バルカンという種族(および2.0時代のサプリメントの話)
ヒノキ「今回はプレイ前に、バルカンという種族について改めて設定を確認しておきたい」
ゲンブ「バルカンはダークドワーフ同様に、ミストグレイヴで初めて紹介された種族でござるな」
ヒノキ「そう。ミストグレイヴは2013年の春に発売されて、来年が10周年になるシナリオじゃが、同年の夏に発売されたサプリメント『イグニスブレイズ』において、バルカンがプレイヤーキャラとしても扱えるようになった」
シロ「イグニスブレイズの表紙は、猫人ミアキスが描かれていますね。尻尾つきのヒップラインがイヤらしくて、気恥ずかしいイラストです」
ヒノキ「2.5の追加データサプリメントは、ここまでアイテム本の『エピックトレジャリー』、モンスター本の『モンストラスロア』、魔法本の『メイガスアーツ』が出ていて、今年は戦闘特技のデータ集『バトルマスタリー』が出たわけじゃが、前3作に比べて新データが乏しく感じられる」
リトル「『バトルマスタリー』の魅力は、新職業のバトルダンサーと、2.5において初めて流派ルールが正式採用されたことだと思いますがぁ」
ヒノキ「2.0における流派ルールは、追加ルールのサプリメントよりも、専ら各地のワールドガイド(博物誌と総称)に掲載されておったからのう。新兄さんはSW2.0の追っかけは割と中途半端で、アイテム本の『アルケミストワークス』、モンスター本の『バルバロステイルズ』、魔法本の『ウィザーズトゥーム』は手に入れていたものの、以降の追跡は文庫リプレイ以外していなかったようじゃ」
ゲンブ「その後に出たのが、『カルディアグレイス』『イグニスブレイズ』『ルミエルレガシィ』の3剣サプリと、それらを受け継ぐレベル16以上の超越者サプリ『フォルトナコード』でござるな」
ヒノキ「うむ。『フォルトナコード』(2015)で久々に大型サプリを買って、またソード・ワールド熱がぶり返して、買い損ねた3剣サプリや、『ミストグレイヴ』以降のシナリオサプリも2018年の2.5発売前後に揃えて、今に至る、と。ただし、ワールドガイドの博物誌は店頭で見かけなくなったので、ミストキャッスルの背景資料として便利な『ザルツ博物誌』以外は未購入。流派ルールは主に博物誌に掲載されておったので、新兄さんは流派ルールに詳しくないということじゃな」
シロ「だから、改めて勉強中と。それはともかく、3剣サプリという呼称について。検索しても出て来ないので、一般用語ではありませんよね」
ヒノキ「わらわの造った呼称じゃからのう。今のソード・ワールドの背景世界ラクシアは、第一の剣ルミエル、第二の剣イグニス、第三の剣カルディアの3本の魔剣によって創造された世界じゃ。これに知られざる第四の剣フォルトナが存在するという伝承もあるが、2.5も2.0の伝統に則って、アイテム・モンスター・魔法の3大サプリが出た後、次は何が出るか、という予想が為されていた」
ゲンブ「順当に行くなら、カルディアグレイスの2.5版でござろうな」
リトル「でも、カルディアグレイスって、どういうサプリなんですかぁ?」
ヒノキ「(当時の)新種族、新職業がいろいろ載っていて、一言ではまとめることが困難な雑多な追加データ集と言ったところじゃ。そのうち、種族ではシャドウとウィークリング、ラルヴァをアレンジしたアルヴ(半吸血鬼風の種族)が2.5の『アウトロー・プロファイルブック』に採用され、職業のデーモンルーラーやウォーリーダーもそれぞれ『モンストラスロア』『メイガスアーツ』にて復刻した。つまり、カルディアグレイスの要素は部分的に2.5のサプリに導入されてきたわけじゃ」
ゲンブ「職業では、あと一つ。占い師のミスティックが未復刻。種族では小妖精風のフィー、鉱石人間のフロウライトが復刻されていないでござるな」
ヒノキ「まあ、カルディアグレイスの追加データが、2.5では分割導入されている現状で、新たに出たデータ本の『バトルマスタリー』は、総じて特技を大幅改訂した『イグニスブレイズ』2.5版+流派ブックの趣きじゃのう。追加されたモンスターデータも、『イグニスブレイズ』からの復刻(ライオンとかハイゴブリンとか)が結構見られるし」
