花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、TRPGの魔法研鑽を展開予定。

ファンタズム・アドベンチャーの魔法話3(精霊魔法)

魔法使いの成長ルール

 

NOVA「前置きでは、PAのルール面を確認していく流れだが、基本的にこのゲームは経験度を消費することで、スキルのランクを上げていく形だな。ランク0のスキルを1にするのに1点、1から2にするのに5点というのがPAで、以後は成功値によってランクを上げるための経験度が変わってくる。他に特性値や予備体力を上げたり、感覚や信仰度を上げたりできるが、今回は魔法関連の話をメインに見ていこう」

ヒノキ「要するに、自分の上げたい能力を自由に上げれるのじゃな。成長の自由度が高い、と」

NOVA「だけど、魔力を上げるルールがPAには明記されていないんですね。APAだと、経験度3点で魔力を1点増やせるようになりましたが」

シロ「魔力を増やせないPAは、欠陥ルールですかね」

NOVA「増やすためには、知性の特性値を細々と増やして、特性値の10分の1が個人値になるから、経験度を大量に消費すれば増やせないことはないと思うんだが、それよりも呪文ごとのコスト(魔力消費)を下げる方に経験度を費やすルールになっているんだな、PAの方は」

ヒノキ「呪文そのものに経験度を注ぐことができる仕様か」

NOVA「ええ。PAの魔法使いは、習得した呪文を個別にカスタマイズできます。魔法関連の成長ルールは以下の通りですね」

 

  • 魔法使いになるためには経験度20点が必要(PA)。
  • APAだと、弟子になるのに4点×氏族修正が必要。氏族修正は、神秘と宗教が1、軍事が3、他が2となっている。
  • APAだと、弟子から魔法使いになるのに、魔性の種族だと12点+氏族修正、魔性でなければ20点+氏族修正。これによって、魔性の種族であるエルフの神秘氏族キャラが弟子になるには4点、さらに魔法使いになるには13点が必要になって、合計17点の経験度を消費する。魔性でない人間の犯罪氏族だと、弟子になるのに4×2=8点、魔法使いなら22点で、合計30点の経験度が必要。なお、キャラ作成時に与えられる経験度は、40点+α(4点もしくは8点)。PAより、APAの方が、やはりルールが細かい。
  • 新たな魔法の系統を覚えるのに、経験度が10点必要(APAだと、そこに領域ランクによる修正値が加算される)。
  • 自分の習得した系統の呪文を新しく覚えるには、PAだとお金を支払うだけでいい。APAだと、お金に加えて経験度も消費する必要があるうえ、習得判定を行わないといけない。習得成功値のベースは神秘氏族が55%、宗教氏族が50%、政治氏族が45%、犯罪および交易氏族が40%、軍事氏族が35%。これに氏族の階層や地位ランクによるボーナスが加わって……うん、APAはずいぶん複雑になったな。
  • 魔法の呪文は、経験度を費やすことで、判定の成功値やダメージ修正、射程距離、抵抗難易度を上昇させられる。
  • また、魔法の呪文は、経験度を費やすことで、単体攻撃の目標を1体ずつ増やすことができる。つまり、味方へのバフや、敵へのデバフ、および攻撃を呪文ごとに複数化できたりもする……が、呪文を使い勝手の良くなるよう、カスタマイズするのも経験度を大量に消費するなあ、と。
  • そんなわけで、魔法使いを極めようと思えば、他のスキルに経験度を注ぎ込む余裕がなくなるから、スキルを重視するか、魔法を重視するかはプレイヤー次第ということになる、と。

 

ヒノキ「呪文ごとに経験度を費やして、カスタマイズできるのは面白くはあるが、複雑じゃのう」

NOVA「だから、88年の時点では、日本で最も基本ルールが精密なゲームの一つと言えますね。これに匹敵するとしたら、『指輪物語RPG(MERP)』か『ルーンクエスト』ぐらいだと思います。まあ、APAの90年になると、MERPの上級ルール的な『ロールマスター』とか、『アドバンストD&D』とか、『ウォーハンマー』とか、もっとデータの多いゲームはどんどん出て来ますし、『シャドウラン』にせよ、『GURPS』にせよ、難易度の高い重量級RPGがいっぱい出て、俺も感覚がいろいろ麻痺していたのは否めない、と思う」

シロ「だけど、最も売れたのは『ソード・ワールド』なんですよね」

NOVA「まあ、文庫RPGという入手しやすさと、ロードスと同じ世界観で手堅いシステム、リプレイや小説でファンタジーの雰囲気を伝えて、入門的な手軽さと同時に、初心者にとっての奥深さを両立させた傑作だろう」

ヒノキ「当時の入門RPGじゃと、D&Dの赤箱ベーシックから、T&Tになるか?」

NOVA「ファイティング・ファンタジーも入門には違いありませんが、AFFに至る前に5年かかったのは、遅すぎましたね。85年と90年というのは、日本のTRPGにとって大きな拡大進化を遂げた時期ですから」

シロ「86年のドラクエから、一気にRPGというゲームジャンルが時代を席巻しましたからねえ」

NOVA「85〜90年は、日本のTRPGが根付くとともに、海外のゲーム情報がいろいろ入って来たりもして、広がるとともに深化していった時期。そうなると、初心者向きとしてT&T→ソード・ワールドという流れがあって、一方、原点のD&Dはシステムとしての古さ、不自由さがマニア心には飽きられやすい一方、ではマニア向きに発展したAD&Dとなると、明らかに初心者を切り捨てる形になった。これだと、最初からマニア向きと評されたMERPやルーンクエストの方が緻密で良いゲームという評価で固定ファンも付く」

