花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、D&Dを中心に世紀末前後のTRPGの懐古話を不定期展開中。

本日はエイプリルフール

さあ、6時が過ぎて、当ブログも日にちが切り替わりましたよ。
新年度の始まり、はこの際どうでもよくて(日曜でお休みなので、仕事には関係ないし)、4月1日といえば、そう、あの日です。


全国の皆さんが、おそらくドラえもんのコミックで初めて知ることになった、と思しき、「うそつ機」「ソノウソホント」、そして何よりも傑作『帰ってきたドラえもん』に登場した「ウソ800(エイト・オー・オー)」という通称エイプリルフール3部作と呼ばれる(NOVAが勝手に呼んでいる)秘密道具群、そういうお話がいろいろと世代人には懐かしがれる定番の記念日です。
ドラえもん (3) (てんとう虫コミックス)ドラえもん (4) (てんとう虫コミックス)ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス)ドラえもん (7) (てんとう虫コミックス)
ただし、このネタ、今の子供たちにはちっとも伝わりません。彼らももちろん『ドラえもん』のことは知っています。『ドラえもん』と『ドラゴンボール』と『名探偵コナン』はそれぞれの民放局を代表する子供番組であり、老若男女問わず、日本人なら誰でも知っているアニメ番組といっても過言ではありません。
もちろん、知識格差は個々にあるだろうし、しばしば野球中継でお休みになる『コナン』君は、コミックの連載開始が、他2作の昭和ではなくて、平成という後発の事情もあって、年配の日本人なら、名前は聞いたことがあるけど、あまり知らない人もいるようですが、今の子どもと世代を超えたコミュニケーションを図ろうと思えば、必須のアニメと言えます。

あ、その枠にさらに加えるならば、伝説の『サザエさん』と、ゲーム界のエース『ポケットモンスター』を加えて、「5人そろってキッズアニメ5」にまとめることも可能ですが、
サザエさん』はアニメ映画化しないし、メディアミックス戦略とは基本的に無縁なので、子供文化にとっては露出が少なく、「主題歌は知っているし、磯野家、フグ田家を中心とするキャラも知っていて、見たことはある」けど、そんなに深くハマってはいないし、熱く語るような子供はまずいない、と思われます。
「ねえねえ、昨日のサザエさん見た? カツオが大活躍だったよね。やっぱ、私、カツオ君みたいな彼氏が欲しいの」と語る女子中学生とか、「来週のサザエさん、あの3本のタイトル聞くと、もう楽しみで仕方ないんだ。早く、日曜の6時半にならないかな」という小学生はいないでしょう(少なくともNOVAの周囲にはいない)。
ポケットモンスター』は、子供たちには大人気なんだけど、ゲームをしない大人たちには受けが悪くて、しかも90年代後半のポケモンショックの影響が20年経った今でも印象に残っていて、「うちの子には絶対にポケモンは見せないようにしているんです」と言ったような話をNOVAに語るお母さんも実際にいるわけで。

あ、一応、NOVAは小中高生と、その保護者と仕事で接する機会がそれなりにあって、その中で頻度は決して高くないとは言え、ゲームやアニメという子供文化の話が出て、その反応を伺うことで、「現在の子供文化とアニメ、ゲームの影響」については、地域限定、定点観測とは言え、語るに値するほどの知識、データを、まあ、10年から20年分は習得していると自認している。
だから、各作品の視聴こそはしていないものの(よって現役ファンとは名乗らない)、子供とのコミュニケーションの必要上から、最低限のことは語れるようにしているし、彼らの話から間接的なストーリー理解や、その受容具合を知ることができるわけである。


前置きが長くなった。
本日はエイプリルフールである。
でも、今のところ、嘘は一つもついていないよ。
いや、実は「カツオ君みたいな彼氏が欲しい」女子中学生や、「サザエさんのサブタイトル3本にこだわりを持つ」小学生が、教え子の中に存在していた(NOVAが気づいていないだけで)としたら、嘘つきになってしまうのだけど、まあ、今日だったら、そういうケアレスミスも許されるので、遠慮なく断定調に書いてしまいます。


さあ、楽しく嘘を付くぞ(ワクワク)

翔花ちゃんはショッカー?


