花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、戦隊考古学からスパロボY話に切り替え中。

恐竜&ファンタジーな戦隊考古学

今回はアバレンジャーから

 

ヒノキ「前回はアニマル戦隊と忍者戦隊の系譜をチェックしていたが、今回は恐竜戦隊について見ていく」

ハイラス「最初は92年のジュウレンジャーでござるが、その次の恐竜第2弾が2003年の『爆竜戦隊アバレンジャー』でござるな」

セイリュウアバレンジャーは確かにジュウレンジャーと同じ恐竜モチーフの戦隊だが、決定的な違いが3点ある」

ジュニア「3つもですかぁ? パッと見で分かるのは、ジュウレンジャーの初期メンバーが5人なのに対し、アバレンジャーは3人ということですねぇ」

セイリュウ「そうだな。ジュウレンジャーは恐竜戦隊と名乗りながら、ジュウマンモスやらサーベルタイガーやら、恐竜とは違う古代生物が2匹混ざっていたが、アバレンジャーはモチーフを完全に恐竜に統一していて、基本がティラノ、トリケラ、プテラの3頭だ」

ヒノキ「厳密には、プテラは恐竜ではなくて、翼竜に分類されるんじゃが、どちらも爬虫類じゃからな。哺乳類のマンモスやタイガーよりは恐竜寄りじゃろう」

セイリュウ「第2の違いは、ジュウレンジャーが古代の恐竜人であるのに対し、アバレンジャーの3人およびアバレキラーは現代人という点。つまり、ジュウレンジャー現代日本に戸籍を持たない亜人種の戦士であるのに対し、アバレンジャーは一般人が戦士に選ばれたヒーローということだ」

ハイラス「ちょうどギンガマンガオレンジャーの違いみたいなものでござるな」

セイリュウ「そして第3の違いは、ジュウレンジャーの守護獣が太古の伝説から甦った存在ながら、この地球の出身なのに対し、アバレンジャーの爆竜、および第4戦士のアバレブラックことアスカは、この地球と異なる異世界ダイノアースから来た、戦隊初の異世界戦士という点。そして、爆竜は地球の恐竜に似た形態のサイボーグ風進化生命体であり、かつ人間と普通に会話可能という点だ」

ヒノキ「それまでの戦隊は、宇宙出身とか、過去や未来、隠れ里の森を出身とした者はいたが、地球とは完全に異なる異世界を描いたのは、アバレンジャーが初ということじゃな」

セイリュウ「厳密には、異次元からの侵略者はいたし、ゲスト戦士に裏次元のディメンシア人というのもいたし、出自不詳のニンジャマンやガンマジンみたいなのもいたが、彼らの出身世界が劇中のドラマで登場することはなかった。それに対して、竜人と爆竜の世界ダイノアースは、我々の現代社会に相当する地球をアナザーアースと呼び、異なる星の歴史を紡いでいる」

ヒノキ「この辺りから、戦隊の物語は多元宇宙を考えるようになったのじゃな」

セイリュウ宇宙刑事魔空空間や、仮面ライダーBLACK RXの怪魔界など、他の特撮シリーズでは80年代から異世界という概念は普通にあったが、戦隊シリーズだけは異世界が物語の中心に位置づけられたり、自分たちの得意フィールドである異世界にヒーローを引きずり込んだりはしない。異次元出自の敵組織も、それゆえに神出鬼没な作戦を立てたりはしたが、異次元そのものが世界の根幹の一つとして、文化習俗が描かれることはなかった」

ヒノキ「異次元からの侵略者は登場しても、異次元における一般人の日常生活とか、異次元出身者と我々の世界のヒーローの日常交流が描かれることは稀じゃと」

セイリュウ「しかし、戦隊でもアバレンジャーから後は異世界という概念が多用されるようになり、その2年後の『魔法戦隊マジレンジャー』では、地上界と、天空聖界マジトピアと、地底冥府インフェルシアの3層構造になるなど、急速にファンタジー異世界という世界観が当たり前のように描かれていった」

ヒノキ「21世紀になって、CGによる異世界描写が行いやすくなった影響かもしれんのう」

 

パワーアニマルと爆竜の類似点と違い

 

セイリュウ「さて、パワーアニマルがこれまでの動物系戦隊にない多数の動物を登場させたのと同様、爆竜もパワーアニマルほどではないものの、過去にない10種類以上の恐竜を登場させている」

