セイリュウ来訪
セイリュウ「今、来たぞ」
ハイラス「お久しぶりでござる」
ヒノキ「遅い。4月中に来るかと思いきや、もう5月ではないか。一体、何をしていたのじゃ?」
ジュニア「それより、父さん。肉体を失って、霊体になっていたはずなのに、どうして?」
セイリュウ「うむ。それはスパロボ出演決定記念で、奇跡が起こったのだ。まあ、怪獣王は時代が求めるときに、復活するということだな」
ハイラス「じっさいのところは、ウルトロピカルにいたケイPマーク1のボディをお借りしているのでござる。つまり、今のセイリュウ殿は『ゴジラinドゴラン・ボール』という状態であって、仮初の姿なのでござるよ」
ヒノキ「しかし、そんなことをして、ケイPの意識は壊れたりせんのか? コール・ゴッドの呪文で、神を召喚した場合、依代の魂はよほどの事がない限り、砕け散るというのがファンタジーの常識」
セイリュウ「その辺は、我も己が力をセーブして、この虚弱なボディの負担にならない程度に憑依を留めておる次第よ。言わば、今のこの身はセイリュウの分体、魂の一欠片を宿したに過ぎぬ。しかし、敵怪獣と戦うわけでもなく、TRPG雑談をするだけなら、この身でも十分であろう」
ハイラス「とは言え、セイリュウ様の魂をケイPボディに馴染ませるのに、相応の手間暇を要したのも事実」
セイリュウ「さらに、今回のスパロボ参戦が決まって、いろいろ慌ただしく動き回っていたしな。まさか、新作のトリを飾る大看板に扱われるとは思わなかったぞ」
ヒノキ「おかげで、わらわや亡きアンギラス殿まで巻き込まれて、敵役として出演させられる始末。ポンコツロボのジェットジャガーごときに退治されるとは心外なのじゃ」
セイリュウ「ラドンは、地球怪獣を裏切ってキングギドラの手下になったという前非があるからな。真の怪獣王に頭を下げたので、罰として仕事を選ばずに小物のザコ怪獣としてドサ回りするように命じたのだ。ガメラ怪獣のギャオスに負けないように、名前を売らないと、令和の時代には生きてはいけまい」
ジュニア「そう言えば、ラドンとギャオスってキャラがかぶってますねぇ」
セイリュウ「ラドンは飛行速度がマッハ1.5。ギャオスはマッハ3.5なので、実は飛行怪獣としてはギャオスの方がハイスペックなのだ」
ヒノキ「仕方なかろう。ギャオスは対戦相手のガメラがマッハ3で飛ぶのだから、それに対抗できるスペックが必要。ラドンが生まれたときには、飛行怪獣のスペックがまだ定着しておらんかったのだから、後から出る後輩怪獣の方が能力を盛られることが多いのは、昭和の怪獣業界のたしなみ。現に初代ウルトラマンは、昭和時代には弱小兄さんと揶揄される、残念な扱いじゃったし、最初のガンダムもウィンキー・スパロボでは残念スペックな機体じゃ」
ハイラス「しかし、RPGの世界では初期スペックよりも、経験値を貯めて成長することができる。大御所怪獣のお二方は、後輩には負けぬ戦闘経験や年季をお持ちのはず。その経験があれば、ただの数値の差など覆すことも可能でござろう」
ジュニア「足りない数値は、勇気で補うのが勇者の証だと学びましたぁ」
セイリュウ「うむ。数字など目安に過ぎん。しかし、ラドンよりはマッハ3で飛べるモスラやギドラの方が上だし、バラダギ様もあんなムササビみたいな飛び方でマッハ1.5。これはどう説明する?」
ヒノキ「おそらく、1950年代はマッハ1.5というのが飛行速度の標準で、60年代に入るとマッハ3が標準になったように思える。映画の制作年代によって、現実の航空機のスペックと対比して、リアルな数値というのがこれぐらいという基準があるのではないかのう」
セイリュウ「まあ、それを言うなら、我の身長も当初は50メートルだったのが、東京の高層ビルとの見た目の対比から、身長が80メートルから100メートル越えまで盛られたのが平成だったからな」
ヒノキ「そもそも、マッハ1.5で飛行できる生物などリアルではおらんじゃろう」
ハイラス「しかし、怪獣はリアルを超越した生物でござろうから、通常の生物の基準を当てはめることこそ、道理に合わないのでは?」
ヒノキ「そもそも、マッハ1.5というスペックは、それを測定した人間の基準であって、それ以上の高速はその時代の人間には測ることのできない領域ということも考えられよう」
