前回の復習
NOVA「前回は、バードについて語っていて、予想よりも長い話になった」
ヒノキ「それだけ多様性に満ちた職業クラスってことじゃな」
NOVA「バードにまつわるネタだと、ファンタジー初心者は鳥のバード(bird)と混同するのは誰もが通る道だと思います」
ヒノキ「鳥のさえずりが歌に例えられることも多いからのう」
NOVA「吟遊詩人のバードはbardですからね。しかし、高3の時に俺はもう一つの勘違いをしていました」
ヒノキ「バードに関する勘違いか?」
NOVA「高1時代にTRPGに入門した俺は、リプレイ版ロードスやD&D、ドラゴンランスを経て、高2の終わりには、指輪物語やエルリック・サーガなどのファンタジー諸作を読みふけったりしてから、『ホビットの冒険』については英語版で読もうとしてたんですね」
ヒノキ「どうして、わざわざ?」
NOVA「日本語訳が児童書だったので、高校生が読むのが気恥ずかしく、英語なら大人が読むのも恥ずかしくない、なんて青いことを考えてたんですね。まあ、その年には英語の翻訳(ファンタジー小説やTRPG関連)を将来の仕事にしたいという夢も持っていましたし、その手始めに『ホビットの冒険』を原書で読むことに挑戦したわけです。ついでにノートに訳文なんかも書いたりしていたわけですが、そこで後半に登場するBardというキャラを吟遊詩人と誤認していたんですね」
ヒノキ「ええと、それは確か悪竜スマウグを射殺した弓の達人バルドのことじゃな」
NOVA「ええ。そのバルドですが、当時MERPで『指輪』と言えば、レンジャーと吟遊詩人だとイメージが付与された俺は、バルドの職業も吟遊詩人の家系だろう、と思い込んだりしていました。何せ、バルドは鳥の言葉が分かるという異能も持っていましたし、俺の吟遊詩人のイメージは竪琴の弦で矢を放つ、アーサー王の竪琴の騎士トリスタンの記憶もあって、弓使いと吟遊詩人が違和感なく結びついてもいたり」
ヒノキ「しかし、実際のバルドはワイルドな兵士ではなかったか?」
NOVA「原作ではそうでしたね。厳しい顔の真面目な兵士でしたが、映画のホビットでは町長に反発する魚の密輸人でアウトローっぽさが強調されていました。役回りは、アラゴルンの原型となるロストロイヤル(元王族)ですが、いずれにせよ吟遊詩人の優男風味とは大きく異なるキャラでしたね。でも、無知な俺は、バルドに吟遊詩人のイメージをしばらく抱いていた始末」
ヒノキ「まあ、ワイルドで荒々しい風貌の吟遊詩人がいてもいいと思うがのう。さておき、前回は様々なゲームの吟遊詩人像の変遷を語っていたのう」
NOVA「ざっと整理すると、こんな感じです」
●AD&D初版(1978):ファイター→シーフ→ドルイドの3職転職の後で就ける上級職。
●MERP(1986、日本語訳は1987):精気界に属する準魔法使い。戦闘、一般技能、魔術関連の技能をまんべんなく習得できて、専用呪文は情報系と音を操る呪文(呪歌)が充実している。原作劇中で伝承の大家とされる半エルフのエルロンドが、このゲームでは吟遊詩人の職業である。
●ロールマスター(初版は1981、日本語版は1989年の2版を元に1990年に登場):MERPでは精気界だったのが念力界に移行した準魔法使い。なお、精気界の準魔法使いは道士(モンク)である。精気界は鎧の装着が呪文の使用に大きなペナルティを伴うが、念力界では兜の装着のみにペナルティがあるので、ロールマスターの方が吟遊詩人は重武装が行いやすい。
●ファイナルファンタジー3(1990):攻撃力は低いうえ、専用コマンドの「おうえん」などの効果も地味で低いため、使えないジョブと言われた。一応、専用アイテムの竪琴を使って、混乱や眠りなどの状態異常を発生させるという特徴があるが、当初は単体攻撃ゆえに有用でない。FFでは大勢のザコを相手どる局面が多いため、対ザコ複数に状態異常を付与できるなら役立ったものを。その後、シリーズが進むにつれて、特殊能力の「歌」の性能がアップすることで、支援役として使えるジョブに進化していく。とりわけ、FF5の「レクイエム」が対アンデッド殲滅魔法として非常に効果的だったと印象深い。
●AD&D2版(1989、日本語版は1991):初版から大きく変わって、シーフと並ぶローグ職の一種。バックスタブと鍵開けや罠外しのできない盗賊が、魔法使いの呪文を使えるようになった職業。あるいは武器でも一応、戦える魔法使いといったところか。初版の万能ぶりは影を潜めたが、強力な攻撃呪文を習得できるので、相応に強力なアタッカーと言える。加えて、魔法使いの欠点である打たれ弱さ、成長の遅さが、ローグベースのために改善されているという一面がある。技能面でも、何でも一通りはこなせるので便利な職業である。
●ドラクエ7(2000):ドラクエでの登場は遅く、芸能関係では、攻撃魔法使いの踊り子マーニャや、旅芸人パノン(旅に同行するNPC)といった職の方がデビューが早い(90年のドラクエ4)。まあ、武器屋商人のトルネコが特殊行動で歌を歌って、相手を眠らせるなどの芸を披露していたが。3の遊び人を芸能関係者と見なせるかどうかも賛否あるだろうが、公式に吟遊詩人デビューは7から。覚える特技は、相手の行動を妨害する系と、回復系の歌。しかし、スーパースターを目指すための通過職業としての意味合いが多く、吟遊詩人という職の印象は薄し。
