久しぶりのTRPG研鑽
NOVA「しばらくぶりです」
ヒノキ「ずいぶんと時間が空いたのう」
NOVA「その間に、ソーサリー2巻『罠の都カーレ』と、FF31巻『最後の戦士』の攻略記事なんて書いていました」
ヒノキ「で、ゲームブックに夢中になっていたから、こちらは一月半も放置しておった、と」
NOVA「まあ、それはさておき。今回は前から書きたいと思っていた、ファンタズム・アドベンチャー(略してPA)の話です」

ケイP『このゲームは1988年の夏に出版された、昭和末期のTRPGだッピ。A4版150ページのムックスタイルで出版されて、値段は2800円。当時は文庫RPGのT&Tが1000円弱で出て、ボックスRPGのD&Dやクトゥルフなどが5000円ほど。その中間に当たる価格帯のゲームとして、非常に盛りだくさんな設定で、密度の濃い作品として登場したッピね』
NOVA「とにかく、このゲームは、基本ルールに掲載されている種族の数が、今なお最多数のRPGとして知られている。何せ、約80種類だ。もちろん、サプリメントを入れたら、D&Dや、T&Tのモンスターモンスター、それにソード・ワールドや、GURPS関連、あと女神転生の悪魔PCなど、それを越えるゲームは見つけられるかもしれない。でも、80種類もプレイ種族があったとしても、それを全部使いこなすことは不可能だと思うので、無駄なデータの多いゲームということにもなりますが……」
ヒノキ「まあ、それを言うなら、TRPGのサプリメントの多くは、無駄なデータでできているのではなかろうか。今のソード・ワールドでも、例えば蛮族PCのデータは、蛮族プレイをしないユーザーには無駄と言えよう」
NOVA「それでも、追加データが出版されると、実プレイで使う使わないに関わらず、購入したくなるのがTRPG者のサガなのですよ。で、たまに面白いデータを見つけて、読むだけでニヤニヤしたり、その中でもツボにハマったものは、こういう記事ネタで紹介したり」
ヒノキ「で、ファンタズム・アドベンチャーといえば、膨大な数の種族じゃな。特筆するネタは何かあるか?」
NOVA「そうですな。大体、このゲームの種族を語るなら、宇宙人の末裔のタフィボーゼ(3本腕、3本脚、頭が胴の下にあるという異形種族)がまずネタに上がります」

NOVA「友野さんの異種族談義記事でも紹介されているので、良い記事として挙げておきましょう」
NOVA「PAは、種族ごとに設定されている種族値と、個人値の2つで能力値を表すシステムなんですが、種族データの代表として、とりあえず人間(ヒューマン)を挙げておくと比較対照的に分かりやすいですな。
「ヒューマンは、腕力5、耐久力5、勇敢さ6、機敏さ5、知性5、自我5で、ほぼ平均です。わずかながら、勇敢さが高くて、〈狂暴化〉〈行動〉*1〈スパイ〉〈突撃〉〈勇気〉といったスキルを高くしやすいです。それに比べると、タフィボーゼは人間よりも臆病で、ドワーフ並みに鈍重で、自我に欠けるという種族になりますね」
シロ「能力値の自我は何に使うんですか?」
NOVA「〈印象〉〈嘘〉〈嘘の発見〉〈詐欺〉〈取引〉といった感じの交渉系能力だな。他のゲームでいえば、カリスマとか魅力度に相当する感じ。つまり、タフィボーゼは臆病で、交渉ごとが苦手だから、引っ込み思案な種族と言えよう」
ヒノキ「こんな化け物然とした姿なのに、性格はシャイなのじゃな」
NOVA「知性は普通にあるので、自分がこの世界(モノカン)では異形の余所者だと分かっているから、あまり目立った行動はしないように心がけているのかもしれないです。なお、視覚・嗅覚・聴覚はヒューマンが4という基準になっていて、タフィボーゼは普通に目は見えているんだけど、臭いが分からず、煙でむせることがない。さらに音も難聴ということで、非常にコミュニケーションが取りづらい。ロールプレイするのが難儀な種族です」
ヒノキ「どちらかと言えば、NPCというか敵キャラ種族として扱う方が良さそうじゃのう」
NOVA「他に、PAで種族ネタを掘り下げると、それだけで話題が尽きることはないと思うのですが、このゲームの異形種族を3つ挙げるなら、タフィボーゼ、知性あるスライムのスリッジ、昆虫人間のスラス(カマキリ顔、4本腕、〈両手利き〉スキルを標準装備して、2本の武器を巧みに使いこなす)になるかな。
