今回から魔法の話
NOVA「さて、娘たちの誕生日と、『主人公はキミだ』の感想を終えて、PAに帰ってきたわけだが、種族の移動力の話は割愛して、いよいよ本命の魔法ルールだ」
ヒノキ「このゲームも、複雑な魔法ルールなんじゃな」
NOVA「大雑把にいえば、魔法の領域と、魔法の系統を決めるわけですが、領域はどのような魔力源を持って、どのように魔法を使うかというもの。それに対して、系統はどのような呪文を使うか、というものですね」
ヒノキ「領域はたとえば神々の力か、それとも古代の力ある言葉か、などじゃな」
NOVA「これが9種類あって、術者は2つを選択します。この組み合わせによって、術者の魔力(MP)の量や回復速度、魔法をかける際の所要時間や成功率、そして制約なんかが決まります。単純計算で9×8÷2=36種類の魔法のかけ方がある、と」
シロ「領域は、どんなのがあるんですか?」
NOVA「では、そこから解説しよう。この領域で魔法使いのスタイルを選択していくことが、PAの個性的な魔法ルールと思う」
魔法の領域
- 異世界:異世界から魔力を引き出す。割と標準的な魔力源だが、所要時間が半減というのがメリット。制約は、鉄の品物を身につけられないこと。魔法戦士を目指すなら、ハンデがある。
- 神々:神や悪魔に祈ることで魔力を授かる。魔力1.5倍になるので呪文を多用できる反面、成功率がマイナス1される。神に祈りを届かせるのは少し難しいということか。制約は、神への祈りを毎日欠かさず(魔力回復には4時間の祈りが必要)、戒律をしっかり守ること。信仰キャラを目指すなら、当然の選択肢か。
- 言葉:力ある魔法の言葉を詠唱することで、呪文を発動させる。逆に言えば、この領域を選ばなければ、PAの魔法使いは無声で術を発動できることになる。神々と言葉の組み合わせなら、祈りは口に唱えるが、神々と異世界なら心に念じるだけで術が使える。よって、PAでは無声詠唱というものが普通にある世界観になって、声を封じたところで平気で術を使う魔法使いも多い、と。タフィボーゼがモノカンの魔法使いに負けた理由も、こういう魔法の領域の多様性にあるのかもしれない。言葉を使うメリットは、6分の休憩で魔力が1点回復することと、成功率+1。回復ペースは、最短5分に1点なので(異世界は10分に1点)、言葉使いは速い方になる。デメリットは、呪文の所要時間が1.5倍で、やや発動に時間を費やすこと。
- 肉体:身振り手振りなどのアクションによって、魔力を高める術師。独特の変身ポーズや必殺技を使うためのアクションなどを想像するといい。魔力は溜めやすく(1.25倍)、回復ペースは5分の睡眠で1点回復。時間効率はいいのだが、わざわざ眠らないといけないのはデメリットか。言葉と同様、所要時間が1.5倍で、成功率マイナス1というデメリットも目立つが、PAでは制約が少ない方というメリットがある。拘束されると呪文が使えないのはあるが、他の領域でも(異世界や神々などを除けば)体の動きを伴う発動方法は少なからず見られる。身一つで術が使えるのは、本領域のメリットと言えよう。ただ、APAでは片手が自由でなければならないとか、鎧の制約が加わってきて、少し扱いにくくなった感。
- 星界:夜空の天体(星や月)から力を得るので、屋外や夜しか呪文が使えないという冒険向きではない領域。魔力が4倍になり、成功ボーナス+2ということで、大規模な儀式魔法を使いやすくはなるが、所要時間も2倍なので、やはり軽い魔法を連発するのではなく、強力すぎる魔法を使うためのNPC向きな領域と見られる。ただし、他の領域との組み合わせで制約を緩和するプレイヤー向きの裏技もある。ルールブックにあるのは、星界と成分の組み合わせで、魔法の素材となる品物(特別な花)が星明かりの下でしか咲かないという設定例だ。つまり、星の力を宿したアイテム(魔力のチャージに星の力が必要という間接的な扱い)を持参・消費することで、この領域の条件を満たしている、と。これが許されるなら、星界と神々の組み合わせ(神への祈りによる魔力回復は必ず星の下で)とか、星界と肉体の組み合わせ(星明かりの下で舞い踊ることで魔力充填、呪文使用時は星座を象徴するアクションを表現して、背後に星空のイメージが浮かび上がる聖闘士風味の演出)などで、GMを納得させればいい、と。この辺、GMにも柔軟な判断が求められると思います。ルールは、想像力を縛る手段ではなく、独特の魔法演出を推奨するためにある、と。
