ようやく5版の本題に
NOVA「さて、前回はバーズテイルとか、ウルティマやウィザードリィ、ウォーハンマー、ソード・ワールドなど、いろいろな吟遊詩人話に寄り道してから、D&D4版にまで至ったわけだが」
ヒノキ「バードは多芸職という特徴を持つが、前衛戦士としてはあまり強くなくて、作品によって扱いが大きく異なるという話じゃったな」
NOVA「基本は軽装戦士で技能職。一部の作品では魔法職でもあったり、呪歌や音楽を利用した特殊な術を使う。扱う魔法は主に精神的な影響を与えるか、味方を支援するものが中心だけど、作品によっては破壊的な魔法を覚えたり、回復呪文を覚えたり、同じD&Dでも版によって術の傾向が変わって来たりする」
シロ「完全に魔法使い寄りのアタッカーになれるのはAD&D2版だけで、3版以降は初版のドルイド的な治癒と支援、それから召喚呪文なんかを得意とする反面、武器戦闘では特筆する能力を持たない、と」
NOVA「一応、たしなみ程度に剣は使えるけど、防具が弱くて壁役にはなれず、後方支援に回る方が持ち味を活かせる。しかし、4版からは一応、魔法戦士であるという特質を強調して、魔法使い型と戦士型の2つの成長パターンを提示。それが5版のサブクラスにも反映された、という話だ」
5版バードの特徴
シロ「では、5版については、勉強してきたボクが中心となって話を進めます。まず、5版バードはHPがD8ベースで、D6ベースの3版までより打たれ強くなっているんですね」
NOVA「4版はHPの数値が他のD&Dと大きく異なる基準(ファイターの1レベルHPが15点など、従来の1.5倍ほど)になっているので、直接比較しにくいが、各職のHPの傾向をまとめると、こうなるな」
- バーバリアン:AD&DではD12ベースで、最もタフなクラス。版が変わっても、変更なし。なお、4版では1レベル時で15点でファイター並みになったが、それはもっと頑健な原始の防衛役ウォーデンというクラスがタフ蛮族の役割を受け継いだからである。
- 戦士職:クラシックD&DではD8。AD&DでD10ベースとなって、以後も継続。ファイター、パラディン、レンジャーがこのカテゴリーになるが、レンジャーの場合だけ一部の版によってはD8ベースに弱体化することがあった。なお、4版では1レベル時で15点。
- 神官職:クラシックD&DではD6。AD&DでD8ベースとなって、基本的に戦士系を補佐して武器戦闘をこなせるだけのタフさは持っている。クレリック、ドルイド、モンクなどがこの系統。なお、4版では1レベル時で12点。
- 盗賊職:クラシックD&DではD4。AD&DでD6ベースと増えたが、神官職より打たれ弱いのは変わらず、防具の薄さも影響して正面で戦うのは危険。ただし、AD&Dまでは成長速度が速い(戦士の6割程度の経験点でレベルアップできる)ので、成長の遅い他の職とHPが並び立つこともあって、素早い身のこなしや持ち前の隠密能力がある分、多少の生存性は担保されている。3版以降は、軽装戦士として少しずつ強化されていき、5版では神官職と同じD8ベースに格上げした。ローグ、バードの他、打たれ強い魔法職と言われるウォーロックもこの系統になる。なお、4版でも1レベル時に12点で、神官職並みにタフになったのは、そこから。
- 魔法職:クラシックD&DではD4で、エルフほどではないが成長も遅いので、魔法使いはHP的に貧弱とされる。AD&Dになっても、その状況は変わらず、他職のHPが増した分、余計に虚弱さが強調されることに。5版になって、盗賊職のHPが高まったのと合わせるかのようにD6ベースになって、死にやすさが軽減された。なお、4版では1レベル時で10点。
ヒノキ「HP量的には、神官職と盗賊職の格差がなくなったのが、近年の特徴ということか」
NOVA「近年といっても、2008年の4版からそうなっていますので、もう17年も前の話ですけどね。つまり、HP量的には盗賊キャラが前に出ても問題がない、と扱われたのが4版からです。それで、前衛バードも十分実用的になったわけですな」
ヒノキ「それに加えて、4版では武器攻撃に支援効果を付与したパワーというルールで、常時、殴りながら味方を鼓舞する指揮役バードを確立した、と。5版のバードはどうなんじゃ?」
NOVA「シロ君、解説を頼む」
シロ「はい。まず、5版バードは『バードの声援』という支援能力を、ボーナス・アクションで使うことができます」
ヒノキ「ボーナス・アクションとは、通常行動に合わせて使用できる追加行動じゃったな」
NOVA「ええ。ソード・ワールドでは補助動作、多くのFEAR製ゲームではマイナー・アクションと呼ばれて、通常行動(主動作、メジャー・アクション)に加えて実行できるアクションです。ソード・ワールドでは補助動作の使用回数には制限がないので、エンハンサーの練技とかアルケミストの賦術(カードによる支援術)など、同一ラウンドでいくつも同時行動できる(MPや呪符を消費するけど)仕様ですが、基本はマイナー・アクションやらボーナス・アクションは自ターンに1回だけ使えます」
