三獣士、参上
リモートNOVA『バーバリアン話とレンジャー話の続きだが……』
ゲンブ「アリナ様は今回、お休みでござる」
NOVA『おわっ、ゲンさん。久しぶりだな』
シロ「ゲンブだけじゃない。ボクもいる」
ジュニア「リウもですぅ」
NOVA『そうか。コンパーニュ三獣士、久々の出番ってことだな』
ゲンブ「前は10月に『新星界スターロード』のキャラメイク記事に参加して以来でござる」
NOVA『作るだけ作ったけど、プレイする気はないってことだったな』
ゲンブ「D&Dでもキャラ作りをする気はござらんか?」
NOVA『いや、D&Dは昔からいっぱいキャラ作りをして来たからなあ。4版を除くと、一通り作った記憶があるし、こう言っちゃ何だが、俺にとっては定番すぎて今さらキャラ作りだけで楽しめるシステムじゃないんだ。育成の方が楽しいゲームだと思う』
ジュニア「でも、リウはD&Dをプレイしたことはないのですぅ。セイリュウ・ジュニアとして、竜の名を持つゲームをプレイしたことがないのは残念ですぅ。今度、DMしてくださいませんかぁ?」
NOVA『俺が? シナリオはいっぱい持ってるが、それよりも俺が気にしてるのは、こっちなんだよ』
シロ「それは、指輪物語のゲームですね」
NOVA『年末にサプリメントが出て、「裂け谷のエルフ」や「闇の森のエルフ」「熊人ビヨルンの一族」なんかが実装される他、「ソロプレイ用のルール」なんかも入っていて、ロアマスターなしでも遊びやすそうと思ったり』
ジュニア「しかし、それはD&Dとは関係ないですねぇ」
NOVA『いや、それがD&Dともつながって来るんだよ。厳密には、D&D5版のシステムを流用したフィフスエディション(5e)RPGというのがあってな。ホビージャパンはD&Dの版権は契約期間が切れて持ってないが、フィフスエディションRPGで展開しているんだな。クトゥルフとか』
ゲンブ「クトゥルフもいろいろなシステムで展開しているでござるなあ」
NOVA『ああ。本家はベーシックRPGの7版だと思うが、他にSNEがサポートしてる「トレイル・オブ・クトゥルー」と、FEARさんのダブルクロスのサプリメント「クロウリングケイオス」などが現在進行形のクトゥルフ系システムだと思う』
ゲンブ「現在進行形で4つもクトゥルフのシステムがあるのでござるか」
NOVA『それぞれのシステムの特徴とか、向き不向きはあるんだけどな。ホビージャパンのは、D&Dと組み合わせたシステムで、ダークファンタジー成分が濃厚。CoC7版こと新クトゥルフは、現代(または1920年代)を舞台にした定番クトゥルフ。SNEのToCは調査主体の新基軸だが、システムとしては一番地味かも。そしてダブルクロスにクトゥルフ要素を導入したバージョンは、都会のアクションアドベンチャーで派手なダークヒーロー活劇をプレイできるか。とにかく、クトゥルフという題材で、各社が別システムを出して盛り上げてるか、シェアの奪い合いをしているのか、どちらとも受け取れる現状だな』
ジュニア「だけど、今回は別にクトゥルフの話がしたいわけじゃないですよねぇ」
NOVA『ああ。したいのはフィフスエディションRPGの話で、来年春に「一つの指輪」も5eシステム版が改めて出るそうだ』
シロ「つまり、D&Dの指輪サプリメントみたいなものですか?」
NOVA『まあ、GURPSとかD20システムで、いろいろな世界観のサプリメントが出たようなものだな。D&Dの根幹システムはOGLと言って、ファンや他社が自由に使うことを許諾されているみたいだから。システムは流用して、世界観だけを自作すれば、ビホルダーとかアウルベアといった一部の版権付きモンスターに抵触しない限りは、怒られることはないらしい。そんなわけで、ホビージャパンもD&Dブランドそのものは使えないけど、5e版と称してD&Dサプリとしても使える製品を出している、と』
ゲンブ「D&Dの旧5版に基づくフィフスエディションRPGの基本システムは、ネットでも無料配信されているでござるな」