- 成分:いわゆるマテリアル・コンポーネント(呪文使用時に消費する物品材料、薬品、触媒など)を用いるスタイル。当然、どのようなアイテムを準備し、どう使うかはプレイヤーとGMの話し合いが必要です。元のPAではルールとして曖昧に思えたものが、APAだと1回の魔法使用で、一定金額の成分を消費したという扱いになって、前もってお金を消費して成分を購入準備するという段取りを踏むようになった。ということで、この領域を選んだ魔法使いは金欠になりやすい。所要時間2倍以外はメリットだらけの領域ですが、成分の準備と補充、魔法行使にアイテム使用という手作業が必要という面で制約が大きいと言えるかな。*1
- 物品/楽器:これも術の使用にアイテムを必要とする領域ですが、道具を消費しないという点が異なります。データ的には異世界と同じような標準仕様ですが、魔力の回復ペースが8分ごとに1点と少し遅い。意外なのは、楽器を演奏しているのに、所要時間が通常の半分で、1.5倍の言葉よりも速い点。成分では2倍かかるのに、こっちの方が使い勝手ははるかにいいので、標準的な魔法使いを作るなら、言葉、肉体、物品(魔法の杖とか)を組み合わせることになりますか。あと、PAで楽士/吟遊詩人系のキャラを作るには、そういうスキルが実装されていないため、楽器を扱う魔法使いにするしかなかった、と(APAではスキルが増えたために、魔法使いでない吟遊詩人も作れますが)。
- 存在:使い魔や双子の兄弟、死者の霊といった他の存在から魔力を引き出すスタイル。魔力が自分のものと他のキャラクターを合わせたものとなり、データ面では成功率+1が特長という程度の標準仕様。他の存在が術者から引き離されると、呪文が使えないというのはデメリットだけど、2人で1つのドラマ演出(プリキュアとか、憑依型バディ物ライダーとか)を演じるにはいいルール。まあ、PAの時代にはそういう作品はなかったですが。使い魔が魔力を高めてくれるというルールは、ソード・ワールド以前にこちらが先行していて、当時はこれも斬新に思えました。
- 紋章:紋章を空中や地面に描くことで、魔法を発動させるスタイル。成功率はマイナス1ですが、所要時間が通常の半分で、言葉よりも速い。これは言葉が遅いというよりも、言葉だけで魔法を完成させるには何度も同じ言葉を繰り返す必要があって、手間が掛かるということか。絵(紋章)なら一目で分かるイメージが、言葉だと説明を重ねなければいけないので、イメージとして完成する前に時間が掛かるってことかな。絵と音楽、道具を使う方が、言葉だけで魔力を生み出すよりも効率よいってことかな、と自分を納得。
NOVA「ともあれ、これらの領域を組み合わせて、自分だけの魔法スタイルを作り出すのが面白いわけですな。まあ、肉体と紋章(相手の秘孔を突く形)で魔法拳士なるものを作ることもできるし(素手攻撃のように見せかけて攻撃魔法を発動させる)、データとデータを組み合わせて自分なりのオリジナリティを模索ってのは、後のソード・ワールドの職業スキルや、トーキョーN◎VAを始めとするFEARさんのキャラメイクにもつながって来て、多様な表現力になって行きます」
ヒノキ「魔力源を表す領域だけで、36通りの組み合わせがある。そこに系統が何種類じゃ?」
