花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

ウォーハンマーの錬金術師と魔法の話

「混沌の渦」から脱却して

 

リモートNOVA『さて、春期の仕事が明けて、時間が取れるようになった年度明けですが、まさか今さら「混沌の渦」で新発見のアハ体験ができるとは思わず。とりあえず、今の「混沌の渦」には、錬金術のルールもサプリメントで実装されているし、乞食コンパニオンでもしかするとストームブリンガーを抜いてナンバー1乞食ゲーの栄誉に輝いたのかもしれないし、ファンタジーRPGサプリも用意されているという理解でいいですね』

ヒノキ「いや、〈ナンバー1乞食ゲー〉というのが栄誉かどうかはともかく、それについて異論はあるぞ」

NOVA『ほう。「混沌の渦」を越える乞食ゲーというのが、どこにあると言うのかな?』

ヒノキ「そりゃあ、物乞い王(ベガー・キング)になれるウォーハンマー4版だって、侮れんじゃろう。やはり、ナンバー1を名乗るからには、乞食の世界で出世するコースが約束されていなければ、ただの底辺ではないかのう?」

NOVA『ああ、言われてみれば、一理あるかも。おまけに「ウォーハンマー」は今の日本でもホビージャパンから邦訳展開が続いて、現役バリバリのシステムであるのに対して、「混沌の渦」はたぶん邦訳されないだろうなあ。同じアリオンゲームズだから、AFF2版のついでにSNEが邦訳する……とも思えないし、それをするぐらいならAFFの宇宙SFサプリ「Steller Adventures」の方を邦訳出版して欲しいのが本音だったり』

ヒノキ「ともあれ、乞食や混沌やAFF2版の話ではなく、今回はウォーハンマー錬金術を語る話じゃろう? せっかく、わらわが本筋に水を向けてやったのに、宇宙SFに寄り道脱線、迷い込んでどうするつもりじゃ?」

NOVA『ああ、そうですね。錬金術がテーマでした。乞食じゃなくて、金に目を向けないと。ただ、今もファンタズム・アドベンチャーとか、ロールマスターについて語りたい自分がいるわけですが、先の課題にして、まずは順番に行きましょう。今回はウォーハンマー、と』

 

ウォーハンマーの魔法ルールの大きな変化

 

NOVA『で、俺にとってのウォーハンマーと言えば、91年に社会思想社の文庫で出た初版の思い出が濃いのですが、他に邦訳されたのは2版と4版ですね。以下、簡単にウォーハンマーRPGの年表を挙げてみます』

 

・1985:ウォーハンマー初版(邦訳は1991年、社会思想社より文庫本)

・2005:2版(邦訳は2006年、ホビージャパンよりソフトカバー本)

・2009:3版(邦訳はなし)

・2018:4版(邦訳は2020年から、ホビージャパンで展開中。基本ルールブックはハードカバーで、歴代で最も豪華な装丁。サプリは一部PDFデータのみで発売)

 

NOVA『とりあえず、ウォーハンマーの国内展開は2版の時期が最もサプリメントが充実していたのですが、俺は基本ルールしか買っていなかったですね。で、4版もルールブックは持っているので、基本ルールの範囲のみで語ることはできる、と。サプリメントまでは手が出なかったってことで』

ヒノキ「基本ルールだけでも、まあ良しとしよう」

NOVA『あと、ウォーハンマーと言えば、ゲームズワークショップのイメージが付いていますが、そちらがずっとサポートしているのはミニチュアバトルの方で、RPGの方は初版のみ。2版以降は、傘下の子会社やアメリカの提携会社にライセンス移譲して、自社では賄えない範囲まで拡張展開したそうです』

ヒノキ「その昔、ケイオシアム社がストームブリンガークトゥルフをGW社に3年ほどライセンス移譲したのと同様に、21世紀に入ってGW社が新興の会社に自社の看板製品を託すようになったのか」

NOVA『あくまで、看板製品はミニチュアバトルの方で、RPGの方はスピンオフ的な副産物の立場ですね、GW本社としては。事業規模が大きくなると、さすがに自社だけで全てを管理できないので、作品展開は信用できる提携会社に任せて、ブランドのライセンス料だけで充分な収入が入って来るという形でしょうな』

