花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

剣の世界のバトル遊戯前日譚(コンパーニュの塔編4話)

日野木アリナの温泉ラブタイム述懐


はあ、みんなで入るキャッキャウフフな温泉タイムもいいが、一人でのんびり入る温泉もいいものじゃの。
おまけに、今朝はプリキュアも世界一周の末に温泉に入り、パトレン1号の圭一郎様も温泉を楽しむ。やはり時代は温泉のようじゃ。コンパーニュの時代きたー、とは正にこのこと。
温泉大国の九州に居を構えるヒノキ風呂の温泉精霊少女のわらわとしては、かねてから精霊ネットで大々的にプッシュし続けた甲斐があったというものよ、と喜びしきり。これを機にプリキュアを助けた神秘の天狗温泉」「パトレン圭ちゃんとルパンレッドも絶賛! 灼熱の赤レッドルージュロッソ温泉」でも作ろうか。
もちろん、客を取る商業用なら広告詐欺というものじゃが、単に個人で看板立てて、人も知らず、世も知らず、プライベートで可愛い友や大切な従者と楽しむ分には罰も当たるまい。


それにしても、コナっちゃんとシロがあれほど仲良くなるとはのう。未熟なコナっちゃんを見兼ねたシロが姉ぶって、いろいろ世話を焼く姿は見ていてほのぼのするというもの。
二人で仲良く温泉に入ったり、武闘場で擬似バトルをしたり、お互いの未熟さを認めながら切磋琢磨する姿は、一月前には考えられんことじゃった。
考えてみれば、シロも自分と年令の近い友人はいなかったからの。ずっと大人の中で修行一筋に生きてきたが、コナっちゃんの人懐っこさや素直さに接するにつれ、いろいろと鬱屈したものが解消されたのかもしれん。


そして、何よりも陰からお膳立てを整えてくれたのが、コナっちゃんの妹御のメガネシルバーかも知れんのう。
最初に出会った時は、小生意気でひねくれて高慢極まりない身の程知らずの小娘と思うておったが、なかなかどうして知謀に優れ、わらわたちの心の闇の原因を鋭く見抜いて、解消のヒントを残して消えた。あれこそ、正に人も知らず、世も知らず影となりて闇を浄化する忍びの姿かもしれんのう。
神出鬼没で突如として現れ、嵐を巻き起こし、爽やかな残り香を残して消え去りおった。まあ、登場や退場の演出はわらわの技によるものじゃが、結果的に「さすらいの風来坊のクレナイ・ガイ様」にも匹敵する好印象を残して消えた。あれが花粉症ガールのクールな2号。いけ好かないキャラとして登場しながら、実はいい人だってのは、正に2番手ヒーローのあるべき姿かもしれん。


問題は、わらわのミスで現在行方不明になってしまったことじゃ。
わらわがV3なら、シルバー殿はライダーマンになるのかのう。強く優しい君はどこにいる?
未来のどこかに消えた彼女には花粉症ガール4号の称号を送りたいが、そもそも、彼女は2号であるからして、しかも「帰ってきた彼女に、シルバーアイズを返却することで、わらわのV3称号を認めてくれる」という。
つまり、彼女が帰って来なければ、わらわのV3称号は中途半端な仮仕様みたいなものでしかない。そのためにも、2号殿には一刻も早く、帰還してもらわねばの。


そろそろ、夏も終わって、新星殿も時間ができた頃合いと思われる。
まだ、2号殿の行方が分からないのであれば、わらわも捜索の協力を申し出ることにしようか。自分の仕出かした過ちの責任は取らねば、日野木アリナの信義にもとるでの。
うむ、コナっちゃんのためにも、2号殿は無事に帰還してもらわねばならんのじゃ。そして、正式に花粉症ガール・トリオとして、メガネンジャーにも負けぬ名乗りを上げるのが、今のわらわの夢。
そう、夢のためには業火一直線。これをわらわのキャッチフレーズの土台にするのじゃ。よし、湯から上がれば、早速、新星殿に連絡を取ろう。

