花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

キャッキャヒヒヒな入浴タイムの後で(翔花外伝・温泉編3)

翔花2号の述懐


私は粉杉翔花。妹の2号の方ね。
元々は一人の花粉症ガールなんだけど、ブログ上の物語展開が「バトル創作の翔花伝」と「NOVAちゃんとのお喋りメインの日常編」に分かれた際、粉杉翔花もいつしか*1バトルの1号、日常トークの2号に分かれてしまいました。
うん、NOVAちゃんが行き当たりばったりなのが悪いよね。


これって、ドラえもんで、映画の冒険メインで成長したっぽいのび太君と、TVの日常メインで成長しないのび太君が、のび太1号と、のび太2号に分裂したみたいで、普通は有り得ないでしょ。


だけど、その有り得ないことが起こっちゃったのが当ブログの不思議時空。
とにかく、この私、翔花2号は、いつの間にか双子のお姉ちゃん設定になっていた翔花1号ちゃんとは、似て非なる設定を後付けで与えられて育てられることになりました。
明朗快活で、天然ボケで、行き当たりばったりで、それでも天性の幸運でピンチを切り抜け成長する脳筋お姉ちゃんの1号ちゃん。みんなに光属性の希望の星だとか、多彩な技を習得する可能性の勇者だとか、いかにも主人公のように扱われています。
一方、私、2号は自分で言うのも何だけど、腹黒狡猾で、計算高く、慎重派で、NOVAちゃんのアシスタントガールとしての教養を期待されて、いつしか知力の翔花2号と呼ばれるようになりました。だけど、NOVAちゃんに毒舌ツッコミを繰り返したからか、闇属性を付与されてしまい、灰色の魔女さん*2やら、夢世界で暗躍する影の星輝士さん*3やらの要素を受け継ぐことに。つまり、お姉ちゃんの性格から切り取られた暗い要素は全部、私に押し付けられたわけで。


うん、お姉ちゃんがラッキースターなら、私はブラックスターとかダークスターとかシャドースターって感じ。
だけど、そんな不遇な私でも、「まっいいか。危険な冒険は全部、お姉ちゃんが引き受けてくれるんだし、私はのんびり読書なんかを楽しみながら、お家でNOVAちゃんと、ささやかながらもそれなりに優雅なぐうたら生活を堪能できるんだから」って、気楽に考えていました。
そう、幸運でも不運でも関係なくて、必要以上に悲観的にならず、「まっいいか。NOVAちゃんの加護がある限り、何とかなるっしょ」と本質的に楽観的に構えちゃえるのが、粉杉翔花の変わらぬ属性だと思います。


そんな私、翔花2号は危険な冒険とは無縁のはずでした。
だけど、出会わないはずの姉妹が出会ってしまい、W翔花のエピソードが展開された後、NOVAちゃんは「明鏡戦隊メガネンジャー」って新企画を始めてしまったの*4
1号ちゃんは「翔花伝」でコンパーニュの塔を舞台に、まったり修行中の一方、
私の方が「メガネンジャー」でアシストしながら、多元宇宙のヒーロー・ヒロインとのコラボで忙しく動き回ることとなったわけ。
そして、私がメガネンジャー見習い、知力の戦士メガネシルバーとして華々しく活躍……はしてないわよね。ええと、NOVAちゃんとヒーロー・ヒロインさんのマニアックなトークを横で聞きながら、時々ツッコミコメントを入れていたぐらい。とにかく、登場人物が多いので、NOVAちゃんは嬉々として司令役を務めていたけど、私は本来の控えめな性格で、空気みたいになってました。
だって、ウルトラマンゼロさんや、ドクター・ウルシェードさんみたいな濃いキャラに混じってトークするなんて、私には無理。大体、マニアックな人たちが談義している場所で、私みたいに未熟な新米が出しゃばって、悪目立ちするのもどうかと思うしね。その辺の空気は読めないと、NOVAちゃんから嫌われるって思ったし。


一方、メガネンジャー活動の合間に、お姉ちゃんの夢にも私は出張出演。ええと、NOVAちゃんが昔、書いたプレ・ラーリオスって物語の登場人物が出てくる中で、未完の小説にハッピーエンドな未来を与えて綺麗に締めくくろうって企画ね。
そこで私は、トロイメライって名乗って、いろいろ目立ってたらしいんだけど、ゴメンなさい、その辺の記憶がはっきり残ってないの。だから、うまく説明できません。気になる人は、記録が残っているので、こちらこちらをどうぞ。
NOVAちゃん以外の誰かに憑依されたのって、多分あれが初めてだと思います。記録で読み返しても、自分じゃない誰かが自分の体を操るなんて、あまり気持ちのいいものじゃないわね。だけど、トロイメライさんはNOVAちゃんが描いたキャラだから、赤の他人ってわけでもなく、シンパシーを感じるのが不幸中の幸いだったわ。


