花粉症ガール・翔花伝&コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女主役の物語」&「その仲間たちの雑談話」など。TRPG話や特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。

新たな守護者(新・屋久島編その8 完結編)

今は亡き永井一郎さんの声で

 

 屋久島という名の島がある。

 葦原中つ国は筑紫島の南方に浮かぶ辺境の島だ。

 かつて、この地には、暗黒の星界より飛来した破壊神スペースGの末裔が復活し、地上の全てを結晶化させようとしていた。

 大地母神ガイアは、破壊神と同じGの眷属たるセイリュウの力でスペースGを抑えつつ、島を結界に封じ込めて、破壊神の力を外界に出さぬよう取り計らった。しかし、全盛期の力をすでに失っていたセイリュウが敗れ、島に眠る巨大蛾モスラの大いなる力が奪われるのも、もはや時間の問題かと思われた。

 状況を打開すべく、ガイアはモスラの力を宿すことのできる存在として、屋久杉と親和性の高い精霊少女、花粉症ガールの粉杉翔花を選び出し、その父たる時空魔術師、時空神クロノスの使徒でもあるWhite NOVAに夢でメッセージを送った。

 

 NOVAは娘の修行のために快諾し、翔花の旅が始まった。阿蘇の地の麓にあるコンパーニュの塔にて、植物精霊の先達である日野木アリナの歓待と訓練を受けた翔花は、アリナの従者で、セイリュウを父の仇と見なす忍びの少女シロと出会い、衝突の末に心を通わせることになる。

 

 結界に覆われた屋久島の地に踏み込むことができるのは、「花の巫女」と「獣の巫女」の資格を持った二人の乙女とされた。

 翔花とシロ、そして従者のケイPマーク2は仲間たちの支援を受けて、タイムジャッカーと名乗る妨害者の襲撃を逃れ、屋久島の地に到達。そして、翔花はモスラの力を宿すための試練として時空を超えた旅を行い、一方でシロは父の仇と見なしていたセイリュウと束の間の交流を果たし、二人の乙女のそれぞれの修行が展開された。

 時代の変わり目の混乱期ゆえか、翔花の旅はガイアの当初の思惑よりも長期に渡り、精霊少女は急激な成長を遂げることとなった。

 その一方、師匠のセイリュウと亡き父の過去の経緯を知ったシロは、自らの復讐心を切り捨て、さらにスペースGを倒すための力を得るために自らの女をも捨てる決意をする。

 男として成長を果たしたシロ、改めビャッコとセイリュウの共闘の末、スペースGの体内に取り込まれていたセイリュウの子リトルは救出されるが、代わりにセイリュウが命を落とし、その力はスペースGに奪われる。

 

 窮地のビャッコとリトルの前に、時空を翔ける少女として成長した花粉症ガールが降臨した。

 永劫にも続くと思われた不思議時空での戦いの末に、スペースGを撃退した翔花ではあったが、少女を捨ててワイルド男になったビャッコに戸惑い、その絆は決裂するかに思われた。しかし、ガイアの計らいで再び少女に戻してもらったシロは、翔花とのパートナー関係を構築し直すことに成功する。

 

 かくして、破壊神の結晶に呪われた島での試練と戦いは終結し、平和が訪れたかのように思われた。

 しかし、神と精霊と人の間に、もう一つの波乱が発生しようとしている。

 大いなる力を持つ者には、大いなる責任が生じるゆえに……。

 

平和な幕間

 

翔花「さて、シロちゃんももう一度、可愛い女の子に戻ったし、他に何か忘れ物はないかなあ」

ケイPマーク2『ピピッ、再起動しました。状況確認。ここはどこ? GPS、うまく働きません。私は誰? ケイPマーク2。現在ドゴランアーマーモード。自己認識機能は正常なり。私の任務は? 翔花ママを守ること。翔花ママ、ご無事ですか?』

翔花「ああ、KPちゃん、お早う。ずっと石になっていたけど、どうやら無事みたいだね。もう、ドゴランアーマーを解除してもいいよ」

ケイPマーク2『では、通常ハロモードに戻ります』

ハロプラ ザクレロハロ

シロ「全然、通常のハロじゃないだろうが」

ケイPマーク2『どうやら、翔花ママが私の知らない間に成長していたようで、その経験値のおこぼれをもらった私もつられてパワーアップしたようです。ところで、あなたはシロさんで間違いないですね。前はちんちくりんだったのが、今は翔花ママと同じサイズに。私の知らない間にいろいろあったと推察されます』

