花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、TRPGの魔法研鑽を展開予定。

ファンタズム・アドベンチャーの魔法話4(ネクロマンシーと召喚術)

今回はダークサイド方面

 

NOVA「魔法もいろいろあるけど、プレイヤーキャラで闇系魔法を習得するケースは少なめだと思われ」

ヒノキ「まあ、悪役キャンペーンとかGMが推奨しない限りは、基本的に闇系は倒すべき敵サイドのルールじゃからのう。もちろん、アンデッド使いとか、悪魔使い、あるいは悪魔そのものをプレイできるゲームもあるにはあるが」

NOVA「ところが、PAはネクロマンシー系統の習得率が異常に高いゲームになっています。というのも、第10系統の『生命と死』が最も扱いやすい回復魔法ヒーリングを含む以上、パーティーの回復役として割と欠かせない立ち位置だから」

シロ「他の系統で、回復魔法はないのですか?」

NOVA「あるにはある。11番めの『悪魔の呼び出し』にはデモニック・ヒーリングが、13番めの『象徴』にはヒーリング・ワードが、14番めの『秘薬』にはヘルスがあるが、それぞれ魔力消費も10以上あったり、所要時間が大きくて戦闘中には使いにくかったりして、扱いにくいんだな。安定した回復役を望むなら、『生命と死』一択ということになる。まあ、実際には死に関する呪文は少なめで、大部分は生命に関するものなんだが」

シロ「今のソード・ワールドのコンジャラーみたいなものですかね。旧ソード・ワールドのソーサラー魔法から分派して、派手な攻撃魔法主体のソーサラーと、地味な支援魔法主体のコンジャラーになったけど、後者も便利な魔法が揃っていて、魔術師なのに治癒役になれるとか、ゴーレムやアンデッド作りの魔法があって奥が深いとか、ラクシアの神様は穢れを忌み嫌うので、死からの復活はプリーストではなくて、コンジャラーの領域とか」

NOVA「アンデッド使いが、治癒役にもなれるという意味では、確かに関連づけられるかもな。とにかく、今回は闇方面に関わりを持った呪文系統を紹介していく、と」

 

第10系統:生命と死(ネクロマンティック)

 

NOVA「PAだと、この系統に10種類の呪文が含まれるが、いわゆる邪悪っぽい魔法は2つしかないので、8割は善良系だな。この系統の魔法使いは、ネクロマンサーもしくはウィッチドクターと呼称されるが、8割はウィッチドクターの方を望むだろう」

ヒノキ「回復治療役ならヒーラーの方が通りが良くないか?」

NOVA「APAだと、そういう呼称になりました。そっちだと、呪文総数は17に増えたのに対し、邪悪系は変わらず2つだけなので、邪悪率は約12%に減少。で、そのわずかばかりの邪悪系魔法ですが、一晩かけてアンデッドを作るクリエイト・アンデッドの呪文。ゾンビやスケルトンなら魔力11点で作れますが、ヴァンパイアを作るには魔力40点以上が必要で、しかも成功率が結構低いうえ、アンデッド作りに使用した魔力の10%は失われてしまうため、プレイヤー側は軽々しくは作れないという」

ヒノキ「呪文として用意はしつつ、プレイヤーに気軽に使わせないように歯止めはされておるのじゃな」

NOVA「ところがAPAだと、所要時間が1時間に減って、しかも魔力の喪失がなくなった。割とアンデッドが作りやすくなったと思います」

シロ「つまり、ネクロマンシー業界でも技術改善が行われたわけですね。でも、殺した相手をその場で即座にアンデッドとして復活させて、自分のコマとして戦わせるまでには至っていない、と」

NOVA「そんな凶悪なことができるゲームは、21世紀に入ってからじゃないか? インスタント・アンデッドみたいな魔法(倒した敵が3ターン後に復活して、自軍に加わる。戦闘後、酷使が祟って灰になって崩れ去る)が登場したのは、どの作品からだろうな」

ヒノキ「カードゲームならありそうじゃな。墓地送りにした敵カードの支配権を奪って、自分のコマとして使える、とか」

NOVA「ファイナルファンタジーなら5に、『ゾンビ』というバッドステータスがありました。聖水で治療できるのですが、それまではHP0のまま、毎ターン味方に攻撃し続けるという。コンピューターゲームのプレイアブルキャラにネクロマンサーがいれば、倒した敵をその場でアンデッド化させる特殊能力があったかもしれませんが、この辺はモンスター仲間システムと並行して発展したシステムだと思いますので、90年代から21世紀にいろいろ進化の歴史があったのでしょう。まあ、今後の研究課題にもできそうだ」

