花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、TRPGの魔法研鑽を展開予定。

クロスボーンガンダム(ゴースト&DUST)の話

スパロボ話からの寄り道

 

NOVA「前回は、スパロボYの話を進めていたはずが、うっかりガンダムコミックの世界に迷い込んで、クロスボーンガンダム時空に突入してしまいました」

ヒノキ「スパロボに参戦した『鋼鉄の7人』までは、前回の記事で語り済みなのじゃな」

NOVA「これ以降の作品参戦を期待しながら、今回は主人公のトビアがカーティス・ロスコを名乗るようになったゴースト以降のコミックシリーズを振り返ってみたいと思います」

 

4.ゴースト(UC1053)の話

 

NOVA「『鋼鉄の7人』は2007年に終了しましたが、シリーズ4作めの『ゴースト』は5年後の2012年から2016年まで続いた長期作品。単行本12巻、全53話におよぶストーリーは、話数がシリーズ最長になります。時代はVガンダムと同じUC1053年。元々、逆シャアが0093、F91が0123、Vガンダムが0153で、30年置きに新時代のガンダムが生まれるという世界観があって、その隙間を埋めるように逆シャア以降のUCやNT、ハサウェイが作られたり、F91の10年後を描いたクロスボーンなんかも後付けで描かれたわけですが、『鋼鉄の7人』は作品中に、後のVガンダムに登場する技術(光の翼)のプロトタイプも登場したりして、宇宙世紀における技術発展の設定なんかも楽しい作品だったのですね」

シロ「その結果、前作から17年が経過した未来の物語として、『ゴースト』が描かれたのが、リアルで13年前ですか」

NOVA「『ゴースト』の最大の特徴は、トビアが主人公ではなくて大人のカーティスとして登場。新たな主人公は、サイド3出身のMSマニアなネットオタクの高校生フォント・ボー。宇宙世紀で最も未来であったVガンダムの時代だけあって、インターネットやヴァーチャルAIのハロロというマスコットキャラが登場するなど、何だかサイバー感覚に満ちた新鮮な宇宙世紀の世界観になってます」

ゲンブ「Vガンダムは1993年の作品だから、まだインターネットが一般化されていない世界観だったでござるが、『ゴースト』の技術レベルはそれよりも21世紀寄りにブラッシュアップされている、と」

NOVA「メガネのオタク高校生が、かつてのベルナデット(本名テテニス)にそっくりな少女ベルと遭遇して、また木星共和国の特殊部隊『蛇の足(セルピエンテ・タコーン)』のリーダー、カーティス・ロスコと関わっていくことになる」

シロ「蛇の足というのは、存在しない秘密組織という意味合いですね。その組織が以降、新生クロスボーンの母体として、女王テテニスの密命で動く影の軍団だ、と」

NOVA「ゴースト以降のクロスボーンシリーズでは重要な組織名だな。カーティスはもちろんトビアが大人になった姿で、歴戦のMSパイロットとして強いわけだが、『鋼鉄の7人』の終盤で失明したという弱点を抱えていて、周囲の音を敏感に察知する能力と持ち前のニュータイプの勘でエースパイロットとしての腕前を発揮しつつも、弱点を突かれるとピンチに陥るアンバランスな設定となっている」

ゲンブ「目が見えないので、音で敵を察する凄腕の戦士……となると座頭市でござるな」

NOVA「当初は、MSに関するマニアックな知識やメカの素養はあってもパイロットとしての経験が全くない素人のフォントが、ベルやカーティスの関わる事件に巻き込まれて、MS操縦はカーティスの力量頼りだったんだけど、目の見えないカーティスの視力を補うべく、ベルやフォントがフォローすることでピンチを乗り越える展開もあった。

「物語のテーマは、人を溶かし殺す宇宙細菌エンジェルコールを巡る争奪戦で、シリーズ中で最もグロテスクな展開のある作品だったりもする。また、Vガンダムの敵ザンスカールの非道(ギロチンによる公開処刑)なんかもあって、複数勢力が跋扈する後の宇宙戦国時代に通じる複雑な背景事情が描かれて、敵味方の関係がシンプルだった無印と比べて、非常に入り組んだ長編ストーリーとなっている。

