SFRPGの話
NOVA『今回は俺が最も好きだったSFRPGの話をします』
ヒノキ「1992年の作品か。トーキョーN◎VAの1年前じゃのう」
NOVA『サプリメントはこれですね』
NOVA『日本で最初期のTRPGは84年に翻訳された「トラベラー」で、その後、91年に発展版の「メガトラベラー」が出ていたのですが、この作品には重大な欠点がありました』
ヒノキ「何じゃ?」
NOVA『派手な銃撃戦をすると、キャラがすぐ死ぬ。トラベラーはリアルSFの方向性なので、世界設定が大人向きで渋い。つまり、派手な活劇には向かないシステムだったんですね』
ヒノキ「新兄さんは派手好みだと?」
NOVA『まあ、80年代のゲームは、現代の視点からは死にやすいというのも事実。とりわけ、ホビージャパンは硬派なボックスタイプの豪華なシステムが売りで、トラベラー以降は86年にクトゥルフ、87年に指輪物語のMERP、88年にはルーンクエストとストームブリンガー、そして88年にロボファンタジーのワースブレイド、90年にメタルヘッドを次々と発売。でも、システムとして最も派手な活劇を楽しめるのは、ヒーローポイント初実装のジェームズ・ボンド007(1986)だったんじゃないかなあ』
ヒノキ「ヒーローポイントを使えば、死んでも死ななかったことにできる、ということじゃな」
NOVA『日本で、そのシステムを初実装したのは、ツクダのWARPS(1987)で、元はルパン3世の「カリオストロの城」や、ガンダムの「逆襲のシャア」などアニメを再現するためのルールでした。88年までは海外からTRPGという文化を輸入し、平成に入る頃にはそこから国産RPGに移る流れができますね』
ヒノキ「しかし、国産初のRPGは83年にツクダが出した『ローズ・トゥ・ロード』じゃろう?」
NOVA『まあ、そうですけど、その段階ではファンタジー世界ユルセルームを受け入れる層がまだ一般化されてなかったと思いますね。剣と魔法のファンタジーがメジャー化したのは、ゲームブックとかドラクエのブームがあった85〜86年頃だと思います。コンピューターゲームとか、ハヤカワのファンタジー小説でいち早く海外の情報に接した先駆者が、80年代の初頭からD&DなどのRPGに注目していたのでしょうが』
ヒノキ「で、ゲーム業界がRPGブームに湧き返るのがドラクエ以降の80年代後半なんじゃな」
NOVA『で、TRPGだと、ファンタジーのD&D、SFのトラベラー、ホラーのクトゥルフという御三家があって、そこにどういうジャンルで参入するかが問われたわけですが、D&Dが古いゲームということもあって、システムとしては、より詳細なキャラ表現を可能にしたスキル制の方が発展進化した作品という意見から、MERPやストームブリンガー、ルーンクエストをホビージャパンがプッシュしつつ、もっと手軽にRPGを楽しみたいという層向けのT&Tやソード・ワールドといった文庫RPGの流れが出て来たのが87〜89年、と』
ヒノキ「D&Dは老舗じゃったが、もっと精密なホビージャパンや、もっと手軽な文庫スタイルのRPGに客を奪われていったのじゃな」
NOVA『D&Dは中世西洋ファンタジーのガイド本ととらえ、そこから日本らしいファンタジーへのアレンジとして、ロードスやドラクエ、スレイヤーズなど軽妙な騎士や勇者、魔法戦士の冒険譚(目的は世界の平和を脅かす黒騎士や魔女、魔王や魔族、邪神などを退治する)の伝統が構築され、平成にはそういう和製ファンタジーアニメが拡大再生産されるようになっていた。一方で、ロードスはもう一つの革命を成し遂げます』
ヒノキ「RPGを基にした小説か?」
NOVA『ライトノベルもありますが、ゲームシステムとして「ロードス島戦記コンパニオン」という書籍スタイルでルールを出版したことですね』
