花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

アーティフィサーの呪文話(withゴブスレ話2ー6&7)

前置きゴブスレ話(6話と7話)

 

リモートNOVA『7話を見る前に、6話感想を書いておきたかったが、間に合わなかったので、6話と7話のダブル感想だ』

ヒノキ「間に合わなかった原因は、やはりゲームブック記事に専念したからかのう?」

NOVA『そちらが大きいですが、原作小説の7巻を読み直していたのも大きいですね』

NOVA『今回のアニメ化に際して、3巻と6巻、そして外伝のイヤーワン1巻とかいろいろ読み返していたんですが、7巻や8巻が来るのは想定外だったので最近になって、それらを読み直していたんですよ。それと諸々あって、手が遅れた形でもあります』

ヒノキ「で、感想としてはどうじゃ?」

NOVA『やはり、アニメは原作小説と比べると、いろいろと割愛されているシーンがありますね。エルフの森のエピソードは、この世界のエルフ文化に関する記述がいろいろと興味深くて、読み応えがあったのですが、アニメだとその辺の詳細が大きく削られて、物語をテンポよく進めることになってしまい、結果的にダイジェスト感を覚えるようになってます』

ヒノキ「尺の長さもあるから仕方ない話じゃのう」

NOVA『ええ。1期のときは、1話分だけ原作4巻の短編エピソードを混ぜてましたが、基本は原作1巻と2巻の内容を11話分かけて描いていて、1巻当たり5.5話分を費やしていました。だけど、今期は6巻、7巻、そしておそらく8巻の内容を12話でまとめるので、1巻当たり4話しかかけられない。そうなると、1期よりも原作シーンが多く削られるのは必然です』

ヒノキ「その割愛された部分が気になるのう」

NOVA『6巻では、1話で「ゴブスレさんたちのゴブリン退治シーン」、2話で「ゴブリンによって壊滅した別パーティのエピソード」が丸々削られましたね。あと、3話で「ゴブスレさんと妖精弓手の2人探索シーン」が削られました。まあ、それら枝葉のシーンを削って、ドラマの重要な部分に焦点を当てたのは納得です』

ヒノキ「1話のゴブリン退治や、3話の2人探索はセリフだけでさらりと流されておったのう」

NOVA『で、今回はゲスト出演的なエルフの兄さま(輝ける兜の森人)がゴブスレさんの一党と会話を重ねるシーンがいろいろ削られてしまい、6話で高慢に見下していたのに、7話でいきなり打ち解けあっているという唐突さが目立ったな、と。まあ、アニメだとゴブスレさんたちが守護獣的なモケーレ・ムベンベを傷つけることなく、暴走を食い止めたのを見て一目置くようになったということで、最低限必要なフラグ立てはできているのですが』

ヒノキ「2期の1話〜4話(原作6巻)は、少年魔術師がメインキャラで、当初はゴブスレ一党に反抗気味だった彼がゴブスレさんや女神官たちを理解して、一人の冒険者として成長と再出発を果たすドラマとして、その部分は十分に描かれていたのう」

NOVA『ゲストキャラのドラマに焦点が当てられるので、それと関係ない部分が削られるのは納得です。で、その少年魔術師に相当するのが、7巻ではエルフの兄さまなんですが、彼が一行と打ち解け合う過程が削られて、打ち解け合った後のゴブスレさんを交えた飲み会に話が飛んだ感があります』

ヒノキ「本来なら、6話の時点で、森人・鉱人・蜥蜴人の談義シーンがあったはずなのに、そこが削られてしまったのじゃな」

NOVA『ええ、この異種族同士の各々の価値観、文化観を披露しながら、口論ではなく相互の主張を重ねつつ理解と親睦を深めるシーンは、原作でも割とお気に入りだったんですよ。例えば、ファンタジー世界では「エルフとドワーフは仲が悪い」という、トールキン以来のお約束設定があって、その中で個人として種族の壁を越えた友情をどう描くか、というのがドラマ的にも面白いと思うわけですが、本作の森人兄さまと鉱人道士はあっさり意気投合します。まあ、これには鉱人道士がドワーフには珍しい精霊使いという設定が功を奏している点、そして妖精弓手の跳ねっ返りぶりに世話焼き年長者気質で苦労している点とか、要するに会話の接点や共通の軸足があるからなんですが』