「明朗快活な熱血少年が主人公だった前作までと違い、陰キャラのメカオタクが自分を慕う可愛い女の子のために奮起する傾向の作品で、主人公の武器は操縦技術ではなく観察力。しかも、当初は愛機を持たないサポートキャラ。それでも、天才的なハッキングの腕を買われて、敵に狙われたり、スパイ組織の活動で重宝されるなど、パイロットよりも技術サポーターとして活躍する変わり種主人公だと」

シロ「スパロボに登場すると、かく乱なんかが使えそうですね」

NOVA「当初の主人公機は、銀色に塗られたクロスボーンガンダムX-0。カーティスが駆る機体で、本来はX3として配備される予定だったのが、原因不明の事故で輸送船が行方不明となって、実験機であった予備の機体がX3として急遽、実戦運用されたという後付け経緯がある。後年すべてのクロスボーンガンダムが大破した後で、行方不明だった本機が発見されて、機体に愛着のあるカーティス専用機として使われているけど、性能的には時代遅れとなっていて、パイロットの腕でまかなっているという設定」

シロ「スパロボで登場すると、残念な性能の前座機体になりそうですね」

NOVA「一応フルクロスとして後に強化はされるんだけど、機体の最大の特徴は操縦席が盲目のカーティスに合わせて、センサー情報を立体音響に変換するシステムだな。ともあれ、過去に失われたクロスボーンガンダムが幽霊のように甦ったという意味で、フォントが『ゴースト』と呼称するんだけど、フォントの愛機としては敵の特殊部隊サーカスから奪取した『ファントム』の方になる」

シロ「X0は時代遅れの古い機体であるのに対し、ファントムは新世代の機体ですか」

NOVA「こっちの特徴は、V2ガンダムの持つ光の翼を彷彿とさせる、炎のように揺らめく光の翼『ファントムライト』だ。非常に不安定で、爆発的な攻撃力と防御力を発揮できる反面、制御が非常に難しく、それをコントロールするためのコンピューターも未完成で、実戦運用できない試作型実験機だったのを、フォントが持ち前の技術で解析、高性能AIのハロロのフォローもあったおかげで、起動に成功して、素人が操縦してもファントムライトによる対ビーム無敵仕様と試作型ミノフスキードライブによる高出力で、熟練パイロットにも太刀打ちできる新型機として誕生した」

ヒノキ「つまり、コンピューターの達人でなければ、まともに制御できないピーキーな機体、通常は欠陥機とされるような実験機なのじゃな」

NOVA「クロスボーンで暴走するような機体は、ファントムが初ですね。既存のロボットアニメだと、レイズナーの方向性になるかな。AIが操縦を補佐してくれて、V−MAXというバリアに包まれた高速移動モードがパイロットの意志に関係なく発動する仕様。まあ、レイズナーV−MAXは緊急時の機体脱出システムという目的があってのことだけど、ファントムの不具合はそういう目的ではなく、複数のシステムや未完成のテクノロジーを際限なく盛り込んで、それを制御する方法については、考えていなかったゆえ、と」

シロ「その後、ファントムはXー0のパーツで補強改修したゴーストガンダムになるそうですね」

NOVA「その前に、可変機構の蜃気楼鳥(ミラージュ・ワゾー)モードに変形できるようになって、ゴーストガンダムにも受け継がれたけどな」

NOVA「ストーリーは、地球編でのシーブックや、リガ・ミリティアや、ザンスカールや、オリジナル敵のキゾ中将らを交えて盛りだくさんだが、ここではいろいろ割愛して紆余曲折。最終的にはエンジェルコール事件は解決したものの、フォントとベルはコールドスリープで15年後の世界まで眠って、続編に続くという形でまとめよう」

 

5.DUST(UC0168)の話

 

NOVA「2016年に終結した『ゴースト』の4ヶ月後、同年から2021年まで連載が続いたのが『DUST』。話数は全52話で前作より少ないですが、単行本は1冊多い13巻でシリーズ最長と言えます。ゴーストとDUSTが長大で、これ以降は2巻で終わる短期連載(12話分)が続いて、作品スパンが短くなっていますな」