●D&D3版(2000、日本語版は2002):システムがそれまでのAD&Dと大きく変わって、新世紀対応型になったために、バードもローグとは異なる独立したクラスとなった。2版と異なる点は、呪歌が正式に導入されて、レベルアップにより効果が上昇したり、種類が増えたこと。また、魔法使いと同じ秘術系の呪文を使うが、独自の呪文リストを用意されたもののダメージ呪文がほぼ消えたために、2版のような攻撃魔法使いとしての価値は大きく下がった。代わりに、支援系に特化した運用で、便利なサポート役として立ち回る役どころ。また、転職兼職を重視するシステムのため、秘術呪文と技能の習得の行いやすさが重宝されることも。
その他の旧世紀バード像(コンピューターゲーム編)
NOVA「さて、日本でRPGというゲームジャンルが83年ごろから紹介されて、メジャー化していくのが80年代の半ば以降という状況で、RPGの解説書がいろいろと発売されるわけだが、その中で吟遊詩人(バード)という職業解説で、しばしば引き合いに出されたのが『バーズ・テイル』というコンピューターゲームだったりする」
シロ「それは、どういうゲームですか?」
NOVA「85年に第1作が出て、俺は90年に出たファミコン版をプレイしただけだが、一言で言えば、ウィザードリィが都市や野外での探索もできるようにした作品だな。後にウィザードリィも92年の7以降はそういう方向に進化して行ったんだが、85年の時点でのバーズテイルは非常に画期的な作品と言われたものだ」
NOVA「80年代から90年代のデジタルゲームの発展は、リアルタイムで経験した人間にとっては夢のような時代だったわけだが、バーズテイルはその進化の波に乗り損ねた印象はある。ただ、レトロゲームとして、吟遊詩人について語る際には思い出される作品ってことさ」
シロ「吟遊詩人の歌について掘り下げた初期の作品ってことですね」
NOVA「まあ、ウィザードリィで初めてバードが採用されたのは、90年の6からだったな。その際は、〈演奏〉というスキルで楽器に秘められた魔力を唯一発動できる職業で、強い楽器を入手できれば非常に有用な職業となる。
「一方、ウルティマでは83年の3で、ラークという吟遊詩人が登場しているが、このラーク(Lark)というのは本来、雲雀(ヒバリ)という意味で、詩人という意味で使っているゲームもウルティマ3ぐらいしか見当たらない。性能は魔法戦士で、盗賊技能は使えない。魔術師魔法の使える詩人という意味では、初期のキャラクターかもしれないが、85年のウルティマ4では吟遊詩人が普通にbardになっているので、両者を同じ職業と見なしていいのかは少し微妙な気がする。ウルティマ4では、魔術師と僧侶の使う魔法に区別はないので、呪文の属性が違うからラークとバードは別物であるという主張も成り立たないし」
ヒノキ「ウルティマ3まではSF色が強く、ウルティマ4からはSFを捨てて純ファンタジーのケルト色が強くなったので、ケルトの吟遊詩人であるバードを名前に採用したとも考えられよう」
NOVA「つまり、85年時点では、バードとケルトは不可分で、それ以降になってから、バードがケルトに限らず吟遊詩人一般を表すゲーム用語に発展した、と言うことですかね」
ヒノキ「原典のケルト由来から、もっと一般的な詩人や楽士、芸人に解釈が広がったのが90年前後と考えてもよかろう。ところで、そろそろTRPGの方に話を戻さんか?」
NOVA「そうですね。では、D&D以外で旧世紀のものを……」
その他の旧世紀バード像(TRPG編)
NOVA「バード以外の吟遊詩人と言えば、1986年に誕生したウォーハンマーRPGで、ミンストレルが採用されていますね。大道芸人(エンターテイナー)の楽師からの転職でなれるキャリアで、呪文や呪歌を使うことはできません」
ヒノキ「純粋に、魔力とは無縁の音楽家という設定じゃな」
NOVA「『混沌の渦』もそんな感じですね。音楽が魔法のように人々の感情を動かすという概念は、D&Dでもありましたが、それを魔法の呪文と似たような形でよりシステマチックにしたのが『バーズテイル』。さらに、それを『呪歌』というゲーム用語で呼称した最初の作品が、89年の『ソード・ワールド』かもしれません。少なくとも、ソード・ワールド以前に『呪歌』という単語を使用したファンタジー作品を俺は思い付きません。まあ、呪歌(じゅか)ではなく、和語での呪い歌(まじないうた)や呪歌(のとうた)という言葉は古文などであったのかもしれませんが」
ヒノキ「祝詞(のりと)と相対する邪の概念かもしれんのう。忌み歌の類とか。しかし、ゲームの呪歌とは少し意味合いが違うようじゃ」
NOVA「あくまで、魔法の呪文の歌バージョンですからね。MERPやロールマスターではバードの呪文リストに《操り歌》というものがあったけれど、呪歌という言葉は使っていなかったですし、ゲーム用語としての呪歌を定着させたのはソード・ワールドと考えていいと思われます」