ラーリオス編が終わって、しばらく経った頃、コンパーニュの塔の元締めヒノキさんがNOVAちゃんに連絡を寄越してきました。上から目線のムカつく言い草で、私を塔に呼びつける内容。お誘いする招待状と解釈することもできるんだけど、やっぱり、NOVAちゃんを叱りつけるような居丈高な表現だからね。
ヒノキさんは何だかお姉ちゃんびいきみたいだけど、あのヒヒヒ笑いが不気味で、絶対に邪な下心を抱いていると思います。そう、これは女の勘。お姉ちゃんは危なっかしいので、私がお姉ちゃんをヒノキさんの魔の手から守ってやらないとって気になりました。
それに、もっと危険なのは、あの妖怪ネコマタだかトラマタだか、どっちでもいいけど、ビャッコというメスガキ。あれ? オスだっけ? どっちでもいいわ、あんな奴。とにかく、お姉ちゃんに対して、敵意むき出しで挑発してくる、いけ好かない子。
NOVAちゃんは私に、コンパーニュとの外交使命を授けたけれど、実際に現場に到着して空気を読むと、すぐに私はその隠れた真意に気が付きました。そう、NOVAちゃんは私の知力を駆使して、窮地に立っているお姉ちゃんを助けるように、というつもりで、送り出したんでしょう。それぐらい察することができなくて、知力の2号は名乗れません。
私やNOVAちゃんからお姉ちゃんを奪い取ろうとする、あるいは傷つけようとするコンパーニュ一党の魔の手から、大事なお姉ちゃんを守るのがメガネシルバー、粉杉翔花2号の新たな使命のようです。


だけど、狡猾なヒノキさんは、私に「朱雀幻魔拳弐式・時空天翔」なる秘技を仕掛けてきました。NOVAちゃん以外に時空を操作する技を使う者がいるなんて。
そうして迂闊にも私は、一月前の時間に飛ばされてしまいました。キン肉マンビッグボディさんが華々しい勝利を収めたり、ウルトラマンルーブが番組開始したばかりだったり、メガネンジャーがまだメンバーを全員、揃えていなかった時期。


戦場は、もくもくと煙をたたえた熱湯地獄。
対峙する相手は2人。
お姉ちゃんを地獄の湯に引きずり込んで意識を失わせた張本人のヒノキさん。卑怯にも、お姉ちゃんを人質に取ろうとしているみたい。
そして、物陰に潜む陰険ネコマタ娘。名前は呼んであげない。だって、白よ、白。白はNOVAちゃんの専売特許なので、妖怪ネコマタが白を使うなんて、私は認めない。
この2人を前に、知力の翔花2号がどう立ち振る舞えばいいのでしょうか。


これは私の時空を超えた波乱万丈の冒険譚の第1章に当たります。だから、心して読んでくださいね。

湯けむり幻想妖異譚


翔花「確認させて。私は2018年8月16日の粉杉翔花」

ヒノキ「すると、そなたは今より少し先の未来から来たと言うのか? 今はまだ7月じゃぞ」

翔花「そんな、私、過去の時間に飛ばされちゃったの?」

物陰シロ「未来から来ただって? つまり、粉杉翔花本人が分身したというわけじゃないのか。当然だな、あのような未熟者に分身という高度な忍術が使えるはずがない。こと忍術においては、ボクの方がまだ上ということだ。しかし、油断はできない。あの粉杉流は正統ではなく邪流の使い手っぽいから、どんな隠し玉を持っているかもしれない。ボクの忍術の常識だけで考えると、足元をすくわれるかも。こういう相手には、もっと落ち着いて心の目を研ぎ澄まさなければ」

ヒノキ「未来から来たコナっちゃんか。にわかには信じられぬが。では聞こう。8月16日なら、ビルドの映画のストーリーは当然、知っておろうな。万丈龍我は予告編にある通り、本当に死んでしまうのか? わらわは当然、死なぬと踏んでいるが」

翔花「死ぬわけないじゃない。あれはTVの45話と46話の間のエピソードなのよ。映画ではみんな無事。だけどTVでは……」

ヒノキ「うわあ、それ以上は聞きとうない。こっちではまだ、TVは44話までしか放送していないんじゃ。万丈が無事と確認できれば、それで十分。他には、次のライダーというジオウはどうじゃった? 窮地のビルドを助けて共闘したりはするのかの?」