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ヒノキ「おや、新星殿? そちらから連絡をしてくれるとは。わらわの方から差し上げようと思ったのじゃが。え? 2号殿が帰ってきた? それは良かった。え、あまり良くない? タイムジャッカー? 3年間の過酷な日々? コウモリ怪人に改造された? 何とか洗脳状態からは解除されたものの、現在、傷心療養中? 敵の刺客がいつ来るか分からない? 分かった。2号殿にはいろいろ世話になって、お礼も言いたいと思っているのじゃが、それにしても許せんのはタイムジャッカーの連中じゃな。困った時には、コンパーニュも総出を上げて力になるぞ。いつでも声を掛けてくれるといい。2号殿にはくれぐれもよろしくな。お詫びとお礼の言葉を伝えてくだされ。シルバーアイズは大切に保管しているともな。そして元気な姿で復帰できることを楽しみにしているぞ、とも(じわっと涙目)」


ふう、まさか、わらわの時空天翔がこのような悲劇のきっかけになろうとは。やはり今後は、安易な気持ちで時空の技に手を出すのは控えた方が良さそうじゃ。今は世界線がいろいろ不安定すぎるからの。予期できぬ副作用が起こりもしよう。
そして、新星殿はわらわを一言も責めはしなかったが、その心意気だけでも、さすがはサブロー殿の同盟相手にふさわしいと言えるじゃろうな。
コンパーニュとしては、伝説の時空魔術師との友好関係を維持できるよう、あらゆる努力を傾ける方針で事に当たるのみじゃ。

翔花とシロの交友譚


翔花「キャーーーッ、かわせない。花粉分解」

シロ「チッ、臆病者め。だが、その技に頼りすぎだ。もう、いい加減、見切られている、と言ったろう。目で追ってもムダだが、空気の微かな動きを読み取る獣忍者の感覚をナメんなよ」

翔花「そう言っても、背後を取られてるじゃない。後ろがガラ空きだよ」

シロ「わざと取らせたんだ。花粉分解の弱点は、長時間の維持ができないことと、出現時に動きが止まって、無防備になること。後ろに出て来ることさえ分かっていれば、そりゃっ、背負い投げ!」

翔花「キャーーーーッ!(投げ飛ばされ、受け身も取れずに衝撃をまともに受ける)バタンキュー!」

シロ「こんなことで、あっさり気絶するな。喝!」

翔花「プハーーーッ。やっぱり、シロちゃん、強すぎるよ。何度も投げ飛ばされて、頭フラフラだよーッ。もう、休もうよ」

シロ「これぐらいのことで、弱音を吐くな。ゲンブとトレーニングしてるケイPを見習え。あいつは教えられたことを素直に吸収して、相応の武芸に達しているぞ」

翔花「だったら、それでいいじゃない。私が実戦で戦うときはドゴランアーマーを着るから、戦闘技術についてはKPちゃんに任せればいいんだし」

シロ「そういう甘えた気持ちだから、ダメなんだ。道具が良くても使い手の技量が伴っていなければ、せっかくの宝も持ち腐れ。お前自身がもっと強くなれば、ドゴランアーマーと連携した攻撃だって可能になる。全く、どうして、こんな甘えた奴にゲンブは倒されたんだ。手を抜いていたとしか思えん」

翔花「それは、NOVAちゃんやクウガさんの力を借りたから」

シロ「つまり、お前一人じゃ何もできないってことじゃないか」

翔花「そんなことないもん。花粉症バスターや、チグリス花粉翔破が使えるし」

シロ「花粉症バスターは牽制にしかならん。覆面で防護しているボクのような忍びには通用しないし。チグリス花粉翔破は確かに強力だが、技を放つ際のモーションが大きすぎる。動きの素早い相手には、当たらないのでどうということもない。ボクのような未熟な忍びにさえ通用しない技で、大して誇れると思うな」

翔花「ウッ、ゴメンなさい。そうだよね。せっかくシロちゃんが時間を掛けて、私の訓練に付き合ってくれているのに、私が弱音を吐いてちゃダメだよね。もっと強くならないと。まだ頑張らないと」

シロ「……休憩だ。ボクも慣れない説教のために、喉が渇いた。水分はこまめに取らないと、フラついた頭じゃ何も修得できない。自分で立てるか」

翔花「うん、足元がフラつくけど、何とかね。心配してくれてありがとう。シロちゃんは、言葉は厳しいけど、優しいよね」

シロ「や、優しいんじゃない。効率性を優先しているだけだ。それに、お前を鍛えるのは、アリナ様の命令だからな。与えられた仕事には全力を傾ける。ただ、それだけのことだ。ほら、ドリンク」