ヒノキ「アンデッド研究に本腰を入れ過ぎぬようにのう。ダーク方面の深みにハマって、戻れなくなるのは面倒じゃ」

NOVA「そうですな。余芸程度に留めておきます。ネクロマンサーがメインキャラになったゲームだと、2000年の『ディアブロ2』を思い出しますが、大勢のアンデッド軍団に自分を護衛させて、ダンジョンを探索するゲームは結構、面白かったですな」

シロ「その辺りになると、ネクロマンサー・プレイもコンピューターゲームでは定着していたようですね。TRPGでは、どうでしょう?」

NOVA「モンスターをプレイできるゲームとか、モンスターの使役者というテーマの作品ならOKといったところかな。日本だと、メガテンのTRPGでありそうだが、それも90年代の話だな。さておき、敵役にありがちな魔法だと、攻撃魔法のミスティック・ウーンド(APAだとコーズ・ウーンド)が挙げられる。癒しの力を逆転させて相手を傷つける魔法は、D&Dでも逆呪文であったが、そちらでは悪のプリーストが主に使うとされていた。普通のプリーストは、攻撃よりも癒しに魔法を使うからな」

ヒノキ「癒し手が、貴重な回復呪文の使用回数を逆呪文に転用するのは、仲間にとっても迷惑かもしれん。ともあれ、邪悪系はそれぐらいにして、残り8つの生命呪文を見て行くとしようか」

 

NOVA「ヒーリングは、魔力3点で体力1点を回復するので、回復効率はそれほど良くないと思ってますが、PAではこれが一番、使い勝手のいい回復呪文なので、80年代のTRPGだとこんなものかな、と」

ヒノキ「魔力が20点あるなら、6点回復か。体力を回復しながら、魔力も休息をとって回復して、その辺の効率をどう高めていくかがダンジョン探索の実践テクニックという奴じゃのう」

NOVA「痛みを取り除くヌル・ペインというのもあって、大ダメージ(種族値の耐久力以上)を受けて気絶しないようにするショック判定を不要にします」

シロ「ショック判定なんてあるんですね」

NOVA「PAの戦闘ルールだと、種族耐久力の低いキャラは、ちょっと殴られただけで死ぬ前にあっさり気絶するからなあ。たぶん、当時の日本のRPGで気絶キャラが最も多いゲームじゃないかなあ、と思う。まあ、耐久力の低い種族は機敏さが高いので、〈回避〉スキルを高めて攻撃をかわす(ダメージを減らす)のがセオリーだと思うが、エルフとピクシーとマウスマンは耐久力1なので、1点でもダメージを受けると気絶という」

ヒノキ「そういうキャラが気絶しないようにする保険として、ヌル・ペインが必要になるのか?」

NOVA「かもしれません。次に、行動速度を速くするアドレナリン・ブースト、病気や毒を癒すキャンセル・ディズィーズ/ポイズン(APAでは病気と毒で別の呪文に分けられた)、薬を作るドラッグ・クリエイションなど。実は、この薬作りの呪文が優秀で、前もって薬を作っておくと、体力を回復するのも、魔力を回復するのも、ショック判定を自動成功させられるのも、様々な薬が作られる。ただし、APAだと術者本人にしか効果を発揮しない薬になって、仲間のためには使えないという残念なことに」

ヒノキ「作った本人にしか効果を発揮しない薬では、商品にもならんのう」

NOVA「ともあれ、ハック&スラッシュ系のゲームだと、冒険中に入手できるポーションなどの薬が命綱ということも多いですし、回復役がいなくてもポーションがぶ飲みで対応できるゲームなら、良いゲームだと思いますな。さて、APAで消えた呪文ですと、相手の感情を支配できるエモーション・コントロールというものがあって、今現在のギャバンなんかとタイムリーな物を感じました」

シロ「感情支配だと、相手を急に怒らせるとか、笑わせるとか、そんな感じですか?」

NOVA「まあ、つまらないギャグを言って、何故か笑ってしまうとか、そんな感じですな。実用的なケースだと、怖がっている相手をなだめるとか、怒りを鎮めさせるとか。チャームみたいに恋愛感情まで植えつけられるわけではなくて、感情の対象まではコントロールできないみたい。理由も分からないけど、気分がウキウキするとか、喜怒哀楽の気持ちだけを掻き立てたり、鎮めたりする形で、誰かへの憎悪を掻き立てるような使い方はできないし、相手の行動までコントロールはできない。問題は、こういう精神活動まで生命と死の系統なのか? というツッコミ点ですね。そういう疑問が解消できないから、APAで消えたのかな、と」