NOVA『89年にこういう形で、角川がルールを出したことで、ホビージャパンもボックスではない書籍スタイルの手軽なRPGシステムを出そうって流れになります。そして91年に発売されたのがパワープレイ』
ヒノキ「なるほど。その延長線上にスペオペヒーローズがあるということじゃな」
NOVA『なお、ロードス以前に大型書籍スタイルのRPGといえば、88年に大日本絵画から出たファンタズム・アドベンチャーがあるわけですが、ここからSFだと90年のマルチバースというマイナーな異次元に迷い込んで、帰って来れなくなりそうなので、今回はパスさせてもらいます』
ようやくスペオペ
NOVA『それにしても、本棚の奥から取り出したスペオペヒーローズですが、一番感じ入ったのが、これですよ』
NOVA『巻末に掲載されている宣伝なんですが、90年代のゲーム関連書籍って、こんなに安かったんですね。今だと、1000円で買える専門雑誌なんてありませんし、同じ内容でも倍近くは当然しますな。世の中の物価が、この30年でどれだけ値上がりしたか、改めて実感した気持ちです』
ヒノキ「90年代は、福袋で1冊のムックに6本も簡易RPGが収められている本が出版されたり、ホビージャパンもRPGの軽薄短小化に舵を切ったということじゃな」
NOVA『その延長線上にセブンフォートレスがあるわけですが、90年代は富士見のマギウスにも見られるように、簡単なシステムで気軽に楽しめる作品を次から次へと出す流れがありました。その中で数多くの実験作が登場したわけですが、宇宙を舞台にしたSFというのが、作品としては限られていたんですね。GURPSでも宇宙関係のサプリは翻訳されなかったし、たぶん宇宙船に乗って探検できるTRPGって、日本では20作品もないんじゃないですか?』
ヒノキ「試しに、挙げてみんか?」
- トラベラー:84年
- メガトラベラー:91年
- エンタープライズ(スタートレック):83年
- スタークエスト:83年
- クラッシャージョー:83年
- ギャラクティック・アーク(ASURAシステム):93年
- クレギオン:92年
- パラダイス・フリート:94年
- マルチバース:91年
- スペオペヒーローズ:92年
- スターロード:98年
- スターレジェンド:2004年*1
- カオスフレア:2005年
- メタリックガーディアン(宇宙サプリあり):2013年
- ガンダム関連:80年代から90年代にかけて
NOVA『ガンダムなどのロボット物は、シミュレーションゲームに成長ルールと、ロールプレイシステムがおまけに付いているようなものですが、関連作が4つか5つぐらいは知ってます。バトルテックも、宇宙を舞台にしたサプリはあったと思いますが、日本では発売されませんでした』
ヒノキ「サイバーパンク物でも、衛星軌道ぐらいまではサプリメントでフォローされているのではないか?」
NOVA『一口に宇宙と言っても、範囲は作品によりけりですからね。ガンダムの宇宙世紀だったら、木星圏までしか舞台にならないし*2、ガンダムで初めて太陽系外の宇宙生物が出現したのってOO劇場版のELSだったと思う』
ヒノキ「宇宙マップで戦うシミュレーションゲームならともかく、TRPGで宇宙に飛び出す意味をあまり感じんのう。宇宙に本拠地を持っている敵のアジトを潰すのが目的のシナリオならいざ知らず、基本は地上を舞台にした防衛戦が多いじゃろう?」
NOVA『ロボット物は基本的に宇宙の侵略者を地上で迎え撃つ話が主流ですね。宇宙で戦うとしたら、最終決戦で宇宙に飛び出すか、人類の生息域がすでに宇宙である作品ぐらいか。まあ、80年代から90年代は宇宙開発も盛んでロマンがありましたが、現在は宇宙よりも異世界とかメタバースみたいな電脳世界がSFの主流。まあ、ヒーローが宇宙に飛び出して帰って来る壮大な作品もありますが』
ヒノキ「広大な宇宙を、自前の宇宙船に乗って探検できるTRPGは……今では少ないか」
