花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、TRPGの魔法研鑽を展開予定。

歴代D&Dとその他RPGの吟遊詩人話(その1)

バードの起源は多芸職

 

ヒノキ「今年に入って現在、うちの記事総数は3(当記事で4)。一方で、ウルトロピカルは早くも6記事。開幕早々、向こうが倍近く引き離しておる。これは当ブログにおいて、由々しき事態じゃ」

NOVA「まあ、メインブログの空想タイムが9記事だから、現在トップだな」

ヒノキ「むむむっ、やはりゲームブック攻略やローグライクハーフなどのストーリー連載は、記事数稼ぎに貢献するようじゃのう」

NOVA「確かに、ストーリーを進める記事は、書いていて自分も続きが気になるので、一度、始めると筆が進むというのがある。それに比べて、職業研鑽記事は資料もあれこれ見ながらになるし、書く方のハードルも若干高くなる感じですな。とりわけ、今回のバード(吟遊詩人)は難易度が高い」

ヒノキ「どうしてじゃ?」

NOVA「例えば、D&Dでも版によって、バードのキャラクター能力が大きく変わるので、レンジャー並みに、あるいはそれ以上に研鑽が大変、という職業。で、以前にバードの研鑽をした記事がこれなんだが……」

シロ「盗賊のおまけみたいな形の扱われ方ですね」

NOVA「じっさい、俺のバードイメージは『魔法の使える盗賊(情報工作専門)』って感じだしな。楽器演奏のできる魔法盗賊って印象を持っている」

ヒノキ「盗賊が一般に裏稼業で暗いイメージがあるのに対し、吟遊詩人は表で活動する陽性キャラって感じじゃがのう」

NOVA「盗賊が表で身をやつすのに使う職業の一つが旅芸人で、芸人一座というのは時代劇でもしばしば悪徳興行師とつるんだり、詐欺や殺し屋の正体を隠したりしている」

シロ「芸能人や芸能プロデューサーは闇が付きまとう……というのは、良く言われますね」

NOVA「人気商売の場合、スキャンダルで信用が失墜することは死活問題だが、アイドルから脱皮した役者ともなると、派手なスキャンダルも芸の肥やしという言い回しもあった。そして芸能人のスキャンダルを揉みつぶすための裏工作も噂はされていたんだが、ネットで真実とか、庶民の噂をマスコミが制御できない時代では、マスコミ自体がスキャンダルの温床と言われて、従来どおりの火消しが機能しなくなったりする」

ヒノキ「楽器演奏というスキルは、直接、冒険で役立つ技能とは言えない、どちらかと言えば、趣味の領域じゃが、音楽が人の心を打つということもあって、ファンタジーではメインではなくとも、サブ職として人気が高いのがバードじゃろう」

NOVA「中世では、バードは噂や伝承に通じた語り部であり、プレイヤーキャラでなくとも、NPCとしてしばしば情報源となったりしている。現代社会でのマスコミに相当する役回りも果たしているが、一方で職業がより細分化した現代および近未来ものでは、人気アーティストがしばしば大衆を扇動することもある」

シロ「インフルエンサーという奴ですね」

NOVA「ファンタジーゲームの世界観は、古代や中世の社会風俗を土台にしつつ、遊ぶ人間の感性を取り込んだ部分も結構あって、バードに代表される楽器弾きなんかは、中世の胡散臭い旅人や上流階級のお抱え楽師とはまた異なる『イケメン人気アイドル』っぽい、派手で華やかなスタイルであることが多い」

ヒノキ「あるいは、ソード・ワールドのグラスランナーに見られるような、コミカルな味付けをしたケースもあるぞ」

NOVA「今回は、シロ君メインのD&D5版のサブクラス話を次回に回し、それ以前のゲームにおけるバードの歴史について、大筋を述べてみたいと思います」

 

AD&D初版と2版のバードの違い

 

NOVA「まず、バードという職業がTRPGに取り入れられた起源は、AD&D初版からでしょうが、普通に最初から使える職業ではなかったですね。3版における上級職みたいな扱いでした」

シロ「上級職というのは、他のクラスからの転職によって就くことのできる職業ですね」

NOVA「バードになるには、まずファイターで5レベル以上に育てて、それからシーフに転職して、最後にドルイドを経てから転職できるという面倒な段取りが必要でした」

ヒノキ「魔法使いではなく、ドルイドの呪文を使うというのが後のイメージと異なっておるのう」

NOVA「最初は中世の吟遊詩人ではなく、古代のケルト文化に由来する職業だったのですね。元来、ドルイドはローマの都市文明に対する土俗文化の宗教指導者であり、森で聖なる樹木を崇めるほか、生贄の儀式も行うなど、ローマ人の目からは野蛮な連中のイメージが大きいです」

ヒノキ「D&Dが中心になって紡いだゲームファンタジーの(現代化された)ドルイド像と、歴史上のドルイドは大きなギャップがあるのじゃな」

NOVA「ローマの多神教万神殿(パンテオン)とは異なる宗教体系に、ドルイドはいますからねえ。D&Dでは当初キリスト教っぽい神を崇めるクレリックと、自然神を崇めるドルイドの2つが聖職者でしたが、後にキリスト教以外の神話の神々を多様な属性で分類して、世界観ごとに多神教クレリックを設定できるように進化した。まあ、世界観を緻密に考えないなら、善神、邪神、その他の中立神の3分類でもいいのでしょうが、ルーンクエスト多神教ワールドの影響もあって、D&D世界観でも多神教の神々を公式に設定するようになった。