ヒノキ「精神活動は、生命活動とは異なるという考えじゃな」

NOVA「あとは、アンデッドを退散させるターン・アンデッドと、復活の呪文リザレクションですが、後者は魔力を70点も消費するうえ、金貨100枚と7点の魔力を失うことになります。お金はともかく、魔力の喪失が厳しいな、と。APAだと、魔力喪失はなくなりましたが、これで復活した者は種族寿命の2割だけ老化してしまいます」

シロ「すると、何度も死んでは復活を繰り返すと、すぐに老衰死してしまうわけですね」

 

NOVA「以上がPAだが、APAになって追加された呪文も見て行こう。まず、魔力1点を犠牲にして、術者が1歳若返るレジュビネーション。この魔力は自分だけでなく、他の生物やマジックアイテムを犠牲にしてもいいそうで、要するに魔力の生け贄を用意して、アンチエイジングできる魔法と」

ヒノキ「寿命を奪うのではなく、魔力を奪うのじゃな」

NOVA「魔力収奪用の奴隷を買って、魔力が尽きたら廃人になるとかだと、魔法使いの邪悪さを演出できますな。まあ、廃人になるまでは酷使しなくても、魔力を奪うだけ奪って、用済みとなれば捨てるとか、いろいろシナリオネタを考えられる設定です。魔力の収奪は犯罪なのかどうかも問題があるけど、魔法使いにとっては死活問題。ともあれ、魔力を使って若さを維持している魔女という話に、根拠を与える呪文としては面白いな、と」

ヒノキ「呪文の設定から、世界観が見え隠れしたり、シナリオネタを考えるのも一興ということか」

NOVA「さて、次のAPA追加呪文はメディテーション(瞑想)。これはPAだと、第5の系統・交感で習得できましたが、こちらの系統に移ったようですな。1時間の眠りで8時間分の睡眠をとる効果、もしくはその1時間の眠りで4倍の魔力回復効果を発揮します。この瞑想術を使うと、神々の領域における4時間の祈りも、1時間で済むと解釈できます。また、この呪文によって、精神的な疲労や狂乱状態を癒すことも可能だとか」

シロ「睡眠時間が短縮できる効果は、非常にありがたい呪文だと思えます」

NOVA「他に、喪失した感覚値(視覚、嗅覚、聴覚)を回復するメンド・センス。代償として魔力1点を失うが、それで失明などを癒せるのだから安いものだと思う。また、喪失した能力値を回復するレヴィタリゼーションも加わったが、こちらは代償として魔力2点を失うことになる。さらに精神年齢を3D10年若返らせるか、精神異常を癒すキュア・インサニティも用意されたが、これは1人の対象に生涯のうちで2回しか使えず、術者は呪文に必要な魔力30点を永遠に喪失するので、使うことがためらわれるな」

ヒノキ「魔力30点の代償は大きすぎるな。経験度に換算すると90点分になるのじゃろうし」

NOVA「最後に、切断された手足や肉体的な欠損状態を回復するリジェネレーションが加わりましたが、これも魔力5点を永遠に喪失するので、APAで追加された生命系統の呪文は、魔力を犠牲にする物だらけ、ということになる」

 

第11系統・悪魔の呼び出し(サモン・デーモン)

 

NOVA「さて、生命と死の系統は一部の邪悪な呪文を除けば、癒し系の術が多かったが、こちらの系統は確実に邪悪とされる物ばかりだ」

ヒノキ「悪魔召喚か。メガテンがそのジャンルの王道だと思うが、何年のゲームじゃ?」

NOVA「原作小説は86年ですが、最初のファミコン版は87年ですね。その後、スーファミに移った『真・女神転生』が92年で、それに基づいたTRPG版は93年から展開されました。ともあれ、召喚魔法というものにゲームでスポットが当たったのは、87年の『ウィザードリィ4』が有名だと思います。まあ、モンスターを召喚して戦わせる魔法は、85年の『バーズテイル』ですでに存在していましたが、メジャーどころだと、やはりWIZ4かメガテンかということで、87年が重要な年と位置付けられるでしょう」

シロ「すると、88年のPAは、TRPGで悪魔召喚を扱った初期の作品ということですね」

NOVA「当時未訳のAD&Dではデビルやデーモンが存在していたが、クラシックD&Dでは割愛されたから、精霊召喚はあっても、悪魔召喚の呪文はない。だから、召喚魔法にこだわったゲームといえば、『ストームブリンガー』が一推しで、その次にPAかな、と」

ヒノキ「クトゥルフも重要ではないか?」

NOVA「重要は重要ですけど、基本的にプレイヤーキャラは召喚する方じゃなくて、召喚を止める方ですから。うかつに召喚魔法なんかに手を出すと、正気度を失うわけで、まともな人間は関わろうとしないでしょう」