ヒノキ「今度の主人公機は、ダストガンダムというのか?」

NOVA「いいえ。主人公機は、アッシュ・キングが操るアンカー(イカリの意味⚓️)。ダストというタイトルは、宇宙戦国時代の群雄割拠する武将的なMSパイロットとを『無数の塵芥(ダスト)』に例えたことで、ロボット番組で言えば『ボトムズ(底辺野郎)』に近い蔑称です。また、終盤で主人公が敢行する作戦名が『DUST計画(スペースコロニーの降下による無謀な移民作戦)』だったりして、いろいろと豪快な物語になっていますね」

ゲンブ「宇宙戦国時代とは聞き慣れない言葉でござるな」

NOVA「初出はVガンダムですね。宇宙世紀140年代以降は、宇宙移民の数が地球在住の人間の数を越えて、地球連邦によるスペースコロニーの統制がもはや不可能になり、コロニー国家がどんどん独立を遂げていき、その一つがVガンダムのメイン敵であるザンスカール帝国だったのですが、結局、そこから先の宇宙世紀の物語は描かれなくなり、宇宙戦国時代というワードもお題目だけだった感じでした」

シロ「ザンスカール以外のコロニー国家がほとんど取り上げられず、スペースコロニー間の戦争を地球連邦が止める権力を持たないゆえの乱世という物語背景を、Vガンダムでは描ききれなかったわけですね」

NOVA「ガンダムの物語の大筋は、ジオンVS連邦、スペースノイド(宇宙移民)VSアースノイド(地球在住民)という対立背景があって、宇宙VS地球という構図だったのが、地球連邦という組織が衰退し、宇宙の覇権を握る、あるいはサバイバルを目的としたスペースコロニー間の対立関係を意識したのがVガンダムでしたが、この段階ではまだ宇宙VS地球が変わらず続いていた。

「コロニー間の競争や対決が本格的に描かれたのは、アナザーガンダム第1号のGガンダムにおいて。各コロニー国家がガンダムを作り、ガンダムファイトというルールの下で、地球をリングとして覇権をかけた対決をするという設定は、当時も今もぶっ飛んでいると思われたが、宇宙戦国時代というキーワードに忠実な世界観だったとも言える」

ヒノキ「Gガンダムという異なる世界観(未来世紀FC)を用意しなければ、コロニーが地球に対して優位で、コロニー間の覇権がストーリーの基軸というストーリーを作り得なかった、と」

 

アナザーガンダムへの寄り道

 

NOVA「宇宙世紀では、どうしても地球連邦という設定を切り捨てることができなかったんですね。続くガンダムWでも、各コロニーが5体のガンダムをそれぞれ作って、地球を支配するOZに対するテロリズムを行い、ガンダムが地球にとっての敵であるという構図を生み出します。それまでは、ガンダム地球連邦軍の製作したMSという前提だったので、主人公たちが敵役、侵略して暴れ回る側という物語は、Gガンダムとは別の意味で、ガンダム界の革命だったと考えます」

シロ「次のガンダムXでは、ガンダムを作ったのは地球だったけど、地下に眠っていたGXをガロードが再起動させた後は、バルチャー(野盗や傭兵、無法者とも称される民間の自由な武装集団。非正規軍)の一つであるフリーデンの所属となって、対立するバルチャーや、地球連邦の刺客とニュータイプの少女ティファを巡る戦いを繰り広げる作品になっていますね」

NOVA「主人公がバルチャーに所属するので、連邦の作ったガンダムを非正規に奪う形になるが、それでも主人公側が正義に位置づけられるのはフリーデン艦長のジャミルが元々、連邦のガンダムパイロットで、前の大戦で宇宙革命軍との決戦の際に、地球文明を崩壊させる原因の一因になった罪滅ぼしのため、ニュータイプ保護の活動を行っているという背景がある」

