久々のロードスTRPG話
ヒノキ「ロードス新刊発売を機に、久々にTRPGの話をするのじゃ」
晶華「ゴメンね、リナ老師。本当は、私が魔法使いと精霊使いの話をする係だったのに、準備ができてなくて」
ヒノキ「ふん。そなたは所詮、先日のゴブリンスレイヤーRPGが初プレイのTRPG素人。それを、新兄さんの娘だからと、過剰な期待を寄せたわらわが甘かったのじゃ」
晶華「そ、そんな言い方をしなくてもいいじゃない(涙目)。私だって、ロードス島戦記への愛は強いんだから。これからしっかり勉強するつもりよ」
ヒノキ「では、尋ねるが、ロードス島戦記RPGにおける基本職6つの名称を答えよ」
晶華「そんなの簡単よ。騎士、戦士、盗賊、魔術師、精霊使い、司祭よね」
ヒノキ「それを英語に直すと?」
晶華「え? 確か、ナイト、ウォリアー、スカウト、ソーサラー、シャーマン、プリーストだったかしら?」
ヒノキ「惜しい。スカウトではなく、シーフじゃ」
晶華「あれ? 確か、ソード・ワールドやゴブスレRPGでは、スカウトだったはず」
ヒノキ「しかし、ロードスRPGでの盗賊基本職はシーフなのじゃ。というのも、斥候(スカウト)は上級職の一つに設定されているからの。この辺のシーフとスカウトの違いは、ややこしい歴史があるので、今回はそういう話からしてやろう」
シーフとスカウトとローグと
ヒノキ「まず、現在、いわゆるRPGの盗賊系のキャラを表現する英語は、Thief、Scout、Rogueの3つが主流となっておる」
晶華「ローグといえば、仮面ライダーよね。NOVAちゃんが大好きだった、げんとくん」
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ヒノキ「うむ。他には、スターウォーズ外伝や、X-Menのキャラクター名としても有名じゃな」
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ヒノキ「ローグは悪漢という意味で、アメコミヒーローのフラッシュの敵役であるキャプテン・コールドもローグと呼称されたチームのメンバーじゃな。それはともかく、クラシックD&Dではシーフと呼ばれていた盗賊系キャラは、AD&D2版からシーフとバードを含めてローグ系職業のカテゴリーに含まれ、3版以降はシーフではなく、完全にローグとなっておる。よって、現在の海外RPGの盗賊系軽戦士キャラは幅広くローグと呼ばれており、そのうち街での盗みに特化したキャラに限って、シーフということになる」
晶華「シーフはこそこそした泥棒って感じで、ローグの方は腕っぷしの強いならず者ってイメージかな」
ヒノキ「まあ、そんなところじゃろう。ローグを盗賊系の職業名として最初に採用したRPGは、T&Tではないかと言われていてな。もっとも、T&Tの盗賊はゴロツキ魔術師(Rogue Wizard)を縮めてローグと呼ばれ、専門家である戦士と魔術師の間の中途半端な職業じゃから、D&D的な迷宮探検の技術者的な盗賊とは違ったキャラ性なんじゃがの。それでも積極的に前線でも戦える盗賊ってローグのイメージは大きいわけじゃよ」
晶華「クラシックD&Dの盗賊(シーフ)さんは、前線では戦えないキャラだったそうね」
ヒノキ「革鎧しか着れず、HPが魔術師並みに低いからのう。3版以降は、打たれ弱いけど強力なアタッカーとして機能したり、回避主体の軽戦士の役割が見直されるようにもなったが、それには日本のRPGシステムの影響も少なからずあるのだろう、と考えておる」
晶華「アメリカ人にとっては力が正義で、東洋人にとっては技や素早さが正義って風潮もあったらしいものね」
ヒノキ「海外の話はこれぐらいにして、日本の話に移ろう。スカウトを盗賊系キャラの呼称として定着させたRPGの一つは、コンパニオン版のロードスであり、その元システムとも言うべきパソコンゲーム版であったろう」