ヒノキ「で、ウォーハンマーRPGのゲームデザイナーが誰かは公に明かされておらんのじゃな。本の作者は表紙に明記されるが、ゲームの作者は個人名を明記されたり、社内チームのみが挙げられたり、作品による」

NOVA『小説やコミックでも版権が作者にあるのか、出版社にあるのかで、著作権管理がたまにややこしくなったりしますからね。D&Dでも、オリジナルD&DとアドバンストD&D初版は、生みの親のゲイリー・ガイギャックスさんの物だけど、赤箱で有名なクラシックD&Dはフランク・メンツァーだし(日本でD&Dが邦訳された時期には、生みの親のゲイリーさんは自分の作ったTSR社を乗っ取られて追い出されたことが後に語られたわけで)、AD&D2版以降は完全にゲイリーさんの手から離れた作品になってます』

ヒノキ「その後、TSRがD&D版権をWotC社に売った後の3版以降は、ゲイリーさんを尊敬しつつ完全に新規のD&Dファンだった若手デザイナーのチーム作品になったわけじゃしな」

NOVA『3版はモンテ・クックの名前が最初に挙げられますけど、他2名を加えた3人のデザイナーの共作だし、4版以降のデザイナーの名前は覚えていません。ウォーハンマーの場合は、初版の文庫版表紙には「ゲームズ・ワークショップ デザイン・スタジオ編」とあるだけで、その内実は分かりませんね。ただ、ルールではなく、シナリオ集の方が著者名は出やすいな、と』

ヒノキ「まあ、作品ごとのゲームデザイナーの名前をいちいち覚えるのは、マニア仕草じゃからのう」

NOVA『あ、ウォーハンマー2版なら、はっきり分かります。グリーン・ローニン社のクリス・プラマスって書いてあって、ルールブックの後書きにもデザイナーズ・ノートとして、自分がいかにしてウォーハンマー初版にハマって行ったか、そして21世紀に入って、自分の会社を立ち上げて、ゲームズ・ワークショップとの業務提携に緊張して臨んだこととか、版上げに当たって既存システムをどういう意図で改変したかとか、丁寧に書き記してあって、2004年末に執筆作業を終えて……という心境を書いてありますな。そこまできちんと翻訳してくれた街兼音二郎さんにも感謝しつつ』

ヒノキ「その御仁は?」

NOVA『これなんかも翻訳されていて、21世紀の翻訳RPG界における偉人の一人ですな。2版そして4版の国内ウォーハンマーデザインチームのトップに当たります』

TRPG シャムタンティの丘を越えて d20ファイティングファンタジー

NOVA『今は、この雑誌の常連ライター・翻訳者のお一人と言えば、分かりやすいかな』

ヒノキ「その雑誌自体がマニアックだと思うぞ」

NOVA『とにかく、ウォーハンマーを語るうえで、重要な御仁ってことで。で、初版のウォーハンマーと2版以降では、魔法のルールが大きく変わっているので、そこをスルーして錬金術は語れないんですよ』

ヒノキ「どう変わっているのじゃ?」

NOVA『簡単に言うなら、初版の錬金術師って、劣化魔術師みたいなキャリア(職業)で、普通の魔術師よりも1レベル下の魔法しか使えません。一応、〈化学〉とか〈冶金学〉とかの技能も覚えますが、呪文使いとしては格下感が拭えません。しかし、2版以降は錬金術師というキャリアそのものが消えました』

ヒノキ「ダメじゃないか!」

NOVA『厳密には、独立したキャリアではなく、魔術師の中に統合された形になります。2版以降の秘術魔法(いわゆる正統な魔法使いの使う魔法)は8つの魔力の風に分類され、象徴する色が付けられています。以下のリストですね』

 

  • 白:光
  • 青:天空
  • 黄金:金属
  • 緑:生命
  • 茶色:獣
  • 赤:火焔
  • 灰色:影
  • 紫:死

 

