ショウン・グラハムの話
GM(ヒノキ)「ミストグレイヴの導入編、第3話じゃ」
デル(リトル)「魔神ハンターを名乗るオラたちは、とある遺跡の探検で、誤って謎の薬を飲んでしまったんだぁ」
ホリー(シロ)「その結果、人間のデルは蛮族の竜人ドレイクに、レプラカーンの少女であるボクは、炎の魔神に似た外見の蛮族、アダルトなバルカンの美女になってしまった。蛮族を憎む魔神ハンターがあろうことか、敵対相手になってしまうなんて、一生の不覚」
ガルド(ゲンブ)「まあ、いつまでも嘆いていても始まらない、でござる。ホリーちゃんの裏人格として、オレサマがしっかりサポート&アドバイスしてやらないと、な」
ホリー「闇の声の誘惑には乗らないようにしないと」
GM「ともあれ、蛮族の姿になって戸惑うお前たちのところに、盗賊ギルド『闇夜の鷹』のリーダーであるショウン・グラハムが現れて、いろいろと話してくれる場面で続いたのじゃ。まず、ショウンはお前たちの姿を変えた薬が〈バルバロスブラッド〉と呼ばれるもので、元々は人族が穢れを身に宿して蛮族の力を容易に得るため、あるいは蛮族社会に潜入工作をするために作られたものだと教えてくれる」
ホリー「そんな薬がどうして、この遺跡に?」
ショウン『逆だろう? 薬は元々、この遺跡のお宝として存在していたんだ。俺たちはその情報を知って、ミストグレイヴ潜入捜査のために手に入れようとしたんだが、お前たちに先を越されちまったみたいだ。お前たちの方こそ、どうして、この遺跡に来たんだよ』
デル「さあ。オラにも何だかよく分からないが、気が付いたら、この遺跡に来ちまっていたんだぁ。邪悪な神か何かにたぶらかされたのかもなぁ」
ガルド(ゲンブ)「まるで、どこかの剛力超人みたいな言い草でござるな」
GM「一言で言うなら、シナリオ都合なのじゃが、おそらくは『この遺跡の奥に、魔神と戦うための強力な力が眠っている』という噂を聞いたのじゃろう」
ホリー「そして、世間知らずなボクたちは、ろくな探索技能も持たずに、無謀にも遺跡探索に来てしまったんですね」
ガルド(ゲンブ)「やれやれ。オレサマは、『そんな美味い話があるはずがない。どうせガセネタに決まっている。少しはオレサマの話を信じて、人を疑うことを覚えろ』って忠告したんだがな、でござる」
ホリー「どうして、心の闇を信じて、人を疑わないといけないんだ? ボクは人の心の光を信じている」
ガルド(ゲンブ)「そう言って、こっちがどんなに正しいアドバイスをしても、その逆に突き進んで、痛い目に合うのがホリー嬢ちゃんなんだから、でござる」
ホリー「そうなのか? ボクには、ガルドのアドバイスが闇への誘惑とか、欲望をそそのかすとか、暴力的にしか聞こえないんだが」
ガルド(ゲンブ)「オレサマは、嬢ちゃんが幸せになれるよう、一番、手っ取り早く有効なアドバイスをしているだけだ、でござる」
ホリー「そのアドバイスの内容が『お腹が空いたら、お店のリンゴを盗めばいい』とか『ケンカ騒ぎがあったら、ドサクサ紛れに財布をスリ取ればいい』とか、犯罪行為ばかりじゃないか」
GM「つまり、ホリーは犯罪行為を毛嫌いしているから、スカウト技能を身に付けなかったということじゃな」
ホリー「うう、そうかもしれない。これまでずっと、ガルドのアドバイスの逆ばかりを選んできたから」
デル「とにかく、オラたちは『力を求めて』この遺跡に踏み入ったわけだぁ。噂は本当だったが、蛮族の力を求めていたわけじゃねぇ」
ショウン『なるほどな。しかし、これはチャンスかもしれんな。せっかくだから、お前さんたち、ルキスラ帝国の密偵として、霧の街の地下のミストグレイヴに潜入して、情報を持ち帰ってくれねえか? 無事に任務を完了して帰ってきたら、元の姿に戻してやるし、報酬として1人辺り3万ガメルを約束しようじゃないか』
