本日は「昭和の日の振り替え休日」ということで、昭和を振り返る記事を書くのがいいかな、と思いきや、当ブログでは割といつも振り返っているような感じなので、芸がない。
だったら、昭和の自分、すなわちケイソン改め、秀と、平成の自分NOVAで喋ったら、どんな感じかな、という記事を書いてみることにします。
まあ、普通は、昭和VS平成だと、昭和の方が先輩で、平成の方が未熟な若者という構図になるわけですが、一人の人間でそれをやると、昭和の方が未熟な若者で、平成の方が人生の先輩になるという逆転の構図が面白いな、と思ったり。
ということで、いつもと違う、自分の脳内会話をお楽しみいただければな、と。
35年の時を超えて
秀「それにしても、驚きましたよ。NOVAさんが、未来のぼくだなんて」
NOVA「俺だって驚いたさ。殺人鬼の中に、過去の俺がいたなんてな。フィクションの中だけで良かったぜ。犯罪者の烙印を押されちゃ、身内や周りの人間に迷惑をかけるし、必殺シリーズのファンにも顔向けできねえ」
秀「それってどういうことです?」
NOVA「お前はまだ知らないだろうがよ。昔のさらに昔、昭和48年、1973年に『必殺仕置人殺人事件』と呼称される事件が実際に起こっていたんだよ。要するに、TVに影響されて事件を起こしてしまったら、その番組の存続に関わるような問題に膨らんでしまうんだ。この事件によって『必殺仕置人』は一時的にシリーズの路線変更を余儀なくされ、必殺シリーズ3作めは『助け人走る』となり、4作めも『暗闇仕留人』。5作めから必殺の文字を取り戻し、『必殺必中仕事屋稼業』に続くわけだが、もしも、お前が必殺に影響された事件を起こしていれば、当時は受験生の仕事人の西順之助が出ていたのだから、マスコミの当然のターゲットにされていただろうな。お前のせいで、全国の必殺シリーズファンが哀しい気分を味わうことになるんだ」
秀「そんなこと……ぼくは知りませんよ。まだ、やってもいないことで責められても……」
NOVA「責めてるんじゃねえよ。まだ、も何も、やってないんだからな。俺は現実で殺しなんてしていないし、しなくて良かったと思っている。だが、思春期の不安定な気分の時に、もし、そういうことをしていたらどうなるか、と考えることはある。IFの世界、シミュレーションしてみたって言えば、お前なら分かるよな」
秀「ああ、マクロスとかガンダムとか、シュミレーションゲームはやってますから」
NOVA「シュミレーションじゃねえ、シミュレーションだ。言葉使いは正確にな。英語の辞書をきちんと引くか、もう一度、ゲームのボックスの文字をよく読んでみることだ。思い込みの読み違いは、いろいろ恥をかくぜ。経験者は語るって奴だ」
秀「つまり、NOVAさんが読み間違えたってことじゃないですか? 自分の過ちで、人を責めるんですか?」
NOVA「責めてるんじゃねえ、って言ってるだろう。これは言わば『転ばぬ先の杖』って奴だ。魔法使いにとって、杖は必須アイテムだからな」
秀「NOVAさんは、魔法使いなんですか。何だか女の子っぽいですね」
NOVA「お前、魔法使いってものを知らないだろう?」
秀「それぐらい知ってますよ。魔法使いといえば、サリーに始まり、ひみつのアッコちゃんとか、マコちゃん、チャッピー、メグちゃん、そこから飛んでチックル、ルンルン、ララベル、サンディベル、ミンキーモモ、クリィミーマミまで完璧です」
NOVA「普通なら、『お前、何でそんなに知っていて、素で言えるんだよ』と驚くところだが、相手が悪かったようだな。お前は3つの過ちを犯している」
秀「何と、それは一体?」
NOVA「まず一つ。お前が挙げたサンディベルは、ララベルの後番組だが、魔法少女ものじゃない。どちらかと言えば、ハイジやペリーヌのような普通の女の子の成長物語の方向性だ」
秀「そうだったんですか。知らなかった」
NOVA「まあ、番組を見ていないんだから仕方ない。それと、お前の知識に2つ抜けがある。1973年の『ミラクル少女リミットちゃん』がチャッピーとメグの間に位置付けられる」