ヒノキ「ソード・ワールドの呪歌はMPを消費せずに、魔法の効果を発動する仕様じゃが、それを聞く者を敵味方問わず巻き込むという扱いにくさがあった」
NOVA「命中率アップの《モラル》は、敵がアンデッドとかゴーレム、魔動機といった歌の効果を受けない相手なら、単純に味方全員にバフなので使い勝手がいいですね。2.5になって、ダメージや回復効果を及ぼす『終律』のルールが加わったおかげで、ソード・ワールドのバードはかなりテクニカルな職業になったと思います。というか、個人的にバードの呪歌と楽素、終律のルールはじっくり研究したことがないや。歌っている間は、剣も魔法も主動作としては使えないので、バードをメインに考えるなら、補助動作を活用できる組み合わせをいろいろ考えないといけないし」
シロ「今の版だと、アルケミスト、ドルイド、ウォーリーダー、レンジャー、スカウト、ライダーなどとの組み合わせが有効そうですね」
NOVA「2.5のバード技能は、ソード・ワールドという特殊なルールの環境で独自に発展したシステムだから、ゲームとして一般化はしていないと思う。呪歌を歌えば、歌の内容ごとに指定された楽素が蓄積し、その楽素を消費することで効果の大きな終律が発動できるというシステムは、小技の使用でゲージを貯めて、ゲージが一定数貯まれば必殺技を放てるという格闘ゲームの文脈に準(なぞら)えようか」
シロ「あるいは、カードゲームのコンボに近いかも。あるカードをタップすると、特定のトークンが蓄積して、そのトークンを消費すれば、使える効果が別にある」
NOVA「ああ。2.5の呪歌はカードで管理すれば、扱いやすくなりそうだな。まあ、ソード・ワールドも誕生から30周年を経て、システムの進化をあれこれ語ることができるわけだが、無印に話を戻すと、『魔法と似たような効果を発動できるけど、MPのようなリソースを消費しないので使いたい放題』『ただし、敵も味方も区別なく巻き込むので、使い方を考慮する必要がある』『効果の内容も、単なる戦闘支援から、小動物の召喚や周囲の心をかき乱す喜劇的なものまで、実用的な魔法とは違う色物的なイメージも多く、呪歌を得意とするグラスランナーというキャラの特性とも相まって、下手に扱うとシリアスな冒険がお笑い路線に転がる爆弾みたいな技能』という個性を伴っていた」
ヒノキ「何となくじゃが、それまでは吟遊詩人というのがクールな優男というイメージが強かったのに、ソード・ワールドのグラスランナーのせいで、好奇心旺盛な扇動家で秩序の破壊者という過激なイメージが付くようになった気がする」
NOVA「時期が90年代に入ると、サイバーパンクという文脈がTRPGにつながって、大衆扇動の能力を持ったロッカーというアーキタイプが近現代ものからファンタジーに流入したとも思われ」
ヒノキ「ファンタジー世界にロックバンドを……というアイデアを導入したのも、山本弘さんじゃったか」
NOVA「ケルトに代表されるヨーロッパのファンタジー観に囚われず、日本の現代風感性をファンタジー世界に落とし込むライトノベルな雰囲気を、90年代は模索していましたからね。この日常感覚な冒険者生活を魅せていたのは、水野さんではなくて、山本さんのリプレイだった」
ヒノキ「水野さんだと、D&Dやルーンクエストといった海外RPGの後追いをしながら、どこか真面目で高尚な世界観を築こうとした節がある。そこに一種の色物的なお茶らけ感覚を投入したのが山本さんの西部諸国編で……」
NOVA「水野さんは、ファンタジーを世界観から規定する手法があって、上から下に作り上げて行く面があるんですな。世界が先にあって、キャラをその世界の枠組みに当てはめるとか。山本さんの方は、逆にキャラクターの個性を重視して、下から積み上げて行く手法をとる。だから、キャラの個性を反映して世界のルールを書き換える(あるいは構築し直す)傾向があって、それはキャラ小説のライトノベルの隆盛ともかぶる勢いがあった」
シロ「王道は水野さんで、山本さんの作品は色物を追求したというイメージもありますが?」
NOVA「まあ、水野さんのロードスが和製ファンタジーの王道を模索していた時期に、変化球を見せたのが山本さんで、すると多様性につながったという話だ。そこから友野さんや菊池たけしさんと言った個性につながっても行くわけで、リプレイとかセッションとかライブ感覚とか、音楽用語やバンドみたいなグループ演奏が、TRPGの物語を表現するという意味で、吟遊詩人という物語の語り手ともリンクする面があったりも」
シロ「王道異世界ファンタジーの世界観に、現代感覚を持ったプレイヤーキャラクターが出現して、冒険を繰り広げているうちに世界に影響を与えるのがラノベの典型ですね」
NOVA「ヒロイックファンタジーの文脈だと、そうなるわけだけど、それとは別に世界レベルの事件には巻き込まれずに冒険者の日常を描く日常ファンタジーの文脈もあって、世界が変革してしまうと、それまでの日常生活も送れなくなるから、変わらない日常を見せるという視点も大事。