ヒノキ「それでも、召喚されたものを送還するための呪文や儀式が必要になることもあろう」

NOVA「それはまあ確かに。ですが、クトゥルフ方面に寄り道すると帰って来れなくなりそうなので、今はPAで。最初に呼び出せるのは悪魔の爪、デモニック・クローです。魔力6点で、爪だけ召喚して相手に一撃くらわせる攻撃呪文です」

シロ「接近戦用ですか?」

NOVA「いや、普通に飛び道具。APAだと、この攻撃を受けた目標は恐怖に駆られて、勇気のスキル判定に失敗すると逃げなければならない、とあるな。それと、普通の魔法は大体、知性と自我が重要能力値になるが、APAだと悪魔系統の魔法は勇敢さを基準能力にするものが多い。だから、勇敢さの種族値が1のエルフなんかは、この系統が苦手ということになる。

「勇敢さと自我を兼ね備えた魔性の種族だと、あまり該当するものがないので、まだピクシーやユニコーン、マスター・スラスがマシかな、と思う。魔性の生まれでなければ、ホークマン、トロール、ドワーフ、フェルゼンティ、ホブゴブリン、ヒューマン、リザードマンが能力的に悪魔使いに向いていると思えるが、とにかく、APAの悪魔使いには勇気が必要ってことだ」

シロ「勇気が必要な魔法使いだと、マジレンジャーを思い出しますね」

NOVA「天空聖者は悪魔じゃないが、APAの悪魔系統は10個の呪文中、6個が勇敢さに基づくので注意が必要、と。他は、知性と自我が2つずつ。で、PAでも10個、APAでも10個と数は同じなんだが、共通しているのは5つだけ。まずは、その共通呪文をチェックすると、先ほどのデモニック・クローの次に、回復呪文のデモニック・ヒーリングだな」

ヒノキ「悪魔の力で回復じゃと?」

NOVA「PAだと10分間必要なので戦闘中には使えませんが、APAだとターン消費型になって、しかも体力全快、病気も治るという素晴らしい効果。悪魔とは思えない良心的なサービスです」

ヒノキ「むむっ、しかし、そう美味しい話があろうはずがない。何らかのしっぺ返しがあるのでは?」

NOVA「ええ、PAだと種族と個人の自我判定で失敗すると、能力値が悪魔に搾取されます。APAだとマイナス4のペナルティ付きで魔法の耐性チェックで失敗したら、能力値を奪われますね。まあ、1回の使用で個人値1点を捧げるぐらいですし、PAなら自我、APAなら知性の高いキャラはリスクも少なめなので、頑張って悪魔の収奪に抵抗したら便利な回復呪文と思いますよ」

ヒノキ「リスクはあるが、瞬時に全快できる回復呪文だと、いざという時に頼りたくもなるか。さすがは悪魔、巧妙な仕掛けを施してくる」

NOVA「次に、悪魔召喚のサモン・デモン。PAでは11種類の悪魔を召喚できると書いていますが、ルールブックのモンスターリストには、そんなにいないので、サプリメントで追加されるってことかな、と。最低でも魔力15点が必要で、強力な悪魔ほど魔力をたくさん必要とするのは当然ですな。呪文発動の所要時間が1分で、成功すれば従順な悪魔が1日の奉仕をしてくれます。失敗すれば、たまに悪魔が出現したりもするのですが、呪文のコントロールを外れて、術者に襲いかかってくるリスクもある、と」

ヒノキ「発動に失敗した場合は、悪魔が出現しない方がマシということじゃな。自分が呼び出した悪魔にむさぼり食われる愚かな術者にならぬよう、要注意じゃ」

NOVA「APAだと、必要魔力が25点以上で、悪魔の奉仕は1時間のみに減退。ルールブックにはきちんと11種類の悪魔が載っていて、PAの欠点を補ってくれます。まあ、この呪文を使うには、呼び出す悪魔のデータが必要なので、GMと要相談ということになりますな」

シロ「召喚魔法は、プレイヤーの方でモンスターデータにある程度、熟知していないといけないので、初心者にはハードルが高いのですね」

NOVA「そんな悪魔を抹殺する呪文がデストロイ・デモンですが、PAだと必要魔力が100点。それだけでも厳しいのに、消費した魔力の1割(10点)を永久に喪失するので、使用が躊躇われます。APAだと、そういうリスクがなくて、ザコ悪魔だと魔力25点で破壊できますので、使いやすい。まあ、相手が魔法抵抗に成功した場合は滅ぼされないものの、元の世界に送り還されてしまうので、当面の脅威としては排除されるってことだな。PAだと1000年間はこの世から追放されて、APAだと1D100年後と短縮されたので、10年前に追放された悪魔が再び蘇って来るのもシナリオネタになりそうだな」