秀「あれ? メグの前ってキューティハニーじゃないんですか? ずっと、そう思っていましたよ」
NOVA「うーん、前川陽子の歌う印象的な主題歌とか、お色気を前面に出した演出、荒木伸吾のキャラデザインなど共通する要素も多いが、ハニーの前番組はミクロイドSで、後番組はアニメじゃなくなった。この辺は、再放送視聴じゃ知る由もないことだが」
秀「あなた、何者です? どうして、そんなに詳しいんですか」
NOVA「未来のお前だからな。お前が知っている知識は、大抵のことは知っているし、それ以上もだ。まあ、忘れていなければだが。それと、俺にはインターネットという素晴らしい魔法があるからな。これぐらいの情報は検索すれば簡単に分かる」
秀「インターネット? スパイダーネットか何かか? ケンサク? 森田健作? 言葉の意味はよく分からないが、とにかく凄い自信だ」
NOVA「ああ、お前はキン肉マンを読んでいるんだったな。キン肉マンのアニメは始まってたっけ」
秀「一応、見てますよ。だけど、原作の良さには及びませんね。何ですか、『牛丼一筋三百年』って。吉野家の牛丼と言えば、八十年に決まってるでしょう。嘘をついちゃいけません」
NOVA「いや、吉野家設立が1899年とのことだから、創立80年は間違っちゃいないのだけどな。吉野家が牛丼チェーンを始めたのが、1973年なので、意外と最近の話なんだわ。つまり、創立80周年は本当でも、牛丼一筋と言っちゃうと嘘になる。過大広告もいいところだな」
秀「すると、ぼくたちはキン肉マンに騙されていたんですか? 6を9にとか、二刀流と2倍のジャンプと3倍の回転力で1200万パワーって信じていたのに」
NOVA「信じるなよ」
秀「おのれ。キン肉マンの作者ゆでたまごめ。いたいけな中学生の純真な真心を踏みにじりやがって。俺はこの恨み、一生忘れん。さあ、どうしてくれようか。チャララー(ニードル、シャキーン)」
NOVA「おいおい、まずは落ち着け。どうして、そう極端に走るんだよ。それが若さって奴か? マンガの話なんだから、マンガとして普通に作り物として楽しめばいいんだよ。それを騙したとか、信じられないとか、現実とマンガを一緒にしすぎだ。大体、『牛丼一筋八十年』なんてCMは、キン肉マンじゃなくて、吉野家が言い出したことなんだから、ツッコミ入れるなら、吉野家に入れるべきだ。と言っても、間違えても吉野家に特攻ツッコミを仕掛けるんじゃないぞ。俺だって、吉野家には時々、昼食でお世話になっているんだからな。八十年だろうが、三百年だろうが、今、食べて美味しければそれで十分だ。今のところ、吉野家に恨みはねえ」
秀「ハッ、ぼくは一体? どうして、こんなかんざしを振り回して、ゆでたまごに襲いかかろうと」
NOVA「心配するな。そもそも、お前はゆでたまごがどこにいるかも知らないし、ゆでたまごだって、お前と同じ仕事人ファンだってことすら知らないだろう。そして、ゆでたまごだって仕事人に憧れて頑張るんだけどな。悪人に無残に殺されて、スカイライダーに仇を討ってもらうことになるんだ」
秀「何ですか、その話? 必殺仕事人に、キン肉マンやバッファローマンも出て来たりするんですか?」
NOVA「出てくるんだな、それが。1985年3月15日放送の『必殺仕事人V』の第9話『主水、キン肉オトコに会う』が、そのうち放送されるから」
秀「何で、仕事人にキン肉マンが出てくるんですか? そんなの有り得ないですよ。大体、仕事人にスカイライダーってのも意味が分からない」
NOVA「秀の後釜として、スカイライダーの筑波洋役を演った村上弘明さんが出てくるんだよ。役名を、花屋の政という」
秀「え、後釜ってことは秀、死ぬんですか? やめてくださいよ、NOVAさん。そんなことになったら、ぼく、生きていけないですよ」