NOVA『指輪と言えば、こちらの映画も年末公開なので、密かに楽しみにしている』
前置きを終えて
ゲンブ「で、今回はバーバリアンとレンジャーの話の続きということでござるが?」
NOVA『ところで、先に聞いておきたいが、このメンツでD&D話をどこまで深めればいいんだ? D&Dのプレイ経験は?』
ゲンブ「我は、アリナ様や先代セイリュウ殿と同等。3版までならプレイ経験もあるでござる」
シロ「ボクはプレイ経験がありませんが、ルールなら読みました。一通りの用語なら理解しています」
ジュニア「リウは……」
NOVA『君はさっき聞いた。キャラ作りもしたことがない素人だな』
ジュニア「それはそうですけどぉ、ソード・ワールドなら経験者ですしぃ、ウォーハンマーだってキャラは作りましたぁ。D&Dの機会がなかっただけですぅ」
NOVA『つまり、TRPG経験は普通にあるってことだな。まあ、D&Dの少なくとも5版は、素人を拒むものではないし、初心者向きのシナリオだって用意されている』
ジュニア「では、初心者向きの話を……」
NOVA『いや、レンジャーとバーバリアンで初心者向きの話にはならないだろう? 初心者だったら、ファイターとかクレリックとか、その辺から語るのが筋だと思うが、話に途中から割り込んできて、初心者向きも何も……』
ジュニア「レンジャーなら分かりますぅ。野外の探索系の技能を持っていて、飛び道具が得意で、薬草の扱いに慣れているんでしょぉ? ソード・ワールドで学びましたぁ」
NOVA『間違っちゃいないが、D&Dでは微妙に違う。ソード・ワールドのレンジャー技能は、テーブルB技能と言って、安い経験点で伸ばせる補助技能だ。ファイターとかプリーストなどのテーブルA技能と組み合わせないと、冒険で活躍させにくい』
ゲンブ「重要度の高いテーブルA技能は、ファイター、グラップラー、ソーサラー、コンジャラー、プリースト、フェアリーテイマーの6つでござったか」
NOVA『いいや、マギテックを入れて7つだ。後から、サプリでドルイド、バトルダンサー、デーモンルーラー、アビスゲイザーが加わったがな』
シロ「ちょっと見ない間に、いろいろ増えてますね。テーブルBは、フェンサー、シューター、スカウト、セージ、レンジャー、エンハンサー、バード、ライダー、アルケミストでしたっけ?」
NOVA『サプリで加わったのは、ウォーリーダー、ジオマンサー、それと最近加わったダークハンターだな。気が付けば23個も冒険者技能があるんだな』
ジュニア「バーバリアンはないんですかぁ?」
NOVA『ソード・ワールドでは、バーバリアンは職業ではなく、種族扱いなんだ。蛮族(バルバロス)がD&Dで言うところのバーバリアン(蛮人)に相当すると考える』
ゲンブ「なるほど。確かに、バルバロスとバーバリアンは語源が同じでござるな」
NOVA『D&Dのバーバリアンは、蛮人コナンがモデルのマッチョな戦士。ファイターの基本が重装甲戦士なのに対し、バーバリアンは防具を着なくても、【耐久力】ボーナスをACに加えることができるなど、筋肉が鎧みたいな扱いになるんだな。さらに、バーバリアンはファイターよりもHPが高く、版によってはHPが自然回復するなど、ファイター以上の身体能力を誇ったりするわけだ』
ジュニア「つまり、ソード・ワールドでも蛮族キャラを使えば、豪快なバーバリアンらしいプレイができるわけですねぇ」
NOVA『そもそも、蛮人って人間文明を軽蔑し、力で全てを勝ち取り、野生の本能を重視する弱肉強食の生き方を是とするからな。欲しいものは力で奪いとれっていう秩序否定のキャラは、D&Dでは受け付けるが、ソード・ワールドでは人族の法に反するわけで、冒険者ギルドという組織とも相入れないのが普通』
シロ「ミストキャッスルやミストグレイヴみたいな蛮都は別ですけどね」
NOVA『蛮族の法は、強い者が正しいということだからな。もちろん、人族の中にも無法者の悪党はいるし、ギルドに所属しない自由人的な冒険者のヴァグランツだって存在するが、基本ルールでは「冒険者ギルドに所属する、法と契約を守る良き市民にして文明人たる職業冒険者」をプレイする。一方、D&Dには冒険者ギルドという公組織は存在しないし、冒険者という社会身分は保証されていない』