ヒノキ「Gガンでは、コロニー同士の対決がテーマ。ガンダムWは地球に対するテロリストとしてのガンダムガンダムXは元地球連邦のエースが率いる無法集団が運用するガンダム。実に三者三様じゃのう」

NOVA「そして同じXを象徴するクロスボーンガンダムの海賊設定は、GXに近いものがありますね。クロスボーンが94年発表で、96年のGXよりも早いですが、宇宙が物語のメインのクロスボーンと、宇宙は終盤のみに登場してメイン部隊は地球のGXといろいろ対比は可能。ただ、GXと、間を置いた次回作のターンAガンダムは『かつて地球文明を崩壊させた悪魔の兵器と呼ばれたりもする、地下から発掘されたガンダム』『月が物語上、重要な位置づけを示す』という共通点があったりします」

 

ヒノキ「何だか気付けば、旧世紀のガンダム史を辿っておらんか?」

NOVA「宇宙戦国時代というキーワードが、どう扱われたかの話をしようとしたのですが、結局のところ、それを描写し得たのはGガンダムのみでしたね。他は結局、地球VS宇宙の構図に戻りながら、主人公の立ち位置が反地球だったり、第3勢力的な無法者(自由勢力)だったり、地球に帰化した月出身の少年だったり、いろいろな作品世界に展開されていきました」

シロ「21世紀最初のガンダム作品であるSEEDは……」

NOVA「ああ……その話を展開すると、とんでもなく長くなりそうなので、割愛だ。TVを追うだけでも、『SEED』『デスティニー』『00』『AGE』『Gレコ』『オルフェンズ』『水星の魔女』『ジークアクス』まで語らないといけなくて、あと『ユニコーン』『ハサウェイ』『サンダーボルト』『NT』もTV放送したことはあるな。

「とりあえず、一つだけ確かなのは、Vガンダムの時に出てきた『コロニー国家間の対決を描いた宇宙戦国時代の構想が、Gガンダム以外はあまり定着しなかった』ということだ。どうしても地球VS宇宙の対立が物語の主軸になって、例えば、サイド1VSサイド2の覇権をかけた激突にはならない。Vガンダムザンスカールは、サイド2を拠点とする新興国家だが、地球侵攻に走ったから、結局、地球VS宇宙にしかならない。これで、反ザンスカールを掲げるコロニー国家が2つぐらい出て来れば、違うガンダム史が生まれたのかもしれないが、そういうコロニー国家(組織)同士の覇権争いは、アニメよりも『ギレンの野望』(シリーズ初作は1998年)みたいなゲームの題材として扱われることになる」

ヒノキ「複数勢力の乱立は、アニメで描くのは分かりづらいってことじゃな。せいぜい3つ巴ぐらいが妥当なところか、と」

NOVA「結局は、アナザーガンダムも含めて、地球VS宇宙の対立構造に主人公勢がどういう位置づけをとるかってことですね。地球連邦が弱体化して、宇宙への干渉ができなくなって、連邦の歯止めがなくなった宇宙の国家間対立で、群雄割拠している地球圏という構図は、宇宙世紀ではDUSTで初めて深掘りされた、という結論です」

 

宇宙世紀の一番先の未来

 

NOVA「公式設定で、宇宙世紀ガンダムの一番未来のアニメ作品は、VガンダムのUC153年とされて来ました。その先は、たとえばターンAガンダム黒歴史という形で、それまでのガンダムシリーズの全てを網羅した先の未来だったり(だけど地球の文明レベルは一度、19世紀の産業革命前後に巻き戻っている)、ガイアギア(宇宙世紀203年)やGセイバー(宇宙世紀223年)といった非ガンダムレーベルに連なっていたり、『Gレコ』が当初は宇宙世紀とターンAの間に位置づけられる話という設定だったのが(今でもこれが公式のはず)、富野監督が『GレコはターンAの先の未来と考えている』発言をして、サンライズ公式との間に矛盾が発生したり、どの設定を採用するかは公式でも曖昧に(後から変わる可能性もある)なっています」