ヒノキ「そして、D&Dの牙城をソード・ワールドが突き崩す形になったのじゃな」

 

90年から後の日本TRPG史(大日本絵画の方面)

 

NOVA「まあ、90年〜95年ぐらいが、日本のTRPG最初の最盛期だと考えますが、その間にSNEを中心とする角川系と、ホビージャパン、他にはアスキーのログアウト系、シミュレーションゲームから発展したツクダホビー系、モンスターメーカーなどの翔企画やら、ローズおよび蓬莱学園の遊演体など、参入会社やゲームジャンルなど一気に広がった感じです」

シロ「FEARさんは?」

NOVA「設立は、1993(トーキョーN◎VAの)年だけど、雑誌『ゲーマーズ・フィールド』を創刊して、自社製品を売り出しにかかった1996年からが目立って、TRPG冬の時代から21世紀初頭の10年以上を牽引してきた会社として、特筆に値するわけだが、PAの時代とは重ならないんだな」

ヒノキ「PAは大日本絵画製品じゃが、『マルチバース』以外に何がある?」

NOVA「ここは模型誌『モデルグラフィックス』の絡みで、ガンダムセンチネルを売り出して、RPGにもしました」

 

ヒノキ「ガンダム系のTRPGだと、ツクダホビーとホビージャパンがあったが、その合間にこういうのもあったのか」

NOVA「後はこれですかね」

NOVA「これは1992年発売で、『ゲームグラフィックス』誌絡みで最後に出たTRPGですな。個人的には、セブン・フォートレスに与えた影響というか、雰囲気もそれなりにありそうだなあ、と思ってます」

シロ「作者は違いますよね」

NOVA「作者は、この後、こっちのゲームを作ったな」

NOVA「この『とらぶるエイリアンず』は、2007年に発売されて、来年20周年記念になるわけですが、あまりブレイクしたとも思えない知る人ぞ知る系のゲームなのに、俺の本棚には今も眠っていて、どういうわけか去年、ホビージャパンから改めてプッシュされたという」

ケイP『まじかるランドは、戦士、蛮人、冒険者、盗賊、魔術師、司祭、聖騎士、お姫様の8つのクラスで遊べるッピ』

シロ「お姫様というクラスが珍しいな」

NOVA「実は結構、優秀だったりする。メイジ呪文とプリースト呪文の両方使えて、賢者的な能力を持っているからな。まあ、92年当時だと、手軽に蛮人をプレイできるゲームも少なかったと思うが」

ヒノキ「AD&Dの2版は、バーバリアンが削除されておったからのう」

シロ「でも、PAでワイルドランド出身キャラをプレイすれば、蛮人ってことにできませんか?」

NOVA「まあ、キャラクラスにないだけで、ゲームシステムによっては、蛮人風味の戦士を作ることはできたろうが。それにしても、今の目から見ると、クラスが8種類で兼職もできないのは、物足りないと思う」

ケイP『その分、とらぶるエイリアンずは、キャラクタークラスが17種類と多彩だッピ』

NOVA「普通の人間は、通常人、テロリスト、秘術使いの3種だけで、他はエイリアンが7種と、エイリアンの協力者(操り人形)3種と、亜人類4種(人型ロボット、AIによって生み出されたクローン、未来人、高次元の使い)で、それとは別に13種類の表の顔(マスク)を選ぶことになっている」

シロ「表の顔って?」

NOVA「とらぶるエイリアンずは、正体隠匿系ゲームなんだ。クラスによって、目的が異なっていて、普通は人類を守るべく行動するのが、中には人類根絶を目指すロボットや宇宙人、テロリストがいたり、人類支配が目標の宇宙人とか、要するにパーティーの目的意識がバラバラで、誰が味方で誰が敵かは分からない。だから、正体を隠すためのマスクという役割がある」

ヒノキ「マスクには、どのような物があるんじゃ?」

NOVA「超天才(オタク)に始まり、大富豪、ラッキー、傭兵、エージェント、4種類の超能力者、強化クローン、サイボーグ、霊能力者、獣人といったところか。それで特殊能力も得られる。さらに表の職業として、学生や私立探偵、暴力団関係者、サラリーマン、運転手、アイドルといったジョブが23種類用意されていて、理論上は17×13×23=約5000通りものキャラクターを作れるっぽいな」

ケイP『正体は人類殲滅を企むテロリストが、仲間には大富豪だと偽って、でも普段は学生を演じているってのもありだッピ』

シロ「学生テロリストだったら、ガンダムOOとか、コード・ギアスとかでありそうですね」

NOVA「ルルーシュだったら、マスクは大富豪よりも精神操作系の超能力者の方がらしいし、刹那だったら傭兵かな。とにかく、『とらぶるエイリアンず』はかなり変化球的な作品で、TRPGのルールで『人狼』をプレイしようってコンセプトですな。ともあれ、PAの魔法話の前置きのはずが、ずいぶんと脱線したので、遅まきながら系統話に移ります」

 

第6〜9系統・風、水、火、地の精霊魔術(フォー・エレメンタルズ)

 

NOVA「さて、精霊魔法といえば、日本で一番早かったのは、やはりローズtoロードのカードに基づく魔法だと思うんですね。ローズの魔法は、ゲームの版によって細かいルールが違うのですが、ランダムにもらえるカードを試しに使用することで発動するか、複数のカードの象徴するマジックイメージを組み合わせて、その効果をプレイヤーが解釈するという。カードによって発動する魔法という意味では、後のMTGに通じる面がありますが、ローズの場合は、試しに発動して、これは使えるな、と思ったら、それを正式に習得して、いつでも使える術に昇格させることも可能。