ヒノキ「うむ。祖父母の滅ぼした(封印した)悪魔が、50年後に復活を遂げて、孫を狙ってくるという話は、たまに聞くのう」

NOVA「ジョジョの第1部と第3部の間は100年でしたが、先祖の因縁が子孫に巡って来るというのは、よくある話です。昔は魔王を滅ぼす呪文が未完成だったから、完全に倒せずに封印するしかなかったが、それから研究が進んで、呪文が完成するとともに、魔王の抵抗力を削ぐための方策も練られたから、新世代の勇者が今度こそ魔王を完全に滅ぼすための冒険に旅立つ、という設定もありですな」

シロ「まあ、相手を完全に滅ぼすか、それともどこかで和解の道を探るというのも今風ですが。お互いを滅ぼすまで、ぶつかり合う物語というのも不毛というか」

NOVA「封印から解放された悪魔が、人間界の時代の変化に影響されて、過去の因縁を晴らすための復讐と現在の思いがけない楽しさの間で葛藤しながら、新たな生き方を模索する話というのも面白いな。

「ともあれ、そういう救いのないダーク方面の、悪魔系究極呪文がデモニック・ウェーブ。消費魔力がPAで1000点、APAで5000点。所要時間が3ヶ月で、1000人の生贄と金貨5000〜1万枚の財貨を捧げないといけない大呪文です。この5万年の歴史で、2回だけ使われたことがあるという」

シロ「どういう効果ですか?」

NOVA「地獄の門を開いて、悪魔を大量召喚して、デーモンマスターとして連中を支配する魔王になる魔法だ」

シロ「プレイヤーに使わせるつもりはない魔法ですね」

NOVA「まあ、TRPGの設定って、プレイヤー向きのデータやルールと、GMが世界観や敵役を考えるためのネタがあるからな。モノカンでの悪役の代表として、悪魔とそれを召喚しようと企む邪悪な魔法使いがあって、宇宙からの侵略者と異世界の悪魔というのが特徴の世界観と言える。もちろん、古代文明のオーバーテクノロジーが世界滅亡の危機をもたらすという可能性もあるが、過去に2回だけ悪魔の侵攻で世界が滅びかけたというのは、なかなか凄まじい説明だな」

ヒノキ「その際は、どうやって解決したのじゃ?」

NOVA「〈生命の春〉と呼ばれる魔法の池を発見した冒険者の手で、悪魔が全滅したか元の世界に送還されたようだ。まあ、この春はspringで、もしかすると〈生命の泉〉の誤訳かもしれないが、とにかく悪魔の大量召喚で世界滅亡の危機、というのはファンタジーの定番だな」

ヒノキ「PAとAPA共通呪文が以上か」

 

NOVA「次に、PAのみでAPAからは抹消された遺失呪文を見て行きます。まず、他人の魔力を吸収するパワー・ドレイン。これで術者の魔力の2倍まで魔力を蓄えることができます。APAでは、相手の魔力を奪いとるミスティック・ラーンジに置き換わった感じですが、こちらは奪った魔力を自分で蓄えることができず、地獄へ魔力を捧げるのに使いますね」

シロ「魔力を削るだけの魔法に格下げ、と」

NOVA「次に、地獄の悪魔と会話して情報収集できる交信魔法スピリチュアル・ヴォイス。これで3時間分のおしゃべりも楽しめます」

ヒノキ「3時間もおしゃべりに付き合うとは、悪魔も暇なんじゃの」

NOVA「だから、APAでは5分だけのおしゃべりのデモン・スピークに置き換わりました。ともあれ、悪魔からの情報収集呪文ということで、強力な悪魔ほど物知りですが、同時に強力な悪魔ほど情報価値というものも知っているので、素直に答えを教えてくれるとは限らない、というリスクがあります。答えを教えてくれるために、金貨を賄賂として支払うなり、他の代価(悪魔のための奉仕)に応じるなり、その辺はGMとプレイヤーのやり取りを要する呪文ということで」

シロ「GMは悪魔のロールプレイをしないといけないので、負担が大きいかもしれませんね」

NOVA「まあ、プレイヤーと要相談でしょうな、悪魔NPCのキャラ付けをどうするかは。さて、置き換わったのではなくて、削除された呪文が2つ。1つはドアウェイ・トゥ・ヘル。1時間だけ地獄の扉を開いて、地獄見学ツアーに行ける魔法です。わざわざ地獄に行きたいプレイヤーが少数派なので消えたのかな」

ヒノキ「交感の系統の呪文でも、次元の扉を開く呪文ディメンジョン・トラベルがあったが、APAでは魔力消費量が増えて、異世界に行くことが難しくなった。APAは異世界への旅を推奨しなくなったようじゃのう」

