思っている」
ノヴァスト『……一つ分かったことがある。お前は……バカだ』
NOVA「チッ、褒め言葉と受けとっておくよ。俺は小さい頃に天才とか秀才とかもてはやされた時期もあったので、割と褒め言葉は聞き飽きているんだ。だが、所詮は井の中の蛙。世間には俺以上の天才や秀才は数多くいるし、まあ、そいつらも一皮むければバカな側面も数多く持っている。つまりだ、バカと天才は紙一重って奴なのさ」
ノヴァスト『この男は……さっきの「花粉ライターJUHOが見たい」というのが、最後の言葉ではないのか? 貴様は、どこまで喋れば気が済むのだ?』
NOVA「仕方ないだろう。何か言われたら、昔から3倍返しで言いたくなる性分なんだからよ。だからこそ、言霊魔術師ってのも名乗れるんだ。俺の話を終わらせたければ、さっさと適当なオチを付けてまとめるか、『貴様の言葉、考えておこう』とでも言って、うまく辞去しやがれってんだ」
ノヴァスト『これ以上、バカの相手はしてられん。わしは我が道を行く。さらばだ』
NOVA「ふう、やっと帰ったか。おおい、アスト〜、無事かあ?」
アスト(寝言で)「ムニャムニャ。おのれ、ノヴァ。翔花ちゃんは必ず、このオレが守ってみせる。だから、その後はオレと……ZZZ」
晶華「……アストはやっぱりアストみたいね。だけど、命懸けでGMしてくれて、ダイスになっても私たちを守ってくれたことには感謝してるわ。ありがとうね」
(当記事 完。次回で完結編予定)