「最初はランダム、もしくは練習という形で発動していた神秘の力が、2度めからは身についた技として使いこなせるようになる。この魔法の習得過程を楽しめるゲームがローズだと思うのですが、ローズのカードには色があって、その色が精霊のような属性を持った神(スィーラ)に対応している。その意味で、ローズの魔法は当初から、光や闇、地水火風、植物といった属性を持つ精霊魔法のイメージが強い、と」

ヒノキ「D&Dはどうなのじゃ?」

NOVA「エレメンタルを召喚する魔法はありますし、ドルイドが自然界および精霊界のエレメンタルの専門家である一面はあったりもするのですが、いわゆるエレメンタル魔法の使い手(エレメンタリスト)はAD&Dの未訳サプリにしかなくて、日本で紹介されたクラシックD&Dでは精霊という要素は希薄でした。とりあえずは、1987年にコンパニオンセット(緑箱)が翻訳出版されて、そこで初めて異次元である地水火風の精霊界が解説されたりもしたけど、精霊魔術あるいは元素魔術という呼称は使われていません」

ヒノキ「すると、ルーンクエストが精霊魔法の初出になるのか」

NOVA「ですね。まあ、その前にMERPの精気界の魔法使いが元素魔法も操ることができて、上級ルールの位置づけにあるロールマスターではエレメンタリスト(元素使い)というクラスも用意されています。一方、ルーンクエストの精霊魔術(スピリット・マジック)は、部族のシャーマン(祈祷師)から授かる魔法ですが、地水火風のエレメンタル(元素精霊)とはまた違う扱い。一口に精霊といっても、四大元素を表す場合と、もっと幅広く万物(生物・無生物問わず)に宿る霊魂を表すアニミズム的なものとでは、区別が必要ですね」

ヒノキ「ルーンクエストの精霊魔術は後者寄り、と」

NOVA「精霊の王という概念が日本で登場したのは、TRPGだと『ストームブリンガー』が最初かな。この世界の魔術は召喚魔法が中心で、神々や悪魔、動物の王や四大元素の王などを召喚し、契約し、使役するタイプのものばかり。次いで、国産RPGではワープスファンタジーが地水火風の属性魔術を表し、その後に89年、ソード・ワールドの精霊魔法の使い手シャーマンに至った、と」

シロ「すると、88年に魔法の系統15種類の中で、4種の精霊魔法を掲げたPAは早いわけですね」

NOVA「地水火風の四大元素という概念がゲーム界に浸透したのも、大体この時期じゃないかな、と。まあ、俺にとっての元素精霊のイメージ源は『透明ドリちゃん』(78年)が初なんだが」

NOVA「『透明ドリちゃん』の魔法は、妖精の王女の姿に変身しての透明化と、木火水風石の5大妖精を召喚して、それぞれの能力を使ってもらうことで、『ジャッカー電撃隊』の後番組となる日常ファンタジー作品だな。同じ石ノ森作品だから『ジャッカー電撃隊VS透明ドリちゃん』が作られても良かったのではないか?」

ヒノキ「いや、それだと『透明ドリちゃんVS宇宙からのメッセージ 銀河大戦』につながる」

NOVA「どんなストーリーになるか、まったく見当がつきませんな。まあ、その後、透明ドリちゃんはイガ星人の末裔として、宇宙刑事シャリバンに出演するなど、無理やりつながらないことはないんですが、役者つながりだと、ヘドリアン女王の曽我町子さんの孫がガンバロンだったり、モモレンジャーがクラス担任だったり、特撮ネタとしていろいろ語れる作品でもある。何よりも、音楽が宙明さんだからな。戦隊にも、宇宙刑事にもリンクするわけだよ」

シロ「って、PAの話はどこに行ったのですか?」

NOVA「う〜む、精霊魔法とか妖精魔法の話を展開して、今回は的がなかなか定まらないんだが、話を戻すと、精霊魔法は各属性ごとに特徴があって、その使い勝手を確認してみよう。まず、風の魔法だな」

 

★風の魔法(術師名・エレメンタリスト)

 

NOVA「風と言えば、炎と並ぶ主人公属性として人気なんだが、使いやすい攻撃呪文としては、相手を窒息させてダメージを与えるスマザーがなかなか凶悪だ」

ヒノキ「いきなり強烈なのが来たのう。風といえば、攻撃魔法は強風で吹き飛ばすとか、切り刻んでダメージを与えるのが定番ではないか?」

NOVA「そういう定番を外したところにPAの魅力があるんですよ。強風魔法のウインドはありますが、これは発動に1分かかるので戦闘には使いにくいですし、ダメージを与えることもできません。突風を起こして、相手を転倒させるとか、帆船の移動を制御するなど、それなりに応用範囲の広い使い方ができそうですが、戦闘魔法ではありません。戦闘で使えるのは、窒息魔法の他に、防御魔法のエア・アーマーぐらい。まあ、APAだと削除されましたが。

「代わりにダメージ魔法が増えて、風で突き刺してダメージを与えるマジックミサイルと、少し強力な範囲魔法のポイズン・ウインド(毒風)と、風系の最強魔法と言うべきトルネード(竜巻)がありますが、竜巻も発動させるのに1分間を費やしますね。所要時間を半減できる領域でも7.5ターンですから、あらかじめ唱えておいて戦闘開始直後に発動ということをGMが認めない限りは、強力だけど使い勝手が悪い魔法になります。上手く発動すれば、竜巻の範囲内の敵は空中高くに飛ばされて、衝撃ダメージを受けるとともに、6メートル分の落下ダメージも受けるうえ、竜巻は10分間持続するという。1ラウンド4秒の通常戦闘ではなくて、もっと単位時間の多く設定された大規模戦闘であれば、使い出があると考えますが、大規模戦闘ルールは実装されていませんので」