シロ「ええと、『ガイア・ギア』は87年から91年の間に発表された富野さんの小説ですね。『逆襲のシャア』が88年公開で、その110年後を舞台にシャアのクローンを主人公にした続編物語ということになりますが、その後、F91Vガンダムが製作されることで、ガンダムの公式からは排除されることになります」

NOVA「あくまで、富野さんの手による2次創作という位置づけだな。まあ、そこからシャアのクローンであるフル・フロンタルの設定が派生的に登場して、そっちは公式扱いになったりして、マニアックなイメージの元ネタ扱いはされたりもするが、グレンダイザーにおける『宇宙円盤大戦争』や、マジンガーシリーズにおける『ゴッドマジンガー』同様、関連はするけど異なる時間軸のパラレル物語と考えた方がいい」

シロ「『Gセイバー』は、1999年に製作された日米合作のCG&実写ドラマですが、ガイア・ギアとも異なる設定の未来ですね」

NOVA「ガイア・ギアでは、モビルスーツという言葉が使われなくなって、人型兵器はマン・マシーンと呼称される。一方で、Gセイバーの方はモビルスーツという用語を引き続き使っているが、ガンダムの登場しない宇宙世紀作品ということと、スペースコロニーという一般用語を〈スペースセツルメント〉という作品世界内の専門用語に置き換えて、地球連邦という組織は瓦解し、その後継組織が新地球派コロニーの〈セツルメント国家議会〉と宇宙を基盤にした体制権力となり、反体制派コロニーの〈セツルメント自由同盟〉と対立関係にある」

ヒノキ「地球VS宇宙という構図が、親地球の宇宙VS反体制派の宇宙に変わった、と」

NOVA「ガイア・ギアも、Gセイバーも同じ宇宙世紀の未来を描きましたが、作り手や製作背景が大きく異なりますし、ガイア・ギアとGセイバーの歴史がつながらないので、両方を取り込むことは困難です。ともあれ、宇宙世紀200年代になると、ガンダムという名前が使われなくなったけど、頭文字Gで名残りだけは残しているってことですね」

 

ゲンブ「で、公式には、クロスボーンガンダムのシリーズが、Vガンダムの時代を越えて、初の設定を生み出した、と?」

NOVA「クロスボーンガンダムの歴史は、宇宙世紀ガンダムの公式年表に組み込まれていますが、DUSTで未到の時代を描くに当たって、サンライズから要望として『作品の技術レベルをVガンダムの時代から進めるな』とお達しがあったそうで。その結果、DUSTの時代は宇宙戦国時代の影響で、MSの技術レベルが1年戦争からシャアの反乱の頃合いにまで低下。F91以降の小型モビルスーツやビームシールドなどの技術は維持や運用困難で、むしろ昔の大型機体の方がメンテナンスも簡単で、最新鋭のMSよりも旧態依然のポンコツMS、中古品の改修機が普通に溢れている世界観となったわけですね。

「改めて、主人公機のアンカーを確認すると、原型機はF89なんです。クロスボーンガンダムは、F91の続編企画から始まり、クロスボーンの形式ナンバーはF97。つまり、F91の発展したUC133年当時の最新機体ですね。その後、クロスボーンガンダムの物語が続くにつれて、30年以上前に作られた旧式MSという位置づけになるのですが、アンカーはもっと前の世代のポンコツ扱いです」

シロ「元々、F91とその前のF90は公式設定されていましたが、F89はDUSTで後付け設定として登場したようですね」

NOVA「アンカー最大の特徴は、大きくてパワーがある、ということです。ミキシング・ビルド(様々なパーツを組み合わせて独自に強化改修を図る)された機体で、原型機のF89が後のF90に継承される『ミッションパックによる換装システム』の原型を備えていたおかげで、後から武装を取り付けて、大型機のパワーを駆使して重武装の武器や作業用の工具を活用したゴリ押し機体になっています。スパロボ的にはこんな感じ」

