1月26日はD&Dの誕生日
ヒノキ「少し遅れたが、D&D50周年ハッピーバースデイなのじゃ」
シロ「1月26日生まれとは知りませんでした」
ヒノキ「わらわもじゃ。まあ、1974年1月ということは分かっているが、正式な商品発売日付けまでは分かっておらんらしく、いつの間にやら26日ということになっているようじゃのう。なお、その日、お猿の人形モンチッチも生まれておる」
セイリュウ「まさか、D&Dの話をしようとして、モンチッチが出て来るとは思わなかったぞ」
カニコング「それもコングパワーのおかげでごわす」
セイリュウ「って、貴様は屋久島にいるはず! 突然、どうしてここに?」
カニコング「ただの顔見せ……ではなく、セイリュウ様がいつまでも帰って来ないので、そろそろ様子を見て参れ、とガイア様に言われてのお使いでごわす」
セイリュウ「そうか。ここに長居をするつもりはなかったが、諸事情(主にブログ作者の都合)で何もせぬまま、ずるずる仕事が引き延ばしになっておった。アーティラリストの話をして、屋久島に戻ろうと思う」
ジュニア「では、アカデミー賞に期待しながら、島で待機ってことですね」
ゲンブ「D&D50周年も大事でござるが、怪獣王70周年に先駆けての快挙、おめでとうでござる」
セイリュウ「だが、今はD&D話に移るとしよう。コングは島に帰っておれ」
カニコング「そうでごわすな。いずれ島でトカゲ王とやらと戦う予定が入っておるし」
セイリュウ「トカゲ王? それは何かの皮肉か挑発か?」
ヒノキ「ゲームブックの話じゃろう。そちらのネタはまた、ウルトロピカルでのう」
ファイアーボールの話
セイリュウ「さて、D&Dには数多くの攻撃呪文があるが、その中でも特別に人気が高いのがファイアーボールであろう」
ヒノキ「異議なし」
ゲンブ「当然でござるな」
シロ「でも、最強なのはミーティア・スウォームなんですよね」
セイリュウ「いわゆるメテオ(流星雨)だな。5版では、4つの火球が降ってきて、20D6の火炎ダメージと20D6の殴打ダメージを与える複合呪文となっておる。合計40D6のダメージを与え、最大240点にもなるが、抵抗されなければ期待値130点という計算になろうか。まあ、その辺のレベルにもなると、炎耐性か打撃耐性を持つ敵も普通におるだろうから、思ったよりもダメージが伸びないこともあろうがな」
ヒノキ「それは最大の9レベル呪文であるから、ウィザードが17レベルになって初めて使える代物。最大5レベル呪文までしか使えないアーティフィサーにはとても手が届かぬ高嶺の花火じゃ」
セイリュウ「得てして最強呪文は、多くの術士にとって憧れではあるが、TRPGの場合、そこまで到達するほどプレイを重ねる猛者は少数派。ウィザードリィなら核撃のティルトウェイト、ドラクエならイオナズンからイオグランデ、ファイナルファンタジーならバハムート召喚によるメガフレアなどを覚えて、終盤の戦いで標準的に使うことも多いであろうが、TRPGだとメテオなどは切り札であって、覚えても連発などはあり得んことよ」
ヒノキ「確かに、最強レベルの呪文はスロットが1しかないので、1日に1回しか使えのじゃな。クラシックD&Dの時代じゃと、最高のレベル36に育った魔法使いが9レベル呪文を9回使えるようになるんじゃが」
セイリュウ「クラシックD&Dでメテオが使えるのは、レベル21になってから。そこから先がまた長い話だし、今のD&Dは最大20レベルなので、メテオを連発できる魔法使いなどルールの枠を越えた規格外の存在となろう。いずれにせよ、最強呪文など覚える頃合いにはキャンペーンもほぼ終了を迎えるので、多くのプレイヤーにとっては憧れを掻き立てる幻想ロマンに過ぎんよ。それよりも、定番の攻撃呪文としてファイアーボールこそが、魔法使いの世界を変え、大規模破壊の魅力に開眼する象徴的な呪文と言っていい」
ジュニア「それって良いことなんですか?」