NOVA『宇宙船の管理とかリアルでやると、結構面倒そうですね。トラベラーとかの宇宙船設計ルールは、好きな人は好きそうですけど、俺には合わなかった。ワールド設計ルールは面白いと思ったけど、メカ設計はイマイチ。ただ、ある程度のテンプレデータが与えられて、そこに一部を改造するぐらいかなあ。SFはやはり、限られた予算で武装オプションをあれこれ弄るのが好きそうな人はハマりますね』
ヒノキ「SFはそういう科学的なメカギミックや武装などを緻密に設定することを求められるゆえ、そういうのが曖昧でも許されるファンタジーよりも難しい印象がある」
NOVA『ファンタジーも魔法の詳細な原理や神話設定を細かく考えると大変ですが、理系脳を使うSFに比べると、文系脳で多少は曖昧さが許される気がする。それに、ストーリー性などあまり関係なく、ひたすら未知の領域を探検して回るだけの時代のRPG(80年代まで)と、起承転結の枠決めがしっかり為されたストーリー主導の時代のRPG(平成以降)では、ゲームの楽しみ方も違うと思いますしね』
ヒノキ「初期のトラベラーだと、『とある研究施設から連絡が途絶えてしまったので、何が起こっているのか調べて来て下さい』と依頼されるとか、『未知なる惑星に着陸して、地図を描いて下さい。危険がありましたら、戻って来て報告を』とか、探検してマップを埋めるだけのシナリオもあったそうじゃが、今のゲームだと、『で、最後はどんな敵を倒したら、クライマックスと言えるんだ?』と物語にケリを付けることが求められている気がする」
NOVA『TRPGに求められるのがドラマで、ラスボスとの因縁を晴らすこととか、NPCとの交流とか、プレイヤーキャラ同士の関わり合いを演じることが主要な楽しみである一方、未知なる世界を探検すること自体は、ボードゲームやコンピューターゲームなどで1人でも楽しめるという風潮になっている、と』
ヒノキ「宇宙開発が盛んな時代だった旧世紀に比べて、21世紀が意外と、宇宙への進出が遅れた未来になったのもあるかもしれん。今の若者には外宇宙への進出が昭和の感覚よりも、夢のまた夢と思われていよう」
NOVA『子どもたちの見るアニメでも、21世紀は宇宙開発が進んで、22世紀にもなると宇宙人と普通に交流しているという星間文明構築の世界観が割と共通した未来像でしたが、現実の21世紀は宇宙開発へのロマンが主流ではなくなったというか』
ヒノキ「まあ、60年代から90年代まで宇宙開発が進んだのは、冷戦構造による国家の威信を賭けた競争が盛んだったという背景もあるのう。それが21世紀になると、宇宙開発よりも情報通信分野に予算を回すとともに、人工知能研究や機械の遠隔操作、ヴァーチャル世界の構築の方に力を注ぎ、宇宙SFよりもサイバーパンクの方向に発展したのが現状、と」
NOVA『そんなわけで、現在は「広い銀河を股にかけて活躍する宇宙のヒーロー」というテーマにもレトロ感を感じるんですね。果たして、ゴッドシグマの未来観のように2050年には木星基地が作られているか、というと自信がない。来年は大阪万博がどうこうということでしょうが、こと宇宙にかけては、1970年の方が未来感あふれて夢が感じられたと思う』
ヒノキ「レトロフューチャーという感覚か。70年の万博のテーマは、高度経済成長を背景にした『人類の進歩と調和』だったらしい。今度の万博のテーマは何じゃ?」
NOVA『ええと……「いのち輝く未来社会のデザイン」でしたっけ。どんなデザインがされているか、公式サイトも後でチェックしようと思います。開催予定日が来年4月13日からで、そろそろ半年前に迫って来てますし』
NOVA『とりあえず、フィクション的に気になるのは、このパビリヨンでしょうか』
