花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

スペオペヒーローズと続編の話2

ネット公開されたルール

 

NOVA『前回、手持ちのルールブックで、アーキタイプの話をあれこれしていたスペオペヒーローズですが、作者公認でルールがネットで公開されているのですな』

ヒノキ「D&Dなどで無料公開されているルールはあるが、スペオペヒーローズにもそういうのがあったのじゃな」

NOVA『古いゲームですけど、数値データ以外の「11章 よくあるストーリー」「12章 悪役」「14章 悪の組織と幹部」「17章 クサい台詞」などは、汎用ストーリーのネタやロールプレイの指針として、違うゲームストーリーでも使い回せると思うんですよ。物語テンプレートとして、ね』

ヒノキ「前回、触れなかったアーキタイプもあるのう」

NOVA『オプションルールには、超能力者やロボット、バイオ細胞のアンドロイドもありますし、クァールや猿をプレイすることも可能。ただし、地球人以外の異星人や異星生物をプレイするデータはありません。宇宙人とのコンタクトは、活劇メインのスペオペの対象外ということで。そういうのは、スペオペヒーローズの続編のスターロードで触れられていますので、ここからはスターロードのルールを見て行くようにします』

 

スターロードへの変化

 

 

NOVA『さて、スペオペの6年後に出た続編という触れ込みのスターロードですが、判定ルールは「能力値+技能レベル+判定に使った6面ダイスの最大値」という計算式で達成値を決めるという点で、ほぼ同じ。ただし、ダイスで6が出ると振り足しできるという点で、運が良ければ達成値が飛躍的に上昇することもあり得るように改善されました』

ヒノキ「ん? 具体例を頼む」

NOVA『前作スペオペでは、[ヒーロー]が器用度2でエナジーソード2レベルを振り回して、ダイスを2個振ったとします。すると、達成値は5〜10の範囲に収まるんですね』

ヒノキ「2Dの目を合計したりはしないのじゃな」

NOVA『ソード・ワールドアルシャードなんかは2Dを加えるんですけど、スペオペは2Dのどちらか高い目だけを加えるんですね。ですから、1〜6のどれかを足すのは変わりません』

ヒノキ「最大で6。いくつダイスを振っても、7には絶対にならないと」

NOVA『最大値の6が出る可能性は、ダイスの数が多ければ多いほど増えますね。ダイス1個だと6分の1で約17%ですが、ダイス2個だと36分の11で倍近くになります。そして、スターロードの場合、6が出ると振り足せることから、運がよければ達成値が10を越えて11〜16になりますし、さらに6が出ると17以上も夢じゃない』

ヒノキ「それだと、判定の成功確率が上がったわけじゃな」

NOVA『いいえ。それが旧スペオペだと、難易度がおおよそ固定値なんですよ。標準で7、難しいで9、非常に難しいで11なので、達成値が5〜10の場合は非常に難しい判定に決して成功できません』

ヒノキ「そんな時は……ヒーローポイントを使うのじゃな」

NOVA『まあ、ヒーローポイントを1点使えば、失敗した行動を成功したことにできますが、その前に難易度を下げるような行動をとって、成功確率を上げたり工夫するものでしょ?』

ヒノキ「その辺の実プレイ作法はさておき、旧ルールだと難易度11の判定には、正攻法では絶対に成功できない。しかし、スターロードの振り足しルールだと、6を出せばいい、ということじゃな」

NOVA『しかし、難易度が固定値で決められていないのですよ。スターロードの難易度は、普通で2。これはトランプを2枚引いて、加えた数字が目標値になるという意味です』

ヒノキ「何と。目標値を決めるのに、わざわざトランプを使うのか!? つまり、新ルールはダイスゲームであるとともに、トランプゲームでもあると?」

NOVA『このトランプが、旧作のヒーローポイント、もしくはネガティブヒーローポイントの代わりになるわけですが、とにかく、いろいろとルールも世界観も変わっています。旧スペオペは、割と定番の汎用スペオペ世界ですから、俺が勝手に戦隊ものっぽい世界に改変しても問題なく運用できたぐらいですが、一応、公式にはこんな感じの世界です』

 

 2036年土星の有人探査に出かけた宇宙船ガイアが、未知の技術ジャンプドライブを拾ったことで、それを技術解析した結果、超空間航法が可能になり、人類は太陽系外に進出できるようになった。