翔花「そんなことになったら、ビルドの物語が興醒めよ。ビルドの物語はビルドで完結して、その後、多元宇宙の扉である白いパンドラパネルの力で、ジオウの世界とつながる、とNOVAちゃんは言っていたわ。念のため、その白いパネルには、NOVAちゃんの願いも込められている、正に希望の切り札よ。だから、あなたもビルドのハッピーエンドのために祈りなさい。そうすれば、NOVAちゃんも喜ぶわ。もしも、げんとくんが死んで、そのまま復活しないようなことがあれば、NOVAちゃんが時空の魔王になって、私がそれに付き従い、闇堕ち父娘が世界を牛耳ることになるかもしれないから」

ヒノキ「何じゃと!? そうなれば、この日野木アリナの全力をもって、新星殿の正気を取り戻させてやるか、さもなくば抹殺も止むなしと判断するが、お主、本当に未来のコナっちゃんか? わらわの知っとるコナっちゃんなら、仮に新星殿があっさり闇堕ちしたとしても、涙をのんで新星殿の正気を取り戻すべく戦うはずじゃ。しかし、そなたの言い草を聞くと、そなた自身が嬉々として闇堕ちライフをエンジョイしそうな危うさを感じる。もう一度、聞く。そなたは何者じゃ? 顔は同じでも、まとう雰囲気が違う。ドッペルゲンガーの類か? 白を切るなら、外道照身霊破光線を浴びせて、無理矢理でも化けの皮を剥がしてやるぞ」

翔花「外道照身何ちゃらって、NOVAちゃんと似たようなことを言ってるわね。だけど、そんなことをしても無駄よ。私は嘘は言っていない。私が一月後の未来から来た粉杉翔花である事実は変わりないんだから。ただし、あなたの言うコナっちゃんが1号ちゃん、私のお姉ちゃんを指すのならば、私は2号、双子の妹よ」

ヒノキ「何と。それならメガネシルバーとは、そなたのことか? わらわは明鏡戦隊のファンなのじゃ。サインをくれ」

翔花「は? あなた、気は確か? 夏の暑さでおかしくなってるんじゃない? 仮にもコンパーニュの塔の主ともあろう方が、そんなミーハーなことを言うなんて」

ヒノキ「ミーハーでも何でもいい。わらわはメガネンジャーと握手がしたいんじゃ。サインでも、手型でも、足型でも、Tシャツでも何でもいい。とにかくメガネンジャーと名が付けば、それで結構じゃ。何せ、グッズも、ソフビも、合体変形ロボ玩具も売っていないのじゃから、そなたしか頼れる者はいないでの。頼む、メガネシルバー、コナっちゃんの妹御どの」

翔花「ふん。そんな見えすいた策略に、この知力の翔花2号が簡単に騙されるとは思わないことね。大方、そういう話で私をうまく乗せて、油断したところを金縛りの術でも掛けてから、温泉にジャボンと放り込むんでしょう? おそらく、お姉ちゃんにも同じことをしたはず」

ヒノキ「どうして分かったんじゃ? わらわがコナっちゃんに金縛りの術で動きを封じ、この湯に入れたことが」

翔花「やっぱり。そうでなければ、お姉ちゃんがこんな地獄の湯に入るなんて有り得ない。わざわざ体が溶ける危険を冒してね。私に信用されたければ、まずはお姉ちゃんを解放なさい。お姉ちゃんと私の身の安全が保証できれば、サインの一枚ぐらいしてあげるわ」

ヒノキ「おお、おお、保証する。元よりコナっちゃんやそなたを傷つけるつもりなど毛頭ない。それよりも、今はコナっちゃんの身の安全が第一じゃ。のぼせ上がっているので、これ以上の長湯は体に危険での。すぐに湯から上げてやらんといかん。担ぎ上げるのを手伝ってくれい」

翔花「甘いわ。そうやって油断させておいて、朱雀幻魔拳でも仕掛けるつもりでしょ。助けが欲しければ、そこに隠れている下僕のネコマタの手でも借りることね。私は……花粉分解!」

ヒノキ「消えたか。おのれ、姉を見捨てて、一人だけ逃げ隠れするとは言語道断。それが、闇を宿したそなたの本性か、妹御よ」

翔花(声だけ響く)「誤解しないで。あなたが姉を解放するなら、信じてもいいと言ったはず。それまでは気を許すわけにはいかないの」

ヒノキ「つまり、交換条件じゃな。コナっちゃんはもちろん介抱してやるわい。シロよ」

シロ(物陰からシュパッと)「は、ボク参上」

ヒノキ「その辺に隠れている妹御を見つけ出し、丁重におもてなしをするんじゃ。花粉分解はそれほど長時間、維持できんはず。いいか、丁重にだぞ」

シロ「し、しかし……」

ヒノキ「口答えは許さん。わらわはこれより、コナっちゃんのために本気を出す。この小さな体じゃどうしようもないからのぅ。ヒヒルマ・ヒヒルマ・フリリンハ。ハハレホ・ハハレホ・トリミンハ。ドッキンハートでアダルトモードになあれ💖」

