花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、TRPGの魔法研鑽を展開予定。

魔法使いと神官のさらなる話2

前回を前置きにして

 

NOVA「前回は、トラベラーとルーンクエストのキャラ成長の話から、TRPG版のファイナルファンタジーに流れて、HPやMPの起源なんかの考察をしつつ、魔法使いと神官の話に入ったと思ったら、俺のクラシックD&D初キャンペーンの思い出話になって、主題が見えにくい話だったと思う」

ヒノキ「勢いだけで、つれづれなるままに心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく、あやしく、ものぐるほしく書きつづった記事と言えような」

NOVA「いや、別につれづれなる(手持ち無沙汰で退屈してる、の意)わけではないのですが、書きたいことは見えているのです。D&Dから始まる魔法研究の話を、全力込めて書いて行こうとしたら、まあ、空回りしているわけですが、とにかく70年代の話と、80年代の話と、90年代の話と、この10年ばかりの話が錯綜している記事でしたな。整理してみましょう」

 

 

NOVA「とりあえず、以上の話を、思いつくままに書きつづった記事でした。しかし、まさか『レンフィールド戦記』の話をするとは、想定外でしたよ」

ヒノキ「それはネットで検索しても意味がないな」

NOVA「ええ。リプレイの『ロードス島戦記』や小説の『ドラゴンランス戦記』に感化されて、俺が初めて書いたファンタジーリプレイ小説のタイトルですからね。どこにも発表していない、思い出だけのタイトルです(小説も処分したので残っていない)。レンフィールドは、クライオン・レンフィリッツって名前の国王が治める王国の名前ですが、後から『吸血鬼ドラキュラ』に出てくるキャラクターとして有名だと知って、ビックリしました。ドラキュラの物語の大筋は知っていたつもりでしたが、原作をきちんと読んだのは大学に入ってからでしたし、ルーシー、ミナ、ジョナサン・ハーカーやヘルシング教授の名前は知っていたけど、レンフィールドの名前は87年当時、認識していなかったです」

シロ「新星さまのファンタジー小説処女作になるわけですか」

NOVA「俺の高校時代の創作の原典になるかな。ジョエル・トレントの登場する『光の杖』も同じ世界の話だし、第1回富士見ファンタジア小説大賞に応募した『水底の都』も同じ世界の話。他にも、いろいろと設定を考えた『七つの月のある世界』を舞台にしてました」

ヒノキ「七つの月……ってこれか?」

NOVA「友野さんが1991年に『コンプRPG』誌上で、その世界観を発表されたときは、やられたと思いましたよ。これで、自分のファンタジー世界を発表する構想は全部ボツになったような気分ですからね。『七つの月の世界』というアイデアはもう使えません。うちの元ネタは、まあ、『ドラゴンランス戦記』の三つの月(白い月ソリナリ、赤い月ルニタリ、黒い月ヌイタリ)ですが、今となっては懐かしい過去の思い出ですね」*1

ヒノキ「アイデアはボツになったが、ルナルとは多少とも縁ができたようじゃな」

NOVA「まあ、友野さんには、わずかな期間ながらいろいろとお世話になったわけで、特撮ファンとしてもかなり感化されてますからね。いい勉強をさせてもらいましたよ。今も雑誌編集長として、陰ながら応援させてもらってるってことで」

 

D&Dからの導線

 

NOVA「改めて、D&Dに話を戻すと、実はD&Dそのものが直接、日本のRPGに影響を与えた時期は短いという結論になります」

ヒノキ「そうなのか?」

NOVA「まず、日本でマニア層を除いて、ファンタジーがブレイクしたのが、80年代半ばの『火吹山の魔法使い』に始まるゲームブックブーム。続いて、ファミコンの『ドラクエおよびファイファン』の2大RPG。一般的に、日本のRPG文化を牽引したきっかけは、この2種類のジャンルになるでしょう。そこにドラゴンランスロードス島戦記を初めとするファンタジー小説ライトノベルという道筋があって、いずれも源流はD&Dになって業界人にとっての基礎教養、バイブル的作品であるわけですが、D&Dというゲームが一般層に話題になるほど世の中を席巻したわけではない、と」