ヒノキ「他のゲームの話はともかく、D&D5版のバードは武器攻撃と同時に、声援で仲間の支援をすることができる、と」
シロ「声援は、1日に自分の【魅力】ボーナス回だけ使用できて、仲間に声援ダイス(低レベル時は6面ダイス)を与える効果です。声援ダイスを受けとった仲間は、自分の命中判定その他、各種の判定が僅差で失敗した際に、声援ダイスを振り足して成功させることが可能」
ヒノキ「+1ボーナスではなく、+D6ボーナスか。惜しくも2点差で命中し損ねた際に、声援ダイスを振り足して、後出しで当てることができる、と」
シロ「もちろん、使用した声援ダイスは消費されますので、声援ダイスを受けとった者は自分で自由に使いどきを決定できるわけです」
ヒノキ「バードの声援効果を、仲間にD6を託すことで表現した特徴か」
NOVA「もちろん、バードが無尽蔵で声援できるわけでなく、1日の使用回数が【魅力】ボーナスだけ、という制限がありますが、ダイスの種類が5レベルでD8、10レベルでD10、15レベルでD12になって、支援効果がますます高まるので、高レベルバードの声援は非常に有用なんですよ。なお、今のD&Dで能力値振り分けルールを使うと、長所のボーナスは+2〜3というのが基本ですから、1日3回まで声援できる。
「さらに、レベル5になると、大休憩(8時間の睡眠)ではなくて小休憩(1時間ほどのブレイクタイム)でも声援回数が回復するので、支援頻度が高まりますね」
シロ「他にも、小休憩のたびに『休息の歌』を使って、仲間のHP回復にD6ボーナスを与えたり、バードがいるパーティーは普通よりも優雅な冒険ができそうです」
NOVA「他にも、6レベルで『心を守る歌』を習得して、自分や周囲の仲間の恐怖や魅了に対するST判定に有利を与えるとか、自分の行うあらゆる能力値判定にボーナスを受ける特性とか、得意技能2種類のボーナス2倍とか、技術職としての芸達者ぶりが目覚ましい」
シロ「技能についてですけど、他のクラスはそれぞれ6つぐらいから指定された中から2つを選ぶ仕様じゃないですか」
NOVA「ローグは11種類から4つ、レンジャーは8種類から3つと優遇されている感じだな」
シロ「でも、バードって凄いですね。『任意の技能3つ』としか書かれていない」
NOVA「旧5版のPHBでは、全18種類の技能があるので、『18種類から3つ』と考えればいい」
ヒノキ「要するに、何でもできるということじゃな」
NOVA「厳密には、何でもできる可能性があるってことですね。ただ、技能の選択肢は少ない方が初心者向きだと思うので、指針としては〈芸能〉が必須で、残り2つを〈隠密〉〈軽業〉〈手先の早業〉〈魔法学〉〈歴史〉〈知覚〉から選ぶのが無難だと考えます。そして、パーティーの他のメンバーが習得した技能を確認して、誰も習得していないものを選ぶのがバードのたしなみでしょう」
シロ「それでは、次にサブクラスの話に移ることにします」
旧5版PHBのサブクラス
シロ「前回も話したとおり、魔法使い寄りの『知の楽派』と、戦士寄りの『勇の楽派』が基本になりますね」
①知の楽派
シロ「バードが3レベルになって、この楽派を選ぶと、まず追加技能を3つ選択できるんですね」
NOVA「単に魔法使い寄りってだけではなくて、盗賊以上の多才な技術職になるわけだな」
シロ「そして、声援の使用回数を使って、敵の妨害をする〈言葉の刃〉を習得する」
NOVA「敵の命中を下げるとか、能力値判定を失敗させるか、ダメージを減らすことができるんだな」
ヒノキ「味方へのバフだけでなく、敵へのデバフ効果も使いこなすのか」
NOVA「相手を妨害するのに長けているわけですな、姑息にも。敵に『知の楽派のバード』がいると、実にウザいです。成功した攻撃を、ダイス目下げられて失敗させられるというのは、単に強い敵に避けられることよりも屈辱です。一番ひどいのはこのパターン」
敵『よし、出目20だ。クリティカルで2倍ダメージ!』
バード『それはいけませんな。そのクリティカルは幻です。(コロコロ)D6で5が出ましたので、ダイス目は20じゃなくて、15にしてください』
味方ファイター『だったら、こっちのACで十分防げるんじゃないか?』
敵『くっ。おのれ、詐術使いにたばかられたか!?』
バード『人聞きの悪い。ただ、微かな不協和音を発して、感覚を狂わせただけです(口からデマカセのロールプレイ)』
NOVA「何にせよ、ダイス目を操作する能力は、割と高等プレイな感じがします」
ヒノキ「今のD&Dはそうなってたんじゃな」
NOVA「バードは明確に、上級者向きのクラスって感じですね。できることが多くて、いろいろとテクニカルで」
シロ「で、『知の楽派』最大の特徴はレベル6で、他のクラスから呪文2つを追加習得できることですね」