シロ「なるほど。『バトルマスタリー』はイグニス本の改訂版の面がある、と」
ヒノキ「そして、バルカンという種族は、蛮族を生み出した第二の魔剣イグニスと深いつながりがあるのじゃ」
魔剣イグニスとバルカンの関係
ヒノキ「さて、ラクシアでは神ではなく、剣が世界を創造し、人や生き物を創り出したという世界設定じゃ。そして第一の剣ルミエルを見出した人間が最初の神ライフォスになり、ライフォスの冒険仲間が剣の力を与えられて、各種の神格に覚醒したというのが神話の始まりとなっている」
シロ「多くのファンタジー設定では、神が世界を創り、神によって造られた人間が魔剣を作り出す流れなのに、ラクシアでは逆なんですね」
リトル「神→人→剣の順番が、剣→人→神という順番に変わってるわけですかぁ」
ヒノキ「うむ。旧ソード・ワールド(フォーセリア)では、神の時代から魔法の時代に移り、それから戦乱の時代になって、戦士の『剣の力で世界の歴史を切り開く時代』を象徴してのソード・ワールドというタイトルじゃったが、ラクシアはフォーセリアとの区別化のために、『剣の産み出した世界』『人や蛮族が剣の力で神になれる世界』『魔法だけでなく魔動機械を導入した世界』という三要素を世界設定の根幹に置いておる。
「だから、ラクシアではGMオリジナルの小神をどんどん作ってもいいというか、公式でもキャンペーン・リプレイや小説、そしてシナリオが登場するたびに、新たな神が登場したり、神を目指して果たせなかった敵役が続出したりするわけじゃ」
シロ「でも、人が容易に神になれる世界だと、神の価値が下落しますよね」
ヒノキ「その通り。蛮族側の主神は、最初に魔剣イグニスを見出した戦神ダルクレムじゃが、ダルクレムよりも彼に力を与えた魔剣イグニスこそが本当に崇めるべき神の実体ではないかと考える種族がバルカンなのじゃ」
シロ「なるほど。だったら、バルカンのロールプレイとしては、『イグニスのために』というセリフが欠かせないのですね。バルカンに変装している身としては重要だと」
ゲンブ「何となく『ぶっ潰す』と言っていれば、バルカンっぽいと思い込んでいたでござるよ」
ヒノキ「さすがに令和ももうすぐ5年めになる状況で、最初の令和ライダーネタでずっと続けるわけにもいかんじゃろう。ソード・ワールドのバルカンは、公式設定が『雄牛のような角、竜のような翼、赤黒い皮膚を持つ蛮族』と設定されておる」
シロ「ホリーは元々、レプラカーンの小柄なケモ耳少女だったのに、バルバロスブラッドのせいで角と翼を持った赤肌色気美人になって戸惑っていたわけですね」
ヒノキ「うむ。小学生ぐらいの幼女だったのが、本能覚醒すると大人体型になるのは、わらわも経験しているから、よく分かるのじゃ」
シロ「前から聞こうと思っていたのですが、アリナ様はどうして普段が幼女体型なんですか? コンパーニュの女主人なら、もっと威厳に満ちた妖艶な美女スタイルにもなれそうなものを」
ヒノキ「契約者の希望じゃから仕方ないじゃろう。それに、わらわも綺麗だと言われるよりも、可愛いと言ってもらえる方が嬉しいしのう。威厳を備えて近寄りがたいと思われるよりは、親しみやすい日常の顔と、いざ事があれば真の姿をさらけ出して本気モードで振る舞える二面性ギャップ萌え。小学生ぐらいの娘がホーリーアップして大人体型になるアダルトタッチが魔法少女としての魅力に通じるとは思わんか」
シロ「なるほど。アリナ様は日常少女モードと、バトル時の大人モードの体型変化に萌えを感じる、と。自在に姿を変えられるなら、いいんですけどね。ホリーはずっとアダルト大人体型だから、体に引っ張られて、いろいろ価値観も蛮族寄りに変わってきた気がします」
ヒノキ「元々は大人しかった引っ込み思案の女の子が、環境の変化に応じて奔放な姐御肌に切り替わるとか、そんな感じかのう。バルカンの思考だと、『強さは正義』と『イグニスと同族に対する忠誠』というのがあって、仲間は大切にする一方で、裏切り者は絶対に許さない苛烈さがある」
シロ「仲間が大事というのは共感できますね。すると、交渉では仲間意識を重視している風に振る舞うと、信頼が得られる?」