シロ「会社としては、ゲームブック社会思想社東京創元社、そこに双葉とか二見といった出版社も関わってきますか」

ケイP『コンピューターRPGでは、エニックススクウェア。それにウィザードリィアスキーや、ウルティマは……ポニーキャニオン?』

NOVA「パソコンゲームだと、AD&Dシリーズも日本語版はポニーキャニオンが出していたな。クラシックD&Dを翻訳した新和に負けず劣らず、富士見書房パソコンゲームの方もD&Dを大きくプッシュしていた。そこからの流れを日本での発行会社別にまとめるとこうなる」

 

  1. 新和時代(1985〜93):クラシックD&DおよびAD&D2版。いわゆる赤箱〜黒箱までと、アドバンストD&Dをサポート。日本におけるD&Dの原点として、この時期が最初のピークに当たる。富士見書房の小説およびゲームブック展開や、ポニーキャニオンのコンピュータゲーム展開と歩調を合わせ、いろいろと業界を盛り上げた。なお、ゲーム部門と出版部門がTSR社では別部所だったために、日本での翻訳権も分割されたという、ややこしい経緯がある。
  2. メディアワークス時代(1994〜98前半):文庫版のクラシックD&D。富士見書房とメディワークスはどちらも角川系の企業であり*2、1994年に創刊された新雑誌『電撃アドベンチャーズ』の柱の一つとして、D&Dを打ち立てた経緯がある*3。だけど、まもなくTSRの倒産で時代が大きく変貌した感。
  3. ホビージャパン時代(2002〜2021):D&D3版〜5版。日本で最も長くD&Dを展開してきた会社。結果的に翻訳出版数は最大で、この時期にグレイホークも、フォーゴトン・レルムも日本語でワールドガイドが読めるようになった。客観的には、D&Dの国内展開の最盛期と言える。ただし、業界全てがD&Dを応援する熱気のあった新和時代と比べると、この時期のD&Dは競争相手が多く、マニア向きの高嶺の花的な作品として受け取られる。なお、D&Dというタイトルは使えないが、フィフスエディションRPGアドバンスという形で今もサポート展開が続いているという見方がある。
  4. WotC時代(2022〜):2022年から、ホビージャパンに代わって、アメリカの本社が直接、日本語での展開も進めることになったのだが……2023年末の『ドラゴンランス』シナリオを最後に、商品展開が止まってます。2024年に版上げが行われて、それがいつ翻訳されるのかファンは気にしていると思うのだが、この2年、公式がちっとも情報を発表しないのですね。せめて翻訳進行中とか、今後の予定とか日本のファンに向けての何らかのアピールや宣伝を示せばいいのに。老舗のホビージャパンの方がよほど熱心に仕事している姿を示しているので、本社は出しゃばらず、長年頑張ってきた現地の代理店に任せるべきだったのでは? という意見も出始めている今日この頃。

 

ヒノキ「D&Dの歴史的価値やネームバリューはともかく、現在の展開については、新兄さんは満足していないということじゃな」

NOVA「結局のところ、最初の2年だけ盛り上げて、その後の新5版が立ち上がったとたん、国内展開がストップしてしまいましたからね。新5版をどう展開するか公式が示さないでいるうちに、老舗のホビージャパンの方がフットワーク軽く、自社の展開できるフィフスエディションであれこれ企画を動かしているのを見ると、WotCジャパンが乗り出した意味は一体? となります。単に日本のD&D展開を本国が邪魔してきたようにしか見えない」

ヒノキ「まあ、新作が出ずとも、手持ちのサプリ(過去遺産)だけで、お前さんは十分語れるじゃろう。今は、昔話に専念する時では?」

NOVA「それでは、オリジナルD&Dの基本3職、戦士、神官、魔法使いに戻りますか」

ヒノキ「戻りすぎじゃ。D&Dの基本職は戦士、魔法使い、神官、盗賊の4種じゃろう」

NOVA「いや、元々は盗賊はサプリメントの追加職です。そもそも、ファンタジー小説の基本は『ソーズ&ソーサリー』といって、戦士と魔法使いが原点。そこに、能力面から戦士と魔法使いの中間クラスともいうべき神官が加わっての基本3職です」

ヒノキ「神官は、戦士と同様に前線で戦うことも可能で、魔法使いと同様に呪文も使える。言わば、初期の万能職じゃのう」

NOVA「使える呪文の系統が、攻撃的な魔法使いに対して、防御・回復をメインとする点で違う役割を与えられましたが、ぶっちゃけ戦士、魔法戦士、魔法使いの3職構成だと思えば、すなわちドラクエ2のパーティーはオリジナルD&Dに則しているんです」