セイリュウ「大切なのは、映像でどのような活躍を示しているか、そして時流に合わせた存在感を示し得ているか。世間で求められれば、シェーをしたり、若大将や木枯し紋次郎のマネゴトをしたり、背中や尻尾からレーザービームを発射するほどの芸をできなければ、飽きられもしよう。伝統と進化の両輪があってこそ、時代を超えて駆け続けることもできるというもの」
ヒノキ「じゃが、ハムスターとのコラボはやり過ぎじゃろう」
ここからドルイドの話
セイリュウ「で、互いの過去の格好悪さを冗談であげつらうのはここまでにしておいて、本題に行こう。ドルイドについて研鑽したいと時空魔術師から聞いて来たのだが?」
ヒノキ「うむ、D&D5版のドルイド・サブクラスについて、新旧いろいろ見ていこうと思うてな。いつもは新兄さんが解説役だったりコメントを入れたりするのじゃが、ゲンブとともにガイア様の元に呼ばれたそうじゃ」
ハイラス「代わりに、我々がこちらにピンチヒッター役として呼ばれたのでござるな。次元ドルイドにしてガイア様の神官であるわしと……」
セイリュウ「屋久島の守護神霊である我が……って、ハイラス殿はともかく、どうして我が?」
ヒノキ「お前さん、英語に通じているじゃろう?」
セイリュウ「ま、まあ、アメリカにはしょっちゅう、行くようになったからな。多少は人の言葉も知るようになる」
ヒノキ「ならば、新5版の話も調べることができよう」
セイリュウ「つまり、未翻訳の新5版の話を我にせよ、と?」
ヒノキ「うむ。日本語の旧5版の研鑽はしたが、新5版は新兄さんに任せようと思うておったからのう。英語はそなたが頼りじゃ」
ハイラス「それにしても、一言でドルイドと言っても、定番の戦士や盗賊などと違って、ゲームによっても、また同じD&Dでも版によって、大きく性能が異なるでござるからな。わしは旧ソード・ワールドのアレクラスト出自ゆえ、D&Dは専門ではない。時空魔術師どのに導かれて、多元宇宙のドルイ道についても理解を深めるようになったが、まだまだ修行中の浅学非才の身。TRPGマニアのヒノキ・アリナ殿の助けになれるかどうか」
ヒノキ「まあ、それでもドルイ道の専門家には変わりあるまい。主な研鑽講義はわらわがするゆえ、時おり相槌やコメントを入れてくれればいい」
ハイラス「では、お言葉に甘えて、ゲームのルールではなく、ドルイドの実学視点での見解から語るとしよう」
ジュニア「リウはどうすればいいんですかぁ?」
ヒノキ「そちは生徒役じゃ。ドルイドについて、分からないことがあれば何でも聞くがいい」
ジュニア「では早速ですが、質問ですぅ。ドルイドって何ですかぁ?」
ヒノキ「そこからかよ!?」
ジュニア「だって、戦士や魔法使い、神官、盗賊と違って、RPGの基本職じゃないから分かりづらいですしぃ。ドラクエやFFにも、職業やジョブとして採用されていないでしょ?」
セイリュウ「まあ、ドラクエだと、鬼面道士みたいなモンスター扱いだからな」
ドルイド概説
ヒノキ「そもそも、D&Dのドルイドがクレリックと同様、神に仕える聖職者であることは知っておるな」
ジュニア「ええ。D&Dの歴史的には、オリジナルD&Dの第3サプリメント『Eldritch Wizardry』(1976)において、悪魔のデーモンや超能力ルールのサイオニクスと共に追加されたクレリックのサブクラスですねぇ。来年がD&Dドルイド誕生50周年になりますぅ」
ハイラス「そうだったのでござるか。知らなかった」
ヒノキ「おい、専門家」
セイリュウ「いや、その男はゲームの世界の素人だから、そう責めるでない。そもそも、起源を云々言うなら、ドルイドは元々、オリジナルD&Dの第1サプリメント『Greyhawk』(1975)において、追加モンスターとして採用されたのが初だからな。モンスターとしてデビューしたのが、プレイヤーの扱える職業として出世したのが、ゲーム界でのドルイドということになる」
ハイラス「どうして、ドルイドがモンスター扱いなのでござるか?」
ヒノキ「これは、キリスト教に支配された西洋中世の価値観に基づいたファンタジーゲームが、D&Dの起源だからじゃろうな。聖職者であるクレリックは、後の版でこそ多神教の神官という定義づけが為されるが、当初はキリスト教文明を体現した存在。そして、キリスト教にとって、未開の蛮族社会は教化もしくは殲滅すべき敵、異教徒なのじゃから、キリスト教に帰依せぬケルト土着のドルイドは、生贄を捧げる風習を持った邪教扱いということになる」
