花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

魔神ハンター、深層階踏破(SWミストグレイヴ6ー10)

未踏破区画を埋める道

 

GM(リナT)『じゃ、前回、烈火団の皆さんは【灼熱の鍛錬場】の心技体の3つの試練を切り抜けて、それなりに強くなった気がいたしますですの』

G太郎(ゲンブ)「ミッションを果たしたので、成長タイムでござるな」

GM『いいえ。今回は経験点が1000と少しだけですので、成長してもあまり面白くないと考えて、先送りということにさせてもらいますですの』

G太郎「う〜ん、セージ技能を9レベルに上げて、MP消費を減らせる特技《マナセーブ》を習得できるはずだったのでござるが」

GM『成長記事は、6部の最後に行う予定ですの。6部はイノセント覚醒ミッションがクリアしたタイミングで終了。その後、魔神ハンターは最終部の「魔神ハンターFINAL」に至って、完結することが今回、決まりました』

ホリー(シロ)「6部で終わる予定じゃなかったのか?」

GM『今のストーリーできれいに終わらせることは無理、ということで、最終部FINALは翠将ヤーハッカゼッシュのいる【瑠璃宮】にて、烈火団と翠将の対峙を描く話になる予定。翠将役として、グランドマスターNOVAがサブマスターを務めることになった次第。わらわめの使命は、6部をつつがなく終わらせて、帰ってきたシスター・アリナにFINALのGM役をお返しすることです』

デル(リトル)「FINALかぁ。去年の夏に『魔神ハンターが6部で終わり』というタイムスケジュールを聞いて、1年近くかけて、ようやくだなぁ」

GM『当初は、2022年の年内終了を意図していましたが、ズルズル遅れて、年度内→GWまで→夏いっぱいという風に予定が先送りになりながら、最後はどういう流れが盛り上がるかなあ、と作者があれこれ考えた末に、「妖精郷が脱出編のEXで終わったように、魔神ハンターも最終章的なタイトルを付けたらいいんじゃね?」と思いついたのであります。

『なお、タイトルについては、FINAL以外にCLIMAXとか、某聖闘士みたいにPrequelにしようかとか検討してみましたが、Prequelは最終章という意味ではなくて、「前日譚」という意味なので、過去の時代に飛んだ話ではない本作では使えないと判明しました。意味を調べないまま、何となくのノリでタイトルを決めていたら、危うく恥をかくところだったとは作者談です』

G太郎「妖精郷EXが書かれたのが2021年の夏。それから2年後に魔神ハンターFINALという予定でござる、と」

GM『じゃ、予定の告知も終わったところで、次の目的地に向かいますの』

●ミストグレイヴ深層階の地図

(青字は拠点および宿泊可能地点。

 緑字は新規に記入、あるいは未探索区画)

 

瑠璃宮ー歯車ー地下庭園

 l  l  l

王女のー暗殺ー不死者ー流血回廊ー月の図書館

鍾乳洞 斡旋所 の城  l   l

      l   l   l   l 

黒炎の工房ー蒸気の谷ー赤瀑布ー巨大ー銀灯の通路

        l    l  格納庫   l

                     l       l   l    l
             ミノタウロス翡翠のール=ロウド漆黒の

      上層階 ←の門  ピラミッド 神殿      スフィア

                 l            l

            溶岩湖の宮殿ーー灼熱の

                 l          鍛錬場

                                      愚か者のー 蔓の

           上層階 ←扉  居住区

G太郎「【灼熱の鍛錬場】の北、【漆黒のスフィア】と【銀灯の通路】を踏破するのが今回の目的でござるな」

GM『ええ。その2ヶ所を通過することで、【瑠璃宮】を除く深層階の全区画を踏破することになります。これはこれで、6部の完結に当たってキリのいいイベントと思われますの』

デル「だったら、北へGOだなぁ」

 

漆黒のスフィア(50日めの昼)

 

 ランダムイベントは出目1により、発生せず。

 一行は苦もなく、【漆黒のスフィア】に到着する。

 

 そこはドーム状の天井を持つ空洞だった。

 空洞には、8本の白い石柱が円形に建ち並び、その上に直径10mあまりの黒い球体が浮かんでいる。地面から螺旋を描いて、石段が球体に向かって伸びている。しかし、それを支える柱や壁はいっさいなく、石段は空中に浮遊している。

 