NOVA『前の万博の時代には、ガンダムはなかった。というか、マジンガーZもなかったし、仮面ライダーも戦隊もなくて、その時代にいた特撮ヒーローはウルトラマンとマグマ大使とジャイアントロボと赤影ぐらい? それを考えると、ヒーロー史的にはすごく進化しているのが今ですな』
ヒノキ「未来も大事だが、今回の記事テーマは30年前のSFゲームを語ることじゃから、レトロフューチャーをテーマにすればよかろう」
アーキタイプの話
NOVA『さて、スペオペヒーローズの特徴といえば、以下の点が挙げられます』
- 当時、重厚感のあった宇宙SFというジャンルを、もっと軽妙に遊べるようにした。
- お約束な勧善懲悪ストーリーで、ゲーム的なリアルよりも活劇を重視したルール(ヒーローポイントと、ネガティブヒーローポイントの応酬など)。
- キャラ作成に手間暇かかりがちなスキル制ゲームを、アーキタイプの採用により、手軽なパック選択でキャラメイクできるようにした初期の作品。
NOVA『とりわけ、3番のアーキタイプ(キャラの雛型、テンプレート、サンプルキャラともいう)を用意して、ほぼ完成済みのキャラに余剰のスキルポイントを割り振って、短時間でキャラを完成させるキャラメイクシステムは、当時はまだ新鮮でしたね』
ヒノキ「昭和から平成初期のゲームは、ダイスを振ってランダムに能力値を選んだり、プロフィールを決めていくことが普通だったからのう」
NOVA『とりあえず、順番にダイスを振って行くだけで、キャラが生まれていくシステムは好きですね。ダイスを振って能力値を決めてから、それを見て種族や職業を決めて、所持金もダイスで決めて、最初の装備品を買って、名前や性格を決めて完成、と』
ヒノキ「ソード・ワールドだと、先に種族を決めるのう。種族ごとに能力値決定のダイスが異なるから、種族を決める→生まれ表を振る(初期技能と能力値の半分決定)→能力値の残りをダイスで決める→職業レベルの購入→特技を決定→所持金1000ガメルで装備品購入→キャラの背景表を振って、冒険に出た理由や過去の経験などを決める……といった感じじゃのう」
NOVA『サンプルキャラだと、装備品購入まではキャラが完成しているので、背景だけ決めて冒険が始められるんですね。あるいは、サンプルキャラの技能の一部を選び直したり、装備品の一部だけを購入し直したりしてアレンジするのもあり。とにかく、今のゲームは数字データの部分は全て完成していて、それ以外の背景情報を付与するだけでキャラが完成するクイックスタート方式が主流です』
ヒノキ「90年代は、そういうクイックスタート形式がまだなかった、と」
NOVA『クラシックD&DやT&Tみたいなシンプルなシステムだと、30分もあれば初心者でもキャラが完成しますし、手慣れたら5分から10分もあれば十分。たぶん、武器や防具の選択肢が豊富な分、T&Tの方が時間が掛かったかな。
『でも、スキル制のゲームの場合、習得スキルの選択だけで時間がいっぱい掛かりますし、初心者はそもそも数多いスキルを把握するところから始めないといけないので、悩むわけです。そういうデータ選択の手間を簡略化したのが、アーキタイプ。俺の知る限りは、スペオペヒーローズとTORGがそういうキャラメイクを採用した、原点的な作品ですね』
ヒノキ「例えば、スペオペヒーローズのアーキタイプにはどんな物がある?」
NOVA『最初は文字どおりの[ヒーロー]で、こういうデータです』
★ヒーロー
能力値:体力2、器用2、敏捷3、知性2、運2、サイズ1
スキル:回避2、火器(2種類)2、エナジーソード2、宇宙船(2系統)1、意志力1、残り11ポイント
NOVA『なお、今のポリコレには男女差別云々と言われかねませんが、[ヒロイン]というアーキタイプもあって、こんなデータですね』
★ヒロイン
能力値:体力1、器用2、敏捷2.5、知性2、運3、サイズ1
スキル:回避2、火器(1種類)2、礼儀作法2、交渉2、演技2、勘2、宇宙船(2系統)1、残り11ポイント