「一方、日本では84年の『ローズtoロード』が早くも多神教設定を採用しているけど(神が土俗的な精霊の王的なイメージで、キリスト教風中世よりは古代社会の空気感)、神の設定を最もメジャーにした国産ファンタジーは『ロードス島戦記』および『ソード・ワールド』のフォーセリアだと考えますね」

ヒノキ「どの神に仕えるプリーストかで、性格も大きく異なるというのは、ゲームではルーンクエストが元祖だと思うが、その雰囲気をソード・ワールドは取り込もうとしたわけじゃな」

NOVA「ルーンクエストは膨大な数の神々がいるので、神への信仰がプリーストのみならず冒険者の個性にも反映されるシステムおよび世界観。でも、80年代後半の時点で輸入してまだ数年ほどの日本のRPG環境では、それだけ多数の神を扱いきれないということで、フォーセリアは5大神(暗黒神ファラリスを入れると6大神)という数に絞って、神の名前と属性を小説などで認知しやすくした。

「最初のロードス小説では、善なる至高神ファリスと、やや中立寄りの大地母神マーファ、敵役の暗黒神ファラリスの3つを抑えれば事足りる。後に戦神マイリー、知識神ラーダ、交易神チャ・ザなどが紹介される他、マーファの仇敵である破壊神カーディス他の設定が後付けで加わって、ロードス、アレクラスト、そしてクリスタニアも含めて、フォーセリアの神話体系が90年代にかけてどんどん拡張構築されていった」

シロ「ちょっと、新星さま。今回は吟遊詩人の話のはずでは? ドルイドから神さまの話に広がってますよ」

NOVA「……といった神話伝承の物語を語って聞かせるのも、プリーストもしくは吟遊詩人の役割なんだ」

 

ヒノキ「で、どうしてバードの起源がドルイドなのかを語っておらんが?」

NOVA「ドルイドは文字を残さず、口述伝承で自らの歴史を子孫に伝え残したわけですが、そういう役割を果たすドルイドの一派がバードと呼ばれたわけですな。だから西洋中世ファンタジーの吟遊詩人はトルバドールもしくはミンストレルと呼称されることもあるのだけど、D&Dの影響力の大きさでTRPGでは楽士クラスを総じてバードというようになった。結果的に、バードからドルイド色が消えたのは、レンジャーとの差異化のためも大きいです」

シロ「ドルイドは森を中心とする野外活動の達人で、一方のバードは都市を舞台に活動することの多いクラスとして定着したから、同じ呪文体系では役割が噛み合わないということですね」

NOVA「AD&D2版では、バードの呪文は魔法使いの秘術系で、3版以降もそれを踏襲。ただ、俺が初めて見たTRPGのバードは、MERP(指輪物語RPG)でした」

ヒノキ「レンジャーの時も、そう言っていたのう」

NOVA「AD&Dの翻訳が後手に回りましたからね。その後、ソード・ワールドのバード技能を経てから、AD&D2版に至るわけですが、その頃にはウォーハンマーとかで、バードも別に珍しくも何ともない職業になっておりました」

シロ「ファイナルファンタジーでも、ジョブチェンジのシステムが採用された3から吟遊詩人が採用されて、4でもギルバートという有名キャラが登場するなど、コンピューターゲームでも詩人キャラが定着していったのが90年代ですか」

ヒノキ「ドラクエでは、7で初実装か?」

NOVA「プレイヤーキャラではそうですが、NPCでは吟遊詩人ガライが最初から名称が挙げられていて、『ガライの墓』というダンジョンで重要アイテムの『銀の竪琴』を手に入れるのが中盤の必須イベントと言えましょうか」

シロ「ドラクエ4トルネコの章で仲間になるロレンスも吟遊詩人みたいですね」

NOVA「ああ、いたなあ。そういうキャラ。とにかく、プレイヤーキャラとして使えるかどうかは別として、ファンタジーRPGでは定番のキャラですね、吟遊詩人は」

 

MERPとロールマスターの話

 

NOVA「話を戻して、俺がゲームのルールで初めて吟遊詩人を見たのは、MERPが最初。MERPのバードは、レンジャーと並んで準魔法使いに分類されます」

ヒノキ「準魔法使いとは?」

NOVA「正式な魔法使いは、精気界の魔術師と、神霊界のまじない師が設定されていて、魔法の使えない非魔法使いは戦士と忍び。これらがいわゆる魔法使い、僧侶、戦士、盗賊に相当します。現在の指輪物語RPGでは、『魔法使いと呼称されるのは、ガンダルフやサルマン、ラダガスト、あと2人の青の魔法使いのみ』という設定で、中つ国(ミドルアース)の魔法使いは職業ではなく、西方から渡ってきたイスタリと呼ばれる種族である、とされています」

シロ「つまり、プレイヤーキャラは魔法使いになれないのですね」

NOVA「MERPの生まれた80年代には、原作のそういう設定が広く浸透していなかったんだな。だから、ガンダルフの系譜の魔法使いが新人見習いの若手として普通に作られた。今の指輪RPGでは、魔法のアイテムや、魔法のような特殊能力は設定されているけど、職業としての魔法使いにはなれないわけだ。