シロ「というか、お前、屋久島に来てから何もしてないよな。ずっと、石になって眠っていただけで」

ケイPマーク2『失礼な。本来なら、私の役割はモゲラ同様に、ドリルを使って地底から敵を襲撃したり、電撃技を修得して大活躍する予定だったというのに、その初期プロットは時空の乱れで全て失われた模様です』

シロ「いや、悪い。回転ドリル技とか、電撃とかは、全部お前の代わりにボクが修得したらしい」

ケイPマーク2『何ですと? だったら、私は何のためにここに来たと? ドゴランキーパーで華々しく活躍するために、飛行機能まで付けたというのに』

翔花「まあまあ。KPちゃんが飛べないと、屋久島からどうやって帰ればいいか分からないんだから。私は飛べるようになったからいいけど、シロちゃんとリトル・セイリュウ君を連れて帰らないと行けないし。それに私だって飛べると言っても、方向音痴だから確実に迷ってしまうもの。KPちゃんがいないと、一人旅なんてまだまだ出来ないんだから!」

シロ「胸を張って言うことじゃないだろう! それはともかく、リトルはどこに行ったんだ? そろそろ戻って来てもいいはずなんだが」

翔花「え、セイ君、どこに行ったの? シロちゃんと一緒じゃなかったの?」

シロ「一緒だったんだが、ちょっと翔花の……あの……目覚めの儀式をする際に、席を外してもらったんだ」

ケイPマーク2『そのリトルのセイ君というのが何者かはよく分かりませんが、私のセンサーで探すことは可能ですよ。GPSは使えませんが、近距離で動くものなら探知できるはず。あ、噂をすれば影ですか。何者かが近づいて来るようですね』

 

リトル「あ、シロ兄さん、それに……翔花さんですか? あと、もう一つ、何か変なのがいる。あれ? シロ兄さん、何か縮んだ?」

翔花「やっほー、セイ君。これ、あなたのお父さんのセイリュウさんから預かり物」

リトル「え、この勾玉は?」

翔花「うん。スペースGを倒して、セイリュウさんの魂を解放したんだけど、こちらの世界に連れ戻して復活させることはできなくて……ゴメンね、グスン(涙目)。あ、思い出したら、何だかまた哀しくなっちゃった。せめて、息子への形見として渡してやってくれって……」

リトル「父さんの魂の欠片……みたいですね。ありがとうございます。この勾玉、御守りと思って大事にします」

ケイPマーク2『お取り込み中失礼ですが、私は「何か変なの」ではございません。K・ピエール・プルナレフ・マーク2という由緒正しき名前があり、翔花ママのアシスタント・モンスター、略してアシモン……あいた、突然、後ろから叩いてくるなんて、シロさん、何をするんですか? 私の修得するはずだった技を奪うばかりか、自己紹介の機会まで奪おうとするなんて、何という暴虐!』

シロ「やかましい。子供が父親の死を悼もうとしている場面で、いちいちしゃしゃり出て来るな。空気を読めよ」

翔花「そうよ。KPちゃん、いろいろと人間性を教えたはずでしょ。形見を渡している大事な場面で、自己紹介をするなんて、粗相もいいところよ」

ケイPマーク2『翔花ママに怒られた? この私が?(涙目) 一生の不覚なり』

リトル「あ、あのう、何だかすみません。思わず変なのって言ったのは、謝ります。ええと、K・ピエール・プルナレフ・マークツーさんでしたっけ。初めまして、リトル・セイリュウです、よろしくお願いします」

ケイPマーク2『おお、初対面で、私のフルネームをしっかり覚えてくれるとは。しかも、丁寧に挨拶してもらえて、リトルのセイさんっていい人なんですね』

リトル「こちらこそ、ご丁寧に。よく見ると、この丸いボディに、つぶらな瞳、それに腕の刃が、親しみやすさと格好良さを同居させたデザインで、格好カワイイ系ですね。それに、匂いも……クンクン……ん? これはスペースGと同じ宇宙怪獣臭? もしかして敵なのか?」

