ゲンブのターン
ゲンブ「今回は我が主役でござる」
ヒノキ「アーティフィサーのサブクラスの中でも、前衛戦士として最もタフに戦えるのがアーマラーじゃな」
ゲンブ「素のアーティフィサーは中装鎧に習熟しているでござるが、D&Dの軽装鎧はAC12、中装鎧はAC15、重装鎧はAC18とおおむね考えられる」
ヒノキ「中装鎧は、敏捷性ボーナスが+2まで加えられるので、最大でAC17までは高められる。また、プレートメールに代表される重装鎧は、筋力が15ないと身に付けられないうえに、隠密行動に対して不利になるペナルティーがあるので、ファイターやパラディン、それに戦の神などの一部クレリックしか好んで身に付けたりはしないもの」
ゲンブ「中装鎧までなら、多くのクレリックやバーバリアン、レンジャーも身に付けられるし、それで前衛に出ることも問題なく務まるでござるが、やはり最強の防御力と考えるなら、重装鎧の安心感は格別なものでござろう」
ヒノキ「D&DのD20システムでは、ACが1違うと、5%の命中率差が出てくるからのう。鎧のランクが1段階変わることで15%の差が出るという形。もちろん、重装鎧には敏捷性ボーナスが加算されないので、中装鎧との差が縮まるし、レベルが上がるとACよりもHPの量の方が大切と考えられよう」
ゲンブ「それはともかく、アーマラーはアーティフィサーのサブクラスの中で唯一、重装鎧を身に付けることができて、しかも、その鎧を秘術鎧として魔改造し、さまざまな特殊能力を付与できる鎧の専門家でござる」
ヒノキ「まあ、どうしても重装鎧を着たければ、他のクラスでも特技の重装防具習熟を習得するという手もあるが、そういう細かいカスタマイズができるのが今のD&Dの良いところじゃのう」
ゲンブ「もうすぐ、今のD&Dの意味が変わるでござるがな」
ヒノキ「今年の秋に新しいD&Dのルールが発売される(英語版)との予定が発表されたようじゃのう。日本語版の発売は早くても来年になるじゃろうが、どういう改訂が施されたかワクワクしておる」
ゲンブ「新ルールが出ることで、界隈の活性化が期待できるでござるからな」
アーマラーの追加特徴
ゲンブ「では、アーマラーのレベル別特徴を確認するでござる」
- レベル3:「仕事道具(重装鎧と鍛治道具への習熟)」「電撃系や幻影系などを中心とした追加呪文」「秘術鎧」「モード変更」
- レベル5:「追加攻撃」
- レベル9:「秘術鎧の魔具化」
- レベル15:「秘術鎧完成体」
ジュニア「アーマラーの表稼業は鍛冶屋なんですね」
ゲンブ「表稼業と言われると、何だか冒険者が裏稼業みたいな言い方でござるが、鍛冶屋で飯を食って行けるのも事実」
ヒノキ「アーティフィサーは、推奨背景として『ギルドの職人』を持つのが標準じゃし、わざわざ冒険しなくても何らかの職能で日常生活を営める設計となっておる」
シロ「冒険以外の日常生活を演出できるのはいいことですね。ボクの料理技能とか」
ゲンブ「我の力仕事とか」
ジュニア「リウは……お手伝いばかりで、決まった役割を持っていないですぅ」
ヒノキ「ならば、セイリュウの一族は水属性ゆえ、食器洗いと洗濯係を任じよう」
シロ「今まではボクの専任だったけど、リトル……いや、ジュニアに任せた」
ジュニア「分かりました。ルーシェ・レンレンを見習って、洗い物当番はリウが引き受けるですぅ」
ゲンブ「コンパーニュの食事以外の家事を誰が引き受けるかなど、今まで話題に出なかったでござるな」
ヒノキ「ちょうど鍛治の話が出たのじゃから、ここでの日常生活を描写しても良いかと思うてのう」
ゲンブ「それはさておき、アーマラーは重装鎧の習熟と、レベル5の追加攻撃(1ラウンドで2回攻撃)によって、前衛戦士と遜色ない働きができるでござる」
ヒノキ「5版のファイターは、レベル11で3回攻撃、レベル20で4回攻撃ができることで、最強の物理攻撃能力を安定して放てるクラスじゃな。同じ前衛戦士でも、他のクラスでは2回攻撃までしかできぬ。パラディンも、レンジャーも、バーバリアンも、モンクも追加攻撃は2回までじゃ」
ゲンブ「単純な物理戦闘能力では、ファイター最強と言われる理由でござるな。もちろん、他の職業はそれぞれの特殊能力で、攻撃回数ではなく、一撃の重さを加算したり、打撃に特殊効果を追加したりができることで、バランスをとっているでござるが」
ヒノキ「で、アーマラーも物理攻撃では、ファイターに及ばずと言えども、2回攻撃ができることで攻防ともに、他の前衛戦士職と同様に使って行けるようじゃのう」
ゲンブ「そこに、サンダーウェイブやマジックミサイル、ライトニング・ボルトなどの攻撃呪文を加えて、魔法戦士としても有能なキャラになっているでござる」
ヒノキ「モデルが、マーヴェルのアイアンマンみたいなクラスとの触れ込みじゃからのう」
ゲンブ「しかし、その最大の特徴は、他のクラスでは真似できない秘術鎧ということで、ここからは鎧に秘められた特殊能力を確認していくでござる」
アーマラーの秘術鎧
ゲンブ「アーマラーは、自分の装備している鎧に鍛治道具で魔力を込めることで、1アクションで秘術鎧に改造することができる。その性能は以下のとおり」
- 筋力制限なしで装着できる。
- 秘術鎧を呪文の発動焦点具として使える。