「さておき、80年代のMERPはロールマスターというもっと上級のゲームの簡略版であり、ロールマスターには、精気界に3種、神霊界に3種、さらに別の呪文体系として念力界に3種と計9種類の魔法使いが用意されているなど、AD&Dにも匹敵する精密なゲームだった(さすがにサプリメントの数では遠く及ばないだろうけど)。で、ロールマスターでもクレリックは用意されているんだが、中つ国ではキリスト教的なクレリックは相応しくないと判断されて、MERPではドルイド的な能力のまじない師(アニミスト)に置き換わっている」

ヒノキ「準魔法使いとは、レンジャーとバード。つまり、剣と魔法の両方使える職業ということか」

NOVA「そうです。レンジャーは神霊界で、バードは精気界。つまり、プリースト系魔法の使い手がレンジャーで、ウィザード系魔法の使い手がバードという分け方ですね。AD&D2版でのバードが当初のドルイド呪文からウィザード系の秘術呪文の使い手になったのも、MERPを始め、世間一般のバードは魔法使い寄りというのが定着していたからだと思います」

ヒノキ「まあ、世間一般のバードは中世の吟遊詩人で、都市生活にも順応しているし、文字だって普通に読める知識人。起源はどうあれ、ドルイドのような野生の徒とは異なる発展を遂げたということじゃな」

NOVA「MERPがAD&Dにどれだけ影響を与えたかは知りませんが、俺の中ではクラシックD&Dから先にMERPを知って、その後でAD&D2版につながったので、バードの系譜にMERPが重要な位置づけを占めているわけです」

ヒノキ「MERPのバード像があってこそ、AD&D2版にも通じる、と」

NOVA「ここで、ファンタジーRPGの常識的なイメージを確認する質問一つ。バードって強いキャラでしょうか、弱いキャラでしょうか?」

ヒノキ「一般的には、サポート能力に特化した支援キャラで、自身の戦闘能力や破壊力はさほどでもないが、仲間にいるとパーティー全体の能力が高まると言ったところか。直接戦力としては強くはないが、仲間の能力を強化してくれる存在ゆえに重宝されるキャラじゃのう」

NOVA「AD&D初版では、レンジャーもバードも新しく加わったスーパークラスとして、いろいろな能力が上乗せされた強いキャラという扱いでした。だから、80年代だとどちらも単独で何でもこなせる万能多芸なキャラという位置づけなんですね。

「だけど、AD&D2版では他のクラスとのバランスを取るために、バードの能力も大幅にランクダウンしました。盗賊と同じローグ系というカテゴリーに分類され、武器戦闘の能力は盗賊並みに下げられて、盗賊の必殺バックスタブも持たない残念仕様。初版はファイターからスタートして、吟遊詩人は戦士としても使えるキャラだったのに、前に出ることが非推奨となる」

シロ「D&Dで前衛を務めるには、HPの高さと、装備できる鎧の性能で決まってきますね」

NOVA「そして、盗賊は魔法使いの次に打たれ弱く、革鎧までしか装備できないので、前に出てはいけない職業ということになる。吟遊詩人も武器戦闘能力は盗賊並みで、前衛に立つべきでない後方支援役に認定された。でも、MERPのバードは、AD&D初版と2版の中間ポジションで、その気になれば十分に前衛が務まるキャラなんですよ」

ヒノキ「ほう。華麗に剣を振りかざす吟遊詩人ができるのか」

NOVA「これも、MERPがスキル制のゲームで、しかも防御能力が鎧一辺倒のAC制ではなく、武器スキルを使用して相手の攻撃を受け流したりできるうえ、HPに相当する耐久力を〈鍛錬〉スキルで伸ばして行けるという仕様なので、前衛バードは十分構築できるシステムだったゆえ、です」

ヒノキ「まあ、昔のD&Dは職業クラスでほぼ戦闘能力が規定されておったからのう。今のD&Dでは、特技を習得することで装備できる鎧の質を向上したり、HP量を高めたりもできるので育成自由度も高くなっておるが、旧世紀のゲームは職業クラスが決まれば、ほぼほぼ役割が固定されるものじゃった」

NOVA「スキルや特技といった組み合わせでキャラをカスタマイズするという方向性はおおよそ90年代以降に定着した概念ですからね。80年代はまだ、クラス制とスキル制のどちらが優れているか論争が、TRPGファンの間で盛り上がり、いろいろなシステムの長所、短所を議論するのが慣わしでした。その中で、システムの発展史が紡がれていくわけです」

シロ「今は、システム論争をあまり聞きませんね」

NOVA「複数のシステムを網羅している人間が少なくなったのかもしれないし、長い歴史の中で網羅できる量を越えてしまったということもある。昔のRPGマガジンみたいに、あらゆるTRPGを網羅した総合誌もなくなって、それぞれが自社製品のプッシュがメインになっているのが現状だ。すると、自社製品同士でシステムの良し悪しを論争する記事は書けないし(それぞれの推すべき長所は書ける)、他社のシステムに対する論評も品がないから、わざわざ書かない。

「一時期は、SNEゲームとFEARゲームのシステムやサポート体制のどちらが上か論争もあったが、2015年以降はFEARゲームの文庫TRPG撤退の影響からか、営業的にぶつかる局面も減っていて、今は昔の話題となっている」

ヒノキ「どちらかと言えば、一つのシステム内での版上げ論争というのが見られるぐらいかのう」

NOVA「海外では、D&D3版と4版、そして4版と5版の対立がエディション・ウォーと呼ばれ、すごく加熱しましたからね。今回の5版内での、2014年版と2024年版はそこまで荒れていないようですが、6版と言わないのも、版上げ時のシステム変化への賛否に関するゴタゴタを避けるためという背景があったのかもしれない」