ジュニア「冒険者と自己紹介した場合に、世間の人の目が違って来るわけですねぇ」
NOVA『ソード・ワールドだと、ギルドが街の公的機関だから、「◯◯の街の冒険者ギルドに所属している」と言えば、田舎の村人なんかは冒険者さま、と敬意を示してくれるかもしれない。ギルドは今の日本だと、大手派遣会社みたいなものだな。一方、D&Dだと、冒険者は自己紹介の保証にならない』
シロ「別の社会身分が必要だ、と」
NOVA『一番、安定感があるのが「◯◯神の司祭」とかだな。もちろん、邪神とかだと別だろうけど、社会身分的にはクレリックが一番、交渉しやすい。他には、「騎士団所属」も身分保証にはなるが、一国の騎士よりも教団の司祭の方が権勢範囲が広そうだ』
ゲンブ「しかし、D&Dの英雄は所属組織よりも個人の名声が轟くことを望んでいるのでは?」
NOVA『それは冒険の目的であって、まずはパトロンとなるべきコネが必要だな。クレリックは教会組織で、盗賊は盗賊ギルドで、戦士と魔法使いは特定の組織がルールでは定められていなかったが、D&Dも4版まではキャラクターの背景を決めるルールは、基本システムに実装されていなかったからなあ』
シロ「今のD&Dは、背景によって初期装備や習熟技能が決まってくるシステムですねぇ」
NOVA『これによって、盗賊ギルドに所属している(犯罪者背景の)バーバリアンだって作れるからなあ。逆に、ローグが犯罪者だとは限らない。貴族出身のローグだって作れるわけだよ。タキシード仮面とか、黒いチューリップみたいな、な?』
ゲンブ「黒いチューリップと言われても、今どき分かる人は稀でござろう」
NOVA『改めて、クラスと背景の組み合わせをあれこれ考えるのが、5版は面白いと思うんだが、初心者向きには「ローグ=犯罪者」「バーバリアン=辺境育ち」「レンジャー=辺境育ち」と典型的な背景を提示しつつ、あえて異なる背景を選ぶのも面白い』
ゲンブ「バーバリアンとレンジャーがどちらも辺境育ちという点で、通じるものがあるでござるな」
NOVA『旧5版の背景は、イカサマ師、隠者、貴族(騎士)、ギルドの職人(商人)、芸人(剣闘士)、賢者、侍祭、犯罪者(スパイ)、船乗り(海賊)、浮浪児、兵士、辺境育ち(放浪者)、民衆英雄と言ったところだ(PHB内のデータ。その後、サプリメントでいろいろ追加されている)。新5版の方は、ざっと確認すると、農夫、衛兵、辺境案内人、書記、旅人といったものが加わっているな』
シロ「前は、農夫というのがなかったのですか?」
NOVA『農夫も含む村落出身の冒険者が、背景:民衆英雄(フォークヒーロー)だったんだが、新5版では削られたようだ。まあ、背景が英雄というのも少し違和感を覚えていたんだよな。ともあれ、新5版は種族も背景の中に含まれるようになって、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、ハーフリング、ノーム、ドラゴンボーン、ティーフリングが残留し、ハーフエルフとハーフオークが削られた。代わりに、オーク、アアシマール、ゴライアスが加わったわけだが』
ジュニア「アアシマールとゴライアスって何ですかぁ?」
NOVA『アアシマールは天使の末裔で、ゴライアスは石の肌を持つ頑丈な巨人種族(身長2メートル越えが標準サイズ)。ついでにドラゴンボーンは竜人で、ティーフリングは悪魔の末裔と言われる種族だな。どちらも4版で基本のプレイヤー種族に採用された』
ゲンブ「新5版の情報も気になってるのでござるな」
NOVA『そりゃあ、D&Dファンとして最新のルールがどうなってるかは、それなりに気になるじゃないか。先行情報も2年前からあれこれ出てはいたんだが、確定情報が出るまでは噂にしか過ぎないからな。しかし、夏から現物が発売されると、先に英語版を買った人間もチラホラ情報を流してくれるし、英語版のサイトでも少なからず商品紹介が出て来る。細かいデータの中身は分からなくても、職業リストとか背景リストぐらいは普通にチェックできる。それらと過去のバージョンを比べたりするのも一興ってことだよ。