ヒノキ「女性キャラは、男に比べて体力や敏捷に劣り、運が高い。武器は接近戦用のものを持たず、その分、礼儀作法や交渉などを持たされている、と」
NOVA『大体、平成初期までのエンタメだと、男主人公の口が悪くて、いろいろと失礼なことをやらかすのを、チーム内のヒロインキャラが嗜めて、丁寧な口調でフォローするのが当然でしたからね』
ヒノキ「今のエンタメだと、ヒロイン役が暴言吐いても可愛いから許される、という時期があって、その後は、世間知らずの暴言ヒロインを世知に長けた男性パートナーが尻拭いしたりバックアップする作品が定番なような」
NOVA『……時代が変わったので、このテンプレは使えませんね(苦笑)。まあ、当時でも「ダーティーペア」なんて作品はあったし、主役を張れる[スーパー・ヒロイン]というアーキタイプも用意されています』
★スーパーヒロイン
能力値:体力1、器用2、敏捷3、知性2、運3、サイズ1
スキル:回避1、火器(1種類)1、礼儀作法1、交渉1、勘1、宇宙船(1系統)1、残り4ポイント
ヒノキ「スキルレベルが下がっておらんか?」
NOVA『敏捷の能力値を2.5から3に上げるために、キャラクター作成ポイントを27点消費していますからね。能力値を上げると、スキルの数やレベルが下がるという意味では、バランスが取れている。「敏捷の2倍マイナス・サイズ」はアクションポイント(AP)、すなわち1ラウンドに振れる6面ダイスの個数に通じます。ヒーローとスーパーヒロインは敏捷3なのでサイズ1を引いて5AP、一方、ヒロインは4APだから、アクションポイント1差が大きいわけですね』
ヒノキ「アクションポイントは、行動回数になるのか?」
NOVA『そう単純じゃないですが、例えば、アクションポイントが5あると、回避ダイスに2、攻撃ダイスに3を割り振ることができます。このゲームの判定は、「能力値+スキル+判定に使ったダイスの最大値」で達成値を求めますので、アクションポイントを費やす方が判定に成功しやすくなる、というシステムですね。つまり、このゲームは単純に言うと、敏捷が高い方が有利、ということです』
ヒノキ「なるほど。ヒーロー=敏捷の高い者だと。すると、鈍重なパワータイプはヒーロー足り得ない、と?」
NOVA『ヒーローの相棒の巨漢キャラはありですね。大まかなアーキタイプは、5種類の能力値に対応したのが5系統で、それを細分化したのが35種類用意されています』
ヒノキ「35種類か。それは結構多いのう」
●ヒーロー系:敏捷に特化したキャラクラス。7種類。
ヒーロー、ハイスピード・ヒーロー、ウルトラスピード・ヒーロー、タフヒーロー、スパイ・ヒーロー、サイエンス・ヒーロー、ラッキー・ヒーロー
ヒノキ「ヒーローだけでも7種類か」
NOVA『じっさいには、1つのチームに複数もヒーローはいらないので、ヒーロー役をやりたいプレイヤーがどれかを選ぶことになりますが、プレイヤーが5人もいない場合に、例えば科学者役がいないなら、サイエンス・ヒーローを選んで、チームに足りない役割を補強するのが定番でしょうね』
ヒノキ「いわゆる兼職を、こういう形で再現しているわけじゃな」
●幸運系・ヒロイン系:幸運に特化したキャラクラス。男性キャラのラッキーと、女性キャラ9種類の計10種類。
ラッキー、ヒロイン、スーパー・ヒロイン、アマゾン、ハイスピード・ヒロイン、女エージェント、女スパイ、女性ドクター、女性メカニック、ラッキー・ヒロイン
ヒノキ「女性用のクラスがずいぶん充実しておるのう」
NOVA『プレイヤーが全員女性でも、一通りの職業が選べるようになっていますね。まあ、男キャラのドクターを選んで、女博士を演じても構わないのですが。このゲームの女性アーキタイプの特徴は、運の高さ(3)と体力の低さ(1)になります』