GM『……というような光景ですの。何かしますか?』

G太郎「情報によると、黒い球体に入る鍵は、〈漆黒のマギスフィア〉でござったな。背負い袋から取り出して、高く掲げてみるでござる」

GM『じゃ、黒い球体の表面の一部が輝きを放ち、内部への扉がスーッと音もなく開きますの。★1つを進呈します』

G太郎「おお、正解でござったか。では、罠に気をつけながら、石段を上って球体内部に入るとしよう」

ホリー「ボクたちも一緒に入れるのか?」

GM『どうぞ、ご自由にですの』

デル「前に訪れた【翡翠のピラミッド】では、人数制限があったんだが、ここでは大丈夫なんだなぁ」

GM『1年前の記事ですね。そちらでは確かに人数制限がありましたが、ここでは問題ありません』

デル「だったら、中に入るさぁ」

GM『じゃ、皆さんが慎重に石段を上って、球体に開いた入り口から中に入ると、そこは魔動機文明風の仕掛けが施された部屋になっていますの。部屋の中央には、円筒形の台座があって、上部に半球形のくぼみがあります。小サイズのマギスフィアをはめ込むのにぴったりの大きさですね』

G太郎「〈漆黒のマギスフィア〉をはめ込んでみるでござる」

GM『じゃ、周囲の壁がモニターのように輝いて、3人の人物の姿が映し出されます。正面には鎧と大楯を身につけた逞しい青年。その左右には2人の女性の姿が』

ホリー「両手に花か」

GM『いいえ。3人は兄妹ですね。青年は初代ジーズドルフ王、堅牢なるゾラエンテス。青年の左、向かって右側にいるのは才知あふれるセランシェ。銀の額冠を身につけ、書物を携えた穏やかな風貌の若い女性ですね。もう片側にいるのは猛々しきスエラ。兄同様に鎧を身にまとって、体よりも大きな大剣を持った小柄な少女です』

G太郎「やはり、4人めのシェラシースはいないのでござるな。シェラシースは王の妹ではなく、魔剣の化身であるという話が裏付けられた形だ、と」

GM『ええ。古代の王と女王は、魔動機文明語で語りますが、機械の機能で神紀文明語と魔法文明語に同時通訳されますの』

デル「それじゃあ、何を言ってるのか、オラにはさっぱりだぁ。交易共通語か、汎用蛮族語じゃないとぉ」

GM『魔動機文明時代には交易共通語なんて存在しませんでしたから。奈良時代の遺跡から、ひらがなやカタカナで書かれた古文書が発見されないのと同じです』

ホリー「だけど、魔動機文明時代にはアニメも作られたそうだから、ラクシアのアニメオタクは魔動機文明語が必須言語なんだな」

GM『魔動機文明時代の映像再生装置は、現在のラクシアでは稀少な歴史遺産なので、アニメオタクになれるのは古代文明の研究家のインテリ層ぐらいだと思われますの。学のない庶民レベルまで映像文化が流行ることはないでしょう』

G太郎「古代魔法文明時代を体験できるサプリはあるでござるが、魔動機文明時代をフィーチャーしたサプリはまだ出ていないでござるなあ」

GM『魔動機文明時代は、人族が蛮族に対して優勢だった時代なので、人族VS蛮族が基本のソード・ワールドでは冒険のネタが少ないのかもしれませんの』

ホリー「もしも、その時代のサプリメントが出たら、ソード・ワールドサイバーパンクとかができるかもしれないなあ。魔法のあるサイバーパンクだと、シャドウランが有名だけど」

 

GM『寄り道はさておきまして、魔動機文明語が分からないデルニールさんも、時々、ジーズドルフとかシェラシースといった固有名詞を聞きとることはできますね。ジーズドルフ三祖の話をざっとまとめますと、以下のとおりです』

 

ジーズドルフは三祖の兄妹王の統治の後、賢明なるシェラシースの指導の元で、民衆の代表が王として治めることを願う。

・民衆から王に選ばれて『王の証』を持つ者が、この『玉家の間』にて証を示すことで、ジーズドルフの防衛装置を動かす権限を与えられる。

・『王の証』に関する詳しい話は、シェラシースが伝え残すであろう。あるいは【月の図書館】の書物に秘すべし。

 

G太郎「その結果として、シェラシースが王に選んだのが、当時のジーズドルフに敵対する蛮族の翠将ヤーハッカゼッシュであるとは、三祖も予想だにしなかったでござろうな」

ホリー「ヤーハッカゼッシュが民衆に選ばれたとは、とても思えないもんな」

G太郎「ただ、翠将も一応のカリスマ持ちなので、それなりに心酔する者もいるでござるな。昔、説得に苦労したが、翠将の奴隷として供物にされることを自ら望む少女などがいてな。幼少期から洗脳教育を受けると、自らの命をかけても為政者や教祖を崇敬することが喜びと考えたりもするでござる」

デル「自己犠牲に値するほどの何か、あるいは誰かを持てることが幸せと考えることは、生き甲斐、または死に甲斐と言えるなぁ。問題は、その対象が命を賭けるに値するものかどうかだけどぉ」