翔花「ねえねえ、NOVAちゃん。エイプリルフールって何?」
NOVA「おいおい、アシスタント娘。今まで楽屋裏に引っ込んでたとは言え、さっきまでの説明は聞いていたはずだろうが。もしも聞いていなかったとしたら、トランプ大統領みたいに『お前はアシスタント首だ』と宣告するぞ」
翔花「そんな。私、首になっちゃうの?(涙目)」
NOVA「嘘ぴょん。大体、『もし聞いていなかったとしたら』と仮定を付けていたろうが。たまに、仮定の話をきちんと吟味せずに、結論部分だけ受け止めて、おかしな誤解をするような人がリアルには結構いるから、言葉足らずだとコミュニケーションが成り立たなくなっていて、しかも、お互いに話が噛み合っていないことに気づかないまま、険悪なムードになるケースもあるからな。『私が犯人だったら、すぐに、この首差し上げます』『だったら、今すぐ死ね』というような頭の悪い会話が国会議員の間でも日常茶飯事だからな。前者は『自分が犯人じゃないことを前提に、極端なことを言っている』のに、後者は『その前提を無視、あるいは限りなく軽視して、鬼の首を取ったように騒ぎ出す』から、議員なのに、まともな議論になっていないのを見ると、俺、こんな人たちのために税金払うのやめたくなっちゃうよ、とミストさん状態になるわけで」
翔花「……NOVAちゃん、話が長すぎるよ。しかも、全然、関係ない話してるし」
NOVA「おっと悪かったな。政治家批判は、当ブログの趣旨じゃない。よく、止めてくれた。さすがはアシスタント」
翔花「えへへ。で、エイプリルフールって何?」
NOVA「って、まだ、それを言うか。お前、人の話を聞いていないだろう」
翔花「しっかり聞いていたよ。だけど、NOVAちゃん、エイプリルフールのことをきちんと説明していない。何かの記念日とか、ドラえもんとか、嘘に関係ある、とか、そんな話はしていたけど、断片的すぎて、結局、分かる人にしか分からない。私みたいな子供には、うまく推測しないと伝わらない説明になっちゃってる」
NOVA「そんなの常識だろう。それぐらいググって自分で調べてみろよ……って言っちゃうと、記事の書き手としては低能をさらすことになるのか。全てを1から10まで細かく説明する必要はないけど、相手に自力調査を促すことも時には必要だけど、自分と違う知識範囲を持つ相手に、自分が話すテーマについての基礎知識を分かりやすく伝えることも書き手の手腕と言えるな。分かった。ここはゆっくり丁寧な教師モードに切り替えよう。嘘をつくのは後回しだ。何か質問してくれ」
翔花「はい、NOVA先生。エイプリルってのは4月よね。それは分かるんだけど、フールって何? 新しいネット動画か何か?」
NOVA「バカ」
翔花「そんな、ひどい」
NOVA「いや、そういう意味じゃなくて、フールが『バカ』っていう意味だということだ。決して、Huluとフールを勘違いしている娘をバカにしたわけじゃないぞ」
翔花「つまり、四月バカ。四月には花粉が飛び交ったり、陽気に気分が浮ついて、みんなバカになってしまうということ?」
NOVA「ああ、それは面白い考察だな。ついでに花見のシーズンだったり、新入生歓迎コンパだったりで、みんなが酒を飲んでバカな振る舞いをするようなこともあるだろうが、エイプリルフールはそうじゃない。四月初めの嘘に騙される者をからかって、バカ呼ばわりするんだ。いつもは騙す奴が悪い、というのが世の常識だが、この日ばかりは、騙される奴が悪いという普段とは違う常識が支配する。分かりやすく言えば、この日だけは嘘にだまされても笑って許すのがマナーとされる、まあ西洋のおかしな習慣だな。ぶっちゃけ、嘘ついて人を騙してもいい日ということだ」
翔花「ふーん、そうなんだ。じゃあ、私の言うことは今から全部ウソね」
NOVA「なっ、それは困る。この記事の内容が、収拾付かなくなるじゃないか。アシスタントの言葉が嘘ばかりなら、読者が混乱する」
翔花「嘘ぴょん。さっきの仕返しだよ。どんな記念日でも、仕事はきちんとする。NOVAちゃんもそうでしょう?」
NOVA「ああ、もちろんだとも。例年4月1日は生徒たちにこう言っているんだ。『今日はエイプリルフールで、嘘をついてもいい日だと言われている。だけど、先生の今日の授業は嘘じゃないからな。先生が君たちを騙したら、信用してもらえなくなる。生徒から信用を失った教師は悲惨だからね。先生は悲惨な奴になりたくはないので、君たちを騙すようなマネはしたくない。さて、ここまで話を聞いて、先生の言葉に嘘は見つかったかな?』って」
翔花「その日の全部の授業で、それ言っているの?」
NOVA「まさか。基本は新中2だな。エイプリル、Aprilという英単語を1年生の終わりに学習しているから、まあ、知識の確認とか、そこから月の単語抜き打ちテストに話を持って行きやすいし」
翔花「いろいろ考えているんだね」
NOVA「当然だ。教師が考えなくてどうする。ところで、翔花。お前の名前の由来は知っているかね」
翔花「そんなの当たり前よ。一緒に考えたじゃない。杉花粉症をいじくって、粉杉翔花。それがNOVAちゃんからもらった私の名前だよ」
NOVA「うむ。それは間違っちゃいない。しかし、そこにはさらに違う意味、ダブルミーニングが込められていて、だな」
翔花「え、どういうこと?」
NOVA「お前の苗字の粉杉だけど、何で読み方が『こなすぎ』であって、もっと分かりやすい読みの『こすぎ』じゃないのか、考えたことは?」
翔花「ええと、こすぎだったら、ケイン・コスギ*1とか、小杉十五郎*2とかぶるから?」
NOVA「さすがだな。そういう名前がポンと出て来てこそ、我がアシスタントにふさわしい。あ、付いていけない読者のために、きちんと注釈はつけておいたからな。ケインはともかく、小杉十五郎レベルに普通について来れる人間はアレレアだし。そういう人とは、必殺談義でうまい酒が飲めそうだ」
翔花「うん、それで、こなすぎなのはどうして?」
NOVA「こなすぎ・しょうか。『濃すぎ』と読めるコスギもいいかな、と思ったんだけど、花粉が濃すぎても自分が辛いだけだからな。それに、全国の小杉さんと被るのも避けたかったし、『小杉翔香』ちゃんだったら、普通にいそうな名前だから、どこかフィクションって感じの名前が欲しかったというのもある。コナスギだったら、『粉の時期が過ぎて気分スッキリ』って自分の心情も反映している」
翔花「ふむふむ。私の名前を決めるのに、そこまで考えてたんだ」
NOVA「そして、何度も『コナスギ・ショウカ』と呟いているうちに、不意にあることに気付いたんだ」
翔花「(ワクワク)それは何?」
NOVA「怖すぎショッカー」
翔花「何じゃそりゃあああ」

