花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

祝・ドラゴンランスの5版サプリ購入

待望のサプリを手に入れて

 

NOVA『ヒノキ姐さん、とうとう入手しましたよ』

ヒノキ「ほう。それが伝説のドラゴンランスか。小説やコンピューターゲームの翻訳はされておったが、D&Dのゲームシナリオやサプリメントは一切、商業翻訳される機会のなかった80年代TRPGファンにとっての夢の商品がついに……」

NOVA『俺にとっては、阪神タイガースの85年以来の38年ぶり日本一にほぼ等しいぐらいの快挙です。とにかくめでたい』

ヒノキ「で、中身はどうじゃ?」

NOVA『基本的には、シナリオ集なんですね。224ページある中の180ページ近くがシナリオで、これ一冊で1レベル〜10レベル少しまで遊べます。ストーリーは6章構成で、章タイトルは以下のとおり』

 

●2章:戦争への序曲

●3章:家々が燃えるとき

●4章:戦の影

●5章:北の荒れ地

●6章:失われた名の都市

●7章:カラマン攻囲戦

 

NOVA『なお、1章はキャラクター作成のページということですね。新データとしては、ケンダーという種族、上位魔法の塔の魔道士&ソラムニア騎士の背景データおよび各背景の専用特技、そしてソーサラーのサブクラス「月の魔術」です。それ以外は、PHBおよび各サプリメントの種族や職業クラスをクリン(ドラゴンランスの背景世界)に適応させるための簡単なガイドですね』

ヒノキ「ケンダーは、ドラゴンランス世界のハーフリングじゃな。ハーフリングとは何が違うんじゃ?」

NOVA『世界設定的には、ノームがレオルクス神の制御しきれない魔法の影響で、突然変異してできた副産物らしいですけどね。ハーフリングやノームが移動速度25フィートなのに対し、ケンダーは移動速度30フィートで、小型種族なのに人間と同じ速さで歩けるメリットがあります。マップを使ったバトルでは、5マス移動できるのと6マス移動できるのでは、わずか1マスとは言え、相応の差がありますからね』

ヒノキ「つまり、ケンダーはハーフリング以上に素早い、と?」

NOVA『ハーフリングは、スピード特化の種族ではなくて、隠密性特化の種族と言えますね。一方、ケンダーは盗賊系の技能を1つ先天的に習熟しているほか、「怖いもの知らず」と「挑発」の2種類の特長を持っていて、前者では恐怖判定に有利がつくのと、判定に失敗しても一日一回、自動的に成功できますね』

ヒノキ「ハーフリングにも、恐怖判定に有利がつく『ハーフリングの勇気』という特長があるが、ケンダーはそれ以上に恐怖知らずだと。そして、ハーフリングにない特長が『挑発』か」

NOVA『攻撃を自分に引き寄せることができますね。もしも、ケンダーで重装甲の壁役キャラになれば、囮として抜群の性能を発揮します』

ヒノキ「いやいや、ケンダーと言えば、盗賊系の種族ではないか?」

NOVA『別にそうとも限りませんよ。旧世紀のアドバンストD&D時代ならともかく、5版だとルール上は、ケンダーがファイターやパラディンになってはいけないという制限はありません。まあ、ケンダーがソラムニア騎士になったり、上位魔法の塔の魔道士になるような背景を習得することも可能ですが……俺がDMだったら、あまり認めたくはないですね。ルールでは良くても、世界観的にどうよ、と思ったりはする』

ヒノキ「ケンダーと騎士道や魔術はそぐわないということか?」

NOVA『今回のサプリで、紹介されているケンダーのNPCドルイドですね。まあ、アドバンストD&D時代は、ハーフリングがなれる職業がクレリック、ファイター、シーフ、マルチクラスのファイター/シーフだけで、ノームはそれに加えてイリュージョニストぐらいでしたが、今のD&Dにそうした種族差別はありません』

ヒノキ「種族による差異は、レイシズムによる差別意識の発露だ、とポリコレが侵食しているようじゃからの」

NOVA『多様性って、別にみんな同じってわけではないのですけどね。ドラゴンランスの世界では、ソラムニア騎士も、上位魔法の塔も、組織としては思いきり差別意識を持っているエリート集団ですし、そもそも小説の主人公の一人であるハーフエルフのタニスも、人間とエルフの種の違いという差別感覚の中で悩んでいたという物語性もあります。