ヒノキ「親睦を深めるのに、共通の会話の軸足を持って、そこがブレないことは重要じゃのう」

NOVA『ええ、自己主張も大事ですが、会話も駆け引きですからね。共通の土台を探りつつ、そこで一定の見解を披露しながら、受け入れられる部分、踏み込みすぎると危険なライン、拒絶された後の主張の引っ込め方、それでも決裂しないための土台の踏まえ方などなど、小説やコミック、ドラマやアニメでの会話シーンから学べることはそれなりにあります。もちろん、利害や立場を踏まえた交渉とか、気の置けない友とのざっくばらんな会話とか、恋愛の駆け引きとかいろいろな交流要素はありますが、その辺の対話の積み重ねから発展する人間関係、ダイアローグをどう描くかが、物語の面白さに通じるものでしょう』

ヒノキ「エピソードの重要ゲストキャラとのコミュニケーション・シーンが割愛されたのが7巻部分だと」

NOVA『まあ、主役のゴブスレさんの出ないサブキャラメインのシーンなので、削られた理由は分かります。ただ、サブキャラ同士のやり取りを通じて、エルフの兄さまがゴブスレさんへの認識を改めるきっかけになったというか、彼の人物像(妖精弓手の視点ではクソマジメで面白みのないキャラ像だけど、意外と柔軟性があり、苦労人ながら人の話はきちんと受け止める雄弁な才人)が描写されているのに、アニメではどうにも描写が薄いかな、とも』

ヒノキ「まあ、その辺は原作で補完するとして、アニメの焦点はヒロインたちの水着シーンじゃったろう」

NOVA『サービスカットは必要として、7話のダンジョン探索シーンもいろいろとカットされてました。例えば、「今回はゴブリン退治の仕事で旅立ったのではないから、女性陣が準備不足」なんですね』

ヒノキ「何の準備じゃ?」

NOVA『ゴブスレ名物、「女子どもの匂いを消すための汚れ処理」があって、女性陣はそれを避けるために、「臭い消しの香袋」を用意するようになっていたんですが、アニメではその香袋シーンが割愛された結果、「今回は香袋を準備していないから、ダンジョン突入前に汚れ処理を施されて悲鳴を上げる」シーンがカットされました』

ヒノキ「女性キャラが汚されるシーンが、そんなに見たかったのか?」

NOVA『いや、別に穢れシーンが見たいわけではなくて、女性キャラが痛々しくない範囲で悲鳴を上げるシーンは聞きたい、というのが本音ですね。まあ、ホラーシーンで女の子がキャーって悲鳴を上げるスクリーム演技はそこそこツボですが、ガッチャードの先日のお化け屋敷でもヒロインは悲鳴を上げずに、男ばかりがビビっているのは何だかなあ、と』

ヒノキ「だから、花粉症ガールに『キャー』とか(涙目)を付けたがるのじゃな」

NOVA『まあ、視覚的に痛々しいのは趣味じゃないですけどね。心理的にブルブル怯えて悲鳴を上げるとか、涙目でこらえるぐらいがツボか、と。ちなみに、原作で一番ツボったのは、8巻で「大切な鎖かたびらを盗まれて、泣きじゃくる女神官のシーン」が感情移入をそそられて、一緒に泣きたくなりました』

ヒノキ「泣きたくなったのかよ!?」

NOVA『やはり、思い出の品物が盗まれて、感情がこみ上げてワンワン泣いちゃうところが、自分でも気持ちが想像できて、間接的に彼女とゴブリンスレイヤーさんの絆とか、いろいろと心理状態が描写されて、見事に鎖かたびらが象徴アイテムになってしまいましたね。うん、鎖かたびら好きとしてもツボですし、このシーンのアニメでの描写が今から楽しみです。そのシーンが堪能できれば、今期のアニメの瑕疵は全て洗い流す所存』

ヒノキ「その回への期待は後に回すとして、7話の感想はどうなのじゃ?」

NOVA『まあ、妖精弓手の主役回みたいなもので、声優さん的には「エルフ語での会話に注目して欲しい」って言っていて、今回、原作を読み直したら、「エルフ語はアナグラムになってることに今さら気づいた」のがいい発見だったな、と』

ヒノキ「アナグラムじゃと?」

NOVA『たとえば「エルフ語はアナグラム」をローマ字表記すると、「Erufugoha、Anaguramu」となって、それを逆にすると「Umarugana、Ahogufure」つまり「ウマルガナ、アホグフレ」という音になるわけですね』