ドラえもん四月バカ


翔花「トホホ。私の名前が本当に、ショッカーつながりだとは思わなかったよ」
NOVA「大丈夫。君がショッカーモードになったら、俺がブルーアイズの力で洗脳解除してやるから」
翔花「うーん、いまいち信用できないな。NOVAちゃんのことだから、私がショッカーに悪堕ちしたら、『おお、悪堕ちガールきたー。こういうのが見たかったんだよ。NOVAは彼女が主人公の敵になっても、しっかりアクション見せてくれるなら、変わらず応援を続けます』とか言ってそう」
NOVA「……否定できない。しかし、まあ、あれだ。NOVAは翔花がどんなに変わっても、自分が生んだ娘として応援し続けるってことだよ」
翔花「本当に?」
NOVA「……今日は4月1日だからな。信じるか信じないかは君次第だ」
翔花「明日、もう一度聞いていい?」
NOVA「明日は明日の風が吹く
翔花「はぐらかすつもりね、もう。だったら、読者に代わって、違う質問をするわ。どうして、ドラえもん四月バカに関係するの?」
NOVA「そんなの常識……でもないのか。昔だったら、子供たちにAprilの単語を教えるときに、『エイプリルフールって知ってるよな。あれを知ってたら、まずはA。その後、pがプで、riでリで、最後のlがルだから、RとLの発音さえ意識すれば、間違えずに書けるだろう』なんて解説していたんだが、ある時期から『エイプリルフール』って言葉を出しても、子供たちの反応が悪いことに気づいたんだ。『エイプリルフール? 何それ?』ってしらっとした反応を感じて、もしかして今の子供はドラえもんを知らないのか? と確認してみたら、ドラえもん自体は普通に知っているわけで」
翔花「でも、どうしてドラえもんと、四月バカが関係するのよ。その質問にはまだ答えてもらっていないわ」
NOVA「ああ、ドラえもんの初期のエピソードに、それをネタにした印象的な作品が3つもあるんだよ。念のため解説すると、『うそつ機』と『ソノウソホント』はどちらも口に装着する鳥のくちばし型のアイテムで、形状はそっくりだけど機能が違う。前者は『装着者がついた嘘を対象に信じ込ませるアイテム』だが、あくまで心理的な作用で物理的な影響はない。一方、後者の『ソノウソホント』はもっと強力で現実改変能力を持っている。つまり、装着者の口に出したことがそのまま現実になってしまうわけで、たとえば、ぼくが『White NOVA(および、そういうハンドルネームを使っている自分自身)は天才物理学者である。ぼくに解けない謎はない』などと妄言を吐いても、それが現実になってしまう」
翔花「すると私が『お前はすでに死んでいる』って言ったら?」
NOVA「3・2・1、ひ・で・ブシャーー」
翔花「キャーー、NOVAちゃんが死んじゃう~。今のなし。お願い。ザオリク使ったら、NOVAちゃんが生き返るようにして。ザ・オ・リ・ク!」
NOVA「ふー、また地獄を見てきたぜ。いや、あれは天国だったかな? おや、翔花、目に涙を浮かべてどうしたんだ? 花粉症か? って、そんなバカなって感じだな」
翔花「バカバカ、本当に死んじゃうと思ったんだからぁ」
NOVA「痛い痛い。そんなにポカポカ叩くなって。大体、お前が変なことを言うからだろうが。ドラえもんの秘密道具は使い方を間違えると、因果応報、使い手に思いがけない結果が起こって、苦い教訓を与えるものも多いんだから」
翔花「本当に、ソノウソホントは危険ね。思ったことをすぐに口に出しちゃう人は使わない方がいいわ」