NOVA「安心しろ。秀は死なないから。夕陽の海に消えるだけだから。その後、また、しっかり帰って来て、主役を張るから。その後もゴジラ映画に出たり、必殺に帰って来たり、将軍慶喜になったり、家光になったり、隠密の影十八になったり、夢一座の看板役者になったり、息子が牙狼になったりするから」
秀「ちょ、ちょっと待って下さいよ。そんなに一気にまくし立てられても、まったくもって理解が追いつきません。そもそも、それ、全部、秀の話ですか? 何だか現実の役者・三田村邦彦と、時代劇キャラの秀の話が一緒になったりしません? お互い、混乱しているようだから、ここは話をもう一度、整理しませんか?」
NOVA「フッ、年下のお前に諭されようとはな。分かった、一度、状況を仕切り直すとしよう」
今年は昭和93年
秀「そうですね。話が飛んだのはどこからでしたっけ? ええと、あれがああなって、それで、あ、思い出した。『ミラクル少女リミットちゃん』の辺りからだ」
NOVA「そこまで戻るのかよ」
秀「だって、ぼく、まだ過ちを3つ中、2つまでしか聞いていませんし。自分に過ちがあれば、徹底究明して、全ての知識を完璧にする。そんなこと当然でしょ?」
NOVA「当然じゃねえよ」
秀「だって、100点満点のテストで、97点しか取れなかったら、非常に悔しいじゃないですか。あと、3点分、お前の顔は覚えた。この次に会ったら絶対に倒してやるから、覚悟しておけ。死んでも、貴様だけは見忘れんぞって気になりません?」
NOVA「いや、なったけどさ。さすがに、それで一生を過ごすのは無理だ。高校に入ったら、早くも挫折するぞ、そんな考え方。完璧主義も程々にしておかないと、あっさり絶望して、闇に呑み込まれることになりかねん」
秀「大丈夫。その時はその時です。闇に堕ちようと、強く生きて、それが叶わないときは、潔く命を絶ちます。命を捨てて、俺は生きる、ですよ」
NOVA「お前は、どこかの忍者キャラか、宇宙海賊かよ。キャラとしては好きだが、現実の俺がそんな考え方をしていたとは……していたかも知れんな。いわゆる厨二病という奴か」
秀「中2病って何です? ぼく、まだ中1ですし」
NOVA「いわゆる未来語って奴だから、83年頭の中1は気にしなくていい。とにかく、俺は、そんな苛烈な生き方はお前に望んでないから。頼むから生きてくれ。お前に死なれちゃ、俺が困る。俺と楽しく付き合ってくれる知人、友人が悲しむ。俺の教え子が泣いてくれるかも知れない。お前は、お前だけは何があっても死なないでくれ」
秀「NOVAさん、それほどまでに、ぼくのことを」
NOVA「いや、過去の俺に死なれちゃ、今の俺が生きていけそうにないから言ってるんだけどな。俺、自分のことが可愛いし」
秀「はい、先生。そういう自己中心的な物の考え方は直した方がいいと思います」
NOVA「いや、自己中心的と言っても、自分のことだけを考えて生きているわけじゃないんだけどな。人を助けるためにも、まず自分が潰れちゃダメなんだよ。自分も幸せに、そして自分に関わる人間もできるだけ幸せに、というのが俺のモットーだ。さすがに世界中の人が幸せに、という夢は、自分には語れん。そこまでの聖人にはなれそうにない。自分にできる範囲はたかが知れているが、そのできる範囲のことはしっかりしていきたいと考えてるぞ。そして、自分に力があれば、できる範囲も広げていくことはできるはずだ。できること、やりたいこと、しなければいけないことからコツコツとだ」
秀「素晴らしい。どこまでも付いて行きますよ、NOVA師匠」
NOVA「いや、付いて来なくていいから。お前はお前の人生を行けばいいから。死なずに、他人に迷惑はかけずに、好奇心はなくさずに、真面目に勉強して、遊び心も忘れずにいれば、その先は必ず俺に届くから」
秀「分かりました。で、ぼくの過ちの最後の一つは一体?」
NOVA「まだ言うか。さるとびエッちゃんが抜けてるんだよ」
秀「え、エッちゃんって魔法少女だったんですか?」