ヒノキ「1号ロボのアバレンオーは3体合体で、腕のみを爆竜武装で換装できる」

ハイラス「ガオキングと違って、脚部の換装はないのでござるな」

ヒノキ「ついでに、コアメカを換装して、ガオキングがガオマッスルになるような変形パターンもない。その意味で単純な合体ヴァリエーションは減っているが、前作の旋風神とアバレンオーには共通点がある」

ジュニア「3体合体という点ですかぁ?」

ヒノキ「それだけじゃない。ハリケンレオンと爆竜ティラノサウルスが胸部と下半身、片腕部といった合体ロボの大部分を占めている点。それは、内部に手動もしくはモーターなどによる回転ギミックを仕込んで、旋風神は文字どおり扇風機のような回転、アバレンオーはドリルその他の武装の電動ギミックを玩具で再現できるようになっているのじゃ」

ヒノキ「ハリケンジャーは天空神だけが電動ギミックで、ハリケンレオンの回転ギミックは手動」

ヒノキ「アバレンジャーは最初から電動ギミック採用で、ガオレンジャーのパワーアニマルによる百獣武装と、ハリケンジャーの電動回転ギミックの両方を踏襲した進化系と言えよう」

セイリュウ「1号ロボの5体合体が3体合体に減ったことで、合体ギミックとしては退化した感もあるが、それ以外の玩具ギミックの面で進化したということだな」

ヒノキ「動物系とは異なるが、玩具の進化としては翌年のデカレンジャーが光る鳴るの1号ロボとして、電気ギミックをさらに発展させておる。合体ヴァリエーションの上ではガオレンジャーが現在の最高峰といえるが、毎年、同じことをしていても仕方ないので、趣向を変えながらの進化発展の歴史が面白いと言えよう」

 

セイリュウアバレンジャーに話を戻そう。アバレンジャーの爆竜は、パワーアニマルの系譜を受け継いだ多彩さが特徴だが、生物ではあり得ない回転ギミックや体の分割変形を多用して、メカ生物っぽさを強調している。ここでは爆竜武装の数々を見てみよう」

ジュニア「なるほど。21世紀のロボは合体ヴァリエーションでの進化から、電動ギミックでの進化に舵を切ったのですねぇ」

 

メンバー最多の恐竜系戦隊

 

ヒノキ「アバレンジャーに続く恐竜戦隊は、2013年の『獣電戦隊キョウリュウジャー』じゃ」

ハイラス「ドクター・ウルシェードが出演していた作品でござるな」

ヒノキ「この作品の特徴は、ゴーカイジャーみたいな他の作品からのゲスト出演記念作を除いて、1作で最多のレンジャー戦士が登場したことにあると思う」

ヒノキ「一般的に戦隊メンバー最多人数を誇るのは、基本メンバーが9人のキュウレンジャーと言われておるが、追加メンバーはリュウバイオレット、コグマスカイブルー、ホウオウソルジャーで、総計12人。

「一方で、キョウリュウジャーの場合、基本メンバー5人に、6人めのキョウリュウゴールドがほぼレギュラーとなっているが、さらに準レギュラーのキョウリュウバイオレット、スピリットレンジャーと称されるシアンとグレー、そして司令官のトリンが変身する10人。ただし、バイオレット以降は初代と2代めがいるし、100年後の子孫が6人、さらに韓国で作られた続編のブレイブで6人が出演。そして、2年前のキングオージャーに絡んで、キングの息子の2代めキョウリュウレッドが出たおかげで、変身前の素顔の戦士が総計27人に達する。もちろん、27人の中には故人もいるし、役者が1人2役とか、一度に同時出演できないケースもあって、同時に最大出演したのは10人までじゃが、作品としての広がりはキョウリュウジャーの方がキュウレンジャーよりも上のために、時代を越えてたくさんの戦士が増えた形になる。この圧倒的な変身キャラ数を越えるのは、並大抵じゃなかろう」