ヒノキ・アダルト「さあ、久々の大人バージョンじゃ。この体なら、コナっちゃんを運んで、ベッドまで運んで介抱してやれる、ヒヒヒ改めカカカ」

シロ「アリナ様がビッグボディに。やはり、このお湯の力か」

翔花・粒子態(何コレ、ずるい。幼女態から一転、成人態になるなんて、複数の客層を狙って来るとは、やるわね、日野木アリナ。私がNOVAちゃんのハートを射止めるために是が非でも習得しようと思っていた夢の魔法を、すでに習得済みだったとは)


ヒノキ・アダルト、二人が呆然と見ている間に、翔花1号をお姫様抱っこしながら浴場より退場。


翔花・粒子態(ハッ。私としたことが、ファンタジックな不可思議現象に呆然としてしまい、お姉ちゃんとヒノキさんをミスミス見逃してしまうなんて。しかし、これは逆にチャンスかも。敵を2人同時に相手しなくて済んだのだから。よし、先に残ったネコマタ娘を始末して)

シロ「ハッ。ボクとしたことが、ビッグボディ温泉の誘惑に呆然としてしまい、姿をくらませた粉杉翔花の気配をミスミス見逃してしまうなんて。クンクン、ダメだ、これだけ硫黄の臭いと湯けむりが立ち込めていては察知できない。ここはアリナ様の忠告に従い、花粉分解なる木遁術が解除されるのを待って、仕掛けるとするか。丁重におもてなし、とおっしゃっていたが、まずは大人しくしてもらわないと。麻痺毒が花粉症ガールに通用すればいいのだが」

翔花・粒子態(麻痺毒ですって? やはり、コンパーニュのおもてなしとは、そういうことね。友好を装って祝宴に招いてから、食事に一服盛って無力化する。卑劣な連中が考えそうなこと。このままでは、お姉ちゃんが危ない。アダルトモードになったヒノキさんに、ベッドで何をされることやら。解放すると言いながら、そのまま拉致同然に連れ去ってしまうなんて、心を許しては絶対ダメ)

シロ「おい。その辺のどっかに隠れている、未来から来た粉杉翔花。大人しく出て来れば手荒な真似をしない。ボクはお前のことを好ましく思っていないが、アリナ様の命令には決して逆らわない。丁重におもてなしをするので、姿を現してくれ。さもないと、ボクはお前を許さない」

翔花・粒子態(本音を隠さない辺り、このネコマタの方が対処しやすそうね。一撃で無力化させるには……あの手が有効か。よし)

翔花(姿を現して)「分かったわ。あなたたちとこれ以上、不毛な争いをするつもりはない」

シロ「ホッ、大人しく降伏してくれるか。悪いようにはしない」

翔花「と、見せかけて、そっちが大人しく眠りなさい。久々のラリホーマ!」

シロ「何? 催眠呪文だと!? 図ったな、粉杉翔花! これぐらいの睡魔など、鍛え抜かれた忍びの精神力で、ふぁ〜、だめにゃ〜、ビッグボディ温泉のポカポカ温かい湯けむりが、ボクの集中力を妨げる〜、ふにゃ〜、ZZZ」

翔花「フッ、あんたのような三流忍者が、NOVAちゃんさえも眠らせる私の呪文に抵抗しようなんて、二万年早いのよ。うん、やっぱりゼロさんのセリフは気持ちいいわね。よし、これで後はとどめを刺すだけ」

シロ(寝言)「ムニャムニャ、父さん、ボクを残して、どうして死んだの?」

翔花「! この子、父親を亡くしているの?」

シロ(寝言)「粉杉翔花、いつもNOVAちゃんNOVAちゃんって、父親離れできない未熟者。甘えたあいつが許せない。ボクの父さんは……」


翔花「……それが私たちに突っかかる理由ってわけ? フン、そんなの、ただの逆恨みじゃない。自分が不幸な身の上だからって、幸せな家庭に敵意を向けるんじゃないわよ。そんなんだから、あんたは未熟な忍びなんだからね。忍びなら忍びらしく、感情は心に刃を乗せて押し殺しなさい……ってNOVAちゃんなら説教タイムが始まるところよ。
「さて、無力化させたんだから、とどめを刺すのは簡単。だけど、それだけじゃ、これからの状況打開にはならないわね。せっかくなら、この子の体を利用して、あの秘術を試してみるとしますか。ブルー・スタンド・フォームの時のNOVAちゃんと、ロードスのカーラ様と、プレ・ラーリオスのトロイメライ様の使った憑依術」