NOVA「ああ、マコちゃんとチャッピーの間に位置する71年の魔法少女ものだ。まあ、サイボーグ少女のリミットちゃん同様、不思議な力がいわゆる魔法由来のものでないので、狭義の魔法少女ものには分類されないが、日常系不思議ファンタジーには分類されるな。それでも、エッちゃんが気に入らないなら、同年に放送された『ふしぎなメルモ』を代わりに入れてもいいが」
秀「あ、そうか。メルモちゃんを忘れてたや。エッちゃんも一応、見ていたのに、魔法少女ものだとは気付かなかった。この秀、一生の不覚。こうなったら死んでお詫びを。シャキーン(針をクルッと回して、自分の喉元に当てる)」
NOVA「だから、そう簡単に死ぬな、と言っている。前に翔花に『NOVAちゃん、自殺願望がある』と言われて、その時は否定したが、こういうことだったのか。ええと、秀くんや。おじさんの話をしっかり聞いてくれないかな」
秀「何ですか、おじさん」
NOVA「(ギロッ)冗談にしても、死ぬ死ぬなんて口にするんじゃねえ。言い続けていれば、それがいつ変なスイッチが入って、実現するか知れたものじゃねえ。口癖にするなら『フッ、こんなことで俺は死ぬわけには行かねえ。そう簡単には死なないのが、ヒーロー魂ってものよ。俺には過去と今と未来のヒーローの加護が付いているからな。俺が死ぬのは、誰かにこの尽きせぬ想いを伝えきった時だけだ』ぐらいにしておきな」
秀「……NOVAさん、怖いです。口癖にしては長いです。おじさんと言ってゴメンなさい(ペコリ涙目)」
NOVA「分かればいいんだ、分かれば。まあ、死ぬ演技をするなら、死んでもいいが、すぐに帰って来い。地獄の閻魔様に追い出されたとか言って、適当な理屈をこじつけてな」
秀「そんなことで生き返れるんですか?」
NOVA「大丈夫。真のヒーローなら、プルトンロケットに乗って爆発しても生還するし、人の思い出に残っていればリメイクされるし、日本では忘れられていても、アラブの大富豪が発掘してくれたりもする。お前も、人々の心に何かを残すヒーローになるんだ。それまでは簡単に死ぬんじゃない」
秀「分かりました。それじゃあ、NOVAさんのいる、ええと何年でしたっけ?」
NOVA「2018年だ」
秀「ええ? 世界滅んでいないんですか?」
NOVA「ノストラダムスの大予言のことか?」
秀「はい、それです。1999年7の月にてっきり大災害でも起こって、みんな死んじゃうような気になって……」
NOVA「大災害、あったぞ」
秀「って、あったんですか?」
NOVA「99年ではなく、95年の1月17日だが、神戸を中心に未曾有の大地震が起こって、俺もあわや家具の下敷きになって、死ぬところだったんだ。幸い、積んでた本や、分厚い布団がクッション代わりになってくれたおかげで、大した怪我もなかったわけだが。本に救われた命だ。本は大切にしておけよ」
秀「本にまあ……って、冗談じゃなくて、大地震って大ごとじゃないですか」
NOVA「ああ、それでも俺は生きている。『阪神・淡路大震災』という歴史の教科書にも、地学の教科書にも載るような大災害を、幸いなことに生き延びた。いいか、人なんて、ちょっとした事故や災害で簡単に死ぬものなんだ。その中で、自分が今、生きている以上、自分の人生、そして周りの人の人生を少しでも良いものにできるように、しっかり成長するのが生きる道じゃないか。死ぬことばかり考えていないでさ」
秀「それで、NOVAさんは、2018年に魔法使いとして頑張っているんですか。でも、ぼくには男の魔法使いって、まだ想像できません。まさか、スカートはいて女装はしてないですよね。自分の将来がそんな姿だとしたら、ぼく、嘆きますよ」
NOVA「してないから安心しろ。それよりお前、『燃えろアーサー』って知ってるか?」
秀「どっちですか。『円卓の騎士物語』の方ですか、それとも『白馬の王子』?」
NOVA「そこまでタイトルが出るってことは、両方覚えているんだな。この場合は、前の方がいいんだが」