ケイPマーク2『プルプル。ぼくは悪い宇宙怪獣じゃないよ。翔花ママと魂で契約しているから、この大地を守る良いアシモンなんだ』

翔花「確かに、KPちゃんは宇宙大怪獣ドゴラの系譜を引くけど、きちんと人間性を学習したんだから、私たちの友だちだよ。警察と騎士の魂も宿しているしね」

リトル「分かった。翔花さんがそう言うなら間違いないね」

 

翔花「さて、みんなの顔合わせも終わったし、もう、これで屋久島での用事も済んだよね。ヒヒヒお祖母さまのガイアちゃん、私たちはこれからコンパーニュに帰るから、島を包む結界を解除して」

ガイア(残念ですが、それはできません、粉杉翔花。あなたをこの島から外に出すわけには行かないのです)

翔花「ええ? どうしてよ。私はNOVAちゃんに再会するために、時空を超えた大冒険を頑張って来たんだよ。もう十分強くなったんだし、島を脅かすスペースGだって倒したんだから、帰ってもいいはずでしょう?」

ガイア(そうです。あなたは私の想定以上に強くなり過ぎました。スペースGを難なく打ち倒す神にも匹敵するその力、決して野放しにはできません。あなたを放置すれば、必ずや世界にとっての災厄となるでしょう。あなたは、この地の守護者として私の下で神の摂理を学び、いずれは次なる大地母神ガイアの後継者となるのです。それこそが世界と調和する道)

翔花「そんなの嫌だ。私はNOVAちゃんのところに帰るんだから」

ガイア(分かって下さい、我が遠き娘よ。大いなる力には大いなる責任が伴うのです。神の力を持つ者は、人の世界では生きて行けません。あなたのその力はいずれ、あなたの父White NOVAを滅ぼす元となることでしょう)

 

守護者の責務

 

翔花「私の力がNOVAちゃんを滅ぼす? それってどういうことなの?」

ガイア(あなたには自覚があるはずです。花粉ライターJUHOとして戦った記憶が)

翔花「あれは、私に力が足りなかったから。だから、NOVAちゃんが私を庇って……(涙目)。そう、私はあんな想いを二度としたくない。この力はNOVAちゃんを守るための力……」

ガイア(違います。その力は、大地を守るための力。あなたは、もっと大局的な視点から、物事を考えなければいけません)

翔花「そんなの無理! 私はNOVAちゃんともう一度会うために、頑張って来たの。それを妨げるのだったら、例えガイアちゃんだって許さない。私の運命は私が決める!」

ガイア(私と戦うと言うのですか? 神である私と)

翔花「私は、ガイアちゃんの言うとおりに時を超える厳しい旅をしてきて、そして強くなって、ガイアちゃんの言うとおりにスペースGを倒したの。それを今さら、お前は強くなり過ぎたから、島から出すわけには行かないですって? そんな理不尽な神なんて、私には信じられない!」

ガイア(それなら、力づくでも、あなたを封じないといけないようですね、我が遠き娘よ。真なる神の力をその身で味わいなさい)

シロ「お、おい。翔花、ガイア様、どうして話がこじれているんだよ?」

ケイPマーク2『シロさん、一体どうなっているんですか? 何だか翔花ママの周りの時空が凄い勢いで歪んで行くんですけど』

リトル「シロ兄さん、いや、シロ姉さんかな? とにかく、興奮している翔花さんを抑えて。それじゃないと、父さんが自爆した時のような感じがして……」

シロ「あ、ああ、そうだな。こいつは危険だ。おい、翔花、落ち着けって」

ガイア(そうです、獣の巫女よ。興奮している娘を抑えつけて下さい)

翔花「シロちゃん、あなたも邪魔をするの? あのクソババアの味方をして、私の敵に回るの?」

シロ「い、いや、別にそういうわけじゃ……」

翔花「だったら、私に協力して! 二人の巫女が力を合わせれば、クソババアの作った結界だって打ち破れる。そうすれば、こんなところとはさっさとおさらばして、ヒノキちゃんやNOVAちゃんのところに帰るんだから」

ガイア(それはいけません。今の自制できない娘が外に出たら、世界にどのような災厄をもたらすか。スペースGを倒す力が解放されてしまえば、この世界が滅びるのも時間の問題です)

シロ「ええい、ボクはどうしたらいいんだ!」

 

リトル『ガイアよ、花粉症ガールよ、鎮まるのじゃ!』

ガイア(その声……)