NOVA「ああ、そうだな。思ってもいないことまで、条件反射的にポンポン飛び出しちゃう妄言野郎にも到底、扱いきれるアイテムじゃねえ。こいつはD&Dに例えるなら、魔法使いの最高位の『願いを叶えるウィッシュ』の呪文に相当する効果だから、ゲームマスターの厳正な管理の下に置かれなければならない、と思う」
翔花「ドラえもんの生まれた22世紀の未来って、時々とんでもない道具を作るのね」
NOVA「ああ、あれはのび太という発想力の豊かな少年を使って、アイテムがきちんと機能するか、おかしな副作用や危険性が生じないか、試用実験しているという説があってな。道具によって生じる効果は、実験が終了した段階で停止させられるという考察も為されている。『独裁スイッチ』の時みたいにな」
翔花「そんな説、誰が唱えているのよ」
NOVA「ネット上で、ドラえもんを愛する多くの有志の手によってな。もちろん民間研究者たちだが、インターネットは専門家だけの世界じゃないからな。ソノウソホントについては、あまりにも強力な効果のために『断固封印すべし』と主張する者や、コミック各シーンを分析しながら、その効果範囲がどこまでか解析するような研究も為されている。例えば『これは声によって生じる効果だから、使用者の声の届く範囲の現実しか変えられない』とか、『変更された現実には制限時間が設けられているはずだ。それを使って一時的に人が死んでも、10分後にはピンピンして元の状態に戻る』とか、『世界そのもののルールを書き換えて、一種のパラレルワールドを生成する、もしもボックスの方が強力だ』とか、『いや、もしもボックスの作り出した世界は現実そのものではなく、現実に似せたバーチャルリアリティの世界だ』とか脳内補完やら妄言やら、時には万人が頷く素晴らしいアイデアの数々が、ネット上のあちこちで生み出されては語り伝えられたり、そのまま埋もれたりしている。ここも、その中の一つなんだ」
翔花「ふええ、そんなに凄いことになっているんだぁ」
NOVA「念のために言っておくが、今日は4月1日だからな。全部、俺の頭の中の妄想かもしれないぞ」
翔花「うん。妄想でも、それが辻褄合ってて面白ければいい。そうでしょ?」
NOVA「それでこそ、我がアシスタント。じゃあ、次は『ウソ800』なんだが……」
翔花「あ、それはもういい。さっき聞いた中に『帰ってきたドラえもん』ってタイトルが出ていたから、それで調べてみるね」
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うう。一応は解説したい教師モードなので、誰が聞いていなくても解説するが、「ウソ800」は、ドラえもんの一先ずの最終話『さようならドラえもん』(連載時期1974年3月号)と、やっぱり止めるの止めたという作者の方針変更により継続決定となった新章開始版というべき『帰ってきたドラえもん』(1974年4月号)をつなぐ印象的なアイテムである。
ドラえもん型のボックスに収められた飲み薬なのだが、
ドラえもん トラベルステッカー (6) ウソ800
これを飲むと、ソノウソホントとは逆の形で、現実改変能力を発揮することができる。ソノウソホントが「発言した言葉どおりの現象が起こるストレートな機能」を持つのに対し、ウソ800は「発言した言葉とは逆の現象が起こる、ひねくれた効果」を示す。
「NOVAが死んだ」と言えば、その逆の効果、つまり「NOVAが死なずに、むしろ元気になる」というわけで、発言者はそのひねくれた性能を念頭に置いて、起こしたい事象の逆の言葉を発言するように努めないといけない。