『なお、ゴライアスは4版のPHB2にも載ってあるし、アアシマールは同じPHB2で「天使の転生種族デーヴァ」という名前に改変されて採用された。その後、旧5版のサプリメント「ヴォーロのモンスター見聞録」でプレイヤーキャラとしてのデータが、どちらも採用されてからの今回に至る。サプリの追加種族から、コアルールに来たことで、今後のD&D界隈には天使の末裔が増えるのではなかろうか』
ゲンブ「もはや、レンジャーとバーバリアンの話ではなくなってるでござるな」
NOVA『何だ、ゲンさん? 新5版の話に興味はないのか?』
ゲンブ「いや、アリナ様から言われていてな。『新兄さんに好きに喋らせると、話の筋道が寄り道脱線して、まとまりが悪いので、時々軌道修正をしてやらんと読者が困るだろう』とのこと」
NOVA『う〜ん。では、本筋に戻るとするか』
レンジャーと二刀流の話
NOVA『レンジャーもバーバリアンも、軽装ファイターで自然に馴染んだ野戦士という意味では同じなんだが、ロールプレイのイメージとしては大きく異なる。レンジャーはクールなテクニシャンで、バーバリアンはホットで豪快。4版では同じ撃破役でも手数で押して、ヒット&アウェイ戦術が得意なのがレンジャー。一撃必殺の破壊力と、敵の攻撃はかわさずに体で受けて、傷ついた分だけ強くなるとか、ウオーッと叫んで荒れ狂うのがバーバリアンだな』
シロ「D&Dのレンジャーは二刀流が得意だと聞きました。まるでニンジャですね」
NOVA『そう、D&Dレンジャーと言えば、二刀流か弓が得意というのが相場だな。弓は分かるが、この二刀流が得意という元ネタがよく分からない。レンジャーの元ネタの一つである「指輪物語」の野伏アラゴルンは、アンデュリルという伝説の剣を持つが、別に二刀を振るうキャラではないし、AD&Dでは闇エルフのドリッズトが二刀使いで、彼の登場以降はレンジャーが二刀を使うのが定番となっているが、それ以前が謎なんだよな』
ゲンブ「二刀レンジャーはD&Dが起源でござるか」
NOVA『誰か、そういうことを調べてないかな、と思って探してみたら、良い研究記事を見つけたので、ラッキーと思ったり』
シロ「レンジャーが強かったのは、AD&D初版とその後のサプリで、どんどん強化データが盛られた末に行き着いたのが、ドリッズトだったんですね」
NOVA『AD&D初版のPHBは昔、英語版ルールを買って、主だったルールの概要を自分で翻訳したりもしたんだが、2版が出たことで必要ないと考え違いをして、処分してしまったんだよなあ。初版レンジャーから2版レンジャーになって弱体化したことや、初版PHBではエルフがレンジャーになれなかったことは忘れていたや。というか、そこまで、じっくりルールを比較検証してもいなかったし。次々と出るTRPGのルールブックを買ったり、読むのに忙しい日々で、D&Dだけに時間をかけているわけじゃなかったからなあ』
ゲンブ「とにかく、2刀レンジャーは、AD&D初版のPHBにはなくて、サプリメントで強化された後、小説のドリッズトの人気向上で、2版にレンジャーの特殊能力として実装された、と」
NOVA『2版では、二刀流の場合に命中判定が利き手マイナス2、逆手マイナス4のペナルティーで、レンジャーだけはペナルティーなしで使用できる。他にも、二刀流できるのは軽武器のみ(ロングソードとショートソードとか)で、レベルアップで攻撃回数が増えても、二刀流の攻撃回数は倍にならずに、増えた攻撃回数+1になるだけで、意外と弱いな、と思った』
シロ「でも、版によって二刀流のルールもマイナーチェンジされるんですよね」
NOVA『まとめると、こんな感じだな』