NOVA「これによって、レベル3呪文のファイアボールを使えるバードになれるんだな。実のところ『知の楽派』じゃなくても、レベル10、14、18になった段階で、それぞれレベル5、レベル8、レベル9以下の呪文を2つずつ追加習得できるんだが、『知の楽派』はレベル6という早い段階からそれができることにメリットがある」
ヒノキ「D&Dの魔法使いは、ファイアボールが撃てるようになった瞬間から、覚醒して世界が変わると昔から言われて来たからのう。レベル10になって、より強力な呪文が使えるようになったとしても、レベル5や6の時点でファイアボールが撃てるか撃てないかは、プレイスタイルに大きな影響を与えよう」
NOVA「個人的にはTRPGでレベル10までキャラを育てた経験があまりないので、大体レベル5〜7というのがイメージしやすい適正レベルだと思ってます。もちろん、ルールブックやリプレイなんかを読んで高レベルプレイのイメージは持っているんだけど」
ヒノキ「つまり、レベル10になって強力なダメージ呪文を覚えても、高レベルキャンペーンを行う熟練プレイヤー層でなければ、遅すぎるということじゃな」
NOVA「特撮ヒーローで言うなら、最終回でようやく必殺技が誕生したってところですね。まあ、最終回でようやく主人公が変身したウルトラマンメビウスとか、まどマギみたいなものですか」
シロ「とにかく、攻撃魔法使いとしてのバードを堪能したければ、『知の楽派』がお勧めってことですね」
②勇の楽派
ヒノキ「それで魔法戦士として武装強化したサブクラスがこれじゃな」
シロ「素のバードは軽装鎧(革鎧)と片手用の長剣、ハンド・クロスボウぐらいが限度ですが、『勇の楽派』によって中装鎧(鎖鎧)と盾、軍用武器が使えるようになります。まあ、接近戦では長剣を使えれば十分強くて、それ以上を望むなら両手用武器を振り回すことになりますが、それはバードっぽくないので、防御面の向上の方がポイントだと考えます。盾込みでACが4〜5も上がるのは安心感が大きく違う」
NOVA「遠隔武器でロングボウが使えるようになるのも大きいな。ダメージがD6からD8になるので、1段階アップ。さらに6レベルで2回攻撃が可能なので、本職の戦士たちみたいな破壊力の劇的な向上はないにしても、普通に武器戦闘でそれなりのダメージソースとして期待はできるだろう」
シロ「あと、声援ダイスでダメージを強化したり、ACを強化できるようになるのもいいですね。通常だと、命中判定、能力値判定、ST判定にしか使えませんから」
NOVA「魔法戦士憧れの剣と魔法の同時使用は、14レベルまでお預けか。まあ、新5版だと初級呪文に限り、6レベルの2回攻撃の1回と置き換え可能になったらしいが」
シロ「魔法戦士だと、ファイターサブクラスのエルドリッチナイトと比べて、どうですか?」
NOVA「魔法の習得スピードや使用回数はバードの方が上だし、エルドリッチナイトがファイアーボールなどの3レベル呪文を覚えるのは13レベルだから、魔法戦だとバードに軍配が上がり、武器戦闘だと普通にエルドリッチナイトが専門職だから強いと言ったところか。エルドリッチナイトは、7レベルで初級呪文と武器の同時使用ができるが、他の上位呪文との併用は18レベルまでお預けだ」
ヒノキ「単純に魔法戦士と言っても、元のクラスが違えば、それぞれの有利不利の差があるのじゃな」
NOVA「フォーゴトン・レルムだと、ウィザードのサブクラスでエルフ専用のブレードシンガーって魔法戦士のサブクラスが用意されているのですが、そちらはウィザードと通常バードの間ぐらいの強さ。基本的には魔法使いなので、ちょっと武器が使えるようになっただけで、強くなったと錯覚すると、痛い目にあうほどの打たれ弱さを誇ります」
ヒノキ「そんなのは誇れんじゃろう」
NOVA「ブレードシンガーの装備は素のバード並みで、あくまで魔法の専門家がたしなみ程度に武器が使えるようになったという程度ですから、元のHPも低いですし、積極的に前に出ていいキャラではないでしょうね。どうも、レルム専用のサブクラスは、あくまでレルムの世界観を表現するだけのもので、強いか弱いかと言われたら、弱いって印象です。まあ、旧5版初期のサプリなので、今後、新5版でアップデートされたら、もう少し強くなるのかもしれませんが」
新5版PHBのサブクラス
NOVA「新5版になると、サブクラスはそれぞれ4つずつという規定ができたので、元が2つのバードは新たに2つ追加されました。1つは、ザナサー本から昇格した『惑わしの楽派』。もう一つは、完全に新しい『踊りの楽派』です。後者を選ぶと、歌って踊れるアイドルにだってなれるわけですね」
ヒノキ「それは人気が出そうじゃな」
NOVA「元のルールを持っていないので、こちらの情報を参考に、紹介したいと思います」
③踊りの楽派
NOVA「期待の新人アイドルで、今のプリキュアを再現できそうな気がしていますが、まずACに通常の【敏捷】ボーナスだけでなく、【魅力】ボーナスを加えることができるので、回避力が向上って感じですね」
シロ「つまり、前衛キャラですか?」