NOVA「PAで15種類。APAでは、さらに1種類の正統魔法と、異端視される虚術魔法が5種類加わって21種類。他にはカントリップス(奇術)がありますが、今回は正統魔法だけに絞ろうと思います。これだけでも16種類もあって、大変ですからね」
第1系統:蠱惑(エンチャントメント)
物品や場所、人間に魔法をかけ、術者の意志に従わせたり、強化もしくは呪いをかけるなど、魔力付与の系統。使い手は、エンチャンター、またはマギと呼称する。
NOVA「この術系統は、直接の攻撃呪文はあまりありませんが、いろいろと便利な呪文が集まっています。方向性としては、攻撃よりは防護系が多いかな、と」
- チャーム(魅了):1魔力点で1ラウンド(1分)、相手を操ることができる。1ターンは4秒なので、魔力1点で15回分の行動をコントロールされるので結構強力。ただし、発動するまでに2ターンかかるので、1ターンめに呪文を唱えて効果を発揮するのは、3ターンめということになる。
ヒノキ「PAの魔法は、最速でも唱えた次のターンに発動というルールがあるのじゃな」
NOVA「そうですね。唱えて効果を発揮するまでの間にタイムラグがあるわけです。だから、戦闘中に魔法を使いたい術師は、所要時間が半分で済む異世界、物品/楽器、紋章のどれかを選んでおくと効率よく呪文が使えます」
- ライト/ダークネス(光/闇):便利な明かりの呪文、およびその逆呪文。PAでは、魔力1点で1時間持続するので、冒険中の光源としても普通に役立つ。APAだと、持続時間が魔力1点で1ラウンド(1分)になったので、通常の明かりの代わりにはならない。むしろ、アンデッドの集団に毎ターン1点の継続ダメージを与えるか、敵の視界を闇に閉ざしてかく乱させるために使う(自分や仲間の視覚が暗視できるほど優れているなら)。
- ファインドトラップ(罠探知):罠を発見する便利呪文。
- クリエイトウォーター(水創造):これも便利呪文だけど、便利すぎるからかAPAでは削除された。水の精霊系統の同名呪文に統合されたようだ。
- ロケーション(物品探知):これも便利呪文だけど、APAでは削除された。他の呪文系統にも同種の呪文は見当たらないので(薬草限定の探知呪文ロケイト・ハーブなどは追加されている)、こういう探索行は呪文一発で攻略するのではなく、きちんとシナリオ内で情報収集したりして段取りを踏む方がいい、と考えたのかな。
- サンクチュアリ(聖域化):敵からの侵入をさせない結界を張るとともに、回復効果を高める効果が得られる。
NOVA「ロケーションの呪文が消えた理由は、元ネタのD&Dとのゲーム性の違いなんだと思う」
ヒノキ「と言うと?」
NOVA「D&Dは元々、ダンジョン探索ゲームで、目的のアイテムが広大なダンジョンのどっちの方向にあるか見当をつけるために、こういう呪文を必要としたのも分かるし、呪文は1日ごとの準備と使用回数が決まっているので、この呪文をあえて選んで他の呪文を使えないというのもリスクになる。便利呪文でも使いたい放題にはならないしな。だけど、PAは魔力点のある限り、呪文は使いたい放題だ。ロケーションを覚えた魔法使いは、ロケーションを自由に使いまくることで探索ゲームの面白さを台無しにする傾向があった。だから、ゲーム攻略の上でリスクなしのバランスブレイカーな呪文として削除されたってことだろうな」
シロ「あれば便利……どころか、あったら、そればかりに頼って、ゲームとしての面白さが確保できないと後から分かったんですね」
NOVA「まあな。もちろん、それは穿った考えで、実は単純に『APAを作る際に、うっかりロケーションの呪文を書き落としてしまいました』程度のことかもしれないけど。真実は藪の中だが、最初からスキル制を採用しているPAの場合、魔法以外にも探索の選択肢はいろいろあるからな。アイテムがどこにあるかなんて、それを知ってる人間を探して教えてもらうとか、シナリオ内で手掛かりを見つけて、そこから探り当てるとか、やり様はいくらでもある。魔法が万能じゃなくて、それ以外の多彩なスキルや能力を使いこなそうよ、というつもりかもしれない」