ヒノキ「アホグフレというのは、どうも語呂がキレイじゃないのう。阿呆愚触れって感じで」

NOVA『だったら、少しだけ変えて「ウマルガーナ、アフォグフーレ」という感じでアレンジすればいいかと。トールキンみたいに完全に別言語を構築したわけじゃなくて、それでもファンタジー言語っぽいニュアンスを演出するには、有効かな、と。ともあれ、ゴブスレ世界のエルフ語は「オルク=小鬼」「ボルグ=殺し」以外には、アナグラムで作ることができる感じで、暗号解読的に面白いな、と思ったり』

ヒノキ「では、『新兄さん』をゴブスレ流のエルフ語で表記すると?」

NOVA『ええと、「ニース・ナシイン」って感じですかね、イコニヒ・ナセエン』

ヒノキ「なるほど、言葉遊びが楽しめそうじゃのう。わらわの名前はイコニヒと置き換わるのか」

NOVA『まあ、俺のハンドルがAVONになるのはイヤですけどね。アヴォンよりはアバンがいいかな、勇者っぽくて』

ヒノキ「で、そろそろ前置き雑談もこれぐらいにして、本題に移らんかのう?」

NOVA『ええ、次回のサブタイトルは「闇の奥(ハート・オブ・ダークネス)」ですが、7巻の第6章のダンジョン探索シーンです。まずは地下に降りて拷問部屋に向かってから、要塞の頂上のボスキャラの間に向かう流れなんですが、そのうち半分は、今回でクリアした形ですね。本当は拷問部屋でもゴブリンの部隊と戦うはずですが、アニメでは省略されていました。もう、ダンジョン探索のいろいろな場面が削られて、次回はクライマックスの要所だけを描いて、あっさりクリアすることになりそうです』

ヒノキ「そして、女神官が地母神に怒られてしまうのじゃな」

NOVA『削られたダンジョンネタは、次回の感想の際に語るとしましょう。当記事 完です』

ヒノキ「いや、前置き 完じゃろう? 記事タイトルの本編はここからじゃ」

 

初級呪文の話

 

NOVA『では、改めてアーティフィサーの呪文の話に移ります。ええと、アーティフィサーは、1レベルの時点で、初級呪文を2つ、それと1レベル呪文をキャラレベルの半分(端数切り捨て)+知力ボーナスの数だけ習得できます』

ヒノキ「知力ボーナスは、大体いくつぐらいになるかのう?」

NOVA『知力はアーティフィサーが優先して上げるべき能力値で、初期状態でのボーナスは大体+2から3ぐらいになると思われますね。もちろん、ランダムにダイスを振ってキャラ作成する場合、出目次第では+4まで高くできる可能性もありますが、現在の主流はランダム作成ではなくて、15、14、13、12、10、8の6つの数値を能力値に割り振って、種族修正を加えて自分のイメージどおりの能力にすることみたいですね』

ヒノキ「つまり、初級呪文は2つと、1レベル呪文が2つか3つか。初級の方が少なかったりもするのじゃな」

NOVA『ただし、初級呪文は回数制限なしに、いつでも使えます。1レベル呪文は8時間の大休憩をとるまでに2回しか使えません』

ヒノキ「2回も使えるのじゃから、マシなんじゃろうな。クラシックD&D時代の1レベル魔法使いは、たった1回しか呪文が使えなかった」

NOVA『ゴブリンスレイヤーの術師の呪文使用回数は、その時代の感覚で設定されていますからね。最初から3回使えると、非常に優秀な術師と見なされるわけで』

ヒノキ「クラシックD&D時代だと、レベル4クレリックじゃからのう、3回使用は」

NOVA『その後、3版になると、0レベルの初級呪文の概念ができて、それを含めると呪文の使用回数は初期状態で結構増えた。さらに4版になって、無限回使用のパワーと回数制限ありのパワーに分かれて、戦闘ゲームとしては実質的に呪文の打ち止めで何もできなくなった魔法使いという概念そのものが消失した』