******************************

シロ(翔花)「フフフ、NOVAちゃんのシルバーアイズをカーラ様のサークレットに見立てて装着するとともに、私は花粉粒子ごとネコマタの体内に侵入。上手くできるかと思ったけど、私なりの憑依術は何とかなったようね。灰色の花粉症ガール秘技・花粉憑依の術(Pollen Possession)。これで、ボクはメガネコマタのシロだニャーって感じ? 殺さない代わりに、たっぷり役に立ってもらうわよ、シロちゃん。さあ、お姉ちゃんの居場所を見つけに行きましょう♪」

メガネコマタ・シロの暗躍


シロ(翔花)「う〜ん、このネコの体は機敏なのはいいけど、視点が低いのが使いにくいのよね。おまけにNOVAちゃんのメガネの度が合っていないので周囲が霞んで見える。今後も憑依術を使うときは、専用の伊達メガネを用意するか、それともカーラ様みたいなサークレットがいいか、検討の余地がありそう。
「まあ、不平不満を並べ立てても仕方ないので、今はできることをするしかないんだけど、問題点と改善案は覚えておいて、後でしっかり記録しておきましょう。経験から学ぶ粉杉翔花ってことで。
「さて、問題はどこに行けば、お姉ちゃんを探せるかってことなんだけど、浴場から出たら地下迷宮ってのは洒落にならないわ。下手に歩き回ったら、モンスターと遭遇したりしそう。猫目だから明かりがなくても行動できるのはいいんだけど」


シロ(う、うーん。あの粉杉翔花め。とんだ喰わせ者だ。油断したボクに催眠呪文を掛けて来るなんて。ん? ボクは今、どうなってる?)

シロ(翔花)「あら、意識が目覚めたようね。この体は私が頂いたわ。あなたは、もう少し寝ていなさい」

シロ(何だって? う、自分の体なのに自由にならない。この魔女め。今すぐ出て行って、ボクの体を返すんだ。アリナ様がこのことを知ったら……)

シロ(翔花)「私は、そのアリナ様、いいえ、ヒノキさんに用事があるの。あなたの体と、お姉ちゃんを交換するように持ちかけてみるつもりよ。協力してくれないかしら」

シロ(誰がお前のような魔女に協力するか! このボクをナメんなよ)

シロ(翔花)「ネコをナメる趣味はないわ。学ランなどのコスプレをさせる趣味もね。あなたが状況を理解していないようだから、説明してあげる。あなたはヒノキさんに今まで大事に可愛がってもらっていたのだけど、そこにお姉ちゃんが現れて、ヒノキさんの寵愛が奪われた。だから、あなたはお姉ちゃんを恨んでいる。こういう事なのよね」

シロ(ボクの心を読んだのか?)

シロ(翔花)「読まなくても、あなたは自分の感情を垂れ流しているじゃない。口にはしなくても、態度を見れば丸分かり。忍びに徹しきれていないわね。だから、お前は未熟なのだ、と師匠がいれば怒られるわ。それとも、師匠はあなたのお父さまかしら。今はもう亡くなったみたいだけど」

シロ(それ以上、口にするな。さもなくば殺す)

シロ(翔花)「おお、怖い怖い。弱い犬ほどよく吠えるって言うけれど、ネコも同じなのかしら」

シロ(許さない許さない許さない。ガルルルル)

シロ(翔花)「あら、これ以上イジメると錯乱しちゃいそうね。私が闇の魔女なら、あなたの闇を引き出して同胞を増やす機会に変えるところだけど、私の目指すのは灰色だから、バランスを重んじてあげる。いい? 私があなたに提供するのは元の暮らしなの。お姉ちゃんがこの塔からいなくなれば、あなたにとって都合がいい。私もヒノキさんの手からお姉ちゃんを解放するのが目的だから、お互いにWinWinになれると思うわ。感情に流されず、冷静に考えなさい。あなたがどうすべきかを」

シロ(ボクはアリナ様を裏切らない)

シロ(翔花)「それで、あなたの居場所をお姉ちゃんに奪われるようなことがあっても?」

シロ(ボクはアリナ様を裏切らない)

シロ(翔花)「頑固な子ね。そして愚か。自分の欲望に従えば、楽になれるのに。いいわ、あなたとこれ以上、喋るのも時間の無駄だし、面倒くさい。もう一度眠りなさい。今の問答は夢に流すようにしてね。このまま、いつまでもジレンマに苛まれると、気が狂いそうになるから。あなたの忠誠心そのものは嫌いじゃないわ。お休みなさい」

シロ(ZZZ)