翔花「わーい、シロちゃん特製の栄養ドリンク。訓練の後のこれが楽しみなんだよね。光合成だけじゃ味わえない喜びだよ(ニッコリ)」

シロ「べ、別にお前のために作ったんじゃないんだからな。アリナ様のために作ったのが余っているんだから、捨てるのがもったいない。言わば、アリナ様のおこぼれだ。アリナ様の恵みと思って、大事に飲むんだぞ」

翔花「うん、もちろんだよ。それにしてもシロちゃんって凄いんだね。私よりも小さいのに、忍びの武芸とデザート作りの腕をそんなに磨いて。天才少女ってのはシロちゃんみたいな娘を言うんだね、きっと」

シロ「……翔花、お前、ボクが何歳だと思っている?」

翔花「う〜ん、6歳から8歳ぐらい?」

シロ「こう見えても、2002年生まれだ」

翔花「え? 2002年って、クウガさんが2000年で、アギトさんが2001年だから、龍騎さんの年になるのかな。ええと、戦隊はタイムレンジャーガオレンジャーの次だから、ああ、ハリケンジャーの年なのね。だから忍者なのかあ」

シロ「……別に2002年生まれじゃなくても、忍者はいるぞ」

翔花「そりゃ、いるよね。戦隊だけでも、94年のカクレンジャー、2015年のニンニンジャーがいるし、他にも67年の赤影さん、72年の嵐さんや、76年のキャプターさん、82年から84年まで雑誌で活躍した忍者ライダーZXさん、88年のジライヤさん。他にも科学忍者隊とか、忍者ロボットを含めたら、忍者はいつの時代にもいるってことだよね」

シロ「何で、そんな知識だけは妙に詳しいんだ。いや、皆まで言うな。どうせ、『NOVAちゃんが教えてくれたから』って満面の笑みで答えるだけだからな。いい加減、聞き飽きた。お前には、そういうパパがいてくれていいよなあ」

翔花「シロちゃんだって、パパ代わりのゲンブさんがいるじゃない。本当のパパは亡くなったって聞いたけど、私のNOVAちゃんも本当のパパじゃないよ。精霊は、普通の生き物と違って、人との魂の契約で心を持つものだし、NOVAちゃんが私と契約してくれて、娘として扱ってくれたから、父娘の関係でいられるの。NOVAちゃんが契約してくれなければ、今ごろは私、消滅していたはずだから」

シロ「なるほど、消滅を免れさせてくれた恩人ゆえの感謝か。確か、お前はまだ生まれてから1歳に満たないんだってな。見た目はボクより大きくて、10代半ばに見えるだけに、いちいち調子が狂う」

翔花「それで結局、シロちゃんは何歳なの?」

シロ「2002年生まれって言っただろう? 計算すれば分かるはずだ」

翔花「ええと、今年が2018年だから、ええと2018−2002で、ダメだよ、4桁なんて数字が大き過ぎて計算できないよ〜(涙目)」

シロ「お前はバカか。2000は同じなんだから、下2桁だけ引けばいいだろうが」

翔花「あ、そうか。シロちゃん、頭いい。すると18−2で、ええと8から2を引いて6で、1繰り下がるから、やっぱり6歳で合ってる?」

シロ「何で繰り下げるんだよ。8から2が普通に引けてるんだから、繰り下げるなよ」

翔花「だって、NOVAちゃんが寝言で言ってたもん。『引き算は繰り下がりで間違えないようにすることが大事だからな。そうそう、そこで1つ少なくなるから、繰り下がりを絶対に忘れるな』って」

シロ「お前のパパは寝言で算数教えてるのかよ。いや、仕事熱心な人はたまにそういうこともあるだろうし、ボクだって寝言で忍術の修行をしているのかもしれない。とにかく、6だったら2を足しても8になって、18にはならないだろう? 計算に自信がなければ、確かめ算ぐらいしろよ。大体、龍騎から後、平成ライダーは何人いるんだよ」