『小説ドラゴンランスという作品のテーマが、身分とか血筋などの差別意識が根強い世界観で、それでも戦争という危機に直面して、種族や文化の違いを乗り越えて結束することの大切さや、まことの神々への信仰の回復とその前段階の不信や迫害、そして魔術師のレイストリンに象徴される「弱い者が力を求める強烈な渇望心と、イジめられている者へのいたわり」などですからね。まあ、力を求めすぎて堕落したり、破滅したりするエピソードも多く、節制と自己犠牲の姿に見られる英雄性とか、いろいろと深い物語を見せてくれましたが、80年代のファンタジー物語テーマが今の時代にどう受け入れられるかは、俺みたいな懐古者には想像し難いかも』

ヒノキ「ソラムニア騎士や、上位魔法の塔の伝統的差別意識をルール面で設定するわけにはいかないという現状もあるのじゃろうな」

NOVA『騎士になりたいケンダーや、上位魔法の塔に受け入れられたい魔法の才あるケンダーというキャラもできなくはないってことですね。まあ、それが受け入れられるまでの道のりは、それだけでドラマのネタにはなりそうだ』

ヒノキ「異種族が、硬直した人間社会に受け入れられるまでのドラマは、しばしばファンタジー小説が描いてきた話じゃからのう」

NOVA『まあ、現実で差別をなくそうって運動は分かる。だからと言って、過敏になりすぎて「差別を描いた物語を全て消し去ろう」と文化根絶に走るのは間違っていると考えます。物語テーマを理解せずに、勢い余って「差別を描きながら、それに迫害される主人公たちが差別反対の考えで、人種の調和を目指す物語」まで、差別を描いているからという理由で、いっしょに根絶しようとしますから。

『アンチテーゼを描くには、まずはきちんと批判されるべきテーゼを描くことが必要で、その土台部分を見誤って短絡的な嫌悪感を根拠に自分たちが崩してしまえば、自分たちが行き過ぎた正義の名の下に多様性を破壊していく害悪になってしまうことに、気づいて欲しいわけですが、そういう自己認識とか内省ができない輩が総じて自分の偏狭な正義に酔い痴れることになりがちで』

ヒノキ「尊大な正義に酔い痴れることの危険性を、ドラゴンランスは80年代から描いてきたのじゃな」

NOVA『で、そういう差別意識をどう改善していくのか、というかつての小説テーマを、今回のドラゴンランスのシナリオはどう向き合っているか、なども確認したいわけですな』

 

新旧の地図などの比較

 

NOVA『で、今回のサプリを買って、一番おおってなったのは、ドラゴンランスの世界クリンのアンサロン大陸のマップです。これだけでもお宝だ』

NOVA『今回の冒険の舞台は、アンサロン大陸北方のソラムニアの東にあるカラマン市と、その北方荒野です。小説ではあまり馴染みのない地域ですが、暗黒の女王タキシスのドラゴン軍が攻めてくる最前線になりますね。もう少し地図を広げると、こうなります』

NOVA『有名なソラムニアの大都市パランサスなんかが左上にあって、そこから東に位置するのがカラマンだと分かります。地名で面白いのは、パランサスの北西の半島に『タニス』という地名が書かれているんですね。ええと、これは小説の主人公の名前に由来するファンサービスなのか、昔からあった由緒ある地名なのかよく分かりませんが、前にカラマン市を「キャラモン」と誤認していたこともあって、迂闊なことは言えないな、と。でも、個人的に符合を見つけたことが面白い』

ヒノキ「小説の舞台は当初、南のアバナシニア地方じゃったな」

NOVA『そこを拡大しましょう』

NOVA『ソレースとか、闇の森、黒竜キサンスの潜むザク・ツァロス、そしてエルフの森クォリネスティや、ドラゴン卿ヴェルミナァルドの支配する城砦パックス・タルカスなど、最初の小説の舞台がいろいろとあって懐かしい』

ドラゴンランス戦記 (1) (富士見文庫―富士見ドラゴンノベルズ)

ドラゴンランス戦記 (2) (富士見文庫―富士見ドラゴンノベルズ)