NOVA「鎧を着なくても、それなりの防御力を発揮できるクラスはバーバリアンがいましたので、まあ、バーバリアンの【耐久力】ボーナスが【魅力】ボーナスに置き換わった感じですね」
ヒノキ「バーバリアンは筋肉の鎧で敵の攻撃を弾き返すって雰囲気じゃったが、踊り子は魅力でどんな防御をするのじゃ?」
NOVA「アイドルのオーラで、相手を近づけないとか、ウインクでもして相手の戦意をくじいて、武器を振るう手を鈍らせるとかですかね?」
ヒノキ「心を持たないゴーレムなんかには通じんじゃろう」
NOVA「だったら、踊りながらキラキラ星でもバラまいて、幻惑するんですよ。キラキラ星は物理的な盾にもなるような演出です。しかも、バードの声援を使うと、アクションやボーナス・アクション・リアクションで消費すると、素手攻撃ができるそうですよ。まさにグーで殴る(タッチする)新たなプリキュアが再現できる。声援で殴るというアクションで、しかもカウンターまでできるってのは、どこのモンクか、という新時代のアイドルですな」
シロ「素手攻撃ってモンク以外は弱いはずですが?」
NOVA「しかし、このサブクラスの場合は、素手攻撃のボーナスが【筋力】ではなくて【敏捷】で、しかも声援ダイスと同じ威力という。ええと、モンクの武術並みというか、一撃の破壊力はモンクより上らしいです」
ヒノキ「アイドルは武闘家よりも強いじゃと?」
NOVA「まあ、普通は素手ダメージが『1点+【筋力】ボーナス』ですが、モンクは初期状態で『D4+【敏捷】ボーナス』、だけどボーナス・アクションで2回攻撃が標準です。しかし、アイドルは初期状態で『D6+【敏捷】ボーナス』なので、連打はできなくても、素手の1発がモンク以上の破壊力。アイドルのキラキラグータッチはスピアやショートソードで貫かれたぐらいの威力です」
シロ「もう、『踊りの楽派』はアイドルという呼称で確定なんですね」
NOVA「新番組のキュアアイドルが、まるでD&D新版を参考にしたかのような演出だからな。まさか、アイドルが殴る蹴るの暴行で敵モンスターと戦うとは思わないだろう。前作が暴力を使わずに、ハグして魔物化した動物を浄化する演出だったのに一転、闇堕ちさせられた人間の心を封印した魔物を浄化するのに、殴る蹴るの暴行をキラキラ星マークで見た目を緩和しつつも弱らせたうえで、巨大なハートマークをぶつけて浄化なんて、どこの機動武闘伝だよ、と言いたい第1話だった」
ヒノキ「しかも、ドンブラザーズとコラボしたような演出だったようじゃな」
NOVA「うちの娘(姉)は、ドンブラプリキュアと認定して、大興奮です。まさか、アイドルというモチーフが、機動武闘伝とドンブラみたいな演出で魅せるとは、面白ネタとして語らずにはいられない」
シロ「で、話を戻して、『踊りの楽派』は素手攻撃を得意とする方向性なんですね」
NOVA「まあ、魅惑の踊りは〈芸能〉判定を有利にするという、おまけみたいな効果もあるけどな。とにかく、声援ダイスで殴るという演出が素敵だ」
シロ「殴るだけですか?」
NOVA「演出上、素手攻撃の中には殴る以外に、蹴りや、つかみ技、押し技を加えてもいいと書いてあるな。細かい格闘アクションを再現するゲームではないので、殴るのも蹴るのも押し出すのもダメージは同じで、押し倒されたから転倒して立ち上がるのに手間どるという演出は別の技との組み合わせで再現する形」
シロ「そういうモンクの格闘演出は、ゲンブの回で掘り下げましょう。今はアイドルの能力です」
NOVA「6レベルになると、敵が至近距離にいるときにリアクションで声援ダイスを消費して、機会攻撃を誘発せずに近くの仲間1人といっしょに移動できて、しかも声援ダイスを消費したから、ついでに敵を殴ることも可能、とあるな」
ヒノキ「アイドルが急に近づいて来たと思ったら殴られる。何ちゅう演出じゃ」
NOVA「しかも、仲間を呼んでくるので、次のターンはフルボッコですよ。アイドルに近づくのは危険ということですね」
ヒノキ「踊り子さんには触れないでください、とガードマンさんが守りにつくのじゃな」
NOVA「その後に追加される能力は、味方全員のイニシアチブに声援ボーナスを加えるのと、自分と近くの味方に対魔法などの身かわし能力を与えるか。身かわしはローグやモンクが7レベルで習得する回避能力だが、アイドルは14レベルで習得する形。習得タイミングは遅いが、身かわしを持たない仲間もフォローできるのが新基軸と思える」
シロ「方向性としては、魔法の使えるモンクみたいなものですか?」
NOVA「基本運用としては、片手剣を手にして接近戦スタイルだな。片手剣で攻撃して、ボーナスアクションで素手攻撃を追加することで、最初から2回攻撃が可能になる。声援効果で素手攻撃できるのは当初、1日に3回ぐらいだから、モンクと違っていつも連打するわけにはいかないが、5レベル以降は声援使用回数が小休憩で回復するし、その頃には素手攻撃のダメージも長剣並みになるから、割と安定してD8の2回攻撃が行えるほか、6レベルで敵のターン終了時にも移動しながら、おまけで殴れるという特殊な行動で、囲まれた状態から離脱したり、単純に攻撃回数を増やすという芸当ができる」