ヒノキ「回数制限ありの必殺技的な強力呪文と、通常使用する弱呪文という形になったのじゃな」

NOVA『その後、5版になって初級呪文が無限回使用できて、1レベル以上の呪文は従来どおりの回数制限で。3版から4版を経て5版に至る、呪文使用回数の制限の緩和が明確です。つまり、魔法使いは初級呪文に攻撃呪文を選べば、何度でも魔法を撃ち放題で戦える、と』

ヒノキ「通常使用する呪文が初級呪文じゃと」

NOVA『それだけに、初級呪文の選択が結構、重要なんですね。1レベル以上の呪文はレベルアップごとに習得数を増やして行けるけど、初級呪文はレベル10になるまで、2個のまま増やせないし、最大4種類です。ウィザードやクレリックは、初級呪文が最初は3個で、最大5種類までですが』

ヒノキ「もしも、役に立ちにくい初級呪文を選んでしまった場合は、どうなるんじゃ?」

NOVA『一応、レベルアップごとに1つの初級呪文を別のものに置き換えは可能ですね。だから、初期では有用だったけど成長して使いどころのなくなった呪文を覚え直すことは可能』

ヒノキ「で、最初は何を覚えれば良いのじゃ?」

NOVA『ウィザードの場合は、16種類の初級呪文から3つを習得するのですが、初心者用のお勧めとしては、メイジ・ハンド、ライト、レイ・オブ・フロストがルールブックに記されています』

 

●メイジ・ハンド:30フィート(約9メートル)離れた場所まで、魔法の手を操り、物品や機構を操作したり、軽い物を空中に浮かべたりできる。

●ライト:効果時間が1時間、半径20フィート(約6メートル)を照らす明かりをつける。さらに半径40フィート(12メートル)までは薄暗い程度の光力を持つ。

●レイ・オブ・フロスト:冷気光線。射程60フィート(約18メートル)までの1体の敵にD8ダメージを与えたうえ、次のターンまで相手の移動力を10フィート減少させる。

 

ヒノキ「昔の魔法使いは、呪文がネタ切れになったら、ダメージD4のダガーでも投げろ、と言われたものじゃが、今はずっと冷気を撃ちっぱなしできるのじゃな」

NOVA『ダメージ源としては、射程120フィートの炎の矢でD10ダメージを与える、ファイアー・ボルトの方が強力なので、そっちを選んでもいいです。自分のキャライメージに合わせて、氷か炎を選んでもいいでしょう』

ヒノキ「電気はないのか?」

NOVA『ありますが、ショッキング・グラスプ(電撃の手)は接近戦仕様ですので、防御の薄い魔法使いにはあまりお勧めできません。ただ、これらの初級攻撃呪文はアーティフィサーも習得できますので、選択肢に含めてもいいでしょうね』

 

ヒノキ「クレリックの初級呪文はどうなっておる?」

NOVA『攻撃呪文として強力なのは、【光輝】ダメージD8を与えるセイクリッド・フレイムが有用ですね。選択肢が7つあって、そのうち3種を選ぶことになりますが、数が少ないからか、ルールブックにはお勧め呪文が用意されていません』

ヒノキ「ならば、新兄さんのお勧めは?」

NOVA『本記事は、アーティフィサーが主題ですので、アーティフィサーの初級呪文をリストアップしてみます。その中には、ウィザード用とクレリック用の厳選された呪文が15種類あって、その中から2つ選ぶ仕様。まあ、ザナサーやターシャで追加された呪文は除いて、あくまでコアルール仕様で話を進めます』

ヒノキ「15種類もあって、2つしか選べないのか」

NOVA『で、そのうちの1つは、メンディングを選んでおくのが無難でしょうね』

 

●メンディング:物品の修復呪文。1分を費やすことで、物体の損傷を修理できる。アーティフィサーのホムンクルスや、機械人形などのHPダメージを回復させることも可能。ウィザードやクレリックソーサラードルイドの初級呪文でもある。

 

NOVA『アーティフィサーが職人である以上、壊れたものの修理は専門家として要請されることも多いか、と。おそらく、最優先で習得すべき初級呪文と考えますね』

ヒノキ「便利呪文であることは間違いないのう」

NOVA『そのうえで攻撃呪文を習得していれば、十分だと考えます。以下の攻撃呪文はウィザードと兼用ですね』

 