******************************

シロ(翔花)「さて、役立たずな邪魔者は眠らせたので、次の手を考えるとしましょう。クンクン、お姉ちゃんの匂いがする……って、そんなに都合よくしないし。塔の主のヒノキさんの匂いは至るところでするんだけど、それはそれで本人を探すのには役に立たないし。ここは、お姉ちゃん流の作戦で行きますか。すなわち、闇雲に歩き回るTHE行き当たりばったり大作戦。考える材料がなければ、とにかく動いてみるしかないのも道理だもんね。地上への上り階段はどっちかなあ。憑依した肉体の知識や記憶を引き出せれば楽なんだけどね。今の私には無理。カーラ様トロイメライ様のような憑依のプロじゃないもので」


ズンズンズンズン。


シロ(翔花)「何、この地響きのような足音。巨大なモンスターが接近してる?」

巨漢「何だ、シロ。こんなところにぼんやり突っ立って。体調でも悪いのか?」

シロ(翔花)「え? もしかして今の足音って、ゲンブ……さん?」

巨漢「さん付けだと? どういう風の吹き回しだ。いつもは呼び捨てなのに」

シロ(翔花)「あ、ああ、ゲンブ……さんざんな目に合ったようだな、あの粉杉翔花の奴に」

ゲンブ「何だ。まだ、そんなことを言っておるのか。このジェネラル・バックラー、あの粉杉殿との戦いで、古い自分の殻を打ち破った気がするのだ。こういう想いは、アリナお嬢さまと戦ったとき以来。我が剣と楯を捧げしはアリナ様、忠義に二心はないと言えど、アリナ様がご友人とされている粉杉殿のために働くのは、真っ当な信義と言えよう。あの戦いの際に出会った白新星殿も、つかみどころはないが、一本筋の通った御仁であった。このコンパーニュが彼らと同盟を結ぶのに、我はいささかの不満もござらん」

シロ(翔花)「お前がそこまで評価するなんて……その言葉、信じていいのか」

ゲンブ「もちろん信じてくれて構わん。我としては、お前が粉杉殿を必要以上に警戒して、ああいう態度を取るのが気になってな。もちろん、アリナ様の粉杉殿に対する入れ込みようは、いささか度が過ぎているようにも思えるが。お前の懸念も分からんでもない。とは言え、まずはお前の方も警戒心を引っ込めて、穏やかに接してみてはどうか。粉杉殿の人となりが分かれば、お前の心配も解消されると思うぞ」

シロ(翔花)「へえ、なかなかいい人みたいじゃない、ジェネラル・バックラー……って」

ゲンブ「ん? ああ、粉杉殿の話だな。もちろんいい人だ。お前が我の言葉に少しでも耳を傾けてくれるとは、そう言い続けた甲斐があったというもの」

シロ(翔花)「完全に骨抜きみたいだね、お姉……いや、粉杉翔花の奴に」

ゲンブ「まあ、そう言うな。一度、剣を交えて相手の資質を知るは、武人の流儀。お前も試合の形でいいから、粉杉殿とやり合ってみてはどうか。悟るものがあるやも知れぬ」

シロ(翔花)「そうだといいけどね。あまり期待できないけど」

ゲンブ「我と同様、お前も頑なだからな。だが、コンパーニュの方針としては、新星殿や粉杉殿と連携する方向で話が進んでおる。アリナ様も新星殿と連絡を取り合っているようだしな。我には分からんが、TVのヒーローの話で意気投合したらしい。最近出るソード・ワールドの新作の話でも、アリナ様は新星殿からいろいろ聞きたいらしい。新星殿が夏は仕事で忙しいみたいだから、タイミングが取りにくいことを嘆いておられたが、秋になれば時間の融通もできるだろう、とおっしゃっておられた。我も二人の話を理解できるように、じっくり構えて勉強せねば、と思うておる」

シロ(翔花)「そういうものか。ボクには分からないが(私には分かった。ゲンブさんは裏表のない本当にいい人。ヒノキさんも、それほど悪い人じゃないのかも。お姉ちゃんに対するイヤらしい目つきとヒヒヒ笑いさえなければね)」

ゲンブ「それにしても、シロよ。いつもと何だか雰囲気が違うと思ったら、よく見るとメガネなんかを掛けていたのか。お前の体が小さいので気付きにくかったが、そんな物を付けるとはどういうことだ。忍びの修練と、アリナ様のためのデザート作り、薬剤調合にばかり夢中なお前が、まさか娘御らしいファッションににわかに目覚めたとも思えんが」

シロ(翔花)「あ、ああ。これは、そう、忍びの修練の一環だ。いわゆる変装活動って奴。だが、度の合わないメガネを使ったので、いろいろぼやけて、ふらついて困る。忍びの修行も一筋縄ではいかないってことさ。そのうち慣れるが、それまではふらついて、おかしな言動をとるかもしれない。雰囲気を変えるのも変装の一環ってことで分かってくれ」