NOVA「異世界での冒険を楽しめるものにするためには、複数の異世界を設定するルールなりデータなりが必要になって、PAで多元宇宙の冒険を描くのは断念したのかもしれませんな。それよりも、モノカンの世界設定で掘り下げないといけないことがあるだろう、と」

シロ「異世界云々の話は『マルチバース』に持ち込まれて、PAの領域では扱わないようにした?」

NOVA「その可能性はあるが、結論は出せないな。さておき、もう1つの削除呪文がデモニック・トランスフォーム。召喚された悪魔を術者の望む生物の姿に変化させるもの。たとえば、グロテスクな悪魔を好みの異性の姿に変えたり、ペットの姿に変えたりできる」

シロ「それは萌えるかもしれない」

NOVA「問題は、サモン・デモンの持続時間が1日だけなので、毎日呪文をかけ直さないと、悪魔美少女とのラブコメドラマには発展させにくいってことだな」

ヒノキ「いや、わざわざPAのルールで、そんなドラマを期待するのか?」

NOVA「まあ、そんなシチュエーションを楽しみたいなら、GURPSとかビースト・バインドとか、もっと新しいシステムを使いますな。さておき、APAのサモン・デモンは持続時間が1時間に減ったので、姿を変えたところで愛でる時間は足りなそうです。また、悪魔を召喚した後、部屋や特定の場所、器物に封印するトラップ・デモンという呪文があって、たとえば部屋の番人として出現する悪魔って、こういう呪文の産物でしょうな。ただ、PAだと封印に使用した魔力の5分の1(最低でも10点)は永久に失われるのでいまいち扱いにくい呪文です」

ヒノキ「APAでは、どうなったのじゃ?」

NOVA「エントラップ・デモンと名前が変わって、消費魔力が40点減って、魔力の永久喪失もなく扱いやすい呪文に変わりました。ただし、器物に封印して悪魔入りアイテムを持ち歩くことは不可能になって、場所固定になりましたね。あと、封印した悪魔からは使い魔のように若干の魔力を提供されて、魔力電池のように使うこともできます」

シロ「すると、悪魔をいっぱい封印しておくと、使える魔力がいっぱい増えることに?」

NOVA「危険だけど、可能だろうな。大量の悪魔を呼び出して、魔力を溜めまくる悪魔使いというキャラはルール上、可能だ。もちろん、望まぬ形で魔力を収奪されている悪魔を封印から解除することで、悪魔使いを弱体化させるシナリオギミックにも使えそうだし、この辺の呪文設定はプレイヤーキャラがどう使うかではなくて、敵キャラの表現のためにあるのだろう」

ヒノキ「これで終わりか?」

NOVA「いや、最後に2つ。APAで新規に追加されたものがあって、1つはデモニック・シールド。戦闘中に使う魔法ですが、防御効果はなくて、代わりに攻撃側に受けたダメージの半分をカウンターのように返すという変わり種」

シロ「守ってくれない防御呪文というのは珍しいですね」

NOVA「悪魔の障壁はカウンター作用を付与するのみ、と。最後に大規模な範囲効果を持つデモニック・ストーム。地獄から雷雲を召喚して、様々なダメージや特殊効果(恐怖で年をとる)を与え続けるという凶悪なランダム攻撃呪文。術者を中心に、敵も味方も全て巻き込むという使いにくさが欠点だが、演出としては抜群。これも味方よりは敵が扱う方が有効利用できるんだろうな」

 

第12系統:召喚(サモニング)

 

NOVA「今記事の最後は、悪魔以外の召喚術だ。正直言って、悪魔召喚はプレイヤーキャラにとって使いにくい魔法が多いので、敵役専門と割り切った方が良さそうだな。だから召喚術師をプレイしたいなら、こっちの方を勧めるわけだが、それでも難点はある」

ヒノキ「何じゃ?」

NOVA「他の術系統と比べて、消費魔力の多い呪文が多いので、魔力が少ない術師には使いこなしにくいというか、領域選択で魔力の多く得られる星界神々成分を選ぶとか、上手く魔力を増やしていかないと、ろくに魔法が使えないポンコツ術師になってしまう。他の系統よりも、クレバーな活用法を研究しないといけないわけだ」

シロ「運用にコツが必要なんですね」

NOVA「まず、必須の呪文がサモン・パワー。これは周囲の魔力を集めて、本来の許容量の3倍の魔力を蓄える術だ。敵から魔力を吸収することもできるし、大気中の魔力から吸いとってもいい。PAだと、魔力を10点消費して、1D6×1D6の魔力を得られる。10点消費して期待値12点ほどだから、朝起きて、これを何度も使って、限界ギリギリまで魔力を溜め込むのが、この系統の術師(サモナー)の日課かもしれん。