シロ「もしかして、師匠ですか?」

リトル『乙女よ、しばらくだったな。あの世から勾玉の力で交信しておる』

シロ「そんなことができるのですか?」

リトル『たまたま、本日は11月3日。すなわち、Gの生誕65周年の記念すべき日だからな。魂の力もそれだけ強くなるというもの』

ガイア(セイリュウ、あなたも来てくれたなら助かります。ふつつかな娘を止めるのに、力を貸して下さい)

リトル『そういうことをすると、本当に世界が滅びるぞ。珠保のように、この令和もな』

ガイア(だから、それをしないために私は……)

リトル『大地を守るのはそなたの管轄じゃが、時空を守る力までは持つまい。時空神クロノスの力を拝借して娘を過去に送り込みはしたが、制御できなかったために、娘はそなたの手を離れた。普通なら、それで時の狭間の迷子になって人知れず消失してしまうはずだったが、ただ一つの想いでその娘は迷いながらも時空の旅を乗り越えたのだ。親を求める娘の想い、それが分からぬお前ではないはず』

ガイア(しかし、強すぎる想いは妄執となって世界を狂わせる。だから、そうならないように、私が責任を持って神としての教育を……)

リトル『娘想いの父親がいるのに、遠い祖母が強引に口出しするのはどうかと思うぞ』

ガイア(その父親は、私に娘を捧げました。あの男には、もう一人の娘を授けております。双子の妹がいるのだから、姉を神に捧げても文句は言わないはず)

リトル『それだったら、ここに強引に乗り込んで来るはずはなかろう』

 

ケイPマーク2『大変です。時空の歪みが間もなく限界を突破します。皆さん、危険ですから、飛ばされないように身を伏せて!』

シロ「翔花、力を暴走させるな」

翔花「違う、私じゃない!」

シロ「いいから、伏せろ!」

翔花「キャッ!」

ケイPマーク2『翔花ママ、シロさん。不定形の私がお二人を包めば、衝撃が和らげるかと』

シロ「リトルも一緒に入れてやってくれ」

リトル『リトルはわしが守る。気にするな』

 

ガイア(一体、何が起こっているのです? 私の結界がそう簡単に突破できるはずが!)

 

MEGAAAAAN!

 

時空の壁を超えて出現す!

 

 

ガイア(何ですか、この巨人は!?)

謎の声「超次元・明鏡魔神(マシン)、アストロメガネンオー! 時空を突破してここに降臨!」

 

神との対峙

 

ガイア(これは、いかなる宇宙からの侵略者ですか?)

リトル『おお、おお、わしが現役なら、破壊してやりたい程の壮観な巨体じゃのう。リトルの身にはとても無理じゃが』

ケイPマーク2『これは、明鏡戦隊メガネンジャーの基地アストロメガネスターが変形した超巨大ロボ、アストロメガネンオーじゃないですか。すると、これに乗って来たのは……』

シロ「大丈夫か、翔花」

翔花「う、うん、シロちゃんとKPちゃんが庇ってくれたから、私は平気。(花粉分解で避けられたってことは口に出さないけどね)だけど、これに乗ってきたのは、もしかして……」

シロ「ああ、きっとそうだ。ほら、降りて来た」

 

White NOVA「ふう、着地は問題なし。誰か巻き込まれて、怪我している奴はいないか?」

翔花「NOVAちゃん! 本当にNOVAちゃんなのね? 生きているんだ!」

NOVA「おっと、翔花、久しぶりだな。俺が死ぬわけないだろう。お前のことが心配で、迎えに来てやったんだ」

翔花「バカバカバカ。いくら娘が心配だからって、ロボに乗って時空の壁を突破して、駆けつけて来る父親がどこにいるのよ〜。まったく人騒がせなんだから〜(涙目。ついでにポカスカ駄々っ子パンチ)」

NOVA「うおっ、やめろ、翔花。何だか8月にも妹の晶華相手に、こういうシチュエーションがあったような気がするが、とにかく、再会の喜びは後にしてくれ。俺はガイア様に話がある」

ガイア(なるほど。この男が花粉症ガールの父、時空魔術師のWhite NOVAですか)

NOVA「そう言うあなたが大地母神ガイア様ですか。お初にお目に掛かります」

ガイア(! あなた、私の姿が見え、声が聞こえるのですか?)