ゲンブ「そういうものか。忍びの道というのは武人の道にも通じると思っているが、時々よく分からんこともある。まあ、お前の父親の先代ビャッコ、Variant Coder(多彩なる調律師)も変幻自在でつかみどころがなかったが、忍びとはああいうものかも知れん。それに比べて、お前は我に似てしまったのか、柔軟さに欠けるところが心配だ。Byplay Acolyte(側仕えの見習い巫女)を名乗るはいいが、そろそろ自分の殻を破って成長を果たす時期に来ているのかもな。粉杉殿の修行に付き合えば、お前も何か得るところがあると思うが」

シロ(翔花)「ボクは未熟だからな。未熟同士が馴れ合ってもどうかと思う(私は今も成長真っ最中だから、このメスネコにいろいろ教えてやってもいいわよ。素直に教えを乞うならね。感情垂れ流しの忍びじゃ、ちっとも忍んでないので、未熟なのは明らかだし)」

ゲンブ「未熟だからこそ、ちょっとした機縁で飛躍的に成長できると思うのだがな。要は、自分の節度を保ちながら、その機縁を大切にできるかどうか。抑えるべき感情を制御できねば、機縁さえつかみ損ねることになる。機縁が得られなければ、成熟できぬまま世を去ることにもなろう」

シロ(翔花)「説教はいいって。それより、アリナ様がメガネンジャーとやらのファンだってのは本当なのか? ボクのメガネの変装も、そうなんだが。知力の戦士メガネシルバーとか」

ケイP『そ、それは危険です。よりによって、メガネシルバー、翔花2号ママのコスプレとは、ただでさえ物騒なビャッコさんが、ますます恐ろしいことになりそうで……』

シロ(翔花)「え? KPちゃ……いや、このネコ耳ハロだか、ドゴランボールだか、よく分からん怪物体がどうしてゲンブと一緒に?」

ゲンブ「ああ、もちろん、こ奴は我の騎士道の弟子だからな。新星殿に武芸と騎士道の修練を頼まれたゆえに。こ奴の兄者は生意気で腹立たしい存在であったが、代わりに送られてきた弟御は素直で、教え甲斐がある。しかも、我の苦手なITだか、情報機器の知識も豊富でな。映画以外のTVのヒーローについても補完するのを手伝ってくれるのだ。目下は、我を打ち倒した『仮面ライダークウガ』について学習中だ。これでアリナお嬢様の酔狂にも、少しは合わせてあげられると思うのだが、どう思う?」

シロ(翔花)「そんなの私が……いや、ボクが知るか。それよりも、そのネコ耳ボール、少しボクに貸してくれないか?」

ゲンブ「それはまた、どうしてだ。自分と同じネコ耳が気に入らん、とか、一人称がかぶるから変えろ、とか、嫌っているとばかり」

シロ(翔花)「そ、それでもアリナ様の客人だからな。ここの作法ぐらいは教えてやらねば、と思ってみたりするわけで。とにかく、ボクはそのドゴランボールと少し話がしたいだけだ」

ゲンブ「と言ってるが、どうだ、ケイPどの?」

ケイP『ああ、私としましては、ビャッコさんと2人きりというのは少し怖いというか、命の危険を感じるわけで。しかも、そのメガネを付けた姿には、トラウマ級の恐怖を覚える次第。ミストレスの底深い闇とか、ムチの痛みというか、ハアハア、身震いを禁じ得ません。そこは勘弁願えないでしょうか』

シロ(翔花)「……怯えさせたことについては謝る」

ケイP『いや、ビャッコさんに謝ってもらっても、私のトラウマの原因はミストレスにあるわけで、あの恐怖に比べれば、多少の試練など……いいです。私がこの試練を乗り越えることで、ビャッコさんの翔花ママに対する敵意が少しでも解消されるとおっしゃるのなら……』