「なお、能力の最高値は10、最低値は1なので、それを並べるだけでも、種族のイメージが見えてくるかもしれませんな」
- 腕力10:(腕力10の種族はいない。最大腕力9がジャイアント、次いで8のドワーフ)*2
- 腕力1:スリッジ、トレント、ピクシー、ブラウニー
- 耐久力10:ジャイアント
- 耐久力1:エルフ、ピクシー
- 勇敢さ10:ゴブリン
- 勇敢さ1:エルフ、ガーゴイル、ラビットマン
- 機敏さ10:エルフ
- 機敏さ1:(機敏さ1の種族はいない。最小機敏さ2がジャイアント、次いで3のスリッジ)*3
- 知性10:エルフ、ブラウニー
- 知性1:オーク
- 自我10:フェルゼンティ(ネコ人間)
- 自我1:(自我1の種族はいない。最小自我2がタフィボーゼ、ゴブリン、ハーフリング、次いで3が犬人間のアヌビン、カエル人間のクローカー、ブラウニー)*4
NOVA「ざっと、こんな感じですな。この世界では、オークとゴブリンのイメージが少し違っていて、オークは類人猿みたいな種族で、意外と臆病。ゴブリンの方が外見はがっしりしていて、勇敢だけど姑息な嘘はつかない戦士系に設定されています」
シロ「今は、どちらかと言えば、ゴブリンが小鬼で、オークがタフな戦士って印象ですよね」
NOVA「PAでのオークは人間に近い原始人のような設定。ゴブリンは小鬼ではなくて、オーガーのような大鬼種族に設定されていますな。あまり、この辺の細かいデータを比較することはなかったけど、ゴブリンがミノタウロスよりも大柄に設定されているとは。
「基本身長が、人間の40に比べて、オークが45、ゴブリンが72。大柄な種族だと、トレントの120、ジャイアントの105、スラスの91、セントールの90に次ぐのがゴブリン。どちらかと言えば、ゴブスレにおけるロード種がPA世界では標準的なゴブリンになっている模様」
PAゴブリンとオークの奇妙な関係
NOVA「さて、PAの種族ネタは割と定番なので、さらっと流して、一番語りたい魔法話に展開しようと思ってたのですが、まさかゴブリンネタに興味を抱くとは、自分でも想定外だったりします」
ヒノキ「まあ、ゴブリンなんぞ、ファンタジーRPGの定番種族だから、珍しいという意味で、わざわざ掘り下げようとは思わんのう」
NOVA「ルールブックのデータを見ても、割と流し読みしてましたしね。だけど、実は定番ゴブリンよりも大型種族だったPAゴブリン。そして、PAにも僅かながらサプリメントがありまして(シナリオ数点と、地域別ワールドガイド1点、上級ルールのアドバンストPA)、ワールドガイド『ノーザンエリア』には追加種族が16種類加わってます。その中に、オーガー、オークメイジ、コボルド、トロール、バグベアー、ホブゴブリンといった、D&D他のファンタジーで割と定番の敵種族も見られるわけですが、これらもPA独特の解釈が為されていて、なかなか面白いと思いました」
ヒノキ「さっき、ゴブリンはオーガー並みの大柄鬼と言っていたな。だったら、追加されたオーガーはどうなってる?」
NOVA「基本身長160で、ジャイアント越えの大型種族になりました」
ヒノキ「ジャイアント越えかよ。そりゃ、デカい」
NOVA「まあ、PAのジャイアントは、ヒューマンたちといっしょに冒険するために、常識サイズに収まっていますからね。身長設定は、基本身長に4D10を加えた数字がインチ(2.5センチ)で出ます。ヒューマンだと、40+4D10だから44〜80インチになって、これは4で割って10をかけると、cmに換算できますから身長110〜200cmに収まりますね。まあ、期待値は約60インチだから150cmやや上ってところですか。現代人よりは、やや低いと感じますが、現代ほど栄養効率の高くない古代から中世のファンタジー世界だと思えば、妥当かな、と」
ケイP『現代日本人の成人男性の平均身長が170cmで、江戸時代は155cmと言われているッピ。中世ヨーロッパでは170cmという資料があって、意外と近世の17世紀の平均身長が160cmに落ちているッポイけど、これも統計をどう取るかという問題があるッピ』