ヒノキ「運が高いと、ゲームシステム的にどんな恩恵が?」
NOVA『ヒーローポイントが運の2倍で算出されるので、運良く助かることが多いですね。つまり、奇跡が起こしやすいのが女性キャラの長所となりますか』
ヒノキ「幸運の女神ということか」
NOVA『まあ、作風にもよりますが、少なくとも古き良きスペオペでは、男が死んでもヒロインを守って一人生き延びる物語が多々見られるってことですね』
ヒノキ「エイリアンにしても、ターミネーターにしても、そうじゃな」
NOVA『エイリアンはともかく、ターミネーターはあまり関係ないと思いますが、80年代という時代のSF界隈が「強い女性キャラの定番」を生み出したわけで、スペオペヒーローズもそういう空気を反映したと考えられます。つまり、「強くて優しい女性キャラが、物語のメインとして持ち上げられる風潮」というか、そういう姫キャラを守って死ぬのが男のロマンなんて思われた時代も確かにありました』
ヒノキ「今のSFは違うのう」
NOVA『女性が強くなり過ぎて、男が守るというモチベーションが失われた感じですね。男女平等=男が女性を守るという考えが、そもそも女性をバカにしている古い価値観と見なされて、男女の旧来の役割分担が曖昧になった。そうなると、後は個人同士で自分のことは自分でするという自立志向になり、孤立化が進んで、互いの役割を尊重して労わるという価値観が見えにくくなっているのかもしれません』
ヒノキ「役割固定型の世界観から、多様性を考える時代にはなったが、多様性尊重=従来の役割固定も多様性の一つとして尊重すべきじゃが、古いものは全部否定するという過剰な進歩主義、排他主義が暴走すると、保守派の反動という動きにもなろう」
NOVA『男女に限らず、自分の旧来の価値観をアップデートするというのは、そうそう簡単にはできないですからね。どうしても「古き良きものへの郷愁」という感情からは自由になれない。そこを否定されてしまうと、敵認定せざるを得ない層もいて、多様性の理想からは離れていく』
ヒノキ「TRPGでは、その動きがオールドスクールと呼ばれるものじゃのう」
NOVA『まさか、昔のゲームを振り返ってみて、男女間の性差問題に話が流れるとは、想定外でした』
ヒノキ「スペオペヒーローズは、宇宙SFを題材にした作品じゃから、80年代までのSF価値観を抽出した要素も含まれるのじゃろう」
NOVA『で、次は体力特化のマッチョ系です』
●体力系:パワーと打たれ強さに特化したタイプ。耐久値が高く負傷しにくい。4種類。
タフガイ、ジャイアント、ギガント、マッスル
ヒノキ「こいつらは結局、どう違うんじゃ? アーキタイプの名前だけじゃ、よく分からん」
NOVA『タフガイが、体力3だけが特徴のバランス型ですね。ふつうに重火器技能を持っていて、戦場で暴れる脇役キャラをやりたいなら、この辺が基本。ジャイアントからは、サイズが2になります。サイズ1は身長が2メートル未満の普通の大柄ですが、サイズ2になると身長2メートル超えの大男。なお、当時の代表的なマッチョ俳優であるアーノルド・シュワルツェネッガーも身長は2メートルは超えていないので、スペオペ的にはせいぜいタフガイか、タフヒーローの部類。まあ、キャラ絵的には、マッスルがどう見てもシュワちゃん風味ですけどね』
ヒノキ「ジャイアントは知性が低く、ギガントは無器用ながら敏捷はヒーロー並み。そしてマッスルは驚異の体力4か」
NOVA『このゲームの初期状態の最高能力値が4ですからね。平均が2で、弱点が1、長所が3と考えればいいでしょう。各アーキタイプの説明では、以下のようになってます』
- タフガイ:タフでハードボイルドな脇役。
- ジャイアント:気は優しくて力持ち。主役を庇うのが仕事。
- ギガント:戦闘能力の高い巨漢。主人公の相棒としても活躍。
- マッスル:筋肉バカ。どちらかと言うと、悪の首領のボディガードが似合う。