秀「で、アーサーがどうしたんですか? 神剣エクスカリバーとか、聖なる盾ビショップとか、白馬ペガサスとか、湖の騎士ランスロットとか、竪琴の騎士トリスタンとか、いろいろ覚えてますよ」
NOVA「だろうな。魔法使いマーリンは?」
秀「ああ、男の魔法使いってああいう感じか。スターウォーズのオビワン・ケノービみたいなの」
NOVA「イメージとしては、間違っちゃいないな。後はウィザードとかウォーロック、ソーサリーといったような英単語をよく覚えておけ。その時が来たら、お前にも理解できるはずだ。ロールプレイング・ゲーム、RPGという言葉も、お前の人生に大きな影響を与えることになる」
秀「ふむふむ。何だかNOVAさんがノストラダムスみたいな予言者に思えてきました。しかし、2018年かあ。計算すると、昭和93年なんですねえ。昭和がそこまで続くとは思ってもいなかったや」
NOVA「って、お前、昭和がそんなに続くと真面目に思っているのか?」
秀「え? だって、計算したら、そうなるじゃないですか」
NOVA「計算する前に、常識で考えろよ。昭和の天皇がそこまで長生きされると本気で思っているのかよ」
秀「え、だって、元号が変わるなんて、想像したこともないし」
NOVA「お前が高校を卒業する年に、昭和は終わる。そして、新しく平成時代が始まるんだ」
秀「へえ、せいでっか。Hay Say。平成って何だか言いにくいですよ。何と大きな平城京から、土京を抜いた感じで、不思議ですよ。他に何かいいのはないんですか」
NOVA「だったら元徳とか?」
秀「あ、そっちの方がいい感じ。NOVAさん、センスある」
NOVA「いや、センスも何も、過去に元徳って元号が実際にあって、そうしたら日本が南北朝に分裂しちゃったんだわ、これが」
秀「ダメですよ、そんな元号。そんなの考えた奴は死ねばいいのに」
NOVA「とっくに死んでるよ。南北朝時代なんだから。もっと考えて、喋れよ。そう、すぐに死ね死ねなんて言うな。お前は、レインボーマンの敵組織かよ」
秀「あ、レインボーマン、分かるんだ。さすがです。だったらレインボーセブンってロボット分かります? 何でレインボーマンにロボットなんて出て来たんでしょうね」
NOVA「同じことは、スパイダーマンにレオパルドンが出たことを知ったアメリカ人が先に思ったさ」
秀「とにかく、2018年は平成になっているんですね。平成の次は?」
NOVA「俺が知りたい」
平成って、どんな時代?
秀「それにしても、平成時代かあ。何だか平安時代みたいだなあ。やっぱり平和でいい時代なんですか? それとも実は核戦争後の乱世ですか? 宇宙旅行はできるようになってます? 鉄腕アトムとか、ジェッターマルスは実現したのかな?」
NOVA「ちょっと待て。順番に答えるから。まず、平和といえば平和だが、ロケットマンが日本海にミサイル実験を繰り返すような平和だからなあ。平成7年に阪神に大地震があって、平成23年に東日本で大地震と大津波が発生し、原発事故が引き続いたのを平和といっていいのかどうか。前者は6000人以上、後者は1万8000人以上の死者を出したわけで、とりわけ東日本の方は、戦後最大の被害者数と言われている。まあ、それでも戦争に比べれば、マシなんだけどな。日本が三つに分かれ、東都や西都、北都に分かれて戦っている平成29年から30年の現状に比べれば遥かにな」
秀「って、日本、そんなことになってるんですか? それって大変でしょう?」
NOVA「ああ、済まん。一部はフィクションの話だった。ついな」
秀「ああ、びっくりした。そんなに何度も地震が起こったりしませんよね。大津波とか、原発なんて、ありえないですもん。こっちが何も知らないからって、あまりからかわないで下さいね」
NOVA「いや、からかっているわけじゃ……まあ、いいか。核戦争はまだ起きていない。そんな映画はいっぱい作られたけどな。お前の83年からだったら、そうだな、84年の『ターミネーター』は見ておいた方がいいだろうが、映画館まで行かなくてもいいかもな。そのうちTVで放送して、むちゃくちゃハマる。特に、91年の『T2』は最高傑作だが、来年、2019年には『T6』が予定されているようで、それも楽しみだ」