ヒノキ「クロスボーンガンダムといえば、海賊が扱う隠密能力に長けた技の機体というイメージじゃが、アンカーは完全にパワータイプの機体ということか。系譜が全く異なる」

NOVA「主人公も、F91シーブックが偽名を用いたベテラン海賊のキンケドゥから、海賊少年トビアに受け継がれ、トビアが偽名を用いたカーティスになって木星共和国の秘密組織のリーダーになってから、次の主人公のフォントはメガネの天才技術者(オタク)という設定。そしてゴースト劇中で、ザンスカールのギロチンによる市民処刑のシーンがあって、そこで見せしめのために殺されそうになった少年たちをフォントが、ファントムを起動させて助ける見せ場があったのですが、そのフォントが助けた少年アッシュが次のシリーズの主人公に抜擢されるとは、ビックリです」

 

アッシュとレオの物語

 

NOVA「クロスボーンガンダムの物語の構造として、ベテランパイロットと新人パイロットのダブル主人公というのが挙げられます。最初はX1パイロットのキンケドゥがメイン主人公で、その活躍を描くとともに、成長する少年主人公としてのトビア・アロナクスの比重が高まり、やがて彼専用の最新MS、X3に乗り込んで、最終決戦に挑む展開」

シロ「X3はその戦いで大破するので、トビアは以降、キンケドゥさんから受け継いだX1に乗るんですね」

NOVA「その後、スカルハートの物語から、『鋼鉄の7人』までがトビアの活躍を描いて、その次に新世代の『ゴースト』になる、と。トビアは偽名のカーティスを名乗って、かつてのキンケドゥと同じ、いや、それ以上の年齢と経験を重ねたベテランパイロットのポジション。新たに成長する少年主人公となったフォントの義父にもなっていくわけですが、この世代を受け継いでいく物語というのも、長期シリーズならではの面白さですな」

ヒノキ「で、DUSTではフォントに助けられた少年が新たな主人公になる、と」

NOVA「アッシュはDUST劇中で26歳設定。つまり、クロスボーンガンダム時点のキンケドゥ(28歳)に相当する立ち位置です」

ヒノキ「少年主人公ではない?」

NOVA「ゴースト時点で13歳。当時18歳のフォント兄ちゃんに助けられた少年でしたが、ゴーストの最後でフォントがコールドスリープで15年分、歳をとらなかったためにアッシュの方が年上になっているのが面白いところ。前作主人公のフォントと、新主人公のアッシュ、さらにシリーズ通しての重鎮となってるトビア改めカーティスの絡みエピソードがまた面白いですが、宇宙戦国時代という背景にあっては、それぞれが異なる陣営になっていて、いつでも共闘というわけにはいかず、知人として協力することもあるけど、それぞれのしがらみで対立することもある。

「フォントが地球側の軍師キャラになって、カーティスは木星側の秘密工作員、そしてアッシュは自由な修理屋兼運送業(かつてのトビアが海賊の隠れ蓑としてスカルハート時代に経営した流れ)を営みながら、コロニー国家の領主と関わり合いながら、宇宙戦国時代の様々な側面を描く物語です」

ヒノキ「アッシュは最初からベテランのパイロットとして、豪快な若者兄ちゃんのように描かれておるのじゃな」

NOVA「ええ。そして従来の成長する少年枠の役割を果たすのが、ボーイッシュな外見のヒロイン、レオ・テイルです。クロスボーンガンダムのシリーズで初めて、少女主人公の立ち位置になったキャラですね。アッシュに助けられた16歳の孤児の少女が、成長してアッシュを支える妻レオ・キングとして、女王となるまでの成り上がり物語とも言えます」

ヒノキ「女王じゃと?」

NOVA「ええ。アッシュが領主となって、人々を救って国興しをするまでになるエンディングですよ。この物語は、◯◯王やら姫やらがやたらと登場する世界観ですし、各国の領主と付き合って来たアッシュ(彼の祖父もサイド5の『太陽発電王』の異名を持つ大富豪)が、サイド1の領主の後継者として市民を守る役割を半ば押しつけられるような形で、持ち前のリーダーシップを発揮する展開に、終盤はなります。まあ、その前に人々の虐殺を目論む首斬り王を倒さないといけないのですが」