G太郎「そればかりは、個人の価値観、アイデンティティにつながるものゆえ、安易に善悪を決め得るものではござらん。それこそ哲学の部類でござろうが、世俗上の問題としては、異なる価値観の間で、どう折り合いを付けて社交を営むかでござるな」

デル「異なる価値観が折り合えないときに、力押しで正義を決めるのが蛮族流で、力なき者の権利を極力守ろうと調和の理念に基づくのが人族流と考えればいいのかなぁ?」

GM『すると、デルニールさんの疑問に、ゾラエンテスさんの映像が反応します。「弱き者を守るためにも強さは必要だ。調和も法も力なくば守れない。力なき王は害悪なり。同時に優しさを持たぬ王もまた害悪なり。強さと優しさ、そして知恵を備え求めること、それこそが王たる者の責任であろう」と』

G太郎「おお、この映像は質問に答えてくれるのか」

GM『限定的ながら、そのような機能が搭載されているみたいですね。魔動機文明の超AIナビゲーション機能と申しましょうか』

ホリー「それでも、おかしいだろう」

GM『おかしくありませんよ。古代文明ですから、現在のラクシアの常識で考えてはいけません。質問に答える機能を持った映像ぐらい簡単に作れます。そうでないなら、ルーンフォークのような人造人間は作れないはず』

G太郎「うむ、超技術は魔法と同様、不可能を可能にするでござるな」

ホリー「いや、質問に答える機能はあってもいいと思うけど、問題はデルニールの質問ってことだよ。デルは魔動機文明語が話せないんだから、交易共通語で疑問を口にしたんだろう? 魔動機文明のナビが交易共通語に反応できるのか?」

GM『あっ』

ホリー「どうやら図星のようだな。いくら優れた文明でも、未来に使われている言語まで想定してのナビ機能は搭載されていないと考えるのが道理。G太郎やボクが魔動機文明語で質問したならともかく、デルニールの交易共通語に反応したのはGMの裁定ミスということだ」

GM『……どうやら、そのようですね。先程までのやり取りは、記事書き編集の際に削除することをグランドマスターNOVAに要請します。しばし、お待ちください。(作者NOVAに交信してから)ダメでした』

G太郎「ダメとは、どういうことでござるか」

GMGMのプレイ中のミスは、そのまま記事にするのが、リアルな妄想リプレイの執筆方針だそうです』

G太郎「リアルな妄想リプレイというのも奇体な表現でござるな」

GM『ちょっとした用語の取り違えや、数字やその他データのミスなら修正もするだろうが、ストーリーに影響を与えるようなミスは下手になかったことにせず、アドリブなどで上手く取り繕って、そこから生じるストーリー展開のダイナミズムを楽しめるようにするのが、リアルなエンタメというものだ、とのことです』

G太郎「メタ発言はともかく、この後の展開をどうするつもりでござるか?」

GM『どうしましょう? 何ぶん、初心者GMなものでシスター・アリナのGM経験メモリは搭載されていても、こういうミスをした時の対処法がメモリにはありませんですの』

ホリー「アリナ様がしたことのない類のミスってことだな」

GM『こうなったら、死んでお詫びを。ケイP一族の名誉にかけて、自爆機能を発動します』

G太郎「いやいや、そこまでのミスではなかろう。死んでミスを詫びることよりも、生きてミスを償う道を模索することこそがGMの為すべきこと。そもそも、GMに死なれては、プレイが進められん」

ホリー「まあ、プレイヤーが死んでも、プレイは中断してしまうんだけどな。プレイヤーキャラの死はたまによくあることだけど、TRPGのプレイ中にプレイヤーやGMが死んでしまうことは大惨事以外の何者でもない」

GM『ゲームプレイ中に、GMに自分のキャラクターを殺されたプレイヤーA氏が逆上して、その場にあったダイスをGMに投げつけて、クリティカルヒットで頭蓋骨陥没、死に至るまでの事件がTRPG都市伝説で語られているそうですが』

G太郎「それなら聞いたことがある。海でのTRPGプレイ中に突然サメが現れて、プレイヤーの1人がサメに立ち向かい……葬式をする羽目になったとか」

ホリー「マンガのネタじゃないか。その後、『死んだとは一言も書いてないでごわす』と強引に言い張って、次の回であっさり復活して来るし。ギャグ漫画の世界はテキトーなんだから」

GM『じゃ、わらわめもテキトーに処理しますですの。ええと、先ほどのデルニールさんの質問、「王にとっての強さと優しさ、価値観云々の問題」は、それを聞いたG太郎さんが魔動機文明語で通訳してくれたってことで』

G太郎「そういうことなら、こういうセリフを後付けで挿入するでござるよ」

 