シロ「つまり、ローレシア王子が戦士、サマルトリア王子が神官、ムーンブルク王女が魔法使いに相当する、と」

ケイP『しかし、最近、4人めとしてサマルトリアの妹王女が加わったッピね』

 

ドラクエとD&Dの職系譜

 

NOVA「日本にRPG文化を根付かせた最大の貢献作品はドラクエで、今年が40周年になるわけですが……」

ヒノキ「流れとしては、D&D(1974)→ウィザードリィウルティマ(1981)→夢幻の心臓ドラゴンスレイヤーブラックオニキスなどの国産パソコンRPG1984)→ドラクエ(1986)という流れみたいじゃのう」

NOVA「ウィザードリィがD&Dのシステムをコンピューターでプレイできるようにした作品で、一方、同時期のウルティマは直接、D&Dから受け継いだ要素は少ないけど、作者のリチャード・ギャリオット(通称ロード・ブリティッシュ)はその影響を明言している」

ヒノキ「ウィザードリィウルティマに影響されて、和製のパソコンRPGが作られて、そこからファミコン初のコマンド製RPGドラクエがブレイクするわけじゃな」

NOVA「戦士、魔法使い、神官の3職に、盗賊が加わって基本職に認定されたのはオリジナルD&Dではなく、1977年のD&Dベーシックセットからです。これが後にクラシックD&Dになるバージョンで、当初はベーシックセットの上にアドバンストD&Dがつながるシステムでした」

シロ「ベーシックセットが独自のエキスパートセットを経て、コンパニオンやマスターに拡張していくのがクラシックD&D。一方、アドバンストD&Dは、上級者向きとして、さらなる広がりを見せて、アメリカではそちらが主流になって行った、と」

NOVA「アドバンストD&Dは基本4職に加えて、パラディン、レンジャー、魔術師の別バージョンのイリュージョニスト(幻影魔術師)、ドルイド、バーバリアン、モンク、アサシンを追加職業に加え、転職してなれるバードと、サイオニクス関係を補足ルールに加えたのが1版。その後、サプリメントで軽業士のシーフ・アクロバットや、騎兵のキャバリエ、東洋系のサムライ、ニンジャなど多彩なクラスが次から次へと実装されたという話を聞くが、それらが2版で整理されて……とD&D職業蘊蓄は語り出すと止まらない(苦笑)」

ヒノキ「とにかく、基本職が戦士、魔法使い、神官、盗賊の4種に確定したのは、D&Dベーシックセット(クラシックD&D)とウィザードリィの影響が大きいようじゃのう。しかし、ドラクエが盗賊を採用するには、少し時間が掛かった」

NOVA「ドラクエ2は、さっきも言ったように、戦士、もっぱら神官系の魔法を習得しがちな魔法戦士、純魔法使いの3人で、そこに加わったサマルトリア妹は、盗賊や踊り子、遊び人的な特技を持った素早さと幸運重視の魔法軽戦士といったキャラ性能。力が弱いために、武器戦闘の破壊力が高いわけではないですが、便利な小技をいろいろ習得するようです」

ケイP『パーティー制を最初に導入したのはドラクエ2だけど、職業制を初導入したのはドラクエ3だッピね』

NOVA「この点は、職業制度を初めて導入したファミコンRPGは、ファイナルファンタジーと言われているな。戦士、モンク、シーフ、赤魔術師、黒魔術師、白魔術師の6職が上位職に転職して、ナイト、スーパーモンク、忍者、各種魔道師になる。ここでのポイントは、武闘家であるモンクの採用と、魔法戦士的な万能職の赤魔術師、そして神官ではなくて白魔術師という呼称で、微妙にD&Dの基本4職を外してきている点」

ヒノキ「ドラクエもそうじゃが、モンクはAD&Dが元ネタなものの、素手戦闘の専門家という職業はしばらく日本のTRPGでは扱われにくかったと聞く」

NOVA「88年のWARPSファンタジーが初採用じゃないかな。少なくとも、武器を持った方が強い西洋ファンタジーのルールで、拳で戦って強い職業を表現するのは難しい、と言えた。しかも、AD&D2版では、あろうことかモンクをPHBの基本職から外したおかげで、モンクに日の目が当たったのは21世紀になってからという」