「その辺は、富士見書房のファンタジア文庫の商品展開で、ラノベ第一の旗手である『スレイヤーズ』が世界の危機的な大きな話を描いた文庫書き下ろしの長編シリーズと、主人公リナの日常冒険を描いたコミカル要素の強い雑誌連載の短編シリーズの2面展開を見せた点も大きい。当時、王道ファンタジーとしては『風の大陸』という看板作品がドラマガ創刊号からあって、TRPGとは直接つながらないけど、ハイファンタジー的な大河物語を展開していた」
ヒノキ「80年代末から90年代のドラゴンマガジンの思い出か。無印ソード・ワールドの記憶を辿ると、その辺の話も喚起されるんじゃな」
NOVA「角川映画が、メディアミックスのファンタジーアニメとも縁深くつながって来ますね。さておき、物語を伝える吟遊詩人のイメージも、自分はこの辺の時代に膨らんだ気がしますが、無印ソード・ワールドのバード技能は色物というイメージが強すぎて、俺的にはこれじゃない感を覚えていたのも事実」
シロ「D&DやMERPのような多芸万能職ではないですしね」
NOVA「これはソード・ワールドの職業システムが、例えば剣ならファイター、盗賊技術ならシーフ、魔法ならソーサラーやシャーマンと個別に技能を習得して組み合わせるというもので、ソード・ワールドでD&Dのバードを再現しようとすれば、シーフ、シャーマン、バードを合わせるといいのかな、と思うのですが、そうなるとバードはどうしてもサブ技能的で、キャラのイメージとしてはシーフやシャーマンが前面に出てくる」
シロ「バード技能はおまけみたいなものですか」
NOVA「今の版でも、バードを中心に構築するのは2.5になって初めて行えるようになった形で、2.0ではまだそこまでメインにはなり得ない技能だった」
ヒノキ「それを言うなら、セージ技能だって、それ単体では使いものにならないじゃろう」
NOVA「セージは知識の専門家で、ソーサラーとの組み合わせが定番になっていますし、クレバーな戦士というキャラ付けが手軽にできます。だけど、バード技能って、呪歌が武器や魔法と同時に使えないという仕様のせいで、補助にも使えない。補助動作でも使える呪歌とかが設定されていれば、歌いながら戦える戦士とか、魔法を歌で強化するとかできるんですけど、そういうのはアリアンロッドに持って行かれた感じです」
シロ「アリアンロッドRPGは、2004年に初版が出たFEAR製のRPGですね。ソード・ワールド初版の次の世代になりますか」
NOVA「セブンフォートレス(ナイトウィザード含む)、アルシャード(ガイア以降)、アリアンロッドの3作が菊池たけしゲームの3シリーズだということですね。菊池さんは昔からバード好きで、たぶん日本のTRPG界隈で、バードの典型的なイメージである『何やら秘密を抱えた胡散くさい吟遊詩人(フッとスカしたような笑みを浮かべる)』を定着させた御仁だと考えます。きくたけさんのリ・ラスィなんかが、RPGマガジンに連載された記事で印象深いキャラとして残っている」
ヒノキ「アリアンロッドは、タイトルどおりケルトっぽい世界観を土台にしているから、バードが登場するのも分かる。21世紀のゲームだと、楽器を演奏する系のキャラもTRPGに定着しているのじゃろう。旧世紀のきくたけ氏だとセブンフォートレスが代表作と言えようが、クラスの中にバードは存在したかな?」
NOVA「2002年のV3で初めて実装されましたね。それ以前の版では、楽器を持って演出で吟遊詩人にはなれましたが、ラスィもキャラクラスとしては魔法使い(メイジ)か魔法戦士(メイジウォリアー)だったと思われ」
ヒノキ「ならば、旧世紀のバード像を語る材料にはならぬな」
NOVA「まあ、ルール上は吟遊詩人というキャラ付けはされていないけど、背景情報と趣味的な装備品として竪琴を持っていれば、吟遊詩人っぽい演出はできるのでしょうね」
シロ「吟遊詩人は、ゲームとしての実用性よりも、趣味的な技能ということですか」
NOVA「冒険の合間にハーモニカを吹く戦士とか、カスタネットでリズムをとる盗賊とか、神への祈り歌を捧げる神官とか、作詞が趣味の魔法使いとか、そんな感じのフレーバーを付けることが90年代のTRPG風景でありがちだ、と。趣味的な技能だから、冒険での実用性はなくてもいいけど、キャラ演出やロールプレイには活用できるってことで」
ヒノキ「他に、90年代の吟遊詩人だと、ルナルサーガが印象的じゃった」
NOVA「ああ、ルナルは武器として使える楽器をいろいろと設定していましたな。主人公の双子の妹エフィが、物語と伝承の神シャストアの神官で、幻覚系の魔法を扱うのが得意だった。GURPSを使った物語だから、90年代のTRPGではトップクラスのキャラクター表現力を持っていたと言っていい」
ヒノキ「汎用的で包括的なRPGじゃからな」
NOVA「他に90年代だと、『パワープレイ』(1991)とかが吟遊詩人のキャラクラスと、呪歌という魔法系統を採用していたゲームで、職業の充実度は高かったな。22種類の種族と、32種類のプレイヤーキャラ用職業が実装された作品で、シンプルながら表現力の豊かな作品だった」