『力押しの正義が蛮族流で、調和の理念が人族の理念。その価値観の違いを乗り越えるのは確かに難しいことでござるな、ご主人。王の立場としては何らかの答えを持っていたのであろうか?』

 

GM『その問いかけに、ゾラエンテスの映像が反応して、王に必要な「弱き者を守る力、調和の精神の根底にある優しさ、そして、それらが矛盾した時に両立させるための知恵」の答えを返したのが先ほどの話ですね。プレイヤーさんの協力で、上手く話がつながりました』

デル「さすがは師匠、GMを助けるベテランプレイヤーの風格を見せてもらったぜぇ」

ホリー「GMの裁定やミスにツッコミを入れるだけなら、プレイヤーの腕はまだまだってことだな。ツッコミを入れた後、そこからの話をどうまとめるフォローにつなげるかまでが、ベテランプレイヤーの資質ってことか」

G太郎「まあ、ツッコミが場の話を盛り上げて面白くさせるなら芸道と言えるが、単に相手のミスを詰って、攻撃的な態度でギスギスさせるだけなのは芸とも言えん。芸なら、上手い話の落とし所まで想定するなり、問題提起だけでなく、上手く話をまとめるなりしなければ、エンタメたり得ないと」

 

GM『じゃ、話が何だかグダグダになりましたので、仕切り直しにいたしますの』

 

王の証とは?

 

G太郎「この【漆黒のスフィア】は別名『王家の間』と呼ばれ、ジーズドルフの王の後継者を導く場所ということでござるな。そして、『王の証』なるアイテムがどこかにある、と。今の言葉を魔動機文明語にして、王たちの映像に確認のため問いかけるでござる」

 

ゾラエンテス『前者については、確かにその通りだ。こここそが王家の間。キーアイテムである〈漆黒のマギスフィア〉を持つ後継者候補を導くための場所である』

 

G太郎「ジーズドルフ王の後継者でござるか。今、この地を統べる翠将ヤーハッカゼッシュもここに来たことがある、と?」

セランシェ『その名は、ここに記録されておりません。民衆から選ばれた正式な歴代王の名は1122代まで記録されております。もしも、貴方が選ばれたなら、1123代めとなることでしょう』

ホリー「ヤーハッカゼッシュは、正式な王ではない、と?」

セランシェ『ジーズドルフ王になるには、シェラシースの認可、民衆を守護する誓い、そして「王の証」を見出すほどの知恵が必要となるでしょう』

デル「シェラシースの認可だけではダメなんだなぁ。あのヤーハッカゼッシュが民衆を守る誓いを立てたとは思えないしぃ」

G太郎「力と優しさ、そして知恵こそが王の条件なのでござるな」

ゾラエンテス『1人でそれらを全て兼ね備えることは難しい。我も力には自信があるが、優しさはともかく、知恵となるとなあ』

スエラ『知恵はセランシェお姉さまが、ゾラ兄さまを助けることで補っている』

セランシェ『そして、優しさはあなたがね、スエラ』

スエラ『あたし、優しくなんてないよ。優しさなら、みんなの盾となって守ってくれるゾラ兄さまの方が』

ゾラエンテス『我はただ好きに暴れているだけだ。ただ、妹2人や仲間、大切なものを守りたい気持ちを優しさと呼べるなら、そうかもしれんが……。しかし、スエラの優しさがあればこそ、竜姫のナーデージュが我らに力を貸してくれた。我1人では、竜族の助けは得られなかったろう』

G太郎「ずいぶんと饒舌な映像でござるなあ」

GM『魔動機文明の超技術の賜物ですの。三祖の性格を模した擬似AIによるCGアニメと考えていただければ。ただし、どんな質問にも答えてくれるわけではなくて、あくまで「王と統治の手法に関する質問」のみ受け付けます。ですから、「セランシェやスエラさんのスリーサイズは?」などという愚かな質問には答えないです』

ホリー「ヘイ、スエラ。あなたのスリーサイズは?」

GM『「そのような発言にはお答えしません」と機械的な反応が返ってきます』

ホリー「つまらないなあ。ここは赤面して、『バ、バカ。こんなところで、そんなふざけた質問をするなよ。時と場所をわきまえろよ、このスケベ』と罵倒して欲しかった」

GM『スリーサイズは王の統治には関係ありませんので。胸が大きかろうが、小さかろうが、それぞれの属性に応じたファンは付くでしょうし、それよりも大切なのは外見よりも能力と精神性ですから。ジーズドルフの王は、外見だけのお飾りでは務まりませんゆえ』

 