うかつに、「よっしゃラッキー」と叫ぼうものなら、不幸がドッと押し寄せてくる。
ん? すると、発言がどうも後ろ向きになりがちな鬱モードの時は、これを飲めば幸せになれるのか。
思わず、「俺なんて、どうせ何をやってもうまく行かないんだ」と言ってしまっても、ウソ800を飲めば、あらビックリ。「万事が順調、絶好調な自分」に生まれ変われる。
ええと、うつ対策に有効な飲み薬「ウツ800」とパチもんみたいな名前を付けて売ってもいいんじゃないですかね。


ともあれ、3月にドラえもんが未来に帰ってしまい、寂しい気持ちを抱えながらも、一人で頑張る決意を固めたのび太君。
そこへ、ジャイアンたちから「ドラえもんが帰ってきた、という酷いウソ」をつかれて、絶望に陥ります。これが仮面ライダーウィザードの世界なら、間違いなくファントムを生み出してしまうでしょう。そして、「俺が最後の希望だ」という指輪の魔法使いはいないので、代わりにドラえもんが残した最後の希望「ウソ800」に全てを託します。
と、まあ、こう書くと、最後の希望がウソと名のつくアイテム、というのも、なかなか酷い気もするのですが。


とにかく、ウソ800の力でジャイアンたちに復讐を果たしたのび太ですが、ドラえもんを失ったままの心は晴れません。
鬱モードの気分のままに、「ドラえもんは未来から帰ってこない」「2度と会うことはできない」とネガティブ発言を連発します。
そこで生じる皮肉な結果。
部屋でのび太くんを待っていたドラえもんの姿!