ヒノキ「トリッキーな動きで相手を翻弄するという感じじゃな」
NOVA「声援ダイスの数さえ十分なら、接近戦中にアクションとボーナス・アクションと敵の行動後のリアクションで、擬似的に1ターン3回攻撃が可能になる。レベル6で3回攻撃というのは、ファイターが『怒涛のアクション』という特徴を使うか、モンク、あるいは二刀流ファイターあるいはレンジャーのみが可能で、仲間の支援回数は減るが接近戦アタッカーとしての技を磨きたい武闘派バード向きのサブクラスと言うことだな」
④惑わしの楽派
シロ「武闘派アイドルで十分惑わされた感じがありますが、こちらは正統派アイドルですね。ただし、ダンスみたいなアクティブなパフォーマンスはしませんが」
ヒノキ「バード本来の歌と声だけで、人々を魅了するのじゃな」
シロ「ザナサー本に収録された、魅惑や幻惑芸の専門家って感じですね。まずは『声援の装い』と言って、声援回数を消費しながら魔法の歌を歌うと【魅力】ボーナス人の仲間に一時的HP5点を付与して、その場で機会攻撃を誘発しない移動を行わせることができます」
NOVA「一時的HPの量が、新5版では『声援ダイスの出目×2』に変更されたそうで、結果的に2点〜12点の幅を持つようになった」
ヒノキ「出目1か2でなければ、より効果が増したということじゃな」
NOVA「この効果は地味ながら、味方戦士を奮起させて一気に敵陣の奥深くに侵攻するのに使えるが、他の使い方として、敵に単独で囲まれた味方を素早く脱出させるのにも活かせる」
シロ「一時的HPの恩恵は分かりやすいですが、実は移動サポート系の能力なんですね」
NOVA「盗賊が単独行動の際に、隠密行動に失敗して敵に囲まれそうになった時とか、魔法使いが後方から奇襲攻撃でピンチに陥った際に、HPを付与しながら、敵の機会攻撃をすり抜けて移動できる。さらにバードのターンに移動した後で、自分のターンにも移動できるので、実質的に1ラウンドに2倍の距離を移動できるわけだ。味方に移動先を導きながら、敵からすれば音楽に幻惑されているうちに、いつの間にかバードの仲間が瞬時に跳躍移動しているように感じとれるだろう」
ヒノキ「ペナルティなく倍速移動できる支援効果か。なかなかにトリッキーじゃのう」
シロ「さらに『蠱惑的パフォーマンス』といって、1分間の芸の披露で、【魅力】ボーナス人の相手を魅了状態にする魔法の効果を発動できます」
ヒノキ「まあ、普通の効果じゃが、今まではそれができなかったのか?」
NOVA「3版にあった恍惚の呪歌みたいな効果は、5版ではバードの基本能力から消えて、サブクラスで復活したという感じですか。しかし、新5版ではこの能力が消えて、代わりに『魅惑の魔法』という能力に置き換わったようです。要はチャームパーソンのような魅惑魔法が使いやすくなって、さらに複数を巻き込むような魔法能力になった。わざわざ1分間の演奏を入れなくても、ちょっとポロンと竪琴を鳴らすだけで、魅惑状態に追い込むスピーディーな効果になった、と」
ヒノキ「時間をかけて擬似魔法的な能力を発動するのではなく、魔法の効果範囲を広げるサポートに音楽を媒介するという形になった、と」
シロ「6レベルになると、『威厳の装い』といってコマンドという簡単な命令呪文を1分間(10ラウンド)、無消費で発動可能です(1日1回)」
NOVA「コマンドは、クレリックとパラディンの1レベル呪文で、バードの呪文リストには入っていません。与えられる命令は、単語一言程度の簡単なもので、相手を直接傷つけるようなものは受けつけません」
ヒノキ「眠れ、というのはどうじゃ?」
NOVA「効果時間が1ラウンド(6秒)なので、すぐに起きますが。戦闘中なら、伏せろ、が有効ですね。伏せるのに1ラウンド、次のラウンドに立ち上がるまで、近接攻撃で有利に殴られ続けますので、自分の待機アクションを利用すれば実質2ラウンドの間、無力化に追い込めます。平時なら、毒入りの瓶を渡して、相手に飲めと命令すると、素直に飲んでくれそうですね。嫌がらせだと、丸太橋を渡っている相手にジャンプしろ、と言ったら、バランスを崩して転落する可能性も」
シロ「落ちろはダメで、ジャンプしろはいいんですね」
NOVA「こういうのの裁定はDM次第だな。丸太橋の上でジャンプというのが、即座に傷つくと判断できるかどうかだし」
ヒノキ「嫌がらせだったら、丸太橋の上で武器やカバンを落とせ、というのも効果的かもしれん」
NOVA「6秒程度でできる、自分を傷つけない簡単なアクションということで、どんな命令が効果的か考える楽しみがある」
ヒノキ「しかし、惑わしバードの場合、1分間、自由に命令できるんじゃろう?」
NOVA「しかも、ボーナス・アクションで発動可能なので、剣で殴ったり、他の魔法を使いながら、別に命令することもできる。剣で一騎討ちしている最中の相手に、伏せろ、とか武器を落とせ、と命令して、相手が抵抗できなければ、それだけで有利に戦えるというもの」