G太郎「余談はさておき、『王の証』なるものがどこにあるか、手がかりをくれないでござるか?」

GM「そは形ある物品ではあらず」とゾラエンテスさんは言います。「ただ、心の中にある誓いを体現した数、情報、キーワードの類なり」と』

ホリー「なるほど、パスワードか何かなんだな」

GM『ゲーム的には、暗号の碑文に隠された数字なんですね。その数字に示されたページ数に行けば、ストーリーが先に進むというゲームブック的な仕掛けです。そして、その碑文の在処が問題なのですが、その手がかりは「人の目には触れ得ぬ場所に隠されている。ただ、妖精の友として、彼女たちの光に示された先に進めばよい。されば、妖精の光を求めよ」というヒントをくれます。シナリオには記載されていないスペシャルヒントですの』

デル「妖精の光……って、もしかすると〈セランシェの灯火〉のことかぁ? ええと、G太郎師匠に通訳してもらう」

GM『それを聞いて、当のセランシェさんは、にっこり微笑みますね。そのアイテム名は彼女が付けたものではないのですけど、セランシェさんから預けられた妖精たちが、そう呼称していたようです』

G太郎「〈セランシェの灯火〉は、現在、裏切り者のバルカン族に強奪されたままでござるな。ジーズドルフ王になるミッションでは、それを奪い返す必要がある、と」

ホリー「ジーズドルフ王か。王様戦隊が放送されている現在では、その名に心惹かれるものがあるが、ボクが望むのは女王に仕える騎士であって、自分が王になりたいなんて思ったこともない」

G太郎「私も別に王になりたいとは思わないでござるな。ご主人はどうか?」

デル「オラが王ってかぁ? オラの興味は魔神ハンターとして強くなることで、王になるつもりは毛頭ないさぁ」

G太郎「……と言うことで、我らは別に王の後継者を目指しているわけではないが、強くはなりたいし、ジーズドルフ、いや、今のミストキャッスルおよびミストグレイヴで平和に暮らしている民衆(人蛮問わず)の幸せは守りたいし、そのための知恵は求めたいでござるよ。王たる資格とは関係なく、強さと優しさ、そして知恵を兼ね備えた真の王者の心は大切にしたい、と告げよう」

GM『それを聞いたゾラエンテスさんは、承知したようにうなずきます。「王とはあくまで肩書き、そして人々を導く覚悟と責任を体現した者である。その覚悟と責任をむやみに誰かに背負わせることは酷とも言えよう。ただ、一人一人の民の心の中に、王に匹敵するだけの強さや優しさ、知恵を目指す気持ちが宿って欲しいとは考えていた。王は一人の力で立つ者ではなく、民衆の心の結晶こそが王の力の源であれば。後世に生きる者たちよ、ジーズドルフの未来を頼む」 その言葉とともに映像がひとまず終了します』

G太郎「『不倶戴天の仲なれど、民のために今、交わらん』と王様戦隊結成の儀が、ここでも再現できるといいでござるな。あのヤーハッカゼッシュとも」

 

銀灯の通路(50日めの夕方)

 

 次なるランダムイベントダイスは2。

 死神馬車が通りかかったが、利用する必要はなく、【銀灯の通路】に難なく到着した。

 

 そこはアーチ型の天井を持つ通路が続いていた。

 左右の壁には、乳白色の石柱が並び、花の形をしたランプが取り付けられている。ランプには、鈍い銀色の明かりが灯っている。

 

GM『……ということで、ついに深層階最後のランダム区画に到着しました。あとは固定区画の【瑠璃宮】のみですが、これにて深層階の全ての区画踏破を達成ということにします。おめでとうございます』

G太郎「一仕事、成し遂げた気分でござるが、この区画のイベントやいかに?」

GM『通路を進んで行くと、あなた方は不思議なことに気づきます。自分以外の仲間の姿が見えません』

デル「えぇ? 師匠ぉ、ホリー姉さぁん、どこに行ったんだぁ?」

ホリー「イノセントまで消えたりしないよな」

GM『ホリーさんは騎乗しているイノセントさんの姿を見ることはできます。そして、皆さんはお互いの声は聞こえますし、気配も感じます。パーティーがバラバラになったわけではなく、ただ闇の中にいるかのようにお互いの姿だけが見えないですの』

G太郎「声はすれども、姿は見えず、とは正にこのことか」

GM『あなたたちに見えるのは、自分自身と自分に属する騎獣やゴーレム、そして延々と続く通路のみで、それ以外が見えないのです。だから、こっそり忍び寄る魔物の気配も気づかなかったということで、いきなりバトルが発生します。出現したのは……(コロコロ)何だかよく分からないけど、アンデッド2体だということが気配で分かります。気配だけで相手の正体まで探るのは難しいので、盲目ペナルティーのマイナス4で魔物知識判定をしてください』