シロ「どういうこと?」
NOVA「中世で、身長データがあるのは貴族とか上流階級、もしくは墓にきちんと埋葬された人間の遺骨などからの推定なんだな。一般農民とかは、上流階級ほど栄養が十分に摂取できていないから低いのではないか、という意見。都市部と農村部の差もあるだろうし、あとは北方ゲルマン人は大柄で、南方のラテン系はそれに比べて小柄だという意見も。現代だったら、ドイツ人の成人男性の平均身長が180cmで、女性は165cm。一方、イタリア人は男性175cm、女性160cmで、アメリカ人も大体それぐらいだそうだ」
ヒノキ「まあ、ゲームのプレイヤーキャラだと、老若男女もおるじゃろうし、未成熟な少年体型のキャラも想定されることからして、平均身長150cm強というのも妥当かもしれんのう」
NOVA「問題は、PAゴブリンです。基本身長が72という設定なので、4D10の期待値22を足すと94インチが平均となります。これは2メートル30センチなんですね。つまり、PA世界のゴブリンは2メートル越えのマッチョな種族で、我々がイメージするゴブリンではない、と」
シロ「ええと、ボクたちがイメージするゴブリンの身長って、人間の子どもよりもやや大きい痩せ型で、すばしっこい感じですね」
NOVA「ハーフリングの基本身長が22なので、まあ、ゴブリンのイメージは30弱って感じかな。そういう数字だと、コボルド、バットマン(コウモリ人)、ラビットマン(兎人)などがいるが、いずれにせよPAゴブリンはデカい種族だと」
ヒノキ「ジャイアントは基本身長105ということは期待値127インチ、すなわち3メートル20センチか。オーガーはそれを越える期待値182インチ、すなわち4メートル半かあ。これが一番大きな種族か?」
NOVA「いいえ。PAのプレイヤーキャラ最大種族はジャイアントイーグル(大ワシ)で、基本身長176。期待値は198インチで、5メートルほどですな。まあ、非人型種族ですが、体長3メートル越えのトレント(樹人)が基本ルールに載ってるゲームなので、十分許容範囲かと」
ヒノキ「ダンジョン探索には、到底向かない連中じゃのう」
NOVA「そういう身長に基づいて、サイズという値が設けられています。サイズ1は身長4フィート(48インチ)未満で、ピクシーとか平均的なハーフリングが該当しますね。4〜7フィート(48〜84インチ)がサイズ2で、大体の人間サイズ。7〜11フィート(84〜132インチ)はサイズ3で、ジャイアントやトレントなど。オーガーやジャイアントイーグルだとサイズ5になるかあ。例えば、このダンジョンはサイズ3までしか入れないとか、そういう制限があるなら扱いにくそう」
ヒノキ「とにかく、PAはゴブリンが2メートル越えの大型種族で、オーガがジャイアントよりも大きい規格外の存在だと分かった。他に、特筆すべきことは?」
NOVA「そうですね。オークメイジは、オークとブラックエルフを掛け合わせて生まれたとされていますが、バカなオークの中では知性8を誇って、指導者階級になっています。コボルドやトロール、バグベアーは大体D&Dイメージどおりの種族ですが、ホブゴブリンがまた変わっていますねえ」
シロ「基本的に、ホブゴブリンって強いゴブリンって感じですよね」
NOVA「PAのホブゴブリンは、ゴブリンよりも腕力に劣って、その分、器用で頭がいい種族。一般的なイメージとは逆だな。むしろ、ゴブリンとホブゴブリンを入れ替えた方が、能力的なイメージが噛み合うと思う。あと、PAのホブゴブリンは尻尾が生えていて、それを多少不器用ながら、第3の腕のように使えるとか、変わった要素も備えた感じだ」
ヒノキ「ゴブリン周りの設定が、とにかく変わっているのじゃな」
アドバンストPAの話
NOVA「あと、PAの上級版のアドバンストPAは、平成2年(1990年)9月に出たが、たったの2年で上級ルールに版上げかよ、と当時は驚いた。ルールブックは1000円値上がりになったが、ページ数も100ページ以上増えた270ページになって、豪華に感じたな」