NOVA『このうち、金属の魔法を扱うのが、黄金の魔術師(ゴールド・ウィザード)とも、錬金術師(アルケミスト)とも呼ばれる専門家の一つなんですな。すなわち、錬金術師が劣化魔術師ではなく、れっきとした正統の魔術師の一角を占めるようになった。こいつは大出世ですよ。これで、他の魔術師から格下扱いされることはなくなります』

ヒノキ「で、金属魔法の専門家は何ができるんじゃ?」

NOVA『まず、魔法体系技能として〈学術知識:科学〉を習得できますね。これは、通常の魔術師が習得できない技能を自分の専門分野として習得できるものです。〈学術知識:科学〉を習得できる他のキャリアもありますが、錬金術師の場合は魔術師として他に与えられる〈学術知識〉(14のサブジャンルから選択)とは別に、ボーナスとして習得してもいいわけですね』

ヒノキ「では、火焔の魔術師なら、何の技能が与えられるんじゃ?」

NOVA『彼らは輝きの魔術師(ブライト・ウィザード)もしくは焔術師(パイロマンサー)と呼ばれ、〈指揮〉技能を与えられます。攻撃呪文が多いので、戦場で活躍するために部隊指揮を任されることも多いみたいですね』

ヒノキ「なるほど。で、錬金術師はどんな呪文が使える?」

NOVA『自分の身を守ってくれる球形の金属シールドを召喚できます』

ヒノキ「ふむ。マンホールの蓋が盾になるのじゃな」

NOVA『俺、球形って言いましたよね? 円形じゃなくて』

ヒノキ「ああ、ボール型か。他には?」

NOVA『錬金術師らしさと言えば、金属編成とか、物品魔力化とか、でしょうか。もちろん、自分の専門分野だけではなくて、魔法使いなら誰でも使える初歩魔術とか、共通の下級魔術も使えますので、錬金術師として大成するまでは、初歩や下級の呪文を研鑽しながら、まずは見習い魔術師としてキャリアを積み上げていくことですな』

 

古い時代の錬金術

 

NOVA『そういうわけで、2版のウォーハンマー錬金術師は、他の魔術師と同様に見習い魔術師から修行を積んで、中堅魔術師にキャリアアップした際に、自分の専門分野を8つから決めるわけです。その際に金属魔術の専門家が錬金術師と呼称され、科学的思考や合理性を学び、金属を扱ったり召喚したり変成する呪文を扱うようになる。これは今の4版も大筋において変わりません。

『一方で、初版の錬金術師は、魔術師とは独立したキャリアとして、より限定された呪文習得と、世俗に近い技能を身につけるキャラクターでした』

ヒノキ「つまり、錬金術師は魔法使いとしては認められていなかった、と」

NOVA『2版と4版の魔術師は、帝国(エンパイア)の魔法大学校に所属して、魔法をきちんと体系的に学ぶシステムが確立されています。と言うのも、魔法は元来、混沌にまつわる力の行使になるので、きちんと扱い方を管理してやらないと、どんな災いを招くか分からないからですね』

ヒノキ「では、帝国の管理下にない魔法使いはプレイできないのか?」

NOVA『それが、いるんですよ。似非(えせ)魔術師とか、魔女とか呼ばれている連中が。帝国はそういう民間の胡散臭い混沌の魔法使いを狩り出すことに力を注いでいますので、彼らはその目を逃れて、ちょっとした小魔術の使える無法者になったり、宗教に帰依して信仰呪文を学び直したり、帝国に願い出て魔法大学校の入学許可をもらって見習い魔術師になったり……まあ、見習い魔術師からドロップアウトして、魔法とは無縁の書記や学者に鞍替えすることも可能ですけど、とにかく2版以降のウォーハンマーの魔法ルールは帝国を基軸に、非常に体系化されています』

ヒノキ「しかし、世界の全てが帝国の支配下というわけではあるまい?」

NOVA『そういう異文化に属する魔法は、サプリメントでフォローされていたんですよ。基本ルールは帝国のみです。帝国以外の世界は……初版では基本ルールの文庫版3冊にもっと広いワールドガイドが広く浅く載っていたんですけどね。ある一面では、初版の方がゆるく広がりを持っていました』