ヒノキ「発動まで時間のかかり過ぎる大魔法は、戦闘でのギミックに活用するといいかものう。味方の大魔法使いNPCが強力な魔法を発動させるまでの時間稼ぎとか、敵の魔法使いが大魔法を発動させる前に、邪魔をするザコを倒して、魔法使いを守る結界を解除したうえで、一撃加えて呪文妨害しないと大ピンチになるとか」

NOVA「つまり、プレイヤーキャラがポンポン気軽に使う魔法じゃないってことですな。まあ、魔力50も費やすので、ポンポン使えるわけでもないですが」

シロ「それにしても、窒息とか毒風とか、あまり主人公っぽくはないですね、PAの風使いって。風って、もっと爽やか系かクールなイメージがありましたが、PAだとどこか陰湿というか、嗜虐的というか」

 

NOVA「風の戦闘呪文はそれぐらいにして、他には濁った空気を浄化するフレッシュ・エアーとか、飛行魔法のフライト(飛べる者にかけると速度倍化)、煙や霧、雲の上を歩けるクラウド・ウォーキング、飛行生物を召喚できるサモン・アヴィアンが手軽な便利系呪文になりますか」

シロ「手軽の基準は?」

NOVA「魔力消費が10点まで。まあ、召喚呪文は呼び出す相手のサイズによって魔力消費が変わってくるけど(魔力10でサイズ1、魔力20でサイズ2……など)、とにかく、この召喚呪文は呼び出した後、3時間の奉仕まで含んでいるので、結構、いろいろ活用できそう。一方、飛行呪文は便利なんだけど、持続時間が1分だけなので、長距離移動はできないな、と。崖を飛び越えて、向こう側に渡るとか短距離移動用になりますか」

ヒノキ「長距離移動できる飛行呪文はないのか?」

NOVA「APAだと、フライトの持続時間が4時間になって使いやすくなったかと思いきや、飛行呪文じゃなくて、物体を空中6メートルの高さに持ち上げ、空中を歩行速度並みの速さで動かす念動系の呪文になっていますね。空を自由に飛ぶ魔法ではなくなってしまいました。長時間飛ぶなら、大型の飛行騎乗生物を召喚するコール・アヴィアン・マウントが有効で、魔力25点でペガサスやロック鳥なんかを召喚して、1日間持続できます。まあ、これもAPAだと魔力30で1時間と大きく弱体化しましたが」

ヒノキ「さすがに1日も拘束されるのは、飛行生物もキツいのじゃろう」

NOVA「そうですね。APAでのサモン・アヴィアンも、魔力消費は10から3に減りましたが、拘束時間が3時間から2分に激減して、お手軽になった分、ちょっとした仕事しかさせられなくなりましたね。同じ名前の魔法でも、結構、性能が変わっているんだなあ、と思います」

シロ「ともあれ、風は移動系が充実している感じですね」

NOVA「あとは天候制御のウェザー・コントロール、風の小精霊を呼び出すエア・ボーイが魔力消費10点以上で、連発はできないけど、長距離の旅を快適にしたり、戦闘サポートに使えなくはない、と言ったところ」

ヒノキ「召喚系は、召喚生物や精霊に何をさせるかで、術者プレイヤーのアイデア次第といったところじゃのう」

 

★水の魔法(術師名・ニクシー)

 

NOVA「水系統の手軽な攻撃呪文はドローン。相手の肺を水でいっぱいにして、溺れさせます」

シロ「それはまた酷い魔法ですね」

NOVA「回避できなければ、体力の2割を失うわけですが、APAだとダメージはなくなった分、抵抗に失敗すると気合スキルで判定して、それにも失敗すると即気絶してしまうという無力化呪文。それ以外のダメージ呪文だと、急に魔力消費25点の大規模範囲呪文アイス・ストームになって、戦闘では使いにくいかな、と思います。APAだと、魔力消費10点の範囲呪文アイス・ブラストが加わって、使い勝手が良くなったと思いますが」

ヒノキ「最強呪文は津波でも起こすのか?」

NOVA「いいえ。渦巻呪文のウォーター・ボルテックスですね。風のトルネード同様、発動に1分かかるのと、池以上の大きさの水面上でしか使えないので、トルネードに比べて劣化していると思われがちですが、魔力消費が10点安い40点なのと、効果範囲が広いのが特長かな。まあ、APAだと、もう少し小規模な嵐を起こすストームがあって、魔力消費15点で4時間有効。敵は毎ターン1点ずつダメージを受けて、攻撃命中マイナス4、感覚半減というデバフを受けます。まあ、地下や屋内では使えない野外専門魔法なんですけど」

シロ「毎ターン1点の継続ダメージは微々たるものと思いますが、感覚半減ということは視覚6以下の相手は飛び道具の使用にペナルティーを受けるということですね。実質的に飛び道具封じになる、と」

NOVA「普通の人間(視覚4)だと、2になって接近戦にもペナルティーだから、嵐の中だと敵の命中がかなり下げられるということだな。しかも、嵐は継続するわけだから、一度抵抗に成功しても、毎ターン抵抗をしないといけないので、敵の数だけ抵抗ダイスを振らないといけないGM泣かせの呪文と言えよう。処理が非常に面倒なことになる」