ヒノキ「その後、タニス一行は、ドワーフの王国トルバルディンを抜けて、麗しの都タルシスに至って、パーティーが離散するのじゃったな」

NOVA『ええ。かたや南の氷壁で白竜と戦い、かたや東のシルヴァネスティで緑竜と戦い……地図で見ると、すごい距離を移動していますな。これまでは小説に付属の小さな地図しか見ていませんでしたが、広げると縦60cmほど、横1mほどのアンサロン大陸の大型マップだけで、本サプリを買った充実感は大きいですね。本当に地図を見ているだけで世界の広がりや昔読んだ小説の物語が浮かび上がってワクワクものです』

ヒノキ「地図だけで、それほど幸せな気分になれるのか」

NOVA『いやあ、異世界の地図を見ているだけで、いろいろな冒険物語が浮かび上がって来ますからね。世界を探検してる気分になれるってものです。近年、レイストリン戦記でドラゴンランス小説もいろいろ楽しんでいますが、あれは地図が付属していないのが残念です。地名なんかは昔の記憶でイメージしていましたが、改めて全体マップを見て、勘違いしていたことに一つ気づきました』

ヒノキ「何じゃ?」

NOVA『戦記のラスボスとも言うべきアリアカス卿が拠点にしている都市ネラーカの位置です。てっきり、大陸東方の〈イスタルの鮮血海〉の沿岸のどこかにあると誤認していたんですよ。しかし、実は大陸中央部のカルキスト山脈の中だった。ええと、小説で地名だけは記憶にあったのですが、全体マップでの位置関係が正確には分かっていなかったんです。うむ、やはり物語を深く味わうには、地図が大事だと再認識しました。もっと地図職人には敬意を払いましょう』

ヒノキ「宝の地図ならぬ地図そのものがお宝って感覚じゃのう」

NOVA『それで、これがまた俺の手持ちのお宝地図の一つですがね』

ヒノキ「これは……英語版の地図じゃのう」

NOVA『俺が唯一90年に購入した英語版ドラゴンランス・シナリオ集に付属してる地図です。最初のシナリオ1〜4を1冊にまとめたお宝ですがね』

 

昔のドラゴンランスのシナリオ話

 

NOVA『ドラゴンランスは、世界最初の本格的なTRPGリプレイ長編小説ってことで記念碑的な作品ですが』

ヒノキ「それを目標に、ロードスの展開も為されたのじゃったな」

NOVA『ええ。ドラゴンランスを目標にシリーズ展開したのがロードスで、フォーゴトン・レルムを目標にシリーズ展開したのが旧ソード・ワールド……と理解しています。当時はインターネットもなく、海外のエンタメ情報をいち早くキャッチして日本に紹介することがステータスだった時代。今みたいにAmazonもないので、海外の商品を国内で入手するのも手間どったわけで、情報や物流に大きな差があったのが昭和と申しておきましょう』

ヒノキ「アメリカでヒットした映画が国内で上映されるのに、2年近いタイムラグがあったほどじゃしのう」

NOVA『要は、昔は手に入れるのに、手間暇かけたものが今では比較的容易に手に入る時代になった。そこで先人の苦労を若者たちが過小評価しがちという傾向もあるわけですな。先人が苦労して道を切り開いた結果としての今の世の常識を、当然の物として享受している今の人間が昔の業績へのリスペクトを持たないという風潮は浅はかに感じるわけで』

ヒノキ「だからと言って、昔の業績にあぐらをかいて、若者の可能性を潰すような老害は忌むべきものと考えるがのう」

NOVA『思い出話を楽しく語ることまで、老害呼ばわりされるのはイヤですが、先人が築いた業績をリスペクトして、それを発展継承したり、新たな風を注入したりして、古いものを排除するのではなく、伝統の土台の上に何かを築き上げるような思考こそ文化人たる者の姿勢だと考えますね』

ヒノキ「不寛容で否定しかしない文化人こそは、老害と言えようか。まあ、文化継承とは言え、継承すべき文化の良さ、面白さ、楽しさを先人が伝え遺してこそ、華となるものじゃが」

NOVA『そのための資料ですな。例えば、昔のドラゴンランスのキャラクターデータとか』

ヒノキ「ほう。タニスやフリントよりも、キャラモンやスタームの方がレベルが高いというのが意外じゃな」

NOVA『小説だと、熟練戦士のタニスやフリントが、少年時代のキャラモンやスタームに武芸を訓練したことになってますからね。そして、レイストリンのCON(耐久力)が10で、意外と人並みというか、小説を読んでいると絶対に8以下でペナルティーを受けてそうな描写なのに』