ヒノキ「まあ、データが少しアップデートされて、ルールの記述にも変化が見られたぐらいで、根幹システムが大きく変わったわけじゃないからのう」

NOVA「日本の版間論争が加熱したのは、ナイトウィザード2版と3版ぐらいと思ってますが、初版→2版は単純に発展拡張したものが、2版→3版は仕切り直しの結果、世界観が縮小されたというのがあって……と、そういう話はまた今度にしましょう。今は吟遊詩人です」

 

ヒノキ「MERPの吟遊詩人は、AD&D初版のスーパーバードを受け継ぐ多芸キャラで、そのエッセンスがAD&D2版にも導入されたように見えるが、明確に弱体化した、という流れじゃったな」

NOVA「まず、MERPは当時のD&Dと違って、スキル制のゲームなんですが、それでいてクラス制の要素も合わせ持つハイブリッドなゲームなんですね」

ヒノキ「職業を選んで、その職業に応じたスキルを伸ばすシステムか。現在は、それが定番になっておるが、80年代だと革新的な方じゃった、と」

NOVA「で、戦士は武器や鎧や、鍛錬などのスキルが伸ばしやすいけど、鍵開けや罠の解除などのスキルもポイントさえ割り振れば伸ばすことが可能。魔法だけは、どうしようもなく伸ばすのが困難ですけど、絶対に不可能というわけじゃない」

ヒノキ「具体的には、どんな感じじゃ?」

NOVA「ええと、MERPのボックスが押し入れの奥に埋まっているので、本棚から取り出しやすいロールマスターのデータで説明しますが、細かい数値以外のシステムは共通なので、問題ないでしょう。ええと、各職業はレベルアップ時に能力値に応じた向上ポイントが与えられるのですが、戦士は武器や鎧のスキルに1〜2点の消費で成長させられる。鍛錬も1でよいのですが、鍵開けや罠外しは3ポイント消費する。しかし、呪文の習得には20ポイントも必要なので、まあ、普通は諦めろって話ですね」

シロ「忍びだったら?」

NOVA「当然、鍵開けや罠外し、忍び足だと1ポイントでいいので、戦士よりも効率よく習得できる。鎧については、革鎧までが低く、金属鎧が3とか4とか。武器についてはメイン武器(主に片手剣)が2で習得しやすいけど、それ以外が4で、鍛錬も3と、若干育てにくい。呪文の習得に関しては10ポイントなので、困難なのは確かですが、戦士ほどではない」

ヒノキ「なるほど。職業ごとに成長させやすいスキルと、させにくいスキルがあるわけじゃな。成長させやすい能力にポイントを注ぎ込んで、定番のキャラにすることもできるし、少しぐらいは不得意なスキルに注ぎ込んで、個性化を図ることもできる、と」

NOVA「なお、魔法使いはメイン武器や鎧のスキルを向上させるのにも9ポイント必要で、鍵開けも8とか、鍛錬8とか、体を使った技は伸ばすのが大変。代わりに、呪文習得が1とか、言語解読2とか、魔法文字解読1とか、魔法道具使用1とか、まあ、魔法に特化した仕様ですね。D&Dの魔法使いも基本はこんな感じで、魔法以外は何もできないとされていましたから、80年代の専業魔法使いってこんな物かと」

シロ「今の魔法使いは、もっとできることが多いんですね」

NOVA「知識系の技能とか、交渉系の技能とか、それなりにあるからね。で、今、改めて見ると、ロールマスターって基本ルールには知識系技能も交渉系技能も載ってないんだな。もしかして、後からサプリメントで補強されるのか?」

ヒノキ「何じゃ? 欠陥ルールか?」

NOVA「(ルールブックをざっと見て)ああ、あった。選択ルールで、副次的技能というのが40個も用意されていて、魔法使いだって、歌ったり、踊ったり、誘惑したりできるや。魔法のアイドルになるのも夢じゃない。ええと、副次的技能は2ポイントから3ポイントで伸ばせるようです。1ポイントで伸ばせる得意技は、信号(遠くに情報伝達する技能)と、天候予測と、瞑想か。5ポイント以上必要な苦手技能は、相手を気絶させる当て身と、凶暴化と、縄抜けなんかに使える柔軟の3つ。とりあえず、副次技能を導入しないと、野外探検や都市冒険などは楽しめないのだな、とは思う。キャラの個性付けのためにも副次技能は絶対に重要かと」

ヒノキ「今さらの話じゃと思うが、80年代のゲームだと、そういうものが基本ルールではなく、選択ルールという扱いだったんじゃな」

NOVA「ただ、現在の感覚だと当たり前のように使う技能がないんですね」

ヒノキ「例えば?」

NOVA「文献調査とか、歴史の伝承知識、薬草知識とかモンスター知識の類はないなあ、と思って、もしも今、ロールマスターをプレイして、そういう判定が必要になったら、どうするかを考え中です」

シロ「え? ロールマスターをプレイするつもりですか?」

NOVA「いや、そんなつもりは毛頭ないが、とりあえず文献調査が必要な場合は、魔法使いの精気界公開呪文リストにある《研究の技》リストを習得すればいいのか、とか、薬草知識は神霊界公開呪文リストにある《山野の法》リストにあるなあ、とか、まあ、当時のゲームだとスキルの代わりにスペル(呪文)を使って対処しろって話だったのか、と納得です」