ケイP『一応、クラシックD&Dでも黒箱マスタールールで、ミスティック(修道士)という擬似モンクなクラスが採用されているッピ』

NOVA「ああ、邦訳は89年だったな。一応、実装されているが、載っているのがプレイヤー向きではないDMルールのモンスターリスト内の記述なので、追加クラスとして認定しにくい書き方になっている。当時にもっとミスティック押しの記事でもあれば、クラシックD&Dにも違う未来が……ってあるわけないな。現在の5版では、モンクと異なる超能力系の追加職業として採用が吟味されているらしいが、正式採用にはまだ至ってないとか」

ヒノキ「話がどんどんマニアックな方向に飛ぶのう。国内TRPGで武闘家キャラが定着するのは90年代になってから、でいいな」

NOVA「その辺は、日本のTRPG業界が成熟する流れと、対戦格闘ゲームの流行がありますので、武闘家が再現できるゲームのニーズが飛躍的に高まりましたからね。そもそも、『北斗の拳』『ドラゴンボール』が流行した80年代にあって、国内ゲームは海外のルールとは関係なく、武闘家を模索してましたから。もっとも、ソード・ワールドがそれを採用するのは、2008年の2.0になって初めてでした」

ヒノキ「遅いのう」

NOVA「SNEが武闘家をいち早く採用したルールは、91年の『ハイパーT&T』からです。その後、『ガープス・マーシャルアーツ』(94年)とか、ブームに対応していないわけではなかった、と」

ヒノキ「さておき、ファイナルファンタジーが神官キャラを白魔術師としたことで、僧侶系、神官系キャラを定着させたのは、ドラクエ3ということになる」

NOVA「初期のファイファンは意識的に宗教色を廃していましたからね。ドラクエが死んだキャラを教会で復活させたのに対し(そこはウィザードリィの影響)、ファイファンは回復の泉とかで戦闘不能のキャラも蘇る仕様。一応、白魔法のレイズでは天使のエフェクトがありますので、そういう文化はあるんでしょうけど」

ヒノキ「日本で最初に宗教にスポットを当てたRPGというと……ああ、『女神転生』(87年)か」

NOVA「そっちの文脈は、D&Dからの系譜で考えるのは難しいですが、原作者の西谷史さんは『ウルティマ妖魔変』という作品も書いていて、コンピューター関連とオカルト方面が専門の作家。異世界ファンタジーの宗教観と、現代社会のリアルなオカルト史の文脈は分けて考える方が無難です。まあ、90年代以降は現代日本の裏世界を舞台にしたホラー系RPGも増えてくるので、切り分けるのも難しい場面があるのですが、D&Dからの影響というテーマで考えるなら、そこは一時棚上げしたいと思います」

 

ヒノキ「話をドラクエの職業に戻すと、『僧侶』というゲーム用語を定着させたのもドラクエということで良いな」

NOVA「少なくとも、SNEのファンタジー作品では、神官、司祭、司教という言葉を使うことはあっても、僧侶は仏教僧、東洋のモンク僧を除いては使わなかったと思いますな。ドラクエが僧侶という言葉を、RPG界で一般的にしたのは間違いないと思います。ダイ大の武闘家マァムの転職前の職業が僧侶戦士となってますが、別に何らかの宗教を信じている描写もないですし、あくまで僧侶系魔法を使えるだけの職業クラス以上の意味合いはないわけで」

ヒノキ「確かに、僧侶の割に戒律を口にするわけでもなく、神さまをどうこう言って祈るわけでもない」

NOVA「魔王はいても、神が前面に出るような世界観ではないようですね。あと、拳聖ブロキーナの方がよほど宗教家っぽい言動を口にしている。マザードラゴンが神の使いと称され、神々もいる世界観なのも分かりますが、多くのファンタジー作品とちがって、神の名はあまり設定されていないようですし、天界編でも描かれない限りは、あの世界の宗教事情を掘り下げるのは困難そう」