ヒノキ「HPはメンバー中、最低の8しかないがのう」

NOVA『わずか3レベルの魔法使いだから仕方ないです。でも、双子であるはずなのに、レベル6戦士のキャラモンのHP51との格差が酷すぎる。同じ経験点をもらっているなら、レイストだってレベル5の魔法使いにも成長して、普通にファイアボールを撃てるはずなのに』

ヒノキ「小説を再現するなら、レイストリンだけレベルが低いことで、その軟弱さを再現したって感じじゃのう」

NOVA『今のルールだったら、そこまで酷い不公平な扱いはされていないと思いますが、今回の5版サプリでは、小説のランスの英雄については、ほぼ全く触れられていないのが残念ですね』

ヒノキ「小説キャラの使用権を作者から得ていないと見えるのう」

NOVA『一応、敵キャラのアリアカス、ヴァルミナァルド、キティアラ、そして白竜卿のフェアル=サスの名前は挙がっているんですね。データは載っていませんが。データがあるのは、サプリ表紙に映っている死の騎士(デスナイト)のソス卿ですが、HP228で脅威度19なので、勝てないです。ラスボスとして設定されているキャラでさえ、脅威度11とかなんで』

ヒノキ「レベル10ぐらいでシナリオクリアなら、そんなところじゃろう」

NOVA『ソス卿には絶対に勝てないので、まともに戦わずに、イベントで退場させるようになっているみたいですね。小説で登場するキャラは簡単に倒させるわけにはいかないでしょうし。そして、ラストはカラマン攻囲戦で何とか街を守りきったら、キティアラと思しきドラゴン卿から祝福の手紙が届いて、シナリオは終了です』

ヒノキ「キティアラからの手紙じゃと?」

NOVA『カラマンを守った英雄に敬意を表する手紙ですね。もしも、お前たちが私の部下なら、大いに重用し、活躍させるのだが……と持ち上げつつ、いずれカラマンは暗黒の女王の手に落ちるだろう。その時には、戦場であい見えるかもしれないが、カラマンが廃墟になっていなければいいな……と脅迫混じりで』

ヒノキ「そうか。キティアラからの称賛と挑戦状が、シナリオクリアのご褒美か」

NOVA『で、DMがこの手紙を伏線として活用し、物語の続きを自作してもいいそうです。小説の展開につながるようにするなら、カラマンから脱出してパランサスまで行くか、あるいはレジスタンスとして現地に残って戦い続けるかは、卓次第でしょうが、何にせよ、キティアラのデータは載ってないので、自作しないといけませんね』

ヒノキ「旧サプリでも載ってないのか?」

NOVA『最初の戦記サプリは全部で16冊あって、そのうちの1〜4までが俺の手持ち分。DL5が世界設定資料で、これだけでも翻訳予定があったのですが、結局、発売されず。で、キティアラ(青の女卿)が出て来るのは、6以降ですからね。まあ、英語版で全部まとまったセットが今だと通販で買えるみたいですが』

NOVA『……って69ドル? 意外と安い? ええと、今回の5版サプリは英語で買うと23ドルだから、その3倍程度で買えるのか。ちょっと自分がお宝だと思っていた昔のサプリが、海外通販だと思ったより安く買えることに今ごろ気づいて、若干動揺してる』

ヒノキ「何でも鑑定団に出したお宝が、意外な安値で評価されて、がっかりな心境みたいじゃのう」

NOVA『まあ、昔の英語サプリが意外と安値で買える実情に井の中の蛙になったような気分ですが、今はさておき、目の前のお宝だと思っていた資料をネタに話を続けますよ。追加キャラのデータです』

ヒノキ「兄のギルサナスよりも優秀な能力値の妹ローラナじゃな」

NOVA『後に「黄金の将軍」と称されるだけの潜在力は持ってそうですね。しかし、もっと面白いのはティカの武器であるフライパン。何とD8ダメージで、ロングソード並みの攻撃力を持っています。ロード・オブ・ザ・リングのサムワイズといい、海外ではフライパンを武器に戦う料理人キャラが定番なのかな。原作では、ティカは剣の扱いが上手くなくて、代わりにシールドを給仕用のトレー代わりにして相手の頭を殴る戦法を得意としていましたが、ゲーム内データでもフライパンを武器にしているとは、凄いネタキャラです』