NOVA「PAの種族の数は、79種類(基本種族は24種で、そこに亜種を含めての79種)なんだが、アドバンストPAの方は75種類に減った」
シロ「アドバンストの方がデータが減るなんて、それも変わってますね」
NOVA「まあ、PAからAPAになって、種族データが整理された形だな。PAは亜種で種族数を水増ししている部分があったので、そのうち無駄なものを排除されたと言えばいいか。PAから排除された種族を挙げてみると、こんな感じだ」
- ノーマルエルフ:元々、エルフにはブラックエルフ、シーエルフ、ハイエルフ、グレイエルフといった亜種があり、邪悪な黒エルフのブラックや、海にいるシーに対して、高身長のハイエルフ、ノーマルエルフと同じデータのグレイエルフなど、マイナーチェンジ版と言えた。APAでは、グレイエルフが小柄なサイズで、ハイエルフをノーマルエルフと統合するように整理。また、ブラックエルフは、PAよりも腕力と耐久力が大きく向上し、非魔法使いの戦士としても有能になった。PAのエルフは、腕力2、耐久力1と前衛に出るのは絶望的な種族値だったが、APAではハイエルフが少し強化され、ブラックエルフはヒューマン並みのタフさになった。
- マグノン、サンダーマン(オーク亜種)、アサロン、ワグロクス(ゴブリン亜種):無駄に多く設定されたPA時代のオークとゴブリンの亜種が統廃合された結果、APAではオーク科に属するオーク、ゴブリン、オドク、ホブゴブリン、オークメイジ、オーガーの6種類にまとめられました。オドクはPA独自の種族で、硬い鱗を備えたゴブリン亜種でした。アサロンは緑肌ではなくて、赤肌ゴブリンで、必ずワイルドランド出身*5ということを除けば、能力は全くゴブリンと同じです。また、ワグロクスは腕力が減って、器用になったゴブリンですが、マイナーチェンジ版として割愛されました。オーク亜種のマグノンとサンダーマンは、それぞれ強化戦士ですが、その分、ますますおバカになったマイナーチェンジ版。とりわけ、マグノンは知性の種族値が0で、PA種族数ある中で、能力値に0が入っているのは、こいつだけです。サンダーマンは知性と自我のスキルがマイナス1というハンデですが、知性0の原始人マグノンを果たしてプレイしたい人がいるのだろうか。思いきりネタ種族ですが、タフィボーゼやスリッジのようなインパクトがない分、それがTRPGの種族名だと知る者は稀ですな。ああ、マイナー種族にスポットを当てる企画になってます。なお、追加種族からルールブックに正式採用されたオーガ様ですが、基本身長が160から120に下げられて、身長が1m減りました。ジャイアントイーグルがもっと劇的に縮んだ(176→20)ので、トレントと並んでAPA最大サイズの種族の栄誉を勝ち得ることに。とにかく、オーク系やゴブリン系はいろいろ変化が激しかった、ということで。
- グレイ・ガーゴイル(ガーゴイル亜種):翼のないガーゴイルですが、ジャンプが得意という亜種。それってガーゴイルの劣化バージョンでしかないと思われたのか、きれいにリストラされました。
- トードマン(クローカー亜種):カエル人間のクローカーだけど、種族特徴の『水中呼吸』を持たない陸棲カエルという、長所をスポイルされた亜種。飛べないガーゴイルと同様、水中がさほど得意でないカエルなんて、誰が使いたがるのか、という理由でリストラされました。改めて見ると、PAの亜種族って、こういうのが目立つなあ。
- ノーマル・ジャイアントおよびシー・ジャイアント:残ったのは亜種のロック・ジャイアントと、ストーン・ジャイアント、サイクロプスと、追加種族から基本に昇格したトロールです。ただ、ノーマルが消えたのではなく、ロックと名前を改めた模様。PA時代のロック・ジャイアントは原始的でおバカ(知性1)という特徴があったのですが、APAではロック・ジャイアントがノーマル化した模様。ストーン・ジャイアントは、より知的でパワーもあるけど、多少打たれ弱くなった亜種。サイクロプスは、PA時代はジャイアントよりも大きな基本ルールの最大身長125を誇っていたのが、APAでは小型化して、その分、知性的になった。なお、リストラされた海巨人は、単に『水中呼吸』ができるようになっただけの巨人ですが、プレイヤーキャラの巨人にそういう能力は求められていなかったようで。