ハイラス「西洋文明の驕りゆえに、ローカルな文化風習が野蛮として切り捨てられたのでござるな」
ヒノキ「それに、ドルイドは自分たちの祭事風習を文字媒体として記録せずに、口承で伝えてきたものじゃから、歴史的な研究が為されたのも比較的新しく、近世以降ということになる。例えば、古代ローマの『ガリア戦記』にローマ人カエサルの目で見たケルト社会の風習が記録されているのじゃが、異教の指導者としてのドルイドが描かれている」
セイリュウ「古代ローマはまだ多神教社会だったから、軍事的な征服を除けば、現地の信仰にはまだ寛容だったろうが、キリスト教がローマおよび以降の西洋世界の国教になってからは、異教徒を教化もしくは殲滅することが国是となる」
ハイラス「一神教ゆえの不寛容でござるな」
ヒノキ「たった一つの正義のみを是とするなら、それに従わぬ者は悪魔の下僕として葬り去るのが正しいという狭量さは確かにあるからのう」
ハイラス「それゆえに、ドルイドも魔物扱いでござるか」
セイリュウ「80年代までの冒険ストーリーの定番は、文明VS未開や野生の秘境探検ものだからな。我々、怪獣ものも一面ではその文脈に位置づけられる」
ヒノキ「キングコングからして、秘境探検の要素が濃厚じゃからのう」
セイリュウ「未開人の崇める神が怪獣というのは、コングしかり、バラダギしかり、モスラしかり……」
ヒノキ「お前さんもそうじゃろう。大戸島の呉爾羅(ごじら)伝説から名付けられたことになっておる」
セイリュウ「神とは別に、太古の恐竜が目覚めたり、人間の探検家がロストワールドと呼ばれる地下世界などに迷い込むのも、一つの怪獣ものの定番だったが、そこに放射能などのSF科学の要素が加わって突然変異したり、悪の秘密結社や宇宙人の尖兵として怪生物やメカ兵器が送り込まれたり、公害の影響で生み出されたり、人のマイナスエネルギーが実体化した想念体だったり、様々な怪獣が生み出されてきた」
ハイラス「ドルイドの話をしていたはずが、怪獣の話に切り替わったようでござるが?」
セイリュウ「おっと。SF科学の話をすると、D&Dとは離れて行きそうなので、怪獣=原始の野獣と定義すると、未開人の崇める原始の宗教としてのドルイドと近しいものが読みとれよう」
ハイラス「つまり、主流派の文明を正義と見なしたときに、未開や野生は文明を脅かす敵と見なされ、モンスター扱いされるということでござるな」
ジュニア「しかし、それは昭和の価値観であって、平成や令和はもっと文化の多様性を重んじるようになっていますよねぇ」
セイリュウ「核兵器の問題もあるが、70年代の公害問題が表面化する中で、自然環境を守ることが人間の生存や文明の維持において、非常に重要だということでエコ思想というものが定着していき、90年代に至るわけだ」
ヒノキ「エコとは、自然環境を守ろうという思想および運動じゃな」
ハイラス「ドルイ道としては、自然を守ることは常識でござる。自然をむやみやたらに開発し、脅かす文明偏重の考え方こそ害悪である」
セイリュウ「とは言え、過激なエコ活動家が害悪と見なした文明の建築物や一般市民の生活を力づくで破壊して回る行為(エコテロリスト)が正義とは見なされまい。90年代は、自然環境を守るという信念が暴走して、人間文明を強引に自然に回帰させようとする敵キャラもフィクションではしばしば登場した。その1人が彼だ」
ハイラス「彼もドルイドでござるか?」
ヒノキ「いや、拳法家なのでモンクの類じゃろう」
セイリュウ「しかし、彼が崇めたことのあるデビルガンダムも、元はと言えば地球の自然環境再生を目指して作られたアルティメットガンダム。つまり、劇中では暴走した悪役として描かれておるが、その理念としてはドルイドに通じるものがある」
ハイラス「どうも、ドルイドを悪役として貶めようとしている流れでござるな」
セイリュウ「悪役というか、現代の科学文明に対する自然からの警告、理念を持った敵役としてエコ思想が用いられるのが90年代以降のフィクションの定番になったと言える。その萌芽は70年代の公害問題の時から見られるが、それ以前のドルイドの扱いは未開の野蛮な風習をもって語られていた」