セイリュウ「魔法使いの仕事はいろいろあるが、D&Dを戦闘ゲームと考えた場合、魔法使いの役割は多くの敵に手早く対処して、数を減らすこととなる。前衛の戦士が敵と切り結びながら壁となってくれている間に、後方から戦士の処理しきれない敵勢を一網打尽にするのが魔法使いの火力ということだ。とりわけ、戦士の攻撃力を伸ばしにくいクラシックD&D時代は、中堅以上の魔法使いの火力こそが戦闘の要であった」
ジュニア「バスタードを見ていると分かります。魔法こそが最強なんですね」
セイリュウ「一方、我ら怪獣界では、肉弾戦が強いというのは前提条件として、口から火炎や破壊光線を吐くなどの特殊攻撃、飛び道具の類を持つことが花形スターとしての条件となる。D&Dのドラゴンが強いのは、爪や牙、尻尾の破壊力もさることながら、火炎や電撃などのブレス攻撃があってのことであろう。ブレスの吐けない竜は、ただの大トカゲと言っても過言ではない」
ヒノキ「いいや、仮にブレスがなくとも、ドラゴンはその飛行能力だけでも脅威と言えよう。ブレスが標準ではないワイバーン(飛竜)でさえ、ただのトカゲとは言えまい。ドラゴンと言えば、やはり飛行能力こそが花形だと主張する」
ゲンブ「うむ、そうでござるな。つまり、空が飛べて、火も吐けるガメラこそが怪獣界の花形と言って良いでござる」
ジュニア「あまり真似をしたいような格好よさではありませんね」
セイリュウ「うむ。試しにやってみたら、一応は飛べたが、不格好で評判が悪いし、これならブレスの射程を上げたり、飛んでる敵を引き寄せて落とす戦術の方が有効と判断した。若いときは自分のスタイルを見つけるのにあれこれ試行錯誤したが、自分が苦手なことは代わりに喜んでしてくれる仲間を探すことも大事。今後、飛べる敵はスザクやゲンブに任せれば良かろうと思っておる」
シロ「そうですね。飛べなくても、火が吐けなくても、それが全てではありませんからね」
セイリュウ「コングも、アンギラスも、機敏な動きと器用さで見せ場はあるからな」
ジュニア「どうして、ファイアーボールの話なのに、アンギラスさんの話に流れるんですか?」
セイリュウ「あやつは、体を丸める必殺技アンギラスボール(暴龍怪球烈弾)を習得したが、だったら火をつけてアンギラス・ファイアーボール・スーパーダイナマイト(暴龍火球超爆烈弾)に進化すると、より強力で派手な見せ場を演出できるのではないか?」
ジュニア「死んでしまいますよ!?」
セイリュウ「大丈夫。あやつは体の各所に脳が分散しておるから、その脳が互いに引き寄せ合って、バラバラになった体がもう一度合体して、再生可能だ」
シロ「脳の分散はともかく、再生可能って本当ですか?」
セイリュウ「それができてこそ、ウルトラマンジャックやタロウに匹敵するヒーローとして、アンギラスは復権できるはず」
ゲンブ「ウルトラ族ならともかく、アンギラス殿にそのような器用なことができるとは思えんでござるが」
セイリュウ「ならば、あの全身のトゲを少しぐらい射出するような技でも覚えれば、復権できるかもしれん」
ジュニア「というか、アンギラスさんの話ではなく、ファイアーボールの話に戻りましょうよ」
セイリュウ「おっと、息子に諭されるとはな。よし、話を戻そう。要は、ファイアーボールこそがD&Dの魔法使いの定番火力呪文であり、それが使えてこそ一人前と言いたいわけだ」
ヒノキ「異議なし」
ゲンブ「当然でござるな」
シロ「そう言われると、火炎攻撃を持たないシーサーの眷属としては反論したくなりますが、私情はさておき、数ある攻撃呪文でも、どうしてファイアーボールだけ特別扱いなんですか。D&Dには他にライトニングボルト(電撃)やアイスストーム(氷の嵐)などもあるはず」
セイリュウ「炎と雷と氷は分かりやすいダメージ属性だが、氷はレベル4呪文で、炎と雷はレベル3呪文という違いがあり、ダメージはいずれも同じというのがクラシックD&D。ならば、氷の方が使いにくいというのが一般的な評価となる。そして炎と雷だと、効果範囲が大きく異なり、狭い通路だと直線範囲のライトニングボルトが有効で、部屋の中だと円形に爆発が広がるファイアーボールの方が複数敵を範囲に収めやすいという利点がある」