 その年を銀河暦元年とし、200年近くが経った時代。人類の居住域は地球を中心に100万立方光年(1辺100光年の立方体)まで広がり、銀河連合という組織を築くに至った。銀河連合には、数百の星系国家が加盟し、その中でも最大の戦力を持つのが地球を中心とした太陽系連邦である。

 しかし、この段階では、地球を中心に発展した銀河連合が、他の星間文明に遭遇した事例は報告されていない。

 

ヒノキ「つまり、スペオペヒーローズの公式世界観を使うなら、宇宙から侵略してくる異星人というものは登場させられない、ということじゃな」

NOVA『ええ。最初のジャンプドライブをもたらした文明が何者なのかは、未知の謎だったわけですが、スターロードの時代になると、超巨大波動嵐が発生して、銀河連合が崩壊してしまいます』

ヒノキ「スペオペ時代の宇宙史がなかったことに!」

NOVA『そこから100年以上が経過して、新たな宇宙開拓が開始されている現状を「新星界」と呼称されるようになったわけですね。崩壊した銀河連合の遺産を受け継いで復興したのは、太陽系人(ソラリアン)と呼ばれていますが、「大崩壊」以前に8種類の異星文明と接触したり、星間戦争を経験しながらも、何とか共存関係を確保しています。その中で最もメジャーなのが、ネコ星人ことエーレンガール人。8番めに出会ったのが、超能力エルフと言うべきサイキア人。あと、古代遺跡に痕跡を残している第六異星人が基本ルールに載ってますね』

ヒノキ「他の5種類は、サプリメントに載っておるのか?」

NOVA『いえ、サプリメントは出なかったです。ともあれ、スターロードの宇宙観では旧銀河連合が崩壊し、太陽系へ行く航路も失われたまま、かつては辺境星系とされたリゲル連合を中心にした星系連合が秩序の中心となっています。一方で、中華風の専制君主国家、辰帝国がもう一つの雄になっており、リゲル星系連合と辰帝国、その他の小規模な独立星系群が互いに競争している不安定な世情なのが新星界の背景世界ですね』

ヒノキ「全面戦争にまでは至っていないが、水面下で競争しているということじゃな」

NOVA『そんなわけで、新星界は旧スペオペに比べて、妙に中華風味が前面に出された歪な宇宙観なんですよ。この宇宙のヒーローは英傑と呼ばれ、ヒーローポイントは宇宙風水の原理から命力(メイリー)と呼ばれ、それに対する悪役ダークサイドのパワーが壊力(カイリー)。西洋SF風味だったスペオペと比べて、東洋風味が圧倒的に高まったのがスターロード。でも、結果として、あまり受け入れられなかったようですね』

ヒノキ「良いゲームなのか?」

NOVA『さあ。プレイしたことはないですが、俺個人の感想は「俺の好きなスペオペヒーローズが何だか妙なゲームに変わってしまったな。何これ?」というネガティブなもの。スペオペヒーローズにあったロボがなくなったし、スターロードで戦隊はできないでしょう』

ヒノキ「いや、中華だとダイレンジャーゲキレンジャーはできるかもしれんぞ」

NOVA『まあ、旧スペオペでは拳法使いを表現するルールはなかったけど、スターロードだとできますね。もう、別のゲームだと見切る方が受け入れやすいのだろうな、と』

 

スターロードのテンプレート

 

NOVA『宇宙の英傑は、4つの精髄(エッセンス)から成ります。これをトランプの4スートに準えると、こうなります』

 

  • スペード(剣):サムライ。射撃や白兵など武器を使いこなす戦士。風のエッセンスを持つ。
  • クラブ(竜):ドラゴン。身体を用いた武道の技や超能力を扱う拳士または修道士。火のエッセンスを持つ。
  • ハート(器):ウィザード。コンピューターや複雑な機械を操作する技術者。水のエッセンスを持つ。
  • ダイヤ(導):ロード。深い学識やカリスマで人を導くリーダーや学者。土のエッセンスを持つ。

 