- ロック・エンチャント(岩操作):岩に魔法をかけて、敵にぶつける呪文。その場に適切な岩がないと使えない限定的な攻撃呪文。山地帯とか、大岩トラップとか、そういう場所で使えれば。
- カース(呪い):相手の命中やダメージを下げる呪文。PA時代は持続時間が月単位で長かったが、魔力も25点消費と、気楽にポンポン使えるものではなかった。APAになると、持続時間がターン単位と短くなり、消費魔力点も8点と扱いやすい戦闘補助呪文となった。まあ、APAはデバフ効果もPA時代より半減して、バランス崩壊させるほどの大技でなくなった印象。
- ディスペル・マジック(魔法消去):魔法を打ち消す強力な効果。魔力点も20点消費と、気楽には使えないけど、呪いとかを解呪できるのは大きい。
- エンチャント・オブジェクト(物品魔化):マジックアイテムを作る魔法。所要時間が1ヶ月で、魔力50点消費とか、高位の魔術師の特権みたいな魔法ですな。しかも、マジックアイテムを作るには金もかかるし、魔力点をアイテムに捧げないといけない(永久に減点。経験度を消費して、また増やさないといけない)。要するに、基本はNPC用。まあ、術者が自分ではなく、生贄あるいは志願者の魔力点を費やしてアイテムを作ることもできますが、とにかく寝て起きたら回復する程度のMPじゃなくて、削られて回復できないMP減少は気軽には使いにくいものです。
NOVA「以上がPAの蠱惑系統です。最初のチャーム以外、あまり蠱惑って日本語の意味とは違う感じですが、enchantの意味が『魅惑する』『魔法をかける』の2種類あって、ソード・ワールド以前は前者の意味が一般的だったんですな。エンチャンターに誘惑者ではなく、付与術師の訳語を当てた水野良さんのおかげで、今のゲーム業界では武器や防具に魔法をかけて強化することをエンチャントというように定着したと思います。まあ、TCGのマジックの影響も大きいと思いますけどね。ゲーマーは『エンチャントする』って普通に言いますし、その後はオンラインで魔法以外も含めて『バフをかける』が定着していると思いますが」
ヒノキ「エンチャントは、ソード・ワールドとMTG用語で、D&Dではどうか?」
NOVA「元々は、D&Dで魔力付与をエンチャントと言っていて、ソード・ワールドやMTG、その他のゲームやラノベも追随していったんですね。だけど、3版以降のD&Dはエンチャントという言葉を字義どおりの心を操る呪文の意味で使うようになり、現在はenchantmentを『心術呪文』と訳すようになっています」
シロ「とにかく、D&Dはエンチャントを心限定にするよう改めたけれど、昔のD&Dの影響でエンチャントが魔力付与の意味で使っている作品がいっぱい残っているってことですね」
NOVA「APAになって追加された魔法は、5つかな」
- デイズ(目眩):相手を眩惑し、行動スピードを下げる魔法。
- ソフト・スキン(装甲軟化):相手の装甲値を2点下げる。接触が必要なので、敵相手には使いにくい。
- ストーン・スキン(装甲硬化):自分や仲間の装甲値を2点上げる。
- デス・カース(死の呪い):カースの強力版(あるいはPA版カースの改訂版)で、魔力を30点消費して、効果を永続化する。ディスペルなどによる解呪が必要になる。
- ゴーレム(ゴーレム創造):時間とお金、大量の魔力(一部は魔化の代償として永久に減点)を消費して、ゴーレムを創ります。この時期のゴーレムは造るのが大変でした。後に、もっとゴーレムを作りやすいシステムが出て来るのですが。
NOVA「以上が、PAとAPAのエンチャンターの魔法ですな。魅了と呪い、探知系と防護系、それにアイテム作りと多彩な呪文が揃ってますが、意外に味方にかけるバフがストーン・スキンだけで、武器の威力を魔法で強化する系はないのが、今現在のエンチャントの感覚だと多少もの足りない感も」