ヒノキ「初版は広く浅く、2版以降は帝国中心の世界観を掘り下げる方向で緻密に設計し直した?」

NOVA『そうですな。魔法ルールに関して言えば、初版の見習い魔術師は魔法大学校に所属しているとは限らず、個人的に魔術師の師匠の家で住み込み召し使いのようなことをしながら、魔法を教えてもらっているようなキャラです』

ヒノキ「似非魔術師みたいなキャリアはなかったのじゃな」

NOVA『ええ。(インチキ)占い師とか、イカサマ師みたいなキャリアはありましたが、帝国に所属していない民間魔術師が似非呼ばわりされる時代ではありませんでした。あと、魔法が体系化されていないという意味では、実のところ秘術呪文と信仰呪文の区別もされていなかったんですね、初版は』

ヒノキ「それって、魔法使いも神官も同じ系統の呪文を使っていたということか?」

NOVA『ええ。用意されている呪文は、小魔術、戦闘魔術、悪魔術、精霊魔術、幻術、妖術、ドルイド魔術の7体系に、その他、一部の神さまによる特殊呪文ですね。例えば、神官呪文の代表と思われる《軽傷治癒》は戦闘魔術に所属していて、魔法使いでも一部の戦闘系の神官でも習得できます』

ヒノキ「ん? 一部の戦闘系の神官……ということは、《軽傷治癒》が使えない神官キャラがいるのか?」

NOVA『ええ。ウォーハンマー初版では、魔法使いは全て《軽傷治癒》を含む戦闘魔術が習得できるのに対して、海洋神マナン、死の神モール、盗賊神ラナルド、自然神タール、エルフの神リアドリエル、ハーフリングの女神エスメラルダを信仰する神官には《軽傷治癒》が使えないのですな。今さらながら、意外な発見でした』

ヒノキ「ええと、ウォーハンマー初版の呪文使いの体系はどうなっておる?」

NOVA『魔法使い系は6種類ですね』

 

  • 魔術師:見習い魔術師は小魔術を習得可能。正式な魔術師になると、レベルに応じた戦闘魔術を最大4レベルまで習得可能。
  • 錬金術師:見習い時代は魔術が使えない。錬金術師1レベルで、小魔術を習得可能。以降、ふつうの魔術師よりも1レベル低い戦闘魔術を習得し、最大3レベルまで習得可能。
  • 精霊使い:専門魔術師その1。ふつうの魔術師から自然を扱う精霊魔術に特化したキャリア。魔術師時代に習得した小魔術、戦闘魔術に加え、レベルに応じた精霊魔術を最大4レベルまで習得可能。幻術は習得できるが、悪魔術と妖術は掛け持ちできない。
  • 幻術師:専門魔術師その2。ふつうの魔術師から幻術に特化したキャリア。魔術師時代に習得した小魔術、戦闘魔術に加え、レベルに応じた幻術を最大4レベルまで習得可能。他の専門魔術との掛け持ちにも制限はない。
  • 悪魔使い:デーモンを召喚する邪悪な専門魔術師。NPCの敵キャラ向き。成長とともに狂気点を得たり、障害を得る。魔術師時代に習得した小魔術、戦闘魔術に加え、レベルに応じた悪魔術を最大4レベルまで習得可能。精霊魔術との掛け持ちはできない。
  • 妖術師:死者の霊を操作したり、アンデッドを扱う邪悪な専門魔術師その2。ネクロマンサー。NPCの敵キャラ向き。成長とともに狂気点を得たり、障害を得る。魔術師時代に習得した小魔術、戦闘魔術に加え、レベルに応じた妖術を最大4レベルまで習得可能。精霊魔術との掛け持ちはできない。

 

NOVA『こんな感じの魔法体系ですが、邪悪プレイを望む(受けつけてくれる)卓でないなら、悪魔使いと妖術師は非推奨なので、必然的に選択肢がふつうの魔術師か、精霊使いか幻術師になると思うんですよ』