ヒノキ「水中では雷の方が有効で、さらに敵の配置によっては壁に反射させることで2回ダメージを与えられるなど、ライトニングボルトの方がトリッキーな使い方ができる。さらに、電撃よりも炎の方が耐熱対策がされやすいという欠点があるので、クラシックD&Dでは手慣れた魔法使いがライトニング派、しかし分かりやすい範囲ダメージ呪文ということで初めて5レベルに成長した魔法使いは喜んでファイアーボールを取得するのが、わらわの観察範囲のプレイヤー傾向じゃった」
シロ「ソード・ワールドでは、ライトニングがレベル4呪文で、ファイアボールがレベル6呪文。ファイアボールへの道のりが若干、遠く思えますね」
ゲンブ「それに、コンジャラーのレベル1呪文、スパークが電撃属性なので、D&Dよりは電撃のお世話になる機会が多くなっているでござろうか」
セイリュウ「ソード・ワールドでは、ソーサラーレベルが上がると、ライトニングもファイアボールも両方とも自然習得できる。しかし、D&Dでは魔法使いの習得呪文を選択するシステムなので、レベル5の魔法使いが先にファイアーボールを習得するか、ライトニングボルトを優先するかは、古の議論のネタにもなったのだ。が、まあ、とりあえずファイアーボール派の方が一般的に使い勝手がいいとされていたわけで」
ヒノキ「パーティーのメイン魔法使いはファイアーボールを習得して、後から仲間のエルフがライトニングボルトを習得するのが、クラシックD&Dの一部のパーティーの作法と言えたのう。何しろ、森を愛するエルフは炎が嫌いというファンタジー仕草が当時の界隈では定着しておったから」
ジュニア「どこかの雷帝ダークエルフの影響もあったのかもしれませんね」
セイリュウ「そんなわけで、クラシックD&Dの伝統では、レベル1魔法使いは基本的にスリープの呪文を習得し、レベル3に成長して使用呪文のレベルが2に上がると、ダメージ呪文がないことで悩むこととなる」
ヒノキ「うむ。いわゆるダメージ魔法のないレベル2呪文で何を習得するかで術者の個性が示されると言えよう。戦闘に役立つものだと、ウェブ(蜘蛛の巣)で敵集団の一部の動きを封じるか、幻影呪文(ファンタズマル・フォース)で強力な範囲呪文の幻を見せて気絶させるか、いろいろと小細工を弄しながらも決定的なダメージを与えられない己に悶々としていたものじゃ」
セイリュウ「そして、ベーシックレベルを越えて、経験点が2万点に達し、レベル4から5に成長したとき、ついに待ちに待ったファイアーボールを習得し、爆烈魔法使いとして一気にこれまでのストレスを解消し、パーティーのメイン火力として大きな顔ができるようになるのだ」
ヒノキ「それまでのマジックユーザーはパーティーで最も打たれ弱い職業として、流れ矢にビクビクしながら、前衛戦士に媚びを売って生き長らえておったのが、急に大きな顔をして、相変わらず弱っちい盗賊を顎で使うようになるのは、古のロードス第2部リプレイのセシルとフォースの関係を見れば一目瞭然じゃ」
シロ「アリナ様、例えが古すぎます。盗賊が弱小キャラとしてイジメられていたのは旧世紀の話。50年間のD&Dの歴史の中では、半分にも満たない時期です。大体、今ごろクラシックD&Dの話を出して、ファイアーボールの凄さを語ってどうするんですか、セイリュウ師匠」
セイリュウ「まあ、そうピリピリするな、シロよ。とにかく、D&Dにおける魔法使いにとって、ファイアーボールとは攻撃呪文の代表的な位置付けだと分かったうえで、アーティフィサーの呪文リストを見てみるがいい」
シロ「……ありませんね、ファイアーボール」
セイリュウ「それどころか、ライトニングボルトもアイスストームもない。つまり、サブクラスを持たないアーティフィサーは素の状態では初級の攻撃呪文しか使えない、お粗末な魔法使いということだ」
シロ「ところが、サブクラスとして、砲術士のアーティラリストを選ぶと、攻撃魔法使いとして輝くことができるってことですね」
セイリュウ「そのとおり。アーティラリストなら、ファイアーボールもアイスストームも追加呪文として使える」
ジュニア「ライトニングボルトは?」