ヒノキ「なるほど。スペオペの原型を留めておらんのう」

NOVA『で、これらのエッセンスを1つから3つ組み合わせることで、それぞれの特技を習得できたりするのですが、最初はテンプレート研究から始めてキャライメージをつかむのが、FEARゲーの解析テクニックとなってます。本ゲームは、コモンの基本テンプレが14種類、レアのランダムテンプレが4種類入っていて、コモンだけでも一通りのプレイは可能ですね。ネタとしてレア4種が面白いわけですが』

ヒノキ「先にレアキャラを見せてくれ」

NOVA『では、俺の買ったルールに入ってたレアキャラから』

 

●14Q[美少女艦長]:ダイヤのQ。モデルは「ナデシコミスマル・ユリカ」。

 

NOVA『このキャラがいるのなら、他にルリルリみたいなキャラもいるだろうと思いつつ、とりあえずエキストラの艦隊を操る特徴を持ったサポート力高めの艦長さんですね。そして、実は最高の技能が《勘》のレベル5という。交渉能力と、宇宙船での戦闘力、何かを発見する能力が高くて、知性派リーダーの素質もバッチリと』

ヒノキ「少しキャラ改変すれば、ハッキング能力を高めにして、ルリルリも作れるのではないか?」

NOVA『ああ。美少女艦長Bというのも、ありですね。元のテンプレがあれば、多少のアレンジは可能か』

 

●7K[銀河必殺拳]:クラブのK。モデルは不明。ギャンブル好きの拳法使い。

 

NOVA『これは竜星拳という拳法を習得した若者ですが、もう拳法使いとして定番すぎて、どうしてレアキャラなんだろう、と思います。普通にコモンでいそうな能力設定で、面白みがないかな』

 

●4Q[紅の彗星]:スペードのQ。モデルは「シャア・アズナブル」。

 

NOVA『これは笑いました。モビルスーツみたいなロボットのいないゲームなので、パイロットではないけれど、二丁拳銃が得意な潜入工作キャラになってます。決めゼリフが「私の方が6倍早い」。いや、シャアに早撃ちガンマン属性はなかったはずだけど、アレンジネタとしては原典そのままではなくても、笑えるからOK』

 

●10A[お仕事は運転手]:ハートのA。モデルは不明。

 

NOVA『宇宙船や車両の操縦が得意なメカニックの女の子ですね。器用で、操縦技術が高くて、普通にマシン操作が上手なキャラとして、便利に活躍できると思う。しかし、元ネタが分からないと、単に強そうとか、便利そうってだけじゃ笑えない』

ヒノキ「いや、別に笑いをとるのが、レアキャラの目的ではないじゃろう?」

NOVA『笑えた方が面白いじゃないですか。まあ、スペオペ時代と比べて、キャラを表現するデータ(特徴、技能、秘技)が圧倒的に増えているので、その組み合わせが膨大になるのが後のFEARゲームの片鱗を見せているのですが』

ヒノキ「スペオペだと、キャラ作成ポイントで能力値とスキルを購入していく形式じゃな」

NOVA『いわゆるGURPSのルールをシンプルにした形ですね。ただ、GURPSもキャラ作成には時間が掛かるので、日本語版ではアーキタイプをいろいろ準備しましたが。ルナルのガヤン神官パックとか、妖魔夜行のカラス天狗パックとか、作成済みのキャラパッケージをそのまま、あるいは少しアレンジするだけでキャラ作成できます。まあ、GURPSはそういうアーキタイプを前面的に売り出すことはしなかったですが』

ヒノキ「萌えイラスト付きのアーキタイプ(テンプレート)を商品の一環として売り出したのがエルジェネシスで、その後、ランダム要素を廃したのが21世紀のFEARゲームということかの」

NOVA『クイックスタート形式で、サンプルキャラを前面に出した最初のFEARゲームが何かを現在、調べているわけですが、意外とトーキョーN◎VAがクイックスタート形式を採用したのが2013年の5版からで、それまではずっとサンプルキャラ抜きでやっていたんだなあ、と。ここまでデータの多いゲームなのに、サンプルキャラを実装しなかったのは、いかにも初心者には合わせていない、熟練マニア向けのゲームとして展開したんだなあって感じです』