ホリー「3万ガメル?」
ガルド(ゲンブ)「こいつは驚いた。駆け出しの冒険者の報酬の相場は500〜1000ガメルってところだぜ。この仕事は破格の報酬だ。引き受けない手がないぜ」
ホリー「だけど、そんな美味い話があるわけがない。こういう時こそ、人は疑わないと。何しろ、相手は盗賊ギルドのお偉方を名乗る男だからな。信じられるはずがないだろう」
デル「どうしてオラたちなんだぁ?」
ショウン『そりゃ、お前たちがその姿になっちまったからだろう』
デル「そいつはそうだが、オラたちは魔神退治みたいな荒事専門だぁ。密偵なんて仕事はしたことがねぇ。もっと優秀な盗賊がいるだろぉ?」
ショウン『そうだな。強いて言うなら、その目が気に入ったと言おうか』
デル「目、だとぅ?」
ショウン『お前たちの仕事場は、人族にとって危険極まりない蛮族どもの地下世界だ。当然、荒事に巻き込まれることもあるだろう。そんな苛酷な場所で任務を果たすには、何にも増して意志の力、どんな逆境でも踏み越えていける荒々しさが必要となる。俺はこう見えても、人を見る目はあるつもりだ。お前たちは鍛えれば、十分に物になると踏んでいる。この仕事を果たせば、お前は確実に強くなる。力が欲しいんだろ?』
デル「そこでは、魔神と戦えるのかぁ?」
ショウン『魔神ねえ。蛮族が魔神の力を利用しているって話は聞いたことがあるが、確実な証拠はねえ。だがしかし、魔神が多少とも絡んだ仕事でもあることは確実だ。情報収集のついでに、とある魔神絡みの物品を運んでもらいたい』
デル「魔神絡みの物品だってぇ?」
ショウン『詳しい話は、仕事を引き受けてからだ』
デル「魔神絡みなら、魔神ハンターとして乗らない手はないなぁ。分かったよ、その仕事は引き受けたぁ。ショウンの旦那、何でもするぜぇ」
ショウン『いい覚悟だ。そちらの姉さんはどうだ?』
ホリー「ボクは……」
ガルド(ゲンブ)「蛮族の世界に潜入するって聞いて、怖気づいたのか? だったら断りな。どっちにしても、この魔物のような姿じゃ、人族の社会で生きていけねえ。このまま一生、闇に潜んで生きていくのも一興かもな。闇に隠れて生きる。オレサマたちは、人族の姿を失った魔神もどき、あるいは妖怪人間として生きて行くんだ」
ホリー「そんな人生はイヤだ。ボクは闇に抗って、人族の光を取り戻す。早く人族に戻りたい。暗い運命を吹き飛ばすんだ!」
ショウン『……何だかいろいろ葛藤しているみたいだが、心の闇に飲み込まれまいと必死で抗っている想いは、ひしひしと伝わってくるな。今のあんたは闇に苛まれているようだが、闇に飲まれずに利用する術なら、俺たちが専門家だ。こう見えても、オレたち「闇夜の鷹」は皇帝陛下にもパイプを持つ、真っ当なギルドだからな。正義を名乗るつもりもないし、汚れ仕事だって引き受けたりもするが、人族の仁義ってものはわきまえているつもりだぜ。闇との戦い方、闇の世界の流儀ってものは教えてやっても構わないんだが』
ホリー「闇と戦う……闇を利用する……それがボクの生きる道」
ショウン『そう。闇に飲まれるな。しかし、闇を恐れて目を背けるな。そうすれば、闇はお前さんの力になる。それが「闇夜の鷹」の生き様だ』
ホリー「闇夜の鷹……ですか。そこに入れば、ボクは光の世界に飛び立つことだってできるかもしれない」
ショウン『覚悟は決まったようだな。ようこそ、我が組織へ』
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