- 1回のアクションで、鎧を装着したり、外したりできる。
- 秘術鎧を装着者の意思に反して、脱がせることはできない。ボーナスアクションとしても鎧の兜部分を収納したり、再展開できる。四肢を欠損している場合でも、鎧を義肢として本来の手足同様に扱うことができる。
ゲンブ「以上の便利な機能が、秘術鎧の一般的な特徴であるうえ、さらに鎧には2つのモードが備わっている。接近戦用の護衛モードと、隠密行動能力に特化した潜入モードの2種類で、小休憩や大休憩を終えるたびにモードを変更することができる」
- 護衛モード:拳に雷鳴属性(D8ダメージ)を与える「雷鳴パンチ」と、アーティフィサー・レベルと同じ値の一時的HPを付与する「防御フィールド」を備えている。
- 潜入モード:遠隔攻撃武装(D6電撃ダメージ+追加D6ダメージ/ターン)の「電撃ランチャー」と、移動力増加の「歩行ブースト」、隠密に有利を与える(鎧の不利を相殺する)「静音フィールド」を備えている。
ゲンブ「他に前衛で戦うには、重い鎧の装着と、命中判定およびダメージボーナスも含めて筋力が必要となるでござるが、アーティフィサーの場合、得意な能力が知力に基づくので、筋力を伸ばすという選択肢が選びにくい。しかし、秘術鎧は筋力を必要としないし、雷鳴パンチや電撃ランチャーの使用には、知力ボーナスを足せるので、武器ではなく鎧の武装をメインに使うなら、筋力に頼る必要は少ない」
ヒノキ「つまり、アーマラーは通常の武器よりも、鎧に内蔵された特殊武装を使う方がいいということじゃな」
ゲンブ「雷鳴パンチは通常のダメージだけでなく、副効果として相手はアーマラー以外への攻撃に不利を被ることとなる。これによって、護衛モードでは、味方を守る壁になることも可能。
「もう一つの電撃ランチャーは、拳や胸部から電撃を放つ他、1ターンに1度、電撃の効果を2D6に向上させることもできる」
ヒノキ「もしかして、電撃ランチャーの方が与ダメは大きい、と?」
ゲンブ「護衛モードの方が防御戦向きで、壁役が十分にいる局面なら、潜入モードの方が攻撃力は高いかもしれぬ。2回攻撃が可能な場合、雷鳴パンチは2D8ダメージ(期待値9、最大ダメージ16)なのに対して、電撃ランチャーは3D6ダメージ(期待値10.5、最大ダメージ18)になるので、やはり護衛モードよりは潜入モードの方が攻撃的。一方、護衛モードは打たれ強さを活かして、仲間の盾になることを重んじた形態となる」
秘術鎧の強化
ゲンブ「レベル9になったアーマラーは、自分の鎧に最大4つの魔具化を施すことができるうえ、魔具化できるアイテム数も+2されるでござる。その増えた2つ分は、秘術鎧に限定されるが、例えば、アーマラーの鎧なら『防具強化』によるAC+1の効果と、『抵抗の鎧』による特定の属性ダメージへの抵抗(ダメージ半減)効果を同時に得ることも可能」
ヒノキ「通常のアーティフィサーは、鎧にどの魔具化を施すか1つだけ選ばないといけないのに、アーマラーは鎧への魔具化を重ねることができると。鎧をどんどんバージョンアップさせる感じじゃのう」
ゲンブ「そして15レベルになったアーマラーの鎧は、完成体になってモードごとの特殊能力を追加されるでござるよ」
- 護衛モード完成体:1体のクリーチャーがアーマラーの30フィート(6マス)以内で移動を終えた場合、自分のリアクションで5フィート(1マス)以内に引き寄せて、1発殴ることができる。あるいは味方を引き寄せて、殴らないという使い方も可能。
- 潜入モード完成体:電撃ランチャーでダメージを受けた敵に、薄暗い光を付与して、アーマラーへの攻撃を不利にする。さらに、その敵に対する1回の攻撃に有利が付いて、命中した際にD6電撃ダメージが追加される。
ヒノキ「護衛モードでは、まるでマグネットパワーON! ジーグブリーカー死ねえ、みたいなことができるのじゃな」
ゲンブ「その辺の演出は自由でござるが、鎧から魔法のワイヤーを射出して引き寄せるとか、魔法の指向性重力を放射するとか、あるいは風車を回して引きずり込むとか、いろいろとイメージするのも面白いと思う」
ヒノキ「敵の奇襲攻撃で接近戦に巻き込まれた後衛の仲間を、自分の隣に救い出すとか、落とし穴に落ちそうな(あるいは落ちた)仲間を手早く引き上げるとかにも活用できそうじゃな」
ゲンブ「潜入モードの方は、電撃ランチャーの性能を向上させたもので、単純に攻撃力アップと考えれば良いでござる」
ヒノキ「意外とトリッキーな使い方のできる護衛モードと、ストレートに攻撃力を強化した潜入モードということじゃのう」
ゲンブ「これらの鎧の性能の他に、フライの魔法で飛行能力を付与したり、アーティフィサー魔法を鎧の機能のように演出するのも面白いでござる」
ヒノキ「鎧を呪文の発動焦点具にするということは、そういうことじゃろう? 鎧が飛行の魔力を発揮したり、分身したり、蜘蛛の巣を発射したり、アーマラーの使う魔法は全て鎧の秘密機能の一種と考えることもできよう」
ゲンブ「そんなわけで、我の研鑽はここまででござる。最後のバトルスミス(戦場の鍛冶屋)はジュニアに任せた」
ジュニア「了解しましたぁ。では、リウが一連のアーティフィサー研鑽のトリを飾るですぅ」
(当記事 完)