ゲンブ「そっちは、アーマラーの領分のようでござるな。とにかく、ファイアーボールこそ魔法の花形と考えるなら、アーティフィサーのサブクラスはアーティラリスト一択という結論になる。そうでござろう、セイリュウ殿」
セイリュウ「うむ。アーティフィサーをヒーラーとして育てたいならアルケミストになろうが、攻撃魔法使いとして後衛からの火力を追求したいなら、アーティラリストを選択すべし。なぜなら、他のサブクラスではファイアーボールを習得して、ドカーンと爆発させることができないから」
ヒノキ「まあ、砲術士だからのう。火薬とか爆発の専門家であるのは当然じゃろう」
アーティラリストは砲撃魔法の使い手
セイリュウ「サブクラスにアーティラリストを選択すると、以下の特徴が付いてくる」
- レベル3:「道具習熟(木彫道具)」「炎や氷属性などの攻撃魔法を中心とした追加呪文」「魔導砲」
- レベル5:「秘術火器」
- レベル9:「爆裂魔導砲」
- レベル15:「魔導砲台」
シロ「アーティラリストが習熟する道具は、木彫なんですね」
セイリュウ「魔導砲の材料を木とか竹筒にするか、鍛治道具で金属加工にするかはプレイヤーの好みだが、アーティラリストは木製の杖(ワンドやスタッフ)に印形を刻むことで、攻撃呪文のダメージをさらに高める『秘術火器』を習得するからな。金属加工の専門家は、アーマラーやバトルスミスなので、アーティラリストの方は木材加工の方を必須と指定されておる」
ヒノキ「木材加工に習熟できるということは、砲術以外にも木彫りの芸術作品を作るのが趣味と言ってもいいのじゃな」
ジュニア「芸術は爆発ですね」
セイリュウ「芸術だけでなく、実用品も作れるぞ。棚を作ったり、タンスを作ったり、鳥の巣箱を作ったり、その気になれば大工仕事もこなせよう。そして、アーティラリストが製作する一番の芸術作品が『魔導砲』となる。魔導砲がなければ、ただの劣化魔法使いでしかないアーティラリストが、自分の作成した魔導砲にボーナスアクションで砲撃させることで、通常の魔法使いよりも秀でた火力を持つことも可能」
ジュニア「ええと、自分が攻撃呪文を撃ち放つのに加えて、さらに魔導砲に砲撃を同じターンに命じることができるということですか?」
セイリュウ「そうとも。したがって、アーティラリストはレベル3時点で1ターンに2回の魔法的攻撃を行える破格の火力を持ち得るわけだ」
シロ「自分の魔法に加えて、魔導砲の分も撃てるのは、ボクのソード・ワールドのプレイにも似ていますね。自分の行動に加えて、ゴーレムのシーサーや騎獣のイノセントにも攻撃させるようなもので、単純に手数が増えて便利だ」
ヒノキ「だったら、攻撃は魔導砲に行わせて、自分は補助呪文で仲間の支援を行うことも可能、と」
セイリュウ「ああ。ただし、全てのアーティフィサーはレベル2で習得する『魔具化式』により、ホムンクルスのしもべを製作可能だが、しもべの行動にもボーナスアクションを要する。D&Dのボーナスアクションは、ソード・ワールドの補助動作と違って、1ターンに1回しか行えないという制限があるので、魔導砲を使うならホムンクルスは使い勝手が悪い、という話になる」
ゲンブ「さすがに3回攻撃という形にはならないということでござるな」
魔導砲の話
セイリュウ「ということで、アーティラリストの最大の特徴は、『魔導砲』を作成し、自身の攻撃呪文とともに活用し、レベルアップにつれて強化していくことも可能。この魔導砲を上手く運用することが、アーティラリストの存在意義とも言えよう」
ヒノキ「ただの攻撃呪文の使い手なら、専業魔法使いのウィザードやソーサラーに及ばんからのう」
セイリュウ「例えば、ウィザードがファイアーボールを撃てるのはクラシックD&D同様、レベル5になってからだが、アーティラリストはレベル9になって初めてファイアーボールが使用可能になる。ならば、レベル5の段階では何ができるかと言うと、魔導砲+スコーチング・レイの組み合わせでそれに近いダメージを出せるかもしれん」
ジュニア「本当に?」
セイリュウ「ダメージをシミュレートしてみよう」