●アシッド・スプラッシュ:D6酸ダメージを、60フィートまで飛ばすことができる。5フィート隣接している敵なら、2体をまとめて攻撃可能。

●ショッキング・グラスプ:D8電撃ダメージの拳を接近戦で命中させる。金属鎧の相手に有利で、相手は次の行動までリアクションをとることができなくなる。

●ファイアー・ボルト:前述のとおり。

●ポイズン・スプレー:D12ダメージの毒ガスを、10フィートまで放出する。ダメージは高いが、アンデッドや非生命の相手には無効化される。

●レイ・オブ・フロスト:前述のとおり。

 

ヒノキ「15種類中、攻撃呪文が5種類、と。ダメージは低いが、2体を攻撃できるアシッド・スプラッシュが、局面に応じて有効。あとは、毒噴射のダメージが魅力的と言えようか」

NOVA『まあ、毒が魅力的かどうかは、キャラのイメージをどうしたいかにもよりますがね。それに、アーティフィサーは純粋魔法使いのウィザードよりも汎用性が高いクラスなので、通常戦闘は攻撃呪文に頼らなくても、普通に武器戦闘をこなすことが可能。たとえば、初期装備にライト・クロスボウ(D8ダメージ)を持っていますので、飛び道具で味方支援も十分できると考えれば、初級呪文はもっと違う選択肢をとる手もありますね』

ヒノキ「おお、そうか。武器攻撃の弱い魔法使いだと、攻撃呪文が使えなければ戦闘での活躍が難しいが、アーティフィサーの場合は必ずしもそうではない、と。むしろ、魔法使いとは異なる仕事に呪文を役立たせることも考えられるわけじゃのう」

NOVA『その意味で、初級呪文にライトを選ぶこともお勧めしません。と言うのも、アーティフィサーの能力で紹介した「魔法の小発明」で、物品に「明かり」の効果を付与できますから』

ヒノキ「そう言えば、そうじゃったのう。懐中電灯を持っているのに、明かりを魔法で生み出すことはあまり有用ではない、と」

NOVA『ライトはありふれた呪文なので、ウィザードも、クレリックも、ソーサラーも、バードも初級呪文として習得できます。そして、パーティーの誰かが習得していれば、重複して覚えていてもあまり意味がないと言えるでしょう』

ヒノキ「しかし、敵の目にかければ、目つぶし効果を発動できるのじゃろう?」

NOVA『それは、旧世紀のD&Dの話ですな(単体の命中やACにマイナス4のペナルティ効果)。ゴブスレの女神官が使うホーリーライト(聖光)も、その効果が拡大解釈されて、光に弱いゴブリンの群れ全体に目くらまし効果をもたらしますが(TRPGでは3ラウンドの間、両目が見えずに判定にマイナス6のペナルティ)、3版以降のD&Dのライトにそんな効果はありませんよ』

ヒノキ「何と。ライトも地に落ちたものじゃなあ」

NOVA『初級呪文ですからね。まあ、明かりの呪文が回数無制限で使えるのは、普通に便利になったので、昔よりは使いやすくなったと思いますよ』

 

クレリック他とアーティフィサーの初級呪文

 

NOVA『さて、小見出しを変えて、クレリック呪文を掘り下げましょう。メンディングとライトを除くクレリックの初級呪文で、アーティフィサーが習得できるのは、スペア・ザ・ダイイングとガイダンス、レジスタンスですね』

 

●スペア・ザ・ダイイング:HPが0になっている気絶状態の生物に接触して使うと、容態が安定化する救命処置呪文。

●ガイダンス:自分も含めた接触相手の能力値判定に、D4ボーナスを与える、導きの補助呪文。技能判定や道具の習熟判定などに際して、ちょっとした幸運を呼ぶ、激励やおまじないのような効果。

レジスタンス:自分も含めた接触相手のST判定にD4ボーナスを与える、お守り的な補助呪文。ガイダンスが能動的なアクションに使用できるのに対して、こちらは受動的な防御用。ST判定が必要になることを事前に想定して使わないといけないため、ガイダンスよりも扱いが難しいと思われる。継続効果のある毒を受けたなど、ST判定を何度か繰り返す必要がある場合に、抵抗力を高めるのが有効か。

 

ヒノキ「完全に補助的な効果じゃのう」

NOVA『まあ、クレリックの使えるおまじないのような効果を、アーティフィサーも使えるってことで、医療の道を志したりできるわけですな。なお、クレリックの初級呪文で、アーティフィサーが習得できないのはソーマタージーです』