ヒノキ「5版のPHBでも、キャラの個性付けの例として、他のキャラを差し置いて登場しているほどじゃからのう。海外でのファンは結構いるのじゃろうか」

NOVA『続編の「ドラゴンランス伝説」の主人公の1人に昇格したキャラモンにとって、メインヒロインですからね。ゴブスレさんにとっての牛飼娘ぐらいの立ち位置かな、と』

ヒノキ「タニスに憧れる少女ローラナといい、キャラモンに憧れる少女ティカといい、ドラゴンランスは男に惚れた少女ヒロインがそのまま付いて行って、過酷な戦場に直面して成長する物語でもあるのう」

NOVA『それに対して、野心家のキティアラは対極的なヴィラネスと言おうか、男を踏み台にして、自分が力を握りたいという、ある意味、富野チックな情念むき出しのところがあって、まあ、峰不二子の方向性かな、とも』

NOVA『そして敵キャラのドラゴン卿、ヴェルミナァルドと、副官のホブゴブリン、ヒューマスター・トードのデータです』

ヒノキ「レベル8クレリックで、WIS16は分かるが、意外とSTRは14しかないのじゃな。イラストではマッチョ体型で、屈強の戦士風なのに、ティカ並みとは」

NOVA『ティカの筋力が凄いのか、ヴェルミナァルドが意外と武闘派ではなかったのか。それよりも彼の凄いのは、カリスマ18ってところですよ。メインヒロインに昇格したローラナでもカリスマ16だし、最初のヒロインである女神ミシャカルの聖女ゴールドムーンでさえ、カリスマ17ですから、ヴェルミナァルドのカリスマすげえ。もしかすると、あの兜を外すと、中から超絶美形のイケメンが登場するとか? ゴブスレさん並みに、兜を外したヴェルミナァルドの姿が見てみたい』

ヒノキ「小説では、威厳はあるものの粗暴なだけの武闘派司令官って感じじゃったのう。イメージとしては、ダース・ヴェーダーをも想起されるが、パックス・タルカスであっさり倒された」

NOVA『元のシナリオでは、パックス・タルカスでは死なないんですよ。赤竜エンバーに乗って囚人奴隷を逃がそうとしている主人公たちを追い詰めようとして、小説同様、「お前たちの家族は皆殺しだ。子どもも全てな」とゴブスレさんみたいなことを言ったら、ボケた母竜フレイムストライク(マータフルール)が子どもたちを守ろうとするべく襲来し、二頭のドラゴンの激しい戦いの最中に、ヴェルミナァルドは一時行方不明になります。主人公たちは指導者のエリスタンらと協力して、800人の避難民を引き連れて、ドラゴン卿が態勢を立て直す前に脱出して南に向かう、と』

ヒノキ「小説では、マータフルールがエンバーと相討ちになったが、シナリオではどうなった?」

NOVA『後でまた、ヴェルミナァルドとエンバーは出て来ますので、小説と違って可哀想な母竜が敗北して殺されたと思われます。その後、避難民たちが追っ手から逃れるために、古の魔法使いフィスタンダンティラスが構築した遺跡スカルキャップを探索することになり(シナリオ3)、その後、ドワーフの地下王国トルバルディンでのイベントや冒険の末に、ドラゴンランスを鍛えた伝説の〈カーラスの鎚〉をゲットした後で、ヴェルミナァルドとの決着に至るわけですな(シナリオ4)』

ヒノキ「つまり、小説ではシナリオ3とシナリオ4を割愛して、ヴェルミナァルドとの決着までをシナリオ2に詰め込んだわけじゃな」

NOVA『おかげで、ヴェルミナァルドの強大さが欠落してしまった感じですな。彼には邪神のクレリックらしく神秘の力で、避難民一行のリーダーとなったエリスタン(善神パラダインの神官)と夢の世界で対決するイベントもあったりしたのですが、そういったライバル神官対決イベントが削られたせいで、ヴェルミナァルドだけでなくエリスタンの尊厳まで小説では失われたというか』

ヒノキ「まあ、エリスタンはクソ真面目すぎて、作者に書いていて面白くないと言わしめたキャラじゃからのう」

NOVA『小説では、ローラナとエリスタンが仲良くなって、タニスが嫉妬するという展開もありましたが、さておき。このトルバルディンのシナリオは後に、改めて小説化されたりもしました』

 

マジックアイテムの話

 