ヒノキ「ドラクエ世界の神だと、一般的なのは天空城にいる神竜(マスタードラゴン)と、大地の精霊ルビスが有名どころになろうか」

NOVA「ドラクエ7には、ラスボスのオルゴ・デミーラに敗れて消滅した(裏世界に封じられた)神さまがいて、裏ボスになってましたし、ドラクエ9には創造神グランゼニスと娘の女神セレシア(世界樹に化身した)って設定があって、まあ、作品ごとに異なる神さまのイメージが付いてくるわけですが、個人的にはドラクエ世界の天界にいる神さまはろくなキャラじゃないってイメージがあります。大地方面を象徴する女神さまは温厚で慈愛を示してくれますが(でも、あまり強くはない)、天の神さまはうっかりだったり、無責任だったり、やたらとトラブルの原因になっているような印象を抱いてる」

 

ヒノキ「話を変えるが、ドラクエ3の職業は勇者、戦士、武闘家、僧侶、魔法使い、賢者まではD&Dやウィザードリィ的に分かる。しかし、商人と遊び人がそれまでのRPGの文脈から外れた存在とは思わんか?」

NOVA「商人は一般職って感じですもんね。しかし、冒険職ではなくて、背景としては重要ですし、ルーンクエストストームブリンガーなどのベーシックRPG系ではしばしば登場して、鑑定能力や交渉能力で活躍する場面もあります。遊び人は……本当に謎ですね。少なくとも、それまでの既存のRPGからの文脈では出て来ない、突然変異の職業としか思えません。そして、メジャーな盗賊は88年のファミコン版では登場せず、95年のドラクエ6で初登場し、96年のスーファミリメイク版ドラクエ3でも追加されました」

ヒノキ「盗賊はRPG基本4職にも関わらず、ドラクエへの実装は随分と遅かったのじゃな」

NOVA「その後のドラクエないし、ファイファンTRPGの文脈に関係ないユニークな職業やジョブを登場させて、独自の世界観を築いていましたね」

 

ドラクエの変わった職業:踊り子、占い師、スーパースター、船乗り、笑わせ師、ゴッドハンド、天地雷鳴士、旅芸人など

ファイナルファンタジーの変わったジョブ:たまねぎ剣士、学者、風水師、すっぴん、青魔道師、踊り子、ものまね師、ピクトマンサー、歌姫など

 

NOVA「基本的に、オンラインゲームを除くナンバリング作品のみに限らせてもらった。あと、竜騎士のジャンプ攻撃など、演出が独特のものもファイファンには多いが、竜に乗った騎士はそれまでのファンタジーゲームでもありふれていると判断し、◯◯騎士や戦士の亜種、魔術師系の亜種も割愛。ただ、青魔道師は敵の攻撃をラーニングという独自アイデアを重視して、記入した次第」

ヒノキ「こういう変わった職業というのは、その作品の売りになるからのう。今までもD&Dその他のTRPGが追加クラスや、上級クラス、サブクラスを実装していくことでサプリメントの商品価値にしていくわけで、多彩な職業を並べるだけで楽しくなるデータマニアも多そうじゃ」

NOVA「それを分析している解説書なんかも好き」

 

魔法戦士や神官戦士の世界

 

NOVA「さて、ゲーム世界には多数の職業があるわけですが、複数の職業の能力を兼ね備えた兼職というものが魅力的にも映るわけですな」

ヒノキ「AD&Dから、ウィザードリィの上級職が起源になるかのう」

NOVA「いいえ。兼職の起源はT&Tにあると俺は考えています。T&Tでは、盗賊の語源がRogue-Wizard。一方で、エリート職の魔法戦士はWarrior-Wizard。その両者が戦士(Warrior)と魔術師(Wizard)の兼職に当たります」

シロ「T&Tの盗賊は、魔法盗賊になるんですか」

NOVA「モデルは有名なファンタジー小説『ファファード&グレイマウザー』の主人公の1人グレイマウザーだからな。魔法使い崩れの小悪党剣士で、たしなみ程度の魔法を使うことができる」

シロ「それは興味深いですね」

NOVA「メルニボネのエルリックがモデルの魔法戦士と違って、T&Tの盗賊は劣化職と言えるんだが、逆に魔法戦士の方が能力値の条件が厳しくて、サイコロ運に恵まれないと作ることができないわけで、基本的には戦士と盗賊と魔術師だけでパーティーは構成される」