G太郎「出目10で、達成値17でござる」

GM『じゃ、正体は分かりましたの。レベル9アンデッドのマミー、ミイラ男が2体ですね。墳墓などの遺跡によく出没する敵で、何か重要なものを守っているという知識はありますが、弱点値は抜けませんでした。あと1高ければ、炎+3の弱点ボーナスが付いていたのに』

ホリー「あと1なら、剣の恩寵で2足せば成功だな。G太郎、聞こえているなら、敵の動きを音で見抜くといい」

G太郎「もちろん、そうするでござるよ」

GM『じゃ、ミイラの全身を包む包帯がすれる音が聞こえて、弱点が炎だと分かったことにしましょう』

G太郎「先制判定はどうでござるか? マイナス4のペナルティーなら、剣の恩寵を使うでござるが。盲目状態での長期戦は危険でござるからな」

GM『剣の恩寵を使うなら、ペナルティーは相殺されますが。こちらの先制値は14です』

G太郎「ならば、剣の恩寵は必要ない。ペナルティーがあっても、4以上で成功でござるからな。(コロコロ)出目11で問題なく成功でござった」

ホリー「では、ボクから支援だ。まず、鼓咆でダメージ+1。それから、仲間に【ファイア・ウェポン】で……」

GM『目に見えない相手に接触以外の呪文をかけることはできません』

ホリー「え? 盲目状態ってそうなのか?」

GM『鼓咆は音を伝える効果なので問題ありませんが、仲間への支援魔法は対象が目視されていることが条件です。【ファイア・ウェポン】をかけられるのは、自分かイノセントさんだけですね』

ホリー「くっ。だったら、【ファナティシズム】で命中率を上げることも……」

GM『できませんね。この幻の光による暗闇状態では、「知覚:機械」か「知覚:魔法」を持つ者のみ、通路の真の姿を見通すことができるのです。ぶっちゃけ、〈セランシェの灯火〉がなければ、この通路を抜けることは不可能。来た道を戻るしかありません』

G太郎「『人の目には触れ得ぬ場所』とは、ここのことでござるか。『王の証』は、この奥にある、と?」

GM『すぐには分かりませんが、戦闘後に気づいたことにしましょう。まずは今の戦闘で勝つことです。なお、敵は剣のかけらを持っていませんので、HPは66しかありません。剣のかけら入りなら、111点もあったのですが』

ホリー「『知覚:魔法』かあ。アンデッドとか魔法生物、ゴーレムなんかがそうなんだなあ。つまり、レベル4操霊魔法【ドール・サイト】でシーサーと視覚を共有すれば、この場の幻を攻略できる?」

GM『ええと、それは無理と思いますの。【ドール・サイト】の対象はゴーレムではなくて専用に用意した人形やぬいぐるみですし、人形の視覚は術者のそれと同じで、「知覚:魔法」にはなってません。「知覚:魔法」を容易に習得できる魔法なんてあるのでしょうかね』

ホリー「魔法による仲間の支援はできないので、できることはイノセントの強化だけか」

 

G太郎「ウオーーーーッ!」

 

ホリー「何だ!? どうした、G太郎?」

デル「師匠が発狂したぁ!?」

GM『何事でございますの?』

G太郎「いや、こうして叫び声をあげれば、姿は見えなくても私の位置を嬢ちゃんに伝えられると思ったでござる。それならば、嬢ちゃんが私に直接接触して、【ファイア・ウェポン】の呪文がかけられるはず……では、ござらんか?」

ホリー「ええと……それでいいのでしょうか、GM?」

GM『視認が必要なのは、射程を持つ呪文だけのようなので、射程を持つ呪文を直接接触して使用するような場合は、視認が必要ないものとします。ただし、《魔法拡大/数》を使うことはできないと裁定しますの』

デル「必要ないさぁ。オラも師匠に、対アンデッド用呪文【セイクリッド・ウェポン】を使うからぁ」

G太郎「前に出ないのでござるか?」

デル「殴りたいのはやまやまだけど、敵の姿が見えずにマイナス4のペナルティーを受けたまんまじゃ、攻撃が当たらないだろうしぃ」

G太郎「しかし、ご主人は盲目ペナルティーを半減(マイナス2)にする〈蝙蝠の耳飾り〉を装備していたはず」

デル「念のため、確認するけどぉ、ミイラの回避はいくらだぁ?」

GM『18ですねぇ』

デル「オラの命中基本値は11だからぁ、素でも8以上出さないと当たらねぇ。だったら、師匠を徹底して強化する方が確実さぁ」

ホリー「だったら、イノセントの攻撃も当てられそうにないな。くっ、こんな時にワイバーンに変身して、火でも吐けるようになっていれば……」

GM『じゃ、前回で覚醒ミッションその1を終えたイノセントさんは、中途半端ながら竜の力に覚醒して、ドラゴオックス状態でも火が吐けるようになった……ということでよろしいでしょうか?』