ヒノキ「まあ、魔法使いが呪文書を読むのに、いちいちリードマジックの呪文を使わないといけない時代じゃったからのう」

NOVA「ロールマスターだと、レンジャーが速く走るのも、追跡するのも、荒野で食べ物を探すのも、専用呪文扱いですからねえ」

シロ「キャラの特殊技能が技ではなくて、術扱いだったのですね」

 

NOVA「で、本題の吟遊詩人に戻りますと、向上ポイント1点で伸ばせる通常スキルが唯一、〈言語〉スキルだけの反面、多くの技能を2〜5で伸ばせるという多芸ぶりが特徴」

ヒノキ「専門的な技は持たないが、何でも割安で習得できるということか」

NOVA「準魔法使いらしく、呪文リストが4ポイントで習得率20%になります(5段階向上で100%)。ただし、MERPでは精気界に属するのが、ロールマスターでは念力界に属する吟遊詩人になってます」

シロ「習得呪文に若干の違いが生じているんですね」

NOVA「精気界には癒しの呪文がないけど、念力界には自分限定の癒しの呪文や毒消し呪文がある。精気界では文献調査ができるけど、念力界では文献でなく道具を直接触って来歴などを調査できる。また、念力界は物理防御の術が充実しているといったところか。まあ、吟遊詩人は専用呪文で、記憶術や文献調査などの《学習》呪文リストがあるし、アイテム鑑定の《目利き》リストや、音を使う術や、いわゆる呪歌に相当する《操り歌》リストが用意されていて、究極奥義が聞いた相手を即死させる【殺しの歌】という呪文」

ヒノキ「そんな呪歌を使うのか、ロールマスターの吟遊詩人は」

NOVA「まあ、レベル50という最強奥義ですけど。普通は、レベル2の【金縛りの歌】とか、レベル5の【子守り歌】、レベル6の【友愛の歌】といった穏やかな効果でしょう」

シロ「ロールマスターって、レベル50なんてデータがあるんですね」

NOVA「そこまでプレイしたことのあるロールマスターの達人が、日本に何人いるかは知らんがな。なお、MERPの方は最大レベルが10までなので、それ以上をプレイしたければロールマスターに移らないといけない仕様だった」

ヒノキ「極めた吟遊詩人が歌で相手を即死させる恐ろしい職業であることは分かった。念のため、普通の魔術師でそういう呪文はあるのか?」

NOVA「魔術師は攻撃呪文のエキスパートなので、ダメージ呪文は充実していますし、ダメージの結果として死ぬことはあっても、即死呪文はないですね。まあ、他の術師(とりわけ悪専用の邪念術師)にはずいぶんとえげつない系の呪文が見られますが。悪の呪文使いのルールって、一般プレイヤーはじっくり読む機会が少ないと思いますが、そういうところに創作のネタがいっぱい転がっているので、イヤらしい悪役を設定するのにいい参考資料になるんじゃないかな、と」

ヒノキ「邪悪な魔術師の話は置いておいて、邪悪でないのに【殺しの歌】などという物騒なものを覚える吟遊詩人の話に戻そう」

NOVA「とにかく、ロールマスターの吟遊詩人は専門家には勝てないけど、武器も魔法も忍びの技もそれなりの安価で習得できるので、プレイヤーの好みに応じて自由にカスタマイズしやすいのが最大の特徴。しかし、バード最大の長所は向上ポイント1で習得できる副次的技能が非常に充実している点。演技、音楽、歌唱、信号、調理、舞、誘惑、話術と8種類もあって、他の副次的技能も総じて2〜3ポイントで習得できる。唯一苦手なのが当て身ですね。盗賊が実は当て身を1ポイントで習得できるので、いかにも犯罪者にして裏社会の住人なのに対し、吟遊詩人は表社会の住人だから、腕っぷしで相手を気絶させるなんてことはしない」

シロ「まあ、それよりも呪歌で相手を眠らせるのがバードの流儀じゃないですかね。それと、ボク個人の特技にもつながるのですが、吟遊詩人は調理もできるんですか」

NOVA「他に調理が得意な職業は、盗賊、神官、まじない師、道士となっているな。調理の中には、日常料理のほかに、悪くなった食材を見分けたり、危険な薬草や食材の毒抜きをしたり、毒物を作ることも含まれるそうだ」

ヒノキ「盗賊ギルドの表看板が食堂や酒場ということも多いじゃろうし、神官も神へのお供え物として料理をこしらえることもあろう。ところで念のため、ロールマスターのレンジャーは何が得意なのじゃ?」

NOVA「向上ポイント1で伸ばせるのは、航海術(陸上で星や地形から、方向や現在地を調べることも可能)、食料探し、信号、天候予測ですね。意外と、追跡技能が2で普通なのは、呪文でまかなえるからでしょうか。戦士や忍びの方が追跡1で成長できるので、技能的には得意としている」

 

AD&D2版と、D&D3版のバード話

 

NOVA「それで、とにかく吟遊詩人の多芸ぶりを他のゲームからでも確認するって話でしたが、AD&D2版のバードもまた多芸ですな。とりわけ技能ルールを導入した場合、バードが習得できる技能リストは、ローグ、ウォリアー、ウィザードと共通の4種類もあって、プリースト以外の技能は何でも習得できる。逆に習得できない技能を考えた方が早いです」