ケイP『神官はないッピか?』

NOVA「サプリメントで後から実装されて、その後、『ハイパーT&T』では基本職に昇格したんだが、現在の版ではまた消えた。T&Tの本来のルールでは、魔術師魔法と神官魔法の区別は為されていない。魔法の系統は10種類あって、治癒魔法の専門家になることは可能だが、それはイコール神官というわけではない(そう名乗るのは自由である)。つまり、T&TはオリジナルD&Dやリメイク前のドラクエ2みたいに、戦士、魔法の使える戦士、魔法使いの3職から成るゲームだった、と」

シロ「今も3職ですか?」

NOVA「いいや。その3職に加えて、魔法戦士が改名した達人や、8種類の専門家が加わっている。専門家は8つの能力値に対応していて、パワー自慢の〈怪力〉、機敏な〈超敏感者〉、器用で飛び道具の扱いが上手い〈野伏せり〉、頑健な〈格闘家〉、知的な〈策謀家〉、魔力の豊富な〈専門魔法使い〉、幸運な〈賭博師〉、カリスマ豊かな〈指導者〉といった個々の才能を基本3職に組み合わせて扱うことになる」

シロ「つまり、〈策謀家の戦士〉とか〈指導者の盗賊〉、〈怪力魔術師〉ってのもありですか?」

NOVA「それが有利だと思えば、いいんじゃないかな? ただ、〈専門魔法使い〉は魔術師でないとダメで、魔術師は強い武器が持てないので、怪力という才能があまり活かせないと思うな。それらの専門家は特定能力値を決める際に、サイコロ3つがゾロ目だった時にボーナスの振り足しができて、選ぶことができる、達人に次ぐエリート職だな。ともあれ、基本職が3つというのは変わりなくて、そこに多彩なプラスαがダイス目次第で付いて来るのが、今のT&Tだ」

シロ「意外と、D&Dとは異なる独自路線を突き進んだゲームなんですね」

NOVA「正統派ではなく、色物だって意見もあるが、現在のソード・ワールドにも通じる歴史的にも重要な作品であることは間違いない。ゾロ目振り足しルールとか、バーサーカー戦闘とか、特筆するルールはいろいろあるが、他に好きな魔法として《死の刃(ヴォーパル・ブレード)》というのがあってな、盗賊や魔法戦士が自分を強化したり、魔術師が戦士を強化したりが割と簡単にできる」

シロ「そんなの、D&Dだって普通にできるんじゃないですか?」

NOVA「それが、クラシックD&Dだと、意外とできなかったんだよな。クレリックの3レベル呪文に初めて《ストライキング》という武器強化呪文が登場するが、それが使えるのはレベル6になってから。しかし、T&Tの《死の刃》はレベル2から使えるし、その後、ロードスやソード・ワールドでも比較的手軽に《エンチャント・ウェポン》が使えるよな」

ケイP『1〜2レベルで使える魔法だッピね』

NOVA「80年代当時の俺にとって、魔法戦士のイメージ源の一つにスターウォーズジェダイ宇宙刑事ギャバンがあったんだ。特にギャバンのレーザーブレードな。あの刃にエネルギーを充填して強化するというビジュアル演出がすごく格好いい」

シロ「光の剣って、よくある演出ですよね」

NOVA「平成以降はな。だけどギャバンが始まった82年には、そういう特撮映像はなかったんだよ。スターウォーズライトセイバーから、ガンダムビームサーベルになって光線の剣の元ネタはあったにせよ、宇宙刑事の演出の凄いのは、光線が剣になるのではなくて、通常の物理剣にエネルギーを付与して強化する点だ。それまでは割と敵怪物の異次元空間を利用した奇襲攻撃に翻弄されてピンチだったギャバンが、レーザースコープで敵の位置を見出し、そこから機を見てレーザーブレードを発動する。すると例のBGMが流れて、ギャバンが優勢になる。そしてトドメのダイナミックだ。この一連のシークエンスに80年代の少年は燃えたんだな。そもそも、等身大ヒーローが剣で豪快に相手を叩き斬る必殺技も当時は珍しかった(時代劇ヒーローを除く)し、レーザーブレード最高! と魂に焼きついた頃合いだったんだ」