NOVA『さて、にわかにヴェルミナァルド推しになっている当記事ですが、彼の武器ナイトブリンガー(メイス+2)の特殊能力がまた強いんですな』

ヒノキ「確か、ミッドナイトとコマンドワードを唱えると、殴った相手が失明するのじゃったな」

NOVA『対呪文ST判定に失敗すると、2D6ターンの間、盲目効果でACに+4のペナルティーを被ります。さらに、盾やDEXボーナスも加えられなくて、防御力がガタ落ちですね』

ヒノキ「攻撃性能はどうなるのじゃ?」

NOVA『今のルールだと、盲目状態の攻撃は不利を被りますが、当時のAD&Dのルールだと、命中判定もマイナス4のペナルティーでしょうね』

ヒノキ「実質的に戦力外通知みたいなものか」

NOVA『まあ、マジックアイテムの〈青水晶の杖〉に、キュア・ブラインドネス(失明治癒)の効果もありますから、立て直しは可能でしょうけどね。で、そんな強力武器のナイトブリンガーですが、プレイヤーキャラに奪われても使えないような保険が付いてあります。さすがはゴブスレさん』

ヒノキ「いや、ヴェルミナァルドはゴブスレさんじゃないじゃろう?」

NOVA『それはともかく、ナイトブリンガーは邪悪な武器なので、善良な性格の者が使うと、マイナス2ペナルティーの対呪文ST判定で成功しないと永久に失明するそうで、味方は誰も使えないという』

ヒノキ「全員がグッドな性格なのか?」

NOVA『まあ、レイストリンはニュートラル(中立)ですが、彼は魔法使いだからメイスは装備できません。他には……ん? タッスルホッフも中立? だったら、ナイトブリンガーはタッスルが使うといいのかも?』

ヒノキ「いや、小説だとヴェルミナァルドの武器は回収されなかったじゃろう?」

NOVA『でも、ゲームのルールだと、タッスルホッフが失明効果のあるメイス+2を使うと、味方の援護として結構、有効なのでは?』

ヒノキ「そういう卓もあったかもしれんが、他のマジックアイテムの話をせんか?」

NOVA『では、こちらのページを』

ヒノキ「おお。これが伝説の〈青水晶の杖〉、そしてレイストリンの〈マギウスの杖〉やら、竜殺しの剣ワームスレイヤーか。小説でもお馴染みのアイテム群じゃのう」

NOVA『ドラゴンランスのシナリオは、最初がプリーストの信仰呪文の使えない世界観なんですね。廃都ザク・ツァロスで〈ミシャカルの円盤〉を入手するまでは回復呪文が使えないというハンデ付き。しかし、その苦境を克服するためにゴールドムーンに与えられたのが、〈青水晶の杖〉ということになります』

ヒノキ「小説では凄い性能じゃったのう」

NOVA『ローフルグッド(秩序にして善良)のキャラじゃないと使えなくて、ゴールドムーンの父親の族長が使えなかったのも、その辺が原因かと。味方ではゴールドムーンの他に、リヴァーウィンド、キャラモン、スタームが使えますが、それ以外のキャラが使おうとすると、4D6の電撃ダメージを受けるという危険アイテムだったり』

ヒノキ「タニスでもダメなのか?」

NOVA『彼はニュートラルグッドですからね。ともかく、小説でもお馴染みの癒しの効果や死人の復活、テレポート能力やドラゴンブレスを防ぐ保護能力とか凄いです。最初のシナリオは〈青水晶の杖〉のおかげで余裕モード……でもないのか。20チャージ分しか使えなくて、しかも1日に1チャージしか回復しないから、使いたい放題ってわけではない。しかも……シナリオ1で〈ミシャカルの円盤〉を入手した後は、お役目終了でザク・ツァロスのミシャカル神像に返還されてしまうから、シナリオ2以降は持って行けない、と。前述のナイトブリンガー対策にはならない、と』

ヒノキ「分かっておらんかったのか?」

NOVA『〈青水晶の杖〉が回収されるなんて記述は読み落としていましたよ。確か、小説だと黒竜キサンスを倒すために、ゴールドムーンが自己犠牲的に杖を砕いて、自爆するような話だったわけで』

ヒノキ「それで、タニスが犠牲を強いるような神に憤りを示すんじゃったな」

NOVA『でも、女神の奇跡でゴールドムーンは生還。タニスは神々に謝罪するけど、それでも信仰心に懐疑的な性格は直らず、割とフラついているのがニュートラルっぽさと言うか』