秀「そんな、まだ見ていない映画の先の先の話をされても、こっちは困ります。で、そのターミネーターって、どんな意味です?」
NOVA「殺人サイボーグ」
秀「ダメですやん。散々、死ねという言葉を使わないように、命を大切にって言ってきたNOVAさんが、そんな映画を人に勧めちゃ」
NOVA「フィクションだからいいんだよ。それに『ターミネーター』シリーズはただの殺人マシンの映画じゃない。キーワードを並べると、『制作時代ごとに変遷する未来像』『その時代ごとに発達する特撮技術とアクションの進化』『人間と機械の関係性』『過酷な逃避行の中で描かれる人間性と愛情』『タイムパラドックスに関するSF的整合性やらの説明』といったところか」
秀「何だか、凄そうな気がしてきました。『ターミネーター』ね。誰の作品です? スピルバーグ?」
NOVA「ジェームズ・キャメロン」
秀「知らないなあ。どんな人?」
NOVA「『エイリアン2』……って、あ、これ86年か。83年じゃ、まだ無名な人だよな。監督作品が81年の『殺人魚フライングキラー』しかない。もう、90年代だと『タイタニック』とか、ゼロ年代だと『アバター』とか、10年に1つは映画史上に残る傑作大作映画を発表する大御所クラスなんだが」
秀「何だかそう聞くと凄そうに聞こえる」
NOVA「実際、凄いんだって。さて、宇宙旅行だが、これは実現していない。空想世界だったら、しょっちゅう行ってるんだが、科学は宇宙よりも違う発展をした」
秀「それは何です?」
NOVA「宇宙全体よりも、広くて深いもの。それは一人の人間の心♪ ということで、人間の心や知能を機械で再現しようとする人工知能、AIなどと呼称されるコンピューターの分野が、この30年の間に飛躍的に発展した。ターミネーターはストレートにそういう要素を見せてくれるし、アバターは惑星開発と先住民族との交渉を背景に、交渉役に与えられた擬似的な肉体との神経接続や異文化への理解がテーマになっている。80年代のときは、対話不能な化け物とのサバイバルしか描かれなかったのが、新世紀に入ると異質な背景を持つ者同士の相互理解のドラマが多くなったと感じるよ。コンピューターが身近になることで、人と機械の融合が当たり前になり、そこからさらに、機械を間に置くことで、時間や距離、文化のギャップを乗り越えやすくもなり、また違う形での誤解も描かれるようにもなっている」
秀「だったら、アトムまでもう一歩じゃないんですか?」
NOVA「かもな。少なくとも、俺たちの時代は、『将来、ロボット開発の道に進みたいと思います』と口に出しても、非現実とは思われなくなっている。15年ぐらい前の小学生は、そんな夢がまだまだ子供っぽいと思われることで、俺に悩みを打ち明けたこともあったが」
秀「それって、ぼくにとっては20年後か。どう答えたんです?」
NOVA「『今の時代、ロボットは工業用の作業ロボットとして、実際に使われている。今はまだ夢物語として、非現実に見えても、10年後、20年後に人工知能や、義手、神経接続、その他、いろいろな技術がそれぞれ発展することで、君の作りたいロボットも実現するかも知れないな。ロボット作りが趣味になるか、仕事になるかは知らないけど、やりたいことだったら、簡単にあきらめずに続けていったらいいんじゃないかな。何かを作りたいというのは、別に子供っぽい夢とは思わないし、むしろ目標があっていいんじゃないか』って感じだ」
秀「よく、そこまで言葉が思い浮かびますね。ぼくには無理です」