晶華「スカウトの本来の意味は偵察兵だっけ」
ヒノキ「そうじゃの。ファンタジーRPGではないが、古典的SFRPGの『トラベラー』がスカウトという組織を偵察局と訳していて、要は未開の惑星を開拓するための調査部門だったわけじゃが、単なる盗賊とは異なる調査役の軽戦士冒険者をスカウトと呼称したことが、SNEのちょっとした発明の可能性もある」
晶華「あれ? ロードスRPGの盗賊ってシーフだよね。スカウトは上級職だって言ってたと思うけど」
ヒノキ「現在はな。が、最初のコンパニオン版では、スカウトだったのじゃ。これには物語的な背景もあっての。リプレイの2作目まではクラシックD&Dを使っていたから、盗賊はシーフだったのじゃが、ライデンの街で悪行を重ねていた盗賊(シーフ)ギルドが、パーンの仲間として冒険したこともあるフォースの率いる義賊(スカウト)ギルドによって壊滅された。そこからロードスの冒険者盗賊はスカウトと呼称され、ロードス島RPGやクリスタニアRPGでも、それが踏襲される。つまり、英雄戦争の時期はシーフだったけど、後の邪神戦争においてスカウトと呼ばれるのが、ロードス盗賊史ということじゃ」
晶華「ああ。今のロードスRPGは英雄戦争時代が背景だから、盗賊はシーフなんだね。納得したよ」
ヒノキ「一方、北のアレクラスト大陸では、シーフ技能が健在。スカウト技能が登場するのは、別世界のラクシアにおいて、シーフ技能が戦闘用のフェンサーと探索用のスカウトに分割されてのことになる」
晶華「うう、ややこしいよ。つまり、最初はロードスRPGがスカウトを採用し、ソード・ワールドがシーフだったのに、今はロードスの職業名がシーフで、2.0以降のソード・ワールドの技能名がスカウトに置き換わったのね。そりゃ、間違えるよ」
ヒノキ「この辺、テストに出た時はケアレスミスに気を付けることじゃ」
晶華「何のテストよ?」
ヒノキ「もちろん、ソード・ワールド&ロードス検定じゃよ」
晶華「そんなものあるの?」
ヒノキ「ロードスに限らんが、一応、こんなものもあっての」
stradatrasversale.blog60.fc2.com
寄り道オンライン
ヒノキ「なお、ロードスの職業といえば、今の時代は、これについても見ておかねばなるまい」
晶華「ええと、これって、オンラインゲームよね」
ヒノキ「そう。TRPGとは異なるシステムじゃが、選べる職業は少年騎士、マイリーの女神官、ハーフエルフの魔術師、グラスランナーの少女盗賊、エルフの女精霊使い、闇の森の蛮族戦士の6種類となっておる。ドワーフがないのが残念じゃが。今回のテーマである盗賊は、ベース職業がローグで、一次職がスカウトとシーフに分かれ、そこからさらに二次職のパーフェクト・ストライダーとマスター・アサッシンに育成できる仕様」
晶華「ええと、スカウトとシーフで何が違うの?」
ヒノキ「スカウトは通常攻撃の速度特化で、シーフはスキルによるバフとデバフで攻撃力を高めるテクニカルな職業らしい。イラストイメージじゃと、陽性のスカウトと陰性のシーフって感じじゃの」
晶華「リナ老師はオンラインゲームもプレイしているの?」
ヒノキ「いや。さすがにそこまで遊んでいる余裕はないが、一応ロードスマニアたるもの、チェックはしておかねば、と思っての」
晶華「ロードスだから興味はあるけど、今回の話でそこまで踏み込むと、肝心のTRPG話ができないから、紹介だけで終わっておくね」
ヒノキ「うう。騎士のベース職がエスカイア(見習い騎士)とか、司祭がオラクル(神託を受けし者)とか、そういうネーミング話も興味があって、語りたいのじゃが」
晶華「いちいちマニアック過ぎるよ」
盗賊の上級職