ヒノキ「皆がみな、善神に帰依するわけでなく、懐疑的に味方うちでも議論を繰り返しては、なかなかまとまらず、そのうちパーティーがバラバラに離散するのが、ドラゴンランスの面白さじゃったな」

NOVA『ゲームだと、そこまでバラバラのパーティーでどうプレイしていたんだろうって気になりますね。アメリカに、日本のロードスみたいなリプレイ文化が定着しなかったのが残念です』

ヒノキ「アメリカ人のTRPGプレイスタイルが日本に伝わるようになったのは、間接的な伝聞を除けば、インターネットの発達で動画リプレイ文化が定着してからの話らしいからのう」

NOVA『それはともかく、〈ミシャカルの円盤〉を入手後は、ゴールドムーンも自前でクレリックの癒しの呪文が使えるようになりますから、ヴェルミナァルド戦でもキュア・ブラインドネスを覚えていれば何とかなるかもしれません。いや、実プレイしてないから想像の範囲ですけど』

 

ヒノキ「で、〈カーラスの鎚〉じゃな」

NOVA『これも能力がいっぱいで凄いアイテムなんだけど、わざわざ『ヒーロー(プレイヤーキャラ)の手では起動できません!』って書いてあるんですね。トルバルディンのドワーフ王の血族でしか扱えないので、主人公たちは〈カーラスの鎚〉の入手と引き換えに、避難民をドワーフ王国に受け入れさせることに成功するわけです』

 

ヒノキ「やはり、プレイヤー用の強力なマジックアイテムは〈マギウスの杖〉と、ワームスレイヤーかのう?」

NOVA『〈マギウスの杖〉は、「ACとST判定が3良くなるプロテクション・リング+3の効果」「+2効果の魔法の武器(ダメージD8+2)」「1日1回、フェザー・フォールとコンティニュアル・ライトの呪文効果を発動可能」という基本効果に加え、6レベル以上の魔法使いの手にあると、使用する呪文の効果が高まる追加能力がある、と』

ヒノキ「使い手の成長に応じて、杖の機能も高まるのが素晴らしいのう」

NOVA『レイストリンが大事にするのも分かりますな。一方で、ワームスレイヤーはあまり美味しくないですね』

ヒノキ「どうしてじゃ? 対ドラゴンで力を発揮するのではないか?」

NOVA『両手剣+1ですが、タニスはロングソード+2を最初から持っているので、微妙に弱いんですね。まあ、対ドラコニアンやドラゴン限定で2倍ダメージというのは強力です。また対ドラゴンブレスSTや、ドラゴンおよびドラコニアンの使う呪文に対するSTが+3ボーナスというのも強力。つまり、まともにドラゴンやドラコニアンと戦う戦場だと大活躍まちがいなしの強力武器です。問題はその副作用』

ヒノキ「副作用?」

NOVA『ドラゴンが近くにいると、ブンブン音が鳴って、うるさいんですね。隠密行動が全くできない。だから小説では、タニスの剣であったにも関わらず、タキシスの街がドラゴン軍に襲撃されて一行が離散した際に、タニスではなく、ローラナが持って行くことになった。じっさい、小説ではタニスたちの道中ではドラゴン軍に支配された大陸東部の旅が多く、隠密行動が中心の物語になり、ローラナたちは南の氷壁から北のソラムニアに向かって、ドラゴン軍との激戦を経験することになる(その結果、スタームが討ち死にすることに)』

ヒノキ「つまり、ローラナたちの物語の方に、ワームスレイヤーが必要になったということじゃな」

NOVA『たぶん、ゲームでは小説よりも役に立ったと思うんですね。でも、小説では、いまいち活躍する印象がないなあ、ワームスレイヤー』

ヒノキ「それを言うなら、タイトルのドラゴンランスすら、小説ではあまり役立ったイメージがないのう」

NOVA『まあ、初期のドラゴンランスはゲームシナリオを元に展開された小説でしたが、物語が進むにつれてゲームとは異なるドラマ性重視のストーリーに展開して行ったってことですね。そして、ドラゴンランスというマジックアイテムの力よりも、人間たちのドラマで戦況が動くようなクライマックスを迎える、と』

ヒノキ「その先が、もはやゲームシナリオとは関係ない続編の『ドラゴンランス伝説』じゃの」

NOVA『ということで、今回の記事はこれで終了ですが、続いて新サプリのストーリーについて、もう少し掘り下げてみたいと思います』

(当記事 完)