NOVA「このブルーアイズの力で、たいていのものは見えますよ。会話については、精霊語そのものは修得していないが、言霊魔術師なもので術を使えば聞き取ることは可能。とにかく、娘のことで話し合いに来ました」

ガイア(ロボに乗って、押し込んで来るのが話し合いの態度ですか!? 一体、どうやって私の結界を破ったと言うのです!?)

NOVA「いや、別に破っていませんよ。結界はまだ健在なはず」

ガイア(!? 確かに、結界はまだ張られていますね。どういうトリックです、これは?)

NOVA「以前、ダイアナジャックという時空快盗が言っていたんですけどね。『結界なんて、あたしたちには無意味。だって、結界が張られる前の時代に転移して、そこから位置座標を保ったまま時間を越えれば、容易に侵入できる』そうですよ。俺は泥棒じゃないから、そんなことはしたことがないけど、今回ばかりは娘のためですからね。試してみたら、まあ、できちゃったって感じです。今後、時空犯罪者相手にはセキュリティーを強化しないといけませんね」

ガイア(なるほど。時空魔術師相手には結界は無意味。だが、それなら、どうして、このような巨大兵器に乗って押し込む必要があった? 話し合いなら、そなた一人で来れば良いだけのこと)

NOVA「ご冗談を。ここで驚異的な怪獣大決戦級の力の激突が行われていたことは、見る者の目には外からでも観察できました。そんなところに身一つで乗り込んで行けるほど、俺は強くない。『ゴジラVSスペースゴジラ』の後日譚的な激突なんて、映画のスクリーンやブログ記事で見るならともかく、現場で体を張って観戦していたんじゃ、俺みたいなか弱い魔術師は命がいくらあっても足りません。そりゃ警戒して、ロボにだって乗って来ますよ。

「それに……相手と対等の交渉のテーブルに付くためには、こちらの力も示す、話す価値のある存在だと認めさせることは、交渉術の基本でしょう。何の駆け引きもなく、話せば分かるなどと愚かな平和主義者のような世迷言を述べるほど、俺は間抜けではありません」

ガイア(人の身で、神と対等の交渉などとは思い上がりも甚だしいとは思わないのですか?)

NOVA「あなたは、俺の娘の翔花に神の後継者を譲るとおっしゃいましたね。ならば、俺は未来の神の父ということになる。また一方で、俺は未来において妄魔時王と呼ばれる存在になる、と言ってくる者もいます。俺はそんなものになりたいとは思わないが、もしも神との交渉において、その肩書きが役立つと思えば、喜んで使うつもりです。大地母神ガイアよ、あなたが対峙しているのは、未来における神の父か、あるいは時の魔王の一柱か、あるいは、その両方か。これでも対等の交渉にはなりませんかね?」

ガイア(なるほど、言霊魔術師を名乗るだけはある。その、よく回る舌がそなたの武器か。では聞こう。そなたの交渉目的は何じゃ?)

NOVA「娘の翔花および、その友人たちを俺、White NOVAもしくはコンパーニュの神霊、南郷阿里の元に引き渡すこと」

ガイア(そうすれば、世界に災厄を引き起こすことを承知の上ですか?)

NOVA「そうしなくても、翔花は世界に災厄を引き起こすようですね。どうも、俺がいなければ、あの未熟な娘は闇堕ちして、いろいろと粗相を働くらしい。俺がしっかり管理しないといけない。その役は、ガイア様、あなたには無理だ」

ガイア(何故、無理と分かるのですか?)

NOVA「時空移動はあなたの管轄じゃない。もしも、翔花がその気になれば、屋久島の結界など関係なしに、時空の彼方にPONと逃げ込んで、あなたの手の届かないところで、俺を探してさすらうことでしょう。その過程で、いくつの世界を生み出し、また滅ぼすか知れたものじゃない」

ガイア(そんなことができるなら、どうしてしなかったのです? 結界を解除する必要などないではありませんか?)

NOVA「そいつは、翔花本人に聞いてやってください。おい、翔花、どうしてだ?」

翔花「え? 私一人で逃げても、シロちゃんやKPちゃんや、セイ君がここに閉じ込められたままじゃ、嬉しくないよ。私はみんなと一緒に、NOVAちゃんやヒノキちゃんのところに帰りたいんだから」

NOVA「だそうです。今の翔花にとって、俺や友達との絆は非常に大切な物なんですよ。それらを切り捨てて、世界を守るほどの責任は、今のあいつには荷が重すぎます。いずれ、それを選択する時が来るかもしれない。だが、それは今じゃない。あいつの心が成熟して、ガイア様、あなたの責務を代わりに引き受けるぐらいになるまで、少し待ってはくれませんか?」

ガイア(しかし、あなたに翔花の強大な力を抑えることはできるのですか?)