ヒノキ「つまり、世界観が宇宙世紀でありながら、中世ファンタジーで、武力さえ持っていれば、王さまになれるようなものか?」

NOVA「武力だけでなく、財力も、周囲にそれを認めさせるための政治的コネも、人々を信頼させて希望を与えるカリスマも必要ですね。物語の中で、そういう要素をしっかり描いて来たから、最後に王となっても納得できるわけですし、主人公の名前が王ですし、最終決戦が邪悪の王から自らの民を守って戦う流れだから、キングオージャーが王さまの物語であるなら、アッシュ・キングとヒロインのレオが王さまとしてハッピーエンドを迎えても納得できるというもの」

シロ「そもそも最初のクロスボーンガンダムでも、海賊少年が木星帝国のお姫さまを助けて、その伴侶に収まるまでの成り上がりストーリーですからね」

NOVA「本作の面白いのは、これまでが木星帝国の侵略から地球を守るとか、最初のラスボスの遺した地球破壊計画の遺産を受け継いだ者の野望から世界を守るとか、そういう大目的があったのに対し(短編エピソードは除く)、木星絡みのエピソードは極力少なめにして、宇宙戦国時代の世界観をいかにガンダムらしい面白さと、三国志のようなリアル戦記ものと混ぜ合わせながら、誰も手をつけたことのないVガンダムのその後の未来を魅せたかという点だな」

ゲンブ「敵の侵略から何かを守る、という物語ではない?」

NOVA「ラスボスの首斬り王の目的は、『この退廃した宇宙戦国時代には、どうせ未来などない。だったら、人類が滅亡するまで、欲望にまみれた虐殺社会を私は肯定する。みんな好き勝手に暴れてもがくといい。それこそが祝福だ』と絶望を振りまく狂人だ。まあ、長谷川裕一さんのコミックでは、そういう狂人ラスボスって多いけど」

シロ「格好いいラスボスよりも、頭はいいのにメンタル壊れた狂気のラスボスが定番って感じですね。主人公の前向きな力強さに論破されるだけのボスというか、背景的に同情には値するけど共感はできないレベルの狂い方というか」

NOVA「自らの狂気で、配下を洗脳する絶対悪の恐ろしさみたいなものが感じられるな。ただ、その狂った原因をしっかり理屈だてて説明するから、狂気を理解はできるんだ。それなのに、可哀想とは思えない辺り、やってることが身勝手すぎるから、言い訳にもならないという。それで、テーマが『崩壊しつつある宇宙世紀の閉塞感に、もう一度建設的な未来を与えられるか』ってことなんだな」

ヒノキ「DUSTの発表時期は、2016〜21年か。終盤はコロナ禍ともかぶっておるのう」

NOVA「殺人ウィルスの話は、その前のゴースト終盤の話なので、時期はずれてますが、DUSTは絶望した人間の陥る破滅願望の暴走になるのかな。その狂気がアッシュの過去のトラウマも刺激して、豪快無比な兄ちゃんキャラが心の壊れた機械みたいになって、そこに希望を取り戻させるヒロインのレオが良い仕事をしたというか、元はアッシュからもらった前向きの勇気をしっかりお返しすることで、アッシュにとってかけがえのないフォロー役にして牽引役(すなわち持ちつ持たれつの良きパートナー)として覚醒するドラマもいい感じかと」

 

ゲンブ「ところで国作りというテーマだと、スパロボYのエーアデントもそうではござらんか?」

NOVA「領国経営の物語という意味では、面白いと思うな。アッシュの場合は、運送業の社長という立場なので、国家経営に関しては、彼のクライアントの領主キャラ(ムーンムーンの姫カグヤや、農業王タガナスなど)との関わり合いで描かれる程度。でも、宇宙世紀160年代では、ランバ・ラルドズル・ザビといった過去の人物が有名武将扱いで人気があったり、ガンダム世界のパロディ要素を自由に入れつつ、過去にない世界観を見せてくれたのが良かった」

NOVA「そんなわけで、DUSTについて今さらながら語ってみたが、予想よりも長くなったので、続きは記事を改めることにしよう」

(当記事 完。続きはこちら