ヒノキ「ドルイドを『自然を重視する原始宗教の一派で、野外活動の専門家』と定義したのはD&Dということか」
セイリュウ「そもそも、D&Dが職業クラスの一つとしてドルイドを採用しなければ、彼らも今ほどファンタジー界でメジャーな存在とはなっていないだろう。古代ケルト文化の祭司であった彼らを、『動植物や自然の精霊に関する魔法が得意な、森や自然の守護者』と定義したのもD&D。本来の史実のドルイドに、そういう定義はなかったはず」
ハイラス「伝承で有名なドルイドと言えば、アーサー王伝説における魔法使いマーリン殿が挙げられるが?」
セイリュウ「アーサー王は、12世紀のキリスト教が栄えた時代に中世騎士道文学の一つとして創作された伝承だが、時代背景は5世紀後半から6世紀前半となっている。アーサーは古代イギリス(ブリタニア)の王であったが、ケルトの蛮習から開明的にローマのキリスト教文明に帰依することで、イギリスを大いに発展させたとされているな。よって、彼の配下である円卓の騎士の聖杯探索などで、キリスト教の影響が濃厚なのだが、魔術師マーリンはアーサーの父親であるユーサー・ペンドラゴンの時代から仕えたから、キリスト教には帰依していない」
ヒノキ「マーリンの背景は、悪魔や妖精に関わる反キリスト教のエッセンスが付いて回るが、彼自身は幼少期にキリスト教の洗礼を受けたから邪悪に堕ちずに済んだ、という話も聞くが?」
セイリュウ「マーリンの元ネタが、ウェールズ伝説にある森の隠者マルジン・ウィストとされていて、その他の伝承と混ぜ込んで創作されたものをアーサー王伝説とクロスオーバーさせた形をとっている。そもそも、キリスト教世界において、魔術師というのは邪悪な存在とされているが、マーリンの場合は15世紀にイギリス・テューダー朝を開いた国王ヘンリー7世がその伝説に心酔していて、自らをマーリンが予言したブリテン王の末裔と称して、30年続いた薔薇戦争に勝ったという史実がある。すなわち、イギリス王家を守護する魔術師として、半ば聖人扱いされているのがマーリンということになるわけだな」
ジュニア「つまり、マーリンという創作キャラクターには、イギリスの歴史文化のいろいろな要素が込められていて、ドルイドというのは一つの側面でしかないということですねぇ」
セイリュウ「そもそも、一国家の王家が史実で礼賛している創作の魔法使いなど他にいないだろう。ともあれ、マーリンは代表的なドルイドというよりも、代表的な魔法使いとして挙げられるので、ドルイドはそのうちの一要素でしかないわけだ」
ヒノキ「フィクションではない史実のドルイドだと、以下の動画も面白いのう」
ハイラス「総じて、ローマ文明、後にキリスト教文化へのアンチテーゼとして、史実のドルイドは語られるということでござるな」
ヒノキ「D&D初期の信仰観では、まずキリスト教要素の濃いクレリックが基本となり、続いて東洋の修道僧モンク、自然に根差したドルイドが紹介された後に、世界各地の神々を紹介した4つめのサプリメントが出て、多神教への導入が行われた。その後、D&D用のオリジナル世界が設定されるにつれて、D&Dワールド用の独自の神々設定が構築されていくのが80年代になる。AD&D2版になると、クレリックやドルイドのような聖職者クラスをプリーストとして整理するような流れとなり、膨大な呪文も16のスフィア(信仰領域)にカテゴリー分けされて、神々ごとの専門分野に応じた呪文を習得する形になった(選択ルール)」
セイリュウ「その辺のRPGにおける多神教設定は、ルーンクエストの影響が大きいが、ドルイドはD&Dが多神教設定を本格的に採用する以前の伝統的クラスのために、他の多神教プリーストの追加ルールとは異なる独自色の強いキャラクラスとなっている」
セイリュウ「その辺がややこしくてな。大地母神ガイア様は、ギリシャ・ローマの神話概念であり、ケルト文化に基づくドルイドとは厳密には背景が異なっている。この辺は、D&Dよりもむしろソード・ワールドのフォーセリアの方がまだ違いを説明しやすくて、大地母神マーファに仕えるプリーストは、ドルイドと異なっている」