ハイラス「物語や世界設定としての特徴はどうでござるか?」

ヒノキ「『強さを強調して、史上最強のブレイブをキーワードとする王道戦隊』『集まりの悪い戦隊を謳った最初の戦隊』となる。それまでの戦隊は、チームとしての絆を強調するために、『1人1人は小さいけれど、1つになれば無敵』とか謳っていたが、キョウリュウジャーは1人1人がブレイブな勇者、最強な連中が集まって無敵、中でもキングと呼称されるレッドは特訓の際に『強すぎて弱点がないことが弱点』とまで言われるほどじゃ。脚本・三条陸とメイン監督・坂本浩一でストーリー面でもアクション面でも、本当に隙がない超豪華な作品……と新兄さんは評しておった」

ハイラス「それは凄いでござるが、物語の特徴にはなっていないでござるな。例えば、ジュウレンジャーは古代戦士、アバレンジャー異世界ダイノアースというキャッチーなキャラ設定、世界設定のキーワードがあったが、キョウリュウジャーの場合は?」

ヒノキ「敵がかつて恐竜を滅ぼす原因となったデーボス軍で、それに対抗すべく賢神トリンがブレイブを持った恐竜を改造したのが獣電竜という設定。そして現在に封印から復活したデーボスに対して、トリンが獣電竜と同じブレイブを持つ戦士として召集した国際色豊かな現代人がキョウリュウジャーということになる。長年パワーレンジャーの監督も務めて国際色豊かな坂本監督の影響もあって、イアンやアミィ、弥生は(日本人が演じているのに)外国の血を引いている設定だし、逆に空蝉丸は日本の侍、それにスピリットレンジャーのラミレスはそのまま西洋騎士の幽霊で、鉄砕も中国拳法に関する身。つまり、異世界ではないが非常にワールドワイドな雰囲気を持った戦隊と言えようか」

セイリュウ「王道ゆえに、キャッチーとなる奇抜な設定はないが、分かりやすい悪の侵略種族と戦う、選ばれた現代の強い若者が豪快に敵を倒すアクション重視な戦隊ということだな」

ヒノキ「物語の特徴を敢えて言うなら、力の継承にまつわる親子、家族の絆をたびたび描いていると言ったところじゃろうか。キングと父ダンテツとか、ノッさんと妹および姪とか、高校生剣士のソウジとか、弥生と祖父とか、家族関係、そして作品テーマではないのに恋愛要素を描いた話も多い。キングに惹かれるアミィと弥生とか、ノッさんに惹かれるキャンデリラとか、ソウジに恋する一般人の少女・勝山りんさんとか、タイムレンジャーマジレンジャーに匹敵する程度に、ラブコメ風恋バナの多い戦隊じゃと思う」

セイリュウ「国際色豊かという点に加え、サンバのリズムに乗って踊りながら変身というのも、バトルフィーバー風味と言えるな」

ヒノキ「恐竜系戦隊としては、赤がティラノサウルスというのは定番となっているが、従来は青だったトリケラトプスがピンクになっていて、初期の5人に飛行型の翼竜がおらず、完全に恐竜という点。プテラノドンは6人めのゴールドが担当するようになったのが新基軸とは言える」

セイリュウ「1号ロボのキョウリュウジンは、胴体全部を構成するコアメカのガブティラに、左右の腕を構成するステゴッチとドリケラがカミツキ合体する3体合体ロボ。メンバーが5人なのに、ロボは3体合体なのがゴーグルロボやファイブロボを思わせる」

ヒノキ「アバレンジャーは初期メンバーが3人で、21世紀の戦隊で最も味方戦士の数が少ない戦隊と言えるが、最初のジュウレンジャーを除けば、恐竜系戦隊は1号ロボが3体合体という流れを作ったように思える」

ハイラス「コアメカに左右の腕だけ合体して、そこを違うメカに換装して、武装ヴァリエーションを作る。ガオレンジャー以降の伝統とも言えるでござるな」

セイリュウ「3体合体でロボが成立することで、ドラマ面でも第1話では3人だけが集まって、第2話以降に残りの2人が加入して、5人の初期チームが完成するのに時間が掛かるストーリーパターンが生まれることになった。これは旧世紀のジェットマンに見られたパターンだが、ジェットマンはメンバー5人が揃った後の6話めで初めて1号ロボのジェットイカロスが登場する」

ヒノキ「5体合体のロボの登場が遅いのは、ダイレンジャーもそうじゃな。大連王登場は8話じゃ。それまではずっと、レッド(リュウレンジャー)用の気伝武人・龍星王で巨大戦を担っておった」