この奇跡は、のび太ドラえもんも意図的に狙って起こしたのではないこと。
「ハハア、ウソ800を飲んで、ぼくが帰ってこないと言ったのか」と、自分たちの状況を変化させた原因について、ドラえもんが種明かしして、物語に巧妙に隠された作者の仕掛けを示してくれます。ここで、読者の心も腑に落ちる、と。
そうか、ウソ800はいつものジャイアンたちへの復讐アイテムではなくて、それ自体、このどんでん返しに次ぐどんでん返しで構成されたエピソードの根幹を為すアイテムだったんだなあ、と。
物語の大きな流れからすると、その前話の「さようならドラえもん」そのものが結果的に大嘘だったわけですが、それすらも作者は嘘をついたつもりはなく、本当に終わらせるつもりだったのが、種々の事情で連載継続しての再出発に当たったわけで、のび太やドラ同様に意図的に狙って起こしたわけではない。
それでも、のび太のアップダウンする気持ちに感情移入させ、秘密道具のひねくれた効果を丁寧に描写し、最後のセリフまで心とはうらはらの「嬉しくない! これからずっとドラえもんと一緒に暮らさない!」というひねくれ方で締めくくる。


事実と逆の描写を提示することで、本心を浮き彫りにする。
今だと一言「ツンデレ」で片付けられがちですが、これを単なる類型ではなく、たった1エピソードという短い話の中で、「寂しさを押し殺した偽りの平静クール→相手の嘘により吹き出る高揚した気持ち→騙されたと知っての悲しみ→復讐心と、それを達成しての一時的な高揚感→すぐに訪れる虚しさ→思いがけない喜びと、言葉とはうらはらのハッピーエンド」まで、のび太君の気持ちをていねいに描写したことで、お見事すばらしい、と単行本読んでから40年ぐらい経っても記憶から色あせない物語になっています。


ドラえもん小学館の学習雑誌上で連載開始されたのは、1969年末(雑誌上は70年1月号)。来年が一応の生誕50周年ということになりますね(おそらく、表向きは70年連載スタートという形式をとるでしょうが)。
そこから、メインのプラットフォームをコロコロコミックに移したり、TVアニメや劇場長編アニメを通じてメディアへの露出を増やし、世代を超えて受け継がれる昭和→平成の文化を代表する一作となりました。

今日はエイプリルフールなので、やはり最後ののび太くんのセリフも踏まえて本記事も締めくくるのがふさわしいと思います。

「ここまで長く続いてくれて、嬉しくない! 」
「これからずっとドラえもんと一緒に時を過ごさない!」
(完。あるいは、さらなる未来へ向けて、つづ……かない)

*1:カクレンジャーのニンジャブラック・ジライヤや、ウルトラマンパワードに変身するケンイチ・カイなどで90年代の特撮ファンに有名なアクション俳優。それ以降も、『ゴジラFINAL WARS』や『ニンジャ・アベンジャーズ』『テラフォーマーズ』に出演していて、さらに2016年までは『リポビタンD』のCMでファイト一発!の前振り担当だった。父親のショー・コスギも元祖アメリカン忍者俳優として非常に有名。現在、アメリカで日本の忍者が人気が高いのも、ショー・コスギのおかげと言っても何ら過言ではない。忍者ファンを名乗るなら、それぐらいの常識も知らないではモグリとなじられても文句は言えない。

*2:池波正太郎の小説『仕掛人・藤枝梅安』シリーズに登場する梅安の親友の侍。小説元ネタのドラマでは、定番の相方キャラである。ただし、原作から派生して必殺シリーズの源流となった『必殺仕掛人』の方では、小杉の代わりに、原作ゲストの西村左内がレギュラー侍に採用されているため、劇場映画を除けば未登場。梅安の相棒として、小杉と西村、どちらが先に出てくるかで、原作『仕掛人シリーズ』と時代劇『必殺シリーズ』のどちらにより傾倒しているかを見分けることができる。まあ、仕事人以降の普通のファンはどちらも出て来ないんだろうけど。