ヒノキ「マーファは都市の周辺の農村文化を領域とする神で、森の中での生活を推奨しているわけではないからのう」
ハイラス「確かに。フォーセリアのドルイドは、プリースト魔法ではなく、精霊使いのシャーマン魔法の使い手であった」
ジュニア「冒険の舞台がラクシアになって、シャーマンが妖精使いフェアリーテイマーに改変された後、しばらくドルイドの存在は忘れられていましたが、版上げの2.5版が登場して、改めてドルイド技能が実装されましたねぇ」
ハイラス「アレクラストのドルイドは四大元素や精神に関する精霊使いで、ラクシアのドルイドは動植物にまつわる精霊使いというように、対応分野が異なっているのでござるな」
ヒノキ「D&Dのドルイドは、クレリックの亜種で信仰呪文の使い手だが、ソード・ワールドのドルイドはプリーストとは異なる呪文体系となっていて、独自色の強い職業と言えよう」
セイリュウ「信仰形態としては、ドルイ道はアニミズム(原始的な精霊信仰)に該当するものとされ、クレリックもしくはプリーストの神々への信仰とは異なる扱いをされていることが多い」
ヒノキ「神と精霊の違いがどこにあるかが問題じゃが、主なファンタジーゲームの世界では人格神が定着していて、神は信徒を導く教義を有し、精霊はどちらかと言えば無為自然というか、人を教義で縛らない傾向があると言えそうじゃ」
ハイラス「とは言え、精霊王クラスになると、神といっても遜色ない力や意志を持ってそうでござる」
セイリュウ「神と精霊の概念の違いは、それこそ各ファンタジー世界や文化の信仰観に関わるものだから、一律に語ることは難しいかもしれん。しかし、D&D的価値観で言えば、神は善悪や秩序・混沌のアラインメント(属性)がはっきりしているのに対し(それに応じて自己主張も強い)、精霊は自然界の諸力や動物的本能に左右されて属性は中立扱いになりやすいと言えよう」
ハイラス「確かに、炎の精霊は物を燃やしたがるという傾向はあるが、それだけで善悪を決めつけることはできないでござるな」
ジュニア「確かに『オレの炎で世界を焼き滅ぼしてくれるわ。ガハハハハ』と笑う炎の精霊がいたらビックリですけどねぇ」
ハイラス「どちらかと言えば、炎の精霊のイメージは、『オレを呼んだか、ご主人? で、何を燃やせばいい? 指示してくれ』って感じで、召喚者に忠実な印象があるでござる」
ヒノキ「精霊の場合は、良いも悪いも使い手次第という感じじゃのう。自我があまり発達していないというか、善悪の概念が薄いというか」
セイリュウ「勝手に暴れる精霊は『狂った精霊』と呼称されがちだな。ともあれ、精霊は善悪の価値観の薄い中立ゆえ、ドルイドも自然の諸力のバランスを重視する中立的価値観が推奨されるのではなかったかな?」
ハイラス「確かにそうでござる。ドルイドは自然の守り人であるゆえ、自然界のバランスを破壊しようとする者こそが、倒すべき敵。もっとも、ドルイドも人の子であるゆえ、たまに邪悪を見誤ることをしてしまい、本意ではない戦いを行うこともあろうが」
ジュニア「自ら進んで自然破壊を企てたりはしないのですねぇ」
ハイラス「当然であろう。もしも、ドルイドの仲間が暴走して(敵に操られたり、怒りで我を忘れたり理由はさまざま)、破壊をもたらすならば、何とか宥めて止めようとするのがドルイドの慈愛というもの」
ヒノキ「自然界との交信者の役割があるのじゃな」
D&Dのドルイド史
セイリュウ「では、一般論はこれぐらいにして、D&Dのドルイドについて、掘り下げよう。まず、オリジナルD&D→AD&D1版→クラシックD&D→AD&D2版→D&D3版→4版→旧5版→新5版というのが大雑把な流れだな」
ヒノキ「うむ。ドルイドはオリジナルD&Dから、アドバンストD&Dの基本クラスに受け継がれたわけじゃが、クラスの特徴は自然界にまつわるドルイド呪文が使えることと、レベルが上がれば獣に変身できるシェイプチェンジャーの能力が得られる点が大きい」
ジュニア「次元ドルイド様も変身できるのですかぁ?」
ハイラス「アレクラストのドルイドには無理な芸当でござるが、わしは屋久島での修行の末に最近ようやくできるようになったでござる」
ジュニア「それは見てみたいですぅ」
ハイラス「では、リクエストに答えて、アグレッシブ・ビーストチェーンジ!」
PON!
