コール・オブ・ガイア
謎の声(我が遠き娘よ、目覚めなさい)
翔花「ううん、お早う、NOVAちゃん」
謎の声(私はWhite NOVAではありません。新しい天空の星ではなく、古き大地の精なり)
翔花「え、ここはどこ? 私は誰? 私はそう、花粉症ガールの粉杉翔花よ。私の心に話しかける貴女は誰なのかしら。何だか懐かしい気もする」
謎の声(私はガイア)
翔花「ああ、ギリギリまで頑張って、のウルトラマン? それとも六神合体のコアロボット?」
ガイア(どちらも違います。大地母神ガイアと言えば伝わるでしょうか。あるいはTerraと呼ばれることもありますし、今は縄文杉を通じて、あなたに語りかけています。屋久島へようこそ、翔花。我が眷属にして、遠き娘よ)
翔花「え、もしかして、お母さま? いいえ、遠き娘だから、お祖母さま? いや、もっと前だから、ひいひいひいひいひい……ヒヒヒ……何回続けたらいいのか分からないけど、とにかくヒヒヒのお祖母さまってことね。何だかヒノキちゃんみたい」
ガイア(ヒノキ……ああ、ヒノキの精霊、南郷阿里のことですね。あの娘はまだまだ未熟とは言え、九州守護の一翼として、よく働いてくれております)
翔花「うん、私がここまで来れたのも、ヒノキちゃんの助けがあったからだよ。ここは屋久島で合っているのよね」
ガイア(ええ、年は変わり、世界は改変され、あなたの物語は新たな舞台で展開されるようになり、未完だった屋久島編は新・屋久島編と装いも新たになりましたが、確かにここは屋久島です)
過去への旅立ち
翔花「ええと、貴女は私のヒヒヒお祖母さまのガイアちゃんで、今は縄文杉の化身ということね。私はKPちゃんとシロちゃんの三人でここに来たはずなんだけど、二人はどうなったのかな」
ガイア(ヒヒヒお祖母さまという呼び方はやめて欲しいのですが、ガイアちゃんは可愛くて良いですね。あなたがそう呼ぶことは特別に認めましょう。ケイPというのは、あのドゴラを元に魔改造された不定形の生物だかメカだか分からない物体のことですか。あれは異物ゆえ結界で排除しようかとも思いましたが、あなたの大切なアイテムだと判断し、あなたの側に置くことを許可しました。ただし、自由に行動されては島の平和を脅かしかねないと判断し、意思を封印し、あなたの物理的な肉体を守護する彫像としての任務に就いてもらっています)
翔花「え? 意思を封印って無事なの? ひどいことをしていない?」
ガイア(大丈夫。あなたが目覚めると、それに伴い、意思を取り戻すようにしてあります。言わば、一時的に催眠状態に置いて、人形のようになってはいますが、それも全てはあなたを守るため。元々、あなたの守護騎士として振る舞うように設定されているようですから、大きな問題はないかと)
翔花「私が目覚めると、って、私、起きてるよ」
ガイア(いいえ、今のあなたは思念体。肉体的には眠りについた状態です)
翔花「思念体……だから死ねんたい」
ガイア(ええ、あなたもドゴラも死にません。言霊魔術師ゆずりの戯言はそれぐらいにして、シロちゃん、すなわちリトルシーサーにして、もう一人の獣の巫女の方ですね。彼女は今、ふもとの方で修行に励んでおります)
翔花「え、ふもとってことは、ここは山の上なの?」
ガイア(そうです。縄文杉は標高1300メートルの土地にあります。ふもとから登るには、人の足で8時間ほど掛かるでしょうか。彼女は試練を果たして、ここまで登って来なければなりません)
翔花「ええと、私の方から迎えに行った方が早いと思うんだけど」
ガイア(いいえ。あなたには別の試練があります。モスラの力を会得するために。この島を蝕む天空より来た魔の水晶獣を撃退するには、モスラの力が欠かせません)
翔花「魔の水晶獣?」
ガイア(別名スペースG。かつて福岡に襲来した宇宙凶悪戦闘獣の残留因子がこの屋久島で目覚めし者です。かつて怪獣王と、人類の未来技術で製作されたスーパーロボットの協力で倒されたという伝承もあるようですが、現在の怪獣王の力は複数の欠片に分散し、ある者は記憶を失い、ある者は奇怪に進化し、ある者は遠き未来の地球に君臨し、ある者は米国の地で待機中という、全盛期とは程遠い状態にあります)
翔花「分かった。そのスペースGとやらを倒せばいいんだね。母なるモスラの力と、未来技術のスーパーロボットの力と、怪獣王の力を結集して」
ガイア(察しが良くて助かります。怪獣王の欠片との接触は、シロちゃん、すなわち獣の巫女が果たしている最中ですが、彼女にとっては辛い心の試練になるかもしれません。私怨を抑えて大義に目覚めることができるかが重要になりますが、私にできるのは彼女の心の光を信じるのみ。そして、あなたの果たすべき試練は、思念体のまま過去の時代に飛ぶこと)
翔花「私が過去の時代に?」
ガイア(そう。かつて縄文杉の力でモスラも辿った道。モスラは試練を果たして、グリーンモスラからレインボーモスラ、アクアモスラ、鎧モスラへのフォームチェンジ能力を会得し、やがて究極のモスラ・レオ、またの名をモスラ・エクセルドへと進化し、デスギドラ、ダガーラ、そして最強の黄金破壊神獣キングギドラをも撃退した。あなたがモスラの力を習得するには、過去への旅が欠かせません)
翔花「過去への旅かあ。私にできるかなあ」
ガイア(大丈夫。あなたは時空魔術師の魂を受け継いだ存在。どうして、あなたがWhite NOVAの娘として誕生したかが分かりますか? 全ては過去と未来をつなぐため)
翔花「過去と未来をつなぐって、一人でそんなこと、できないよ」
ガイア(一人ではありません。もう一人のあなた、粉杉翔花2号、改め闇から光に目覚めつつある晶華は、すでに未来の世界に飛び、そこで過酷な試練に直面しました。1号は過去で試練を果たし、2号は未来で試練を果たし、そうすることで過去と未来がつながるのです。もちろん、花粉症ガールは試練の中心ですが、この世界は花粉症ガール、ただそれだけで作られているわけではありません。あなた達を中心に、人や怪獣、メカなど多くの想いがつながることで、新たな物語の奇跡が紡ぎ出される。それこそが終わらない明日へのファンタジー、時空をかける希望なのです。粉杉翔花、覚悟を決めて下さい)
翔花「分かった。戦うのは私だけじゃない。他の人たちも、それぞれの場所で自分の戦いを懸命に繰り広げている。だったら、私も怖がってはいられない。花粉症ガール1号として、できる限りのことをするんだ。それがNOVAちゃんのため、いや、世界のためになるって信じて」
ガイア(それでは、時空を越えた試練に旅立ちなさい。そして、見事に成長しての帰還を待っていますよ、我が遠き娘よ)
翔花「うん、行ってくるよ。ヒヒヒお祖母さま」
ガイア(……ダメです。その呼び方じゃ、過去へのゲートは開けません)
翔花「ええ? だったら行ってくるよ、ガイアちゃん」
ガイア(そうです。行ってらっしゃい。翔花ちゃん💞)
こうして、粉杉翔花は過去へと旅立った。
その物語が語られるのがいつになるか、それは誰も知らない大宇宙の謎である(オイ)
(仕切り直しの第1話完。次はシロちゃんメインの話の予定)