ヒノキ「と言うか、吟遊詩人の話をすると見せかけて、懐かしのTRPG談義に話題を広げておらんか?」
NOVA「何か問題でも?」
ヒノキ「いや、わらわはそれでも一向に構わんのじゃが、D&Dの話題を期待してる読者の需要には応えておらんじゃろう?」
NOVA「仕方ないですね。では、今回は4版と、5版の触りを少々」
D&D4版から5版の吟遊詩人
NOVA「さて、4版のバードはバーバリアンやドルイド、ソーサラーと同様に、PHB2に登場するクラスです。4版は1冊めのPHBだけだと8つしかクラスがなくて、PHBが3冊も用意されているという贅沢なゲームでした。大体、PHBに載っているクラスを基本職、以降のサプリで追加されたクラスを追加職業と自分は認識しているのですが、4版の場合は困りますよね。ドルイドやバードを基本職と見なすか、追加職業と見なすかの判断で」
ヒノキ「4版を飛ばして、5版の話をしてはどうか? もう、今さら4版の話題に需要はないじゃろう?」
NOVA「しかし、3版のバードから、5版のバードにいきなり飛ぶと、変化が大き過ぎるのですよ」
ヒノキ「どうしてじゃ?」
NOVA「バードは元々、戦士→盗賊→ドルイドという3職の特徴を合わせ持つ職業ですが、2版になると魔法使い寄りになって、戦士としては使いにくい後衛職になりました。3版でもファイターとマルチしないと前衛キャラとしては使いにくい支援役という位置づけは変わらない」
ヒノキ「まあ、HPが盗賊並みで、奇襲攻撃で大ダメージを与えることもできないのでは、武器で戦うメリットがそれほどないからのう」
NOVA「しかし、4版と5版で再び、前衛戦士として戦うバードに返り咲いたわけです」
ヒノキ「バードが前衛じゃと?」
NOVA「実のところ、それは盗賊(ローグ)が4版からレンジャーやバーバリアンと同じ撃破役というポジションに身を置いたおかげで、前衛盗賊が標準的なオプションとして推奨された影響もあるわけですが」
ヒノキ「盗賊は魔法使いほどではないが、鎧が薄くて打たれ弱いという弱点があって、前に立つのは危険じゃろう?」
NOVA「しかし、4版は鎧が頑丈なファイターやパラディンが防衛役に分類されて、仲間をかばうような能力を付与されたわけですな。つまり、防衛役がしっかり仕事していれば(自分の持ってるパワーを適切に使えば)、盗賊がよほど迂闊な行動をしない限り(敵に囲まれて、ファイターのかばう能力では対処できない数の集中攻撃を受けない限り)、少しぐらいは前に出ても安心できるシステムです」
ヒノキ「つまり、ローグはレンジャーやバーバリアン並みに戦えるのが4版じゃと」
NOVA「少し違います。役割は同じ撃破役ですが、アクションのイメージは異なりますね。バーバリアンは肉を斬らせて暴れ回るタフガイです。HPが高いので、ちょっとぐらいの傷は我慢して、血まみれになりながら、敵にはもっと大ダメージを与えるのがバーバリアン。一方、レンジャーはさすがにバーバリアンみたいな戦い方はできないので、飛び道具を使うか、二刀流という攻撃回数の利を活かす。そして、ローグは急所攻撃という大ダメージを与える必殺技を活用できなければ、レンジャーほどのコンスタントな攻撃力を持たない」
ヒノキ「つまり、バーバリアンは敵陣に突撃する。レンジャーは距離をとって、スピードを活かした戦術。ローグは敵の背後に回り込んで一撃必殺ということじゃな」
NOVA「ええ。1対1で正面から戦う場合、バーバリアンはHP量と破壊力で相手を圧倒できる。レンジャーは攻撃回数で競り勝てる。しかし、ローグは1人だと弱いです。仲間に敵を引きつけてもらって、自分は背後に回って奇襲、という段取りを繰り返すことで、連携戦術をとって初めて強さを発揮できるのがローグだ、と」
ヒノキ「で、バードはどうなんじゃ?」
NOVA「シロ君、旧5版バードのサブクラスを紹介してくれ」
シロ「えっ、突然、こっちに話を振られた? まさに奇襲攻撃?」
NOVA「いや、4版特有の軍師キャラであるウォーロードの采配だ。自分ではなく、仲間に攻撃させるという連携戦術を意図した」
ヒノキ「物は言いようじゃな」
シロ「ええと、旧5版のバードのサブクラスは2つですね。『知の楽派』と『勇の楽派』。前者は魔法使い寄りで、後者は戦士寄りということでよろしいでしょうか」
NOVA「大筋としてはそうだな。5版のバードの呪文リストでも、ファイアボールに代表される破壊的なダメージ呪文は載っていないが、『知の楽派』だと、6レベルの時点で他のクラスの呪文を2つ(3レベル呪文まで)追加習得できる。これによって、ウィザード呪文からファイアボールを習得したり、クレリック呪文からマス・ヒーリング・ワード(集団癒しの言葉)を習得して集団回復能力を高めたりすることが可能になる」
ヒノキ「2つだけじゃが、他のクラスの呪文を選択使用できるのは、多芸のバードっぽい能力じゃのう」
NOVA「一方、『勇の楽派』だと、使える武器や鎧が増えて、6レベル以降は2回攻撃が可能になる。5版は戦士系じゃないと攻撃回数が増えない仕様なんだな。素で攻撃回数が増えるクラスは、バーバリアン、パラディン、ファイター、モンク、レンジャーだけで、とりわけファイターは最大4回攻撃が行える。また、モンクは武術と連打を組み合わせて攻撃回数を増加できるけど、素手攻撃なので一撃のダメージが低い仕様」