ヒノキ「錬金術師は?」

NOVA『特別なこだわりがなければ、劣化魔術師でしかないキャリアですからね。錬金術師ならではの美味しさが見出せないです。錬金術師だけが扱える特別な錬金魔法とか、火薬やアイテム加工などの特別ルールがなければ、実装はしたけど魅力的ではないキャリアということになりますな。まあ、可能性だけは提示した過渡期の職種ってことで』

ヒノキ「ついでに、信仰系の呪文体系をば」

NOVA『ウォーハンマーの世界であるオールドワールドは、我々の住む地球のヨーロッパに類似した世界観ですね。世界の中心として扱われている帝国(エンパイア)は、神聖ローマ帝国、すなわち800年のカールの戴冠以降のドイツ地域を模した中世帝国で、紆余曲折を経ながらも19世紀頭のナポレオン侵攻まで存続した1000年帝国になります。ただ、長命なエルフなんかがいるファンタジー世界なので、エンパイアの歴史は2500年もあるそうです。

『その辺の歴史年表とか、混沌との戦いとか、有名人の逸話とか、詳細を語ると大変だったりしますし、エンパイアの守護神シグマーは帝国の創設皇帝が祀られているとか、それでもしっかり信仰魔法を授けてくれるとか、信仰関係について語るのはいろいろ世界の歴史とか神話伝承について踏み込まないといけないので、覚悟を決めないといけませんね』

ヒノキ「あ、もしかして、一番ダメなボタンを押してしまったか? ええと、別に神話云々まで語らなくていいから。単に神さまの名前と属性と、授けてくれる呪文の系統だけを示してくれればいいから(話が長すぎると、聞いているだけで疲れるのじゃ)」

 

ウォーハンマーの信仰魔法(旧世紀版)

 

NOVA『では、ウォーハンマーの神さまの数ですが、ルールブックに載っていて、呪文を授けてくれるのは初版で12種類、2版で10種類。まあ、名前と属性だけ載ってる神さま(詳細はサプリメントに記載)とか、敵の混沌4大神(怒りの殺戮神コーン、疫病と腐敗の神ナーグル、変異と歪みの神ティーンチ、放蕩と快楽の神スラーネッシュ)とか、固有名詞がいっぱいでGMにとって冒険のネタになるわけですが、ここではプレイヤーが使えるものだけに絞る、と』

ヒノキ「それでも、神さまの名前だけで12種類か。それを考えると、主要なのは5大神に留めておいたフォーセリアの展開は、まだマニアックな経験を持たない日本のTRPGファンに配慮しておったのじゃな」

NOVA『小説だと、仲間のプリーストが信仰している神だけ触れると、いいですね。最初は至高神ファリスとか、大地母神マーファだけ分かればよくて、その後の小説やリプレイ、ゲームシナリオなんかで戦神マイリーと知識神ラーダと幸運神チャ・ザを少しずつ紹介していった』

ヒノキ「あと、敵の暗黒神ファラリスと、ラスボス的な破壊神カーディスとかか」

NOVA『で、ロードスはさておき、ウォーハンマーのエンパイアの主神的なシグマーは、初版のルールブックでは詳細が紹介されていなかったのですな。世界全体から見れば、あくまでエンパイアの地域神でしかないので』

ヒノキ「では、世界全体の主神みたいなのは何じゃ?」

NOVA『完全な秩序を司る光の王アルミナスって方がいるみたいですが、オールドワールドでは秩序側で最も人気がないそうで。何でも、彼の純粋な光にさらされると、全ての変化が止まってしまうとのことで、完全な秩序=完全な停滞となっちゃうらしい。

『で、いくら何でも、そういう神さまは信じたくないなあ、とオールドワールドの住人のほとんどは思ってるので、絶対的な秩序よりは混沌との激しいバトルに明け暮れる方がいいって考えから、未来永劫ずっと戦い続けて、4万年(41千年期)という遠い未来SFの時代でも戦い続けているのが、ミニチュアバトルの「ウォーハンマー40000(略称40K)」だそうです』