- ファイアーボール:半径20フィート範囲に8D6ダメージ。5フィートマップでは44マス分の範囲で、マップを使用しない場合の概算だと敵4体を攻撃可能。最大ダメージ48点、期待値28点。敏捷セーブに成功した場合、ダメージ半減。
- 魔導砲:火炎放射によって、15フィート円錐形に2D8ダメージ。マップでは6〜7マス。概算だと敵2体を攻撃可能。最大ダメージは16点、期待値9点。敏捷セーブに成功した場合、ダメージ半減。
- スコーチング・レイ:3本の火炎光線を放つ。命中した場合は、1本あたり2D6ダメージ。最大12点、期待値7点。
シロ「なるほど。確かにファイアーボールの強さが分かりますね。ダメージもさることながら、効果範囲が44マスというのは、敵が部屋に密集していた場合、かなりの数を巻き込めます」
セイリュウ「半径20フィートとは、要するに半径6メートル。12メートル四方の部屋の内接円が、ファイアーボールの範囲ということになる。巨大な怪獣のサイズから考えると、ちっぽけなようにも思えるが、よくあるダンジョン内の小部屋だと全体を巻き込むことも可能」
シロ「つまり、部屋の外から扉を開けた瞬間に、いきなりファイアーボールを撃ち込めば、問答無用で中の全員を爆殺できるわけですね」
セイリュウ「中にいるのが、冒険とは関係ない一般人の場合、HPが10前後だから皆殺しも可能だな」
ジュニア「そんな〜。相手はゴブリンじゃないんだから、皆殺しなんて物騒な言葉を使うのはやめましょうよぉ」
ヒノキ「そんな部屋に入った瞬間に範囲攻撃魔法をぶち込むプレイなんぞ、大昔の冒険初心者から中級者に至る者がかかる病気みたいなもんじゃろう。せめて、DMが部屋の内部の様子を語ったり、情報を教えてくれる間ぐらい付け加えてもよかろうに」
セイリュウ「まあ、細かいシチュエーションは置いておいて、ここでは単純に敵4体に期待値28点を与えるのがファイアーボールとしておこう。すると、合計112点のダメージを与えることになる。最大ダメージなら192点だ」
ジュニア「だったら、魔導砲で同様に計算すると、期待値18点、最大ダメージ32点しかありませんね。それにスコーチング・レイを足すと、3本全部が命中したとして、期待値21点、最大ダメージ36点。合計が期待値39点、最大ダメージが68点ですから、ファイアーボールの3分の1しか与えられないじゃないですかぁ」
セイリュウ「やはり、巻き込む範囲の広さが影響しているのだろうなあ。敵1体当たりの受けるダメージを考えると、期待値換算でファイアーボールが28点に対し、魔導砲+スコレイ3連発は30点に届く。つまり、敵が1体なら同等のダメージになるわけだ」
ヒノキ「さらにアーティラリストが自身の魔法ダメージを高めるなら、『秘術火器』の特徴でダメージ+D8できるようじゃのう」
セイリュウ「そうやって、少しでも己の出せる最大火力を高める術を考えるのが、攻撃呪文使いの本分と言えようか。まあ、ウィザードのサブクラスである『力術使い』も魔法の威力を高める特徴を備えるのだが、しかし、瞬間最大火力では本職の魔法使いに及ばずとも、アーティラリストの魔導砲には別のメリットもある」
シロ「使用回数制限のある魔法の呪文と違って、何回でも撃てるということですね。言わば、持続可能な範囲攻撃兵器だと」
セイリュウ「うむ、魔導砲は1度作成すると、1時間は存在し続ける。つまり、敵に破壊されない限り、毎ターン攻撃し続けることが可能なのだ」
シロ「毎ターン、こちらのボーナスアクションで火炎放射し続ける自律兵器か。支援タイプの味方機だと思えば、いいんですね」
セイリュウ「魔導砲はさらに、サイズと用途に応じて複数タイプがある。サイズでは、小型で移動可能な多脚戦車タイプと、手持ちで運搬可能な砲筒タイプがあって、要は術者と別行動で60フィート以内での遠隔使用可能な形態と、携帯銃砲のどちらでも好みで作れるわけだ」
ジュニア「サイズの違いで、与えるダメージが変わったりは?」