ホリー「え? そういう裁定でいいのか?」

GM『よその卓ならともかく、シスター・アリナは派手な展開が好みですからね。プレイヤーが提案して面白くなりそうなことでしたら、どんどん認めた方がいいというご意見です。もちろん、無尽蔵に強くし過ぎると、後でゲームバランスをとるのに苦労しそうですが、それで困るのは、わらわめではなくて、シスター・アリナですから』

ホリー「だったら、ボクの行動は叫び声を上げて自己主張したG太郎に接触して、【ファイア・ウェポン】をかける。発動は成功。そして、本邦初公開。イノセントのドラゴンファイヤー!」

GM『こちらの抵抗は19ですのよ』

ホリー「だったら、抵抗は抜けずにダメージ半減だけど……半減ダメージ8点に炎の弱点+3を加えて、11点ずつだな」

GM『いいえ、マミーはさらに炎で3点ダメージを追加で受けるので、14点ずつになりますの。残りHPは52点ずつです』

ホリー「おまけにシーサーの水鉄砲。抵抗は抜けないけど、ダメージの出目が良くて8点だ」

GM『マミーAの残りHPは44点ですの』

デル「だったら、師匠に接触して、神聖魔法【セイクリッド・ウェポン】だぁ。蛮族とアンデッドに特効のこの呪文を使えることで、グレンダール様が第一の剣ルミエル陣営に属することが証明できるってもんさぁ」

GM『今まで、この呪文を使って来なかったのは、蛮族の見ている前でセイクリッド系の呪文を使うと、人族であることがバレて命の危険にさらされるからですね』

デル「その通りさぁ。だけど、ここだと見ている蛮族はいないしぃ、そもそも銀灯の幻の影響でオラを見ることさえできねぇ。さあ、師匠、命中+1、ダメージ+2の聖なる力で悪いアンデッドなんて蹴りつぶせぇ」

ホリー「ボクの【ファイア・ウェポン】の炎も乗って、さらにダメージ+2だからな」

GM『弱点効果で+3。あっ、G太郎さんは戦闘特技《弱点看破》の効果で、弱点に倍の修正が加わるのですね。それで+6に加えて、マミーの特殊能力「炎の弱い」で+3が加わり、合計+9ですの』

G太郎「ちょっと待つでござる。仲間からの支援だけで、命中+1、ダメージ+13のバフが一気に掛かったでござるか」

ホリー「いや、鼓咆の効果で、さらに+1だ」

G太郎「+14。ソード・ワールドで、これほどのバフが一気にかかることは珍しいでござるよ。よし、これに自己バフもかけて、【マッスルベアー】【キャッツアイ】【ジャイアントアーム】で、さらに命中+1、ダメージ+5。すなわち命中+2、ダメージ+19にまで引き上げられたでござる」

ホリー「これで敵を仕留め損ねたら、お前は無能だな」

G太郎「ちょっと待つでござる。敵の姿が見えないので、マイナス4のペナルティーがある。よって実質的に命中はマイナス2になって、基準値13からスタート。ダイス目で6を出さないと、攻撃が当たらないでござるよ」

ホリー「出せよ、それぐらい」

G太郎「期待値5と呼ばれた私に無理難題を〜」

デル「大丈夫だ、師匠。バルンガロム教官の特訓を思い出すんだぁ」

GM『バルンガロムさんの幻が、激励プレッシャーをかけてくれますの』

G太郎「と、とにかく、残りHPの少ないマミーAに2発、マミーBに3発分の蹴りを放つでござるよ。(コロコロ×5)ええと、Aには出目3と5で2発とも外れ。Bには2発当たりで、1発外れという結果でござる(シクシク)」

ホリー「お前という奴は、ボクたちの期待を無駄にしやがって〜」

GM『まあ、G太郎さんのドジさを喜ぶ一部ファンの期待には応えたってことでしょうか。ダメージをお願いしますですの』

G太郎「45点が2発でござるよ」

GM『防護点9ですので、72点ダメージを受けて、Bが吹き飛びました』

デル「当てれば、普通に倒せるレベルなんだなぁ」

ホリー「それにしても、5回中3回が出目5以下というのはひどい」

GM『残ったマミーAの反撃がございますの。命中18の2回攻撃を避けて下さいませ』

G太郎「しまった。回避+1の【ガゼルフット】を入れておくべきだったか。マイナス4ペナルティーで回避基準値11に落ちているから、7以上でないと避けられん。(コロコロ)5と8で1発命中したでござる」