ヒノキ「水呪文は、範囲魔法が充実しているということか」

NOVA「一方、防御呪文はPAがウォーター・アーマー、魔力10点で3ポイントの物理ダメージを防ぐ水の防御を4ターン付与します。APAではウォーター・プロテクションに名前を変えて、魔力4点ごとに1ポイントの防御効果という変動型になりましたが、効果時間が10ターンになりました。どちらも術者本人だけにしか使えないという欠点があるので、風魔法のエア・アーマーほどの使いやすさはありませんね」

シロ「防御呪文って、後方支援役が味方の前衛にかけてあげられるかどうかで、使い勝手が大きく変わりますからね。魔法戦士なら、防御魔法に身を固めてから攻撃に切り替えるという戦術もありでしょうが」

NOVA「味方への攻撃をかばう盾役というムーブができるならば、攻撃せずにガチガチに防御を固めるという戦術もありだが、PAの時代にはかばうという戦術はまだ確立されていなくて、そういうスキルや特殊能力も実装されていない。まあ、戦闘ルールの進化論はこれぐらいにして、戦闘以外の魔法も見て行くとしよう」

ヒノキ「水中呼吸は当然、あるじゃろうな」

NOVA「ブレス・ウォーターですね。普通にあります。PAでは持続時間が10分だけでしたが、APAでは1時間に拡張されたから、使いやすくなりました。また、水上歩行のウォーク・オン・ウォーターも便利。飲料水を作るクリエイト・ウォーターも長旅では便利で、水以外の飲み物(アルコール、牛乳、果汁)を作るクリエイト・ジュースもAPAで実装されました」

ヒノキ「水使いは環境依存型の傾向が強く、水のあまりない乾燥地域では使い勝手が悪いと思っておったが、水を創る魔法があるのなら、大いに役立つのう」

NOVA「PAだと、クリエイト・ウォーターで100万リットルの水、大きな池を一杯にする量が作れたのですが、APAだと合計サイズ4までの者が喉を潤す程度に激減。まあ、それでも何度もかければ、パーティーメンバーの飲み水程度は確保できるでしょうな」

ヒノキ「確か、PAのエンチャンターも水を作ることはできたが、APAでは割愛されたのじゃな」

NOVA「ええ、比較すると以下の形です」

 

  • PA:エンチャンターは少人数の飲み水を創造できる。水使いは池程度の水を大量に創造できる。
  • APA:エンチャンターは水を創造できなくなった。水使いは少人数の飲み水、または他の飲み物を創造できる。

 

NOVA「あとは、水中の生き物と会話できるアクアティック・スピーキングとかがあって、APAだと、さらに水中の生き物を召喚できるサモン・アクアティック・アニマルズなんかが用意されていますが、環境依存型の魔法が非常に多い系統なので、冒険の舞台次第で有用かどうかが決まりますな。海洋冒険や川辺近くの野外冒険ではそれなりに使えるかも、といったところ」

 

★火の魔法(術師名・パイロマニアック、パイロテクニシャン)

 

NOVA「精霊魔法を戦闘で役立てようと思えば、この系統が一番だと言えます。まず、一番手軽なダメージ呪文はファイア・ブラストですが、PAとAPAでは演出も効果も別物。前者では口から緑の炎を噴き出し、単体相手のダメージ呪文。後者は熱風を放ち、範囲呪文に強化。それらの上位呪文がドラゴン・ブレスで、魔力消費や所要時間が増えた分、威力も上昇。その上を行く攻撃呪文は、APA版がファイア・ボールで、最強クラスのダメージ呪文になりますな。一方、PAの究極呪文は、抵抗に失敗した物を消滅させるデストラクション。これは、もはやダメージが関係ない一撃必殺系の破壊魔法ですが、発動に4分もかかるので、戦闘中に使うものではないと考えます」

ヒノキ「まるで極大消滅呪文みたいな感じじゃな」

NOVA「抵抗されると無傷なのと、魔力を60も消費するので、並みの術師には唱えられないのと、APAでは消えたので、ほとんどロマンのような呪文ですな。他には、炎を使って、いろいろな物を燃やす系の呪文が、APAでは充実しています。魔力1で使える点火呪文ファイアを始め、融点の低い物質を溶かすメルト・ロウ、もっと強力な金属や岩を熔かすメルト・ハイなんかが破壊系の呪文になるかな」

ヒノキ「破壊系しかないのか?」

NOVA「防御系もありますよ。PAでは、まず炎無効のヒート・プルーフが便利で、熱や炎に対する完全耐性が得られます。APAではファイア・レジスタンスと名前を変えましたが、自分自身にしか掛けられなくなりました。仲間にかけられない防御魔法って、いろいろがっかりです。

「他に、ダメージを減らす系の防御魔法は、PAのファイア・シールドフレーム・アーマーがありますが、効果には大差ありませんので、重ねがけすることで防御力を高めるとかかな。シールドの方は、攻撃してきた相手の武器を30%の確率で融かしてしまう効果があるので有効な反面、アーマーの方が1点防御力が高いとか。一方、APAでは、シールドとアーマーの効果が統合されたファイア・アーマーに進化して、防御効果も消費魔力によって可変するようになりました(魔力4点ごとに1点ダメージを軽減)。そして、相手の武器の構造点にダメージを与えたり、肉体を使った攻撃の場合は火炎のカウンターダメージを与えるなど、優秀な効果になった反面、やはりAPAの方は術者のみにしか掛けられないという残念仕様。魔法戦士で自ら前衛に立つタイプなら有効活用できそうですが」

 