ヒノキ「とりあえず、2001年の『ダブルクロス』辺りだと、どうじゃ?」

NOVA『(チェック中)ああ、サンプルキャラとクイックスタートという用語は見られますね。それ以前だと……1998年の「セブンフォートレスAdvanced」には、サンプルキャラ14人が用意されていましたが、クイックスタートという用語はない。完成品キャラをそのまま使ってもいいけど、ダイスを振ってキャラを作るランダム・コンストラクションと、データを全部自分で自由に選ぶフル・コンストラクションを紹介しているだけで、クイックスタート推しでは決してなかった時期ですか』

ヒノキ「その辺が過渡期のようじゃな」

NOVA『まあ、友人同士が集まってプレイするなら、1回めのセッションはキャラ作成だけで終わって、シナリオ開始は2回めからとかになりがちですが、コンベンションだと前もってGMがキャラ作成しておいて、その中で選ぶ形式が普通でしたからね。で、FEARさんは初期からコンベンションにも力を入れていたから、サンプルキャラによるクイックスタート形式はゲームをサポート展開するうえで必須だった、と』

ヒノキ「その流れを作ったのが、エルジェネシスであり、スターロードだったという考え方は?」

NOVA『ランダムテンプレート形式を廃して、サプリメントを買えば、どんどん新しいサンプルキャラとデータが入手できて、『今度のサプリは、こういうキャラが作れます』ってのを商品の売りとして宣伝する方が、何のキャラが当たるか分からないランダム制より受けがいいことに気づいたようですね。それに21世紀になると、ランダムによる射幸性に頼らなくても、安定して商品供給できる体制が確立したとか、そんな感じ』

ヒノキ「トレカと違って、TRPGのルールブックは高いからのう」

NOVA『それこそ、「ランダムキャラシートだけ別商品にする」という売り方もあったのかもしれませんが、それ単体ではゲームできないので、結果的に「トレカのデッキ構築の手法で、大量のデータ選択でキャラメイクする」という形式がFEAR社の主流となっていく』

ヒノキ「つまり、サンプルキャラは構築済みデッキということじゃな」

NOVA『で、同じような手法を、D&Dが4版で行ったときは笑いました。え? 3版でソード・ワールドっぽくなったと思ったら、今度は4版でFEARさんの後追い? って感じで、当時のFEARさんの先進性を実感することに』

ヒノキ「5版はどうじゃ?」

NOVA『原点回帰でD&Dらしさを取り戻そうという動きで、旧世紀の遺産をいろいろ引っ張り出しつつ、上級職(専門職)をレベルの早い段階で選択できるようにして(従来は10レベルで行った選択を、1〜3レベルで行えるようにした)、スピーディーさを向上したのは良かったですね。マニア志向の3版から4版の流れを、初心者歓迎の5版に引き戻した形で、今年の新版の評価はどうなるか、と』

ヒノキ「まあ、D&Dはさておき、トレカの手法をどう研究して、TRPGに取り込むかという試行錯誤が、この時期(90年代からゼロ年代)のTRPG発展史としては面白い、と言ったところか」

 

改めてコモンのテンプレート

 

NOVA『ランダムテンプレートのレアキャラが廃れた理由は、トレカと違って、意外とファンの話題に上りにくかったというのがありますね。商品値段の問題はさておき』

ヒノキ「トレカのレアカードは、イラストが美麗だったり、カード性能が単純に高かったりで、ファンが付いて界隈でも話題に上がる。しかし、『エルジェネシス』や『スターロード』のレアテンプレートは、そもそも話題に上ることが少なかったということか」

NOVA『例えば、[美少女艦長]や[紅の彗星]というレアテンプレートが当たって、元ネタを知っているファンがクスッと笑った。そこまではいいのですけど、仮に俺がスターロードのプレイヤーとして、『[紅の彗星]が当たって、こいつがまた良いキャラなんだよ。惚れたね』と言って、自分のデッキに組み込む……ことはカードと違ってできないし、そのキャラを使ったプレイをして、シャアネタのロールプレイで場のウケはとったとしても、そこだけで話が終わってしまう。このランダム・テンプレートって、例えば、スターロード・ファンの間での共通話題にはなりにくいわけですよ。知っている人が少ないですし、所詮はパロディでしかない』

ヒノキ「レアキャラの魅力とは一体?」

NOVA『そりゃあ、ファンがそのキャラやアイテムの魅力を知って、「それは凄え」と分かりやすく称賛できることですね。何なら、その作品の顔として、売り出せる方がいい。しかし、パロディは元ネタあってのことだから、商品の顔として売り出すには版権問題もあるし、ランダムテンプレートって色物として、狭い界隈でクスッと笑わせる効果しかなかった、と』