NOVA「だったら、まずは黙々と理系の研究者を目指したらいいんじゃないか? 俺だって、そうして来たし。話し言葉の使い方が頭の中身に追いついて来たのは、30も過ぎてからだし、一朝一夕に身についたことじゃない。ただ、その時その時に学んだことはしっかり蓄積して大切にしてきたし、過去の思い出を振り返りながら、状況整理や考えをまとめて来た。今だって、そうしているわけで。過去の自分が原因となって、今の自分がいるんだし、今の自分が未来への自分に確実にバトンを渡しているんだと思う。だから、簡単に無理なんて言わずに、今のお前にできることを確実に、逃げずにやり抜いたらいいんじゃないかな。そうすれば、いつかお前も俺の今に追いついて来れるんだろうし、俺としては、まあ頑張れよ、と言って話を締めたいところだ」
秀「分かりました。そろそろ、ぼくも行きます。記念にこれ、渡しておきますね」
NOVA「ん? これ、どこかで見たような……怪獣消しゴムの入っていたガチャガチャのカプセル? 中身はないようだけど。何で、こんなものを?」
秀「さあ。ぼくもよく分からないけど、ポケットに入っていて……」
NOVA「K83って書いているが。何かの暗証番号かもな。ああ、怪獣消しゴムで思い出した。2018年にも新作ウルトラマンをやっているぞ」
秀「本当ですか? エイティで終わったと思っていたのに」
NOVA「いずれ復活する。復活が近いのはゴジラとガンダムだ。他に、仮面ライダーも復活するし、2018年なら、キン肉マンや、キャプテン翼や、スターウォーズや、ゴジラや、一応は必殺シリーズも続いているな。まあ、途中で中断も挟みながらだが、どれも現役だ」
秀「その意味では、21世紀って言っても進化がないんですね」
NOVA「いや、進化しているさ。ゴレンジャー以降の戦隊シリーズは、40年以上も続いているが、毎年、進化したり、趣向を変えたり、たまに退化しているように見えても、何らかのアイデアを出したりしながら続いて、しまいにはアメリカ人がハリウッド映画まで作ったほどだ」
秀「ゴレンジャーを、ですか?」
NOVA「ジュウレンジャーだよ、と言っても誤解するなよ。10人いるわけじゃないからな。『恐竜戦隊ジュウレンジャー』、獣の連なる者と書いて、獣連者、ジュウレンジャーと読む。って何だ、一段と目を輝かせて、泣いているのか?」
秀「感動してるんです。『恐竜戦隊』ですかあ。コセイドンの後で、恐竜物がなくなって、ぼくは恐竜に飢えていたんです。怪獣じゃなくて、恐竜ですよ。怪獣もいいけど、恐竜は現実にいたから、もっといい。それなのに、最近は恐竜と名の付くものが、マシンザウラーや映画の『のび太の恐竜』以降、なくなって悲しんでいたんです」
NOVA「あれ、俺、そこまで恐竜に入れ込んでいたっけ?」
秀「NOVAさんは、アイゼンボーグが好きじゃないんですか!?」
NOVA「お前、好きじゃない奴が、アイゼンボーグの雑誌を求めて、神戸や大阪の街を何時間も歩き回ると思うか? アラブの大富豪、万歳ってもんだよ」
秀「21世紀は、アイゼンボーグの雑誌まで売っているんですねぇ。アラブの大富豪って何です?」
NOVA「21世紀のアラブには、アイゼンボーグのことが本当に好きで、円谷プロに対して『アイゼンボーグの新作を作ってくれ、金ならいくらでも出すから』と言ってきた凄い人がいるんだよ。俺も、その話を聞いた時は、さすがに耳を疑ったけどな」
秀「アラブって素晴らしい地域ですね。ぼく、将来はアラブのことをしっかり勉強します」
NOVA「ああ、俺だって大学で結構、アラブのことは研究したさ。何せ卒論のテーマが十字軍だからな。戦いの歴史よりは、戦いの後の異文化交流、ルネサンスに通じる流れを書こうと思ったんだが、教授からは『学部生が書くにはテーマにする物が大き過ぎる。もう少し時期を限定するように』と指導を受けて、それでも絞りきれず、概要をざっとまとめ上げたものを提出したんだが、一応は通って卒業できた。まあ、今の目から見ると、よくあれで卒業させてもらえたな、という拙い内容だったが、こちらの熱意だけは伝わったのだと思う。それとも、面倒くさいから、さっさと追い出せと思われたのかな?」