ヒノキ「レンジャーは二刀流じゃから、2回攻撃が可能ではなかったか?」
NOVA「追加攻撃で、5レベル以降は4回攻撃が可能になりますね。一方、5版ではファイターだって二刀流は特技で習得できますので、その気になれば最大2×4で8回攻撃も可能になります(レベル20時点)。実のところ、4版は防衛役で攻撃特化ではなかったファイターですが、5版では最強の武器破壊力を持つクラスに返り咲いているわけです。もちろん、他の戦士系クラスには武器のダメージを上げる魔法的な特殊能力や、ファイターにできないダメージ増加能力を持ちますが、単純に攻撃回数の増加を考えるなら、ファイター最強というのが5版のクラス評価になりますね」
シロ「版によって、ファイターの価値もずいぶんと変わって来るんですね」
NOVA「その通り。ともあれ、バードはサブクラスを選択することで、魔法使い寄りと戦士寄りの2つの道があったわけです、旧版のPHBでは」
ヒノキ「新版では?」
NOVA「サブクラスが4種類になりました。まあ、その話は次回の記事に回すとして、ここではバードが戦士として立ち回れるようになったきっかけが4版にある、ということです。3版までは、一応、剣は振るえるけど、そうするメリットがほぼないので、せいぜい護身用、あるいはザコ戦のみの武器戦闘能力でしたが、4版バードは指揮役というクレリック同様の立ち位置に昇格しました」
ヒノキ「クレリック? 魔法使いではなく、か?」
NOVA「秘術魔法の使える指揮役で、味方を鼓舞しながら回復支援をする役どころ。鎖鎧と軽盾、片手剣および全ての飛び道具を使いこなします。そして、バードの多芸ぶりは『習得していない全ての技能に+1ボーナス』『ウィザードやクレリック同様、儀式呪文を習得済み』『通常1つのマルチクラス特技を複数習得可』など、いろいろな育成が可能な特徴になっています」
シロ「4版はよく分かっていないので、解説をお願いしたいんですけど?」
NOVA「4版は、習得済みの技能に+5ボーナスが得られる仕様で、未習得技能にはボーナスが得られない。D20の+5だから、単純に習得した技能の成功率は25%アップと思えば分かりやすいだろう。そして、バードは未習得の技能でも+1、つまり5%の成功しやすさが付いてくるわけだ。多芸ゆえに、何をやらせても全くの素人ではない、ということだな。
「儀式呪文については、戦闘中心のゲームである4版において、パワーと呼ばれる武芸や戦闘用呪文などがキャラクターデータの中心になる。一方で、戦闘用でない呪文(鍵開けとか、水上歩行とか、言語理解とか……)は、あらかじめ儀式用の巻物を作成したり、入手したりして、相応に時間をかけて発動する必要がある。そういう非パワーの呪文を儀式呪文と称して、基本的にウィザード、クレリックのみが扱えるんだ」
シロ「ウォーロックはダメなんですか?」
NOVA「ウォーロックとソーサラーは契約や才能で魔法を扱うが、きちんと魔法の原理や神の真理を学問として体系的に学んだわけではないので、儀式書を読みこなして使うことはできないんだ。どうしても使いたいなら、〈魔法学〉か〈宗教〉の技能を習得して、《儀式修得者》の特技も会得しなければいけない。PHB2では、ドルイドとバードも正式に儀式を学んだ者として、儀式呪文が使える。また、バード専用の儀式呪文も設定されてあって、儀式のルールはなかなか奥が深い」
ヒノキ「まあ、儀式が手軽であっては、儀式とは言えんじゃろう」
NOVA「これが厄介なのは、5版にも儀式発動というルールがあって、4版とは全然、意味合いが違うんですよ。まあ、5版の儀式はすごくシンプルでした」
シロ「と言うと?」
NOVA「やはり、ウィザード、クレリック、ドルイド、バードのみが可能なんですが、儀式対応の呪文は10分ほど時間を余分に掛けることで、呪文スロットを消費することなく、準備しないでも使用することが可能です。例えば、ディテクト・マジック(魔法の感知)は呪文として発動すると、瞬時に魔法を見分けることができますが、相応に消耗する。しかし、儀式として発動すると、じっくり時間をかけて消耗なしに魔法を見分ける形になります。普通、そういう呪文はモンスターを倒して、ゆっくり休憩しながら、戦利品の中にマジックアイテムがないかと調べる際に使うので、儀式発動の方が効率いいわけですね」
ヒノキ「しかし、どこかの屋敷にこっそり侵入して、素早くマジックアイテムを見つけて盗み出すなど、ゆっくり休憩している余裕がないときは、儀式ではなく通常の呪文として発動する方がいい、と」
NOVA「ええ。4版の儀式は前もって準備が必要なんですが、5版の儀式はその場で時間をかけるだけで事前準備を必要としない。まあ、ディテクト・マジックについては、仲間にウォーロックがいて《魔力を見る目》の妖術を習得していれば、いつでも瞬時に消耗なしに魔力検知できるわけですが。ウォーロックはディテクト・マジックの呪文を覚えないので、その妖術を習得していなければ、魔力の分からない魔法使いという間抜けなことになってしまうので、普通は習得するだろうと考えます」