- ノーマル・スラス、スノー・スラス、サンド・スラス(スラスの亜種):昆虫人間のスラスは緑色のカマキリみたいな種族で、低温に弱くて2倍ダメージという弱点がありました。しかし、寒冷地に移住して低温に強くなったスノー型と、出身地が違うだけの砂漠型スラスが、どちらもリストラされました。ついでに、従来のスラスはAPAではウォリアー・スラスと名称変更し、さらに指導者層のマスター・スラスが追加。元々、ノーマル・スラスは能力値的な弱点のあまりないバランス型の種族でしたが、ウォリアー型はより戦士的な能力(腕力7、知性1)に、マスター型は魔法使い的な能力(腕力1、知性7)に、それぞれ分化していった、と。
- アークティック・スリッジ(スリッジの亜種):PA名物のアメーバ種族ですが、リストラされた亜種は低温に強い反面、熱や炎で倍ダメージという弱点が増えた形。あまり、旨味がないという理由で消されたのでしょうな。
- ブーシャ・トレント(トレントの亜種):PAの中でもトップクラスの巨体を誇るトレント(樹人)族。しかし、このリストラされた亜種は、背の低い灌木タイプのトレントで、基本身長12という通常の10分の1の小型種族に。そして、小型動物(すずめ、うさぎ、きつねなど)に変化できるという変わり者。面白い能力とは思うけど、もはや植物というアイデンティティを喪失したような変身能力のために、リストラされたのかな。
- ディープ・ドワーフ(ドワーフの亜種):地下に住むドワーフです。それって、普通のドワーフと何が違うんだ? という理由でリストラされました。PA時代は、普通のドワーフは地上と地下の両方に半々で住むという設定で、地下のみのディープ種と、地上のみのブルー種が別々にいたのですが、APAになってディープ種がノーマル種に統合された形です。
- ノーマル・ハーフリング:元々、ハーフリングには大柄なスウィートトゥース、ワイルドなヘアーフット、水に馴染んだフラットフットの3種の亜種があったのですが、PAではあまり差がなかったんですね。それでも3種あるのは、原典の『ホビット』が人口の多い保守的なハーフット(バギンズ家が代表)、冒険好きな傾向のあるファロハイド(トゥック家が代表)、川辺に住むのが好きなストゥア(ゴラム=スメアゴルの出生種族と推測される)の3支族に分かれていたからです。APAでは、フラットフットがノーマルのハーフリングと統合されつつも、より戦士的に腕力が2増えて、その分、知性が2下がるという修正が。一方、スウィートトゥースが魔法使いとしての素質を持ち、ヘアーフットが魔法使いの弟子(正規の魔法使いよりも少ない経験点で、魔法の一部を習得できる)になる際に必要経験点が半分で済むという恩恵が。ハーフリングが魔法に親和性があるというのは、PAのオリジナル要素の一つだと思います。まあ、魔法に馴染みのないハーフリングをプレイしたいなら、フラットフットが無難でしょうがね。
- トリアン、ソラリス(バットマンの亜種):小柄なコウモリ人間のバットマンは、APAではガーゴイルの亜種に統合されました。そして、元々、バットマンの亜種だった2種族がリストラされる形に。バットマン特有の能力は、聴覚を高めるソナー能力ですが、トリアンは高身長で打たれ強くなった反面、ソナー能力を失いました。まあ、バットマンのアイデンティティーを失うと、この種族を選ぶ意味がないということですね。もう1つのソラリスは、ムササビ型の翼を持つバットマンですが、能力は全く一緒なので、選ぶ理由が薄い亜種となります。
- ノーマル・ヒューマン:これも、スティジアン、ケルティック、ハイボラークの3種類の亜種が残って、特徴のないノーマルがリストラされた形。ケルティックは(ケルト風の名前に反して)ゲルマン的な金髪碧眼の白人種族ですが、体格的には痩せ型で機敏さが高い民族。ハイボラークは蛮人コナンを彷彿とさせる腕力や耐久力の高いヒューマン。一方で、スティジアンは黒人種族で、バランス型ですが、やや臆病な面がある。まあ、元々、能力的には平均的なのが特徴のヒューマンなので、微妙な差異でしかないのですが、いわゆるアジア系の黄色人種はPAの世界にはいない模様。