ヒノキ「プリーストにしか習得できない技能じゃな」

NOVA「治療のみです。プリースト用の技能を習得できるのは、クレリックドルイドパラディンの3職なので、バードは唯一治療役にはなれませんが、他の技能は何でも覚えられる。呪文にしても、パラディンが9レベル、レンジャーが8レベルにならないとプリースト系の呪文が使えないのに対し、バードは2レベルでウィザード呪文を使えるようになるので、呪文使いとしても結構有能ということになる」

ヒノキ「使える呪文には制限がないのか?」

NOVA「3版以降のバードは、ファイアボールのような強力なダメージ呪文が基本的に使えなくなっているのに対し、2版のバードはウィザードと同じ呪文を使えますから、武器での戦闘能力は下がった反面、魔法火力は最も高い形ですね。3版ではバードの呪文リストの中に、キュア系の回復呪文が含まれており、ウィザードとは違った呪文活用をする(攻撃より支援重視)のに対し、2版のバードは魔法使いと肩を並べてメイン火力補佐として十分に機能します。イメージとしては、クラシックD&Dの魔法戦士のエルフと似たような運用も可能でしょう」

シロ「いわゆるディードリットですね」

NOVA「武器も魔法も両方使えるけど、打たれ弱さという欠点があるので、戦士と肩を並べて前に出ると結構危険。ザコの集団相手なら前線でも戦えるけど、レベルが上がるほど敵の命中率も上がって鎧の防御力上昇が追いつかないから、鎧を過信してうかつに前線に出るのはマズいと考えるのが、手慣れたクラシックD&Dプレイヤーだと思う。HPの差は高レベルになるほど広がるからな」

 

ヒノキ「それで、2版のバードは魔法火力として優秀という意見じゃが、3版はどうじゃ?」

NOVA「呪文リストのレパートリーが大きく変わったせいで、ダメージ呪文を撃ち放つ戦術が使えなくなりました。序盤はスリープとかチャームなどがメインで、そこにキュアなんかも使えるので、支援魔法使いの道を模索するか、回復サポートに回るかの選択ですな」

シロ「使う魔法の傾向がドルイド系に戻ったということですかね」

NOVA「ドルイドそのままではないけれど、確かに支援および回復が多いのはドルイドっぽいかもしれない。他には心を操る系の呪文や情報関連の呪文が充実しているのが、ドルイドとの差異だと思うが、さておき。3版は他の版よりも転職兼職ゲームの傾向が大きいので、転職条件を満たすためにバードの特長を利用するという手もある」

ヒノキ「バードの特長とは?」

NOVA「その1、ローグの次に習得技能数が多いし、得られる技能の種類も多い。技能目当てならローグが一番だが、ローグに習得できない知識関連の技能をバードは習得できるので、転職先によってはバードからの転職が効率よくなる」

ヒノキ「知識関連の技能だと、ウィザードなんかが専門ではないか?」

NOVA「いや、ウィザードはもらえる技能ポイントが少ないですから。各レベルでもらえる技能ポイントが、ウィザードは『2点+知力ボーナス』で、バードは『6点+知力ボーナス』だから、ボーナス抜きに3倍の差があります。技能だけを目当てにウィザードを経由するのは、HPも低いですし、避けた方がいいです。まあ、呪文目当てなら妥当なんでしょうが」

シロ「ああ。転職の際に魔法使いを通過すると、HPが低くなるのですか。それを考慮すると、バードの方がいい、という話ですね」

NOVA「バードの特長その2は、秘術魔法の使い手の基本クラス中で最もHPが高いから、それ系の呪文使用能力が転職条件の場合、魔法戦士を目指す際の候補にしやすい」

ヒノキ「魔法戦士を目指すなら、ファイターとウィザードを経由するのが最適解ではないか?」

NOVA「攻撃ボーナスと呪文使用能力が条件なら、それが近道かもしれませんが、そこに技能までが加わると、ファイターやウィザードはもらえる技能ポイントが少ないですからね。すると、ローグを挟むという選択もありですが、兼職が多いのはルールの理解でも運用でも手間が掛かるということを考えると、バード一つで技能条件と秘術呪文の発動条件を満たせるのはシンプルで分かりやすいという利点があります」

シロ「元々が複合職だから、一職だけでも転職条件を満たしやすい、と」

NOVA「これが信仰呪文なら、基本のプリーストのHPがD8ベースだから、HPの低さを気にする必要がないんだが、ウィザードやソーサラーは3版当時はまだD4ベースなので、打たれ弱さはクラシックD&Dのまま。転職条件を満たす目的にせよ、それらの職業に就いている期間が長いほど総HP量が伸びなくなる。後衛魔法使い専業なら、それでもいいのかもしれないけど、前衛にも出たい魔法戦士を志望するなら、D6ベースのバードで技能と同時に秘術魔法の能力を伸ばす方が有利という考えもあるわけで」

ヒノキ「現在のシステム(5版)じゃと、いわゆる魔法戦士のエルドリッチ・ナイトは、ファイターのサブクラスの一つじゃから、別にウィザードに寄り道しなくても就くことができるが、3版の時点では上級クラスへの転職条件を満たすための紆余曲折をあれこれ模索するのも、重要なゲーム性と言えるのじゃな」

NOVA「欲しいスキルを求めて、職を転々とするシステムはウォーハンマーが走りだとは思いますが、そこから90年代にはFFやドラクエが取り入れて、日本では一気にメジャー化した。リアル社会でも一職専従よりも、バイト探しや副業という職の流動性がメジャーとなる風潮があって、TRPGのシステムの流行は時代の合わせ鏡になっているようにも思えますね」