 

●ソーマタージー:ちょっとした不思議な現象を起こす小奇跡。

 1分間、次の変異のどれかを起こせる。「音の増幅」「炎の状態変化」「地面の振動」「自身の両目の外見変化」

 または、一瞬だけ何らかの音を鳴らしたり、鍵のかかっていない扉や窓を開け閉めできる。

 

ヒノキ「まるで、イタズラじゃのう」

NOVA『ウィザード呪文にも似たような効果の奇術呪文、プレスティディジテイションがあって、アーティフィサーはそちらを習得できます』

 

●プレスティディジテイション:以下の怪現象を起こせる手品みたいな芸。

 瞬間的に以下の現象を起こせる。「火花のシャワー、一吹きの風、かすかな音楽、奇妙な臭いなど、無害な知覚作用を生み出す」「ロウソクや明かりを付けたり消したりできる」「30センチ四方の大きさの物体を汚したり、きれいにできる」

 1時間のあいだ、以下の現象を起こせる。「1ポンド(約0.45kg)までの生きていない物品を冷やしたり、温めたりできる」「1つの物品に色を付けたり、小さなマークや紋章を描いたりできる」

 

NOVA『ソーマタージーも、プレスティ以下略も、プレイヤーの想像力次第で、ちょっとした現象を引き起こせる小技ですが、たとえばポルターガイスト現象みたいに、家具がガタガタ揺れたり、ラップ音を鳴らしたり、突然、明かりが消えたり、オカルト現象を起こして他人をビビらせることが可能ですね。魔法で軽いイタズラをしたいなら、面白い呪文ですけど、ゲームとして実用的かどうかは不明。便利なのは、1ポンドのお湯を1時間のあいだ、沸かせる効果。450ccのお湯を瞬時に沸かせるなら、カップ麺を作ることも可能です』

ヒノキ「ファンタジー世界にカップ麺があるのか?」

NOVA『……インスタントの粉末スープとか、コーヒーぐらいならあるかもしれませんし、お湯を沸かす効果なら、アーティフィサーが科学的実験を行うにも便利でしょう』

ヒノキ「プレイヤーのアイデア次第では、使い勝手が良さそうな呪文じゃのう、プレスティ何ちゃらは」

 

NOVA『残り3つの初級呪文も、ここで紹介しておきましょう。ソーン・ウィップ、ダンシング・ライツ、メッセージです』

 

●ソーン・ウィップ:ドルイド用初級呪文。イバラの鞭を作成し、射程30フィートの敵にD6ダメージを与える攻撃呪文。目標が大型以下のサイズなら、攻撃命中後に10フィートまで引き寄せることが可能。

●ダンシング・ライツ:ウィザード、ソーサラー、バード用初級呪文。最大4つまでの明かりを射程120フィート以内に作り出し、またボーナスアクションで最大60フィートまで移動させられる。

●メッセージ:ウィザード、ソーサラー用初級呪文。射程120フィート以内のクリーチャーと、相手だけに聞こえる言葉で会話、もしくは一方的に言葉を伝えることができる。

 

ヒノキ「ソーン・ウィップは、相手を引きずり寄せることができる攻撃呪文。メッセージは36m離れた相手に秘密の伝言を送ったり、通信できる便利呪文ということは分かった。しかし、ダンシング・ライツは、ライトと何が違うんじゃ?」

NOVA『ライトは1時間保つ明かりを、自分の接触した物体にかける呪文ですね。ダンシング・ライツは、距離が離れた場所にかけることができるので、遠くの敵の姿を照らすためには、ライトよりもダンシング・ライツの方が有効でしょう。ただし、ダンシング・ライツの持続時間は最大1分(要集中)ですので、ずっと照らして作業するための光源としては不向き。どちらかと言うと、敵の気を引くためとか、明かりを用いた手品とか大道芸に有効でしょうかね。蛍が飛び交うようなイメージで考えていますが』

ヒノキ「同じ明かりの呪文でも、使用目的が違うのじゃな。純粋に光源としてはライトの方が便利で、ダンシング・ライツは短期集中型でトリッキーな光芸を使って、観客や敵の目を引き付けるタイプの呪文だ、と」