- マッドフット、ロックジャンパー(ブラウニーの亜種):PAで最も魔法に親和性の高い小人種族がブラウニー(最初から2系統の魔法を習得している)。で、少しタフで頭の悪いマッドフットと、身長の高いロックジャンパーというマイナーアレンジの亜種はきれいにリストラされた、と。
- ゴームノン(ミノタウロスの亜種):頭部がトナカイの寒冷地仕様のミノタウロス亜種。毛皮に覆われて、外皮による打たれ強さがポイントだけど、リストラされました。ヤギ頭の亜種ラモンは残ったのに。
- ゴリアン(リザードマンの亜種):黄色い体色のリザードマンで、出身地がスクアル僭主皇国(砂漠)に偏っていることを除けば、能力の差異は全くありません。
NOVA「以上、23種の種族がリストラされたPAですが、いずれもマイナーアレンジされた基本種族の亜種か、逆に亜種の方を標準化して、通常種の方を面白みがないと割愛したのがAPAと。個人的に、リストラされて残念に感じた種族は、ブーシャ・トレントぐらい。そして、APAの方では水増しの亜種を削って、密度の濃い75種になった、と。『自分はただのオークよりも、サンダーマンがお気に入りなのに、どうして削ったんだ? サンダーマンを返せ』と主張するようなPAマニアはいないだろうし、ネットで検索しても、種族名サンダーマンなんてヒットしない。こういうヒーローコメディーだけだった、と」
PAとAPAのキャラ作りの違い
NOVA「さて、PAとAPAのルールがどう違うか、という話ですが、種族がリストラ整理された以外は、おおむねAPAがデータも増えて、アドバンストの名に恥じない作品になってます。まあ、アドバンストになった途端、日本でのシリーズ展開が終了してしまったのは、アドバンストD&D、アドバンストFFと同様なんですが、90年代初頭はTRPG界隈でアドバンストブームがあって(他には、メガトラベラーとか、ビヨンド・ローズとか)、そういう熱気が強く感じられたなあ、と。まあ、ルールが複雑化し過ぎて、元の版の方が良かったという声もあったのでしょうが、当時はあまり聞こえなかったり」
ヒノキ「APAは複雑なのか?」
NOVA「当時の日本で複雑なTRPGだと、ルーンクエストが一番だという意見が有力ですが、PAはそれ以上に緻密だと思いますよ。他に『ロールマスター』(邦訳は1990)とか、緻密さを売りにしたゲームはいろいろ出て、伝説級に難しいとされる『マイトレーヤ』(1995)というのもありましたが、うん、日本で出たRPGの中で、マイトレーヤを超える難解なゲームは見たことないな。俺が購入したのに、こんなの理解困難でプレイ不可能と投げ出した唯一の作品」
ケイP『戦士用のルールだけ出て、いろいろ緻密なルールにマニアが注目しつつ、予定されていた魔法使い用のルールが出ずに中途半端な作品に終わったッピね』
NOVA「マイトレーヤの詳細は、このページで概要は分かるかな」
NOVA「これらの記事を読むと、日本でもトップレベルの緻密なゲームだけど、いろいろとツッコミどころの多い破綻したシステムで、何というか、まともにプレイできるシステムでも世界観でもない代物だなあ、と。こういうのを見ると、まだPAはきちんと機能するシステムだということが分かります」
ヒノキ「欠陥システムのマイトレーヤのことは、どうでもいいので、今はPAに集中しないか?」
NOVA「では、待っていた魔法システムが出ないと見切りを付けて処分したマイトレーヤへの寄り道は置いておいて、PAです。キャラ作りの手順について話しましょう」
1.種族を選ぶ
PAでも、APAでも同じ。種族値、その他のデータを書き記す。
普通のゲームでは、種族を選ぶのが難しかったら、初心者は人間(ヒューマン)推奨というのがセオリーですけど、PAに限っては、人間が最もつまらないし、戦士とか魔法使いとか、自分のやりたい職業(役割)で活躍できるとは限らない。それでも、ヒューマン戦士をやりたければ、ハイボラーク推奨とか、細かい亜種を選択する楽しみはあります。
以下は、なりたい職業別に、PA初心者推奨の種族を挙げてみる。