 

シロ「転職のための素材としてバードが便利だというのは分かりましたが、バード単独では何ができるんですか?」

NOVA「技能や呪文以外では、3版より呪歌がシステマチックになった。2版でも、インフルエンス・アザーズ(音楽や話芸で相手の感情に影響を与える)という特殊能力があって、戦闘以外の場面で使えるんだが、戦闘支援に活用しようと思ったら、事前に3ラウンドの溜めが必要だった。なお、2版では1ラウンド=1分ほどという設定なので、3分間、歌を聴いて戦意を高めてから、戦闘に突入するという段取りになって、そんな悠長な局面は少ないと思われる」

ヒノキ「で、その効果は?」

NOVA「周囲の味方の命中判定かST判定に+1ボーナスで、使用に手間が掛かる割に効果が微々たるものなので、全く使いものにならない能力だったが、3版でははるかに使いやすくなった」

ヒノキ「ソード・ワールドの呪歌ともまた違うルールなのじゃな」

NOVA「あちらは敵味方まとめて効果を発揮する仕様なので、普通の呪文よりも扱いにくいですね。そもそも、呪歌を使うってことは、その間は武器攻撃や魔法を使用できないということだから、それに匹敵するだけの効果がなければ、わざわざ選ぶ必要がないわけです」

ヒノキ「魔法には使用回数制限があるから、通常行動で何をするかじゃな」

NOVA「3版だと、呪歌にも1日にレベル回数という制限がありますので、魔法の呪文の使用回数に加えて、呪歌という特殊能力が増えたという感じですね。最初から使える呪歌は以下の3種類」

 

  • 打ち消し:相手の呪歌や同種の音声にまつわる特殊効果を無効化する(抵抗のためのST判定を可能にする)。
  • 恍惚:相手を聞き惚れさせて、行動不能にする。近くで戦闘が発生したり、明確な危険にさらされると相手は正気に戻るので、戦闘中には使えない。
  • 勇気鼓舞:周囲の味方の命中およびダメージボーナスに+1、魅惑や恐怖などの特殊効果に対するST判定に+1のボーナスを与える。レベル8で効果+2、レベル14で効果+3、レベル20で効果+4まで上昇する。

 

NOVA「呪歌の種類はレベルとともに増えて行きますが、同時に〈芸能〉技能のランクも必要条件になりますので、呪歌を活用しようと思えば、〈芸能〉技能の上昇も必須ですね」

ヒノキ「それが本職じゃから、問題なかろう」

NOVA「なお、〈芸能〉技能を得意とするのはバード、ローグ、モンクの3職で、他の職業が習得するには技能ポイントが倍必要になるわけですね。これでファイターやウィザードが楽器を演奏するような個性も持たせられますが、あくまで趣味の範疇で、高ランクに伸ばすことは難しい、と」

シロ「〈芸能〉ということは、楽器演奏や歌唱以外に何かできるのですか?」

NOVA「9種類の分野に細分化されるな。音楽関連が5種類(弦楽器、打楽器、管楽器、鍵盤楽器、歌唱)で、他に歌ではない物語の〈朗誦〉、〈舞踏〉、〈演劇〉、〈お笑い〉といったジャンルがある。これが発展型システムのパスファインダーになると、呪歌も呪芸と訳されて、歌や音楽以外でも特殊効果を発動可能になる」

シロ「つまり、〈お笑い〉専門のバードになって、一発ギャグで相手を恍惚とさせたり、勇気を鼓舞できたりするわけですか」

NOVA「まあ、ギャグで相手を笑わせて行動不能にするのはイメージしやすいが、ギャグで仲間を勇気づけるというのは、どういう演出なんだろうな」

ヒノキ「相手に暴言ツッコミ入れて、味方の士気を盛り上げるといった感じじゃろうか?」

NOVA「『や〜い、ザーコザーコwww。こんなゴミクズみたいな相手は、皆さんの敵じゃありませんよ(笑)。さあ、勇んでやっちゃって下さい。応援してますから♪』とか言ってると、味方が同意して、場が盛り上がるとか?」

シロ「攻撃的なお笑いって奴ですね。誰かをバカにすることで、ウケをとる系の」

NOVA「そんなわけで、変則的ですが、お笑い芸人のバードにだってなれるんですね、3版は」

ヒノキ「それにしても、命中ボーナス+1とダメージ+1がそれほど強い支援効果には思えんが」

NOVA「まあ、クレリックに1レベル呪文《ブレス》が命中+1と、対恐怖ST+1なので、ダメージ+1がある分、上位効果なんですね。ただし、バードの呪歌は効果の維持にアクションを費やさないといけないので、それが有用かどうかは味方の物理攻撃の回数に左右されると思います」

シロ「仲間の数が多いほど、個々の与えるダメージに+1が乗る分、自分が殴るより効果が大きくなるってことですか」

NOVA「ああ。それに個人の攻撃回数もあるな。戦士系は6レベルで攻撃回数2回、11レベルで3回、16レベルで4回に達するから、6レベルで支援効果が倍、さらに8レベルでボーナス+2だから、さらに倍と単純計算で考えることができる。それにレンジャーの二刀流やモンクの連打といった攻撃回数の多い仲間、またドルイドの動物の相棒とかも攻撃回数に含めることができるし、バード自身が《サモン・モンスター》の呪文で味方モンスターを召喚して、手数を増やせるからな」