「APAだと、消費魔力が0になった分、魔力を奪う対象が必要と解釈できるようになった。あるいは、無条件で3倍の魔力を溜め込んでいいとも解釈できるが、この呪文を使えば、消費魔力にも余裕ができるだろうな」

ヒノキ「まあ、必要に応じて、魔力を集めることができるなら、消費魔力が多くても何とかなりそうじゃな」

NOVA「次に、メイン呪文というべきサモン・クリーチャー。これもPAとAPAで運用方法が変わって来る。PAでは、消費魔力が10点×サイズ。狼ならサイズ2なので20点、馬ならサイズ3なので30点といった感じで、好きな生き物を召喚できる。まあ、どんな生き物が召喚できるかは、GMと要相談だな。ただし、別次元の生き物は召喚できない仕様なので、あくまで自然界に普通にいる生き物限定だ。1度、呼び出すと1日の助力を得られるので、事前に呼び出しておくのがいいだろうな。

「一方、APAだと、1分かけて呼び出して、持続時間も1分という困った性能になった。1分という時間は、戦闘ターンだと15ターンなので、戦闘中に呼び出すことは難しい反面、持続時間が短すぎて、大した仕事もさせられない。仮に、馬を呼び出したとしても、1分しか乗せてくれないのでは扱いにくい。呼び出した生き物に1分でできる仕事は何かを考えないと」

シロ「1分でできる仕事ですか。犬を召喚して、匂いで追跡させるのも難しそうですしねえ。せいぜい、猿を呼んで、高い木の上に成っている果実を取ってきてもらうとか、でしょうか」

NOVA「呪文のカスタマイズで、持続時間の延長ができればいいんだけど、それは無理なんだな。消費魔力は半分になったので、呪文をかけるのは簡単になったんだが、持続時間が少なすぎる。戦闘で活用はできるんだが、それには戦闘前に呼び出しておいて、という段取りが必要だ。まあ、発動の所要時間を短くできればいいとか、召喚生物を封印できるカプセルのようなアイテムがあれば、戦闘に入った際にカプセルを投げて戦わせることもできるとか、いろいろと考えないといけない」

ヒノキ「ポケモンが登場する前のゲームじゃからな。召喚術師も苦労したんじゃろう」

NOVA「とにかく、戦闘に突入する前に1分の準備時間を与えてくれるような状況だったら、問題ないと思いますね。こちらから敵の存在があらかじめ分かっていて、準備を整えてから襲撃できるような状況を構築することが求められるのかな、と」

シロ「90年に入ったばかりの頃は、まだ召喚魔法が扱いにくい時代だったということですね」

NOVA「次の呪文は、バシルーラのように相手の生物を遠くへ飛ばすダム・クリーチャー。対象の生物に触れないといけない制約はありますが、どんな生き物でも魔法の抵抗に失敗すれば、即座に排除できるのは強力です。とりわけ、知性の少ない獣系は抵抗も少ないですし、どんな敵でも瞬間転移させられる魔法というのは、侮り難いものがある、と」

ヒノキ「生き物を彼方に放逐する呪文は、上手くハマると、戦況をひっくり返すからのう」

NOVA「その次は、回復呪文のサモン・ヘルス。PAだと、発動に5分を費やすので、戦闘中には使えない仕様でしたが、APAだと普通に戦闘中にも使えて、体力を全快する使い勝手のいい呪文に変わりました。ただし、目標は魔法への抵抗判定を行わなければならず、成功すると回復効果は無効化されてしまいます」

ヒノキ「普通、回復呪文のような恩恵ある魔法は抵抗しないものじゃが、この呪文は抵抗を必ずしないといけないのじゃな」

NOVA「抵抗しない方がいいと分かっていても、本能的に回復エネルギーを拒絶してしまうケースがあるんでしょうな。あと、この呪文の回復効果は強力なので、魔力を30点も消費してしまうのも難点かも。さらに言えば、PA時代だと、この魔法は知性ではなく、耐久力の個人値が判定の基準になっていまして、耐久力の低い魔法使いには扱いにくい呪文と言えました」

シロ「癖の強い回復呪文ということは分かりました」

NOVA「面白いのは、次のエネミー・コール。術者の最も嫌っている敵を召喚する魔法です」

ヒノキ「わざわざ敵を召喚する意味などあるのか?」

NOVA「召喚前に、準備を万端整えておくとか、相手が眠っている深夜遅くに呼び出すとか、いろいろ嫌がらせができそうですな。まあ、あまりに無茶な効果なので、APAだと似て非なるコール・エネミーに置き換わりました。こちらは、術者の敵が最も忌み嫌っている生物を呼び出して、敵を痛ぶります」