ジュニア「クマーーッ!?」
ハイラスクマ🧸「うむ。このクマモードが、わしが会得した新たな姿でござるベア」
ジュニア「何だか可愛いんですけどぉ」
セイリュウ「まあ、見た目はファンシーなぬいぐるみだが、D&Dにおけるクマはそれなりの脅威度だから、舐めてかかっては痛い目に合うぞ」
ヒノキ「ドルイドでクマだと、近年はこっちが話題になったのう」
セイリュウ「本来、アウルベア(オウルベア、フクロウグマ)はドルイドが変身できる獣リストには入っていないのだが、D&Dの映画で仲間のドルイド女性ドリックが固有の特殊能力で、アウルベアへの変身能力を披露したことで話題にもなった」
ハイラス「ドルイドの変身可能な生物も、幻獣や魔獣などに拡張して欲しいものでござる」
ヒノキ「まあ、怪獣に変身できるドルイドというのも面白いかもしれん。もしも、お主が怪獣に変身できるとしたら、何を望む?」
ハイラス「そうでござるな。まるで、ウルトラマンギンガのスパークドールみたいなシチュエーションだが、ゴジラやラドンなどは恐れ多いので、バラゴン辺りが身の丈合ってそうでござる」
ジュニア「今回は怪獣の話と、D&Dの話が混じって、寄り道脱線が多すぎですねぇ」
セイリュウ「仕方あるまい。このメンツでの研鑽話は初めてのことゆえ、話の進め方も手探りだからな。ともあれ、動物への変身能力はドルイド固有の特徴だが、日本語で初めてドルイドが紹介されたクラシックD&Dのコンパニオンルールでは、その能力がオミットされて、単に劣化クレリックとして紹介されたのであったな」
ハイラス「いや、劣化ではなく、中立のクレリックが転職してなれる上級職扱いでござる。クレリック呪文にドルイド呪文が加わって、扱える呪文のヴァリエーションが向上した」
セイリュウ「ファイターの上級職であるパラディンが、ファイターの能力を維持しながら追加能力を習得したのに対し、ドルイドは『防具が金属製のものを使えずに革鎧止まり』『アンデッドへのターン能力を失う』『善悪に関する呪文が使えなくなる』と3つの弱点を抱え、従来のクレリックとは異なる運用を余儀なくされる始末」
ヒノキ「プレートメールを装備できたクレリックから、レザーアーマーになったことでACが4も悪化した。これで前衛でもそれなりに戦えるキャラから、盗賊並みの打たれ弱さになって、使えないキャラの烙印を押されることに」
ハイラス「何だかドルイドいじめが酷くないか、この記事?」
ヒノキ「まあ、ドルイドの本分はAD&DおよびD&D3版以降で発揮されるのだから、不遇な過去があったということだけ確認したまでのこと」
セイリュウ「AD&Dでは、野外活動に関するさまざまな特殊能力を得て、その最たるものが動物への変身能力。レベル7になると、1日3回まで異なる種類の動物に変身して、馬に変身して地上を駆けたり、鳥に変身して空を飛んだり、イルカに変身して水を泳いだりできる。さらに、ネズミに変身して狭いところに侵入したり、様々な動物の能力を駆使できる。動物好きには遊び甲斐のあるクラスと言えよう」
ジュニア「魔法使いだって、変身呪文で同じことができませんかぁ?」
セイリュウ「ウィザードのレベル4呪文にポリモーフ(変身)系はあるが、7レベル時点で1日に1回しか使えん。それに偵察に使うにしても、ウィザードは肉体的に脆弱だから単独行動をするのは危険が大きすぎる。偵察の専門家と言えば、盗賊ということになろうが、盗賊よりはドルイドの方が打たれ強いうえ、舞台が森の中であれば、呪文で隠密活動も自由自在。実は、ドルイドの最大の仕事は、戦闘ではなく、隠密調査活動と野外での移動サポートと割りきれば、クラシックD&Dでも有能だったのだろうが、当時は戦闘能力こそが持て囃された時代だったからな」