ヒノキ「うむ。『仲間と共に、イグニスのために強くなれ』というのがバルカンの基本的な価値観じゃのう。仲間だろうと、弱ければ蹴落とす蛮族社会においては、やや変わっていると言おうか、『共にイグニスを信奉する者なら、同志として尊重すべし』というバルカン独自の信仰観がある。ただし、イグニス信仰は神とは異なるので、バルカンはプリーストにはなれないのじゃが」
シロ「それって、ザイア神官がバルカンになったシル・メリルにとっては死活問題ですね。バルカンにはプリーストはいないとなれば、『ザイアの聖印を持って祈ってるだけで、正体バレのリスクがかなり高い』ということだし」
ヒノキ「そして、バルカンは裏切り者であっても、同族殺しを忌避する傾向がある。よって、バルカンが裏切り者を成敗する際には、部族の中から一人の『咎人』を選び出し、部族から追放処分を下すのじゃ。『咎人』は自ら翼を切り落とし、裏切り者を殺害することに人生を費やす。プレイヤーキャラクターのバルカンは、この部族から離れた咎人であることが推奨されておる」
シロ「なるほど。ボクのホリーは、『外の世界の異なる部族のバルカンだからミストグレイヴのバルカンの常識に乏しい』という設定で、これまでロールプレイして来ましたが、その咎人設定を意識してみるのもありですね」
ヒノキ「今回、バルカンの宮殿に接触するわけじゃから、交渉の窓口はホリーが中心になろう。その際に、立ち振る舞い方を決める最低限度の世界観の常識を確認したということで」
蔓に埋もれた居住区(47日めの夕方)
ヒノキ→GM「それでは、改めてプレイを開始する。前回、【愚か者の扉】を突破して深層階に入った烈火団。次の区画に入る前にランダムイベントを決めよ」
ゲンブ→G太郎「ダイス目は1。何もイベントは発生しなかったでござるな」
GM「では、新たな区画を決めよ。と言っても、残り3区画だけじゃがのう」
シロ→ホリー「(コロコロ)46番の【蔓に埋もれた居住区】が出ました」
GM「ほう。上手く行けば、休息地点が見つかるかもしれぬ場所じゃ。石畳の大通りの左右には、等間隔に街灯が建てられており、通りに面して小さな家々がいくつも並んでいる。かつてここにはたくさんの人たちが暮らしていたのだろうが、今は異常なほどに生い茂った蔓状の植物が全てを覆っておる。この地を探索したければ、まずは探索判定18に成功せよ」
G太郎「成功したでござる」
GM「では、何が見つかったか、2Dを振るがいい」
G太郎「ご主人、振って下され」
リトル→デル「オラでいいのかぁ? (コロコロ)9」
GM「珍しい植物を見つけた。もう一度、2Dを振るがいい」
デル「10だぁ」
GM「赤い花を見つけた。さらに1Dじゃ」
デル「3」
GM「花はまだ蕾のようじゃが、ここで各人、精神抵抗判定15を行え」
デル「21で成功したぁ」
ホリー「ボクも問題ない。イノセントも成功した」
G太郎「当然、成功したでござる」
GM「ふむ。花の正体は見識判定13で分かるぞ」
G太郎「余裕で分かった」
GM「〈魔女の花〉といって、食べるとMP10点を回復することのできる花じゃ。1500ガメルの価値のある貴重品でもあるが、まだ蕾なので価値がない。蕾状態だと、近くの者からMPを1D点吸収する可能性があったが、精神抵抗に成功されたから害はなかった、と」
G太郎「う〜む、時期が悪かったようでござるな」
GM「そして、さらなるイベントが発生する。(コロコロ)キノコに覆われた人型生物が出現した」
G太郎「魔物知識判定は15でござる」
ホリー「敵の正体が不明なのはイヤだなあ。知名度19だと強そうだし。剣の恩寵込みで+4して、ボクも判定します。よし、6ゾロを出して25だ。いや、6ゾロだと、レベル2しかないセージ技能でも成功になるな」
GM「すると、弱点まで見抜かれた。炎ダメージ+3されるのう。敵はレベル11の植物モンスター・ファンガスじゃ。剣のかけらも入っておるので、HPは133点に達する。胞子を撒き散らして、人に寄生するキノコ型モンスターで、いわゆるマタンゴじゃのう。1ターンで仕留めることができなければ、胞子に蝕まれないか生命抵抗力18で判定してもらうことになるので、心して戦うといい」