ヒノキ「そういう設定だったのか」

NOVA『帝国の通称も、ファンタジーの方はエンパイアで、未来の方はインペリウムですね。で、主神の人気がない世界観なので、分かりやすいのは種族神かもしれない』

 

  • ドワーフの採鉱の神グラングニ(グルングニとも):すべての戦闘魔術と、土や石系の精霊魔術を習得可能。
  • エルフの歌とワインの神リアドリエル:すべての小魔術と、幻術を習得可能。
  • ハーフリングの炉辺と家庭の女神エスメラルダ:すべての小魔術と、2レベルまでの精霊魔術を習得可能。さらに《霊気》と《場》の系統の戦闘魔術を習得できる。また、自分たちの家を守るという状況のみ、他の戦闘魔術を習得・使用可能。

 

ヒノキ「エルフは精霊魔術というイメージじゃったが、それはロードスの影響じゃろうな」

NOVA『ハーフリングの僧侶は、自分の教会や村に引きこもっている場合に限り、〈治癒〉呪文が使えるってことか。改めて分析、研鑽すると、いろいろ見えて来るなあ』

ヒノキ「ドワーフの神は大体、イメージどおりとして、エルフの神は呑んで歌ってを奨励するのか」

NOVA『吟遊詩人なんかも崇める芸術神っぽいですね。まあ、原作版ホビットのエルフ王スランドゥイルのイメージもある。ただ、このリアドリエルって、2版の基本ルールのエルフの神リストに載ってなくて、微妙に神話体系が変わったのか、それともエンパイアのエルフと、他の地域(フランスモチーフのブレトニアとか)でエルフの信仰観が違うのか、掘り下げると細かい疑問が湧いて出るなあ』

ヒノキ「ネット検索して調べてみると、どうじゃ?」

NOVA『やってみた。すると、リアドリエルで出て来なくて、指輪のガラドリエル様が代わりに出て来るばかり。で、ウォーハンマーのエルフの神で検索すると、「霧の貴女ラドリエル」というのが出て来て、それっぽいかも、と。まあ、初版と2版以降でエルフの神さまも変わった可能性があるってことで。あくまでリアドリエル名義のエルフ神は初版のみと考えておきます』

ヒノキ「種族神も分かりにくかったようじゃのう」

NOVA『異種族関係は、基本ルールだけだと資料が足りないんですって。では、より調べやすい人間の神だ。とりあえず、戦える神を先に』

 

  • 戦争の女神ミュルミディア:小魔術、戦闘魔術を習得可能。文明的な戦女神。アテナのイメージ。
  • 戦いと狼と冬の神ウルリック:小魔術、戦闘魔術を習得可能。荒々しい蛮族風の戦神。北欧やバーサーカーのイメージ。
  • 学問と正義の女神ヴェレナ:学問の神でありながら、公正な裁きも司るので、小魔術、戦闘魔術を習得可能。ただし、真実を覆い隠す《鬼火》《音響》《静寂の場》は使用不可。また幻術呪文の《幻消去》《幻破り》は使える。ローマ神話のミネルヴァのイメージ。ミュルミディアの母神でもある。

 

NOVA『主神っぽいのを信仰したいなら、裁きの神の性質を持つヴェレナ神が扱いやすそうだな。2版では、ちょっとした戦闘呪文と情報収集系の専用呪文が使えて、警察官とか裁判官のような役割が果たせるし』

ヒノキ「ウルリックは、蛮族文化の戦神なんじゃな」

NOVA『英雄神シグマーが崇めた神ともいわれ、エンパイアでは主神の父という扱いだな。荒々しい戦いで、力で勝つのがウルリック流。好みの武器は斧。一方のミュルミディアは蛮勇を是とせず、戦略とか部隊の統率力で秩序だった戦いを良しとする。槍と盾を使いこなすイメージ』

ヒノキ「同じ戦神でも、戦闘スタイルの違いがあるんじゃな」

NOVA『初版では、ウルリックもミュルミディアも使える呪文は同じで、データ的な差異は少なく、ロールプレイのみで区別するぐらいだったけど、2版以降は神さまごとの専用魔法が設定されていて、そのデータを見ているだけで神さまの性質が分かりやすくなったな、と思った』