ジュニア「ロボット商品の発売スケジュールとか、いろいろな都合があったのかもしれませんねぇ。ともあれ、キョウリュウジンはコアメカが何になるかで、2号ロボのプテライデンオー、3号ロボのプレズオー、そして4号ロボのギガントブラギオーまでが登場。他には夏の劇場版のスピノダイオーですかぁ」

ヒノキ「スピノダイオーは、キョウリュウジンのカラーリング違いに見えて、2体合体という簡略化バージョンじゃったのう。それを除けば、キョウリュウジャーの巨大戦力は分離メカが十大獣電竜と呼ばれて、戦士10人にそれぞれ対応した10体のみ。アバレンジャーの爆竜が、スティラコを含めて11体あるのに比べて、減ったことになる」

セイリュウ「しかし、キョウリュウジャーの場合は、巨大戦力以外にも変身アイテムや等身大武器と連動して使えるコレクションアイテム『獣電池』という形で、23種類の恐竜が採用されている(20番のアンモナイトという一部恐竜以外の古代生物もいるが)。つまり、劇中に登場する恐竜ヴァリエーションでは、アバレンジャーを越えて最多ということになろう」

ヒノキ「『獣電池』は、ニンニンジャーの忍シュリケンと同じく、巨大戦以外の等身大戦にも活用できる、その戦隊の特殊能力に関与する力の源じゃったな。ゴーカイジャーのレンジャーキー辺りから、変身アイテムなどとの連動で収録された音声を発する小物系なりきりアイテムの一環として、コレクション商品の一環を占めるようになっておる。ある意味、ロボ玩具とは別の視点から、10年代以降の戦隊を考えるうえでは重要な切り口かもしれん」

ジュニア「獣電戦隊って、作品タイトルにもなっている程ですからねぇ」

ハイラス「ドクター・ウルシェードも、獣電池のための音声収録の話をしてくれたことがあったでござる」

ヒノキ「ということで、キョウリュウジャーのロボ合体は、獣電池との連動で鳴り響くドクター・ウルシェードこと千葉繁さんの声を抜きにはできんのじゃが、1号ロボのキョウリュウジン自体は非常にシンプルな合体ギミックで、それだけだと特筆することはあまりない」

ジュニア「戦隊前作のブンブンジャーでも思いましたが、ボディのコアメカに両腕の武器パーツを換装合体するだけのギミックは、合体物としてのヴァリエーションを増産できる反面、見た目が大差なくて、あまり面白味がありません」

ヒノキ「腕だけ変えたのみで、後は映像演出でどのように印象を高めるか、じゃからのう。しかし、戦隊初のプテラノドン単独変形ロボであるプテライデンオーは、プテラゴードンが前後2体に分割して、それぞれ上半身と下半身に変わるうえ、キョウリュウジンの翼に装着して空中戦対応型になる。

「続くプレズオーは、プレシオサウルスという初登場の海モチーフの恐竜で、しかも宇宙船にまで改造されたプレズオンという形態が恐竜系戦隊でも独特の立ち位置を示し、昨年のキングオージャーとのコラボ映画でも、主人公たちの移動手段としての見せ場をもらっていた。キョウリュウジンと合体してバクレツキョウリュウジンという、第2のスーパー合体をも見せる。

「そして最後のブラギガスは、恐竜系戦隊伝統の最大恐竜ブラキオサウルスがモチーフでありながら、初の人型変形を示すロボ。大獣神の騎獣であったキングブラキオン、爆竜たちの母艦でありながら合体には関与しなかった爆竜ブラキオサウルスの系譜がさらに発展進化を遂げた感があって、正に『聞いて驚け』なギガント感がたまらない」

セイリュウ「スザクとしては、プテライデンオーが一推しではないか?」

ヒノキ「うむ、ドゴルドが操縦していたときのダーク形態も、ガオハンター的な強敵感を想起させて良い」

ヒノキ「そして、キョウリュウジャーまでの平成恐竜系戦隊は、一同に介した映画もあって、傑作なのじゃな」

 

ハイラス「それでは、次は『騎士竜戦隊リュウソウジャー』でござるな」

ヒノキ「いや、今回はここまでじゃ。令和戦隊は、また別枠で振り返ろうと思うので、今はリュウソウジャーは割愛。次はまた平成の動物モチーフ戦隊の続きに戻ろうと思う」

(当記事 完)