シロ「敵がドラえもんだと、ネズミが出現するわけですね」

ヒノキ「それはそれで酷い嫌がらせじゃのう」

NOVA「問題は、この呪文の所要時間が3分間なんですね。つまり、戦闘中には使えずに、やはり事前準備が必要になります。あらかじめ、相手の嫌う生き物を召喚しておいて、持続時間の6分以内に戦闘を仕掛けるという代物。ただ、敵が何を嫌っているかという弱点設定をGMが考えておかないといけない、運用上の問題がありますね。発想はユニークなんだけど、使い勝手がいいか悪いかと言えば、扱いが面倒な呪文だと思います」

 

NOVA「次の呪文は、PA限定の遺失呪文です。その名もブレーブス。魔力30点で、術者を助けてくれる勇敢な戦士を召喚します。その種族は、ヒューマン、ゴブリン、セントール、ドワーフ、ジャイアントのいずれかで、1時間の協力をしてくれます。特筆すべきは、わずか1ターンで召喚できるので、戦闘中にも駆けつけてくれる。問題は、その召喚勇者のデータは決まっていないので、GMが自作しないといけない点。まあ、プレイヤーがこの呪文を習得したら、GMがその5種類のキャラデータをあらかじめ作っておけばいいかな、と」

ヒノキ「さすがに、アドリブでその場で作るわけにはいかんか」

NOVA「個人値を種族値と同じにして、体力点と使用武器のスキルだけ設定すれば、それほど手間をとらずに作れると思いますが。さて、次の魔法は、他の系統の呪文を割高で使えるようにするコール・サークル。これ一つで、他の系統の呪文を全て魔力20点加算で使えるようになるので、物によっては使い勝手がいい。所要時間は対象呪文のそれに加えて1分余分にかかるので、戦闘中には使えませんが、便利呪文のクリエイト・ウォーターを魔力26点で使ったり、魔力を浪費してもいいから必要だと考える呪文を全て使えるのは、まさに万能呪文ということで美味しいわけですよ」

ヒノキ「APAからは消えた?」

NOVA「そう思いましたが、サモン・スペルと名前を変えて、魔力加算が15点で済むなど、使い勝手が向上。とにかく、呪文マスターになって、いろいろな呪文を使いたいなら、お勧め呪文と言えますが、逆にPAの魔法使い初心者なら、どんな呪文が使い勝手いいのか分からないので、いろいろ研究したい人向きの呪文になるのでしょうな」

ヒノキ「奥が深い術系統なのじゃな、召喚術は」

NOVA「次に、病気を召喚する邪術系のディジーズ。それから小動物の群れを召喚して、疫病を蔓延させるホード/プレイグが魔力を大量消費する大技ですが、到底プレイヤー向きの魔法じゃないですね。ただ、ホードの方は疫病効果をなくした小動物の群れ召喚のみの効果で、APAに手頃な攻撃呪文として採用。最後に究極の召喚術が神様召喚のサモン・ゴッドですが、金貨100枚以上の貢ぎ物を捧げることで、奇跡を起こしてくれます」

ヒノキ「やはり、神の奇跡は究極呪文なんじゃな」

 

NOVA「あとは、APAでの追加呪文を紹介して、当記事 完です。該当呪文は2つありまして、1つは目標のコピーを作り出すミルミドン。例えば、俺がヒノキ姐さんにこの呪文をかけると、ヒノキ姐さんの分身が現れて、俺に5分間だけ仕えてくれるんです」

ヒノキ「要は、偽者を生み出して互いに戦わせるようなものじゃな」

NOVA「あるいは、味方の分身を作って、助っ人として戦わせることも可能。魔力消費は50点だから、強い敵の分身を作るか(魔法を抵抗されて無効化する危険あり)、確実に効果を発揮する味方の分身を作るか、の選択肢ですね。

「最後に、ピンチを切り抜けるための有効な助力を得られるサモン・ヘルプが加わりますが、神の奇跡よりも、もっと身近なお助け呪文として、活躍できるかも。まあ、消費魔力が術者の基本魔力全て、ということで使い勝手は一見悪いように見えて、サモン・パワーによる魔力充填が可能な当系統では、魔力回復がしやすいから何とか使える」

ヒノキ「しかし、その手の奇跡を乞うような祈願系呪文は、通常の手段ではどうしようもなくなった場合の最後の切り札みたいなものじゃろう。そういう呪文を使うことを前提としたシナリオは破綻していると思うがのう」

NOVA「想定外の事故が起こった場合の保険みたいなものですな。いずれにせよ、PAの召喚系統は、初心者には扱いきれない通な呪文群だということで」

(当記事 完)