翔花「ええとファイズ、ブレード、ヒビキ、カブト、デンオー、キバ、ディケイド、ダブル、オーズ、フォーゼで指折り数えて10人か。次は、ウィザード、ガイム、ドライブ、ゴースト、エグゼイド、ビルド、ジオウで7人だから17年?」

シロ「……ボクが悪かった。平成ライダーはディケイドが半年放送だから、その分ズレて来るんだった。正確には16年。って、何で、そこまで覚えているのに18−2ができないのか理解に苦しむんだけど、きっと偏った教育環境だったんだろうな」

翔花「とにかく、シロちゃんは16歳……って、え〜、だったら、どうして、そんなに小さいのよ。成長が遅れてるの?」

シロ「今ごろ、そこに気づいたか。ったく、悲劇めいた打ち明け話になるかと思ったら気分が台無しだ。ボクは……父さんが殺されて、ショックを受けて10年間眠りについていたんだよ。それをアリナ様が美童(ミヤラビ)の祈りで、呼び覚ましてくれた。だから、実年令は16歳でも、外見年齢は6歳というわけで、ちょうど、お前とは逆のケースだな。ボクは10年を無駄に過ごしてしまったので、だから、その分、早く成熟して大人になって、父さんの仇を討てるようになりたいんだ」

翔花「そうなんだ。だったら、私も強くなって、仇討ちに協力するよ。仇が誰か分かってるの?」

シロ「ああ、ヒノキ三獣士の裏切り者セイリュウだ」

セイリュウの物語


翔花「お風呂、お風呂、楽しいお風呂♪」

シロ「ああ、ビッグボディ温泉は心も体も染み渡る。アリナ様は、そろそろゼブラ温泉に替えようか、とおっしゃっていたが、ボクのたっての願いを聞き入れて、ビッグボディ温泉の継続を認めてくださった。翔花、お前にとってNOVAちゃんとやらが恩人にして、契約主であるならば、ボクにとってはアリナ様こそそうだ。そう思えば、お前がしきりにNOVAちゃんを持ち上げるのも分かるし、許せる気もする。主君に忠義を尽くすは忍びの誇りゆえ」

翔花「で、さっきのセイリュウさんの話だけど、どうして黙ってしまったの?」

シロ「つい口を滑らせてしまったからな。これはコンパーニュの問題だから、お前には関係ない話だ。翔花、お前はお前の修行に専念すればいい」

翔花「もちろん修行はするよ。だけど、大切なお友達の悩みぐらい聞いてあげたっていいじゃない。ヒノキちゃんや、シロちゃんは、どっちも翔花の大切な友達だから、生まれて初めての友達なんだから、何とか力になってあげたい。だけど未熟だから力になれないって言うのなら、未熟でなくなればいい。そのための修行なんだって思うんだ。友達の悩みを知って知らないふりをするんだったら、何のための修行だか分からなくなってしまう」

シロ「……お前は、アリナ様並みにお人好しなんだな。精霊ってのは、みんなそういう風に考えるものなのか?」

翔花「精霊だからかどうかは知らないけど、私は未熟だから知らないこともいっぱいあるけど、大切な人に幸せになってもらいたい気持ちは、みんな同じじゃないかな。そういう想いが、私が頑張れる源だと思う。もちろん、想いだけでは何もできないから、力を付けないといけない。修行ってそのためのものなんでしょ?」

シロ「確かにな。セイリュウを倒して父さんの仇を討つ。それは譲れないボクの想いだけど、明らかに力が足りない。だから、もっと強くなりたい。だけど、この戦いにお前を巻き込むわけにはいかないんだ」

翔花「どうして?」

シロ「お前に相手が殺せるか? 仇を討つってのは暗い道なんだ。自分の心を闇に染めるぐらいのな。お前には、そういう闇が足りない。アリナ様もおっしゃった。お前は純粋な光のようなものだから、その可能性は失わせたくないって。武術なんかの修行は付き合ってやるし、それはボク自身の修行にもなる。だけど、ボクの闇にお前を巻き込みたくはないんだ。仇討ちってのは遊びじゃないんだし、生半可な覚悟で関わって欲しくはない。ボクの闇まで、お前は覗き込まなくていい。たとえ友達であっても、いや、友達だからこそだ」