ヒノキ「AD&D2版が翻訳された辺りで、ソード・ワールドなんかも発売されて、ダンジョン探索や戦闘以外のRPGの楽しみ方も浸透していった時期になった、と」
セイリュウ「何しろ、クラシックD&Dには技能ルールも当初はなかったからな。ダンジョン探索は盗賊の専売特許で、呪文を使えば、魔法使いや僧侶も探索に協力できたが、ある程度レベルが上がってからでないと、彼らの呪文リソースは戦闘で役立つものを優先することになる」
ヒノキ「この辺のダンジョン探索じゃが、今にして思えば、別に1回の攻略で全てを探索しないといけないものでもなかったのじゃろうな。コンピューターゲームのウィザードリィみたいに、リソースが尽きたら地上に戻って、翌日に『前日に開かなかった扉を開けるために、魔法使いがノックの呪文を用意して再探索』とか、小まめにダンジョンの出入りを繰り返しながら、少しずつ探索範囲を広げるのが、本来のD&Dの遊び方だったとか」
セイリュウ「当時の日本のTRPGの紹介では、1セッションで1つのダンジョンをクリアしなければいけないシナリオ形式がメインだったと思う。まあ、広大なダンジョンを、今回はここまでにして一回、ホームタウンに戻って、一晩休んでからまた来よう、という遊びもあったのかもしれないが、もしかすると海外での主流はそっちだったのかもしれないが、何となく、我々のプレイでは1セッション1ダンジョン形式で進めていたのだと思う」
ハイラス「セイリュウ殿とヒノキ殿の昔のゲームの思い出話はさておき、AD&Dから3版になって、ドルイドはどう進化したでござるか?」
セイリュウ「1レベルで動物の相棒を持てるようになった。動物への変身能力を5レベルで1日1回獲得して、変身回数がレベルの上昇につれて増えていくようになった。7レベルで3回というのは、旧来のAD&Dと同じだが、変身能力の習得が前倒しになったのはドルイド使いの満足度を大いに向上させたと思われ」
ヒノキ「これが5版になると、2レベル時点で変身能力を会得して、サブクラスもその時点で獲得できるようになった」
セイリュウ「ただし、5版は3版と違って、動物の相棒が無条件では持てなくなったのだな」
ヒノキ「ああ。動物の相棒は、レンジャーのサブクラス、ビーストマスターの特権になって、ドルイドはペットを常備できなくなった」
セイリュウ「前の版でできたことが、版上げでできなくなると残念な気持ちになるな」
ハイラス「つまり、3版のドルイドは相棒に偵察活動なんかをさせられる使役者の顔を持っているが、5版のドルイドは相棒ではなく、自らが獣に化身して偵察役をこなすようになった、と」
セイリュウ「相棒にどんな仕事をさせるかにもよるな。ただの愛玩動物であれば、〈動物使い〉の技能を習得することで、動物を飼っていると主張することもできるが、特別なことは何もさせられない。それをしようと思えば、呪文の《アニマル・フレンドシップ》や《スピーク・ウィズ・アニマル》、《アニマル・メッセンジャー》などを駆使しななければならない。
「類似の例を述べるなら、3版では全てのウィザードは1レベルで使い魔をもらうことができたが、5版では《ファインド・ファミリアー》の呪文で召喚しないといけない。つまり、その呪文を習得する必要があるわけだな。もっとも、ウィザードではないウォーロックの方は、3レベルになると契約の恩恵で使い魔を召喚できるのだが」
ハイラス「つまり、3版では全てのドルイドが相棒を、全てのウィザードが使い魔を持てたのが、5版では相棒はレンジャー用、使い魔はウォーロック用に置き換わった、と」
ヒノキ「ドルイドでありながら、どうしても獣の相棒が欲しいのなら、レンジャーと兼職(マルチクラス)するか、ターシャ本の選択ルールを採用すれば可能になる」