ヒノキ「すると、レアよりもコモンの方が話題に上がりやすい?」

NOVA『例えば、ナイトウィザードの柊蓮司。彼は「魔剣使いというサンプルキャラ」でしたが、サンプルキャラに独自の背景をランダムに付与して個性づけするクイックスタート形式と、プレイヤーの矢野さんのロールプレイと、GMきくたけさんの柊イジりによって、シリーズの顔にまで昇格しました。ナイトウィザード3版の人気が2版ほどでない理由は、一説によると引退した柊に匹敵するような人気キャラを生み出せなかったことだとも言われています』

ヒノキ「つまり、TRPGの人気キャラの秘訣は?」

NOVA『レアキャラではなく、どこにでもいる定番キャラと思われた人物が、運命のイタズラで世界の重要人物に成り上がっていくストーリー的カタルシスかもしれません。つまり、誰もが知ってる普通のキャラという前提で考えるなら、最初から盛られた色物レアキャラはTRPGファンには邪魔でしかない。コモンキャラが、ランダム背景とロールプレイでいかに人気を獲得するか、ファンにとってもイジりやすいボケツッコミを見せてくれるかが、大事なのではないか』

ヒノキ「レアキャラよりも、コモンキャラを作品の顔として立たせることこそ、その作品が人気を獲得する手法だということじゃな」

NOVA『少なくとも、パロディキャラじゃ作品の顔にはならない。その作品世界の定番をいかに魅力的に魅せられるかが重要。そして、誰もが知っていて、プレイしたがるサンプルキャラを構築し、描いて見せるかが、作品継続の鍵。よくある主人公戦士だけど、扱いやすくて格好よくプレイできた、という初心者の愛着に、レアな色物は必要ない。まあ、マニアが自作するための参考程度にはなるかもしれないけど』

ヒノキ「つまり、TRPGのテンプレートは、コモン推しということじゃな」

NOVA『量産型にピーキーな改造を施して……というのが、玄人受けしやすいわけですが、コモンキャラというのは、GMがシナリオを作る際にも、想定しやすいというメリットもありますね。では、ここからスターロードのコモン14キャラをリストアップしていきますよ』

 

  1. コズミックハンター(男):スペード
  2. 華麗なる拳士(女):クラブ
  3. ボンバーガール(女):ハート
  4. 宇宙軍師(男):ダイヤ
  5. 天翔ける疾風(男):スペード、クラブ
  6. ベテラン宇宙飛行士(男):スペード、ハート
  7. 戦美姫(女):スペード、ダイヤ
  8. 異星人の遺産(女、宇宙船のホログラム):クラブ、ハート
  9. 全てを見通す男(男):クラブ、ダイヤ
  10. 電脳妖精(女):ハート、ダイヤ
  11. ストリート・チェイサー(男):スペード、クラブ、ハート
  12. 異郷の戦士(女、エーレンガール人):スペード、クラブ、ダイヤ
  13. 銀河旋風児(男):スペード、ハート、ダイヤ
  14. 冷徹なる参謀(男、サイキア人):クラブ、ハート、ダイヤ

 

NOVA『もう一度、確認すると、スペードが武器戦闘の専門家、クラブが格闘戦と気の使い手、ハートが科学技術系、ダイヤが交渉力と指揮能力が特長で、それらのエッセンスを組み合わせて一通りのキャラ構築をした感じです』

ヒノキ「とりあえず、チームに4つのスートが集まっていると、バランスよく機能するということじゃな」

NOVA『1〜4で、一通りの定番が揃うわけですね。そう言えば、この時期のTRPG界の中華推しは、俺も他人事じゃなかったわ。短期間ながら中華仙人RPGの「央華封神」に手伝い人として関わっていたこともあるし、FEAR社の「三国志演義RPGを作った重鎮スタッフ・たのあきらさんに、俺の作った「ランダム中華人名チャート」をヨイショされたことがあって、舞い上がったりもした記憶がある』