シロ「でも、耳の聞こえない作曲家とか、味音痴な料理人(作る料理が全部、激甘か激辛と極端なのに、本人はそれが美味しいと思っている)もいるわけですから、魔力が見えていないのに、感覚だけで発動できる魔法使いだっていても不思議ではないか、と」
NOVA「自分の紡ぐ魔法は手触りで分かるけど、他人の施した魔法は分からないとか、そんな類か。逆に人の欠点はよく分かるけど、自分の欠点には鈍感な人間は結構いると思うが」
ヒノキ「儀式の話はそれぐらいにして、マルチクラス特技とは何じゃ?」
NOVA「ああ。それもややこしいのですが、3版はマルチクラスが当然のシステムだった。だけど、4版はマルチクラスが特別ルールみたいに扱われています。例えば、ローグのマルチクラス特技《影の潜み手》を取ると、〈盗賊〉技能が習得済みになって、急所攻撃が可能になる」
シロ「すると、ファイターでも急所攻撃が可能になるんですね」
NOVA「3版みたいに、HPやST値に影響を与えたりはしなくて、技能やちょっとしたクラス特徴が獲得できるぐらいだな。ウィザードのマルチクラス特技《秘術の参入者》を取ると、〈魔法学〉技能が習得済みになって、初歩の攻撃呪文を1つだけ習得できたりする。逆に、強力な呪文(ファイアボールとか)は習得できない」
シロ「4版のマルチクラスは、非常に限定的だと」
NOVA「5版の方は、3版に近いマルチクラスのルールだけど、ウィザードとクレリックの呪文を両方使えるビショップみたいなキャラをプレイしたい場合は、必要になるな」
シロ「いわゆる賢者って奴ですね」
NOVA「魔法戦士なら、ファイターのサブクラスでもまかなえるんだが、信仰魔法の使えるモンクとか、ドラゴンの血を引く聖騎士勇者とかはマルチクラスのルールが必要だな。普通にプレイするなら使わなくてもいいルールだが、アニメやコミックのような属性モリモリのキャラを再現するためには、マルチクラスを使うことが再現性を向上させる」
シロ「5版は4版に比べて、自由度を向上させたってことですか」
NOVA「3版は自由度を上げつつ、整合性をとって構築されたシステム。4版は後者を重視し、データ志向を高めたガチガチのゲーマーゲーム。一方、5版はシンプルなシステムで、かつ自由度を上げて、4版とは対極的になるシステムだが、キャラクタークラスの方向性については、4版から5版に受け継がれた要素も大きい。とりわけ、バードの魔法戦士らしさを改めて強調した点だな。その中でも、魔法特化のサブクラスと武器戦闘を重視したサブクラスの二極を示して、前衛バードを作りやすくしたのは4版の恩恵だ」
シロ「でも、前衛バードを作る際に問題になるのは、バード個人の戦闘力だけでなく、武器攻撃と支援能力を同時に活用できないということですね」
NOVA「つまり、支援能力が強力になればなるほど、武器攻撃をするメリットがなくなって、支援一辺倒になりがちということだな。しかし、4版におけるパワーは通常攻撃(コンピューターRPGにおける『たたかう』コマンド)が存在しない」
シロ「どういうことですか?」
NOVA「単純なファイターの場合、『とりあえず目の前の敵を殴ります』という宣言は割とありがちだけど、D&D4版ではファイターの通常攻撃(無限回パワー)は、クリーヴ(薙ぎ払い)、シュア・ストライク(確かな打撃)、タイド・オヴ・アイアン(打ち寄せるくろがね)、リーピング・ストライク(刈り残さぬ打撃)のどれかを選択することになる」
ヒノキ「各職業ごとに、通常攻撃でも別種の技が設定されておるわけじゃな」
NOVA「順番に、『複数体攻撃』『威力は弱いけど命中率+2』『通常攻撃に、相手を押し込んで1マス移動させる効果付き』『通常攻撃。命中しなくても小ダメージを与える』といった効果がある」
シロ「最後のは、大剣をブンと振るったら、直撃しなくても風圧だけで傷つくような演出技ですか?」
NOVA「グレートソードだと、命中すればD10で、そこに筋力ボーナスが+3だと想定すると、期待値8〜9のダメージになるな。リーピング・ストライクだと、外れても筋力ボーナス3点分のダメージを与える仕様だ」
シロ「HP3以下だと、狙われた瞬間に確実に死ぬんですね」
NOVA「両手持ちの武器使いは、クリーヴとリーピング・ストライクを最初に習得することを推奨されている一方、片手武器と盾装備のファイターはシュア・ストライクとタイド・オヴ・アイアンを推奨されている。つまり、装備している武装に応じたパワーが設定されているわけだ」
シロ「通常攻撃が、薙ぎ払いとか、風圧だけでダメージを与えるとか、何らかの特殊効果が付いてくるわけですね」
NOVA「バードの場合は、智謀型と勇気型で推奨パワーが変わってくる。智謀型は遠隔パワーのヴィシャス・モッカリィ(悪意ある嘲り)とミスディレクテッド・マーク(誤導マーク)だ」
シロ「通常攻撃が、相手を嘲る技か、マーク……って何ですか?」