セイリュウ「むしろ、5版は3版のデータ量を減らすことで、プレイスピードを向上させたのが特徴のシステムだからな。とりわけ、ドルイドは3版において、扱うデータの量が多すぎた」
ハイラス「と言うと?」
セイリュウ「D&Dにおける呪文の専門家といえば、伝統的なウィザード(メイジ、マジックユーザーとも呼ばれる)、クレリック、ドルイドに、後からソーサラー、およびウォーロックが加わった。他に呪文が使えるのは、パラディン、レンジャー、バードや諸々のサブクラスが挙げられるが、呪文の専門家は習得できる呪文の数や種類が膨大なために、それを扱うだけでもデータ管理が大変なので、他の特殊能力は必要ないと言える」
ヒノキ「それで物足りなければ、兼職という選択肢もあるのじゃな」
セイリュウ「それに加えて、3版は技能や特技の取得が選択ルールから基本ルールとなって、扱うデータ量は歴代D&Dの版でもトップクラスと言える。そして、ドルイドは呪文の専門家なのに、特殊能力も多く、毎レベルでもらえる技能ポイントもウィザードやクレリックの2点に比べて、倍の4点。つまり、呪文もたくさん、特殊能力もたくさん、技能もそこそこ多いという、扱うデータ面では最高量と言えるキャラクタークラスだったわけだ」
ハイラス「ええと、特殊能力という観点ではレンジャーやバード、モンクも結構、多いと聞くが?」
セイリュウ「レンジャーやバードは確かに特殊能力や技能は多いが、呪文に関しては複合職ゆえの制限がある。例えば、レベル10時点で3版レンジャーが使える呪文は1日2つ、バードは1日11個。一方でドルイドは1日22個となっている」
ハイラス「ドルイドは結構多い!?」
セイリュウ「なお、クラシックD&Dのドルイド10レベルは1日に14個だが、この差は3版だと初級呪文の使用回数6回が加わっているから、と言える。また、5版ドルイドの10レベルだと、15回+無限回使用できる初級呪文4種類ということになる」
ハイラス「5版のレンジャーとバードは?」
セイリュウ「レンジャーは呪文が早い段階から使いやすくなって、1日9回。バードはドルイドと並ぶ15回で、専門家と複合職の呪文使用回数格差は緩和されているようだ」
ハイラス「つまり、3版時点で、ドルイドは呪文の使用回数が専門家として膨大なうえに、特殊能力や技能も数多く習得する、扱うデータ量が最大級に多いクラスということでござるな」
セイリュウ「そのことに気づいたのは、今が初めてだ」
ヒノキ「恥ずかしながら、わらわもドルイドがそれほど大変なクラスだとは知らなかった。ただの劣化クレリックと軽視していたことを謝る」
セイリュウ「まあ、クラシックD&Dのドルイドは、AD&Dの特殊能力がオミットされていたため、呪文しか能がないのも事実だがな。対照的に、D&D3版のドルイドが呪文の専門家なのに、特殊能力もやたらと多くて、考えることの非常に多いクラスということだ。しかも、3版ドルイドの得ることのできる動物の相棒の種類がとんでもなかった」
ジュニア「と言うと?」
セイリュウ「ドルイドのレベルアップに応じて、相棒も強化されるのだが、レベル16以上のドルイドは恐竜のティラノサウルスを相棒に選択できる」
ハイラス「って、それは自然の生き物でござるか!?」
セイリュウ「まあ、D&Dの世界のどこかの島には恐竜が生息しているロストワールドもあるからして、ドラゴンよりはよほど自然の生き物であろうが、まさかドルイドの選択できる相棒リストにティラノの名前が出て来るとは思わなかったぞ」

ヒノキ「怪獣王すらビックリさせる3版ドルイドとは、なかなかこの世界も奥が深いのじゃな。少し本腰を挙げて、改めて研鑽するとしようか」
(当記事 完)






