7月に出た新刊を今ごろ感想
リモートNOVA『ようやく、お盆休みに入って一休憩ってところです』
ヒノキ「で、これが土産か」
NOVA『正直に言って、俺はゴブスレの新刊が読みたいんですけどね。作者の現在の本命はブレバスになっているようです』
ヒノキ「前巻の感想は、ゴブスレアニメ2期が終了した辺りの昨年末じゃったのう」
NOVA『今回は、ゴブスレ4巻同様の短編集ですね』
NOVA『短編集は、主人公パーティー以外の脇役冒険者にもスポットが当たって、世界観に多様性が出るのが特徴です。ゴブスレさんや、本作のイアルマスは、その世界の中では標準的な冒険者から外れた変わり者設定なので、では標準的な冒険者から見た世界はどう映るのか? という物語を短編集で補う形ですな』
ヒノキ「なるほど。それで今回は面白かったのか?」
NOVA『いつもは、イアルマスやララジャが中心ですが、今回は多彩なキャラの視点ですので、新鮮な形で読めました。一番笑ったのが、前巻で獣ガールのガーベイジが入手した聖剣ハースニールの視点で語られる第3章「インテリジェンスソード」です。俺もゲームブックの攻略記事で、魔剣の精霊をネタに記事書きしていたので、同じようなネタで話を書いているタイミングがかぶって、よけいに感情移入できました』
ヒノキ「つまり、書き手としては、自分が書いたものが人気作家と似たような要素があって、自己満足しておるわけじゃな」
NOVA『割と、本作は作者に感情移入して読んでますね。どうも、キャラにはあまり感情移入できる作品じゃないというか、特に萌えるヒロインがいるわけでもなく、共感できるキャラがいるわけでもなく、それでも作者の紡ぎ出すウィザードリィ愛の結晶には世界観の方に懐古的な感情移入をしているという』
ヒノキ「キャラではなく、世界観に感情移入とは珍しい読み方じゃのう」
NOVA『ゴブスレに比べて、本作のキャラは会話下手が多いですからね。女性キャラが多いにも関わらず、甘いラブコメ的な雰囲気にはならないクールでハードな雰囲気で、むしろサイバーパンク的な雰囲気が濃いかな、と。ゴブスレにおける、過保護なお姉さん属性(女神官も、妖精弓手も、受付嬢も、牛飼娘も、ゴブスレにどこかそういう視線を向けて更生させようとしている感)を持っているのが、シスター・アイニッキに集約されていて、今回は前巻の戦いで両腕を失った彼女を癒すための手段を密かに探求しているイアルマスの優しさというか義理堅さが最後に描き出される形で、分かりにくい恋愛劇っぽい雰囲気にはなっているけど、そちらがメインではない、と』
ヒノキ「何がメインなのじゃ?」
NOVA『作者的には、昔(90年代)のウィザードリィ短編小説集へのオマージュといったところです』
NOVA『基本がウィザードリィ1の「狂王の試練場」に基づく迷宮に、前巻はウィザードリィ2のナイト・オブ・ダイヤモンド要素を絡め、今回はアイテム的に3と5のネタを絡めた感じ。それと、新登場キャラや、女性キャラオンリーのパーティーによる攻略とか、多彩な短編ストーリーを散りばめた作品。逆に、いつもは主役のイアルマスやララジャが脇に回ったので、メインストーリーではなくて、前巻の後始末外伝みたいな箸休め回になるか、と』
ヒノキ「3巻みたいに大きく話が動いた回ではない、と」
NOVA『笑ったのが、不遇の忍者娘シャドウウィンド。ウサギにクリティカルヒットを受けて死にかけたり、宝箱の罠の解除に失敗して爆死したり、今回の不幸属性を一手に引き受けて、お気の毒、と。本編では盗賊少年のララジャの成長物語にもなっているので、彼がほとんど失敗しないようになっているけど、ララジャがいかに優秀に育てられているのかを描くように、未熟な忍者の失敗譚(女性キャラでここまで不遇に描かれているのも珍しい)をここぞとばかりに連発させてきた。きっと、運の能力値が低いのかな、と。次巻はシャドウウィンドちゃんが無事に復活できていることを願いつつ、今回の件がトラウマになっている可能性も否めないな』
ヒノキ「何だかんだ言って、楽しみを見出したんじゃな」
NOVA『3巻までは基本シリアスな話だったんだけど、今回でイアルマスが影に引っ込んだだけで、ブラック混じりのコメディ要素が溢れ出た感。思わずプッと吹き出すシーンがあったのは、このシリーズでは初めてですな。作者が楽しんで書いてるな、と感じられて雰囲気は良かったし、前巻ではどん底状態から救出されたツンデレ圃人司教のオルレアちゃんが、今回はパーティーに加入したのみならず、何故か女性キャラチームのパーティーリーダーになってしまい、自分がリーダーとして苦労して初めて、ララジャの凄さを実感するとか、今後の展開に向けての伏線もいろいろ張って来た感として評価します』
ヒノキ「それにしても、圃人で司教なぞ、ウィザードリィの定石から外れたキャラじゃのう」
NOVA『彼女も、ゴブスレの剣の乙女の要素を持ちつつ、勝ち気な性格は妖精弓手的でもあり、ララジャにとってのメインヒロイン的な立ち位置になりつつありますね。あと、ベルカナンの呪文習得ネタとして、今回はマッピングに便利なDUMAPICをまだ覚えていないという、どこか残念な魔法使いっぷりをさらに示す。定石外しの残念感を持ったパーティー(いわゆる鎧をまとった重装甲戦士がいないとか、AC=防御力は気休めでしかないというバグネタとか)が苦戦しながらも、まあ、最後は何とか知恵を巡らして、奇跡的に目標を達成する様は、作者の人がしっかり考えてるなあ、と感心もあって、読後感は悪くなかったな、と』
(当記事 完)