翔花「う〜ん、光とか闇とか難しいことはよく分からないけど、シロちゃんが闇に染まっているってのは違うと思うな。確か白虎って、白でホワイトなんでしょ? だったら、NOVAちゃんといっしょで、闇じゃなくて陰、影を目指すべきじゃないかな。光と闇は敵対するけど、陽と陰は一つの姿の別の側面だって、NOVAちゃんは言っていた。太陽はいつでも太陽だけど、陰は月、月は満ち欠けして変幻自在。光がないのが闇だけど、月や影は陽光を映し出し、また陽光に生み出されるもの。シロちゃんは、闇に心を閉ざすのではなく、影とか陰の道、月明かりの道を歩むべきなんだと私は思う」

シロ「それだ! さっきは、お前をバカだと言って悪かった。新星殿の受け売りかも知れないが、お前の言葉は、ボクが欲しかった忍びの道の極意に通じるものに聞こえる。そうか、分かってしまえば簡単なことだったんだ。ボクは光から目を背けなければ、復讐は成就できないと思い込んでいたけど、それじゃダメだったんだな。ボクの目指すのは闇の道ではなく、影の道、そこに白き忍びとしての生き様を見い出す手掛かりがある。心に光があればこそ、闇に飲み込まれることなく、影の道を進むことができる。翔花、アリナ様がお前に見出した可能性ってこういうことだったんだな」

翔花「え、私、何もしてないよ。NOVAちゃんから聞いた話を口に出しただけで。それだけで何か悟っちゃったシロちゃんの方が凄いよ。私は何のことだかさっぱりだし、きっと忍びの修行に頑張ってきたシロちゃんだからこそ、つかむものがあったんだよ。良かったね、シロちゃん」

シロ「ハハハ、翔花、お前ってやつは本当に無為自然というか、天衣無縫というか、飾らない奴なんだな。いたずらに敵視したボクがバカみたいだった。アリナ様がボクに『お前から学べ』っておっしゃった時は、『お前のような未熟者から何を学ぶことがある』とバカにしていたんだ。だけど、お前はボクに見えない本質を見通す霊感みたいなものを備えているのかもしれない。それは精霊だからか、お前だからか知らないけど、ボクにヒントをくれたのは確かだ。礼を言うよ、ありがとう」

翔花「そう言ってくれると嬉しいな。だけど、セイリュウさんのこと、シロちゃんみたいに殺したいって思えるかどうかは分からない。だって、私はセイリュウさんのことを何も知らないもん。何も知らない相手を殺そうなんて、シロちゃんは思えるものなの?」

シロ「忍びの仕事ならな。それに親の仇だ。お前だって、NOVAちゃんとやらが殺されたら、どう思うか想像してみるんだな」

翔花「想像した(涙目)。そんなのイヤだよ。私、泣いちゃうよ。泣いて、泣いて、泣き叫んで、その後は……復讐よりも先に、NOVAちゃんを復活させたいと思うな。それとも、NOVAちゃんの魂を追いかけたり、探したり、NOVAちゃんの想いを感じ取ったり、とにかくNOVAちゃん一筋で追いかけて、NOVAちゃんの願いとかやりたかったことを私が受け継がないとって考えたり、いろいろすると思うけど、復讐? よく分からないよ。相手のことを憎く思うかもしれないし、やっつけたいと思うかもしれない。だけど、それをしてNOVAちゃんが喜んでくれるかな、って先に考えると思う」

シロ「……本当に好きなんだな、相手のことが。何だか、こっちまで泣けてきた。ボクにはそこまで思える父さんの思い出がない。セイリュウに殺されたのは2才のことだったからな。父さんの非業の最期を知ったのは4才のとき。それから心を閉ざした眠りに就き、目覚めたのは一昨年の夏。セイリュウの気配を感じたからか、アリナ様の歌声に呼び覚まされた。それからアリナさまのため、と、セイリュウを倒すために力を付けることだけが、ボクの人生の目的になった」