ホリー「ええと、胞子を撒き散らすのは前衛のみですか? 後衛も巻き込まれる?」
GM「範囲は6メートルじゃから、前衛のみじゃな」
ホリー「G太郎、ここはお前1人に任せた。ボクとイノセント、そしてデルは後衛のまま待機した方がいい」
G太郎「確かに、生命抵抗力18に普通に成功できそうなのは基準値13の私だけでござるな」
デル「オラは基準値11だから、運命変転を使えば確実に成功できるさぁ」
G太郎「いや、ご主人にはイザという時に【キュア・ディジーズ】で回復に回って欲しい。病気に感染する可能性は少しでも下げるのが、今の時代の良識でござろう。ここは私が1人でキノコ狩りの男になるのが最適解と見た」
GM「では、先制判定を行うといい」
G太郎「先制はとったから、5回キックが発動でござる。相手の弱点が炎なら、嬢ちゃんに【ファイア・ウェポン】ぐらいは使ってもらいたいものだが」
ホリー「分かった。MP3点消費して、残り26点。呪文はかかったので、ダメージ+2だな」
G太郎「そこに炎の弱点ダメージ2倍して+6」
ホリー「さらに鼓咆で+1追加だ。あと、後衛からシーサーが水鉄砲ぐらいは撃ってやろう。抵抗はされて、ダメージ5点」
GM「残りHPは128点じゃ」
G太郎「使う練技は【マッスルベアー】【キャッツアイ】【ジャイアントアーム】の3つ分。MP9点使用して、残り9点。これで命中+1、ダメージ+5の自己バフを加えて、ダメージが合計12点加算されるでござる。その勢いで必殺技の5回キックを発動させるでござるよ。(コロコロ×5)4回命中。1回だけ出目3で外したが、ダメージで挽回したい。(コロコロ)よし、1発めはクリティカルで50点ダメージ。続いて、34点、38点、38点。これで、どうでござるか?」
GM「こちらの防護点は12点じゃから、160点から48点引いて112点ダメージをくらったな。残りHP21点じゃ」
G太郎「くっ、1発外したのが悔やまれる」
デル「オラが前に出て、とどめを刺したいが、防護点込みで33点ダメージを出す火力はオラにはねえ」
GM「では、こちらの番じゃ。ファンガスは補助動作で毒の胞子を撒き散らす。G太郎は抵抗するがいい」
G太郎「出目7だから、達成値20で抵抗したでござる」
GM「続いて、命中20でキノコパンチ」
G太郎「23でカウンター成功。ダメージは36点」
GM「そのカウンターでキノコ人間ファンガスは粉砕された」
この戦いによって、経験点110点と★3個をゲット。
さらに戦利品として、しおれたキノコ(30G)と森の奇跡(2000G)、そして剣のかけら11個を獲得した烈火団は、消費したMPをどう回復するかを考える。
G太郎「残りMP9点は、さすがに心許ないのでHP23点をMPに変換するでござる」
デル「師匠のHPは、オラの神聖魔法で回復してやるさぁ。【キュア・ウーンズ】2回で30点回復して、オラの残りMPは21点だぁ」
さらに、ホリーとデルはMP回復の魔香草を1つずつG太郎に使ってもらい、それぞれ10点と13点回復した。
こうしてホリーのMPは36点、デルニールのMPは34点になった。2人とも、MP最大値は40点少しなので、これ以上の回復は必要ないだろうと判断する。
続いて、北へ向かう烈火団。ランダムイベントで蛮族のドレイクバロン(レベル9)と遭遇するが、ボス敵でない以上、剣のかけらも入っていないHP53ではザコ扱いされた挙句、先手をとったG太郎の5回キックでたちまち瞬殺されるのだった。
経験点90点と、手持ちの〈剣のかけら〉5個、美しい竜人の角(4200G)、真鍮戦士勲章2個を獲得。
そして一行が到着した区画は、目的地の【溶岩湖の宮殿】である。
●ミストグレイヴ深層階の地図
(青字は拠点および宿泊可能地点。
緑字は新規に記入、あるいは未探索区画)
瑠璃宮ー歯車ー地下庭園
l l l
王女のー暗殺ー不死者ー流血回廊ー月の図書館
鍾乳洞 斡旋所 の城 l l
l l l l
黒炎の工房ー蒸気の谷ー赤瀑布ー巨大ー銀灯の通路
l l 格納庫 l
上層階 ←の門 ピラミッド 神殿 スフィア
l l
溶岩湖の宮殿ーー?