シロ「味方が決闘中に、対戦相手にコケろ〜とか野次を飛ばすんですね」
ヒノキ「実に卑怯なやり方じゃが、幻惑魔法の使い手は正々堂々とは無縁じゃろうからな」
シロ「14レベルだと『犯すべからざる威厳』を習得して、ボーナスアクションで威厳のオーラをまとうことができ、1分間、敵から攻撃されにくくなります。攻撃するには相手が【魅力】判定に成功しないといけない」
NOVA「完全に防御用の特徴だな。いざというときの保険ぐらいにはなるだろうが、敵の奇襲攻撃から味方魔法使いを逃がして、自分はしっかり後詰めを務めて、敵の集中攻撃を耐え忍ぶような局面なら有効かもしれん」
シロ「それって、戦術ミスを犯してますよね」
NOVA「ミスを犯した場合に、負け戦になるか、そこから持ち直して逆転に転ずるかは、戦術論としても面白いな。D&Dの場合、魔法が戦術の要になることが多いので(とりわけ高レベル)、魔法使いの無力化を狙い、防ぐかという策を考えることになるけど、『惑わしの楽派』の場合は、自身がサポート魔法使いとして敵の行動に干渉して妨害する役回りになる。『知の楽派』ほどのストレートな魔法強化はできない代わり、いろいろと搦め手で敵を翻弄して、クレバーにトリッキーに立ち回るサブクラス。よって、上級者向きなんだな、と考える次第」
ザナサー本のさらなるサブクラス
シロ「ザナサー本には、あと2つ『剣の楽派』と『ささやきの楽派』というサブクラスが用意されています」
ヒノキ「『剣の楽派』はいかにも魔法戦士という感じじゃのう。『勇の楽派』とはどう違うのかが気になる。『ささやきの楽派』は盗賊寄りになるのかな?』
シロ「では、見ていきましょう」
⑤剣の楽派
シロ「まず、『剣の楽派』が新しく使えるようになった武装は、中装鎧とシミターだけです」
NOVA「盾が持てないので、ACは『勇の楽派』に及ばないんだな」
シロ「そして、片手武器戦闘か、二刀流の戦闘スタイルを選ぶのですが、盾が持てない以上は二刀流の方が推奨されますね」
ヒノキ「つまり、シミターの二刀流で戦うバードが『剣の楽派』ということか」
NOVA「シミター使いということは、アラブ風ってイメージがあるな」
シロ「そして、戦士職特有の6レベル時点で2回攻撃が行える他、3レベルの時点で、『刃の美技』という特徴で攻撃時の歩行移動速度が10フィート分増加して、声援ダイスの消費によって、以下の3種のオプション行動がとれます」
- 守りの美技:相手へのダメージに声援ダイスの分を加算し、その増加分を次ターンの開始時まで、自分のACにも加えることが可能。
- 薙ぎ払う美技:相手へのダメージに声援ダイスの分を加算し、同じダメージをバードの周囲5フィート以内の敵全員に与えられる。
- 翻弄の美技:相手へのダメージに声援ダイスの分を加算し、その相手を5フィート以上押しやることが可能。同時に押し込んだ相手のいた位置に、自らも踏み込むこともできる。
ヒノキ「声援ダイスを仲間の支援ではなく、自らの剣技のために使うクラスか」
シロ「レベル14になると『達人の美技』といって、声援ダイスを消費しなくてもD6ボーナスで剣技を扱えます。もちろん、その頃には声援ダイスがD6からD10に強化されているので、ダイスを消費する方が強いわけですが」
NOVA「ところで、『剣の楽派』は自分の持ってる剣を呪文発動の焦点具に使えるんだな」
シロ「ええ、そうですね」
NOVA「ところが、『勇の楽派』にはそういう特徴がない。つまり、魔法戦士として『勇の楽派』を扱うには、呪文の発動条件について考えないといけないことがあるのに、今さらながら気づいた」
ヒノキ「発動焦点具がなければ、呪文が使えないということか?」
NOVA「まあ、魔法使いが呪文を使うのに杖や指輪なんかを必要とするのは、ソード・ワールドでもお馴染みのルールだな」
ヒノキ「D&Dでもそうなのか?」
NOVA「版による。例えば、クラシックD&Dだと、魔法使いは呪文を唱えるだけでOK。杖は必要ではないが、鎧を装着すると繊細な手の動きを遮るので、呪文が使えない。また、呪文の日々の記憶のために呪文書が不可欠だ。一方で、僧侶の方は慣習的に聖印(ホーリーシンボル)が必要だとされているが、クラシックD&Dでは、そこまで厳密にルール化されていない。呪文を使うための道具について、細かく規定されているのはAD&Dの方だ」
ヒノキ「ともあれ、今の5版には呪文発動に焦点具なるアイテムが必要ということじゃな」
NOVA「ああ。だからバードが呪文を使う際にも、片手は開けておかないといけないし、発動用の道具のことも考えないといけない。魔法戦士をプレイする際にも、片手は開けておかないといけないので、盾が持てないってことだ」
シロ「『勇の楽派』が盾を装備できると言っても、盾を装備してしまうと同時に呪文は使えないから、呪文を使う際には、盾を地面に落とすなり、装備から外す必要がある?」