・戦士向き:パワフルで、あまりイメージが悪くないバランス型戦士を挙げるなら、ミノタウロスが推奨。もちろん、ドワーフ、犬人のアヌビンもロールプレイしやすそうですが、少々おバカという欠点が。爬虫類好きならリザードマンというのも、鱗が硬くて打たれ強い。大柄なのが良ければ、ジャイアント、セントールが強くて格好いい、と個人的には思います。
色物好きなら、ゴブリン系、スラス、タフィボーゼなんかが優秀な部類でしょうけど、初心者向きとは言いにくいかな、と。
・魔法使い向き:これは魔性の種族という推奨ルールがあって、ブラウニーを筆頭に、エルフ、一部のハーフリング、ピクシー(小妖精)がお勧めとなります。まあ、魔性の種族という設定は、キャラ作成時に魔法使いになりやすいというだけで、後から育成して魔法習得する分には、他の種族でも魔法は使えます。有利なのは、何よりも知性の能力値(種族、個人値の両方でMPや成功率が決まる)、次いで自我になりますが、それらが平均以上(7以上が目安かな)だと、魔法をかじるのも悪くないでしょう。
能力的に、後天的に魔法使い向きと思えるのは、ガーゴイル、トレントになるけど、それらが初心者向きとは言いにくい。
なお、魔法使い向きの種族は、打たれ弱いので、前衛魔法戦士にはなりにくいです。そういうのを目指すなら、バランス型のヒューマンを筆頭に、知性と腕力、耐久力が平均的に確保できるノーム、マンティコアが推奨かな。
・軽戦士向き:機敏さが高くて、そこそこ打たれ強いキャラ。魔法は使いにくいけど、バランス型にはなります。筆頭は、ネコ人間のフェルゼンティで、イラストもネコ耳美少女風で大人気だったと思います。

機敏な種族は、打たれ弱い(耐久力が3以下)という傾向が多いPA世界で、まともに前衛軽戦士が務まるキャラって、バランス型のヒューマンなどを除けば、フェルゼンティしかいないと思う。
まあ、耐久力3でも、たまに前に出る程度の戦闘サポートができればいい、と思うなら、ハーフリングを筆頭に、カエル人のクローカー、鳥人ホークマン、カンガルーマンなどが推奨できそう。
・後衛盗賊向き:機敏さと、あとは交渉用に自我がそこそこ高ければいい、という能力で、エルフ、バットマン、ホークマン、ラビットマン、マウスマンが推奨。戦闘では、飛び道具を使えば活躍できる、と思う。こう並べると、実に獣人系種族の充実したゲームですな、PAって。
でも、意外とキツネ系がいないので、今、このシステムをリメイクするなら、フォックステイルとかを加えないとね。
2.特性値と個人値を決める
キャラクターの判定に使う能力値は、大きく種族値と個人値で決まります。
種族値は、種族を選ぶと自動的に確定しますが、個人値はサイコロを振って特性値を決めてから、いろいろと修正を加えた結果から換算して、最終的な個人値が決まる。
この部分が、PAとAPAで大きく変わっているわけですな。
PAの場合、特性値は1D100でランダムに決めてから、これも種族ごとのランダム表で決めた出身地による修正を施して、そこに氏族の職分(プレイヤーが自分で選べる)と階層(ダイスでランダム)による修正を施してから、それを10で割って(端数は四捨五入)、個人値を決定します。
氏族の職分を選ぶ以外は、プレイヤーの選択の余地はなく、ランダム要素の濃い決め方となります。
一方、APAの場合は、初期特性値が2D10で、1D100よりも散らばりが緩やか。
出身地(国)と出身地人口(大都市か農場、もしくは辺境か)をプレイヤー自身が選び、それで特性値を修正する。
次に氏族を選び、階層だけはランダムにダイスで決めて、さらに特性値を修正する。
そして決まった特性値から、計算ではなくて表を見て、個人値を決定する仕様。特性値は最低0以下から、36までになって、それを個人値に変換すると3〜15までの値になります。
ここで、特筆するのは、PAに比べて、APAはランダムに決まる要素が激減していること。
判定ルールが大きく変わっているわけではないのですが(大雑把に言えば、D20を振って、スキルなどの判定値以下を出せば成功、それを越えると失敗という下方ロール)、個人値を決めるまでの過程がずいぶんと変わった。