セイリュウ「しない。よって、戦況や自分の好みに応じて、魔導砲を敵陣に突撃させる小型戦車のように使うことも、自分で射撃をするオプション武装のように使うことも可能」
シロ「敵陣に突撃させても平気なんですか? あっさり破壊されたりなんてことには?」
セイリュウ「AC18だからプレートメールと同じぐらい頑丈だぞ。HPはアーティフィサーレベル×5点なので、初期状態で15点、まあ、アーティフィサー自身、レベル辺りD8でHPを決めるので、期待値的には自分と同じ程度のHPを持っていることになる。アーティラリストは重装鎧を身に付けられないので、魔法で強化しない限りはAC18には達しないであろう。よって、魔導砲の方が自分よりも頑丈で打たれ強いと考えてよい」
シロ「なるほど、前線で味方を巻き込まないように位置どりして、火炎放射で敵を焼くのが魔導砲のお仕事と」
セイリュウ「火炎放射器は魔導砲の役割の一つに過ぎん。あと2つのタイプがあって、1つは防護機。魔導砲の周囲10フィートに正のエネルギーを放射することで、味方にD8+術者の知力ボーナス分の一時的HPを与えることができる」
シロ「つまり、それだけのダメージを防ぐバリアを張り巡らせるわけか」
ジュニア「許容量以上のダメージを受けると、パリンと割れるんですね」
セイリュウ「仮に一時的HPが8点だと、6点ダメージを受けたときは本来のHPを減らす必要がなく、まずは一時的HPが減って残り2点になる。10点ダメージを受けたときは本来のHPが2点だけ減る。そして、防護機は毎ターン、一時的HPのバリアを張り直すことができるので、防護機を中心に陣形を組むと、非常に打たれ強い戦いができるわけだ」
ジュニア「攻撃だけでなく、防御に魔導砲を活用することも可能だと」
セイリュウ「魔導砲の第3のタイプは、力場の大弩。これは射程距離120フィート(36メートル)で、2D8ダメージを敵1体に当てることができる。火炎放射器に比べて、射程は圧倒的に長いが、狙える相手が1体だけなので、活用方法が難しい。同じダメージなら、複数を巻き込める火炎放射器の方が強いと思うが、これのメリットは攻撃を命中させると相手を1マス分押しやれることにある。相手のすぐ後ろに崖や落とし穴や燃えている焚き火なんかがあったりすると、押しやることで思わぬ戦果を挙げることもあろう。まあ、戦場次第というか、トリッキーなプレイを旨としているなら、うまく敵を誘導して押し込むような策を弄するのも楽しいかもしれん」
魔導砲の強化話
セイリュウ「さて、レベル5で『秘術火器』の特徴を覚え、自分の攻撃呪文の威力を高めたあとは、レベル6でアーティフィサー共通の特徴である『魔具化式』の種類や習得数などが増えたりして、できることに幅が出てくる。そして、アーティラリストとして飛躍的に強くなるのがレベル9だ」
ゲンブ「レベル9で、ようやくファイアーボールを覚えるのでござるな」
セイリュウ「うむ。それと同時に魔導砲も『爆裂魔導砲』としてパワーアップする」
ジュニア「何だか凄そうな名前ですね」
セイリュウ「ダメージがD8加算されるだけなので、2D8が3D8になり、1.5倍になっただけだが、もう一つの特殊効果がなかなか燃える」
ジュニア「ええと、暴龍火球超爆烈弾みたいな燃え方ですか?」
セイリュウ「おお、よく分かったな。まさにそのとおり」
シロ「え? それって、アンギラスさんに火を付けて、敵陣に転がして特攻自爆させる架空の奥義ですよね」
セイリュウ「魔導砲にアンギラスと名前を付けて、自爆させるとそうなる」
シロ「自爆? 魔導砲を自爆させるんですか?」
セイリュウ「そうだ。爆裂魔導砲は、敵に与えるダメージが増えるだけでなく、機を見て自爆させて、20フィート以内に3D8ダメージをばら撒くことが可能になる。自爆命令は術者のアクションを消費するので、火炎放射で3D8のダメージを与えた後、自爆を命令して合計6D8ダメージを与えることが可能」
シロ「魔導砲って、ペットみたいに愛着を持ちますよね」
セイリュウ「ペットじゃないぞ。寿命は1時間ほどの使い捨て兵器に過ぎん」
シロ「自爆した魔導砲を修理して再利用することはできないんですか?」