翔花「じゃあ、シロちゃんは、そのセイリュウって人と会ったことはないんだね」

シロ「ああ、アリナ様やゲンブから話を聞くだけだ。先代ビャッコの父さんが生きていた頃は、アリナ様の下で、父さん、ゲンブ、セイリュウの3人でヒノキ三獣士を結成していた戦友同士だったそうだが、セイリュウが裏切って父さんを殺害したらしい。詳しいことを聞きたいんだが、『いずれ時が来ればな。今のお前では受け止めるには荷が重すぎる。もっと強くなって成長すれば、話をしてやろう。それまではコンパーニュで腕を磨きながら精進するとよい』とアリナ様に言われて、今も修行中。ボクにできる話はこれだけだ」

翔花「ヒノキ三獣士の裏切り者セイリュウさんか。どういう人なんだろうな」

翔花の特性


翔花「わーい、風呂上がりに食べるハチミツたっぷりのアイス・ホットケーキは最高だね♪」


シロ「要は、ホットケーキを冷蔵庫に入れて冷やしただけなんだけどな。ボクはネコ舌だから、熱い食べ物はうまく味付けできん。だから、デザートや冷やし中華などのコールド系フードの担当だ。ちなみに、ホットケーキの日は1月25日、冷やし中華の日は7月7日ということになっている。
「また、1月25日は、小説家の池波正太郎や、2代目水戸黄門西村晃、そして石ノ森章太郎松本零士ライダーマン山口豪久メタルダーの妹尾青洸、ゴーカイレッドの小澤亮太など錚々たる面々の誕生日であることが、忍びの調査で判明している。円谷英二監督の命日であることもな。
「一方で、7月7日は、その円谷監督の誕生日であり、他にはSF作家のロバート・A・ハインラインビートルズリンゴ・スター、デカグリーン仙ちゃん役の伊藤陽佑などの誕生日でもある。シャーロック・ホームズの作者ドイルの命日でもあるが、ちょうど七夕になるからか、フィクションの世界でも、やたらと誕生日に設定されているキャラの多い日みたいだな。ヤマトの古代進ウルトラマンAに変身する北斗星司と南夕子の2人、ボトムズのキリコ・キュービーその他、いちいち挙げていくとキリがないので、この辺にしておこう」


翔花「シロちゃん、凄い。よく、そんな細かいことを覚えているね」

シロ「凄くない。覚えていない。手元の機械を使って、今この場で素早く調べただけだ。ボクはゲンブと違って、情報機器の扱いには慣れているからな。現代に生きる忍びの嗜みって奴だ。素で平成ライダーを全部言ってのける、お前の方が凄いと思うぞ」

翔花「そんなの簡単だよ。20作しかないもん。さすがの私も、戦隊シリーズを全部言え、と言われたら無理です。NOVAちゃんならできると思うけど」

シロ「時空魔術師にとっては、それも基本の嗜みってことになるのかな。突然、過去に飛ばされても、『おお、金目教が流行しているから、豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった時代だな』とか分かったりするんだろうな」

翔花「未来に飛ばされても、『おお、ドラえもんみたいなネコ型ロボットが普通に街を歩いているから22世紀かな。さすがに23世紀になれば、このタイプは廃れているだろう。いや、ちょっと待てよ。レトロブームが起こって、このタイプが再流行しているのかもしれん。どこかに、日付けを特定する手掛かりは? とりあえず、この時代の情報機器が何かを探してみるか。ネットもだいぶ進化しているだろうな、ワクワク』って言ってそうだけどね」

シロ「そんな呑気な御仁なのか、伝説の時空魔術師とやらは。もしも、お前が未来に飛ばされたら?」

翔花「『うわー、ここどこ? 私は誰? 私は、そう粉杉翔花。花粉症ガールよ。とりあえず、ピプペポパニック〜とお約束的に叫んでおいて、ええと、ええと、NOVAちゃんはどこ? いない? ふえ〜ん、シクシク(涙目)。 それならKPちゃんは? いない。どうしよう。私一人じゃ何もできないよ〜。だけど、負けない。こうなったら私一人でできることを探して、必ずNOVAちゃんのところに帰ってみせるんだから。花粉症の神さまだって見ていてくれる。よし、元気出てきた。とにかく、適当にその辺を散策してみましょう。待ってて、NOVAちゃん。この試練を乗り越えて、必ず帰るから、遠い世界から見守っていてね』って感じだと思う。シロちゃんだったら、どうする?」