PAは、ルールを知らなくても、サイコロを振っていけば自動的に決まる要素が大きく、初心者でもキャラ作りできるわけですが、APAは自分で選ぶ要素が大きいので、初心者が決めるのはなかなか難しい。
キャラ作りそのものをゲームとして楽しめるのは、PAの方ですが、ランダムゆえの事故も起こりやすい。戦士になりたくて、種族もそれ向きに選んだのに、魔法使い向きのセイラー王国やスルーム大皇国出身になってしまうと、不幸ですし、逆に魔法使いを目指しているのに、ワイルドランドに生まれたら、己れの身の不運を呪いたくなります。
その種の悲劇が、APAでは発生しなくなったので、個人的にキャラ作りはPAの方が面白いと思っていますね。APAの方が、プレイヤーの意思どおりのキャラメイクができて、実用的かつ手堅いシステムですが。
キャラ作りは、この後、身長と体重、そこから体力(HPに相当)、移動距離やPSN(行動の速さ。フェイズ・シークエンス・ナンバーの略)、魔法や技能、信仰その他の特殊能力の決定、所持金を決めて、装備の購入をして、キャラクター完成なのがPA。
APAも大筋は同じですが、こちらはトラベラー同様の「年齢を重ねて、経歴をランダムに表から振り出して、スキルや財産を決定していくシステム」が実装されています。能力値はランダム要素が少ないのですが、経歴と技能の方でランダム要素があって、思いがけない人生が描かれることも。
例えば、戦士として軍事の経歴を務めたのに、ダイスを振ると、下っ端の従兵になって、戦闘技能よりも上官の軍服を洗う〈洗濯〉技能を習得したり、馬の世話をする〈飼育〉とか、そんな感じですね。
それでも、APAの方が、初期習得技能は多くなります。PAだと、最初に6つだけ技能を選べるのですが、APAだと経歴で結構な数の技能を身につける他、最初から経験点40点を費やして技能を自由に購入できますので、育成自由度が非常に高い。
技能は、ランク0が種族値の半分(PA)もしくは関連技能や種族値にペナルティーあり(APA)の判定。
ランク1が種族値そのまま。
ランク2が種族値+個人値の半分(PA)もしくは種族値+個人値の4分の1(APA)。
ランク3が、ランク2の判定値+1(PA)か、種族値+個人値の半分(APA)。
ランク4以降は、前のランクに1ずつ加算する、と。
ともあれ、多彩なスキルの判定値以下を、20面で出せばいいので、プレイ難易度はさほど高くないけど、キャラ作りに時間のかかるゲームですな。
あとは、この時代の緻密なゲームにありがちな武器や防具が壊れるルールも実装されていて、〈鍛治〉や〈製作〉の技能で修理する必要もあったり、ただの色物RPGとは違った精密なシステムと言えます。
では、次回に話は続いて、今度は世界観と氏族の話をしていくつもり。
(当記事 完)
*1:判定に成功すれば、アドレナリンの作用によって、行動スピードを高められるスキル。
*2:サプリメントだと、オーガー、ストーンジャイアント、ユニコーンが腕力10の種族として追加されている。
*3:サプリメントだと、チェンジリング、モッカーが機敏さ1の種族として追加されている。
*4:サプリメントには、チェンジリングが自我1の種族として追加されている。
*5:PAでは、各種族ごとに出身地表を振って、ランダムに生まれ故郷を決めます。そして、出身地によって能力値の個人値に対して大きな修正値が施されるのですが、ワイルドランドは腕力、耐久力、勇敢さ、機敏さに最大級のボーナスが加わる戦士推奨の原野国。その代わり、バカになるわけですが、アサロンは100%ワイルドランド出身なので、戦士として最大級に鍛えられるんですな。これがノーマルのゴブリンだと、ワイルドランド生まれになる可能性は14%で、50%ほどは砂漠のスクアル僭主皇国になる。能力修正的にはバランスよく自我と勇敢さ以外の能力が加算されるのですが、あまり派手なボーナスじゃないので、ゴブリンで戦士をやりたいと決めてるプレイヤーは、亜種のアサロンが推奨されることに。一方、APAでは出身地はランダムではなくて、プレイヤーが自由に決めていいシステムになったので、アサロンを選ぶ意味がなくなったわけです。システムの変化で、存在意義さえ奪われた哀れな種族アサロンに今さら涙目。