ゲンブ「そんなに怯えるなら、我も立ち会おうか」

シロ(翔花)「ゲンブは風呂にでも入って来たらどうだ? 何だか汗臭いぞ。大方、剣術の修練でもして来たんだろう」

ゲンブ「さすがに臭うか。それでは、お言葉に甘えて浴場に行くとしよう。地獄の業火風呂の熱気にでも当たりながら、至福のくつろぎタイムを満喫するかな。ガハハハ」

******************************

シロ(翔花)「行ったわね。さて、KPちゃん、私のことが分かるかしら」

ケイP『え? その聞き覚えのある話し口調。もしかして、もしかすると、もしかしたら、ゲーーーーーーーッ。ミ・ミ・ミストレスッッ!?』

シロ(翔花)「シッ、声が大きい。周りに気づかれたらどうするの。大人しくしないと、シーダー・ウィップをお見舞いするわよ」

ケイP『騒ぎませんです。トホホ、せっかく1号ママのお付きになって、2号ママの鞭打ちから逃れることができたと思ったのに、こんなところまで追いかけてくるなんて』

シロ(翔花)「別に、あなたを追い回しているわけじゃないわ。それに、そんなに怯えなくてもいいじゃない。あなたをムチでイジめたのは、あれ一回だけなんだし」

ケイP『その一回が取り返しのつかないトラウマになることだって、人生あるんです。信頼していたママが狂気に駆られて、DVを仕掛けて来るのは、それだけで恐怖。しかも、その姿はどうしたんですか? ビャッコさんに変装したんですか?』

シロ(翔花)「体を乗っ取ったのよ。憑依術でね」

ケイP『何ですか、その幽霊だか、闇の魔道士だかの専売特許を普通に、さらっと言ってのけるのは』

シロ(翔花)「何よ。これぐらい精霊少女のたしなみよ」

ケイP『絶対に違います。少なくとも1号ママは、他人の体を乗っ取るようなマネは決してしません。体を乗っ取るなど、悪霊とか、邪霊とか、亡霊とか、死霊とか、そっち系の技でしょう? クラシックD&Dの青箱エキスパートルール15ページにも「他者の肉体を乗っ取るのはカオティックな行いである」と明記されています。ビャッコさんの同意が得られているなら、ともかく』

シロ(翔花)「この頑固なメスネコが同意なんてするはずがないじゃない。とにかく、そういう倫理感がどうこう言っている場合ではないわ。お姉ちゃんがピンチなの。私はお姉ちゃんを助けないといけない。だからKPちゃんも手伝ってちょうだい」

ケイP『そ、そいつは一大事。でも、何がどうピンチなのか説明してもらわないと』

シロ(翔花)「詳しい話をしている時間はないけど、アダルトモードに変身したヒノキさんが、お姉ちゃんをベッドに連れ込んで、ああいうことや、こういうことをしようとしているの。いわゆる乙女の危機って奴よ。早く止めないと、純真無垢なお姉ちゃんが傷物にされてしまう」

ケイP『そういう状況は、当ブログの品位からすれば有り得ないと考えますが、ミストレスのいけない妄想が先走りしすぎているのでは?』

シロ(翔花)「知力の翔花2号に限って、それはないわ」

ケイP『いや、そういう自信満々な2号ママは、絶対に勘違いしまくっていることは実証済みです。マスターもそうですが、暴走妄想モードに陥っているときは、是非ともお止めしないと』

シロ(翔花)「KPちゃん、邪魔をする気? だったら、例えあなたと言えど容赦しないわよ」

ケイP『ああ、これは2号ママが長期間マスターNOVAと引き離されている時に陥るルナティックなミストレス・モード。一度これが発動すると、私には止めることなどできません。ご命令のままに』

シロ(翔花)「そうと決まれば、お姉ちゃんのところに急いで向かうわよ。あなた、この塔のことには詳しいんでしょ。案内してちょうだい」

ケイP『御意。トホホ、一体どうなることやら』

(次回、翔花2号VS日野木アリナ。コンパーニュの塔を舞台に、翔花1号を巡る時空を越えた対決予定。温泉編はこれにて完。「翔花外伝・時空天翔編」につづく)

*1:5月の連休明けぐらいかな。

*2:ロードス島戦記』に登場する古代魔法王国の女魔術師カーラのこと。サークレット(額冠)に自分の意識を封じ込め、人の肉体を乗っ取ることで延命して来た。一つの勢力が世界を統一すると、その後の反動による崩壊劇で大きな悲劇が生じる可能性を懸念して、ロードスの統一を防ぐべく歴史の影で暗躍する。秩序と混沌の天秤をバランスよく揺らすことで中立を保つことを信念とする。神や魔神レベルではないけど、ロードス最強の魔女との評価も

*3:NOVAの書いた『プレ・ラーリオス 夜明けのレクイエム』に登場するトロイメライのこと。500年前の月の星輝士で神候補であったが、歪められた儀式の最中に想い人に殺害され、妄執のために邪霊化。儀式の正常化という大義と、想い人への未練と復讐の矛盾した感情に突き動かされ、今世の儀式の影で暗躍。本来の影の星輝士の肉体を乗っ取り、主人公カートの夢に干渉して、自身の計画を果たす駒にすべく暗躍している。カートはトロイメライの策謀に唆されながらも、自身の正義を貫こうとするが……。

*4:W翔花の話は6月7日から。メガネンジャーは6月16日から。