第2系統:増幅(アンソルセルマン Ensorcellement)
NOVA「何だか見慣れない単語だなあ、と思ったら、実はフランス語で『魔法をかけること』という意味でした。しかも、APAのルールブックでは、綴りミスでEnscorelementと記載されていて、うん、これまで何の疑問も持たずに読み流していました。購入が90年だから、36年めにして分かるミス発見ですよ。
「英語読みではエンソースルメントで、この系統の術者は、エンソーサラー、あるいはシーア(見者)と呼称されるそうですが、フランス語読みだとアンソルスレと読むのが正解らしい。おそらく当時のAPAスタッフは、トロイさんが出してきたフランス語由来の単語をよく分かっていなかったのかもしれませんな。だから、綴りもミスったのか、とか」
「で、結局、この増幅という日本語訳は呪文の効果的に正解だと思うのですが、実はこのアンソルスレというフランス語は、英語のエンチャントと同義っぽいんですな。だから、こっちはこっちでエンチャント的な魔法が揃っていたりします」
- エクストラ(APAではエンソースルド)各種能力値:PAの能力値は、腕力、耐久力、勇敢さ、機敏さ、知性、自我の6つですが、英語ではストレングス、エンデュランス、カレッジ、コーディネーション、インテリジェンス、エゴとなってます。そして各能力値に対応した増幅呪文が用意されている、と(エクストラ・ストレングスとか、エンソースルド・インテリジェンスといった感じ)。APAでは、魔力点を3点消費するごとに、個人値が1点増えます。PAの場合は、カレッジだけ3点で、他は5点という割高になってますが、とにかく対象の能力値を直接増やせるという強化魔法ですな。いかにも増幅魔術師らしい呪文群です。
- フライング・クリスタル(水晶弾):空飛ぶ水晶を生成して、相手を攻撃する魔法。APAでは、クリスタル・キル(水晶散華)と名前を変えて、水晶が無数の破片となって相手を切り刻む演出に変わった。魔力消費は3点で手頃な攻撃呪文だと思います。
- ゴッド・ヴィジョン(神の目):この術者がシーアとも呼ばれる理由がこの呪文にあります。超視覚を自分に付与するんですね。暗視も、幻覚看破も、透視や異次元を見通すことも自由自在。ただし、所要時間が4時間もかかるので、事前に準備しておく必要があります。効果の持続時間は1時間なので、4時間かけて魔力16点を消費して、自分が超視覚を得られるという。APAでは、ゴッド・センス(神の感覚)と名前を変えて、視覚だけでなく、嗅覚や聴覚も最高レベルまで増幅できる。ただし、所要時間や持続時間が短縮され、戦闘中に使いやすくなりました。
- フォッグ(霧生成):濃い霧を発して、目くらましにする。霧で幻惑された者は敵味方ともに命中マイナス5になるが、神の目などの超視覚や、嗅覚や聴覚の優れた者には無効化される。なお、APAではマジック・フォッグ(魔法の霧)と名前を変えて、術者本人は霧の影響を受けないと設定されて、扱いやすくなった。必要魔力も、所要時間も下がったので、忍者らしい霧隠れの術として利用できる。
- クエスト(探究強制):1日がかりで、魔力40点を消費することで使える、相手に使命を強要する呪いのような術。一度、この術にかかると、使命を拒絶する限り、毎日1点ずつ体力点(HPに相当)を消耗し、いずれ衰弱死する。まあ、1日がかりで使わないといけない術なので、相手が完全に無抵抗な状態で(捕まって拘束されているとか)、じっくり儀式を行える環境が必要そうですな。しかも、1日呪文の行使をしないといけないのは術者にとっても大変なので、それを半減できる異世界、物品、紋章の領域に基づく術者が望ましい。