ヒノキ「FEARさんは、ランダム何ちゃらチャートをいっぱい作る社風じゃからな」

NOVA『ただの社交辞令だったかも知れないけど、もしかして、スターロードが中華推しになったのも、たのさん(スターロードの編集も担当)の影響が大きかったかもしれない。スペオペ作者の山北篤さんのサイトの古い記事で、たのさんが作った交易RPG「トレイダーズ!」の可能性を相当プッシュしていたし、デザイナー同士の良好な関係性があったのでしょうな。まあ、スターロードも、トレイダーズも主流にはならなかったけど、実験作として面白い試みだったと今さら評価してみる次第』

ヒノキ「昔話はさておき、基本4種のテンプレキャラが男女比1:1になってるのも、時流かのう」

NOVA『前衛戦闘タイプの男女と、後衛サポートタイプの男女でバランスがとれてますね。3の[ボンバーガール]は、メカイジりが得意な才媛だけど、特徴の〈ボマー〉が美味しいです。これって、ゴレンジャーで言うところのモモレンジャーでしょう。それにアオレンジャーの操縦技能も持っていて、砲撃支援で大活躍する』

ヒノキ「爆弾使いのヒロインというのは、ヒーロー物の1つの定番じゃな」

NOVA『で、コモンで笑えるネタといえば、10番。ルリルリいるじゃん』

ヒノキ「気づいておらんかったのか?」

NOVA『いや、見流していました。この記事で先に[美少女艦長]の話をして、ルリルリ云々を話題にするまでは、コモンにそういうキャラがいるのを意識できていなかった。まあ、さすがにキャラ絵はルリルリとまったく違うので、意識するまで気づかなかったというのもあるけど』

ヒノキ「スペオペ時代はエヴァ以前じゃから、96年のナデシコは知るよしもなく、しかし98年発売のスターロードなら、その要素を導入することも可能、と」

NOVA『ルリルリが艦長になる劇場版ナデシコは、同じ98年公開だったから、そこまでは反映できませんけど』

ヒノキ「それでも、スターロードで当時に流行していたナデシコっぽいパーティを組める、と」

NOVA『今さらって気もしますが、[美少女艦長][電脳妖精]で、あとスペードとクラブをどうするか。えーと、ダイゴウジ・ガイ的なイメージが[天翔ける疾風]にはありますな』

ヒノキ「テンカワ・アキトはどうなんじゃ?」

NOVA『彼っぽいテンプレキャラは特に見当たりませんので、やるなら自作しないといけないでしょうな。超能力者で〈テレポート〉スキルでも付ければいいでしょうか。まあ、それはともかく、13番もいいですな。マイトガインの主人公になれる』

ヒノキ「ロボット物じゃないのに?」

NOVA『サプリメントがあれば、ロボが採用されていたかもしれませんがね。ともあれ、80年代までのスペオペ要素を網羅したのが旧スペオペで、90年代のアニメSFの要素を取り込んだのがスターロードであることを再確認。その延長に、スパロボ要素を取り入れれば、カオスフレアやメタリックガーディアンになるのだろうなあ、とも』

NOVA『ともあれ、21世紀はアニメやコミックのパロディネタをどんどん取り込む軽妙路線がFEAR社の売りだったんですが、それに至る旧世紀の導線というのがエルジェネシス→スターロードと考えられますな。ファンタジーのエルジェネシスが、サプリで魔導科学的なメカ要素を取り込むことで、アルシャードに橋渡しする一方、スターロードの路線はもう少し正統派スペオペスターレジェンド(2004)に引き継がれ、そこからカオスフレアの多元宇宙ものや、メタリックガーディアンのロボSFに受け継がれる、と』

ヒノキ「では、系譜が考察できたところで、この話題は終了じゃな」

NOVA『いいえ。ついでに、スターロードの悪役ダークサイドについて考えておきたいです』

 

ダークサイドの話

 

NOVA『FEARさんのTRPG戦略として、GMをすることが楽しいゲームシステムを意識してまして、スターロードでは、プレイヤーキャラよりも魅力的な悪役ダークサイドを構築するデータが豊富なんですね。とりあえず、ダークサイドのキャラを作成し、そいつがどんな悪事をしでかすかを考え、その悪事をプレイヤーキャラがどうやって知り、怒りを燃やし、阻止するかの展開を考えれば、ゲームのシナリオが完成するという考え方です』