l
愚か者のー 蔓の
上層階 ←扉 居住区
溶岩湖の宮殿(47日め夜)
GM「真っ赤に煮えたぎる溶岩の湖が横たわっている。その真ん中に突き出した岩の上に、王冠を思わせる煌びやかな宮殿が築かれている。溶岩の湖の畔には、岩を削って作られたと思しき巨大な角笛がある……といった情景描写じゃな」
ホリー「溶岩湖の上を飛行できないと、宮殿に行くことはできないみたいだな」
デル「角笛があるなら、鳴らしてみればいいのではぁ?」
G太郎「バルカンが味方になってくれるか、敵対勢力なのか、はっきりしない状況であるが、我らの目的を整理しておこう。まず、我らの目的の一つに、ダークドワーフのツルクフ殿から〈破剣の星槌〉を、〈黒魔熔鉄鉱〉30個で買い取るという件がある」
デル「〈黒魔熔鉄鉱〉は【溶岩湖の宮殿】で入手できるって聞いたなぁ」
G太郎「つまり、我らは〈黒魔熔鉄鉱〉を求めに来た商人でござる。ギルギダッシュ殿に頼まれた『バルカン族の思惑を探るスパイ活動』は本義ではないとしておこう」
ホリー「あと、【地下庭園】にいる妖精たちから『〈セランシェの灯火〉がバルカンに奪われた』という話も聞いている」
G太郎「とりあえず、商人として振る舞いながら、それらの情報もさりげなく調べたいが、バルカンという種族は炎を無効化するゆえ、烈火団の得意技が通用しない。できるだけ穏便に事を進めたい。それには、バルカンの姿をしているホリー嬢ちゃんが鍵となろう」
ホリー「ああ。幸い、バルカンは同族に対して友好的と聞いた。正体がバレなければ、何とかなるだろう。それに、バルカンの女王陛下には一度お会いして、仲良くしたいと思うぞ、心から」
デル「また、それかぁ。しばらく控えていると思ったら、女性に対する執着心は変わっていないんだなぁ」
ホリー「ガンダムさえ百合を推す時代だからな。それに王女とか女王とか高貴な身分の女性に礼儀を示すのは、騎士として間違ってはいないはず。水星はお堅いかもしれないが、こっち(ミストグレイヴ)では女同士だって普通だ」
G太郎「ホリー嬢ちゃんの性癖はともかく、人魚の女王パランティーナや、鍾乳洞に封印された魔法王女ルイーズ、ドラゴンの桜麟天姫ナーデージュなど、王族の女性キャラも増えて来たでござるなあ。地上のミストキャッスルでは、そこまで王族は登場しなかったはず」
GM「地下は、各種族の本拠地みたいなものじゃからのう。人魚、封印されし古代王国の魔女、ドラゴンに続いて、バルカンなど異種族が盛り沢山じゃ」
デル「男だと、翠将を始め、ゴブリン王のムルカグンドリ、ギルマン王のブグプリ、コボルド窟の元締めオードル・プル、煌びやか卿アー・ヌルチェなんかが高貴な身分になるかな」
GM「あとはリザードマンの長ハイ・ゴグなんてキャラもいたが、とにかく地下は多彩な種族がせめぎ合っていて、それぞれに統治者がいる群雄割拠状態なのが特徴じゃ」
ホリー「おっさん連中との腹を割った交渉は、G太郎に任せた。ボクは女王さまを担当するってことで。とにかく、角笛を吹き鳴らすぞ」
GM「すると、宮殿の方から1体のバルカンが飛んで来た」
G太郎「魔物知識判定は17でござる」
GM「レベル7のバルカンアデプト(剣のかけら入り)、HP95点などのデータが分かった」
G太郎「格下でござるな。ならば、安心して嬢ちゃんに交渉を任せよう。決裂したなら、いつでも瞬殺できるよう警戒だけは怠らない」
デル「オラも、いつでもホリー姉さんを庇う体勢に入れるようにするぅ」
GM「殺気混じりの警戒心に、相手もピリピリした雰囲気を崩さないまま、汎用蛮族語で『我らバルカン族の宮殿に何用か? 賢明にして麗しき〈炎魔の女王〉、魔剣イグニスに祝福されしバイラヤーナ陛下に仇なすならば、この〈紅蓮の守り手〉バーンザームがお相手仕ろう』と儀礼的な名乗りと誰何の問いを発するのじゃ」