シロ「ボクか。そうだな。『ムッ、何やらおかしな術にかけられて、どこかに転移させられたようだ。迂闊だった。ボクは自分の未熟さが許せない。だが、アリナ様の命を果たすためにも、必ずや生きて戻ってみせる。まずは、今の状況を探らねば。慎重に、物陰に潜んで、状況の推移を見守るとしよう。誰か今の状況を把握してそうな人物に目星をつけて、じっくり観察すれば、そこから活路は開けるはず。このシロき忍びをナメんなよ』って、ところかな」

翔花「さすがはシロちゃん。冷静に対処するんだね」

シロ「頭の中で想像しているだけならな。実際に、そこまで冷静に振る舞えるかは、その時になってみないと、ボクにも分からん。案外、不安に押しつぶされて、お前みたいにパニックを起こしてしまうかもしれん。未来といえば、お前の妹はどうしているんだろうな。アリナ様が心配しておられたが」

翔花「うん、たぶん大丈夫じゃないかな。妹の2号ちゃんは、私と違って頭がいいもん。きっと、うまく帰ってくる方法を見つけて、『たっだいま〜。お姉ちゃん、聞いて、聞いて。未来でこういうことがあったんだよ〜。正に「粉杉翔花2号の時空転移大冒険」って内容だけど、お姉ちゃんの参考になるかも』ってニコニコ話してくれる日が来るんじゃないかな」

シロ「ん? 2号って、そういうキャラじゃなかったような。もっと狡猾で高飛車で生意気な、『フッ、私の波乱万丈な旅の話を聞きたいと言うの? あなたのような未熟者が聞いて理解できるとは思わないけど、聞きたいというなら教えてあげるわ。特別にね』って感じの女じゃなかったのかな」

翔花「それはおかしな悪霊に取り憑かれて、夢でも見たんじゃない?」

シロ「このボクが? 確かに悪霊だか魔女だかに乗っ取られて、心の闇を突きつけてゾワゾワするようなホラーな悪夢は見たが、ボクにとって、お前の妹はそんな感じに思えて仕方ない。違うのか?」

翔花「う〜ん、私の知ってる2号ちゃんは、お姉ちゃん想いの優しいいい子だよ。シロちゃんは、きちんと2号ちゃんと話したことがないでしょ? ここに来て、ちょっと言い争いになって、すぐにヒノキちゃんにHYUN! と飛ばされちゃったから。辻褄合わせって何のことだったんだろう」

シロ「さあな。アリナ様がおっしゃるには、ちょっとした緊張状態のために、ボクの心の中で葛藤が生じて悪夢を見たらしい。お前に対する鬱屈した想いが幻覚みたいになって、ボクの心を苛んだらしいんだ。そういう憑き物が落ちてからは、だいぶすっきりしたようなんだが。魔女の霊は『アリナ様を裏切って、お前を魔女に差し出せば、ボクは幸せになれる』と誘惑してきたが、ボクはその誘惑に打ち勝ったことだけは覚えている」

翔花「魔女ねえ。そう言えば、NOVAちゃんが私たちの生まれる前に、花粉症大魔女って悪霊に取り憑かれていたんだって。その魔女との対決の結果、この私、粉杉翔花が生まれたらしいんだけど、そうすると花粉症大魔女こそが私たちのお母さんになるのかな? って尋ねたら、NOVAちゃんは、さあな、と口を濁して答えなかった。シロちゃんの見た魔女の霊って、花粉症大魔女に関係しているのかも」

シロ「花粉症大魔女だと? そんな物もいるのか。すると、ボクがお前の妹だと思っていたのは、大魔女だったのかもしれんな。あれは未熟なボクが太刀打ちできる相手じゃなかった。そう言えば、お前はボクと戦うとき、手を抜いているんじゃないか? 本当はもっと凄いことができるんじゃないか、と思うんだが」

翔花「え? そんなことないよ。シロちゃんの攻撃をかわそうと思って、何度かはかわせるようになったんだけど、連続攻撃されると、ついつい花粉分解に頼ってしまう。シロちゃんは、そういう特技を使わずに、身のこなしだけで避けられるようになれって言ってくれるけど、まだまだあれが精一杯なんだから」