ヒノキ「魅力的なキャラがいて、そいつがどういう行動を起こして、他者に関わって影響して行くかを考えれば、物語の骨子はできるようなものじゃな」

NOVA『スターロードのルールブック160ページのうち、40ページはワールドガイド、50ページはルールとキャラ作成、30ページはGM用のダークサイド作成ルールとシナリオ作成&運用ルール、サンプルシナリオ2本が10ページほどで、残りの30ページがアイテムや宇宙船などのデータとチャート集などですね』

ヒノキ「つまり、プレイヤーキャラを作るのと同様の密度で悪役を作ることができる、と」

NOVA『FEAR社のTRPGは、トレカのデッキ構築と同じ密度でキャラ構築する方向に進化しました。そしてGMの方も、対戦相手気分でダークサイドをより強く構築できます。例えば、数多くのダークパワーが用意されていて、それを読んでるだけでワクワクします』

ヒノキ「例えば?」

NOVA『〈洗脳〉〈巨大化〉〈大量虐殺〉〈二段変身〉〈コロニー落とし〉〈不死身〉〈機動要塞〉〈人間爆弾〉〈濡れ衣〉〈人質〉〈迷宮〉など。これらの特殊能力は、スターロードだと敵役しか使えません』

ヒノキ「味方は〈巨大化〉できないのか? ウルトラマンは無理?」

NOVA『プレイヤーキャラに、そういうテンプレは用意されていません。ただし、〈巨大化〉したシナリオボス(毎回の敵怪人相当)に対して、宇宙船で砲撃を加えるのはありでしょう』

ヒノキ「ロボはないけど、巨大戦は巨大メカで対応するのじゃな。ドルギランとか、グランドバースとかの砲撃なら、あり、と」

NOVA『〈不死身〉とかはシナリオギミックにもなっていて、それを解除するまでは敵を倒せないから、どうやって倒すか探るのがシナリオ目的となるわけです』

ヒノキ「とある魔剣の力でのみ倒せるとか、体のどこかに急所があるのを突くと無敵モードが破れるとか、無敵バリアの発生装置を事前に破壊するとか、特殊音波で弱体化させられるとか、腐った芋羊羹とかじゃな」

NOVA『で、ダークサイド・テンプレートもとりあえず5種類ありますな』

 

  1. 幼き魔王:クラブの超能力者
  2. マッドサイエンティスト:ハートの科学者
  3. 切れすぎる将校:ダイヤの軍人にして、星系国家の獅子身中の虫
  4. 女王様:ダイヤの悪女
  5. 海賊王:スペード・クラブの宇宙海賊

 

NOVA『というわけで、TRPGが魅力的な悪役を構築するためのツールとして活用できることも21世紀のトレンドなわけですな。もちろん、魅力的な主人公も大事だけど、非常に強い悪役や世界の危機を、レアキャラでないコモンの一般人が努力と根性と、ヒーローらしい覚醒を物語中に駆使して、事件解決する物語が現在の定番でしょう』

ヒノキ「まあ、普通では倒せない敵をどうやって倒すかが、ハラハラドキドキのドラマというものじゃからな。もちろん、ザコを軽くあしらうのもヒーローの特権じゃが、クライマックスの敵がショボいとがっかりする」

NOVA『性格はショボい小悪党でも、何かの古代の遺産を見つけて野心が暴走して……とか、倒すべき悪役像をどうするかが重要。そして先鋭的な創作家は、悪の魅力を語りすぎて、主人公に悪役属性を付与したくもなるわけで、悪堕ち主人公の暴走が功を奏して世界を救うとか、悪と正義の融和とか、「悪党の俺でも許せない醜悪を処断する。お前は俺の美学に反するからな」と悪役性の違いによって内部分裂する悪の世界の裏切り者とか、悪役ドラマをあれこれ考え始める、と』

ヒノキ「勧善懲悪から善悪の相対化に至る流れじゃな」

NOVA『悪という概念の掘り下げを通じて、正義とは何かを考察するわけで、暴走する正義と相まって、哲学要素に流れ込みます。ともあれ、「ダークサイド・キャラを構築する楽しみ」をスターロードは念頭に置いたそうで、ここからプレイヤー・キャラの闇堕ちルールみたいなものがFEAR社の作品に目立ってくる端緒かなあ、とも』

(当記事 完)