- 3版:レンジャーは《両手利き》と《二刀流》の特技を標準搭載。ただし、それを活用できるのは、軽装鎧(レザーアーマー)までで前衛に出るのは危険。なお、二刀流のペナルティーは非常に大きくて、利き手マイナス6、逆手マイナス10。逆手武器が軽ければ、マイナス4、マイナス8になって、《両手利き》を習得していれば、逆手は利き手と同じペナルティーで済む。以上の条件を合わせて、《二刀流》習得で、ようやく両手のペナルティーがマイナス2で落ち着く。どうしても二刀流戦士を使いたいなら、特技を2つも習得するよりは、レンジャーを1レベルだけでも入れる方が絶対に得。
- 4版:戦闘スタイルを、弓レンジャーか二刀流レンジャーで選べる。弓レンジャーは《移動時の守り》で機会攻撃に対してAC+2ボーナス。二刀流レンジャーは《追加HP》+5。二刀流はパワーによって行うもので、そういうパワーを持っていないキャラは両手に武器を持っていても活用できない。レンジャーは二刀で攻撃するパワー、もしくは矢を連射するパワーをいっぱい使えるので、二刀流(あるいは弓)の専門家と言えるわけである。逆に言えば、レンジャー以外で二刀流を行うのは、不利というより意味がないというルール。
- 5版:ファイターも得意な戦闘スタイルで二刀流を選べるので、レンジャーの専売特許ではなくなった。逆に、レンジャーは二刀流にこだわらなくても、「片手武器+盾」の戦闘スタイルを選ぶことで、普通に接近戦をこなせる。二刀流の命中ペナルティーはないが、逆手武器は軽武器に限られる。特技《二刀の使い手》を習得していれば、AC+1のボーナスを得たり(片方の武器を防御用に扱える)、軽武器でなくても二刀流できるようになる。
NOVA『こう見ると、3版のレンジャーが一番キツいことが分かる。二刀流を使いこなそうと思えば、革鎧で前線に出ないといけないが、それがいかに危険なことかはD&D経験者なら分かるだろう』
ジュニア「装甲が薄くても、回避能力が高ければいいのではぁ?」
NOVA『ソード・ワールドなら回避盾という言葉もあるし、軽装鎧のグラップラーやフェンサー、バトルダンサーなんかは回避能力を高めるという選択もあるが、D&DはAC制を取っているため、装甲の厚さと回避を一元的に考える。すなわち、金属鎧でACを上げることが物理防御では絶対に必須になる。固い鎧だと、敵の攻撃を固い装甲で受け止めて、結果的に回避できたことになるわけだし、3版の革鎧とプレートメールはACに6差、すなわち30%の命中差が出て来るわけだ』
ゲンブ「その差を【敏捷力】ボーナスで補えればいいのでござるが、ボーナスは多くても+3から4。つまり、革鎧とプレートの差には届かないでござるな」
NOVA『レンジャーで前線に立ちたいなら、最低でもAC+3のスタデッド・レザーを装備して、【敏捷力】ボーナス+3でAC16は欲しいところだな。これがファイターなら、重装鎧で+6以上、ラージシールドで+2で、AC18以上に達する。できれば、早急にフルプレートを買ってAC20に至りたいところだ』
シロ「レンジャーで前線壁になるのは難しいってことですね」
NOVA『いや、二刀流をあきらめて中装鎧と盾を装備すれば、ファイターに近いACは得られる。前衛で戦うなら、中装鎧と盾。軽装鎧にこだわるなら射撃戦の方がいい。二刀流はロマンだけど、攻撃回数が1回増えて、しかも軽武器+筋力ボーナスの半分のダメージが増える程度じゃ、割に合わないような気がする』
ゲンブ「クレリックの支援呪文《プレイヤー(祈祷)》で、ダメージボーナス+1を得たなら、2回攻撃が両方命中した場合にダメージ+2になるでござる。あと、マジックアイテムでショートソード+1やダガー+2なんかが出ても、小さい武器しか使えないハーフリングでもなければゴミアイテムと扱われようが、二刀流レンジャーの逆手武器であれば、そこそこ有用ではなかろうか」
NOVA『なるほどな。あと、ローグの急所攻撃と組み合わせるなら、2回攻撃のどちらかでも命中すれば急所攻撃が発動するから、レンジャーとローグの組み合わせは結構有効である。さすがに急所攻撃の発動は1ターンに1回だから、2回攻撃の両方に急所攻撃は乗らないだろうけど』