シロ「お前、ボクとの戦いで催眠呪文を使ったことがないだろう」

翔花「え? ああ、そう言えば、昔、NOVAちゃん相手に使ったことがある。だけど、その後の敵は悪霊のケイソンさんだったり、ドゴラちゃんだったり、眠らない相手ばかりだったし、ゲンブさんは意思力が強いから眠ってくれそうになかったし、すっかり忘れていたよ。試しに使ってみる? ラリホーマ

シロ「うっ、ZZZ」

翔花「あ、あっさり眠っちゃった。ちょっと、シロちゃん、起きてよ。ザメハ」

シロ「はっ、バカな。一瞬で眠らされてしまうとは。不意打ちとは言え、お前のその魔力はアリナ様に匹敵するのでは? 抵抗の余地もなく熟睡してしまうなんて、ボクが未熟なのか、お前がスゴいのか」

翔花「うん、でも、これじゃ訓練にならないよね」

シロ「確かに、実戦では有効かつ決定的だが、通用する相手が限定されている上、眠らせた後の対処が問題だな。お前は眠っている相手を始末できるか?」

翔花「できないよ。眠らせて、ウィップで縛りつけて、抵抗を封じて終わり。それでいいんじゃない?」

シロ「お前、戦士より密偵、諜報員向きじゃないか。ボクの毒と組み合わせれば、いいパートナーとしてやって行けそうだ」

翔花「え、そうかな」

シロ「そうだよ。花粉分解でどこにも侵入できるし、相手に憑依することまでできるんだからな」

翔花「え? 憑依って相手の体の中に入っちゃうの? そんなことをしてもいいの? それって、何だか邪悪っぽいよ。人の体を奪うなんて、私、そんなことしたくないよ」

シロ「そういう甘さがあるから、翔花は潜在力を発揮できていないんだな。たぶん、実戦で追いつめられて初めて、真の力を発揮するタイプ。未知の可能性とか、秘められた潜在能力ってのは、こういうことか。たぶん、悪夢の魔女のように躊躇せずに能力を発揮すれば、恐ろしい敵になる。こちらが想定した能力を、戦いの中で軽々と越えてくる相手か。未熟だと思っていると、足元をすくわれる。アリナ様が高く評価されるわけだ。ボクにもつかめてきたぞ」

翔花「え? そんなことないよ。私なんてまだまだ……」

シロ「未熟だってんだろう。分かってるさ。だけど、ボクだって未熟だ。だから、お互いにできることを見つけて伸ばし合えれば、2人そろって成熟できる。お前が成長すれば、その分、ボクだって成長できるんだ。アリナ様の命令だけじゃない。ボクはお前を鍛えることで、自分も強くなれると確信した。ボクはお前にいろいろ教えるが、翔花もボクにいろいろ教えて欲しい。お願いだ(ペコリ)」

翔花「分かった。WinWinってことだね。だけど、私に何を教えられるかな?」

シロ「分身の術を頼む。忍びとしては必須の特技だと考えているのに、まだ修得できていないんだ。しかし、花粉症ガールはそれを体得しているように見える。何かコツみたいなものはないのか?」

翔花「うーん、私の場合は、気がつけば2号ちゃんが勝手に生まれていたんだし、何も考えたわけじゃないんだけど」

シロ「何も考えない。すなわち、無心の境地って奴か。ボクは……復讐の念に囚われるあまり、殺気を打ち消すことさえできていなかった。そうか、気を消す。心を無にすることによって、我が身を空に替えて、周囲の事象と身を一つにする。それこそ真の隠形。その先に、影となりて、我が身を幾重にも映し出す分身の術があると見た。つまり、体術や俊敏さだけでは到達できない、心の修練が必要だったわけだ。粉杉翔花、良きヒントをありがとう(ガッと翔花の手を握る)」

翔花「え、ええ。私は何も教えていないけど、シロちゃんが何か悟ったのなら、まあ、それでいいか。お役に立てて嬉しいよ(ニッコリ)」


(今話完。次はSW2.5か、メガネンジャーか、どっちを書こうか考え中。バランスを取るためのローテーションをあれこれ試してみようか、と)