NOVA「以上がPAですが、APAだと7種類の術が加わります」
- プロテクション(物理防御術):術者自身だけを守る青い蒸気を放射する。魔力点3を消費するごとに、自分への攻撃成功値がマイナス1ずつペナルティーを受ける。
- アルカナ・プロテクション(魔法防御術):魔法から術者を守る赤い蒸気を放射する。物理防御と同じように、魔法攻撃の成功値をマイナス1ずつペナルティーを与える。
- ピット・バリア(落とし穴防護):術者の周囲に深さ30フィート(約9メートル)の堀を構築する。その穴を乗り越えないと、術者に接近攻撃を加えられない。魔力点5を消費する。
- ログ・バリア(木壁防護):術者の周囲に高さ8フィートの丸太の壁を構築する。ピット・バリアが飛び道具を防げないのに対し、こちらは飛び道具も通らないのがメリット。魔力点6を消費する。
- ストーン・バリア(石壁防護):ログ・バリアの石壁バージョン。より強固で、丸太なら200点のダメージで破壊されるところを、こちらだと500点のダメージまで耐えられる。消費する魔力点は10。
- インビジビリティ(透明化):術者を透明にする術。消費する魔力点は12。
- スチール・バリア(鉄壁防護):ログ・バリアの鉄壁バージョンで、2000点のダメージまで耐えられる。消費する魔力点は20。
ヒノキ「何というか、APAで追加された呪文は防御系ばかりじゃな。しかも、自分を守るためだけの」
NOVA「一応、サイズ2なら2人まで、サイズ1なら4人まで壁の中に入れて守ることは可能ですよ」
ヒノキ「どっちにせよ、この術者の存在意義は、仲間の能力の増幅であって、壁を作って引きこもるだけでは、いまいち役に立たん」
NOVA「まあ、壁の中から水晶を使って攻撃はできるでしょうね。直線距離で飛ぶとは書いていないので、壁の上を越えて放つことは可能。水晶はD&Dのマジックミサイルのように絶対命中の呪文だし、後は壁の中から外部を見ることができるように、ゴッド・センスで透視能力を付与すれば、独りでも籠城立てこもりが可能」
シロ「でも、プレイヤーキャラがたった独りで籠城立てこもりするような局面ってありますか?」
NOVA「いや、どちらかと言えば、悪の魔術師の戦術だな。魔法で作った岩壁の中から、攻撃呪文がバシバシ飛んでくる。敵はこちらの姿が見えているのに、こちらは壁の向こうの敵が見えないので魔法で反撃することもできない。いかに水晶の攻撃に耐えながら、壁を破壊するか、何とか乗り越えて中の魔術師に攻撃できる状況を構築するかの戦術をあれこれ考える」
ヒノキ「そんな時に、ディスペルの呪文の使い手が味方にいれば、魔法の壁など呪文で解除して難なく敵魔術師の姿をさらすことも可能じゃろう」
NOVA「具体的な呪文の性能が分かれば、どのように活用するか、どういう対策を考えればいいかなど、あれこれ考えるのも楽しいですが、キリがないので、これぐらいで」
第3系統:攻撃と防御(ソーサリー)
NOVA「PA初心者が最初に魔法使いをプレイするなら、扱いやすそうなのがこの系統ですな。使い手がソーサラー、もしくはウォーロックと呼称されるのも、ファンタジーRPGの経験者なら分かりやすい単語ですし、呪文もシンプルな戦闘用のものがそろっている」
ヒノキ「便利呪文の使い手エンチャンターや、バフに特化したエンソーサラーは、魔法使いとしては扱いにくい、と」
NOVA「エンチャンター(蠱惑・付呪術師)は、戦闘中にできることが少ないので、どちらかと言えば、盗賊系の技能を持ったキャラが副次的に習得する余芸としてなら、活用できそうですね。戦闘中には後方で弓でも撃っていて、呪文は探索の補助に使うといった感じ。専業魔法使いというよりは、APAにおける魔法使いの弟子キャラがいくつかの便利呪文をつまみ食いするような使い方。