ヒノキ「しかし、ギャバン魔法戦士のイメージ源と考えるとはのう」

NOVA「だって、ギャバンの演出は魔法がかってますよ。瞬時にアーマーを装着するし、目が光って透明の相手を発見するのもディテクト系の魔法だし、ドラゴンを召喚するし、戦う舞台も魔空空間だし、そこに引きずり込まれるのも魔法のゲートみたいなものだし、相方は小鳥に変身するし、宇宙の超科学は魔法と変わらないです。とにかく、レーザーブレードは剣に魔法をかけるような演出ってことで、ソーサリーのRAZの魔法を初めて見たときに、おお、これはギャバンっぽいって思ったぐらい」

ヒノキ「つづりは違うがのう」

NOVA「分かってますよ。で、D&Dには魔法の武器で、剣に炎をまとわせるものはあっても、剣を一時的に強化する魔法は(当時は)使いやすい低レベルではなかった。今の版には《マジック・ウェポン》の呪文が2レベルで普通にあるし、自分の武器にオーラを込めて必殺技を放つゲーム演出なんて、どこにでも転がっています。だけど、80年代にはオーラ斬りを使えるゲームなんてあまりなかった。ところが、そういう需要を満たすゲームの一つがT&Tだったわけですな」

ヒノキ「いわゆるツボを突いた、と」

NOVA「その後、ロードスやソード・ワールドでも、水野さんはそういう武器に魔力を付与する呪文を使いやすく設定してくれた。この辺の元ネタは、おそらくギャバンではなく、ルーンクエストの《鋭刃(ブレイド・シャープ)》とか、その辺の強化魔法でしょうけど。ルーンクエストのキャラクターは、専業戦士も当然、作れるけど、神々の世界グローランサの世界観に合わせるなら、全員が信仰戦士でプレイすることが推奨されていて、水野さんはクリスタニアでそういう世界観を踏襲し、一方で友野さんのルナルも信仰教団をメインに設定した世界観になっている。90年代のSNE作品は、剣と魔法に信仰要素も交えた重厚感ある世界設定が多いけど、ドラゴンランスフォーゴトン・レルムもそういうノリで異世界神話を構築した作品だから、剣と魔法そして神々がファンタジー世界の基本と言えたわけです、当時は」

 

ヒノキ「和製のゲームでは、神々が基本とまでは言えんのではないか? SNEが海外RPGを日本に紹介するという土台を持つゆえに、神々も重要視しただけで」

NOVA「まあ、90年代は世紀末オカルトブームだったこともありますし、神話関連の資料もゲーム関連で一気にいろいろ出版された経緯もあって、土壌の面ではファンタジー宗教の種が撒かれた時期ですね。ただ、作品に落とし込むには、神話宗教ってデリケートな題材だったことも事実。だから、剣と魔法を前面に出しつつ(とりわけ魔法)、神々や信仰の扱いは作品によって方向性がまちまちだったと考えます。

「ゲーム的には、ルーンクエスト多神教世界と、それに感化されたSNEの作品群がありましたが、現代および近未来オカルト方面では『女神転生』が神や悪魔を題材にした作品としては頂点に達すると考えます。そのイメージソースの一つに、悪魔人間を題材にしたデビルマンがあったりして、救世主(メシア)とかいろいろな用語を伝播した感じですね。戦後教育ではタブーだった日本神話の掘り下げもいろいろ行われて、リアル神話をゲームに持ち込むには……という試行錯誤があれこれ行われました。

「一方で、80年代から神という題材を扱った作品としては、『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』『キン肉マン』が現在にも通じるメジャーなところでしょうか(マイナー的には『ゴッドサイダー』『孔雀王』という仏教系インド系も当時は印象的だったけど)。ドラゴンボールは元々、願いを叶える神龍という存在が東洋風味で、土台に中華神仙思想があったわけですが、武術の修行の果てにドラゴンボールの造り主である神さまが出て来たと思ったら、そのルーツが宇宙SF的な展開を示してナメック星人が登場して、さらに宇宙全体を司る究極の神とやらが21世紀になってから登場し、インフレ状態が続いておりますな」

ヒノキ「西遊記を題材にした妖怪退治の冒険物語から、ピラフ一味やら、レッドリボン軍やら、ピッコロ大魔王やら、フリーザやら、人造人間を経てセルやら、魔人ブウやら、次々と異なるジャンルの敵が出てきて、世界観を広げていった反面、意外と西洋ファンタジーの魔法には踏み込まなかったのじゃな」