ヒノキ「今さら、そういう分析をされてもなあ」

NOVA『いやあ、ルールの流し読みだけじゃ気付かなかった読み方をしているんだって。買って読むだけで、プレイすることがなければ、ここまで掘り下げて考えることもなかったわけで。とにかく、後は戦闘魔術の使えない神だ。ただし、回復特化の女神と、大地母神な』

 

  • 治癒と慈悲の神シャリア:《軽傷治癒》《重傷治癒》、すべての《霊気》の呪文。特殊呪文《解毒》《病気の手当》《狂気の治癒》《致命傷の治癒》。
  • 母なる女神リア:ドルイド僧の太古教における主神。ドルイドは、ふつうの僧侶(司祭)とは違ったキャリアを持つ独自職で、動物の霊を使い魔として召喚できる。どんな動物を使い魔にするかで、戦闘能力(使用可能な武器や防具の制限)が変わって来るし、動物ごとの追加技能もあって、結構、奥の深いキャリア。習得可能な呪文も、小魔術と専用のドルイド呪文の他、戦闘魔術・精霊魔術からレベルごとに1つずつ追加習得できる。

 

NOVA『初めて初版のルールを読んだとき、ドルイドの充実ぶりに感心したものだ。クラシックD&Dのドルイドが劣化クレリックに思って、AD&Dの方が面白いと思っていたりした時期で、ウォーハンマードルイドはいいなあって思っていたんだ。でも……』

ヒノキ「でも?」

NOVA『2版の基本ルールからは、キャリアごとドルイドが抹消された。いや、サプリにはあったのかもしれないけど、とにかくドルイドはエンパイアには相応しくないのか、と思いきや、一応、生命の魔法を扱う緑の魔術師がドルイドに相当するそうで』

ヒノキ「ああ、ドルイドは信仰魔法ではなく、秘術魔法のキャラに置き換えられたのじゃな」

NOVA『一方で、大地母神のリアさんは、夫の獣の神タールとセットで信仰魔法を授けてくれます。つまり、エンパイアからドルイドの信じる太古教という宗派が消えて、代わりに「タールとリアの教団」がドルイド要素を統合整理した形。そんなわけで、文明を忌避する信仰者として教団に入ってもいいし、自然にまつわる魔法使いとしてアカデミックに勉強してから改めてエコ活動に従事してもいいというのが21世紀のウォーハンマードルイドの生きる道ですな』

ヒノキ「で、もう一柱のシャリアじゃが……」

NOVA『かつてSNEの安田社長は言った。「強力な治癒呪文を持っていても、戦って相手を殺しちゃいけないという戒律のせいで、冒険では使いにくい」と』

ヒノキ「そんなことを言ったのか?」

NOVA『だからって、死の神モールの司祭にならなくても。ムッシュー・クロワッサンの中の人が安田社長だと、旧Twitterで打ち明けたときは感心とともに笑いましたよ。そうか、リーフだけでなく、ムッシューも社長だったのか、あのGM泣かせの傍若無人ぶりは、と』

ヒノキ「ずっと、ドワーフのナイだと思っておったわ」

NOVA『社長はギムさんのプレイヤーでも有名だからな。あと、AFFリプレイのカル・ニールセンも社長と聞いた』

ヒノキ「わらわは、ミシャップのプレイヤーが誰か知りたい」

NOVA『山本GMのときは友野さんだと思ったんだけどな。友野GMになって、中の人が変わったのかもしれないけど、詳細不明だ。しかし、ウォーロックマガジンのAFF2eリプレイで、友野さんがNPCとして懐かしのミシャップを登場させたのは、自分のキャラだから好き勝手に使えるという事情もあったのだと思うし。まあ、ミシャップについては、根拠がないので俺の推測に過ぎないです』

ヒノキ「話が脱線したが、次に行こう」

NOVA『はい。安田社長がかつて演じた死の神その他の話ですね』

 