NOVA「無理でしょうね。ですから、あいつの受け継いだモスラの力のうち、扱いきれない一部はこの地の縄文杉にもう一度封じることにすればいいでしょう」

ガイア(しかし、それでは封じられた強大な力を求めて、またスペースGのような邪悪が現れるかもしれません。この地に力を封じるなら、亡きセイリュウに代わる新たな守護者が必要です。その役を、花の巫女と獣の皇子に務めてもらうことが私の計画の一部だったのですが)

NOVA「二人ともまだ若い。小さな島に封じ込めてしまう前に、外の広い世界でもっと多くの経験を積ませてあげたいとは思いませんか? チートな手段で無理やり育んだ力だけでなく、心身ともに健全な成長をできるように、時と出会いを積み重ねながら」

ガイア(そういう余裕があればよろしいのですが、敵はいつ現れるか分かりません)

NOVA「ならば、俺はメガネンジャー司令として約束します。この地は、メガネンジャーが守ります。アストロメガネウラを常駐させて、時空監視と共に、この屋久島を守護する任に当たりましょう」

ガイア(時空魔術師よ。あなたがここに常駐すると言うのですか? 娘の翔花と共に?)

NOVA「いいえ、俺は自分の家に帰りますよ。こう見えても、いろいろと忙しい身ですしね。しかし、ここにメガネンジャー本部があれば、いつでも飛んで来ることが可能ですし、常駐の管理人も置いていきますので」

ガイア(常駐の管理人ですか?)

NOVA「ええ。おーい、ハイラス、もう出て来ていいぞ。大地母神ガイア様にあいさつするんだ」

 

解放された島

 

ハイラス「これは、これは、大地母神さま。この世界における我が信仰の対象よ。不肖、この次元ドルイドのハイラス、これまでの人生を掛けて故郷の森、あるいは自分が管理守護すべき新たな森を探して参りましたが、この地こそそれに相応しいのでは? というNOVA殿の意見に従い、馳せ参じたでござ〜る」

ガイア(あなたも、私の声が聞こえるのですか?)

ハイラス「もちろんですとも、我が母なる女神よ。何処の世界においても、大地の声は必ず我が耳に届くこと違わず。それゆえに、我は自分のドルイ道の信仰を貫き通すことができた次第。あなたが森や大地を守る母神であるならば、すなわち我が信仰の対象。その声が聞こえぬはずがあろうか。よって、この地の木々の管理を私に御命じ頂ければ、全身全霊を持って御期待に応える所存でござ〜る」

ガイア(では、ハイラスよ。早速、儀式を司っていただきたい。我が遠き娘、粉杉翔花より過ぎたる力の分を神樹たる縄文杉に封じる儀式と、島の結界を解放する儀式。次いで、スペースGに荒らされた森を回復させると共に、この度の戦いで命を落としたセイリュウの墓を設け……他にも雑務がいろいろあろうが、任せられるか?)

ハイラス「お任せくだされ、我が女神」

NOVA「ドクター・ウルシェードも、海が見えるこの地で、しばらくのんびり暮らしたいと言っていたし、二人がここでアストロメガネウラと共に常駐してくれるなら、俺も安心して翔花たちを連れて帰られるってもんだ」

 

 こうして、明鏡戦隊メガネンジャーが新たな守護者となり、屋久島は結界から解放される運びとなった。

 次元ドルイドのハイラスは、大地母神ガイアに仕え、この地の森の番人として嬉々として仕事をし、幸せで充実した毎日を過ごすこととなった。次元転移の呪いもガイアの加護のおかげか発動することはなく、ハイラスの旅は終わったように思われる。

 

 花粉症ガール・粉杉翔花は、モスラの力の一分だけを身に宿し、父親のNOVAや友だちと共に、ゲンブの操縦するラビットタンクに乗っての帰還となった。

 再会した父娘や仲間たちの物語は、なおも続くが、今はこれにて一件落着。めでたしめでたし。

(花粉症ガール翔花伝 新・屋久島編 これにて完結)