NOVA「その辺は、作者の鳥山さんがドラクエのイラストも担当していたので、ネタがかぶるのを避けるために意図的にドラゴンボールから西洋要素を排除したのでしょうな。言わば、作品テーマごとの住み分けだと。広げるなら、東洋の神仙思想と対になるSFメカ(こちらはヒロインのブルマが得意な方面)から広がるサイバー方面から宇宙方面で、古典と未来が入り混じった独自世界の構築となった。ランプの魔人はアラビアンナイトの方向性で西洋とも異なる魔法絡みですし」

ヒノキ「聖闘士星矢ギリシャ神話題材で、西洋ファンタジーを作者お得意の格闘アクションに融合させて、聖衣というメカっぽい要素の鎧をビジュアル化して一大ジャンルを築き上げた」

NOVA「ファンタジーといえば、剣と魔法というイメージだったのを、鎧と神話という別要素に置き換えて、美麗な世界観を構築したのが独自の発明ですな。小宇宙(コスモ)というのは哲学として仏教あるいはインド神話的な概念ですし、地上に降臨した女神(アテナ)を守護する星座に選ばれた転生戦士という設定は、現代オカルトの文脈にも則している。まあ、D&D的なファンタジーとは別の方向性ですけど、国産RPGの一つのイメージソースにはなった」

ヒノキ「キン肉マンは、怪獣退治のヒーローパロディギャグから超人プロレスに路線変更して、ギャグから次第にシリアス化していき、対戦相手が悪魔から超人の神に発展して、一度完結していたのが、21世紀に入って再起動して、今は時空を越えた背景がついて来ているそうじゃのう」

NOVA「息子の世代の2世の物語が作られた後で、初代キン肉マンの話の続きが再始動して、過去の設定の掘り下げが加速した挙句、悪魔超人や完璧超人、王位争奪戦の五王子が再登場して新たな敵勢力と戦いながら、ついに超人を創造した神とか超神という概念が登場して、2世の物語と絡めた時間超人までが出てきて、時空を越えた戦いになってるのが今です。で、実はキン肉マンの世界観が、クラシックD&Dの幻の金箱イモータルセットに通じるという発見を21世紀になってから見出しまして」

ヒノキ「ともあれ、80年代後半は西洋ファンタジーRPGの世界観や文脈を日本に輸入して、ドラクエファイファンという形に結実させた時代。そこから90年代に至り、洋物世界観から和製の物語をTRPGに落とし込むための模索が始まった時代と言えようか」

NOVA「その1990年を前後して、D&Dの魔法と神話の世界観を日本的にどう解釈していったかの話を続けて行きたいな、と」

(当記事 完)

*1:ここだけの話ですが、1996年に出たルナル・サーガのムック本『パーフェクトコレクション』(略称ルナパー)で、NOVAは原稿を書かせてもらっています。3年ほどの見習い時代にあって、思い出に残る仕事の一つ。時効と判断して、この期に発表しておく次第。監修の友野さんには、一部設定の誤認ミスを修正いただき、その節はお世話かけましたm0m

*2:SNEは、角川書店富士見書房メディアワークスの系列3社と並行して仕事をしていたが、それは安田社長が角川歴彦氏と懇意の仲で、ドラゴンランスの翻訳を依頼された時から、D&Dの国内展開および日本のRPGメディアミックス展開への協力を求められたからである。角川書店の『コンプティーク』誌でロードスが始まったのも、富士見のメディアミックス雑誌『ドラゴンマガジン』の目玉企画の一つとしてソード・ワールドの企画が立ち上がったのも、そして新会社のメディアワークス向けに『クリスタニア』が立ち上がったのも、角川歴彦氏とコンプティークの初代編集長だった佐藤辰男氏の影響が大きい。最近、Xポストで当時の角川お家騒動の話題が盛り上がっているのも興味深く。

*3:なお、他の柱としてSNE関連では『クリスタニア』、海外ゲームの『アースドーン』、新システムの『央華封神』がある。この辺は自分個人にとっても、いろいろ馴染み深い作品。D&Dにはタッチしていないが、将来の可能性を踏まえて、AD&D2版の勉強会として、社長も含めた見習い社員で2回ほどのゲームセッションがあったが、TSRの倒産の影響でキャンペーンが続かず。自分はドワーフのプリーストを担当したんだけどなあ。