NOVA「その辺の呪文使用ルールについて、後で掘り下げてみることにしよう。基本的にウィザードなどの純魔法使いは武器を持たずに、道具としての杖を持つのが当たり前だから気にしていなかったが、魔法戦士の場合は剣を持ちながら、魔法の焦点具を同時使用するのはハードルが高いということだな。しかし、『剣の楽派』は剣自体を焦点具として使えるので、そういう問題を解消できる」
シロ「だけど、『剣の楽派』の特徴では、剣と魔法の同時使用ができないんですね。魔法を使うターンと、剣で戦うターンを別にしないといけない」
NOVA「だから、問題になるのは『勇の楽派』の方のルールなので、魔法戦士の運用条件について、掘り下げる必要を感じた」
ヒノキ「本当は、パラディンやレンジャーの時に考えておくべきじゃったな」
NOVA「パラディンはクレリックと同じ聖印を、レンジャーはドルイドと同じヤドリギの枝なんかを使うので、焦点具はちょっとしたお守りみたいな感覚でOK。しかし、バードの場合は、焦点具が楽器なんですよ。戦闘中に剣を振り回しながら、もう一方の手で楽器を手にする必要があるんです(演奏自体は絶対ではないけど)。楽器は聖印や木の枝よりもかさばるので、バードの魔法戦士は焦点具をどう扱うか面倒なことを考えないといけないことに、今さら気づいた始末」
ヒノキ「まあ、後にせい、後に。先に、シロのサブクラス紹介を続けるぞ」
⑥ささやきの楽派
シロ「では、気になる焦点具の話は先送りにして、隠密的な『ささやきの楽派』の話に行きます。基本的にバードは明るい芸能活動を旨とするので、秘密を探る影の世界に生きる『ささやきの楽派』の生き方を邪道と考える者が多いようですね。秘密主義でスパイ活動に従事するバードの楽派です」
ヒノキ「盗賊的な面を強調した流派じゃな」
シロ「まず、習得するのが『精神の刃』。武器攻撃に声援を消費することで、2D6の精神属性追加ダメージを与えます」
ヒノキ「ローグの急所攻撃に相当する能力か」
シロ「ローグと兼職して、急所攻撃と組み合わせると、より強力になりそうですね。次に同時習得するのが『恐怖の言葉』。こちらは非戦闘時に使う技で、1分間相手に2人きりで話しかけることで、恐怖状態に陥れて、あらゆる能力値判定と命中判定に不利を与えます」
ヒノキ「使いどころが非常に限られているが、占い師などを装って、相手を怯えさせて何かを仕込むのに役立ちそうじゃ」
シロ「その恐怖の感情は、1時間経つか、相手が攻撃を受けるか、相手の仲間が攻撃されるところを見るまで持続するようです」
ヒノキ「1分間という制約がなくても、戦闘中には使えんのう」
シロ「複数相手に恐怖をもたらすなら、多くの群衆を萎縮させて、その場から追い払うこともできそうですが、ささやき戦術はあくまで対個人ですからね。誰かが何かの判定をしようとしているところに、1分ほど話しかけて妨害工作をする場合にしか使えそうにないです」
ヒノキ「まず、1分も話に付き合ってくれるほどの関係性を構築してから、その相手に忠告するかに見せかけて、ネチネチとビビらせるようなことを言って、これから行うアクションを失敗させるように追い込む。非常に性格の悪いロールプレイが求められよう」
シロ「人を怖がらせておいて、なおかつ嫌われずに忠言の装いをとるようなロールプレイですか」
NOVA「まず怖がらせる。だけど、表面上は実利のない形式的なアドバイスを与えて、建設的な助言者のように思わせる。でも、じわじわ消えない不安が残るので、じっさいの行動は不利になって失敗確率は跳ね上がる。失敗したら、励ますようなことを言いながら、内心はしめしめとニヤリと笑っている……友だちには絶対にしたくないな」
ヒノキ「王国をむしばむ美貌の歌姫が、表面上は国を憂えているような素振りで王さまに取り入りつつも、判断を誤らせる仕込みばかりを助言する。そんなNPC用のクラスかのう」
シロ「6レベルになると『ささやく者の装い』といって、死んだ人間の影を奪って、魔法的に変装することができます。変装できる時間は1時間で、その間に変装相手の記憶する情報を読みとることが可能」
ヒノキ「ドッペルゲンガーみたいなものか。死んだ相手に化けて、なりすます能力とはヒーロー側のすることではない」
NOVA「あるいは仮面ライダーカブトのワームに近いかも。記憶を読み取れるところといい、ボディスナッチャーみたいなものだな。1時間限定というのが残念というか、それでもスパイ活動として自分を維持するには、それ以上の変身は危険というか」
ヒノキ「相手に長く擬態し続けると、自分と変身相手の内面が同化して人格が変転してしまうという話もあるらしいのう。TRPGでやるなら、せいぜい死体からの情報収集ぐらいじゃ」
NOVA「ヒーロー側が使うには、せいぜい死体の生前の姿になって、犯人を追及するとか重要情報に接触するとかかな。間違っても、自らの手で殺害して、それから情報を得ようとするのは邪悪そのものだ」