シロ「クラスの特徴を組み合わせて、少しでもダメージを高められる方法を考えるのがD&Dなんですね」
NOVA『3版以降は、特にそういう傾向が強まるなあ。次に4版だが、これは弓レンジャーでなければ、二刀流が常態だし、攻撃してから即座に移動して、敵の間合いから逃れつつ、味方の壁役の後ろに逃げ込むパワーがあったりするので、強敵に切り込んで、即座に後退するという戦術も可能』
ジュニア「それって、卑怯じゃありませんかぁ?」
NOVA『実は、4版レンジャーのパワーって、攻撃ついでに追加移動を行えるものが多いんだよな。さすがに、こういうのは抽象戦闘では遊べない。実は、4版のレンジャーが歴代で最も戦闘能力的に強いのだと思うよ。後は、移動しながらダメージを与えて行くパワーでもあれば、旋風のようなキルゲームが可能かも』
ゲンブ「5版はさすがに、そういうことは無理でござろう」
NOVA『5版は、二刀流が劇的に強いわけではないと思うけど、扱いやすくなったと思う。鎧の制約もないし、特技の《二刀の使い手》を習得するだけで、攻撃力も防御力も上がるので、二刀流使いは必須と言えよう。問題点は、二刀めの攻撃が必ずボーナスアクションを使うことになるので、他のボーナスアクションを使う技と組み合わせられないこと』
シロ「ボーナスアクションは、1ターンにつき1回しか発動できませんので、ソード・ワールドの補助動作と違って、同時にいっぱい発動できない、と」
NOVA『ソード・ワールドは、補助動作のいろいろできる職業がどんどん追加されるから、魔晶石をいっぱい買ってMPリソースさえ確保できれば、1ターンで何回行動できるんだよってぐらい補助動作が猛威を振るうようになっているんだな。消費の少ない低レベル技能をいっぱい齧っておくことで、サポートの鬼みたいなキャラを作れるようになってる。一方、D&D5版はボーナスアクションの制限のせいで、レベルが上がっても、あまり派手に組み合わせる連続行動は行いにくくなっている印象だ』
ジュニア「プレイが地味ってことですかぁ?」
NOVA『というか、レンジャーの二刀流がボーナスアクション扱いになったせいで、二刀流レンジャーというものが他に芸を見せられない単調なキャラになったように見える。二刀流で相手を攻撃するのって、通常攻撃の範疇なので、そこに別の技を組み合わせて何か凄いコンボを成立させたいと思うんだけど、二刀流による連続攻撃が既にコンボ扱いなので、それ以上は足せないというか、二刀流だけで完結してしまってるというか』
ゲンブ「それ用の特技を習得するだけで、ペナルティーなく最初から2回攻撃をできるのでござるから、十分強いということでござろう。派手ではないが、確実にダメージを積み重ねられるのがレンジャーの強さということではあるまいか」
バーバリアンの激怒
NOVA『さて、二刀流の強さや扱いやすさがレンジャーの評価につながるとしたら、バーバリアンの方は激怒(レイジ)の性能次第だな』
ゲンブ「バーバリアンは、ファイターのHPがD10なのに対して、D12というタフさが特徴でござるな」
NOVA『バーバリアンよりもHPが高いクラスとして、4版のウォーデンを初めて知ったときは驚いた』
ゲンブ「ウォーデンとは野生の守護者でござるな。バーバリアンが撃破役なら、ウォーデンは防衛役で、精霊に例えるならバーバリアンが火であるのに対し、ウォーデンは大地と言えよう」
ジュニア「ゲンブ師匠は、タフですからウォーデン向きみたいですねぇ」
ゲンブ「いや、タフさではお前の父親にはかなわんでござる。我は固い装甲が自慢であるが、装甲以外を攻撃されると結構傷つきもする。先代セイリュウ殿は、装甲なしでも強靭な皮膚、そして驚異の再生能力を誇ったりする」
NOVA『ゲンさんの強みは、地球の力を吸収できるエコの化身となったことと、子どもの味方という芯は決してブレないという優しさだな。セイリュウG様は、作品ごとのブレ幅が大きすぎる。少なくとも近年の日本G映画では、子どもたちが応援するような役回りでは絶対になくなっている』