NOVA「さて、戦闘魔法以外の便利魔法ですが、これはPAの方が充実していて、気温を10度まで上下変動できるテンパレーチュア・コントロールがいい感じですが、魔力3消費で持続時間が10分だけというのが微妙にエアコンになりきれないな、と。こういう魔法こそラウンド単位でなく時間単位であれば、夏場や冬場でも非常に快適に過ごせるものを」

ヒノキ「気象コントロールは、APAでは風魔法の特権になったようじゃな」

NOVA「次にPA独自の魔法として、手足からジェット噴射のように炎を噴き出して1分間の飛行能力を得るフレイム・フライト。風魔法だけでなく、炎魔法でも飛行能力を得るというのは珍しいなあ、と印象的だったのですが、APAからは消えました」

シロ「炎系で便利な魔法が次々と失われていくんですね」

NOVA「戦闘も得意で、便利魔法もあるということなら、精霊魔法は炎一択になる、という偏りを是正するためだろうな。そして、消えた炎魔法、最後の一つがフレイム・リーディング。これは炎に像を映し出すことで、特定の人物や場所の現在および近い未来情景を4分間、見ることができる魔法だ」

ヒノキ「炎使いが占い師にもなれるということか」

NOVA「個人的には、こういう役回りって水使いの担当だと思うのですが、PAでは炎使いが優遇されていたようですね。でも、こういう便利系の術がAPAでは抹消されて、代わりに2つの魔法が追加されました。1つは敵全体にスキルの成功値マイナス2、移動力半減のデバフを与えるフェアリー・ファイア。炎系では珍しいデバフ効果ですね。D&Dのドルイド呪文として有名な魔法ですが、全スキルがマイナス2ってことは、武器の命中も、回避も、そして呪文への抵抗も成功率が全て10%減少するってことですから、効果が大きいってことです。ただ、炎使いに求められている役割って、強力なダメージ呪文で敵の体力を削ることだと思いますので、こういう搦め手が戦闘ターンの無駄にも感じられますな」

ヒノキ「炎耐性を持った敵を相手にする場合は、炎魔法でダメージを与えられないので、搦め手も必要になろう」

NOVA「なるほど。他には、ダメージを与えてはいけない相手(操られている一般市民)に対して、無力化させるためのサポートにはなるか。相手を気絶させるためのスキル〈抑制攻撃〉を使うとか、他の無力化手段と併用したりするんですな」

シロ「ここまでの話で、無力化できる呪文は、幻術のスリープと、水魔法のドローンになりますか。意外と、傷つけずに無力化させる呪文が少ないのかもしれません」

NOVA「操られているなら、蠱惑系統のチャームで操り返すという手もあるが、とにかく火炎攻撃をしてはいけない局面で有効なサポート呪文になり得る、と。で、最後の一つは、物体に爆発する罠を仕掛けるファイア・スネア。術者以外の者が、罠を仕掛けたアイテムに触ると、アイテムが爆発して6点の固定ダメージを与える代物」

ヒノキ「お前さんが本棚によく仕掛けている奴か?」

NOVA「いや、大事な本を爆発させるような魔法を使うはずがないじゃないですか。俺の本棚は、本を詰め込みすぎて、うかつに触ると崩れてくる仕掛けになってるんです。いわゆる天然トラップの類です。まあ、ゲームブックなんかだと、呪われた本とかも結構ありますが、さすがに本を調べて爆発したような罠は見たことがない……はず。爆発させるなら、扉の鍵がいいですな。魔法でないと開かない扉に、わざとダミーの鍵穴を用意して、それを盗賊が調べると爆発するとか、鍵束の中に爆発する外れを仕込むとか、自分は壊れても惜しくないけど、冒険者が興味を持って調べたくなりそうなものを考えると、活用できそうです」

シロ「ところで、この魔法をかけたアイテムって確実に壊れるんですよね。牢屋に捕まった際に、鉄格子や錠前に魔法を掛けてから、誰かに触ってもらえば、6点ダメージと引き換えに脱出できそうです」

NOVA「おお、それはいいかもしれないな。さて、こんな便利呪文の活用術も考えたりしながら、最後に大物を一つ。PAにもAPAにも両方採用されているのが、サモン・ファイア・エレメンタルです。PAで地水火風のエレメンタルはデータ化されているのに、プレイヤーが召喚できるのは火と地だけなんですな。風と水は、少なくとも呪文のデータがないので、独自にオリジナル呪文として用意しないと、呼び出せない。あるいは、風はサモン・アヴィアンで、水はサモン・アクアティック・アニマルズで、それぞれ呼び出せる生物の一種と解釈することで、何とかなるかもしれませんが、生物を現世に生きる鳥獣と解釈するか、それとも広い意味でのクリーチャー(アンデッドや悪魔なども含む)と解釈するかで正解が変わってきます」

ヒノキ「まあ、そういうのは実プレイで、風使いや水使いが主張したときだけ、GMが面白いと思った方を選べばいい。ともあれ、炎使いは火の精霊を召喚できる。強いのか?」

NOVA「エレメンタルで最強なのは、サイズ4のウォーターだと思います。最弱はサイズ2のエアー。ファイアとアースはどっちもサイズ3ですが、タフでパワーがあるのはアースの方です。ただ、アース・エレメンタルは接近戦しかできなくて、しかも命中率が悪い(35%)。ファイア・エレメンタルは打たれ弱くて、意外にも魔法使いタイプと思われ。遠隔攻撃で火の玉を飛ばすことができて、命中率が80%。つまり、後方に配置して砲台役を担当させると、高い命中精度で相手にダメージを与えてくれる。ボス戦の前に1分かけて召喚する余裕があれば、その後20ターンは火の玉で支援できる。APAだと持続時間が1時間なので、少しぐらいは連れ回して歩くこともできるけど、25%の確率で1〜6ターン後に精霊界へ帰ってしまう仕様」