  • 死と夢の神モール:小魔術と妖術を習得可能。ただし、アンデッドを作り出す呪文は、神さまの許可がなければ使えない。モールの神官の仕事は死者を埋葬することなので、アンデッドはきちんと成仏させないといけないわけで、妖術もアンデッド対策呪文として使用が認められている形。
  • 自然と荒野の神タール:小魔術と精霊魔術を習得可能。さらに特殊呪文として戦闘魔術の《突風》《雷撃》《神秘の霧》と幻術《幻の森》を習得できる。
  • 海洋の神マナン:小魔術と精霊魔術を習得可能。
  • 盗賊とぺてん師の神ラナルド:すべての幻術を習得可能。また小魔術の《鬼火》《開錠》《解呪》《音響》《静寂の場》を習得可能。さらに専用特殊呪文として《魔法の警報の解除》《魔法の錠の解除》を習得できる。

 

ヒノキ「それにしても、ウォーハンマーの遊び方を紹介するリプレイで、よりによって死の神を信仰するとはのう」

NOVA『どちらかと言えば、ムッシューはぺてん師だから、ラナルド向きだと思ったのですが、初版では「ラナルド信者の入信条件にローグ系キャリアを一つ極めないといけない」とあったんですね。ムッシューはアカデミック系の占い師からスタートしたから、ラナルドの入信条件を満たしていなかったので、悩んだ末、闇っぽいモール神を選んで、今度はGMを悩ませる(困惑させる)面白いリプレイになったわけで』

ヒノキ「では、これで錬金術から始まるウォーハンマーの昔話も終了じゃな」

NOVA『ええ。最後に、ウォーハンマーで試しにダイスを振って、キャラ作りしてみませんか?』

ヒノキ「どの版じゃ? 初版? 2版? 4版?」

NOVA『版の違いを見るために全部ってのは?』

ヒノキ「付き合いきれん。一人でやっとれ」

 

ゲンブ「アリナ様、ちょっと待たれよ」

シロ「その面白そうな任務」

ジュニア「我らヒノキ三獣士にお任せあれぇ」

ヒノキ「まさか、お前たち、本気で新兄さんの酔狂に付き合うつもりか?」

ゲンブ「我らとて出番が欲しいでござるからな」

シロ「初版、2版、4版と相手が3体ならば、ちょうどボクたちも3人」

ジュニア「だったら、1人1体ずつ相手をするのも修行となるですぅ」

NOVA(ゲッ、ヒノキ姐さんの「付き合いきれん。一人でやっとれ」でオチを付けて、記事を終わろうと思ったのに、まさかこういう展開になるとは想定外)

ヒノキ「どうした、新兄さん。まさか、我が三獣士の登場に怖気づいたとは言うまいな。お主のウォーハンマー愛はそういうものだったのか」

NOVA『うおっ、俺のTRPG愛を試されている? ならば……次回につづく。最初の相手はジュニア君、きみだ。ウォーハンマー初版でキャラを作ってみるがいい』

ゲンブ「昭和のゲームなら、我の方が良いのではござらんか?」

NOVA『いや、ウォーハンマー初版は、生まれたのは1986年だから昭和だけど、邦訳出版されたのは5年後の1991年だから、完全な昭和ではなくて、平成初期です』

ゲンブ「そうではなくて、古いゲームは年寄りが、新しいゲームは若い者が相手するのが正当ではないか、と言うておる」

NOVA『そこを敢えてミスマッチを狙うのが策ってものよ。さあ、リトルからジュニアに進化したリウ君、きみに文庫本3冊、全1800ページの伝説のウォーハンマーを攻略できるかな?』

ヒノキ「いや、ゲームブックじゃないんだから、攻略は関係ないじゃろう。キャラ作りだけなら、別に全部読まなくていいのじゃろうし」

ジュニア「何だかよく分からないけど、この試練、必ず乗り越えてみせますぅ」

NOVA『よく言った。では、次回の記事での対決を楽しみにさせてもらうぞ。首を洗って待っておれ。さらばだ。フワーハハハッ……(プツッ、通信途絶)』

 

シロ「新星さま、妙にテンションが上がっているようでしたが?」

ヒノキ「気にするでない。春先ゆえのちょっとした病気みたいなものじゃ」

(当記事 完)