「一方、エンソーサラー(増幅術師)は、戦闘前のバフ役として活躍できそうですし(戦闘中に使うには所要時間が掛かりすぎる。1ラウンド=15ターンも費やすバフなど、呪文を唱えている間に戦闘が終わってしまう。APAではだいぶ緩和されたけど)、フライング・クリスタルは攻撃呪文としても扱いやすそうですが、何だか地味というか、主役になれないサポーターという役割の楽しさが、たぶん80年代から90年代前半にはあまりゲーマーに浸透していなかったと思う。そういうポジションの楽しさは、オンラインゲームでバフ役や、近年のラノベの地味な不遇職を主役にした物語にスポットが当たるようになって、今だからこそ語り甲斐があるというか、『PAのエンソーサラーって、意外とイケてる』なんて話はネットで語ってるのは、どうやら俺独りのようです」
シロ「ニッチってことですか」
NOVA「エンソーサラーの欠点は、バラまくバフが単体オンリーで、複数がけができないことだな。同時に複数がけが可能なスキルが習得できると、非常に有用なキャラになる。まあ、戦闘以外の局面でも、判定に使う能力値にバフをかけてもらえるとありがたいので、そういう支援行動の楽しさが分かる時代が到来する前に、PAの時代は終わってしまった。エンソーサラーは早すぎたんだ」
ヒノキ「それで、当時の魔法使いらしい魔法使いの代表が、この系統じゃと」
NOVA「本当に分かりやすく、戦闘に参加できます」
- ミスティック・アーマー(魔力鎧):味方の防御力を高めて、消費した魔力点だけの防御効果が増える。強すぎるので、APAでは魔力2点で1ポイントのダメージ軽減に抑えられたけど。
- ミスティック・ブラスト(魔力波):魔力4点で撃てる攻撃呪文。APAでは、魔力6点になったが、ダメージも2点増えた。
- アイス・ブラスト(冷気波):魔力6点で撃てる範囲攻撃呪文。APAでは、水の精霊系統に送られた結果、攻撃魔法使いとしてのソーサリーの系統が弱体化することに。
- ゴースト・ウォーカー(分霊作成):術者の分身となる霊体ゴーレムを作成する。霊体は死なないので、偵察活動には最適。目にするものを全て術者に中継する。音を聞いたり、匂いを嗅いだり、物理的な物体を操作したりはできないが、扉や壁、床などをすり抜けて進むことができる。魔力15点で作り出し、持続時間は1日。よって、この呪文を使って、ダンジョンに入る前に偵察活動を行なって、マップ作成できる。罠には引っかからないので、罠の存在までは分からないが、道の構造などは十分偵察できる。あまりに強力かつ便利なために、APAからは削除された。
ヒノキ「うむ。ゴースト・ウォーカーの呪文は確かに強力すぎるのじゃ。そもそも、攻撃と防御の系統なのに、偵察霊の作成など分野が違いすぎるじゃろう」
NOVA「ええ。ついでに、PAではこの系統の最高位がゴーレム作成の呪文なので、それも蠱惑系統に送られました。PAでは、このソーサリーの系統が攻撃と防御に限らず、強すぎる、かつ便利すぎるということですね」
- レジスタンス(耐性付与):炎、寒さ、魔法、毒、病気、恐怖のどれかを選んで、完全な耐性をつける。
ヒノキ「この呪文も強くないか?」
NOVA「強いですね。ただし、PAでは術者限定でした。APAでは、術者以外の仲間にもかけることができますが、一つの呪文で万能ではなくなって、フレーム、コールド、マジック、ポイズン、エモーション(感情)と呪文の種類が細分化され、一つ一つを別に習得しないといけなくなった他、完全耐性ではなく、回避判定に成功した場合に無効化、失敗した場合に効果半減という形になりました」
ヒノキ「PA→APAへの改変が大きい系統じゃのう」
NOVA「おかげで、APAをPAの追加ルールとして使う場合に、魔法ルールだけはどっちを使うか考えないといけません。混ぜるな危険ってことですね」
- トランスフォーメーション(生物変身):あらゆる生物を、それより小さいサイズの生物に変えてしまう(知性は元のまま)。持続時間は2分だけ。これも強力すぎるので、APAからは完全に消えた。