セイリュウ「再利用というか、大休憩をとれば新しい魔導砲を製作できるし、そうでなくても呪文スロットを消費することでも生み出せる。とりあえず、レベル9だと1レベル呪文のスロットが4つあるので、1レベル呪文を使う代わりにHP45の魔導砲を生み出して火炎放射で暴れさせ、敵の攻撃で傷ついても修復するより自爆させて、新しい魔導砲を作る方が手っ取り早い」
シロ「新しく作った魔導砲には、元の魔導砲の魂は宿っているのですかね?」
セイリュウ「何を言っておるのだ、シロよ? 魔導砲に魂などあるわけがなかろう。しょせんは造られた仮初の機械人形、道具に過ぎん」
シロ「いや、ケミーと同じで魔導砲にだって魂が宿るかもしれないじゃないですか?」
セイリュウ「そういう相棒キャラが欲しいなら、ホムンクルスか、それともバトル・スミスが製作するスチール・ディフェンダーの方がお勧めだろう。両者はそれぞれキャラクター的なデータを持っていて、術者の言語を理解して意思疎通が可能。しかし、魔導砲にはそういうデータがない。術者が勝手に感情移入するのは自由だが、魔導砲は己の意志を持たないただの武器や道具の類と扱うべき存在だ」
ジュニア「シロ姉さんは、魔導砲をイノセントみたいな騎獣のように考えているんですね。むしろ、魔晶石から作られる魔導バイクのようなものと見なすべきではないでしょうか?」
ヒノキ「まあ、バイクと違って、騎乗はできんがのう」
ジュニア「とにかく、魔導砲にアンギラスさんと名前を付けて、必殺の暴龍火球超爆烈弾として特攻自爆させて、その後、新たな魔導砲を作って、もう一度アンギラスさんと名付けて、自爆した魔導砲が再生したと思い込むロールプレイもありなのでは?」
ゲンブ「自爆兵器の名前にされるとは、アンギラス殿もお気の毒に」
セイリュウ「とにかく、魔導砲に妙に感情移入するのも一興ではあるが、15レベルになると、爆裂魔導砲から次の『魔導砲台』に進化する。今度の特徴は防護機のように防護フィールドを発動させ、10フィート以内の味方は1/2遮蔽、すなわちACと敏捷セーブが+2される機能付き」
シロ「攻撃よりも防御寄りの性能ですか」
セイリュウ「この段階だと、魔導砲自体のHPも75に達して、なかなか落ちることもなかろう。さらに、このレベルになると、これまで1度に1台しか持てなかった魔導砲を2体まで同時保有して、1回のボーナスアクションで2体を同時に動かすことも可能」
シロ「それは美味しいですね。火炎放射器を2体同時運用してもいいし、火炎放射器と防護機で攻防のバランスをとってもいい」
セイリュウ「そんなわけで、魔導砲と連携しながら、主に遠隔攻撃呪文を使って、火力を高めていくのがアーティラリストというサブクラスだな。魔導砲を単に手持ちの追加武装のように扱うのも良し、遠隔操作して召喚モンスター的な動きをさせるのも良し、ただの攻撃魔法使いとは異なる多彩な芸当ができるクラスだ」
ヒノキ「うむ、ご苦労じゃったな、セイリュウ。では、ウルトロピカルの屋久島へ帰るのじゃな」
セイリュウ「まあ、久々にコンパーニュで長く過ごしたし、島に戻って元の神霊ライフを営むとしよう」
ジュニア「父さん、お達者で」
セイリュウ「それはこっちのセリフだ。一度は死んで霊魂となった身に達者ではなかろう。ジュニアも、しっかり修行して、セイリュウの名を受け継ぐにふさわしい男になれよ」
シロ「では、師匠。また会える日を」
セイリュウ「次に会うときには、ホワイトソウルの力に覚醒していることを期待しているぞ」
ゲンブ「……」
セイリュウ「……」
ゲンブ「……」
セイリュウ「……」
ヒノキ「……って何か言うことはないのか、お主ら」
ゲンブ「言葉では伝えきれぬ想いを交わしたでござる」
セイリュウ「まあ、ガメラは来年が還暦だからな。その時にはまた、おめでとうと言うこともあろう。では、さらば」
こうして、セイリュウはコンパーニュより去った。
だが、アーティフィサーのサブクラスの研鑽はまだ2記事残っている。
次の記事は、ゲンブを中心に、アーマラーについて語る予定。
(当記事 完)