NOVA「これも4版特有のルールで、マークされた敵は不利な効果を受ける。前者は悪口で敵にD6+魅力ボーナスの精神ダメージを与えてから、相手の命中にマイナス2のペナルティを与える」
シロ「悪口でダメージ! なかなか酷い通常攻撃ですね」
NOVA「後者は何らかの魔力をぶつけてD8+魅力ボーナスの無属性ダメージを与えてから、その攻撃があたかもバードの仲間からの攻撃であるかのように見せかける」
シロ「どういうことです?」
NOVA「遠くから石をぶつけたように見せかけて、それをしたのが味方のファイターであるかのようにごまかすような感じか。ファイターの攻撃で、石が飛ばされて巻き添えを食ったように演出する?」
シロ「すると、相手はバードではなく、ファイターを警戒するようになる、と?」
NOVA「そして、ファイターは毎ラウンド1体の敵をマークすることができて、マークした敵に機会攻撃で追加ダメージを与え得る特徴を持っているんだが、バードの支援でファイターのマーク数が増えることになって、ファイターの攻撃回数が増えることになるわけだ」
シロ「でも、それってファイターが敵に狙われやすくなるということですよね」
NOVA「そうやって、敵の目を引きつけて仲間を攻撃させないようにするのがファイターの仕事だからな。バードがファイターのお仕事を手助けしているわけだ。まあ、防御力の高いファイターだったら、敵の集中攻撃を受けても持ち堪えることができるし、それで傷ついてもバードが癒してあげることも可能」
シロ「何というか、姑息なキャラのように思えます。4版の智謀バードは」
NOVA「そういうのが嫌なら、勇気バードを選べばいい。こちらの通常攻撃は、ウォー・ソング・ストライク(戦歌の一打)とガイディング・ストライク(導きの一打)で、どちらも近接武器攻撃で発動する」
シロ「何だか普通の武器攻撃なんですね」
NOVA「もちろん追加効果付きだけどな。なお、バードのパワーは近接武器攻撃でも、筋力ではなくて魅力ボーナスが乗るので、筋力は必要ない。ウォー・ソングの方は武器でダメージを与えた後、同じ敵を味方が攻撃した場合、バードの耐久力ボーナスと同じだけの一時的HPをもらえる」
ヒノキ「つまり、バードが敵を殴って、『今です。後に続いて下さい』と言って、仲間が追加攻撃を加えると、上手く連携できたってことで気合いが入るといった感じか?」
NOVA「『うぉ〜、我が同志よ、後に続けえ♪ 奴を攻めれば、詩神の加護はそなたのもの〜♪』とか歌いながら攻撃するような演出もありか、と」
シロ「でも、バードが女の子だったら、『みんな〜、わたしの後に続いて、こいつを攻撃して♪ 上手く当てれば、❤️を送るわよ〜♪』とアイドルみたいなことも言えるのでは?」
NOVA「つまり、バードが最初に一撃浴びせて、続けて仲間がダメージを与えたら、ご褒美にHPが増える、という仕様」
ヒノキ「それが通常攻撃とは、妙なゲームじゃのう、D&D4版は」
NOVA「もう一つのガイディングの方は、バードが攻撃した敵は弱点を看破されて、特定の防御値が2点下がるという代物。『今だ。奴の弱点はあの角だ。そこに攻撃を集中しろ』って感じの演出芸ですな」
シロ「通常攻撃に特殊効果がいっぱい乗っていて、味方を支援できることは分かりました」
NOVA「そして、勇気バードの必殺技(1日毎パワー)で推奨されているのが、スレイヤーズ・ソング(殺戮者の歌)です」
ヒノキ「また、何だか物騒な歌じゃのう」
NOVA「これがレベル1で使えるのが、4版バードです。何というか、4版は派手なゲーム性なんですな」
ヒノキ「どんな効果じゃ?」
NOVA「武器攻撃で2倍ダメージを与えて、外れてもダメージ半減するだけなので、確実にダメージを与えるわけですが、この効果が発動すると、以降は自分と味方全員の攻撃が敵に戦術的優位を与えます。簡単に言えば、命中ボーナス+2を与え、一部の特殊能力(ローグの急所攻撃)を発動可能にする、と。さらに、この歌の効果は一度発動すると、バードが攻撃を当てた相手にことごとく降りかかる、持続可能な呪いみたいなものですね」
ヒノキ「すると、バードは殺しの歌を口ずさみながら、敵を呪い、その敵は他の味方からもフルボッコにされるという技か」
NOVA「バード自身が与えるダメージは大したことがないのですが、味方の攻撃を誘導して、大ダメージを与えさせたり、戦況を有利にするようなクラスとなっています。剣で戦いながら、同時に味方を支援する効果がいっぱいなのが4版バードってことで」
シロ「それで1レベルってことは、レベルが上がると、もっといろいろできるわけですか」
NOVA「傾向的には、勇気のバードが味方にバフを与え、智謀のバードが敵にデバフを与えるようなパワーが多いかな、と。つまり、味方の戦意を高揚させる熱血指揮官が勇気のバードで、敵にいろいろと嫌がらせをする陰キャ指揮官が智謀のバード。どちらも魅力的なキャラだと考えます」
ヒノキ「4版バードは、非常に癖が強いクラスだと分かった」
NOVA「5版はずいぶんマイルドになったと思いますが、次回はシロ君にメインを任せましょう」
(当記事 完)