シロ「怪獣話はさておき、バーバリアンの激怒ですが?」
NOVA『これも版によって、性能がいろいろと異なるので比較してみよう』
- 3版:初期段階では1日に1回、激怒を発動可能。4の倍数レベルで発動回数は1回ずつ増えて、最大20レベルで6回に至る。激怒の持続時間は、3+【耐久力】ボーナスのラウンド分。大体、5〜6ラウンドぐらい。激怒中は、【筋力】+4、【耐久力】+4(これによりボーナスは+2)になる。また意志セーブにも+2されるが、ACはマイナス2されるので、物理的なダメージを受けやすくなる。しかし、【耐久力】の向上により、レベルごとにHPが+2されるので、ダメージに耐えるタフさが備わる。激怒状態が終わると、その戦闘の間、疲労によって【筋力】と【敏捷力】がマイナス2されて、もう一度、激怒することはできないので、長期戦には向かない。
- 4版:激怒は1日毎パワーを使うことで発動する。1日毎パワーは5レベル、9レベル、20レベルで獲得できるので、最大で1日4回まで激怒できる。激怒状態はその戦闘の間ずっと持続し、ペナルティーはない。激怒中は、使用した1日毎パワーによって異なる継続ボーナスを得るほか、無限回パワー(通常攻撃)にもそれぞれのボーナスが付く。それによって、各パワー使用時の防御の不利を打ち消したり、移動力を増やしたり、追加ダメージを増やしたり、一時的HPが5点増えたりする。よって、3版とは逆に、ボスとの長期戦で非常に強いと言える。
- 5版:初期段階では1日に2回。その後、一定のレベルアップで激怒回数が増えていき、レベル3で3回、レベル6で4回、レベル12で5回、レベル17で6回、最大のレベル20で無限回使用可能。激怒の制限時間は1分間(10ラウンド)だが、戦闘中にダメージを受けなかったり、敵を攻撃しなかったなら、即座に終了する。激怒の効果は、【筋力】判定とSTに有利を得て、追加ダメージも初期状態で+2になる(レベル9で+3、レベル16で+4)。さらに[殴打][刺突][斬撃]ダメージに抵抗を得る(ダメージ半減)。以降、レベルが上がれば、激怒に各種の追加効果が付与されて行くことも。
NOVA『総じて、3版の激怒はペナルティーがある分、使用するタイミングの判断が難しいな。それに比べて、4版と5版はペナルティーなく気楽に激怒を使って行ける感じだ。版が進むにつれて、使いやすくなっている』
ジュニア「3版は、激怒したら防御がおろそかになるのに、4版と5版はそんなことはないのですねぇ」
NOVA『回数制限があるなら、魔法使いの魔法と同じだろうという考えかな。D&Dって魔法を使った後に消耗するシステムではないからな。4版は特に、派手にパワーの撃ち合いでバトルを楽しむゲームなので、パワーを使って不利になるのは駆け引きとしても面白くない、というゲーム思想なんだろうな』
シロ「5版と4版のバーバリアンは、どちらが強いと思いますか?」
NOVA『4版のバーバリアンは、傷つきやすいけど一時的HPなんかで打たれ強くなる。5版の方は、物理攻撃への抵抗が付くので傷つきにくい。どんどんダメージを受けるけど耐えるのが4版で、魔法以外のダメージには強いのが5版。破壊力が増すのは4版で、攻撃力がそれほど伸びないのが5版かな。ただし、5版はレベル2になると、激怒とは別に「捨て身の攻撃」(自分の攻撃が有利になる代わりに、相手からの攻撃も有利になる)とか、狂戦士のサブクラスを選ぶことで激怒よりもさらに強い「狂乱」(ボーナスアクションで攻撃回数が1回増えるけど、効果が終われば消耗状態になる)など、激怒と組み合わせる技がいろいろ習得できる』
ゲンブ「派手にダメージを増やせるのが4版で、地道に効果を積み上げていくのが5版と言ったところか?」