GM『ダメージは18点ですの』

G太郎「防護点を減らして、15点くらった。残りHPは41点でござる。次のラウンドは、【リカバリィ】で回復して……」

GM『それが回復できませんの。マミーの攻撃は、受けたダメージ分、最大HPを減らす呪いがかけられていて、戦闘中のHP回復ができなくなりますので』

G太郎「それは一大事でござる。相手の攻撃を受けてから、耐え抜いて逆転勝利するという私のマッスルレスリング戦法が通用しないとは」

GM『それは、ミストキャッスル時代の初期のマッスル太郎時代の話ですの。まだ回避能力がそれほど高くなかった時期には、持ち前のHPの高さでギリギリの勝利を収めていた時代がありました。その後は、破壊力抜群の連続キックで瞬殺するスタイルに切り替わりましたが』

ホリー「さすがに、もう終わらせろよ。鼓咆・烈火とシーサーの水鉄砲で支援してやるから」

 

 それでも2発中1発を外してしまうG太郎だった。

 ただ、ダメージダイスでクリティカルを出して、58点のダメージで汚名返上を果たす。呪いも敵の撃退によって解除されて、最大HPも元に戻るのだった。

 

 マミーを倒した戦利品は、〈黄金の指輪(1000G)〉1つのみ。

 

 ともあれ、銀灯の幻を突破できないと悟った烈火団は、来た道を引き返すのであった。

 次回、『第6部 完結編』につづく。

●ここまでの冒険成果

 

日数経過:50日めの夜(漆黒のスフィアに出戻る)

 

経験点:イケメンメガネ吸血鬼を倒した★1個

    心技体の鍛錬をそれぞれ修了した★3個

    飛竜覚醒ミッションその1達成★2個

    【漆黒のスフィア】の球体内部に入る★1個

    魔物撃退分290点

    ピンゾロ分(デルニール1回)

収支結果:真鍮戦士勲章2個

     心技体の鍛錬修了証

     戦利品1300ガメル分

     イノセントの飛竜覚醒費用4万ガメル消費

ミッション:翠将への親書を届けよ

      【赤い瀑布】でエサユハから話を聞け

      (イノセント覚醒ミッションその2)

 

エスト:ジーズドルフ解放軍の同志を集める

     (現在20人)

     【月の図書館】の書物を読む方法を探る

     地下世界から誰かを外に脱出させる

     驕王ポイント現在40点

     人魚奴隷の救出(残り2回)

     虹色の宝石の確保

     (現在水妃ポイント8点)

     転送装置のマスターキーを入手する

     〈黒魔熔鉄鉱〉30個を集める

      (現在5個)

     機械の部品ポイント370点

     魔神討伐ポイント(現在42点)

     【鍛錬場】に武器を納める

 

情報

・防空施設の魔力供給源【翡翠のピラミッド】の装置を操作するには、〈銀水晶のマギスフィア〉が必要。

 ・〈破剣の星槌〉は深層階の【黒炎の工房】で〈黒魔熔鉄鉱〉30個と交換。

・【地底湖の畔】のマーマンは、水妃ポイント残り20点で地上への抜け道を教えてくれる。

・地下水路から地上への脱出には、〈銀水晶のサークレット〉が必要。北東の隠し扉を開けられる。

・漆黒のマギスフィアは、ジーズドルフ王家の間である。『王の証』によって、ジーズドルフ王家の後継者に認められる。

・『王の証』は【銀灯の通路】に隠されていると考えられる。そこを抜けるには、〈セランシェの灯火〉が必要。

・竜のエサユハと知り合い、竜の秘薬を完成させた(竜姫ナーデージュ救出ミッションの予定)

・【歯車の迷宮】には地下水路の明かりの仕掛けあり。

・ユリア・ミルドリスは深層階の【瑠璃宮】に向かった。

・翠将の親衛隊になるには〈黄金近衛勲章〉を入手して、試練を受けねばならない。

・暗闇を見通す〈セランシェの灯火〉は妖精たちの【地下庭園】に。現在バルカンに奪われたとのこと(ミッションの予定)

・【不死者の城】のランタンヘッドは、〈ワルプルギスの鐘〉に呪われている。ゲール・ハイネメルから解放ミッションが受けられる。

 

密偵の知り合い

・アム・ヤーセン(ドワーフ娘→ラミア)

 キーワード「月の図書館の書物閲覧」「漆黒のスフィア」

イゴール・ぺステリ(エルフ男→トロール

 キーワード「白銀勲章」

・ニコ・シュナウヘア(ナイトメア→オーガ)

 キーワード「防空施設」「シェラシース」「ヤーハッカゼッシュ」「地底に眠るもの」

・オスカル・バロー(シャドウ→バジリスク

 キーワード「白銀以上の勲章コレクター」「転送装置のマスターキーを持つ」

 

冒険達成度:深層階全ての区画を踏破した+2%

      (合計29%)

(当記事 完)