ヒノキ「では、TRPGに話を戻して、上級職の話をするぞ」
晶華「ええ? ここは初心者の人に向けて、盗賊って職業の紹介とか、運用方法の話をするべきじゃない?」
ヒノキ「そんなものは、どこの解説記事でも読めるじゃろう。 今の時代、多少なりともファンタジーゲームに興味のある者なら、盗賊というのが鍵開けや罠外しなどの専門家で、重い鎧は着られないけど、奇襲攻撃や飛び道具やスピード戦法に長け、ゲームによっては敵の持つアイテムなどを盗むこともできて、ファイナルファンタジーの6や9なんかでは主人公格にも抜擢された重要職業であることは、いちいち語る必要もなかろう」
晶華「ファイナルファンタジーの6や9なんて、例が古いよ」
ヒノキ「だったら、ドラクエ11のカミュを例に挙げればよいのかの」
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晶華「盗賊ってのが、RPG界でメジャーな職業だというのは分かった。では、ロードスRPGに話を戻して、上級職はどうなってるの?」
ヒノキ「かつての文庫版ルールでは5種類。弓使い、暗殺者、遺跡荒らし、海賊、怪盗となっておる」
晶華「順番に、アオレンジャー、カクレンジャー、ボウケンジャー、ゴウカイジャー、ルパンレンジャーといったところかしら」
ヒノキ「アオレンジャーだけ個人名なのと、カクレンジャーは忍者であって暗殺者とは少し違うということを除けば、おおむね間違ってはおらんが、ロードスの海賊は宇宙海賊でないことは念を押しておく」
晶華「あと、ルパンレンジャーさんは怪盗でなくて、漢字違いの快盗ってこともマニアックなツボね。それで、カーラ様の依り代にもなったウッドチャックさんは何になるのかしら」
ヒノキ「怪盗じゃ」
晶華「じゃあ、第2部のフォースさんは?」
ヒノキ「怪盗じゃ」
晶華「だったら、第3部のライナさんは?」
ヒノキ「怪盗じゃ」
晶華「……仮面ライダーディエンドは?」
ヒノキ「海東じゃ」
晶華「もう。ロードスのメジャーな盗賊は、怪盗しかいないの?」
ヒノキ「一応、第2部のグラスランナー、マール君は遺跡荒らしに設定されておる」
晶華「あれ? マール君ってウォリアー(戦士)じゃなかった? 文庫版リプレイでは盗賊じゃなかったと思うんだけど」
ヒノキ「元々は、クラシックD&Dのハーフリングで、その後、コンパニオン版ルールではグラスランナーのウォリアーに切り替えられ、文庫版ルールでは盗賊系に変更されておる」
晶華「う〜ん、ここまで怪盗だらけだと、他の上級職を設定した意味があまり感じられないんだけど」
ヒノキ「まあ、暗殺者や海賊は、どちらかというと悪役系じゃしの。暗黒騎士などと同様、NPC用と見なした方がよいのかもしれん。弓使いは使用武器の問題じゃろう。ロードスのキャラで弓を主武器にした盗賊キャラは意外といなかったのではないか? どちらかと言えば、アラニアの森林衛士(ウッド・レンジャー)って感じがある」
晶華「そう言えば、ロードスRPGにはレンジャーって職業がないのよね。どうしてかしら?」
ヒノキ「レンジャーは野外活動に長けた軽装戦士で、戦士や盗賊、精霊使いが特技の選択次第で近いスタイルになれるからじゃろうな。一方、国家間戦争がテーマのロードスよりも野外活動の頻度が高いクリスタニアRPGでは、レンジャーが実装されておる。RPGシステムの発展史では、クラシックD&D→ロードス島コンパニオン(一部AD&Dを参考にしたりも)→クリスタニアRPG(一部ソード・ワールドの要素を取り込んだりも)という流れがあって、それとは別の発展軸にロードス島コンパニオン→文庫版ロードスRPG→現在の新ロードスRPGという流れがある」