ホリー「だったら、ボクがバルカン語で応じよう。『ボクは、情熱のガルダ。辺境のカーシェイン一族の末裔にして、使命あって遍歴の騎士となりし者。今は命を救われた恩義を受けて、仲間のドレイク・デルと、用心棒のマッスルG太郎と共に、〈烈火団〉という組織を立ち上げて、経済活動に従事している。麗しきバイラヤーナ陛下の御高名は兼ねてより聞き及んでおり、騎士としての忠義を捧げたく参った。取り継ぎ願えないだろうか?』」
GM「騎士じゃと?」
G太郎「騎士でござるか? 商人として振る舞うはずだったではござらんか?」
ホリー「ボクは最初から騎士の家の出身だよ。キャラビルドの時の、この記事を読めば分かることさ」
ホリー「ミストグレイヴでは、密偵活動のために騎士の出自をあまり前面に出すことはなかったけど、心の奥では騎士道の土台がしっかりと根付いていたんだ。G太郎は商人かもしれないが、ボクはバルカンとしても騎士らしさをもって自分をアピールしたいと思う」
GM「騎士とはのう。バーンザームは警戒心をいっそう高めたように見える。『外の世界から来た遍歴の騎士か。カーシェインという名は知らんが、以前にも同じく騎士を名乗って我らに接触してきた者がいる。貴殿らはシル・メリルの仲間か?』」
G太郎「そ奴は裏切り者でござる。我らはシル・メリルと敵対する者……と言ってみるが、バーンザーム殿の反応はいかに?」
バーンザーム『そうか。シル・メリルの敵か。ならば、敵の敵は味方と解釈していいのかもしれんな』
ホリー「って、G太郎。勝手に交渉を進めるなよ」
デル「それにどうして、シル・メリルが敵だって明かしたんだぁ? もしも、バルカン族がシル・メリルと結託していたら、危険じゃないかぁ?」
G太郎「GMが騎士という言葉で、『警戒心を高めた』と言ったでござるからな。そして、シル・メリルは騎士神ザイアの神官戦士と聞くし、おそらく騎士と名乗ってバルカン宮殿に接触し、何らかの迷惑行為を為した。少なくとも、バーンザームが警戒心を高める程度にな。だったら、先にシル・メリルが共通の敵だと打ち明ける方が、その後の交渉がスムーズに行く可能性がある、と判断したまでのこと」
デル「すごいなぁ。そこまでの判断は、オラにはできそうにねぇ」
G太郎「アリナ様のGMに付き合って、長いでござるからな。NPCのロールプレイから察する部分もあるって話だ」
GM「う〜む、いきなり踏み込んだ反応をされてしまったが、確かにバーンザームはシル・メリルをバルカン族の敵だと認識しておる。と言うのも、シル・メリルがいろいろと扇動したために、今のバルカン族は女王バイラヤーナの統治に従わない裏切り者が続出するようになったからなのじゃ」
ホリー「だったら、ボクたちがシル・メリルを倒したら、バルカン族は味方になってくれる?」
バーンザーム『よそ者は信用しにくいが、女王バイラヤーナの統治に協力するのなら、同胞として歓迎しよう。裏切り者には死を、同胞には慈愛を、というのがバルカンの掟であるため、我らは直接、同族殺しを行うわけにはいかんが、外の世界の者が義侠心に駆られて、我らの敵を倒してくれる分には、感謝を表明するぐらいの礼節は持ち合わせておる。一仕事、頼まれてくれるか?』
ホリー「シル・メリルを倒せってことか?」
バーンザーム『いや、シル・メリル一人だけの問題ではない。シル・メリルに扇動された裏切り者の始末をしてもらいたい。まずは、我らの宝〈ボルケーノスタッフ〉を奪い去ったバルバナという女を見つけ出し、宝を奪い返してくれたなら、イグニスの同志として認め、女王陛下との対面の儀を取り計らうとしよう』
G太郎「ミッションでござるか?」