ヒノキ「味方の攻撃回数をいかに増やすかが、バードが有用かどうかのポイントか」

NOVA「序盤は、《サモン・モンスター》でも弱いのを1体しか召喚できませんが、レベルが上がると強いのを1体か、弱いのを複数召喚できるので、戦況にもよりますが、弱いのを複数召喚して、呪歌で性能を底上げして人海戦術に活用するという手はありますね」

ヒノキ「ザコが大勢集まって、どれだけ効果的やら」

NOVA「ここで《サモン・モンスター》の活用法ですが、3版からは挟撃と機会攻撃のルールがありますからね。つまり、味方モンスターが複数、敵の周りに群がっていると、味方戦士の移動の邪魔にさえならなければ、挟撃の機会を増やしてくれるうえ、敵の移動妨害にさえなる。狼の群れを召喚すると、1体1体はザコに思えても、連携戦術を駆使することで大きな効果を発揮することも。さらに召喚には戦術上、非常に大きなメリットがあります」

ヒノキ「何じゃ?」

NOVA「召喚モンスターの出現ポイントが、術者のレベルアップに応じて、遠距離に設定できる。最初は25フィート、すなわちマップ戦闘だと術者の5マス以内ですが、レベルが2つ上がるごとに距離が1マス増やせる。レベル5だと7マス、レベル7だと8マスという感じに出現ポイントが遠く設定できると、位置どりによっては敵の後衛魔術師の周囲に召喚モンスターを出現させて、フルボッコにすることも可能か、と」

シロ「それは酷い奇襲攻撃ですね」

NOVA「当然、敵は身を守るために呪文を使おうとするけれど、呪文使用は機会攻撃を誘発しますし、機会攻撃でダメージを受けた魔法使いは〈精神集中〉判定に成功しないと呪文発動に失敗する。つまり、召喚モンスターは敵の魔法使い封じに有用ということになります。そんな召喚モンスターを強化できる呪歌使いは、中堅レベルになると大きな戦果を発揮できるでしょう」

シロ「いわゆるコンボ技ですか」

NOVA「もちろん、召喚魔法はバード以外が使ってもいい。実のところ、召喚魔法を使えるクラスは多くて、ウィザード、ソーサラークレリックドルイド、レンジャーも使えます。ただ、ウィザードやソーサラーはダメージ魔法が主体になるし、クレリックは治癒系や防御系で忙しい。レンジャーは呪文レベルの伸びが遅くて、3版時点では弱い呪文しか使えない。必然的に、召喚魔法を活用しやすいのはドルイドとバードと考えられるわけで」

ヒノキ「つまり、バードの最強戦術はボス戦に際して、モンスターを召喚して、次のラウンドで呪歌を奏でて仲間ともども強化。その後は、延々と呪歌を演奏し(歌い)続ければいい、と」

NOVA「まあ、他の運用法もあるかもしれませんが、ザコ戦では後衛でショートボウでも射っていて、強敵戦で呪文と呪歌を駆使して、味方を暴れさせるのが強いと思いますよ。後は、召喚モンスターを操作するのがDMか、バードのプレイヤー自身かにもよりますが、前者はDMの負担が大きいので、バード役に任せて欲しいと自己申告すれば、たいてい受け入れてもらえると思います。バード自身は攻撃ダイスを振らなくても、召喚モンスターの分を振るようにすれば、ダイスを振れなくてつまらない、ということは絶対にないでしょうね」

シロ「敵が召喚モンスターを駆使して、同じような戦術を取ってきたら、どうしますか?」

NOVA「まず、DMにその卑怯な戦術をなじる(笑)。すると、DMはこう言うんだ。『護衛も付けずに、魔法使いを孤立させる方が悪い』と。そんな場合に、魔法使いの護衛を担当するのもバードの仕事になるんじゃないかなあ。魔法使いの周りのザコモンスターを眠らせたり、無力化させる程度の支援はできるだろう。数が多いということは有象無象というルールなんだから、物理戦闘力を持たない魔法使いには脅威でも、それなりの戦闘力を備えたバードにとっては十分あしらえる敵のはず。もちろん、手の空いた護衛戦士や神官に応援を求めてもいいだろうがな」

 

ヒノキ「……とまあ、バードの実戦活用講座という趣きになって来たのう」

NOVA「とにかく、バードはいろいろできる多芸職なので、戦士と肩を並べて剣を振るうという前衛バリバリにはなれない代わり、多様なスキルや呪文、特殊能力を駆使して、できることが幅広い。そして場合によっては、軍師役とも言うべき指揮能力を求められることもある。その支援効果は個人でなく、パーティー全体の能力を見極めながら、それに上手く合わせるように自己の役割を見定める必要がある。基本的にはパーティーに足りない能力を補うようにするのと、呪文使用に融通が利く(ソーサラー同様、習得した呪文を準備する必要がない)ために、戦況に応じて臨機応変に対処する能力が問われるわけだ」

シロ「もちろん、ダンジョンなどでの戦場以外では、情報収集や交渉役としてロールプレイする資質も必要でしょうね」

NOVA「何でもできるキャラというのは、何でも考えないといけないってことだからな。それと同時に、全てを自分が、と出しゃばるのではなくて、専門分野では仲間を立てるように振る舞うヨイショ芸なんかもバードの本分じゃないかな。仲間を気持ちよく盛り上げるムードメーカー役もバードの資質なんだろうし」

(当記事 完)