NOVA『ともあれ、明かり系やプレスティみたいな小技系は、アーティフィサーの場合、1レベル特徴の「小発明」で代用できるので、メンディングと攻撃呪文を除けば、ガイダンスが便利だと思います。ただ、これも味方のクレリックが使えるなら、必要ないですので、どの呪文が有用かは仲間次第、仲間のできないことを補う辺りがアーティフィサーの仕事じゃないでしょうか。メンディングは必須として、武器戦闘重視型ならガイダンス、魔法攻撃重視型なら攻撃呪文1種という選択になるかな、と』

 

ヒノキ「では、次に使用回数制限のある1レベル呪文じゃな」

NOVA『いいえ、そこまで触れるのは字数オーバーなので、次回の記事に回します。代わりに、ザナサーとターシャの追加初級呪文について、今回は触れるってことで』

 

ザナサーの追加初級呪文

NOVA『さて、ザナサー本には、9つのウィザード初級呪文が追加されているが、アーティフィサー用には4つの初級呪文が追加されている。この辺を研鑽するのは、個人的に初めてなので、じっくり見て行くとしよう』

 

●クリエイト・ボンファイアー:1分間持続(要集中)する焚き火を作成する呪文。物を燃やことも、敵の足元に火をつけてD8ダメージを与えることも可能。ダメージを避けるには、敏捷力セーブが必要。

 

NOVA『炎の壁ウォールofファイアーの初歩版という感じの術ですな。魔法の火なので、可燃物がなくても1分間は燃え続けるんだけど、その場に薪とか可燃物があれば普通の焚き火に変わることも可能』

ヒノキ「ファイアー・ボルトがすぐに消える攻撃特化の呪文であるのに対し、こちらはダメージこそいくぶん低く、射程も短いが、攻撃呪文としても、火起こし用の便利呪文としても使える、と」

 

●サンダークラップ:100フィート遠くまで聞こえる雷鳴を響かせて、術者の周囲5フィート(1マス隣接)の全員に、雷鳴ダメージD6点を与える。耐久力セーブに成功すれば、ダメージを免れる。

 

ヒノキ「ショッキング・グラスプは電撃ダメージじゃったが、こちらは轟音による衝撃でダメージを与える仕様じゃな」

NOVA『うまく敵集団の中に飛び込めたら、周囲にまとめてダメージを与えられる魔法として有用だけど、それには相応の物理防御力の高さが欲しいわけで、装甲の薄いウィザードよりもアーティフィサーの方が、サブクラス次第で有効利用できるかも(バトルスミスとかアーマラーとか)』

ヒノキ「重装鎧の装備できる呪文使いであれば活かせるということじゃのう」

 

●フロストバイト:凍傷呪文。射程60フィート(約18メートル)までの1体の敵にD6冷気ダメージを与えたうえ、次のターンの終了時まで目標の行う武器攻撃1回に不利がつく。耐久力セーブに成功すれば、ダメージと凍傷効果を免れる。

 

NOVA『同じ冷気ダメージのレイ・オブ・フロストに比べると威力は低いけど、追加効果の攻撃ペナルティが、移動妨害よりも有効に思えるかも』

ヒノキ「接近戦範囲に入ってしまえば、移動力減少はあまり有効ではない。逆に武器攻撃をして来ない魔法使い系の敵には、フロスト・バイトの効果が薄いということになる」

NOVA『つまり、どういう相手を狙うかということで、戦術を考える意味がある、と』

ヒノキ「いずれにせよ、攻撃呪文のレパートリーが増えただけじゃのう。あまり、面白みを感じん」

 

●マジック・ストーン:1〜3個の小石に魔法をかけて、投擲やスリングから放つ場合に、ダメージに知力ボーナスを加算できる。ボーナスアクションで行使できるので、呪文使用と同時に投擲可能。

 

NOVA『これはスリングを愛用する魔法使いに有効ですね。威力も決して弱くはない』

ヒノキ「それでも結局は、攻撃用のレパートリーが増えただけ。もっと面白い効果はないのか?」

NOVA『だったら、次はターシャに進みましょう。こちらも、4つの追加呪文がアーティフィサーに用意されています』

 

ターシャの追加初級呪文

●グリーンフレイム・ブレード:術者の使用武器に緑の炎をまとわせる。1体めの相手に近接攻撃を命中させると、そこから5フィート(隣接マス)のもう1体に炎を飛ばすことができ、知力ボーナス分の火ダメージを与えることができる。

 