秀「さあ。両方じゃないですか? それよりも、アラブの大富豪……じゃなくて、恐竜の話ですよ。NOVAさんは、恐竜のことが好きじゃないのですか?」
NOVA「いや、恐竜は普通に好きだが、何ぶん未来じゃありふれているからなあ。戦隊でも、ジュウレンジャー、アバレンジャー、キョウリュウジャーって3回も扱われているし、スピルバーグも93年の『ジュラシックパーク』以降、何本も恐竜映画を撮ってくれたし、3年前の2015年も『ジュラシックワールド』を見たし、こっちはまた恐竜か、って食傷気味なのが本音だ」
秀「羨まし過ぎますよ、NOVAさん。こっちは恐竜に飢えてひもじい思いをしているのに、一本ぐらい80年代に分けて下さい」
NOVA「あれ? 80年代って、そんなに恐竜ものってなかったっけ? まあ、なかったかもしれんな。前半は宇宙志向で、中盤はタイムスリップものが流行していた時期もあったが、過去よりは未来志向、後半はファンタジー志向だったから、恐竜にもう一度、焦点が当たるようになったのは90年代からかも。CGの発展で、架空生物である恐竜にリアリティが与えられるようになった影響かもな」
秀「つまり、90年代になるまでは恐竜は帰って来ないと? ぼくは絶望した」
NOVA「簡単に絶望するなよ。恐竜がなければ、何か別のもの、そうだな、ドラゴンを追いかければいい」
秀「ドラゴン? ゲッターロボGですか?」
NOVA「違う。いや、ゲッタードラゴンという意味では合ってるんだけど、俺の言ってるドラゴンはな」
秀「竜でしょ? そりゃ分かりますけど、竜なんて、どこにいるんです?」
NOVA「いや、いろいろいるだろう。チェンジドラゴンとか、バイオドラゴンとか、ああ、85年と84年か。微妙にズレてる。ドラゴンボールは……ああ、連載開始が84年からで、アニメ放送が86年から。83年だと、意外とドラゴンって言葉にかすりもしないんだな」
秀「ドラゴンと言えば、もしかしてブルース・リーのことですか?」
NOVA「合ってるけど、違う。カンフースターをドラゴンと呼称した時代もあったけど、人間じゃないんだ。ファンタジックな生き物で、怪獣で挙げるなら、キングギドラかマンダとか、宇宙円盤ナースみたいな奴」
秀「ああ、だったら電子星獣ドルですね」
NOVA「それだ。恐竜じゃなくて、ああいうドラゴンに目を向ければ、お前の欲求は必ずや満たされるであろう」
秀「分かりました。魔法使いと、殺人サイボーグ、コンピューターと、それから偉大な監督になるジェームズ・キャメロン、他にはアラブと十字軍、そしてドラゴンが、ぼくの運命のキーワードということですね」
NOVA「よく覚えていられたな。感心感心」
秀「ぼくを誰だと思っているんです? 将来は偉大な魔法使いになる男ですよ。好きなことなら、何でも覚えます。忘れたら、自分が許せませんから」
NOVA「ああ、そういういけ好かない真面目くんだったな、お前と俺は。今の話が83年のお前本人にどこまで伝わっているか分からないが、夢の中でも感じてくれ。俺の今につながる運命の出会いの数々だからな」
秀「いろいろ聞けて楽しかったです。八丁堀の旦那気取りの魔法使いさん。じゃあ、これで……」
NOVA「ああ、あばよ、秀。ドジ踏んで早死にするんじゃねえぞ……って消えちまったか。これでケイソン事件も完全に解決ってことだな。自分との会話がこんなに疲れるとは思わなかったぜ。相手が自分だと思えばこそ、何でこんなことも知らねえのか、とか、どうして心がこんなに弱くてデリケートなんだ、とか、やきもきさせられたが、自分を見つめ直すいい経験にはなったな。おっと、あいつ、シーダーニードルを残して行きやがった。さあ、翔花に今の貴重な経験を語ってやるとするか。って、あいつ、どこを放っつき歩いているんだ? まあ、そのうち帰ってくるだろうから、それまで一眠りぐらいするか。ああ、疲れたZZZ」
(これにて、過去の自分との対話タイム終了。4月19日のドゴラ編に続く)