GM「ああ、正式なミッションじゃ。レベル6以上推奨の『バルカン族の裏切り者を追え』。達成の暁には、〈バイラヤーナの客人〉の称号を得て、〈黒魔熔鉄鉱〉も5個進呈しよう」
G太郎「〈黒魔熔鉄鉱〉ももらえるとなれば、断る理由がないでござるな」
デル「だけど、既に引き受けている『バルカン女王の真意を確かめる』ミッションはどうなるんだぁ?」
GM「それは、バイラヤーナと対面できれば、達成したことになる」
デル「つまり、同時受注可能な一石二鳥ってことだなぁ」
ホリー「では、新たにミッション受注、と。それにしても、シル・メリルの奴、こちらの思う以上に迷惑をかけて来るんだなあ」
GM「シナリオ原作では、レジスタンスの組織の在処を探って、彼女に教えたら組織壊滅するというトラップがあったわけじゃが、それを回避されたので、当リプレイのオリジナルでシル・メリルのさらなる陰謀をいろいろ考えてみた。バルカン関連のイベントでは、シル・メリルの仕掛けがいろいろ明かされる予定じゃ」
●ここまでの冒険成果
日数経過:47日めの夜(溶岩湖の宮殿)
経験点:【愚か者の扉】のキマイラを倒した★2個
ファンガスを倒した★3個
(合計★5個)
魔物撃退分910点
ピンゾロ分(なし)
収支結果:真鍮戦士勲章8個
2500ガメル
戦利品9305G分
ガストルークボール
1点魔晶石1個
マギスフィア(中)
漆黒のマギスフィア
バルバロスブラッド
剣のかけら20個
魔香草2個消費
ミッション:バルカンの女王の真意を確かめろ
バルカンの裏切り者を追え
(現在19人)
【月の図書館】の書物を読む方法を探る
地下世界から誰かを外に脱出させる
驕王ポイント現在40点
人魚奴隷の救出(残り2回)
虹色の宝石の確保
(現在水妃ポイント8点)
転送装置のマスターキーを入手する
〈黒魔熔鉄鉱〉30個を集める
機械の部品ポイント370点
魔神討伐ポイント(現在42点)
情報
・防空施設の魔力供給源【翡翠のピラミッド】の装置を操作するには、〈銀水晶のマギスフィア〉が必要。
・〈破剣の星槌〉は深層階の【黒炎の工房】で〈黒魔熔鉄鉱〉30個と交換。
・〈黒魔熔鉄鉱〉は、深層階の南東部にある【溶岩湖の宮殿】で入手できる。
・【地底湖の畔】のマーマンは、水妃ポイント残り20点で地上への抜け道を教えてくれる。
・【コボルド窟】のオードル・プルは地上に伝手がある。
・四祖の1人シェラシースは魔剣である。
・地下水路から地上への脱出には、〈銀水晶のサークレット〉が必要。北東の隠し扉を開けられる。
・漆黒のマギスフィアは、深層階の黒い球体に入る鍵。別に合言葉が必要。
・竜のエサユハと知り合い、竜の秘薬を完成させた(竜姫ナーデージュ救出ミッションの予定)
・【歯車の迷宮】には地下水路の明かりの仕掛けあり。
・ユリア・ミルドリスは深層階の【瑠璃宮】に向かった。
・翠将の親衛隊になるには〈黄金近衛勲章〉を入手して、試練を受けねばならない。
・暗闇を見通す〈セランシェの灯火〉は妖精たちの【地下庭園】に。現在バルカンに奪われたとのこと(ミッションの予定)
・【不死者の城】のランタンヘッドは、〈ワルプルギスの鐘〉に呪われている。ゲール・ハイネメルから解放ミッションが受けられる。
密偵の知り合い
・アム・ヤーセン(ドワーフ娘→ラミア)
キーワード「月の図書館の書物閲覧」「漆黒のスフィア」
キーワード「白銀勲章」
・ニコ・シュナウヘア(ナイトメア→オーガ)
キーワード「防空施設」「シェラシース」「ヤーハッカゼッシュ」「地底に眠るもの」
・オスカル・バロー(シャドウ→バジリスク)
キーワード「白銀以上の勲章コレクター」「転送装置のマスターキーを持つ」
・シル・メリル(人間女→バルカン)
キーワード「レジスタンスを探す敵」
冒険達成度:合計25%
(当記事 完)