NOVA『次は器用特化のスパイタイプです』
ヒノキ「ファンタジーで言うところの盗賊系じゃな」
●スパイ系:器用に特化して、隠密行動が得意なタイプ。4種類。
エージェント、スパイ、タフ・スパイ、ラッキースパイ
ヒノキ「エージェントとスパイの違いが分からんのう」
NOVA『エージェントはバランス型で、知性も普通。隠密行動に長けているだけでなく、電子工学も得意。スパイ系は知性1という弱点があって、機械の操作とかは得意ではなく、肉体派な傾向があります』
ヒノキ「エージェントは科学技術にも強いが、スパイはそれほどでもないということか」
NOVA『で、知性といえば、科学者系なんですが、スペオペの場合、科学者と技術者は分かれていますね』
ヒノキ「まあ、機械いじりが得意なおやっさん系が、科学理論にも通じているわけではなかろうな」
NOVA『科学者系は知性が、技術者系は器用が高いですが、両方得意な万能系もいまして、スキルの専門分野ごとにも違いがありますね』
●科学者系:知性3以上が特長。4種類。
ドクター、ブレイン、ハッカー、マッドサイエンティスト
NOVA『ドクターは医者ではなくて博士の方。総合科学者の方ですね。もちろん、医学技能を習得することで医師にもなれます。この中ではバランス型になります。ブレインは最高の知性4を誇りますが、肉体活動が辛っきしダメな専業頭脳労働者。ハッカーはコンピューターに特化していていますが、サイバーパンク以前のゲームなので、ネットへのダイビングはできません。マッドサイエンティストは、運の高さが特徴でしょうか』
●科学技術者系:知性3と器用3を合わせ持つ万能職。2種類。
テッカー、エンジニア
NOVA『テッカーは肉体活動もできる万能職で、エンジニアは肉体活動を切り捨てて、機械操作に専念した後方サポート役です』
●技術者系:器用3以上が特徴。4種類。
メカニック、クラフトマン、クルー、マッドエンジニア
NOVA『体力派のメカニック、器用最高のクラフトマン、敏捷派のクルー、運型のマッドエンジニアとなりますな。ともあれ、科学者系や技術者系のキャラは、習得できる専門分野(科学系、工学系)のスキルが多いので、宇宙船操縦の重要要員になるのがポイントかな、と』
宇宙船の操縦に必要なスキル
・宇宙船パイロット
・宇宙船航法
・センサー
・ロケット工学
・エネルギー工学
・超空間工匠
・砲塔
ヒノキ「結構、いろいろな技能が必要なんじゃな」
NOVA『足りないスキルはコンピューターで代用させることができますが、コンピューターはヒーローポイントを使えないので、戦闘で必要な〈宇宙船パイロット〉〈砲塔〉〈センサー〉は優先的に習得すべきかな、と。まあ、〈センサー〉は科学・技術系のキャラが全員、自動習得しているので、後はヒーローが〈パイロット〉で回避を担当し、相棒戦士が〈砲塔〉を担当すればいいと思うんだけど』
ヒノキ「その辺の、仲間が協力して一つのメカを操縦する感覚は燃えるのう」
NOVA『ジャンプ可能な大型母艦と、そこから発進する小型戦闘艇との組み合わせが好きなんですけど、小型メカが合体してロボになる戦隊メソッドなルールも自作したのが懐かしいな、と』
ヒノキ「ロボのデータもあるのかよ?」
NOVA『ロボットを出すかどうかはGMの自由ですが、一応、ルールブックにはデータが用意されていたので、戦隊ロボSFとして楽しませてもらいましたよ。「銀河戦隊コスモレンジャー」というタイトルで、宇宙の悪バグラーのデスグロス将軍と星の平和を守るためのショートキャンペーンをやったのがいい思い出です』
(当記事 完にして、次回につづく)
*1:2014年に同じ作者による続編『エイジ・オブ・ギャラクシー』につながることを後日確認したので、追記。
*2:クロスボーンガンダムや、もっと未来のガイアギアだと太陽系を越えた先も提示されるけど。