ヒノキ「召喚魔法も、なかなか面倒な仕様なのじゃな」

NOVA「80年代はそうですね。召喚魔法を手軽に使いやすくしたゲームって、ソード・ワールドのシャーマンと、ファイナルファンタジーじゃないですか? その後、MTGとか、メガテンの悪魔召喚プログラムとか、ポケモンのモンスターボールとかで、モンスターを使役して戦わせるゲーム(サモナー系とテイマー系の2種に分かれる)が増えてくると、よりお手軽で扱いやすい召喚魔法のシステムが考案されてくる」

ヒノキ「まあ、召喚魔法は次の記事のネタになりそうなので、今は最後の地の魔法を終わらせるとしよう」

 

★地の魔法(術師名・ミスティックマイナー)

 

NOVA「今回の大トリは地の魔法だが、攻撃呪文は小石をたくさん相手にぶつけるロック・スマッシュ。防御呪文はロックアーマー。それに召喚魔法のサモン・アース・エレメンタルが加わり、最強呪文は地震を起こすアースクェイク。ただ、この究極の地震は、ゲーム的に具体的な効果がはっきり書いていないんだな」

ヒノキ「と言うと?」

NOVA「PAの記述だと、『この呪文は1平行キロメートルの地域をマグニチュード6.5以上の巨大な地震が襲うものです。建造物への被害は激しく、地域内の住民は、すべてそれぞれの状況に応じたダメージを受けます。持続時間中は地域内の者は何も行動することができません』とある。この、それぞれの状況に応じたダメージって、具体的にはいくらなの? というのがGM裁定に委ねられているし、プレイヤー側が使うなら、自分たちを巻き込んで自滅しそうな呪文でもある。さらに言えば、1988年発売のゲームだから、阪神・淡路大震災の7年も前だからな。地震のイメージがいまいちつかめていなかった」

ヒノキ「つまり分かっているのは、1キロメートル四方の範囲が地震で建物倒壊するということじゃな」

NOVA「マグニチュード6.5って、それだけの規模の地震が1キロメートル四方の範囲で収まるはずがないし、ツッコミどころの多い記述だ。一方、APAだとこうなっている。『この呪文は大地を強烈に揺り動かすものです。これによって洞窟は崩れ、建物は崩壊し、木々は倒れます。倒壊するものの付近(30フィート以内)にいる者は全員+5DFMのダメージを被ります』とのこと」

シロ「+5DFMって?」

NOVA「DFMはダメージ・ファクター・モディファイの略で、呪文の場合は『知性種族値+自我個人値+呪文DFM』で振るべきダイスが決まる。仮に知性種族値10のエルフが自我8でこの呪文をかけると、DFMを加えて23となって、ダメージダイスは1D12+1になる。知性種族値が5の人間なら18だから、ダメージダイスは2D6。この+5DFMの数値を、たとえば武器になぞらえるなら、ハルバードで殴られたり、ヘビークロスボウで撃たれたりするぐらいのダメージで、魔法の呪文ならファイア・ブラストが+4DFM、ドラゴン・ブレスが+8DFMで、アースクェイクのダメージはそれほど大きなものではない」

ヒノキ「つまり、ダメージ呪文としては、大したことはないということか?」

NOVA「震災経験者として言わせてもらうと、地面の揺れそのものでダメージを受けるわけじゃなくて、倒壊する建物に巻き込まれて、瓦礫に押しつぶされたり、発生する火災などで被害を受けたりするわけで、他には地面が崩れて地割れに飲み込まれるというか、倒壊する高速道路から乗っていた車ごと転落するとか、人体へのダメージが大きいのは2次被害の方だからな」

ヒノキ「すると、新兄さんはこの呪文をどう扱う?」

NOVA「元々、PAだと発動するのに5分を要するから、戦闘中に使うものではない。APAだと、5ターンぐらいで使えるから手軽になったが、基本的には1つの建物や洞窟などを崩壊させるための呪文だと見なす。1キロ四方だと、せいぜい街の一区画で、分かりやすいイメージだと学校の校舎や運動場を含む敷地内だな。ファンタジー世界だと、お城や砦などを標的とする。GMが使うなら、シナリオの物語に合わせた使い方になるだろうし(敵の地震魔法で崩れた防壁から、侵入してくる敵軍を迎え撃て、など)、プレイヤー側が使うなら、何を目標にする? と尋ねるな」

ヒノキ「どの敵をではなくて?」

NOVA「対個人ではなく、対施設とか、対地形とかで考えて、それが揺れて崩れかけているときに、どういう状況が生じるか、術師のプレイヤーにも考えてもらう。ルールの記述が曖昧なんだから、具体的な効果はGMとプレイヤー双方の納得が必要だろう。気軽にポンポン地震を起こされるのもイヤなので、その辺はプレイヤーが地震の扱いを『考えることが多くて面倒くさい』と思わせるぐらいがいいか、と」

シロ「山賊のアジトである洞窟を崩して、戦わずして殲滅します、というプレイヤーに対しては?」

NOVA「GMとしては、用意したダンジョンをそんな形で崩されると文句の一つや二つを並べ立てたくもなるだろうが、ダンジョン内のお宝も全部回収不能になるので、そのことを警告したうえでプレイヤーの要望に合わせるしかないだろうな。まあ、山賊が村娘を人質にしていて、冒険の目的が救出なら、さすがに自粛するだろうし、洞窟を崩すような無茶は……ゲームのクライマックスならありかもしれん。とにかく、嬉々として地震を発生させたがる災害製造マシンみたいなキャラは、ラノベネタぐらいにして欲しい」