晶華「文庫版ルールは、GURPSなどの影響もあって、元のルールにはなかった大量の技能(特技)を導入しながら、上級職も加えて、キャラ育成のバリエーションを高めた作品ね。それを今回の新ロードスRPGでは、扱いにくい面もあった大量の特技や上級職のデータを整理し、プレイアビリティーを高めた作品ということになるのかしら。ただ、時代を英雄戦争のみに限定し、選択肢も減ったことで、文庫版を知る者にとっては値段の割に、物足りない情報量になってしまい、追加ルールが待ち望まれるようになっていた、と」
ヒノキ「追加ルールは、秋以降の新情報を待つとして、現ルールの上級職に移るぞ。盗賊系の上級職は全面見直しが図られ、その結果、斥候(スカウト)、密偵(エージェント)、怪盗(ファントム・シーフ)の3種になった」
晶華「ファントム・シーフって何だか格好いい響きね」
ヒノキ「ああ。文庫版の怪盗は、単に都市での活動に長けたというだけであったが、新ルールの怪盗は魔法が使えるようになっている。騎士上級職の魔法戦士同様、3レベルまでの古代語魔法および共通語魔法じゃが、それでも魔法で鍵開けができたり、スリープ・クラウドで眠らせたり、レビテーションで空中浮遊ができる怪盗というのは、ワクワクするイメージに満ち溢れておる」
晶華「うん、確かに魔法怪盗って憧れるわね。私もそんな怪盗になりたい(うっとり)」
ヒノキ「お前さんは、去年の今ごろ、コンパーニュの塔に忍び込んで、さんざん荒らし回ったであろうが。忘れたとは言わさんぞ」
晶華「そう。あれは私が改名する前、翔花2号を名乗っていた遠い夏の日の思い出。囚われたお姉ちゃんを助けるためにコンパーニュの塔に忍び込んだ私は、リナ老師と死闘を繰り広げるも力及ばず、遠い未来に放逐されて苦難の道を歩むことになったのね」
ヒノキ「ふむ。あれは、わらわもやり過ぎたと反省しておるのじゃ。ゆえに、奥義の朱雀幻魔拳弐式・時空天翔は封印して、あれ以上、時空の歪みを引き起こさないように心がけたのじゃが、そんなわらわの決意もむなしく、時の魔王のせいで今年の時空は歪みまくり。一体、この結末はどうなるものやら、と今でも気を揉んでいる」
晶華「どれだけ時空が歪もうと、それで伝説のロードスが蘇るなら、私は大歓迎だけどね。できれば、100年後の物語にも、カーラ様が降臨してくれないかしら」
ヒノキ「カシュー様の子孫と、スパークと小ニースの子孫と、ディードリットが国家の存亡をかけて戦う物語じゃったな。主役のライルは、マーモ公国の第4王子で、3人の兄と3人の姉がいるそうじゃが、どれだけ子沢山なんじゃ、マーモ公王は! とツッコミを入れずにはいられない」
晶華「マーファ様の加護の賜物ね」
ヒノキ「気になるのは、果たしてパーンの子孫はいるのか? という点じゃな。もしも、ディードリットが独り身であれば、ロードスの騎士は甲斐性なしという評判が立つこと疑いない。わらわとしては、パーンとディードの間にハーフエルフの勇者が生まれていて、主人公のライルの親友もしくはライバルになる展開を望むが、カシューの末裔でロードス覇者を目指す野心家のフレイム王ディアスも気になる。ディアスは、グランクレストのミルザーの系譜の強キャラなのか、とかな」
晶華「NOVAちゃん、早くロードス新刊を手に入れて来ないかしら」
ヒノキ「いささか中途半端じゃが、今回の記事はこれぐらいとしておこう。シーフ上級職の怪盗、斥候、密偵の話の続きは次回につなげて、それから司祭か魔術師の話に展開すればよかろう」
晶華「うん。リナ老師の講釈を楽しみにしているよ」
ヒノキ「全てをわらわに押しつけるな。魔術師は、お主がやるんじゃ。それまで、しっかり勉強するように」
晶華「うう、これを読んでるかもしれない学生さんの皆さん。宿題を溜め込むと、目上の大人からチクチクいじめられて、ストレスが溜まるので、計画的に終わらせようね。私も頑張るから(たぶん)」
(当記事 完)