NOVA『いずれにせよ、バーバリアンの激怒は、戦闘時の本気モードって感じで、分かりやすく自己バフが掛けられるし、ロールプレイの材料としても有効だ。3版がテクニカルなゲームとするなら、5版はパワフルなゲームで、考えなしに前線で暴れたいキャラをやるならバーバリアンが強いな、と思う。ファイターが初心者向きじゃなくなった分、バーバリアンは初心者でも、とりあえず怒って突撃して暴れ回ったらいいので、運用しやすいという利点がある』
シロ「レンジャーはいろいろな選択肢を考えないといけないので上級者向きで、バーバリアンは原始の本能で怒って殴ればいいので、戦闘職をやりたいならお勧めってことですね」
NOVA『レンジャーは、魔法のルールも覚えないといけないからなあ。バカでもできるとは、とても言えない。バーバリアンはキャラ性そのものがおバカだから、ルールに詳しくなくても、戦術とか考えなくても、激怒してるだけで楽しめる』
ゲンブ「しかし、戦闘以外の能力を持たないから、そういう交渉ゲームを楽しみたい層には不向きでござろう」
NOVA『まあ、TRPGに何を求めるかだな。バトルが好きか、バトルでも直接の殴り合いが好きか、多彩な技や魔法を駆使するのが好きか、サポート役として仲間をフォローするのが好きかなど、いろいろな役割があって、バーバリアンに向いているのは、「とにかく相手をぶちのめせばいいんだろう。話は簡単だ。難しいことを考える必要はない。筋肉は全てを解決する」と言い切って恥じない人間だな』
ジュニア「リアルで、そんなことを言う人間とは社交が難しいけど、ゲームの世界だと痛快マッチョなキャラですねぇ」
NOVA『仲間にそんなことを言うキャラがいたら、常識人の苦労人とセットで話が面白くなるわけだ。なお、ドリッズトの初登場したアイスウインドでは、本来の主人公が蛮人のウルフガルなんだが、最近はマジックのカードで日本でも話題になっているようだ。そして、このページでも紹介されているんだが……』
NOVA『ここで一つ謎が解けたのが、バルダーズゲートのミンスクだな』
シロ「ええと、確かレルムの暦1368年のバルダーズゲートで初登場して、その後、100年以上経ってから、どういうわけか街の石像が受肉して復活したそうですね」
NOVA『ああ。実はミンスクって、俺の知らないうちに石化していたようなんだな。で、その石化した彫像が、本人とは知られずに誰かが英雄ミンスクを讃えて作ったのだろうと勘違いされて、街の名物としてずっと飾られていたんだな。だから、石像が受肉したのではなくて、100年前に石化した肉体が復活したということなんだ。断片的な情報だけで、思い違いをしていたようだ』
ジュニア「でも、100年後の世界って、いろいろ変わっていて、大変でしょうねぇ」
NOVA『いや、4版の時代に復活していたら世界の様相がいろいろ変わって大変だったろうけど、5版の時代はAD&D時代の昔に戻った要素も多いからな。ともあれ、ミンスクは100年後の世界に復活したし、ドリッズトみたいなエルフは長命だから100年ぐらいの時は越えられる。問題はウルフガルだな。さすがに人間の蛮人の彼は、今のレルムには登場しないだろう。ブルーノーとドリッズトは現役だが、ウルフガルとヒロインのキャッティ・ブリーはカードゲームを除いて現役復活はしないと思われるが』
ゲンブ「あと、ハーフリングのレギスというのがおらんかったか?」
NOVA『いましたし、旧5版のPHBのハーフリング紹介のページで示されています。しかし、彼がどうなってるかも謎ですね。ウルフガルやキャッティ・ブリーと違って、マジックのカードにも採用されていないし』
シロ「とにかく、レンジャーのドリッズトや、バーバリアンのウルフガルなど、アイスウィンドは魅力的な作品ってことですね」
NOVA『富士見のこの表紙絵が好きなんだ。ドリッズトとブルーノー、ウルフガルの3人が写っていて分かりやすい。新版では、3人の戦闘シーンを描いたこの表紙も良い感じだが』
ゲンブ「今、ドリッズトのことを学ぶなら、やはりこの本でござるか」
NOVA『では、今回はここまで。次回は、バーバリアンとレンジャーの5版のサブクラス、それもサプリメントの追加分を中心に話していきましょう』
(当記事 完)