- トランスミューテーション(無機物変化):あらゆる無生物を、他の物体(同じサイズか、より大きなサイズ)に変える。持続時間は日数単位で便利だが、大きいサイズのものを小さくして持ち運びしやすくはできない。フィギュアを一時的に巨大化したり、爪楊枝をハルバードに変えたりすることはできる。これも使い方によって、凶悪なことができるので、APAからは抹消された。
NOVA「どうも、グロックさんにPAの魔法について質問すると、やたらとこの変身呪文のことを話題に出して来るんですね。たぶんネットで上がっているPAの記事が、この呪文ばかりを強調しているっぽい。まあ、変身系呪文や特殊能力は本当にバランスブレイカーだと判明したのか、APAではことごとく抹消されたみたいだけど(変身できるトレント亜種とか、特殊能力とか)」
ヒノキ「そもそも、攻撃と防御の系統に変身魔法までが採用されている時点でおかしいじゃろう」
NOVA「PA時代は、この魔法系統が優遇されていることは分かります。回復呪文がないことを除けば、この系統だけでもいろいろな魔法が幅広く取れる、と。初心者から上級者まで満足できる術系統ですが、逆にAPAだと戦闘特化になってしまったというか、本来の役割に戻ったというか」
- デス・ボルト(死の衝撃波):ここからAPAで追加された攻撃魔法。これは、魔力3点を消費するごとに1点ダメージを与える可変威力が特徴。
- ダーツ・バレッジ(曲射投矢):魔力点8消費で、絶対命中の魔法の矢を投げる。矢は10本を連射する形で投げて、1本が1ダメージ、複数の目標に分散させることも可能。たとえば、目標が10人なら各1点ずつ、目標が5人なら2点ずつといった形に威力が定まり、1人ならクリティカルダメージ表を振るようになる。アイス・ブラストが割愛されたAPAでは、この系統の複数攻撃呪文はこれのみになる。
- マジック・ウェポン(武器強化):魔力点8消費で、刃のついた武器のダメージを2点増やす。要するに、エンチャントも自力でできるのが当系統だ、と。
- デス・ネル(弔いの鐘):魔力20消費。術者自らの命と引き換えに、相手を竜巻に引きずり込む究極呪文。回避に失敗した相手も、術者といっしょに死ぬ。回避に成功しても、体力半減から意識を失う。いわゆる自爆呪文。
ヒノキ「戦闘特化だと、とんでもない呪文が与えられるのじゃな」
NOVA「実用的とは思えませんが、ネタにはなるロマン呪文ですな、デス・ネルは。気分はダイ大のアバン先生かポップのメガンテといったところ。さらに、ウォール・オブ・ウインド(フロスト、ファイア)という3種類の防壁呪文と、構造物(建物や非生物の物品)にダメージを与えるフィジカル・フォースや、上位呪文のグレート・フィジカル・フォースがAPAで追加されて、PAとAPAではソーサラーの習得できる呪文が全く異なるなあ、ということに今ごろ気づいた次第」
- PA版ソーサラー:扱いやすい戦闘呪文の他に、偵察用のゴースト・ウォーカーや汎用性に満ちた変身呪文で、多彩な活躍ができる。
- APA版ソーサラー:戦闘呪文に特化して、汎用性を失ったが、強さを追求する魔法使いなら納得のラインナップ。
次回の予定
何だか、各系統の呪文の詳細まで語ってしまいましたが、このペースで全系統を語るのは無理と判断しました。何せ、正統魔法だけで、あと10系統以上もある。
次回も、魔法話2を続けますが、もう少し略式につづりたいと思います。各系統で、面白い呪文を3〜5個紹介して、テンポよく進めて行けたらいいなあ。
(当記事 完)
*1:ルール的には、AD&Dのマテコンルールを採用したものですが、PA発売時にはAD&Dが未訳だったので、FFシリーズの『ソーサリー』や富士見のAD&Dゲームブックで知ったルールを実装したPAに、感じ入っていました。割と何でもできるPAって印象が。