 

NOVA「さて、ここまではまだまともな部類だが、地の魔法は割と色物が多い」

ヒノキ「と言うと?」

NOVA「まず、クリエイト・ジェム。普通の石を宝石に変える魔法だ。1日かけて石を磨いて、魔力を注げば宝石を生み出せる。魔力1点で3カラットな。人造ダイヤも作り放題だが、さすがにAPAでは魔力60点を消費する大呪文に変更された。PAではお手軽呪文だったのに」

ヒノキ「魔法で簡単に宝石が作られるなら、世界の経済が崩壊しそうになるからのう」

NOVA「宝石はレアだから、お宝なんですよね。APAの魔法で作った宝石は3週間で崩れ去る氷みたいな代物で、それを永続化しようと思えば、魔力の10%を捧げないといけないので、よほど芸術的な魔法宝石職人になりたいという願望でもない限りは、普通しません」

シロ「宝石職人になる魔法って、実用的というよりは生活に密着した感じですね」

NOVA「多少のロマンがあるのは否定しない。次に便利魔法としては、岩と会話できるロック・スピーキングがあって、情報源としても役立つだろうし、キャラ立てにもなるな。さらに岩をすり抜けられるようにするスルー・ストーンもトリッキーだが、個性的な呪文だと思う」

ヒノキ「石の中にいる、を実用化した呪文じゃな」

NOVA「ただし、制限時間が1分間なので、長居はできません。せいぜい、壁一つを通り抜けるぐらいでしょう。APAだと持続時間が5分に増えて、多少は余裕ができましたが、壁の中にずっと隠れているような使い方は無理ですね。面白いのは、サイズ2の生物が3人または4人まで収容できるミニ要塞を作れるフォーティフィケーション。ハーフリングとか小人系のキャラが簡単に安全な野営場所を築けるようになってます」

ヒノキ「仮設住宅のようなものか?」

NOVA「俺のイメージだと、『三匹の子豚』のレンガの家みたいなものかな。これがPAだと、一度建てた家は永続化できるので、魔法の建築技師として即席住宅を築く商売ができるな、と思ったのですが、APAだと持続時間が2日だけになったので、3日めに消えてなくなる家だと、さすがに商売は難しいかな、と。旅暮らしの冒険者なら、安全な仮宿がいつでも手軽に設置できるのはありがたいですけどね。建物のサイズにしても、呪文を複数回使って、上手く建物を接合させられれば、定員オーバーも乗り越えられると思うし」

シロ「とにかく、壁を作れる魔法は多いですが、建物をポンと作れる魔法はTRPGだと珍しいので、地魔法の新しい魅力としてプッシュするといいかも。生活感あふれる地魔法って感じで、魔法の建築職人とか」

NOVA「どちらかと言えば、ダンジョンメーカーの方がありがちなんだけどな。さらにマニピュレート・ロックと言って、10分かけて石を自由に造形することができる。石像や石扉、石製の石彫刻、石製の玉座などが自由自在だ。今風に言えば、3Dプリンターみたいな魔法だな」

ヒノキ「地魔法は、職人系の加工魔法が多い。マインクラフトの類じゃな」

NOVA「それだ。最後にサモン・トレジャーという呪文が美味しくて、地面の中に眠っている宝(鉱物や水、ガス、油、石炭、宝石など)を湧き出させる魔法です(お宝が埋まっていれば)」

シロ「それは、宝探しに最適ですね」

NOVA「魔力8点で使える、お手軽ロマン魔法だったんだが、APAではサモン・グランド・トレジャーと名前が変わって、全然別物になった。まず、消費魔力が100点になって、それだけで初心者魔法使いが一攫千金を狙う夢が絶たれた。魔力100点を払える魔法使いなんて、経験豊富な上位魔法使いに決まっている」

ヒノキ「それだけの魔法使いなら、金持ちに決まっていような」

NOVA「しかも、地中のお宝を召喚するためには、等価交換というか、同じ金銭価値の鉱物を地面に埋めないといけないのですな。まあ、盗んだ宝をマネー・ロンダリングするための魔法とか、金貨をいっぱい埋めて、鉄鉱石の山に素材変換するとか、活用方法はあるのかもしれないが、所要時間が1ヶ月というのもいただけない。この呪文で富を築くことはできない、とルールブックで明記されたりもして、ロマンが崩壊した」

シロ「戦争が近くて、数ヶ月先に鉄製品の価値が暴騰しそうと予測できたときに、鉄を前もって入手しておくとか、そういう経済を熟知した魔法使いなら有効利用できそうですね」

NOVA「ファンタジー世界の経済概念がどれぐらいかは知らんが、少なくともPAのモノカン世界だったら、交易氏族が幅を利かせているから、魔法で地面を掘り返す魔法鉱夫(ミスティック・マイナー)と昔気質のドワーフ鉱夫の対立関係があるかもしれない」

ヒノキ「あるいは、オリハルコンやアダマンタイトのようなレア魔法素材を精製するために有効な魔法かもしれん」

 

NOVA「ということで、地属性の魔法は意外と、職人系や交易と関連づけられる便利魔法が多い、という話でした。ともあれ、このペースだと、あと2記事でPAの全魔術系統の研鑽が網羅できそうです」

ヒノキ「次は、生命と死、悪魔の呼び出し、召喚の3本じゃな」

(当記事 完)