シロ「山賊退治のミッションで、アジトの前の見張りの番兵を殺す。そして、その番兵の姿になれば、山賊のアジトの構造とか組織の人間模様とか把握したうえで、一気に制圧することも可能かと」
NOVA「で、その変装した姿を駆使すれば、さっきの『恐怖の言葉』も使いやすくなりそうだな」
ヒノキ「親友だと思っていた仲間が、いつの間にか敵に成り代わられていて、話をしているうちに、恐怖を吹き込まれるとかか。シチュエーションそのものが恐怖じゃ」
シロ「ただ、この変装で探れる犠牲者の内面情報は、顔見知りに日常的に話す当たり障りのない情報のみです。本人が秘密にしていることなんかは読み取れないそうです」
NOVA「つまり、その能力で俺に化けても、俺の趣味や仕事の日常情報は仕入れることができるけど、人には話さない性癖やプライバシーに関わる重要情報までは突き止められない、と」
ヒノキ「ん? 新兄さんの性癖? 人間の女性に恋したことがないとか、悪堕ち属性に萌えを感じがちとか、モンスター娘になりたいとかそんなところか?」
NOVA「いや、前の2つはともかく、最後の1つはないですから。モンスター娘を愛でたい願望はあっても、自分がTSしてモンスター娘になりたいとは……たぶん思っていない……はず……」
ヒノキ「何じゃ、歯切れが悪いのう」
NOVA「いや、作者として、女性キャラを想像しながら描いていると、自分がなりたいとかそういう願望抜きに、自分の中のアニマ像が刺激されることだってあるんですよ。なりたいという気持ちと、創作として描きたい創りたいという気持ちは別ものだとは思うのですが、たまに混ざって区別が付きにくい時もなくはないわけで……その辺は曖昧で白黒つきにくい感情というか」
ヒノキ「ふむ。創作者の内面は複雑なんじゃのう」
NOVA「こんな話は、ここだけで断片的に漏れ出た想いに過ぎませんので、日常生活で誰かと談義するものではありませんし、変装者が読み取れるのはせいぜい知人をごまかせる程度の表面情報だけでしょう。例えば、秘めたる恋心とか、表面化されない誰かへの殺意とかは踏み込めない領域じゃないかなあ」
シロ「どこまで相手の深層心理に没入して、情報が仕入れるかにも判定が必要になりそうですね」
NOVA「ゲームの世界で演出するにも、難しい能力だな。小説のネタとしては、いろいろ面白そうな感じだけど、他人になるってのはホラー感覚も混じってジワジワ来る。別人格を乗っ取るとか、乗っ取られるってのはね」
シロ「最後の14レベル特徴は『闇にささやく声』といって、相手1体に闇の魔力を送り込んで、恐怖と表裏一体の魅惑状態に追い込みます」
ヒノキ「闇の魔力って、完全にプレイヤーキャラ非推奨の領域ではないか」
NOVA「カオスがあふれて来そうな能力だ。きっちり始末をつけないとな」
シロ「相手はスパイを無二の親友と思い込み、8時間のあいだ、親切に振る舞ってくれます。ただし、その親切心は裏表があって、自分が最も隠したいと思っている恥ずかしい秘密を親友にさらけ出してしまったという錯覚、そして親友にはその秘密を公開して欲しくないという願望、もしも公開されたらという恐怖、そういうのが入り混じって、親友の要望には逆らえないという自縄自縛な状態に陥る、と」
ヒノキ「何だか心情描写が細かすぎる。本当にそんなルールなのか? (『ザナサーの百科全書』34ページを読む)……表現は違えど、そんな感じじゃった。奥が深いのう、このサプリは」
NOVA「さすが、ビホルダーのザナサー監修と設定されているだけはあります。ちなみに、ザナサーのツッコミが笑えます」
はっきり話せ! 悲鳴に埋もれた言葉は聞き取りにくい。
いや、もういい。悲鳴を終わらせよう。
お前も塵に変えれば済む話だ。
NOVA「何というか、非常にまどろっこしい『ささやきの楽派』の闇バードに対して、不機嫌にツッコミ入れてるような御言葉で、このサブクラスはビホルダーの犯罪王にはお気に召さなかったようで。まあ、人の内面の秘密をこそこそ嗅ぎ回る輩は、犯罪王にとってもウザいってことでしょう」
ヒノキ「しかし、恐怖と表裏一体の魅惑状態という意味がよく分からん」
NOVA「俗的に言うなら、『お前の恥ずかしい写真を画像データに残してある。こいつをばら撒かれたくなかったら、オレの言うことを何でも聞け。逆らえば、どうなるか分かってるだろうな』と脅されて、嫌悪感と絶望で身震いしながらも、逆らうことができずに逢瀬を続けるうちに、いつしか隷従状態に悦びを感じるような心境でしょうか?」
ヒノキ「……子どもの教育にはよろしくないな」
シロ「???」
NOVA「とにかく、この『ささやきの楽派』は深く追及すると、アングラダークな方面に突き進む危険が大きい。隠微なサブクラスとして、健全なプレイを望むDMは非推奨としておくことが無難だと思うな」
ヒノキ「では、今回はこれぐらいにしておこう。どうも仕切り直しが必要と見た」
NOVA「ええ、次回はターシャ本のバード・サブクラスと、呪文発動の焦点具などのルールを再確認するってことで」
(当記事 完)