ヒノキ「これは絵的に格好いい感じじゃのう。牙狼の烈火炎装みたいな趣きがある」

NOVA『レベル5になると、初級呪文もパワーアップして、1体めに対しても炎による追加ダメージがD8点、また隣接相手への飛び火ダメージもD8+知力ボーナスになるので、接近戦アーティフィサーが強く、格好良く戦えるという意味ではお勧めかも』

 

●ソード・バースト:術者が召喚した無数の剣の幻が周囲をなぎ払う。術者の周囲5フィート(1マス隣接)の全員に、力場ダメージD6点を与える。敏捷力セーブに成功すれば、ダメージを免れる。

 

ヒノキ「これはこれで、演出が格好いいのう」

NOVA『効果としては、ザナサー本のサンダークラップとほぼ同じなんですけどね。ターシャ本の追加呪文は、ザナサー所収のものよりも派手な演出なのかもしれません。何だか、初級呪文なのに奥義みたいなアクション描写ができそうで』

 

●ブーミング・ブレード:唸る剣の呪文。術者の使用武器が鳴り響くエネルギーを帯びる。その武器で近接攻撃を命中させると、通常ダメージの他に、相手は音響エネルギーに包まれる。その後、術者の次のターンの開始時までに、相手が自分の意志で移動したなら、エネルギーの効果でD8雷鳴ダメージを受ける。

 

ヒノキ「う〜ん、これは何だかいまいちに思えるのう」

NOVA『相手をエネルギーの渦に包み込んで、移動を封じるのは格好いいじゃないですか?』

ヒノキ「いや、そもそも接近戦をしているわけじゃから、無理に移動する必要はないじゃろう? 今、切り結んでいる術者に移動せず反撃すればいいだけで、そうするとD8ダメージを免れるわけじゃから、アーティフィサー自身の戦いが有利になるわけではない。まあ、相手がアーティフィサー以外の後衛を狙いたがっているときは、それを妨害して自らが前衛壁になるという程度の役には立とうが」

NOVA『要は、アーティフィサーがタンク役を買って出る際に、活用できるかなって感じですね。あと、嫌がらせとして、動きを封じた相手の足元にボンファイアーの焚き火を仕掛けるとか?』

ヒノキ「移動すれば、ブーミング効果のD8ダメージ。移動しなければ、焚き火のD8ダメージ。どっちにしろ、追加ダメージで相手を削るという戦術か。何だか、まどろっこしいのう」

NOVA『何にせよ、ターシャの追加呪文は、アーティフィサーが前衛で戦うことを前提としたものばかりですな』

 

●ライトニング・ルアー:電撃エネルギーの鞭を生み出して、15フィート以内の相手に絡みつかせる(判定不要)。その後、筋力セーブに失敗した相手は、最大10フィート引き寄せられる。そうなった相手が、術者の5フィート以内にいる場合は、D8電撃ダメージを受ける。

 

NOVA『これは、引き寄せ系でコアルールのソーン・ウィップのバージョンアップに思えますな。射程はイバラ鞭が上で、ダメージは電撃鞭が上。ただし、電撃鞭は相手を引き寄せるために筋力判定で相手が失敗しないといけない。ソーン・ウィップは呪文の命中判定をしないといけないけれど、命中すれば自動的にダメージを与えて、引き寄せも可能』

ヒノキ「それにしても、敵を引き寄せることにメリットがある局面はどんな感じじゃろうか?」

NOVA『引き寄せた先に、焚き火が燃えているとか?』

ヒノキ「また、焚き火かよ!?」

NOVA『まあ、普通に考えれば、相手を引き寄せて、他の味方といっしょにタコ殴りってぐらいですかね。あと、船の上とかだと、橋板を渡っている途中の相手をサイドから引き寄せて、板から水中に落下させるとか、マップの地形を駆使したテクニカルなプレイもありでしょうが、その逆にルアーだから水中に潜む敵を釣り上げるというブレーザーさんみたいなプレイもできそうだ』

ヒノキ「ともかく、引き寄せ系の戦術は、上手くハマれば、いかにもしてやったり感が強くて、楽しそうではある」

 

NOVA『これらの初級呪文をあれこれ使いこなすだけでも、アーティフィサーのキャラ付けが面白くできそうなんですが、今回はここまで。次は、1レベル呪文の研鑽を行う予定』

(当記事 完)